表面検査装置
【課題】表面粗さの粗い被検査対象物においても、凹凸が数μm程度の微小凹凸性疵を確実に検出できる装置及び方法を提供する。
【解決手段】鋼板表面に波長が10.6μm以上の光を照射する光源4と、前記鋼板表面の微小凹凸疵で反射された光の集束及び発散によって得られる明暗パターンに基づいて微小欠陥を検出する検出系とを有する。前記光源4は、前記鋼板1がロール2に接している部位に光を照射する。又前記検出系は、前記鋼板表面により反射された光を投影するスクリーン6と、当該スクリーン上の光強度分布を測定する2次元カメラ7とを有する。
【解決手段】鋼板表面に波長が10.6μm以上の光を照射する光源4と、前記鋼板表面の微小凹凸疵で反射された光の集束及び発散によって得られる明暗パターンに基づいて微小欠陥を検出する検出系とを有する。前記光源4は、前記鋼板1がロール2に接している部位に光を照射する。又前記検出系は、前記鋼板表面により反射された光を投影するスクリーン6と、当該スクリーン上の光強度分布を測定する2次元カメラ7とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば薄鋼板等の微小凹凸性疵を光学的に検出する表面検査装置及び方法に関するものであり、さらに詳しくは、薄鋼板等の微小凹凸性欠陥を、その表面粗さに影響されることなく自動検出可能な表面検査装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薄鋼板の製造プロセスにおいては、ロール疵またはチャタマークなどの凹凸性の疵が発生する場合がある。これらの疵の大きさは数mm〜数十mm程度であるが、凹凸は数μm程度と非常に小さいものである。この凹凸は鋼板の表面粗さと同じ程度であるため、そのままの状態で観察しても発見することができない。ところが、塗装され、表面粗さが塗料に埋められ表面が滑らかになると、明瞭に見えるようになり、外観上大きな問題となる。そのため、このような疵有する薄鋼板を出荷しないようにすることは、品質管理上重要な問題である。
【0003】
またこれらの疵の発生原因を考えてみると、例えばロール疵は、ロールに付着した異物、あるいはその異物がロールに噛み混んだことによってロール自体に生じた凹凸が鋼板に転写されることにより発生するものであり、また、チャタマークは製造プロセスにおけるロールもしくは鋼板自体の振動により発生するものである。そのため、これらの疵が一旦発生すると、ロールを交換したりプロセスを改善したりするまで連続的に発生するため、早期に発見し対策を講じることは、歩留向上の点からも極めて重要である。
【0004】
このような疵を見つけるために、製鉄プロセスの各検査ラインにおいては、全てのコイルについて、操業中に鋼板の走行を一度停止し、検査員が砥石がけを行った後に目視検査をしている。砥石がけを行うと、凹部に比べて凸部がより砥石にあたり、反射率が高くなるので、凹凸部の差が明確になり、ロール疵やチャタマークが目視で確認可能となる。しかしながら、このような方法は、検査ラインを停止して行わなければならず、かつ、かなりの時間を要するので、作業能率を低下させるという問題があった。
【0005】
それに対する対策として、古来より伝承されている、魔鏡に平行光を当てた際に生じる現象を利用することが考えられる。魔鏡とは、背面に施された模様のために、研磨の際に研磨される部分とそうでない部分の差がわずかに現れ、裏面の模様とそっくりの微小凹凸が鏡面上に形成されている鏡である。この鏡は、見た目には通常の鏡と同じであるが、平行光を照射すると、凸部面は光を発散し、凹部面は光を集束させるため、裏面の模様と対応したパターンの像が反射光の像のパターンとして現れる。
【0006】
これと同様、鏡面状の被検査面に微小な凹凸がある場合、非検査面に平行光を当て、その反射光をスクリーンに投影したり、撮像素子に入射させたりすることにより、微小な凹凸を検出することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した魔鏡の原理を応用して被検査面の凹凸欠陥を検出しようとしても、この現象は表面粗さが0.1μm程度にまで研磨された鏡面に対してのみ適用可能であり、鋼板のように表面粗さが粗い被検査面に対しては有効でないという問題点がある。すなわち、このような被検査面に平行光を照射しても、凹凸欠陥に起因する集束光・拡散光が、非検査面の表面粗さに起因する拡散光に紛れてしまうため、疵を検出することができない。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、表面粗さの粗い被検査対象物においても、凹凸が数μm程度の微小凹凸性疵を確実に検出できる装置及び方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は次の発明により解決される。
