説明

表面実装型高安定圧電発振器

【課題】上部に部品装着用基板をはんだ付けで固定した金属ピンを立て、その金属ピンをベース基板に設けた貫通孔を備えた電極パッドにはんだ付けで保持する構造の表面実装型圧電発振器であって、部品装着用基板とベース基板の熱による内部構造の変形や破壊を防止して信頼性の高い表面実装型発振器を提供する。
【解決手段】ベース基板1に5個以上の電極パッドを設け、そのうち、少なくも3個は貫通孔を持たない電極パッド2であり、また、少なくも2個は貫通孔3aを備えた電極パッド3と、金属ピン6、7の上端は圧入ピン6b、7bの形状とし、この金属ピン6、7の上端を部品装着用基板5に設けた電極パッド5aの貫通孔5bに圧入し、金属ピン6、7の下端は、ベース基板1の貫通孔を持たない電極パッド2には突き合わせた状態で、また、ベース基板1の貫通孔3aを備えた電極パッド3には貫通孔3aに挿入した状態で、それぞれ金属ピン6、7と電極パッド2、3、5aとをはんだ付け8して固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面実装型高安定圧電発振器に関し、特にリフローによる半田付け時の熱への高い耐性を有する印刷配線基板の支持構造とそれを用いた表面実装型高安定圧電発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の通信機器、特に移動無線通信における携帯端末機器の小型化に伴って、携帯機器等に広く用いられている水晶発振器も小型化が進められるとともに、さらに、表面実装技術によって機器内における部品の占有容積の縮小が図られている。
一方、水晶発振器に限らず、表面実装型部品の更なる小型化に伴って、その表面実装型部品がはんだリフローによって機器のマザーボード等にはんだ付けされる際に、表面実装型部品の内部部品の構造がはんだリフローの熱によって影響を受ける場合がある。
【0003】
図4は、従来の表面実装型高安定水晶発振器の一例を示す構造図であって、(a)は縦断面図である。同図に示すように、本高安定水晶発振器50は、水晶振動子51と他の発振回路部品52a、52bとを両面に装着した部品装着用基板53と、この部品装着用基板53をベース基板54に固定する金属ピン55と、前記構成部品をベース基板54上で覆うように被せて密封する容器56とで構成される。前記ベース基板54の下面には表面実装用のパッド電極57が設けられる。
図4(b)は、同図(a)の高安定水晶発振器における部品装着用基板53の支持構造を示す斜視図である。同図に示すように、前記部品装着用基板53はベース基板54上に立てて固定された5本の金属ピン55の上部にはんだ付け58によって固定される。
【0004】
図5は、図4(b)の構造の細部の説明図であって、同図(a)は、ベース基板54の構造図である。同図に示すように、ベース基板54は、それぞれ孔54aを有する5個の電極パッド54bを備えており、この孔54aに前記金属ピン55を挿入し、金属ピン55と電極パッド54bとをはんだ付けすることによって、金属ピン55が固定される。
ベース基板54の端面には、外部接続電極54cが設けられ、下面には前記外部接続電極54cにつながる表面実装用パッド電極57(図示しない)が設けられている。
【0005】
同図(b)は、図4(b)のY−Y’矢視部の断面図である。同図に示すように、金属ピン55の基部は、ベース基板54に設けられた電極パッド54bの孔54aに挿入され、電極パッド54bと金属ピン55とがはんだ付け58が施されて固定される。
また、前記金属ピン55の上端は、図中のA部拡大図に示すように、部品装着用基板53の上面に設けられた電極パッド53bにあけられた貫通孔53aに挿入され、電極パッド53bと金属ピン55とにがんだ付け58によって固定される。なお、前記部品装着用基板53の電極パッド53bは前記ベース基板54の電極パッド54bに対応する位置に設けられる。
前記金属ピン55には、挿入された部品装着用基板53が脱落しないように、フランジ55aが設けられて部品装着用基板53を受けている。
【特許文献1】特開2003−17940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図5(a)に示すベース基板54の電極パッド54bに設けられた孔54aは、貫通孔、あるいは基板の厚み方向に対して途中まで穴をあけた非貫通孔のいずれかが用いられる。
