説明

表面化粧材の製造方法

【課題】 工程の短縮化を図ることができ、高い生産性でもって、しかも年間を通じて安定に製造することが可能な表面化粧材の製造方法を提供する。
【解決手段】 表面材1の裏面に横断面がV字状の少なくとも1本の溝4〜7を形成する工程と、前記表面材の裏面に接着剤8を塗布する工程と、接着剤8を加熱し、芯材9の外表面に前記表面材1を裏面側から当接させる工程と、前記芯材9のコーナー部外側において、前記表面材のV字状の溝の対向し合う内側面同士が当接してV字状の溝がなくなるように前記表面材を折り曲げて前記芯材の外表面に沿わせる工程と、前記芯材の外表面に沿わされた前記表面材の外表面からロールプレスによりプレスする工程とを備え、前記接着剤が湿気硬化型ホットメルト接着剤であり、前記接着剤の加熱温度が80〜180℃の範囲とされていることを特徴とする、表面化粧材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建築物や家具などにおいて、意匠性を高めたり、あるいは塗装等の作業性を高めたりするための表面材が、芯材の外表面に貼り合わされた構造を有する表面化粧材の製造方法に関し、より詳細には、ホットメルト接着剤を用いて表面材を芯材の外表面に高い生産性をもって安定に貼り合わせることが可能とされている表面化粧材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家具や建築物において、意匠性を高めたり、あるいは塗装などの作業性を高めたりするための表面材が、芯材の外表面に貼り合わされている表面化粧材が広く用いられている。例えば、玄関などにおいて用いられる表面化粧材の製造に際しては、MDFや合板などの表面に木目などを印刷した樹脂シートを貼り付けた表面材、あるいはMDFや合板表面に塗装が施された表面材をまず用意する。そして、この表面材の裏面に横断面がV字状の溝を形成し、しかる後、水系エマルジョン型接着剤を塗布し、加熱する。次に、該接着剤層上に芯材を配置し、該芯材の周囲を囲むように表面材を折り曲げた後、タッカーを打つことにより、表面材を芯材に固定していた。そして、常温でプレス養生を行い、表面材で化粧された表面化粧材を得ていた。
【0003】
上記製造方法では、生産性を高めるために、プレス養生に際しては、複数の表面化粧材を積み重ねて養生が行われていた。従って、タッカーが打たれたままの表面化粧材を積み重ねていたため、タッカーにより他の表面化粧材の表面材の表面が損傷し、意匠性が損なわれることがあった。また、プレス養生時間が長いため、生産性を高めることが困難であった。
【0004】
他方、下記の特許文献1には、湿気硬化型ホットメルト接着剤を用いた表面材の製造方法が開示されており、ここでは、表面材の裏面に横断面V字状の溝を形成した後、湿気硬化型ホットメルト接着剤が表面材の裏面に塗布される。次に、ホットメルト接着剤を遠赤外線、近赤外線または熱風等の加熱手段を用いて再度溶融し、V字状溝で表面材を折り曲げ、芯材に平面プレスやロールプレスにより圧接させ、接着する。この場合の加熱手段による加熱温度は、表面温度で50〜70℃の温度とされている。また、平面プレスにより圧着する場合には、1〜5kgf/m2の圧力で1〜2分程度圧締する必要がある旨、ロールプレスの場合には、2分以上圧締する必要がある旨が記載されている。
【特許文献1】特開平9−41648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、特許文献1に記載の製造方法では、水系エマルジョン型接着剤を用いた従来の製造方法に比べ、常温プレス養生を行わないため、また湿気硬化型ホットメルト接着剤を用いているため、製造工程を短縮することが可能とされている。しかしながら、特許文献1に記載の製造方法においても、なおロールプレスを用いた場合には、2分以上の圧締時間が必要であり、より一層の生産工程の短縮が求められている。
【0006】
他方、分子中にイソシアネート基を有する湿気硬化型ホットメルト接着剤が、従来より、多種多用な分野で用いられている。このタイプの湿気硬化型ホットメルト接着剤では、イソシアネート基が空気中あるいは被着体中の水分と反応し、この湿気硬化反応により最終的に架橋構造を有する高弾性かつ高強度の硬化物が形成される。このような湿気硬化型ホットメルト接着剤については、様々な改良が施されており、水酸基を有するポリオール成分と、イソシアネート基を有するポリイソシアネート成分とを反応させて得られる、ウレタンプレポリマーを含有するタイプの湿気硬化型ホットメルト接着剤が近年多用されている。