【0010】
[1]鋼板表面に波長が10.6μm以上の光を照射する光源と、前記鋼板表面の微小凹凸疵で反射された光の集束及び発散によって得られる明暗パターンに基づいて微小欠陥を検出する検出系とを有することを特徴とする表面検査装置。
【0011】
すなわちこれは、鋼板表面の表面粗さと同等の深さの微小凹凸性疵を検出する表面検査装置において、鋼板表面に波長が10.6μm以上の光を照射する光源と、前記鋼板表面の微小凹凸疵の各点から反射された光の集束によって得られる明点に基づいて凹欠陥を、前記鋼板表面の微小凹凸疵の各点から反射された光の発散によって得られる暗点に基づいて凸欠陥を検出する検出系とを有することを特徴とする表面検査装置であることを意味する。
【0012】
[2]前記光源は、前記鋼板がロールに接している部位に光を照射するものであることを特徴とする上記[1]に記載の表面検査装置。
【0013】
[3]前記検出系は、前記鋼板表面により反射された光を投影するスクリーンと、当該スクリーン上の光強度分布を測定する受光器とを有してなることを特徴とする上記[1]または[2]のうちいずれか1項に記載の表面検査装置。
【0014】
[4]前記光源は、一次元方向には平行性を、もう一次元方向には拡散特性を有し、前記検出系は、前記鋼板表面により反射された光のうち、前記光源が拡散特性を有する方の一次元方向成分のみについては、被検査面の像を前記スクリーン上に結像する光学系を有することを特徴とする上記[3]に記載の表面検査装置。
【0015】
[5]前記検出系は、撮像素子と前記鋼板表面により反射された光を当該撮像素子上に投影する光学系とを有することを特徴とする上記[1]または[2]のうちいずれか1項に記載の表面検査装置。
【0016】
[6]前記光源は、一次元方向には平行性を、もう一次元方向には拡散特性を有し、前記検出系は、前記鋼板表面により反射された光のうち、前記光源が拡散特性を有する方の一次元方向成分のみについては、被検査面の像を前記撮像素子上に結像する光学系を有することを特徴とする上記[5]に記載の表面検査装置。
【0017】
[7]前記光源は、前記鋼板表面に平行光を照射する光源であることを特徴とする上記[1]から[3]、または上記[5]のうちいずれか1項に記載の表面検査装置。
【0018】
また、鋼板表面に入射角87度以上で、可視光を照射する光源と、前記鋼板表面の微小凹凸疵で反射された光の集束及び発散によって得られる明暗パターンに基づいて微小欠陥を検出する検出系とを有することを特徴とする表面検査装置。
【0019】
本発明者らは、表面粗さの粗い鋼板に対しても、反射光のうち鏡面反射が支配的な条件を作り出すことができれば、魔鏡現象が成立し、疵を検出することが可能になると考えた。そこで、まず、表面粗さと反射特性について検討を行った。
【0020】
Beckmann著The scattering of electromagnetic waves from rough surface (Pergamon Press, 1963)によると、凹凸量の分布が正規分布となるモデルを仮定した場合、下記のパラメータgが小さいほど鏡面性が高いといえる。また、σ、λ、θ1、θ2のそれぞれの値にかかわらず、gの値が等しければ鏡面性の程度は同等である。
g = {2πσ(cosθ1+cosθ2)/λ}2 ・・・(1)
【0021】
ここで、σは凹凸量の正規分布の標準偏差、λは照射光の波長、θ1は入射角、θ2は出射角である。ここで、正反射光を受光することを考え、入射角θ1及び出射角θ2がともに等しく、その値をθとすると、(1)式は、(2)式となる。
g = {4πσcosθ/λ}2 ・・・(2)
【0022】
上式によれば、σが大きな対象であっても、cosθ/λを所定の値以下にすれば、鏡面性を確保できることがわかる。 例えばσ=0.5μmの粗面を有する被検査体の鏡面性gを、σ=0.025μm程度の鏡面が、可視光の波長0.5μm、入射角0度に対して有するのと同程度の鏡面性gと同じ程度にしようとした場合、その方法の例としては、波長はそのままで入射角を87度程度に大きくするか、入射角はそのままで波長を10μm程度に大きくすることが考えられる。
【0023】
(1)、(2)式は、凹凸量が正規分布をなすことを仮定しているので、必ずしも全ての鋼板に対して適用できるとは限らないが、多くの場合、凹凸量は近似的に正規分布をなすと考えられるので、(1)、(2)式が適用できる。また、(1)、(2)式が適用できない場合であっても、(1)、(2)式に相当する関係式を実験的に求めることも可能である。