しかし、非貫通孔の場合は、前記ベース基板54の板厚が薄いため高度の加工技術を要し、コスト高の原因ともなるため、貫通孔を用いる場合が多い。
この貫通孔を用いる場合においても、前記ベース基板54が表面実装型の本高安定水晶発振器の底面であるので、金属ピン55がベース基板54の下面から突き出ることは許されず、また、金属ピン55が基板下面と同一面にまで挿入されて固着されると、本発振器が搭載される機器のマザーボード等の表面に電極がある場合には、その電極が金属ピンによって短絡されるおそれが有る。そのため、組立作業に特殊な治工具や高い作業技術を必要としてコスト高になると共に、信頼性に問題があった。
【0007】
上記問題の解決手段として、特開2003一17940による号公報に示される技術がある。この方法手段は、金属ピンを挿入するベース基板の金属ピン挿入孔の下面にピン径より十分大きな凹所(ザグリ穴)を設ける方法である。
しかし、この凹所(ザグリ穴)の形成は、前述の非貫通穴の場合と同様に、薄い板厚の基板に対しては加工が比較的困難であり、コスト高の要因となる。
【0008】
さらに、図5(b)の断面構造をもつ表面実装型高安定水晶発振器を機器のマザーボード等にリフローによるはんだ付けを行うと、はんだリフローの熱によって金属ピン55と部品装着用基板53、及び金属ピン55とベース基板54の固着部のはんだ付け58が溶融するおそれがある。
前記基板53、54と金属ピン55との嵌め合いは、互いの製造公差を見込んで比較的ゆるい状態であるため、はんだ付け58が溶融した時には金属ピン55が傾いたり、ベース基板54の下面に金属ピン55が突き出して部品装着用基板53が金属ピン55とともに落下するというおそれがあった。
【0009】
上記問題の解決の手段として、金属ピン55の下部のベース基板54の電極パッド54bとの固着部にもう一つのフランジの付いた金属ピンを使用することが考えられるが、従来のフランジ55aと追加される他のフランジとの間が極めて狭く、汎用の金属ピンでは入手が困難で、構造設計上の重大な制約となる、あるいは、コスト高の要因となるという問題があった。
また、金属ピン55のベース基板54を貫通する部分を圧入ピンとする方法もあるが、圧入ピンは基板厚みの途中までしか挿入することができないので、高い加工精度が必要であり、また、圧入部分が短く固定方法として不充分であるという欠点がある。

本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、部品装着用基板とベース基板の熱による内部構造の変形や破壊を防止して信頼性の高い表面実装型高安定圧電発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1においては、ベース基板と、該ベース基板の上方に所定の間隙を隔して配置された部品装着用基板と、前記ベース基板と部品装着用基板との間を電気的に接続し、且つ所定の間隔を保って固定するための複数の金属ピンとを備え、前記部品装着用基板に発振回路部品を搭載した表面実装型圧電発振器であって、
前記ベース基板には前記金属ピンを配置する位置に電極パッドを設け、該電極パッドの少なくとも2個は金属ピンの下端を挿入するための貫通孔が形成され、他の電極パッドには貫通孔が形成されていないことを特徴とする。
また、請求項2においては、請求項1に記載の表面実装型圧電発振器であって、前記電極パッドに形成された貫通孔には前記金属ピンの下端を挿入し、また、前記貫通孔が形成されない電極パッドには前記金属ピンの下端を前記電極パッド面に突き合わせた状態で、それぞれ電極パッドと金属ピンとをはんだ付けして固着したことを特徴とする請求項1に記載の表面実装型圧電発振器。
【0011】
請求項3においては、請求項1または請求項2のいずれかに記載の表面実装型圧電発振器であって、前記貫通孔が形成されない電極パッドの3個以上は前記ベース基板上で同一直線上に配置されないことを特徴とする。
また、請求項4においては、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の表面実装型圧電発振器であって、前記金属ピンの上端部が圧入ピンとなっていることを特徴とする。
