説明

表面微細凹凸体およびその製造方法

【課題】光学素子として優れた性能を発揮する表面微細凹凸体とその製造方法、さらには、表面微細凹凸体の凹凸パターンが転写された転写体とその製造方法を提供する。
【解決手段】加熱収縮性フィルムからなる樹脂製の基材の少なくとも片面に、樹脂製の硬質層を設けて積層フィルムを形成する積層フィルム形成工程と、積層フィルムを加熱して基材を収縮させることにより、硬質層を折り畳むように変形させ、凹凸パターンを形成する収縮工程と、収縮の主方向と直交する方向に沿って、積層フィルムを延伸する延伸工程とを行う。このようにして製造された表面微細凹凸体は、凹凸パターンの配向度が小さく、異方性拡散体やワイヤーグリッド偏光子などの光学素子への使用に適する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば光学素子に好適に使用される表面微細凹凸体およびその製造方法と、表面微細凹凸体を備えた光学素子に関する。また、表面微細凹凸体の凹凸パターンが転写された転写体およびその製造方法と、転写体を備えた光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
微細な波状の凹凸からなる凹凸パターンが表面に形成され、凹凸パターンの平均ピッチが可視光の波長以下であるシート状または板状の表面微細凹凸体は、反射防止体、位相差板等の光学素子として利用できることが知られている(非特許文献1)。
また、凹凸パターンの平均ピッチが1〜10μmの表面微細凹凸体は、光拡散体として利用できることが知られている(特許文献1,2)。
【0003】
このような表面微細凹凸体を製造する方法として、パターンマスクを使用する可視光によるフォトリソグラフィ法や、より微細加工が可能な紫外線レーザー照射法や電子線リソグラフィ法が知られている。これらの方法は、基板上に形成されたレジスト層を可視光、紫外線レーザー光あるいは電子線で露光し現像してレジストパターン層を形成し、このレジストパターン層をマスクとして、ドライエッチング法等により凹凸形状を形成する方法である。これらの方法は、このように煩雑であり、大量生産に適さないなどの問題があった。
【0004】
一方、例えば特許文献3などには、加熱収縮性フィルムからなる樹脂製の基材上に樹脂製の硬質層を設けた積層フィルムを加熱し、加熱収縮性フィルムを収縮させることによって、硬質層を凹凸状にする表面微細凹凸体の製造方法が記載されている。この方法によれば、光学素子としての使用に適した表面微細凹凸体を簡便かつ大量に製造することができる。
また、特許文献4には、同様の方法で表面微細凹凸体を製造した後、その凹凸パターン上に金属細線状の金属層を形成することで、ワイヤーグリッド偏光板を製造できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-123307号公報
【特許文献2】特開2006−261064号公報
【特許文献3】特開2008−302591号公報
【特許文献4】特開2009−122298号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】菊田久雄、岩田耕一著、「光学」、日本光学会発行、第27巻、第1号、1998年、p.12−17
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の特許文献3および4に記載の製造方法によれば、表面微細凹凸体を簡便かつ大量に製造することができる。また、得られた表面微細凹凸体は、光学素子としての使用に適するものである。しかしながら、最近では、より優れた性能を具備する光学素子が求められている。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、光学素子として優れた性能を発揮する表面微細凹凸体とその製造方法、さらには、表面微細凹凸体の凹凸パターンが転写された転写体とその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者が鋭意検討した結果、加熱収縮性フィルムと硬質層とを備えた積層フィルムを加熱収縮させた後、収縮の主方向と直交する方向に沿って、積層フィルムを延伸することによって、例えば異方性拡散体に使用した場合には、主拡散方向に十分な拡散角度が得られ、例えばワイヤーグリッド偏光子に使用した場合には、十分な偏光特性が得られる表面微細凹凸体を製造できることに想到し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の表面微細凹凸体の製造方法は、加熱収縮性フィルムからなる樹脂製の基材の少なくとも片面に、樹脂製の硬質層を設けて積層フィルムを形成する積層フィルム形成工程と、前記積層フィルムを加熱して前記基材を収縮させることにより、前記硬質層を折り畳むように変形させ、凹凸パターンを形成する収縮工程と、前記収縮の主方向と直交する方向に沿って、前記積層フィルムを延伸する延伸工程とを有することを特徴とする。
前記積層フィルムが連続フィルムであり、前記収縮工程と前記延伸工程とを連続的に行ってもよい。
前記収縮工程では、前記基材をその最大収縮率よりも小さな収縮率で収縮させ、前記収縮工程の後に、前記積層フィルムの収縮の主方向と反対方向に張力を作用させながら、前記積層フィルムを前記延伸工程の延伸温度以上の温度で加熱する熱セット工程を行い、該熱セット工程の後に、前記延伸工程を行う方法も好適である。
前記硬質層は、重量平均分子量が20万以上の熱可塑性樹脂、分散度が2以上の熱可塑性樹脂からなることが好ましい。
本発明の表面微細凹凸体は、樹脂製の基材と、該基材の少なくとも片面に設けられた樹脂製の硬質層とを備え、該硬質層が波状の凹凸パターンとされた表面微細凹凸体であって、前記硬質層は、重量平均分子量が20万以上で、かつ、分散度が2以上の熱可塑性樹脂からなり、前記凹凸パターンは、配向度が0.1未満であることを特徴とする。
前記凹凸パターンの最頻ピッチが1μmを超え、5μm以下であると、当該表面微細凹凸体を光拡散体として使用した場合、ギラツキが抑制される。
本発明の転写体の製造方法は、前記表面微細凹凸体の前記凹凸パターンを転写する転写工程を有することを特徴とする。
前記製造方法で製造された表面微細凹凸体または転写体は、例えば、異方性拡散体、ワイヤーグリッド偏光子などの光学素子に好適に使用される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光学素子として優れた性能を発揮する表面微細凹凸体とその製造方法、さらには、表面微細凹凸体の凹凸パターンが転写された転写体とその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一例の表面微細凹凸体の一部を拡大して示す拡大斜視図である。
【図2】斜方蒸着について説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について、実施形態例を挙げて詳細に説明する。
[表面微細凹凸体およびその製造方法]
(表面微細凹凸体)
図1は、本実施形態の製造方法で製造されるシート状の表面微細凹凸体を模式的に示すものである。この表面微細凹凸体10は、樹脂製の加熱収縮性フィルムが加熱により収縮(熱収縮)した基材11と、基材11の片面全体に設けられた樹脂製の硬質層12とを備えて構成され、硬質層12がシート状の表面に沿って周期的に繰り返される波状の凹凸パターン12aを有するものである。
図1の表面微細凹凸体10は、一軸方向(この例では、Cross Machine Direction:CD方向(幅方向))に主に加熱収縮する加熱収縮性フィルムを基材11として具備したものである。そのため、この例では、CD方向が収縮の主方向(以下、主収縮方向という。)であり、凹凸パターン12aを形成している筋状の凸部と凹部とは、CD方向と直交する方向(Machine Direction:MD方向)に沿って延びて形成されている。
【0014】
基材11を構成する樹脂(以下、第1の樹脂という。)のガラス転移温度Tg1と、硬質層12を構成する樹脂(以下、第2の樹脂という。)のガラス転移温度Tg2との差(Tg2−Tg1)は10℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがより好ましく、30℃以上であることがさらに好ましい。(Tg−Tg)の差が10℃以上であることにより、TgとTgの間の温度で容易に積層フィルムを加熱収縮することができる。このようにTgとTgの間の温度を加熱収縮温度(すなわち、後述の収縮工程の温度。)とすると、基材11のヤング率が硬質層12のヤング率より高くなる条件で加熱収縮させることができ、その結果、硬質層12に凹凸パターン12aを容易に形成できる。
以下、ヤング率は、JIS K 7113−1995に準拠して測定した値である。
【0015】
また、(Tg2−Tg1)は、Tg2が400℃を超えるような樹脂を使用することは経済性の面から必要に乏しく、Tg1が−150℃より低い樹脂は存在しないことから、550℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましい。
加熱収縮温度における基材11と硬質層12とのヤング率の差は、凹凸パターン12aを容易に形成できることから、0.01〜300GPaであることが好ましく、0.1〜10GPaであることがより好ましい。
【0016】
第1の樹脂のガラス転移温度Tgは−150〜300℃であることが好ましく、−120〜200℃であることがより好ましい。ガラス転移温度Tg1が−150℃より低い樹脂は存在せず、第1の樹脂のガラス転移温度Tg1が300℃以下であれば、加熱収縮温度を容易に設定することができるためである。
【0017】
後述の収縮工程の温度、すなわち加熱収縮温度における第1の樹脂のヤング率は0.01〜100MPaであることが好ましく、0.1〜10MPaであることがより好ましい。第1の樹脂のヤング率が0.01MPa以上であれば、基材として使用可能な硬さであり、100MPa以下であれば、硬質層12が変形する際に同時に追従して変形可能な軟らかさである。