【0024】
すなわち、本手段においては、光源の波長λに対する前記入射角θの余弦の値の比cosθ/λが、前記被検体の表面粗さに対応して決定される所定の値以下となるように、前記波長と前記入射角の関係が選定されている。よって、鏡面性が上がって魔鏡現象が起こり、微小凹凸により反射された収束光・発散光が、表面粗さによる拡散光に紛れることがなくなるので、表面粗さと同等の深さの微小凹凸性疵を確実に検出することができる。 どの程度のg値とすべきかは、被検査体によっても異なるので、実験的に求めるようにする。
【0025】
ここで、魔鏡光学系によって得られる明暗のパターンについて考察する。図11に示すように、フラットであると仮定した被検査体上に座標軸xを、それと直交する方向にh軸をとり、被検査体の凹凸が一次元の分布h(x)をしているとする。このとき、入射角θで点(x、h(x))に入射した光が、点(x、h(x))における傾きφ(x)の微小面素により正反射し、スクリーン上に入射するとする。ここで、以下のような関係が成り立っている。
tanφ(x)=dh/dx
【0026】
スクリーンはx軸に対し角度Θで設置されているとし、スクリーン上にu軸をとる。u軸の原点は、x軸の原点の正反射位置に対応させ、それぞれの軸の原点間の距離をLとする。従って、u軸の原点は、x−h座標では(L・sinθ, L・cosθ)である。同様に、u軸上の任意の点は、x−h座標で(L・sinθ+u・cosΘ, L・cosθ−u・sinΘ)と表される。
【0027】
このとき、点(x、h(x))からの反射光がスクリーン上に照射される点uを求める。点(x、h(x))からの反射光は、h軸に対し角度θ−2φ(x)を有するから、(3)式となる。
【0028】
(L・sinθ+u・cosΘ−x)/(L・cosθ−u・sinΘ−h(x))=tan(θ−2φ(x)) ・・・(3)
よって、以下の(4)式のようになる。
【0029】
【数1】
【0030】
凹凸量が十分小さく、L・cosθ≫h(x)とおける場合は、以下の(5)式のようになる。
【0031】
【数2】
【0032】
ここで、スクリーンが光軸と垂直、すなわち、Θ=θの場合、(6)式のように書ける。
u={cosθ+sinθtan(2φ(x))}x−L・tan(2φ(x)) ・・・(6)
【0033】
さらに、入射光の傾きが被検査体上の凹凸の傾きよりも十分大きい、すなわち、1/tanθ≫tan(2φ(x))とすると、(7)式のようになる。
u=x・cosθ−L・tan(2φ(x))
≒x・cosθ−2L・dh/dx=cosθ(x−2L/cosθ・dh/dx) ・・・(7)
【0034】
ここで、スクリーン上の明点は、図12(a)のようにxを増加させたときに各点からの反射光がu軸上で重なり合ったり、図12(b)のように重なり合うことはなくても密になるということで説明できる。また、逆に暗点は各点からの反射光がu軸上で疎になる領域として理解することができる。特に、凹凸量が十分小さく、u(x)が一価関数となる場合には、スクリーン上の明暗は、微小区間dxに照射された光量が微小区間duへ投影されると考えると、dx/duで計算できる。
【0035】
(7)式は次のように理解できる。すなわち括弧の前のcosθは、スクリーン上に投影される像の大きさを表す倍率である。入射角が大きくなるほど、像の大きさは小さくなる。また、dh/dxの前に係数1/cosθがかかっており、図13に示すように、入射角θが大きいほど明暗のパターンが現れやすくなる。従って、cosθ/λを所定の値以下とし鏡面性を高めるためにθを大きく(すなわちcosθを小さく)することは、1/cosθだけ感度を向上することにもつながっている。
【0036】
以上、被検査体の凹凸が一次元の場合について考察したが、二次元の凹凸の場合にも同様の方法により考察することができる。
【0037】
また、スクリーンの角度をx軸と平行に設置した場合、(7)式に対応して、(8)式が得られる。
u=x−2L・tan2θ・dh/dx ・・・(8)
この場合、投影された像の倍率は入射角θによらず一定であるが、入射角が大きいほど感度が高いのは同様である。
【0038】
これらの考察によれば、被検査面に凹凸があるとき、その部分からの反射光がスクリーン上で正常部より明るくなったり、暗くなったりするので、スクリーン上の明点を検出することにより被検査面に発生する凹疵を、暗点を検出することにより凸疵を検出することができ、その検出感度は、照射光の入射角が大きいほど高いことが分かる。
【0039】