さらに、請求項5においては、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の表面実装型圧電発振器であって、前記金属ピンの上部がクリップ構造を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の表面実装型圧電発振器においては、部品装着用基板を金属ピンでベース基板に保持する手段として、ベース基板に複数の電極パッドを設け、そのうち、少なくも3個は貫通孔を持たない電極パッドであり、また、少なくも2個は貫通孔を備えた電極パッドとした。
また、金属ピンの上端は圧入ピンの形状とし、この金属ピンの上端は部品装着用基板に設けた電極パッドの貫通孔に圧入し、金属ピンの下端は、ベース基板の貫通孔を持たない電極パッドは突き合わせた状態で、また、ベース基板の貫通孔を備えた電極パッドは貫通孔に挿入した状態で、それぞれ金属ピンと電極パッドとをはんだ付けして固定する保持構造とした。
【0013】
その結果、基板の加工作業が容易で、はんだリフローのような外部からの熱によって、ベース基板や部品装着用基板において金属ピンを固着するはんだ付けが溶融した場合であっても、貫通孔を持たない電極パッドによって金属ピンがベース基板の貫通孔から落下することが防止され、また、貫通孔に挿入された金属ピンによって、金属ピンの上端に圧入ピンで固定された部品装着用基板の水平方向のずれを防止することができる。
したがって、本発明は、熱による基板保持構造の変形・破壊を防止できる信頼性の高い構造を持つ表面実装型圧電発振器を提供する上で著しい効果を発揮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を図面に示した実施の形態に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明に係わる表面実装型圧電発振器としての水晶発振器に用いられるベース基板の実施の一形態例を示す構造図である。そして、同図のベース基板を使用して構成される水晶発振器は、図4(a)の高安定水晶発振器と同じ構造を有するものである。
図1に示すように、本ベース基板1は、上面に3個の電極パッド2と、中央に貫通孔3aを有する2個の電極パッド3とを備え、端面には外部接続端子4を備え、下面には前記外部接続端子4につながる表面実装用パッド電極(図示しない)を備えている。
【0015】
図2は、図1のベース基板1を用いた高安定水晶発振器における部品装着用基板の支持構造を示す図で、同図(a)は斜視図、同図(b)は、同図(a)のY−Y’矢視部の断面図である。
同図に示すように、部品装着用基板5は前記ベース基板1に立てられた3本の金属ピン6と2本の金属ピン7の上部にはんだ付け8で固着される。前記金属ピン6は、その下端を前記ベース基板1の電極パッド2上に突き合わせた状態で前記電極パッド2にはんだ付け8によって固着され、また、前記金属ピン7は、その下端部を前記ベース基板1の電極パッド3の貫通孔3aに挿入した状態で、電極パッド3にはんだ付け8によって固着される。
【0016】
前記金属ピン6、7の上端は、図2(b)のA部拡大図に示されるように、部品装着用基板5の電極パッド5aに設けられた貫通孔5bに、金属ピン6、7に設けられたフランジ6a、7aに前記部品装着用基板5が接するまで挿入され、金属ピン6、7と電極パッド5aとがはんだ付け8によって固着される。
そして、前記金属ピン6、7の部品装着用基板5に挿入される部分は圧入ピン構造6b、7bを有する。
【0017】
図3は、印刷配線基板5の支持構造の他の形態例を示す図で、同図(a)はこの形態例における特徴的な金属ピンの構造図、同図(b)は、支持構造の側面図である。同図(a)に示すように、本例の金属ピン9は、上端にクリップ部9aを有する。そして、同図(b)に示されるように、前記金属ピン9のクリップ部9aに部品装着用基板5の端部に設けられた電極パッドを挟みこんではんだ付け8して前記部品装着用基板5を固定する。
前記金属ピン9は、前記ベース基板1の電極パッド2においては金属ピン9の下端を電極パッド2に突き合わせ、また、電極パッド3においては金属ピン9の下端を電極パッド3の貫通孔3aに挿入して、それぞれはんだ付け8によって固着する。