【0018】
第1の樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、スチレン−ブタジエンブロック共重合体等のポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン樹脂、フッ素樹脂、ABS樹脂、ポリアミド、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィンなどの樹脂が挙げられる。
【0019】
第2の樹脂のガラス転移温度Tgは40〜400℃であることが好ましく、80〜250℃であることがより好ましい。第2の樹脂のガラス転移温度Tg2が40℃以上であれば、加熱収縮温度を室温またはそれ以上にすることができて有用であり、ガラス転移温度Tg2が400℃を超えるような樹脂を第2の樹脂として使用することは経済性の面から必要性に乏しいためである。
【0020】
加熱収縮温度における第2の樹脂のヤング率は0.01〜300GPaであることが好ましく、0.1〜10GPaであることがより好ましい。第2の樹脂のヤング率が0.01GPa以上であれば、加熱収縮温度において第1の樹脂のヤング率より充分な硬さが得られ、凹凸パターン12aが形成された後、凹凸パターン12aを維持するのに充分な硬さであり、ヤング率が300GPaを超えるような樹脂を第2の樹脂として使用することは経済性の面から必要性に乏しいためである。
【0021】
第1の樹脂の種類にもよるが、第2の樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、フッ素樹脂などの樹脂を使用することができる。これらの中で、防汚機能を兼ね備えた点では、フッ素樹脂が好ましい。また、配向度を高めるために、2種以上の樹脂を併用してもよい。また、表面微細凹凸体10を例えば反射防止体に用いる場合には、硬質層12の屈折率を基材11よりも低くすると、反射防止特性が向上するために好ましい。
【0022】
また、第2の樹脂として、重量平均分子量が20万以上の熱可塑性樹脂や、分散度が2以上の熱可塑性樹脂を使用すると、後の延伸工程において硬質層12に亀裂が生じにくい。また、重量平均分子量が20万以上で、かつ、分散度が2以上の熱可塑性樹脂を使用すると、後の延伸工程における硬質層12での亀裂の発生をより抑制することができる。ここで、好ましい重量平均分子量の上限は500万で、分散度の上限は10である。
なお、分散度とは、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比:Mw/Mnである。
【0023】
このような熱可塑性樹脂を製造する方法としては、詳しくは後述するラジカル溶液重合が好適である。ここで、ラジカル溶液重合とは、溶媒中、ビニル基を有するビニル系単量体をラジカル重合することである。
【0024】
基材11の厚みは、0.3〜500μmであることが好ましい。基材11の厚みが0.3μm以上であれば、表面微細凹凸体10が破れにくくなり、500μm以下であれば、表面微細凹凸体10を容易に薄型化できる。また、基材11を支持するために、厚さ5〜500μmの樹脂製の支持体をさらに別途設けてもよい。
【0025】
硬質層12の厚みは、形成される凹凸パターン12aのピッチ、深さなどに影響を与えるため、表面微細凹凸体10の用途などに応じて適宜決定される。
例えば、表面微細凹凸体10が反射防止体に使用される場合には、1〜100nmの範囲が好ましく、異方性拡散体に使用される場合には、0.05〜5μmの範囲が好ましく、ワイヤーグリッド偏光子に使用される場合には、1〜100nmの範囲が好ましい。このような硬質層12の厚みであれば、それぞれの用途に応じた適切なサイズの凹凸パターン12aを形成することができる。
また、基材11と硬質層12との間には、密着性の向上やより微細な構造を形成することを目的として、プライマー層を形成してもよい。 また、硬質層12の上には、樹脂層を設けてもよい。
【0026】
凹凸パターン12aの最頻ピッチは、表面微細凹凸体10の用途などに応じて適宜設定できる。
具体的には、表面微細凹凸体10の用途が例えば異方性拡散体の場合には、1〜20μmが好適である。また、このような光拡散体用途である場合に、最頻ピッチが1μmを超え、5μm以下であると、ギラツキが抑制され、視認性に優れた光拡散体とすることができる。一方、表面微細凹凸体10の用途が反射防止体やワイヤーグリッド偏光子の場合には、0.2μm以下が好適である。また、凹凸パターン12aを容易に形成できる点からは、好ましくは0.05μm以上である。
【0027】
ここで、最頻ピッチは、各ピッチA,A,A・・・の平均値である。なお、凹凸パターンが一方向ではなく二次元に広がる場合には、凹凸パターンの画像をフーリエ変換する方法で最頻ピッチを求める。
すなわち、凹凸パターンについて、原子間力顕微鏡、レーザー顕微鏡などによりHeight像を観察(グレースケール画像に変換する)し、その観察したグレースケール画像をフーリエ変換する。このフーリエ変換像は、フーリエ変換像のX−Y座標面上に、頻度が濃淡で表される。これには凹凸パターン12aのピッチおよび配向の情報が含まれる。
ついで、このフーリエ変換のZ軸情報の頻度について、必要に応じてスムージングを行う。フーリエ変換像の中心部を除く部分の最大頻度を示す位置(XFmax、YFmax)から、最頻ピッチA=1/{√(XFmax+YFmax)}を求める。なお、最頻ピッチは、各ピッチの平均値とみてもよい。
【0028】
凹凸パターン12aの各ピッチA,A,A・・・はいずれも、最頻ピッチAの±60%の範囲内にあることが好ましく、±30%の範囲内にあることがより好ましい。各ピッチが最頻ピッチAの±60%の範囲内にあれば、ピッチが均一となり、光学素子としてより優れた性能を発揮する。
また、各ピッチA,A,A・・・は、連続的に変化しても構わない。
【0029】
また、凹凸パターン12aの平均深さHは、最頻ピッチAを100%とした際の10%以上であり、好ましくは100%以上である。また、平均深さHは、凹凸パターン12aを容易に形成できる点から、好ましくは最頻ピッチAを100%とした際の500%以下である。
平均深さHとは、凹凸パターンの凸部のピークから凹部の底までの深さの平均のことを意味し、ここでは次のようにして求める。
すなわち、凹凸パターンを原子間力顕微鏡などにより観察し、その観察から表面微細凹凸体10の断面図(筋状の凸部および凹部と直交する方向に切断した表面微細凹凸体の厚み方向の断面図)を得る。1つの凹部の底までの深さは、両隣の2つの凸部のピークから凹部の底までの距離の和の1/2である。そこで、無作為に抽出した10個以上の各凹部について、このように両隣の2つの凸部のピークから凹部の底までの距離の和を求め、さらにその1/2をそれぞれ求め、得られた値の平均値を平均深さHとする。
【0030】
凹凸パターン12aの各深さH,H,H・・・はいずれも、平均深さHの±60%の範囲内にあることが好ましく、±30%の範囲内にあることがより好ましい。各深さが平均深さHの±60%の範囲内にあれば、深さが均一となり、光学素子としてより優れた性能を発揮する。
また、各深さH,H,H・・・は、平均深さHが最頻ピッチAを100%とした際の10%以上であることを満たした上で、連続的に変化しても構わない。
【0031】
凹凸パターン12aの配向度は0.1未満であることが好ましい。配向度が0.1未満であって配向のばらつきが小さいと、凹凸パターンの異方性が高まり、異方性拡散体やワイヤーグリッド偏光子への使用に適した表面微細凹凸体となる。
配向度は、以下のようにして求められる。
すなわち、上述と同様にしてフーリエ変換像を求め、その最大輝度部分をX−Y座標面のX軸上にθだけ回転させてX軸上に最大輝度部分が一致するようにθ回転したフーリエ変換像を作成し、(XFmax、YFmax)を通るY軸に並行な補助線Y’を引き、補助線Y’を横軸として、補助線Y’上の輝度(Z軸)を縦軸としたY’−Z図を作成する。このY’−Z図のY’軸の値を最頻ピッチの逆数(1/A)で割ったY”−Z図を作成し、Y”−Z図からピークの半値幅W(頻度が最大値の半分になる高さでのピークの幅)を求める。この半値幅Wが配向度である。
【0032】
(表面微細凹凸体の製造方法)
以上説明した表面微細凹凸体10は、加熱収縮性フィルムからなる樹脂製の基材11の少なくとも片面に、樹脂製の硬質層12を設けて積層フィルムを形成する積層フィルム形成工程と、得られた積層フィルムを加熱して基材11を収縮させることにより、硬質層12を折り畳むように変形させ、凹凸パターンを形成する収縮工程と、主収縮方向と直交する方向に沿って、積層フィルムを延伸する延伸工程とを有する方法により製造できる。この方法によれば、特に、配向のばらつきが小さい凹凸パターン12aを備えた表面微細凹凸体10を製造できる。
【0033】
基材11として使用される加熱収縮性フィルムの材質としては、先に第1の樹脂として例示したものを使用できるが、なかでも例えば、ポリエチレンテレフタレート系シュリンクフィルム、ポリスチレン系シュリンクフィルム、ポリオレフィン系シュリンクフィルム、ポリ塩化ビニル系シュリンクフィルムなどが好適である。また、基材11は、加熱収縮前においては、表面が平坦であり、具体的には、JIS B 0601による中心線平均粗さが0.1μm以下であることが好ましい。
【0034】
積層フィルム形成工程では、基材11の少なくとも片面に、硬質層を形成する樹脂の溶液または分散液を塗工し、溶媒を乾燥させる方法や、基材11の少なくとも片面に、あらかじめ作製した硬質層12を積層する方法により、積層フィルムを形成することができる。
ここで硬質層を形成する樹脂としては、上述のとおり、重量平均分子量が20万以上、分散度が2以上の熱可塑性樹脂が好適であり、このような熱可塑性樹脂は、溶媒中、ビニル基を有するビニル系単量体をラジカル重合するラジカル溶液重合により行える。
【0035】
ビニル系単量体としては、スチレン系単量体、アクリル系単量体、アクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、エチレンなどが挙げられる。