入射角として87度以上の大きな角度を用いることにより、波長の短い光源を使用することが可能となり、可視光を用いることができる。これにより、装置の調整、光軸合わせ等を容易に行うことができる。
【0040】
前記課題を解決するための前記[1]の手段においては、光源として波長が10.6μm以上の光を用いることにより、その分入射角を小さくすることができる。よって、被検査体の凹凸や振動に対しても、その影響を小さいものにすることができる。
【0041】
被検査体がロールに接している部位に光を照射する前記[2]の手段においては、被検査体がロールに接している部位に光を照射し、その部位からの反射光を検出して表面検査を行っているので、被検査体のばたつきや大きな凹凸を小さくすることができる。よって、照射光の入射角を大きくしても、受光位置が大きく変動することが無く、安定した検出が可能となる。
【0042】
発明者らは、被検査体がロールに接した状態にあるときに、パスライン変動があった場合の入射角の変化量の見積もりを行った。その過程を図14により説明する。パスライン変動が表面検査装置に与える影響は、入射光軸に対して垂直に変動する場合が最も影響が大きい。従って、図14のような場合を考える。パスライン変動が生じると、光の入射する位置が変わり、結果的に入射角の変動となる。よって、この場合について考察する。
【0043】
図14において、21は通常のパスライン、21’は入射光軸に対して直角方向にδだけずれたパスライン、22は入射光、23は定常状態における反射光(正反射光)、23’はパスラインが上記の値だけずれた場合の反射光(正反射光)である。いま、半径Rのロールに巻き付いている鋼板に、入射角θで光が入射している場合、入射光と垂直な方向にδだけパスライン変動が生じると、図14より以下の関係が得られる。
R・sinθ+δ=R・sin(θ+ε) ・・・(9)
∴ δ/R = sin(θ+ε)−sinθ
= 2・sin(ε/2)・cos(θ+ε/2) ・・・(10)
【0044】
従って、許容できる入射角変動の値を±εmaxとすると、(11)式で示す関係にある必要がある。
−2・sin(εmax /2)・cos(θ−εmax /2)≦δ/R ≦ 2・ sin(εmax /2)・cos(θ+ε
max /2) ・・・(11)
いま、εが十分小さいとすると、(12)および(13)式と近似することができ、(11)式は、(14)式となる。
sin(εmax /2)= εmax /2 ・・・(12)
cos(θ±εmax /2)=cosθ ・・・(13)
|δ|/R ≦ εmax・cosθ ・・・(14)
【0045】
前記課題を解決するための前記[3]の手段においては、前記検出系は、前記被検査体の表面により反射された光を投影するスクリーンと、当該スクリーン上の光強度分布を測定する受光器とを有するものである。
【0046】
本手段においては、被検査体の表面で反射された光は、たとえば半透明のスクリーンに投影される。受光器は、この半透明のスクリーンの裏側から、スクリーンに写った反射光線の像を撮像する。微小凹凸欠陥があると、その点が明部又は暗部となってスクリーンに写し出されるので、それを検出することにより、微小凹凸欠陥を検出することができる。
【0047】
前記課題を解決するための前記[4]の手段においては、前記光源は、一次元方向には平行性を、もう一次元方向には拡散特性を有し、前記検出系は、前記鋼板表面により反射された光のうち、前記光源が拡散特性を有する方の一次元方向成分のみについては、被検査面の像を前記スクリーン上に結像する光学系を有するものである。
【0048】
本手段においては、光源としてラインライトガイド等のライン状のものを使用できるので、ラインの広幅方向を被検査面の幅方向に一致させれば、入射角の広がりを狭くすることができ、確実に魔鏡現象を起こすことができる。そして、被検査体又は表面検査装置を移動させることにより、平面の検査を行うことができる。入射光は、被検査面の幅方向には拡散光となるが、こちらの方向成分については、被検査面の像をスクリーン上に結像させることにより、拡散光により魔鏡現象の発生が阻害されるのを防止することができる。
【0049】
すなわち、後に発明の形態の欄で述べるように、ラインライトガイドとシリンドリカルレンズを使用する等の簡単な方法で、被検査体に対して入射角が一定である照射光を作り出すことができる。この光源を使用した場合には、光束の長手方向(拡散特性を有する方向)を被検査体表面に平行にし、平行性を有する方向を被検査体表面に垂直にすることにより、被検査体に対して入射角が一定である照射光を作り出すことができ、魔鏡現象を発生させることができるが、光束の長手方向には光が拡散するので、入射方向が一定でなく、ボケが発生する。これを防ぐためには、光が照射される被検査体表面の像を、スクリーン又は撮像面に結像させるようにすればよい。