ただし、前記ベース基板1の電極パッド2あるいは電極パッド3は、部品装着用基板5の端部を挟みこむ前記金属ピン9の位置に対応して配置される。
【0018】
上記構造とすることによって、ベース基板1上の電極パッド2、3あるいは部品装着用基板5上の電極パッド5aに施されたはんだ付け8がはんだりフロー等の熱によって溶融した場合、金属ピン上端に施された圧入ピン構造6b、7bあるいはクリップ部9aと、電極パッド2に突き合わされた3本の金属ピンと、によって部品装着用基板5は水平に保たれ、また、電極パッド3の貫通孔3aに挿入された2本の金属ピンによって部品装着用基板5の水平方向の位置のずれを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係わる表面実装型高安定圧電発振器としての水晶発振器に用いられるベース基板の実施の一形態例を示す構造図。
【図2】(a)は、図1のベース基板を用いた高安定水晶発振器における部品装着用基板の支持構造を示す斜視図、(b)は、(a)のY−Y’矢視部の断面図。
【図3】部品装着用基板の支持構造の他の形態例を示す図で、(a)はこの形態例における特徴的な金属ピンの構造図、(b)は、支持構造の側面図
【図4】従来の表面実装型高安定水晶発振器の一例を示す構造図で、(a)は縦断面図、(b)は、(a)の高安定水晶発振器における部品装着用基板の支持構造を示す斜視図。
【図5】図4(b)の部品装着用基板の支持構造の細部の説明図で、(a)は、ベース基板の構造図、(b)は、図3(b)のY−Y’矢視部の断面図。
【符号の説明】
【0020】
1・・ベース基板、 2、3・・電極パッド、3a・・貫通孔、4・・外部接続端子、
5・・部品装着用基板、5a・・電極パッド、6、7・・金属ピン、6a、7a・・フランジ、
6b、7b・・圧入ピン構造、 8・・はんだ付け、 9・・金属ピン、 9a・・クリップ部、
50・・表面実装型高安定水晶発振器、 51・・水晶振動子、
52a、52b・・他の発振回路部品、53・・部品装着用基板、 53a・・貫通孔、
53b・・電極パッド、54・・ベース基板、54a・・孔、54b・・電極パッド、
54c・・外部接続電極、55・・金属ピン、55a・・フランジ、56・・容器、
57・・表面実装用パッド電極、58・・はんだ付け

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基板と、該ベース基板の上方に所定の間隙を隔して配置された部品装着用基板と、前記ベース基板と部品装着用基板との間を電気的に接続し、且つ所定の間隔を保って固定するための複数の金属ピンとを備え、前記部品装着用基板に発振回路部品を搭載した表面実装型圧電発振器であって、
前記ベース基板には前記金属ピンを配置する位置に電極パッドを設け、該電極パッドの少なくとも2個は金属ピンの下端を挿入するための貫通孔が形成され、他の電極パッドには貫通孔が形成されていないことを特徴とする表面実装型圧電発振器。
【請求項2】
前記電極パッドに形成された貫通孔には前記金属ピンの下端を挿入し、また、前記貫通孔が形成されない電極パッドには前記金属ピンの下端を前記電極パッド面に突き合わせた状態で、それぞれ電極パッドと金属ピンとをはんだ付けして固着したことを特徴とする請求項1に記載の表面実装型圧電発振器。
【請求項3】
前記貫通孔が形成されない電極パッドの3個以上は前記ベース基板上で同一直線上に配置されないことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の表面実装型圧電発振器。
【請求項4】
前記金属ピンの上端部が圧入ピンとなっていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の表面実装型圧電発振器。
【請求項5】
前記金属ピンの上部がクリップ構造を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の表面実装型圧電発振器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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