【0007】
しかしながら、従来のこの種の湿気硬化型ホットメルト接着剤を用いて表面化粧材を製造する場合には、やはり、特許文献1に記載のように、数分のプレス時間を必要とし、生産工程をより一層短縮することは困難であった。特に、周囲温度が高温となる夏季では、接着直後の固化反応が十分に進行していない間に、芯材の表面に圧着された表面材の反発力に耐えきれず、不良品が生じることがあった。
【0008】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、湿気硬化型ホットメルト接着剤を用いて、より高い生産性で表面化粧材を製造することができ、かつ周囲温度の如何に関わらず、年間を通じて安定に表面化粧材を製造することを可能とする製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る表面化粧材の製造方法は、表面材の裏面に横断面がV字状の少なくとも1本の溝を形成する工程と、前記表面材の裏面に接着剤を塗布する工程と、前記接着剤を加熱し、芯材の外表面に前記表面材を裏面側から当接させる工程と、前記芯材のコーナー部外側において、前記表面材のV字状の溝の対向し合う内側面同士が当接してV字状の溝がなくなるように前記表面材を折り曲げて前記芯材の外表面に沿わせる工程と、前記芯材の外表面に沿わされた前記表面材の外表面からロールプレスによりプレスする工程とを備え、前記接着剤が湿気硬化型ホットメルト接着剤であり、前記接着剤の加熱温度が80〜180℃の範囲とされていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る表面化粧材の製造方法のある特定の局面では、前記湿気硬化型ホットメルト接着剤の塗布量が10〜100g/m2の範囲にあり、かつロールプレス時間が0.1〜60秒の範囲内とされている。
【0011】
本発明に係る表面化粧材の製造方法の他の特定の局面では、前記湿気硬化型ホットメルト接着剤として、軟化点が30〜80℃の範囲にありかつクリープずれ幅が0.5〜100mmの範囲にある湿気硬化型ホットメルト接着剤が用いられる。
【0012】
本発明に係る表面化粧材のさらに他の特定の局面では、前記芯材が複数のコーナー部を有し、該複数のコーナー部のそれぞれに対応して、前記表面材の内面に複数の溝が形成される。
【0013】
本発明に係る表面化粧材の製造方法のさらに別の特定の局面では、前記表面材が、前記芯材の外周を巻回するように前記芯材に接着されており、それによって前記芯材の外周面が前記表面材で覆われている。
【0014】
本発明に係る表面化粧材の製造方法のさらに別の特定の局面では、前記芯材の1つのコーナーに対し、前記表面材の裏面において、複数の溝が配置されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る表面化粧材の製造方法では、表面材の裏面に接着剤を塗布し、加熱し、芯材の外表面に表面材を裏面側から当接させ、表面材のV字状の溝の対向し合う内側面同士が当接しV字状の溝がなくなるように表面材を折り曲げて、芯材の外表面に表面材を沿わせ、その状態で、ロールプレスによりプレスすることにより、表面材が芯材に接着される。そして、本発明では、接着剤として、湿気硬化型ホットメルト接着剤が用いられ、上記接着に際しての接着剤の加熱温度が80〜180℃の温度範囲とされている。加熱温度が80℃より低い場合には、接着剤の芯材に対する濡れ性が十分でなくなり、表面材と芯材との間の十分な接着力を確保することができず、180℃より高いと、湿気硬化型ホットメルト接着剤が冷却し難いため、芯材に対して表面材を接合した後、表面材の反発力により剥離等が生じ、不良品が生じ易くなる。
【0016】
これに対して、本発明では、上記湿気硬化型ホットメルト接着剤が80〜180℃の温度範囲に加熱されて接着が行われるので、芯材に対する接着剤の濡れ性が十分であり、芯材と表面材とを確実に接着することができ、しかも加熱温度がさほど高くないため、周囲の雰囲気により年間を通じて速やかに冷却され、従って表面材が芯材から剥離し難く、不良品が生じ難い。
【0017】
よって、本発明によれば、生産工程の短縮を図り得るだけでなく、年間を通じて確実に表面材を芯材に容易に接合することができる製造方法を提供することが可能となる。
【0018】
よって、本発明に係る表面化粧材の製造方法を用いることにより、建築物や家具等の表面化粧材の製造を安定にかつ高い生産性でもって達成することが可能となる。
【0019】