さらに、スチレン系単量体としては、例えば、ポリスチレン、α−メチルスチレン等が挙げられる。
アクリル系単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、無水フマル酸等のカルボキシル基含有単量体、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の水酸基含有単量体などが挙げられる。なお、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートの総称である。
溶媒としては、例えば、酢酸エチル、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。
【0036】
重合の際、生産性の点から、ラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。
ラジカル重合開始剤は、単独で開裂して遊離ラジカルを生成するものである。生成したラジカルはビニル基への付加反応および水素引き抜き反応をすることで重合反応を起こす。ラジカル重合開始剤としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ジ(4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2.5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジイソブチリルパーオキサイド、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジアウロイルパーオキサイド、ジコハク酸パーオキサイド、ジ−(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジ(4−メチルゼンゾイル)パーオキサイド、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネートなどが挙げられる。これらラジカル重合開始剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
また、重合の際、必要に応じて、分子量を調整するための連鎖移動剤(例えば、アルキルチオール、αメチルスチレンダイマー等)を用いてもよいし、重合体を架橋するための架橋剤(例えば、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート等)を用いてもよい。
【0038】
重合温度は、温度制御可能な温度であれば特に制限されず、例えば、50〜120℃である。しかし、重合速度が速い場合には、50℃以下で重合しても構わないし、溶媒の沸点以上で重合しても構わない。溶媒の沸点以上で重合する場合には、反応器の上に精留器を設けて蒸発した溶媒を冷却して還流させる。
【0039】
このようにして積層フィルム形成工程を行った後、得られた積層フィルムを加熱して基材11を収縮させることにより、硬質層12を折り畳むように変形させ、凹凸パターンを形成する収縮工程を行う。
収縮工程では、主収縮方向において、40%以上収縮させることが好ましい。このように収縮率を40%以上とすることによって、光学素子に用いた場合に十分な性能を発揮する表面微細凹凸体10を製造することができる。また、収縮率が大きくなりすぎると、得られる表面微細凹凸体10の面積が小さくなるため、歩留まり上好ましくない。このような観点からは、収縮率の上限は80%が好ましい。
なお、本発明における収縮率とは、(収縮率[%])={(収縮前の長さ)−(収縮後の長さ)}/(収縮前の長さ)×100 である(但し、いずれの長さも収縮の主方向の長さである)。
【0040】
基材11を熱収縮させる際の加熱方法としては、熱風、蒸気または熱水中に通す方法等が挙げられる。
基材11を熱収縮させる際の加熱温度(加熱収縮温度)は、使用する加熱収縮性フィルムの種類および目的とする凹凸パターン12aのピッチ、深さなどに応じて適宜選択することが好ましい。具体的には、硬質層12を構成する第2の樹脂のガラス転移温度Tg2以上の温度でもよいが、好ましくは、上述のとおり、硬質層12を構成するガラス転移温度Tg2と基材11を構成する第1の樹脂のガラス転移温度Tg1との間の温度で行うことが好ましい。このようにTgとTgの間の温度で熱収縮させると、基材11のヤング率が硬質層12のヤング率より高くなる条件で加工でき、その結果、硬質層12に凹凸パターン12aを容易に形成できる。
【0041】
このような収縮工程により、加熱収縮性フィルムが一軸方向に主に熱収縮するものである場合には、この方向(主収縮方向:この例ではCD方向)と直交するMD方向に沿って延びる筋状の凸部と凹部とが形成される。
【0042】
ついで、主収縮方向と直交する方向(MD方向)に沿って、積層フィルムを延伸する延伸工程を行う。このような延伸工程を行うことにより、収縮工程で形成された筋状の凹部および凸部の方向性が延伸方向に沿って向上し、配向のばらつきが抑制され、配向度の小さな凹凸パターンを形成することができる。
延伸温度は、硬質層に亀裂が生じないようにするために、硬質層12を構成する第2の樹脂のガラス転移温度Tg2を超える温度とすることが好ましい。延伸の具体的方法としては、主収縮方向と直交する方向の両端部などを互いに反対方向に引張って、積層フィルムに張力を作用させるなど、公知の方法を採用できる。
延伸倍率は、1〜5倍の範囲であることが好ましい。5倍を超えると、硬質層12に亀裂が生じる可能性がある。
【0043】
以上説明したように、このような表面微細凹凸体10の製造方法では、収縮工程において波状の凹凸パターン12aを形成した後、主収縮方向に直交する方向に沿って、積層フィルムを延伸する延伸工程を備えている。
そのため、得られた表面微細凹凸体10は、筋状の凹部および凸部の方向性が延伸方向に沿って向上し、互いの平行性が良好なものとなる。その結果、配向のばらつきが抑制されて配向度の小さな凹凸パターン12aを備えた表面微細凹凸体10が得られる。このような表面微細凹凸体10を例えば異方性拡散体に使用した場合には、主拡散方向に十分な拡散角度が得られ、例えばワイヤーグリッド偏光子に使用した場合には、十分な偏光特性が得られる。
【0044】
また、本発明の製造方法では、積層フィルムとしてロール状(ウェブ状)などの連続フィルムを用いて、収縮工程と延伸工程とを連続的に行ってもよい。
例えば、積層フィルムとして、CD方向が主収縮方向である連続フィルムを用意し、この連続フィルムを、独立に温度制御が可能な第1〜第3の温度調整ゾーンが直列配置された延伸収縮ラインに供給する。この際、延伸収縮ラインの入口ライン速度よりも出口ライン速度が大きくなるように、ライン速度を調整するとともに、最も前段側である第1の温度調整ゾーンについては収縮工程に適した温度に設定し、第2の温度調整ゾーンについては延伸工程に適した温度に設定し、第3の温度調整ゾーンについては、第1および第2の温度調整ゾーンよりも低温であり、冷却に適した温度に設定する。
このような方法により、第1の温度調整ゾーンで収縮工程を行い、第2の温度調整ゾーンで延伸工程を連続的に行うことで、効率的に表面微細凹凸体10を製造することができる。
【0045】
また、本発明の製造方法では、収縮工程において、加熱収縮性フィルムからなる基材11をその最大収縮率よりも小さな収縮率で主収縮方向に収縮させるとともに、その後、延伸工程を行う前に、主収縮方向が延伸工程での加熱により収縮してしまわないように、収縮工程後の積層フィルムに対して熱セット工程を行ってから、延伸工程を行ってもよい。
このような方法によれば、拡散性(拡散角度)を適度に抑制する一方で異方性を高めることができ、拡散性と異方性とのバランスが適宜調整された異方性拡散体を製造することも可能となる。
【0046】
具体的には、例えば液晶ディスプレイ用途の異方性拡散体には、一方向の視野角は確保され、他方向の視野角は制限されることが求められる。また、携帯電話用途の異方性拡散体には、縦方向の拡散はある程度必要とされるが、横方向の拡散は不要とされる。
このような場合には、拡散性を適度に抑制するために、まず収縮工程において、積層フィルムの基材11をその最大収縮率よりも小さな収縮率で収縮させる。これにより、拡散性(拡散角度)が適度に制御され、かつ、配向度が小さく、ばらつきのない凹部および凸部が形成される。
ここで、最大収縮率よりも小さな収縮率で収縮させる方法としては、積層フィルムの主収縮方向における両端部などをクリップで把持して、互いに反対方向に引っ張るなどして、積層フィルムが最大収縮率まで収縮しないように、収縮とは反対の方向の張力を作用させながら、収縮工程を行う方法が挙げられる。
【0047】
また、ここで最大収縮率とは、積層フィルムに延伸工程を行う場合と同一の加熱条件下で、積層フィルムの基材11をいずれの方向にも張力を作用させない状態で収縮させたときの収縮率である。
【0048】
このように最大収縮率よりも小さな収縮率で収縮し、収縮力が残存した状態の積層フィルムに対して、そのまま延伸工程を行うと、延伸工程での加熱および残存した収縮力により、積層フィルムはさらに収縮してしまう。
そこで、延伸工程を行う前に、積層フィルムの収縮方向における両端部などを互いに反対方向に引っ張るなどして、積層フィルムに張力を作用させた状態で、延伸工程の延伸温度以上に加熱する熱セット工程を行う。このような熱セット工程を行ってから延伸工程を行うと、延伸工程において加熱されても、積層フィルムはそれ以上収縮しない。
ここでの延伸温度は、上述のとおり、硬質層に亀裂が生じないようにするために、硬質層12を構成する第2の樹脂のガラス転移温度Tg2を超える温度とすることが好ましく、加熱収縮温度は、上述したように、硬質層12を構成するガラス転移温度Tg2と基材11を構成する第1の樹脂のガラス転移温度Tg1との間の温度で行うことが好ましい。すなわち、加熱収縮温度をTa、熱セット温度をTb、延伸温度をTcとした場合、Ta<Tc≦Tbとすることが好適である。
【0049】
その結果、拡散性は抑えられる一方で、配向度が非常に小さく、異方性に優れた異方性拡散体を提供することができる。