【0050】
なお、本明細書で被検査面の「幅方向」というのは、被検査体と検査装置の相対的な運動方向に直角な方向をいうものであり、被検査体と検査装置の相対的な運動方向を被検査体の「長さ方向」と称する。
【0051】
前記課題を解決するための前記[5]の手段は、前記[1]の手段または[2]の手段のいずれかであって、前記検出系が、撮像素子と前記被検査体の表面により反射された光を当該撮像素子上に投影する光学系を有することを特徴とするものである。
【0052】
前記[3]の手段においては、反射された光をスクリーン上に投影して、スクリーン上の光強度分布を受光器で測定していたが、本手段においては、反射された光を直接撮像素子で測定している。よって、前記[5]の手段と同様の作用効果が得られる。
【0053】
前記課題を解決するための前記[6]の手段は、前記[5]の手段であって、前記検出系は、前記被検査体の表面により反射された光のうち、一次元方向成分については、被検査面の像を前記撮像素子上に結像する光学系を有することを特徴とするものである。本手段の作用効果は、前記[4]の手段と同じである。
【0054】
前記課題を解決するための前記[7]の手段は、前記[1]の手段から[3]の手段、または前記[5]の手段のいずれかであって、前記光源が、被検査体に平行光を照射する光源であることを特徴とするものである。
【0055】
本手段においては、被検査体に照射される光が平行光であるので、被検査体が平面状の場合、平行光の平行の方向を被検査体平面と平行とすることで、被検査体の各部位における照射光の入射角を等しくすることができる。よって、照射範囲が広くても、魔鏡現象を起こすようにすることができる。
【発明の効果】
【0056】
本発明のうち前記[1]に係る発明においては、照射された光が凹凸形状に応じて集束や発散することによってできる明暗パターン(魔鏡現象)を検査するようにしたので、表面粗さと同等の深さの微小凹凸性疵を確実に検出することができる。また、光源として波長が10.6μm以上の光を用いることにより、その分入射角を小さくすることができる。よって、被検査体の凹凸や振動に対しても、その影響を小さいものにすることができる。
【0057】
前記[2]に係る発明においては、被検査体のばたつきや大きな凹凸を小さくすることができるので、照射光の入射角を大きくしても、受光位置が大きく変動することが無く、安定した検出が可能となる。
【0058】
前記[3]に係る発明、前記[5]に係る発明においては、微小凹凸欠陥があると、その点が明部又は暗部となってスクリーンに写し出されたり撮像面に投影されるので、それを検出することにより、微小凹凸欠陥を検出することができる。
【0059】
前記[7]に係る発明においては、被検査体が平面状の場合、被検査体の各部位における照射光の入射角を等しくすることができる。よって、照射範囲が広くても、魔鏡現象を起こすようにすることができる。
【0060】
前記[4]に係る発明、前記[6]に係る発明においては、ラインライトガイドとシリンドリカルレンズを使用する等の簡単な方法で、被検査体に対して入射角が一定である照射光を作り出すことができる。
【0061】
また、入射角87度以上とすると、検査体の凹凸や振動に対しても、その影響を小さいものにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1の形態である表面検査装置の構成を示す概要図である。
【図2】冷延鋼板のロール疵及を測定した場合の、照射光の入射角θとS/N比の関係の例を示す図である。
【図3】本発明の第2の形態である表面検査装置の構成を示す概要図である。
【図4】本発明の第3の形態である表面検査装置の構成を示す概要図である。
【図5】本発明の第4の形態である表面検査装置の構成を示す概要図である。
【図6】ラインライトガイドとシリンドリカルレンズを組み合わせた光源の概要図である。
【図7】光が拡散性を有する方向について、結像光学系を設けた例を示す概要図である。
【図8】本発明の第5の形態である表面検査装置の構成を示す概要図である。
【図9】2枚のシリンドリカルレンズを用いたテレセントリック系の結像装置の例を示す概要図である。
【図10】検出ヘッドをトラバースさせて検査する例の概要を示す図である。
【図11】魔鏡光学系によって得られる明暗のパターンの発生を説明するための図である。
【図12】魔鏡光学系によって得られる明点における光線の収束状況を示す図である。
【図13】入射角と明暗のパターンのピッチとの関係を示す図である。