湿気硬化型ホットメルト接着剤の塗布量が10〜100g/m2の範囲にありかつロールプレス時間が0.1〜60秒の範囲にある場合には、製造コストを高めることなく芯材と表面材とを確実に接着することができ、しかも製造工程のより一層の短縮を図ることができる。
【0020】
湿気硬化型ホットメルト接着剤として、軟化点が30〜80℃の範囲にありかつクリープずれ幅が0.5〜100mmの範囲にある湿気硬化型ホットメルト接着剤を用いた場合には、接着剤を加熱する工程において接着剤を十分に溶融させることができ、しかも芯材と表面材との貼り合わせ後に湿気硬化型ホットメルト接着剤を速やかにかつ確実に固化させることができ、さらに、貼り合わせ後に表面材が芯材から剥離し難く、またずれも生じ難い。従って、表面材を芯材により高い生産性で貼り合わせることができ、しかも不良品の発生率をより一層低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の表面化粧材の製造方法の具体的な実施形態を図面を参照しつつ説明することにより、本発明を明らかにする。
【0022】
まず、図2に示すように平板状もしくはシート状の表面材1を用意する。
【0023】
本実施形態では、表面材1は、基材層2と、基材層2の片面に積層された化粧層3とを有する。表面材1は、図2では、上面が裏面側となるように図示されている。すなわち、化粧層3は、表面材1の表面側に配置されている。
【0024】
本実施形態では、上記基材層2は、特に限定されるわけではないが、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン、メラミン樹脂などの合成樹脂;天然木材、合板、パーティクルボード、硬質ファイバーボード、半硬質ファイバーボードもしくは集成材などの木製材料により構成され得る。なお、基材層2自体が、複数の材料層を積層した構造を有していてもよい。
【0025】
他方、化粧層3は、合成樹脂シートあるいは塗膜等により形成される。化粧層3を構成する合成樹脂シートとしては、特に限定されないが、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレンなどが挙げられ、これらの合成樹脂からなる無地のシート、あるいはこれらの合成樹脂シート表面に文字や模様が印刷されたシートが用いられ得る。あるいは、上記化粧層2は、木材のつき板シート、合成樹脂が含浸されたつき板シート、アルミ箔などの金属箔、紙もしくは布などの様々な材料によって構成され得る。さらに、上記化粧層3は、塗膜により形成されていてもよい。化粧層3についても、複数の材料が積層された構造を有していてもよい。
【0026】
化粧層3は、表面材1において、その表面側に配置され、最終的に得られる表面化粧材の表面の意匠性を高めるために設けられている。もっとも、意匠性がさほど必要でない場合には、化粧層3は設けられずともよく、基材層2のみにより表面材が形成されていてもよい。
【0027】
なお、上記表面材1は、後述するように芯材の周囲に沿わされるように折り曲げられるため、このような加工に適した厚みを有することが望ましい。従って、一般に、上記表面材1の厚みは、3〜15mm程度の厚みとすることが好ましい。もっとも、使用する表面材1の材料等に応じ、この厚みは適宜変更することができる。
【0028】
次に、図3に示すように、上記表面材1の裏面側から複数本の横断面がV字状の溝4〜7を形成する。なお、横断面がV字状の溝は1本のみ形成されていてもよい。
【0029】
上記溝4〜7は、それぞれ、本実施形態では、対向し合う一対の内側面を有する横断面がV字状の形状を有し、特に本実施形態では、一対の内側面のなす角度は90度とされている。もっとも、後述するように、一対の内側面がなす角度すなわちV字状溝の開き角度は90度に限定されるものではない。
【0030】
また、溝4〜7は、本実施形態では、上記基材層2の裏面側に至るように形成されているが、溝4〜7の深さは特に基材層2の裏面側に至る深さに限定されるものではない。すなわち、溝4〜7は、基材層2の中間深さ位置まで設けられていてもよく、あるいは化粧層3の中間深さ位置まで至るように設けられていてもよい。化粧層3の表面側による意匠性を高める効果が損なわれない限り、溝4〜7の深さ位置は特に限定されるものではない。
【0031】
また、上記溝4〜7の深さ及び一対の内側面間のなす角度は、後述するように、芯材の外形に応じて適宜調整され得る。上記V字状の溝4〜7の形成は、切削具等適宜の工具を用いて行い得る。
【0032】