【0050】
最大収縮率よりも小さな収縮率で主収縮方向に収縮させる際の収縮率は、表面微細凹凸体10の用途などに応じて適宜設定できるが、最大収縮率を100%とした際に、10〜90%の範囲であることが好適である。収縮率がこの範囲を超えると、最大収縮率よりも小さな収縮率で収縮させる効果が得られにくくなる傾向があり、この範囲未満では、光学素子として十分な性能を発揮する凹凸パターンが形成されなくなる可能性がある。
【0051】
なお、以上説明した実施形態では、基材11の片面の全面に硬質層12を設けているが、目的、用途などに応じて、基材の片面の一部に硬質層を設けてもよいし、基材の両面の全部に硬質層を設けてもよいし、基材の両面の一部に硬質層を設けてもよい。
また、基材11に使用する加熱収縮性フィルムとして、一軸方向に主に加熱収縮する加熱収縮性フィルムを用いたが、二軸方向に加熱収縮する加熱収縮性フィルムであってもよい。その場合には、収縮する2方向のうち、より収縮率の大きな方向を主収縮方向とし、収縮工程後の延伸工程では、この主方向に直交する方向に沿って延伸すればよい。
【0052】
[転写体およびその製造方法]
上述の表面微細凹凸体10の凹凸パターンを転写する転写工程を行うことにより、凹凸パターン12aが転写された転写体を製造することができる。
転写体としては、上述の表面微細凹凸体10の凹凸パターン12aが転写された樹脂シート状の転写体が挙げられる。樹脂製のシート状の転写体は、上述の表面微細凹凸体10と同様に、光学素子などの用途に好適に使用できる。
【0053】
樹脂シート状の転写体は例えば以下のようにして製造することができる。
(a)表面微細凹凸体10の凹凸パターン12aが形成された面に、未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂を塗布する工程と、活性エネルギー線を照射して前記硬化性樹脂を硬化させた後、硬化した塗膜を表面微細凹凸体10から剥離する工程とを有する方法。ここで、活性エネルギー線とは、通常、紫外線または電子線のことであるが、本明細書においては、可視光線、X線、イオン線等も含むものとする。
(b)表面微細凹凸体10の凹凸パターン12aが形成された面に、未硬化の液状熱硬化性樹脂を塗布する工程と、加熱して前記液状熱硬化性樹脂を硬化させた後、硬化した塗膜を表面微細凹凸体10から剥離する工程とを有する方法。
(c)表面微細凹凸体10の凹凸パターン12aが形成された面に、シート状の熱可塑性樹脂を接触させる工程と、該シート状の熱可塑性樹脂を表面微細凹凸体10に押圧しながら加熱して軟化させた後、冷却する工程と、その冷却したシート状の熱可塑性樹脂を表面微細凹凸体10から剥離する工程とを有する方法。
【0054】
また、表面微細凹凸体10を用いて、この表面微細凹凸体10の凹凸パターン12aが転写された金属製などの2次工程用成形物を作製し、その2次工程用成形物を型(スタンパー)として用いて、樹脂製のシート状の転写体を製造することもできる。2次工程用成形物としては、表面微細凹凸体10を凹凸パターン12aが内側になるように筒状に丸めて、これを円筒の内側に貼り付け、その円筒の内側にロールを挿入した状態でめっきし、円筒から取り出して得ためっきロールが挙げられる。その他の2次工程用成形物としては、例えばシート状の2次工程シートが挙げられる。
2次工程用成形物を用いる具体的な方法としては、下記(d)〜(f)の方法が挙げられる。
【0055】
(d)表面微細凹凸体10の凹凸パターン12aが形成された面に、ニッケル等の金属めっきを行って、めっき層(凹凸パターン転写用材料)を積層する工程と、そのめっき層を表面微細凹凸体から剥離して、金属製の2次工程用成形物を作製する工程と、次いで、2次工程用成形物の凹凸パターンと接していた側の面(凹凸パターンが転写された面)に、未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂を塗布する工程と、活性エネルギー線を照射して前記硬化性樹脂を硬化させた後、硬化した塗膜を2次工程用成形物から剥離する工程とを有する方法。
(e)表面微細凹凸体10の凹凸パターン12aが形成された面に、めっき層(凹凸パターン転写用材料)を積層する工程と、そのめっき層を表面微細凹凸体10から剥離して、金属製の2次工程用成形物を作製する工程と、該2次工程用成形物の凹凸パターンと接していた側の面(凹凸パターンが転写された面)に、未硬化の液状熱硬化性樹脂を塗布する工程と、加熱により該樹脂を硬化させた後、硬化した塗膜を2次工程用成形物から剥離する工程とを有する方法。
(f)表面微細凹凸体10の凹凸パターン12aが形成された面に、めっき層(凹凸パターン転写用材料)を積層する工程と、そのめっき層を表面微細凹凸体10から剥離して、金属製の2次工程用成形物を作製する工程と、該2次工程用成形物の凹凸パターンと接していた側の面(凹凸パターンが転写された面)に、シート状の熱可塑性樹脂を接触させる工程と、該シート状の熱可塑性樹脂を2次工程用成形物に押圧しながら加熱して軟化させた後、冷却する工程と、その冷却したシート状の熱可塑性樹脂を2次工程用成形物から剥離する工程とを有する方法。または、前記と同様の方法で作製した2次工程用成形物の凹凸パターンと接していた側の面(凹凸パターンが転写された面)に、溶融状態の熱可塑性樹脂を接触させる工程と、溶融状態の熱可塑性樹脂を冷却しシート状とする工程と、その冷却したシート状の熱可塑性樹脂を2次工程用成形物から剥がす工程とを有する方法。
【0056】
(a)の方法の具体例について説明する。まずウェブ状の表面微細凹凸体10の凹凸パターン12aが形成された面に、未硬化の液状活性エネルギー線硬化性樹脂を塗布する。塗布方式は、硬質層が樹脂よりなる場合に挙げた塗布方式を用いることができる。次いで、該硬化性樹脂を塗布した表面微細凹凸体10を、対ロール間に通すことにより押圧して、前記硬化性樹脂を表面微細凹凸体10の凹凸パターン12a内部に充填する。その後、活性エネルギー線照射装置により活性エネルギー線を照射して、硬化性樹脂を架橋・硬化させる。そして、硬化後の活性エネルギー線硬化性樹脂を表面微細凹凸体10から剥離させることにより、転写体を製造することができる。
【0057】
(a)の方法において、表面微細凹凸体10の凹凸パターン12aが形成された面には、離型性を付与する目的で、未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂塗布前に、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等からなる層を1〜10nm程度の厚さで設けてもよい。
未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂としては、エポキシアクリレート、エポキシ化油アクリレート、ウレタンアクリレート、不飽和ポリエステル、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ビニル/アクリレート、ポリエン/アクリレート、シリコンアクリレート、ポリブタジエン、ポリスチリルメチルメタクリレート等のプレポリマー、脂肪族アクリレート、脂環式アクリレート、芳香族アクリレート、水酸基含有アクリレート、アリル基含有アクリレート、グリシジル基含有アクリレート、カルボキシ基含有アクリレート、ハロゲン含有アクリレート等のモノマーの中から選ばれる1種類以上の成分を含有するものが挙げられる。未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂は溶媒等で希釈することが好ましい。
また、未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂には、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等を添加してもよい。
未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂を紫外線により硬化する場合には、未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂にアセトフェノン類、ベンゾフェノン類等の光重合開始剤を添加することが好ましい。
また、未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂には、硬化後の硬度を上昇させる目的で、多官能(メタ)アクリレートモノマーおよびオリゴマーの少なくとも一方を使用してもよい。また、反応性無機酸化物粒子および/または反応性有機粒子を含有してもよい。
【0058】
未硬化の液状活性エネルギー線硬化性樹脂を塗布した後には、樹脂、ガラス等からなる貼合基材を貼り合わせてから活性エネルギー線を照射してもよい。活性エネルギー線の照射は、貼合基材、表面微細凹凸体10の活性エネルギー線透過性を有するいずれか一方から行えばよい。
【0059】
硬化後の活性エネルギー線硬化性樹脂のシートの厚みは0.1〜100μm程度とすることが好ましい。硬化後の活性エネルギー線硬化性樹脂のシートの厚みが0.1μm以上であれば、充分な強度を確保でき、100μm以上であれば、充分な可撓性を確保できる。
【0060】
上記の方法では、表面微細凹凸体10としてウェブ状のものを用いているため、大面積で連続的に凹凸パターン12aを形成させることができる。よって、表面微細凹凸体10の繰り返し使用回数が少なくても、必要な量のシート状の転写体を短時間に製造できる。
なお、表面微細凹凸体10は、枚葉のシートであってもよい。枚葉のシートを用いる場合、枚葉のシートを平板状の型として使用するスタンプ法、枚葉のシートをロールに巻きつけて円筒状の型として使用するロールインプリント法等を適用できる。また、射出成形機の型の内側に枚葉の表面微細凹凸体10を配置させてもよい。
【0061】
(b),(e)の方法において、液状熱硬化性樹脂としては、例えば、未硬化の、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