【図14】被検査体がロールに接した状態にあるときのパスライン変動の影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
本発明を実施するための形態を、以下図面を用いて説明を行う。図1は、本発明の第1の形態である表面検査装置の構成を示す概要図である。図1において1は鋼
板、2はロール、3は検出ヘッド、4は光源、5はミラー、6はスクリーン、7は2次元カメラ、8は信号処理装置、9は出力装置である。
【0064】
鋼板1は、2つのロール2によって張力をかけられ、平面に張られて走行している。鋼板1の表面に近接して検出ヘッド3が設置されている。検出ヘッド3中には、光源4が設けられ、鋼板1の表面に、可視域の波長の平行光を入射角θが90度近くの大きな角度、例えば87度で照射している。平行光は、ランプからからの光を一旦集光し、ピンホールを透過させた後、レンズまたは放物面鏡を用いて形成している。この平行光は、ミラー5で反射された後、前記の入射角で鋼板1の表面を照射する。
【0065】
鋼板1の表面で反射された光は、半透明のスクリーン6上に像を結ぶ。その像をスクリーン6の背面から2次元カメラ(CCDカメラ等)7で撮像し、信号処理装置8で画像処理を行うことにより凹凸性疵を検出する。鋼板表面からの反射光は鏡面反射光となるが、凹凸性疵があると、その部分が、明るい又は暗いパターンとしてスクリーン6に写るので、疵の存在を検出することができる。画像処理の方法としては、2値化処理等、周知の手法を使用することができる。鋼板1の移動速度が高速の場合、撮影した像のぶれを防ぐために、ストロボ光源を使用して照明時間を短くすることが必要である。
【0066】
図2は、冷延鋼板のロール疵及を測定した場合の、照射光の入射角θとS/N比の関係を示したものである。このように、これらの疵は、入射角87度以下では検出が困難であるのに対し、87度以上とすることによりS/N比を大きくでき、検出可能になっていることがわかる。 以上の形態では、ストロボ光源と二次元カメラを用いたが、線状光源とリニアアレイカメラを用いることもできる。
【0067】
本発明の第2の形態である表面検査装置の構成を概要図を図3に示す。以下の図においては、前出の図に示された要素と同じ要素には、同じ符号を付してその説明を省略することがある。図3に示した形態は、基本的には図1に示したものと同じであるが、光源4に波長10.6μmのパルス発振のCO2レーザを、2次元カメラにサーモカメラを用いている。このように、長い波長の光を用いると入射角θの制約がなくなり、入射角θを小さくすることができるので、パスライン変動によりスクリーン上の像がぶれる影響を小さくすることができる。
【0068】
図4に、本発明の第3の形態である表面検査装置の構成の概要図を示す。本形態においては、図のように、鋼板1がロール2に巻き付いている部分を測定している。さらに、測定点の各点における入射角が等しくなるように、光源4から、ミラー5を介して、ロール径に合わせて収束する光を入射させている。このように、ロールに巻き付いている位置で測定することにより、被検査体のパスライン変動を極力抑えることができる。
【0069】
図5に本発明の第4の形態である表面検査装置の構成の概要図を示す。(a)が側面図、(b)が平面図であり、7’はリニアアレイセンサ、10はシリンドリカルレンズである。
【0070】
光源4にはレーザが用いられており、スリット状の平行なレーザ光が入射角87度以上でロール2に巻きつけられた鋼板1に入射する。スリット状のレーザ光は、その広幅方向が、鋼板1の幅方向に一致するようにされている。スリット光の狭幅wは、ロールの偏心等でパスラインが変動した場合でも検査線が等しい光量で照射されるよう余裕を持って設定しておく。
【0071】
鋼板1で反射された光は、シリンドリカルレンズ10により、図5(b)に示すように、鋼板1の幅方向については、リニアアレイセンサ7’上に縮小投影される。一方、図5(a)に示すように、鋼板1に垂直な面内においては、ロール2の形状により拡がる光となり、シリンドリカルレンズ10の影響は受けずにリニアアレイセンサ7’上に入射される。シリンドリカルレンズ10を用いるのは、幅の広いレーザースリット光を、幅の狭いリニアアレイセンサ7’面に収束させるためである。
【0072】
すなわち、この形態は、鋼板1の幅方向に長い一次元の検査範囲を有している。そして、鋼板1は、ロール2の回転により図5(a)の矢印方向に移動するので、順次リニアアレイセンサ7’からの信号を読み出し、図示しない信号処理装置に入力することで、鋼板1を2次元的に検査する。信号処理装置は、明暗の画像信号より凹凸性疵の有無を判定する。