次に、図4に示すように、表面材1の裏面側に、湿気硬化型ホットメルト接着剤8を塗布する。この湿気硬化型ホットメルト接着剤8は、表面材1の裏面において、上記溝4〜7の内面に至るように塗布される。
【0033】
塗布方法は特に限定されず、ロールコーター、ナイフコーターまたはスプレーガンなどの適宜の塗布装置を用いて行われ得る。ロールコーターを用いた場合には、V字溝以外の面部分に容易に塗布することができ、ナイフコーターやスプレーガンを用いた場合には、V字溝内についても同時に接着剤を塗布することができる。
【0034】
なお、本実施形態では、湿気硬化型ホットメルト接着剤が、表面材1の裏面において、基材層2の面部分及び溝4〜7の内面に塗布される。もっとも、本発明においては、上記湿気硬化型ホットメルト接着剤は、内装材2の面部分、すなわち溝4〜7の内側面以外の部分にのみ用いられ、溝内については他の接着剤を塗布してもよい。このような他の接着剤としては、水系エマルジョン型接着剤、変性シリコーン型接着剤、液状ウレタン系接着剤、熱可塑性ホットメルト接着剤などが挙げられる。すなわち、最終的に得られる表面化粧材に要求される性能に応じ、溝内については、様々な他の接着剤を用いてもよい。
【0035】
もっとも、溝4〜7内及び上記溝4〜7以外の面部分の双方に湿気硬化型ホットメルト接着剤8を塗布することにより、生産工程を簡略化することができる。また、必要でない場合には、溝4〜7内においては接着剤を塗布せずともよい。
【0036】
上記湿気硬化型ホットメルト接着剤8の塗布量は、表面材1の裏面の面部分すなわち溝4〜7が設けられている以外の部分において、10〜100g/m2の範囲とすることが望ましい。より好ましくは、20〜80g/m2の範囲である。接着剤の塗布量が多すぎると、製造コストが高くつき、好ましくない。また、接着剤の塗布量が少なすぎると、後述する芯材に対する表面材1の接着性を十分に高めることが困難となることがあり、好ましくない。
【0037】
また、上記湿気硬化型ホットメルト接着剤8としては、特に限定されないが、好ましくは、軟化点が30〜80℃であり、かつ後述の方法により測定されるクリープずれ幅が0.1〜100mmであるものが用いられる。
【0038】
軟化点が80℃を超えると、後の接着加熱工程において、接着剤を十分に再溶融させることが困難となることがあり、30℃より低い場合には、後で芯材と接着した後に湿気硬化型ホットメルト接着剤を速やかにかつ十分に固化させることが困難となることがある。より好ましくは、軟化点は40〜75℃の範囲である。
【0039】
上記クリープずれ幅は、以下の方法に従って測定された値である。
【0040】
クリープずれ幅の測定:100μm厚のPETシートに、湿気硬化型ホットメルト接着剤を40μmの厚みに加熱溶融下で塗布し、塗布してから3分後に85℃の熱板上にPETシート側から載置し、20℃の表面温度のMDFを重ね合わせ、245Paの圧力で3秒間面プレスを行い、接着試験片を得る。プレス直後の接着試験片について、測定雰囲気温度を20℃とし、150g/インチの荷重を加え、90度剥離方向のずれを観察し、ずれ速度が1mm/3秒以下となった時点で終了し、その時点でのずれ幅を求め、クリープずれ幅とする。
【0041】
上記クリープずれ幅が100mmを超えると、湿気硬化型ホットメルト接着剤の凝集力が十分でなく、後で行われる芯材との接着後に接着不良が生じ易くなり、好ましくない。クリープずれ幅が0.1mmより小さいと、後で行われる芯材との接着工程において、接着剤の芯材への濡れ性が十分でなくなり、表面材と芯材とを十分に接着することができず、表面材が芯材から部分的あるいは全面剥離する不良品が生じるおそれがある。
【0042】
本発明で用いられる上記湿気硬化型ホットメルト接着剤としては、特に限定されないが、例えば、積水化学工業社製、商品名:エスダイン9641のようなウレタンプレポリマー含有湿気硬化型ホットメルト接着剤が用いられる。
【0043】
次に、加熱装置を用い、塗布された湿気硬化型ホットメルト接着剤8を加熱し、再溶融する。加熱装置は特に限定されず、遠赤外線、近赤外線またはライスター等による熱風などを照射もしくは吹き付け得る適宜の加熱装置を用いることができる。本実施形態では、上記湿気硬化型ホットメルト接着剤8を80〜180℃の範囲で加熱し、再溶融する。加熱温度が80℃より低いと、後で行われる芯材を湿気硬化型ホットメルト接着剤8上に設置し、貼り合わせる工程までの時間を極端に短くしなければ、工程の短縮を図ることが困難となり、かつ接着剤の芯材に対する濡れ性が確保できず、表面材1と芯材との接着力を確保することができなくなり、最終製品の物性が低下し、不良品発生率が高くなる。また、180℃より加熱温度が高い場合には、湿気硬化型ホットメルト接着剤8が冷却され難くなり、後で行われる芯材との接着工程において、表面材が芯材から部分的にあるいは全面的に剥離し、不良品発生率が高くなる。