また、(b)の方法における硬化温度は、表面微細凹凸体10のガラス転移温度より低いことが好ましい。硬化温度が表面微細凹凸体10のガラス転移温度以上であると、硬化時に転写体の凹凸パターン12aが変形するおそれがあるからである。
【0062】
(c),(f)の方法において、熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリエステル等が挙げられる。
シート状の熱可塑性樹脂を2次工程用成形物に押圧する際の圧力は1〜100MPaであることが好ましい。押圧時の圧力が1MPa以上であれば、凹凸パターンを高い精度で転写させることができ、100MPa以下であれば、過剰な加圧を防ぐことができる。
また、(c)の方法における熱可塑性樹脂の加熱温度は、表面微細凹凸体10のガラス転移温度より低いことが好ましい。加熱温度が表面微細凹凸体10のガラス転移温度以上であると、加熱時に表面微細凹凸体10の凹凸パターン12aが変形するおそれがあるからである。
加熱後の冷却温度としては、凹凸パターン12aを高い精度で転写させることができることから、熱可塑性樹脂のガラス転移温度未満であることが好ましい。
【0063】
(a)〜(c)の方法の中でも、加熱を省略でき、表面微細凹凸体の凹凸パターンの変形を防止できる点で、活性エネルギー線硬化性樹脂を使用する(a)の方法が好ましい。
【0064】
(d)〜(f)の方法においては、金属製の2次工程用成形物の厚さを50〜500μm程度とすることが好ましい。金属製の2次工程用成形物の厚さが50μm以上であれば、2次工程用成形物が充分な強度を有し、500μm以下であれば、充分な可撓性を確保できる。(d)〜(f)の方法では、熱による変形が小さい金属製の2次工程用成形物を型として用いて、転写体を製造する方法であるため、転写体の材料として、活性エネルギー線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも好適に使用できる。
【0065】
なお、(d)〜(f)では、2次工程用成形物として金属製のものを用いたが、表面微細凹凸体10の凹凸パターン12aを樹脂に転写させて、樹脂製の2次工程用成形物を得てもよい。その場合に使用できる樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスルホン、(a)の方法で使用する活性エネルギー線硬化性樹脂などが挙げられる。活性エネルギー線硬化性樹脂を用いる場合には、(a)の方法と同様に、活性エネルギー線硬化性樹脂の塗布、硬化、剥離を順次行って、2次工程用成形物を得る。
【0066】
このようにして得られた樹脂シート状の転写体には、凹凸パターンが転写された面と反対側の面にも凹凸パターンを形成してもよい。
【0067】
[光学素子]
以上説明した樹脂シート状の転写体は、例えば、異方性拡散体、ワイヤーグリッド偏光子、位相差板、反射防止体などの光学素子に好適に使用されるほか、液晶の配向を制御するための基板としても好適に使用される。
異方性拡散体に使用する場合には、転写体の片面または両面に、他の層を備えてもよい。例えば、凹凸パターンが形成されている側の面に、その面の汚れを防止するために、フッ素樹脂またはシリコーン樹脂を主成分として含有する厚さ1〜5nm程度の防汚層を備えてもよい。
また、凹凸パターンが形成されていない側の面には、透明樹脂製あるいはガラス製の支持体が備えられていてもよい。さらに、凹凸パターンが形成されていない側の面に粘着剤層が形成されていてもよく、機能性を適宜持たせるために色素を含んでもよい。
上述した凹凸パターンが表面に形成された転写体を備えた異方性拡散体は、優れた異方性を備える。
【0068】
異方性拡散体の場合、好適な凹凸パターンの最頻ピッチは、上述のとおり、1〜20μmが好適である。また、このような光拡散体用途である場合に、最頻ピッチが1μmを超え、5μm以下であると、ギラツキが抑制され、視認性に優れた光拡散体とすることができる。また、好適な平均深さは、0.2〜10μmである。
【0069】
異方性拡散体などの光拡散体においては、より光拡散効果を高める目的で、光透過率等の光学特性を大きく損なわない範囲内で、無機化合物からなる光拡散剤、有機化合物からなる有機光拡散剤を転写体に含有させることができる。
無機光拡散剤としては、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ガラス、マイカ等が挙げられる。
有機光拡散剤としては、スチレン系重合体粒子、アクリル系重合体粒子、シロキサン系重合体粒子等が挙げられる。これらの光拡散剤はそれぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
光拡散剤の含有量は、光透過性を損ないにくいことから、転写体を構成する樹脂100質量部に対して10質量部以下であることが好ましい。
【0070】
また、転写体には、より拡散効果を高める目的で、光透過率等の光学特性を大きく損なわない範囲内で、微細気泡を含有させることができる。微細気泡は、光の吸収が少なく光透過率を低下させにくい。
微細気泡の形成方法としては、転写体に発泡剤を混入する方法(例えば、特開平5−212811号公報、特開平6−107842号公報に開示された方法)や、アクリル系発泡樹脂を発泡処理させて微細気泡を含有する方法(例えば、特開2004−2812号公報に開示された方法)などを適用できる。さらに微細気泡は、より均一な面照射が可能となる点では、特定の位置に不均一に発泡させる方法(例えば、特開2006−124499号公報に開示された方法)が好ましい。
なお、前記光拡散剤と微細発泡を併用することもできる。
【0071】
また、拡散性を高くするために、微細気泡を含有させたフィルムを凹凸パターンの形成されていない側に貼付してもよい。
【0072】
なお、異方性拡散体には、転写体ではなく、表面微細凹凸体10を用いることもでき、その場合、基材11に対して、光拡散剤や微細気泡を含有させることができる。
【0073】
反射防止体に使用する場合には、転写体の片面か両面に、他の層を備えてもよい。例えば、凹凸パターンが形成されている側の面には、その面の汚れを防止するために、フッ素樹脂またはシリコーン樹脂を主成分として含有する厚さ1〜5nm程度の防汚層を備えてもよい。
また、凹凸パターンが形成されていない側の面には、例えば、反射防止体の基材として、例えばトリアセチルセルロース等の樹脂製のシートなどが備えられていてもよい。
【0074】
このような反射防止体は、波状の凹凸パターンの部分にて、空気の屈折率と転写体の屈折率の間の中間屈折率を示し、その中間屈折率が連続的に変化する。そして、例えば凹凸パターンの最頻ピッチAを0.2μm以下とし、凹凸パターンの平均深さHについては、最頻ピッチAを100%とした際の10%以上とすることによって、光の反射率を特に低くでき、具体的には、反射率をほぼ0%にできる。これは、中間屈折率が連続的に変化する部分が厚さ方向に長くなり、光の反射を抑制する効果が顕著に発揮されるためである。反射防止体用途の場合の凹凸パターンの具体的な平均深さは、0.1〜0.4μmが好適である。
【0075】
このような反射防止体は、例えば、液晶表示パネルやプラズマディスプレイ等の画像表示装置、発光ダイオードの発光部先端、太陽電池パネルの表面などに取り付けられる。
画像表示装置に取り付けた場合には、照明の映りこみを防止できるため、画像の視認性が向上する。発光ダイオードの発光部先端に取り付けた場合には、光の取り出し効率が向上する。太陽電池パネルの表面に取り付けた場合には、光の取り込み量が多くなるため、太陽電池の発電効率が向上する。
反射防止体には、転写体ではなく、表面微細凹凸体10を用いることもできる。
【0076】
樹脂シート状の転写体をワイヤーグリッド偏光子に使用する場合には、凹凸パターンの筋状の凹部および凸部に沿う方向に、複数本の金属細線を設けることが必要である。
ワイヤーグリッド偏光子は、光の一方の偏光成分を透過し、他方を反射する反射型の偏光子である。ワイヤーグリッド偏光子は、平行に配置された多数の金属細線に垂直に振動する光を透過し、金属細線に平行に振動する光を反射する特性を有する。ワイヤーグリッド偏光子が偏光特性を示すのは、金属細線の周期が使用する光の波長より十分に短い場合である。
また、ワイヤーグリッド偏光子用途の場合には、最頻ピッチは、上述のように、0.2μm以下が好適である。また、好適な平均深さは、0.1〜0.4μmである。
【0077】
金属細線は、金属系蒸着層またはナノ金属塗布層からなるものが好ましい。
金属系蒸着層の金属種としては、蒸着できる金属であれば公知のものを使用でき、ゲルマニウム、スズ、シリコン等の半金属やITO(酸化インジウム−スズ)などの金属化合物も含む。具体的には、金、アルミニウム、銀、炭素、銅、ゲルマニウム、インジウム、マグネシウム、ニオブ、パラジウム、鉛、白金、シリコン、スズ、チタン、バナジウム、亜鉛、ビスマス、ITOよりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。より好ましくはアルミニウム、ニッケル、亜鉛、スズ、クロム、コバルト、金、銀、銅、ITOであり、特に好ましくは値段、金属光沢の安定性等の理由によりアルミニウムおよび/またはニッケルである。
金属系蒸着層の表面は、空気暴露により酸化されていても構わない。
【0078】
金属系蒸着層からなる複数本の金属細線を形成する方法としては、斜方蒸着が好ましい。斜方蒸着によれば、転写体の凹凸パターンの凸部近傍のみに金属系蒸着層を設けることができ、凹部近傍には蒸着層が無いか、ほとんど無い部分を作り出すことができる。この場合、斜方蒸着角が大きければ、より凸部近傍のみに蒸着層を設けることができ、得られるワイヤーグリッド偏光子の偏光特性を向上することができる。
【0079】
具体的には、斜方蒸着角は、30°以上であることが好ましく、40°以上がより好ましく、55°以上が更に好ましく、70°以上であれば特に好ましい。一方、斜方蒸着角の上限は90°であるが、蒸着の効率が悪くなることから、80°未満であることが好ましい。