【0073】
この形態においてはシリンドリカルレンズ7’を用いているが、例えば球面レンズ等を用いるなどにより、図5(a)の紙面内についても反射光の広がりを変化させると、全体の光束に対するセンサの相対的な大きさが変化することになるので、魔鏡像を検出する際の位置や分解能を変えることができる。
【0074】
次にラインライトガイドを光源に用いた形態について説明する。具体的な形態の説明に先立ち、図6にラインライトガイドとシリンドリカルレンズを組み合わせた光源を示す。図6において(a)が平面図、(b)が側面図であり、10’はシリンドリカルレンズ、11はラインライトガイド、11aはバンドルファイバである。
【0075】
本光源は、水平方向に長いラインライトガイド11と、垂直方向で凸レンズ作用を有し、水平方向ではレンズ作用を有しないシリンドリカルレンズ10’を組み合わせたものである。光発生源からバンドルファイバ11aを介して伝達された光は、ラインライトガイド11の先端部から放出されるが、各光ファイバの開口角(半角)はΦとなっている。そして、垂直方向の光の放出点の幅はdであり、水平方向には十分大きな放出幅を有している。ラインライトガイド11の光放出面は、シリンドリカルレンズ10’の焦点面位置に置かれている。
【0076】
よって、シリンドリカルレンズ10’の焦点距離をfとするとき、図6(b)に示されるように、垂直方向断面では、この光源からの光は、平行度d/fの平行光となっている。一方、水平方向断面では図6(a)に示されるように、ファイバの開口角Φの2倍の開き角を有する拡散光源となっている。すなわち、この光源からの光は、一次元方向には平行性を、もう一次元方向には拡散特性を有している。このような光源を用いて魔鏡現象を観察しようとしても、魔鏡の原理による明点及び暗点は、水平方向の光の拡散性のためにボケを生じるので、そのままでは明瞭に現れない。
【0077】
そこで、図7に示すように、光源が拡散性を有する水平方向について、被検査体の一点から反射された光を結像するためのシリンドリカルレンズ10を設ける。すると、光源が拡散性を有する方向については、被検査面の像がリニアアレイセンサ7’表面に結像するので、光源の拡散性によるボケを生じることなく、また、光源が平行性を有する方向については、従来通り魔鏡の原理が成立するため、結果として魔鏡の原理による明点及び暗点が観察できるようになる。このような系を構成することにより、従来においてはランプの光を一旦ピンホールによって絞ってからレンズ系で平行光束を作るのに対し、バンドルファイバ全体に入射する光を全て利用できるので、光発生源からの光量を有効に利用することができる。
【0078】
図8に、具体的な形態(第5の形態)の概要図を示す。図示しないランプの光は、バンドルファイバ11aへ入射され、ファイバが紙面に垂直な方向に線状に配置されたラインライトガイド11より出射される。出射された光は、図8の紙面に平行な方向については、シリンドリカルレンズ10’により平行光とされ、鋼板1に入射する。一方、紙面に垂直な方向については、拡散光として鋼板1に入射する。鋼板1からの反射光は、紙面に垂直な方向については、シリンドリカルレンズ10によって、検査線上の一点がリニアアレイ7’上の一点に結像される。
【0079】
すなわち、この形態も、鋼板1の幅方向に長い一次元の検査範囲を有している。そして、鋼板1は走行するので、順次リニアアレイセンサ7’からの信号を読み出し、図示しない信号処理装置に入力することで、鋼板1を2次元的に検査する。信号処理装置は、明暗の画像信号より凹凸性疵の有無を判定する。
【0080】
このような、反射光を一次元方向について結像させて観察するという考え方は、例えば図5に示すような平行光源の場合にも適用することができる。すなわち、入射角を大きくすることにより魔鏡の感度が向上している図5(a)の断面で見た方向に関しては結像系を用いず、図5(b)の断面で見た方向について結像系を導入することにより、検出能は維持したまま、若干の拡散反射に起因する像のボケや受光光量ロスを向上させることができる。
【0081】
以上の形態においては、一方向のみの結像のためにシリンドリカルレンズ1枚を用いたが、本発明はこのような実施例に限定されるものではないことは言うまでもない。たとえば、レンズを複数枚使用したり、図9に示すように、2枚のシリンドリカルレンズを用いたテレセントリック系を用いることも可能である。このようにテレセントリック系を用いることにより、素子ごとの光量むらを減少させることができる。
【0082】