【0044】
次に、図5に示すように、加熱後に、芯材9を表面材1の裏面側に載置する。芯材9としては、特に限定されないが、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン、メラミン樹脂などの各種合成樹脂;あるいは天然木材、合板、パーティクルボード、硬質ファイバーボード、半硬質ファイバーボードもしくは集成材などの木製材料などを適宜用いることができる。また、芯材9は、図5では、単一の部材として示されているが、複数の材料を積層した構造であってもよい。
【0045】
本実施形態では、直方体状の芯材9が加熱溶融された湿気硬化型ホットメルト接着剤8上に配置される。そして、芯材9の幅方向寸法Wが、溝5,6間の面上部分の該幅方向寸法に沿う寸法と等しくされている。他方、溝4,5間の面上部分の図5における上記幅方向寸法に沿う寸法は、芯材9の高さ方向寸法と等しくされている。同様に、溝6,7間の面上部分の上記幅方向寸法に沿う寸法も、芯材9の高さ方向寸法と等しくされている。
【0046】
そして、溝4,7の外側部分の上記幅方向寸法に沿う寸法の合計が、芯材9の幅方向寸法Wよりも狭くされている。
【0047】
なお、上記幅方向と直交する方向の寸法は特に限定されない。また、芯材9の長さ方向寸法、並びに該長さ方向寸法に沿う表面材1の寸法は等しくする必要は必ずしもないが、製品取得率を高める上では、同じ長さであることが望ましい。
【0048】
次に、図5に示した状態から、表面材1を折り曲げ、溝4〜7が芯材9のコーナー部分に対応する部分で溝の一対の内側面が接し、V字溝がなくなるようにして、表面材1を芯材9の外表面に沿わせる。なお、湿気硬化型ホットメルト接着剤8を加熱してから、上記接着工程に映るまでの時間は短ければ短いほど好ましい。この時間が長すぎると湿気硬化型ホットメルト接着剤8の芯材9に対する濡れ性が十分でなくなり、接着不良が生じる。具体的には、この時間は5分以下、より好ましくは30秒以下であることが望ましい。
【0049】
次に、上記のようにして、表面材1を折り曲げた後、図6に示すように、ロールプレスを行う。ロールプレスに際しては、複数本のロール10を、表面材1の外側に配置し、0.1〜60秒の間ロールプレスを行う。ロールプレス時間が60秒より長くなると、生産性が低下したり、非常に広い設備面積が必要となり、好ましくない。従って、60秒以下であることが好ましく、より好ましくは50秒以下である。また、ロールプレス時間が0.1秒より短いと、湿気硬化型ホットメルト接着剤8が十分に冷却せず、十分な接合強度を発現し得ないため、好ましくない。上記ロールプレス時間は0.5秒以上であることがより好ましい。
【0050】
また、上記ロールプレスに際して圧締する圧力は高ければ高いほど好ましいが、具体的には49Pa以上であることが好ましく、より好ましくは147Pa以上である。
【0051】
なお、ロール10の材質は特に限定されないが、シリコーン樹脂などの弾性材料や、ナイロンなどの合成樹脂からなるロール、あるいは鉄、アルミニウムもしくはステンレスなどの金属からなるロールを用いることができる。
【0052】
なお、上記実施形態では、直方体状の長尺状の芯材9に、表面材1が貼り合わされていたが、図7〜図10に示すように、三角柱状の芯材12の外表面に、表面材1を貼り合わせ、略三角柱状の表面化粧材13を得てもよい。なお、ここでは、図7に示すように表面材1において、複数本のV字状溝14,15は、その開き角度が120度となるように溝14,15が形成されている。また、芯材12の横断面は正三角形形状である。なお、芯材の横断面形状は他の多角形であってもよい。
【0053】
さらに、表面材1の幅方向外側端においては、端面1a,1bの傾斜角度が、上記溝14,15の一方の内側面と同じ傾斜角度となるようにされている。
【0054】
従って、図9に示すように、芯材12の外周面に沿うように表面材1を折り曲げ、ロール10により接着した場合、上述した実施形態の場合と同様にV字状の溝を構成している一対の内側面が当接し、V字状の溝がなくなるように表面材1が折り曲げられて接着が行われる。このようにして、図10に示す角柱状の表面化粧材13が得られている。
【0055】