ここで斜方蒸着角は、図2に示すように、金属の蒸着源Pと蒸着される場所Qを結んだ直線(以下、J線と呼ぶ。)と、蒸着される場所Qを通るシート法線方向の直線(シート面に対して直交する線。以下、H線と呼ぶ。)とのなす角度(J線とH線のなす角)αのことであり、J線とH線が一致する場合は斜方蒸着角が0°である。なお、ここでシート法線方向とは、表面微細凹凸体10全体または転写体全体としてのシート面に対する法線方向のことであり、各凹部や各凸部に対応した各々の法線のことではない。
【0080】
また、J線から表面微細凹凸体10または転写体の表面に垂線を落とした軌跡のシート面内の線(以下、I線と呼ぶ。)と、凹部および凸部に沿う方向とのなす角が好ましくは60°〜120°、より好ましくは80°〜100°であれば、凹凸パターン12aの凸部近傍のみに金属系蒸着層を効率的に設けることができる。仮にこの範囲でない場合は、得られるワイヤーグリッド偏光子の偏光特性が十分でないことがある。
【0081】
蒸着は1回以上行えばよく、必要に応じて複数回行うこともできる。また、蒸着する材料を少なくとも1種以上、つまり複数種使うこともできる。複数回蒸着する場合には、必要に応じて、金属以外の有色物質を蒸着してもよい。有色物質としては、例えば、カーボン、フタロシアニン類、アニリン類を好ましく挙げることができ、特に好ましくはカーボンである。
【0082】
蒸着は、転写体が枚葉であるバッチ式蒸着であっても、ウェブ状などの連続フィルムであるロールツーロール式蒸着であっても構わない。このような連続蒸着の場合には、蒸着源が例えば樹脂シート状の転写体の幅方向に沿って一直線上に配置されていると、幅方向に均一に蒸着が行える点で好ましい。
また、斜方蒸着したシート状の転写体を該転写体の中心を軸として180°回転させて、再度蒸着することもできる。例えば、ロールツーロール式蒸着の場合は、シート搬送方向と凹部および凸部に沿う方向とが一致する場合、あるいはこれらの方向がなす角が45°以下の場合は、斜方蒸着したシートを180°回転させて、再度蒸着することが、得られる偏光板の偏光特性の面内均一性の観点から好ましい。なお、ここで「180°回転させて再度蒸着する」とは、斜方蒸着角αで蒸着した後、斜方蒸着角−αで蒸着することと同じことである。
【0083】
蒸着方式としては、物理蒸着方式、化学蒸着方式などの公知の蒸着方式を挙げることができる。物理蒸着方式としては、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、高周波誘導蒸着、分子線エピタキシー蒸着、イオンプレーティング蒸着、イオンビームデポジション蒸着、スパッタ蒸着等を好ましく挙げることができる。また、化学蒸着方式としては、熱CVD、プラズマCVD、光CVD、エピタキシャルCVD、アトミックレイヤーCVD、有機金属気相成長法、触媒化学気相成長法等を好ましく挙げることができる。特に好ましい蒸着方式は、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタ蒸着である。
【0084】
金属系蒸着層の厚さは、1〜100nmであることが好ましく、斜方蒸着角を0〜30°で設けた場合はより好ましくは1〜30nmであり、特に好ましくは5〜20nmであり、斜方蒸着角30〜90°で設けた場合はより好ましくは5〜100nmであり、特に好ましくは10〜60nmである。金属系蒸着層の厚さが薄すぎると、十分な金属光沢が得られない場合があり、厚過ぎる場合は、得られるワイヤーグリッド偏光子の光透過率が十分には得られないことがある。
【0085】
ナノ金属塗布層から複数本の金属細線を形成する場合には、凹凸パターンの凹部のみにナノ金属塗布層を形成すればよい。
【0086】
ナノ金属塗布層の金属種としては、ナノ金属であれば公知の如何なるものも使用できる。好ましくは、ナノ銀、ナノ金、ナノ銅、ナノ白金であり、特に好ましくはナノ銀である。ナノ金属とは、平均粒径0.1〜200nmである金属分散体であることが好ましく、より好ましくは1〜100nm、特に好ましくは5〜70nmである。粒子径が大きすぎると得られるワイヤーグリッド偏光子の偏光特性が十分でない場合がある。ナノ金属塗布層の表面は、空気暴露により酸化されていても構わない。
ナノ金属塗布層は公知の塗布方式により形成することができる。例えば、エアナイフコーティング、ロールコーティング、ブレードコーティング、メイヤーバーコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティング、キャストコーティング、カーテンコーティング、ダイスロットコーティング、ゲートロールコーティング、サイズプレスコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング等を好ましく挙げることができる。
【0087】
ナノ金属塗布層は、ナノ金属分散液を塗布乾燥後、金属光沢を強く得る為に焼成(熱処理)することが好ましい。ただし、焼成工程は、表面微細凹凸体10または転写体に熱的なダメージを与える可能性がある。その点、金属系蒸着層では、蒸着後の焼成工程は不要であるため、金属蒸着層から金属細線を形成することが好ましい。
【0088】
なお、このように金属細線を形成するにあたっては、密着性向上等の必要性に応じて、硬質層上にプライマー層を予め設けておいてもよい。また、金属細線を形成した後には、必要に応じて、金属細線の酸化を防止する目的で、SiOなどの公知の酸化防止層、擦傷性向上のための公知のハードコート層などを設けることができる。
また、ワイヤーグリッド偏光子には、必要に応じて公知の粘着層、反射防止層、拡散層、視野角補正層(液晶ディスプレーにこの偏光板を用いる場合は、例えばディスコティク液晶を斜め配向した視野角補正層、コレステリック液晶を用いた視野角補正層、棒状の液晶を配向させた視野角補正層等を設けることもできる。)を設けることができる。また位相差板、その他機能向上のため各種フィルム等を貼り合わせて用いたり、組み合わせて用いたりすることもできる。
【0089】
上述のワイヤーグリッド偏光子は、可視光(400〜700nm)で用いることが好ましく、この範囲であれば偏光特性を発揮する。波長の短い紫外領域では基材の樹脂が変質することがあり、耐久性の面で問題が生じ易く、波長の長い赤外領域では、基材の樹脂の吸収があるため、十分な偏光特性を得ることが難しくなることがある。
また、このワイヤーグリッド偏光子は、公知の各種フラットパネルディスプレーに好ましく用いることができる。より好ましくは、液晶ディスプレー(LCD)、有機ELディスプレー、無機ELディスプレーである。従来からのヨウ素吸収型偏光板あるいは染料吸収型偏光板に変えて、これらのディスプレーに上述のワイヤーグリッド偏光子を用いることにより、輝度を向上させることができる。これは上述のワイヤーグリッド偏光子がS波(またはP波のどちらか)を選択的に反射するため、その反射されたS波(またはP波)を再度位相変換し透過可能なP波(またはS波)として有効利用できるからである。このワイヤーグリッド偏光子は、従来からのヨウ素吸収型偏光板あるいは染料吸収型偏光板と組み合わせて、必要に応じて貼り合わせるなどして、用いることもできる。
【0090】
ワイヤーグリッド偏光子を液晶ディスプレーに用いる場合は、液晶セルの両面に用いることもできるし、片面に用いることもできる。片面に用いる場合は、見る人側ではなく、バックライト側または裏面側に用いるのが好ましい。バックライト側または裏面側に用いることにより写りこみを軽減できるためである。
【0091】
また、樹脂シート状の転写体に複数本の金属細線を設けたものは、ワイヤーグリッド偏光子としてではなく、輝度向上フィルムとして用いることもできる。例えば、液晶ディスプレーであれば、バックライトユニットに組み込むこともできる。この場合の光源は如何なる公知のもの(例えば、熱陰極管、冷陰極管、LED)でも構わない。また、バックライトユニットに用いる公知の機能性フィルムと併用することができる。このような機能性フィルムとしては、例えば、反射板、導光板、拡散板、拡散シート、プリズムシート等を挙げることができる。
ワイヤーグリッド偏光子には、転写体ではなく、表面微細凹凸体10を用いることもできる。
【0092】
[その他]
以上説明した表面微細凹凸体の形態は上述した実施形態に限定されない。例えば、波状に繰り返される周期的な凹凸パターンの形成方向は、表面微細凹凸体のCD方向でもMD方向でもよい。また、基材11としては、一軸方向に主に加熱収縮する加熱収縮性フィルムを用いることが好適であるが、主収縮方向と直交する方向にも多少収縮するものを用いて、主収縮方向に沿う方向に延びる凹部と凸部とを備えた表面微細凹凸体としてもよい。また、凸部の形状は屈折率の点では、先端が尖っていることが好ましいが、先端が丸みを帯びていても構わない。また、表面微細凹凸体の形状はシート状の他、板状など他の形状であってもよい。
また、基材と硬質層の間には、密着性向上等の必要性に応じて、プライマー層が設けられていてもよい。
【実施例】
【0093】
以下、本発明について、実施例を挙げて具体的に説明する。
<製造例1>
(積層フィルム形成工程)
基材として、表面が平坦で、一軸方向(CD方向)に主に加熱収縮する厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートシュリンクフィルム(三菱樹脂社製ヒシペットLX−61S、ガラス転移温度70℃)を用いた。この片面に、ポリメタクリル酸メチル(藤倉化成社製、AcrybaseMH−101−10、重量平均分子量56万、分散度3.4、ガラス転移温度100℃)をトルエンに希釈した液をグラビアコーティングにて塗工して硬質層を形成し、表面が平坦な積層フィルムを得た。この際、硬質層は、乾燥後の塗工厚さが3μmになるよう塗工して形成した。
なお、重量平均分子量および重合分散度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィを用いて測定した。分子量の標準物質としては既知の分子量のポリスチレンを用いた。測定には、カラムとして、東ソー社製TSKgel HZシリーズを用い、また、溶離液としてTHFを使用し、流速0.35ml/分、温度40℃の条件により行った。
また、ガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)を使用して測定した。
【0094】
(収縮工程)
次に、この積層フィルムを1m角に断裁したものを80℃の乾燥機に1分間入れて加熱収縮を行った。収縮後の積層フィルムは48cm(主収縮方向)×95cm(主収縮方向に直交する方向)の大きさであった。
主収縮方向の収縮率は、52%であった。
収縮後の積層フィルムの硬質層側の表面をレーザー顕微鏡にて観察したところ、表面微細凹凸構造(平均深さH18μmの凹凸パターン)が形成されていた。なお、平均深さHは、レーザー顕微鏡測定より得られる断面画像にて、凹凸パターンの凸部のピークから凹部の底までの深さを10箇所について測定した平均値である。
【0095】
上述のレーザー顕微鏡画像から、既に説明した方法により最頻ピッチAを求めた。
すなわち、レーザー顕微鏡画像をグレースケール画像に変換した後、2次元フーリエ変換を行った。このフーリエ変換像の頻度(Z)のスムージングを行い、フーリエ変換像の中心部を除く部分の最大頻度を示す位置(XFmax、YFmax)から最頻ピッチA=1/{√(XFmax+YFmax)}を求めた。その結果、最頻ピッチAは22μmであった。
続いて、このフーリエ変換画像を用いて、既に説明した方法により配向度を求めた。
すなわち、フーリエ変換像の最大輝度部分をX−Y座標面のXF軸上にθだけ回転させてXF軸上に最大輝度部分が一致するようにθ回転したフーリエ変換像を作成し、(XFmax、YFmax)を通るY軸に並行な補助線Y’を引き、補助線Y’を横軸として、補助線Y’上の輝度(ZF軸)を縦軸としたY’−Z図を作成した。このY’−Z図のY’軸の値を最頻ピッチの逆数(1/A)で割ったY”−Z図を作成し、Y”−Z図からピークの半値幅W(頻度が最大値の半分になる高さでのピークの幅)を求めた。半値幅、すなわち配向度Wは、0.3であった。
この収縮後の積層フィルムについて、光拡散体としての性能を次のように評価した。すなわち、GENESIA GonioFar Field Profiler(ジェネシア社製)を用いて、拡散角度(FWHM)を測定した。その結果、主拡散方向の拡散角度は30°、主拡散方向と直交する方向の拡散角度は4.5°であった。これらの結果を表1に示す。
【0096】
なお、ここで拡散角度とは、収縮後の積層フィルムの凹凸パターンが形成されていない側の面から、積層フィルム面の法線方向に沿って測定光を入射させ、凹凸パターンが形成された面から出射させ、その照度を測定する際、積層フィルム面の法線方向(この方向を出光角度0°とする)における相対照度を1とした場合に相対照度が0.5以上となる±の角度範囲である。例えば、出光角度が±15°の範囲で相対照度が0.5以上である場合、拡散角度は30°となる。
【0097】
(延伸工程)
得られた収縮後の積層フィルムを120℃の乾燥機中で主収縮方向に直交する方向に延伸した。延伸後のフィルムの大きさは、38cm(主収縮方向)×147cm(延伸方向=主収縮方向に直交する方向)であった。
延伸倍率は、1.5倍であった。
このようにして得られた延伸フィルム(表面微細凹凸体)の硬質層側の凹凸パターンについて、上記と同様にして、平均深さH、最頻ピッチA、配向度Wを求めた。
そして、得られた表面微細凹凸体の光学素子としての拡散性能を上述の方法にて測定したところ、主拡散方向の拡散角度は30°、主拡散方向と直交する方向の拡散角度は1.2°であった。結果を表1に示す。
延伸工程後の表面微細凹凸体は、延伸工程前の積層フィルムよりも、配向度が小さく、そのため、主拡散方向と直交する方向の拡散角度も低下した。すなわち、延伸工程により異方性が向上することが確認できた。
【0098】
(転写体工程(転写体の製造))
次に、得られた表面微細凹凸体の凹凸パターンのニッケル電鋳によりスタンパーを製造し、転写法として射出成型を採用し、アクリル−スチレン樹脂よりなる板厚2mmの拡散板(凹凸パターンを有する転写体)を製造した。
得られた拡散板の凹凸パターンについて、上記と同様にして平均深さH、最頻ピッチA、配向度Wを求めた。結果を表2に示す。
また、拡散角度についても上記と同様にして求めたところ、主拡散方向の拡散角度は28°、主拡散方向と直交する方向の拡散角度は1.2°であった。
【0099】
<製造例2>
(積層フィルム形成工程)
基材として、表面が平坦で、一軸方向(CD方向)に主に加熱収縮する厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートシュリンクフィルム(三菱樹脂社製ヒシペットLX−61S、ガラス転移温度70℃)を用いた。この片面に、ポリスチレン(アルドリッチ社品番182435−25G、重量平均分子量24万、分散度2.0、ガラス転移温度100℃)をトルエンに希釈した液をグラビアコーティングにて塗工して硬質層を形成し、表面が平坦な積層フィルムを得た。この際、硬質層は、乾燥後の塗工厚さが0.7μmになるように塗工して形成した。
【0100】
(収縮工程)
次に、この積層フィルムを1m角に断裁したものを80℃の乾燥機に1分間入れて加熱収縮を行った。収縮後の積層フィルムは45cm(主収縮方向)×94cm(主収縮方向に直交する方向)の大きさであった。
主収縮方向の収縮率は、55%であった。
収縮後の積層フィルムの硬質層側の表面をレーザー顕微鏡にて観察したところ、表面微細凹凸構造(平均深さH4.3μmの凹凸パターン)が形成されていた。
【0101】
このレーザー顕微鏡画像から、製造例1と同様の方法により、各種測定を行ったところ最頻ピッチAは5.1μm、配向度Wは0.3、光拡散体としての性能である主拡散方向の拡散角度は32°、主拡散方向と直交する方向の拡散角度は5.5°であった。
【0102】
(延伸工程)
得られた収縮後の積層フィルムを120℃の乾燥機中で主収縮方向に直交する方向に延伸した。延伸後のフィルムの大きさは、30cm(主収縮方向)×282cm(延伸方向=主収縮方向に直交する方向)であった。
延伸倍率は、3倍であった。
このようにして得られた延伸フィルム(表面微細凹凸体)の硬質層側の凹凸パターンについて、上記と同様にして平均深さH、最頻ピッチA、配向度Wを求めた。結果を表1に示す。
そして、得られた表面微細凹凸体の光学素子としての拡散性能を上述の方法にて測定したところ、主拡散方向の拡散角度は35°、主拡散方向と直交する方向の拡散角度は0.3°であった。
延伸工程後の表面微細凹凸体は、延伸工程前の積層フィルムよりも、配向度が小さく、そのため、主拡散方向の拡散角度が向上し、主拡散方向と直交する方向の拡散角度が低下した。すなわち、延伸工程により、異方性が向上することが確認できた。
【0103】
(転写工程(転写体の製造))
次に、得られた表面微細凹凸体の凹凸パターンのニッケル電鋳によりスタンパーを製造し、ロールtoロールUVナノインプリント機(東芝機械社製)にてPET基材(コスモシャインA4300:厚さ100μm[東洋紡社製])とUV樹脂(PAK−02[東洋合成社製])を用いて、UV樹脂転写シート(凹凸パターンを有する転写体)を製造した。
得られたUV樹脂転写シートの凹凸パターンについて、上記と同様にして平均深さH、最頻ピッチA、配向度Wを求めた。結果を表2に示す。
また、拡散角度についても上記と同様にして求めたところ、主拡散方向の拡散角度は33°、主拡散方向と直交する方向の拡散角度は0.3°であった。
【0104】
<製造例3>
(積層フィルム形成工程)
基材として、表面が平坦で、一軸方向(CD方向)に主に加熱収縮する厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートシュリンクフィルム(三菱樹脂社製ヒシペットLX−61S、ガラス転移温度70℃)を用いた。この片面に、ポリメタクリル酸メチル(藤倉化成社製、AcrybaseMH−101−10、重量平均分子量56万、分散度3.4、ガラス転移温度100℃)をトルエンに希釈した液をグラビアコーティングにて塗工して硬質層を形成し、表面が平坦な積層フィルムを得た。この際、硬質層は、乾燥後の塗工厚さ0.7μmになるように塗工して形成した。
【0105】
(収縮工程および延伸工程)
得られた積層フィルムの巻取りを巻出しゾーンに設置し、フローティングドライヤーを3機直列に備える温度調整ゾーンに搬送し、巻取った。具体的には、第1の温度調整ゾーンは90℃、第2の温度調整ゾーンは120℃、第3の温度調整ゾーンは10℃の冷風とし、各ゾーンには60秒滞在するように、かつ、これらゾーンの出口ライン速度/入口ライン速度比が1.5となるように調整し、収縮工程と延伸工程を連続的に行った。
巻き取った積層フィルムの幅(CD方向)は、巻き出しの時の積層フィルムの幅の40%であり、長さは1.5倍となっていた。すなわち、収縮率は60%で、延伸倍率は1.5倍であった。
【0106】
巻き取った積層フィルムの硬質層側の表面をレーザー顕微鏡にて観察したところ、MD方向に沿って凹凸の溝の方向がある凹凸パターンが観察された。この凹凸パターンについて、製造例1と同様にして、平均深さH、最頻ピッチA、配向度Wを求めた。結果を表1に示す。
そして、巻き取った積層フィルム(表面微細凹凸体)の光拡散体としての性能を上述の方法にて測定したところ、主拡散方向の拡散角度は28°、主拡散方向と直交する方向の拡散角度は1.8°であった。
【0107】
(転写工程(転写体の製造))
次に、表面微細凹凸体の凹凸パターンのニッケル電鋳によりスタンパーを製造し、これに厚さ200μmのアクリルシートを重ね、加熱し、押圧した。押圧しながら冷却し、スタンパーとアクリルシートを剥がすことにより、転写シート(凹凸パターンを有する転写シート)を製造した。
得られた転写シートの凹凸パターンについて、上記と同様にして平均深さH、最頻ピッチA、配向度Wを求めた。結果を表2に示す。
また、拡散角度についても上記と同様にして求めたところ、主拡散方向の拡散角度は25°、主拡散方向と直交する方向の拡散角度は0.3°であった。
【0108】
【表1】

【0109】
【表2】

【0110】
<製造例4>
(積層フィルム形成工程)