なお、図11〜図13に示すように、芯材21の1つのコーナー部分に対し、複数の横断面V状の溝22,23が設けられた表面材1を適用してもよい。この場合、溝22,23のそれぞれにおいて、一対の内側面が当接し、V字状の溝がなくなるように芯材21の1つのコーナー部分の外側において、表面材24が折り曲げられ、接着が行われる。
【0056】
なお、芯材は、表面材の外周を完全に巻回するように芯材に適用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施形態に係る表面化粧材の製造方法により得られた表面化粧材を示す斜視図。
【図2】本発明の一実施形態で用意される表面材を示す斜視図。
【図3】図2に示した表面材において、横断面V字状の複数本の溝を形成した状態を示す斜視図。
【図4】表面材の裏面に湿気硬化型ホットメルト接着剤を塗布した状態を示す斜視図。
【図5】湿気硬化型ホットメルト接着剤を塗布した後に、芯材を配置する工程を説明するための斜視図。
【図6】本発明の一実施形態において、図5に示した状態から表面材を折り曲げ、ロールプレスする工程を説明するための斜視図。
【図7】本発明の製造方法の変形例を説明するための斜視図であり、表面材の裏面に湿気硬化型ホットメルト接着剤を塗布した状態を示す斜視図。
【図8】図7に示した工程に引き続き、芯材を配置した状態を示す斜視図。
【図9】図8に示した工程に続き、表面材を折り曲げロールプレスする工程を説明するための斜視図。
【図10】本発明の製造方法の変形例で得られた表面化粧材の斜視図。
【図11】本発明の製造方法のさらに他の変形例で用意される表面材を説明するための部分切欠正面断面図。
【図12】図11に示した表面材に湿気硬化型ホットメルト接着剤を塗布した状態を示す部分切欠正面断面図。
【図13】図12に示した表面材を芯材の周囲に貼り合わせた状態を示す部分切欠斜視図。
【符号の説明】
【0058】
1…表面材
2…基材層
3…化粧層
4〜7…溝
8…湿気硬化型ホットメルト接着剤
9…芯材
10…ロール
11…表面化粧材
12…芯材
13…表面化粧材
14,15…溝
21…芯材
22,23…溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面材の裏面に横断面がV字状の少なくとも1本の溝を形成する工程と、
前記表面材の裏面に接着剤を塗布する工程と、
前記接着剤を加熱し、芯材の外表面に前記表面材を裏面側から当接させる工程と、
前記芯材のコーナー部外側において、前記表面材のV字状の溝の対向し合う内側面同士が当接してV字状の溝がなくなるように前記表面材を折り曲げて前記芯材の外表面に沿わせる工程と、
前記芯材の外表面に沿わされた前記表面材の外表面からロールプレスによりプレスする工程とを備え、
前記接着剤が湿気硬化型ホットメルト接着剤であり、前記接着剤の加熱温度が80〜180℃の範囲とされていることを特徴とする、表面化粧材の製造方法。
【請求項2】
前記湿気硬化型ホットメルト接着剤の塗布量が10〜100g/m2の範囲にあり、かつロールプレス時間が0.1〜60秒の範囲である、請求項1に記載の表面化粧材の製造方法。
【請求項3】
前記湿気硬化型ホットメルト接着剤として、軟化点が30〜80℃の範囲にありかつクリープずれ幅が0.5〜100mmの範囲にある湿気硬化型ホットメルト接着剤を用いる、請求項1または2に記載の表面化粧材の製造方法。
【請求項4】
前記芯材が複数のコーナー部を有し、該複数のコーナー部のそれぞれに対応して、前記表面材の内面に複数の溝が形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面化粧材の製造方法。
【請求項5】
前記表面材が、前記芯材の外周を巻回するように前記芯材に接着されており、それによって前記芯材の外周面が前記表面材で覆われている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の表面化粧材の製造方法。
【請求項6】
前記芯材の1つのコーナーに対し、前記表面材の裏面において、複数の溝が配置されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の表面化粧材の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−321095(P2006−321095A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−145660(P2005−145660)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】