基材として、表面が平坦で、一軸方向(CD方向)に主に加熱収縮する厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートシュリンクフィルム(東洋紡社製S7561、ガラス転移温度70℃)を用いた。この片面に、ポリメタクリル酸メチル(重量平均分子量150万、分散度1.3、ガラス転移温度100℃)をトルエンに希釈した塗料をグラビアコーティングにて塗工して硬質層を形成し、表面が平坦な積層フィルムを得た。この際、硬質層は、乾燥後の塗工厚さ0.03μmになるように塗工して形成した。
【0111】
(収縮工程)
次に、この積層フィルムを1m角に断裁したものを90℃の乾燥機に1分間入れて加熱収縮を行った。収縮後の積層フィルムは55cm(主収縮方向)×93cm(主収縮方向に直交する方向)の大きさであった。
主収縮方向の収縮率は、45%であった。
収縮後の積層フィルムの硬質層側の表面を原子間力顕微鏡(日本ビーコ社製ナノスコープIII)により測定した。測定した凹凸パターンの画像をグレースケール画像に変換した後、製造例1と同様にして2次元フーリエ変換を行い、最頻ピッチAを求めたところ、100nmであった。また、配向度Wは0.25であった。次に、先に説明したように平均深Hさを求めたところ、75nmであった。結果を表3に示す。
【0112】
(延伸工程)
収縮後の積層フィルムを120℃の乾燥機中で主収縮方向に直交する方向に延伸し、延伸フィルム(表面微細凹凸体)を得た。このフィルムの大きさは、48cm(主収縮方向)×120cm(延伸方向=主収縮方向に直交する方向)であった。
延伸倍率は、1.3倍であった。
この延伸フィルムについて、上記と同様にして平均深さH、最頻ピッチA、配向度Wを求めた。結果を表4に示す。
【0113】
(転写工程(転写体の製造))
次に、得られた表面微細凹凸体の凹凸パターンのニッケル電鋳によりスタンパーを製造し、ロールtoロールUVナノインプリント機(東芝機械社製)にてPET基材(コスモシャインA4300:厚さ100μm[東洋紡社製])とUV樹脂(PAK−02[東洋合成社製])を用いて、UV樹脂転写シート(凹凸パターンを有する転写体)を製造した。
得られたUV樹脂転写シートの凹凸パターンについて、上記と同様にして平均深さH、最頻ピッチA、配向度Wを求めた。結果を表4に示す。
【0114】
(ワイヤーグリッド偏光子の製造)
得られた転写シートの凹凸パターン上に、斜方蒸着角60°、I線と、凹部および凸部に沿う方向とのなす角度を90°として、抵抗加熱蒸着にて、アルミニウムを積層厚30nmになるように蒸着して、アルミニウム細線を形成した。このようにしてワイヤーグリッド偏光子Aを製造した。
このワイヤーグリッド偏光子Aの偏光特性をKOBRA(王子計測機器社製)にて測定したところ、偏光度92、透過率41%であった。結果を表4に示す。
また、比較として、収縮工程後に延伸をしていない積層フィルムを用いて、ニッケル電鋳によりスタンパーを製造し、同様にしてUV樹脂転写シートを製造し、その上にアルミニウム細線を形成し、ワイヤーグリッド偏光子A’とした。
このワイヤーグリッド偏光子A’の偏光度は84、透過率40%であった。結果を表3に示す。
延伸工程後の表面微細凹凸体は、延伸工程前の積層フィルムよりも、配向度が小さく、そのため、この表面微細凹凸体の転写体を用いて得られたワイヤーグリッド偏光子Aは、延伸工程を経ていない積層フィルムの転写体を用いて得られたワイヤーグリッド偏光子A’よりも、偏光度が優れていた。
【0115】
【表3】

【0116】
【表4】

【0117】
<製造例5>
(積層フィルム形成工程)
基材として一軸方向(CD方向)に主に加熱収縮する厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートシュリンクフィルム(三菱樹脂社製ヒシペットLX−61S、ガラス転移温度70℃)を用いた。この片面に、ポリスチレン(アルドリッチ社製品番182435−25G、重量平均分子量24万、分散度2.0、ガラス転移温度100℃)をトルエンに希釈した液を塗工して硬質層を形成し、表面が平坦な積層フィルムを得た。この際、硬質層は、乾燥後の塗工厚さ0.7μmになるよう塗工して形成した。
また、ここで使用した基材の最大収縮率、すなわち、後述する延伸工程の際の温度(90℃)での最大収縮率は、70%である。
【0118】
(収縮工程)
次に、積層フィルムの主収縮方向(CD方向)における両端部をクリップで把持して、互いに反対方向に引っ張り、積層フィルムが最大収縮率まで収縮しないように張力を作用させながら、85℃、1分間で収縮工程を行った。その結果、主収縮方向の長さが加熱収縮前の70%に収縮し、表面に凹凸パターンが形成された積層フィルムが得られた。
【0119】
(熱セット工程)
ついで、凹凸パターンが形成された積層フィルムがこれ以上収縮しないように、主収縮方向(CD方向)における両端部をクリップで把持しながら、この積層フィルムを95℃で1分間加熱した。
【0120】
(延伸工程)
ついで、熱セット工程後の積層フィルムについて、90℃、1分間の条件で、主収縮方向に直交する方向に張力を作用させて延伸し、表面微細凹凸体を得た。延伸倍率は1.5倍とした。
【0121】
このように収縮工程、熱セット工程、延伸工程を経て得られた表面微細凹凸体について、上記と同様にして平均深さH、最頻ピッチA、配向度Wを求めた。一方、比較のために、熱セット工程を省略して得られた表面微細凹凸体についても、同様に求めた。結果を表5に示す。
また、これらについて、光拡散体としての性能である拡散角度を上記と同様の方法で評価したところ、熱セット工程を省略したものでは、主拡散方向の拡散角度は32°、主拡散方向と直交する方向の拡散角度は0.3°であり、製造例2と拡散性能が同一になったのに対して、熱セット工程を行ったものでは、主拡散方向の拡散角度は20°、主拡散方向と直交する方向の拡散角度は0.2°であった。このように、熱セット工程を適宜行うことによって、拡散角度を調整できた。
【0122】
【表5】

【符号の説明】
【0123】
10 表面微細凹凸体
11 基材
12 硬質層
12a 凹凸パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱収縮性フィルムからなる樹脂製の基材の少なくとも片面に、樹脂製の硬質層を設けて積層フィルムを形成する積層フィルム形成工程と、
前記積層フィルムを加熱して前記基材を収縮させることにより、前記硬質層を折り畳むように変形させ、凹凸パターンを形成する収縮工程と、
前記収縮の主方向と直交する方向に沿って、前記積層フィルムを延伸する延伸工程とを有することを特徴とする表面微細凹凸体の製造方法。
【請求項2】
前記積層フィルムが連続フィルムであり、前記収縮工程と前記延伸工程とを連続的に行うことを特徴とする請求項1に記載の表面微細凹凸体の製造方法。
【請求項3】
前記収縮工程では、前記基材をその最大収縮率よりも小さな収縮率で収縮させ、
前記収縮工程の後に、前記積層フィルムの収縮の主方向と反対方向に張力を作用させながら、前記積層フィルムを前記延伸工程の延伸温度以上の温度で加熱する熱セット工程を行い、
該熱セット工程の後に、前記延伸工程を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の表面微細凹凸体の製造方法。
【請求項4】
前記硬質層は、重量平均分子量が20万以上の熱可塑性樹脂からなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の表面微細凹凸体の製造方法。
【請求項5】
前記硬質層は、分散度が2以上の熱可塑性樹脂からなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の表面微細凹凸体の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法で製造されたことを特徴とする表面微細凹凸体。
【請求項7】
樹脂製の基材と、該基材の少なくとも片面に設けられた樹脂製の硬質層とを備え、該硬質層が波状の凹凸パターンとされた表面微細凹凸体であって、
前記硬質層は、重量平均分子量が20万以上で、かつ、分散度が2以上の熱可塑性樹脂からなり、
前記凹凸パターンは、配向度が0.1未満であることを特徴とする表面微細凹凸体。
【請求項8】
前記凹凸パターンの最頻ピッチが1μmを超え、5μm以下であることを特徴とする請求項7に記載の表面微細凹凸体。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれかに記載の表面微細凹凸体の前記凹凸パターンを転写する転写工程を有することを特徴とする転写体の製造方法。
【請求項10】
前記転写工程は、
前記表面微細凹凸体の前記凹凸パターンが形成された面に、多官能(メタ)アクリレートモノマーおよびオリゴマーの少なくとも一方を含有する未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂を塗布する工程と、
活性エネルギー線を照射して前記活性エネルギー線硬化性樹脂を硬化させた後、硬化した塗膜を前記表面微細凹凸体から剥離する工程とを有することを特徴とする請求項9に記載の転写体の製造方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の製造方法で製造された転写体。
【請求項12】
請求項6〜8のいずれかに記載の表面微細凹凸体または請求項11の転写体を備えることを特徴とする光学素子。
【請求項13】
異方性拡散体であることを特徴とする請求項12に記載の光学素子。
【請求項14】
ワイヤーグリッド偏光子であることを特徴とする請求項12に記載の光学素子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−213051(P2011−213051A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85399(P2010−85399)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】