また、以上の形態においては、被検査面による反射光をリニアアレイセンサ上に投影したが、リニアアレイセンサの代わりにスクリーンを設け、スクリーン上の像を撮像装置で観察することも可能である。
【0083】
図10に、以上の各形態における検出ヘッド3と鋼板1との関係の1例を示す。図10において12はリニアガイドである。図10(a)に示すように、これら各形態においては、検出ヘッド3は、鋼板1の板幅全域に亘って検査が可能なものではなく、検査視野はその一部のみをカバーするようになっている。そして、図に示すように、リニアガイド12に沿って鋼板1の幅方向にトラバースして往復し、鋼板1の表面をジグザグに検査するようになっている。
【0084】
鋼板1の検査される面の様子を、図10(b)に示す。検出ヘッド3の視野範囲は、図に示すように斜めになっている。そして、検出ヘッド3が、その視野幅だけ横に移動する間に、鋼板1は、周期性を有する疵の想定最大周期の2倍以上の長さだけ移動するようになっている。これにより、鋼板1の幅方向同一位置は、鋼板1が、周期性を有する疵の想定最大周期の2倍以上の長さだけ移動する間に亘って連続的に検査されるので、最大周期を有する疵でも、この間に必ず2回検出できる。よって、周期性を有する疵の周期を判別することができる。
【0085】
このように、周期性を有する疵の検出を目的とする場合には、鋼板1の一部のみの検査視野を有する検査装置をトラバースさせて鋼板1全面の欠陥検出を行うことができ、安価な装置とすることができる。また、本形態では、幅方向に連続的にトラバースしながら測定を行なったが、一定位置で最大周期の2倍以上の距離を測定した後、検出ヘッドの視野分移動するというように、間欠的にトラバースさせても構わない。
【符号の説明】
【0086】
1 鋼板
2 ロール
3 検出ヘッド
4 光源
5 ミラー
6 スクリーン
7 2次元カメラ
7’ リニアアレイセンサ
8 信号処理装置
9 出力装置
10、10’ シリンドリカルレンズ
11 ラインライトガイド
11a バンドルファイバ
12 リニアガイド
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば薄鋼板等の微小凹凸性疵を光学的に検出する表面検査装置及び方法に関するものであり、さらに詳しくは、薄鋼板等の微小凹凸性欠陥を、その表面粗さに影響されることなく自動検出可能な表面検査装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薄鋼板の製造プロセスにおいては、ロール疵またはチャタマークなどの凹凸性の疵が発生する場合がある。これらの疵の大きさは数mm〜数十mm程度であるが、凹凸は数μm程度と非常に小さいものである。この凹凸は鋼板の表面粗さと同じ程度であるため、そのままの状態で観察しても発見することができない。ところが、塗装され、表面粗さが塗料に埋められ表面が滑らかになると、明瞭に見えるようになり、外観上大きな問題となる。そのため、このような疵有する薄鋼板を出荷しないようにすることは、品質管理上重要な問題である。
【0003】
またこれらの疵の発生原因を考えてみると、例えばロール疵は、ロールに付着した異物、あるいはその異物がロールに噛み混んだことによってロール自体に生じた凹凸が鋼板に転写されることにより発生するものであり、また、チャタマークは製造プロセスにおけるロールもしくは鋼板自体の振動により発生するものである。そのため、これらの疵が一旦発生すると、ロールを交換したりプロセスを改善したりするまで連続的に発生するため、早期に発見し対策を講じることは、歩留向上の点からも極めて重要である。
【0004】
このような疵を見つけるために、製鉄プロセスの各検査ラインにおいては、全てのコイルについて、操業中に鋼板の走行を一度停止し、検査員が砥石がけを行った後に目視検査をしている。砥石がけを行うと、凹部に比べて凸部がより砥石にあたり、反射率が高くなるので、凹凸部の差が明確になり、ロール疵やチャタマークが目視で確認可能となる。しかしながら、このような方法は、検査ラインを停止して行わなければならず、かつ、かなりの時間を要するので、作業能率を低下させるという問題があった。
【0005】
それに対する対策として、古来より伝承されている、魔鏡に平行光を当てた際に生じる現象を利用することが考えられる。魔鏡とは、背面に施された模様のために、研磨の際に研磨される部分とそうでない部分の差がわずかに現れ、裏面の模様とそっくりの微小凹凸が鏡面上に形成されている鏡である。この鏡は、見た目には通常の鏡と同じであるが、平行光を照射すると、凸部面は光を発散し、凹部面は光を集束させるため、裏面の模様と対応したパターンの像が反射光の像のパターンとして現れる。
【0006】
これと同様、鏡面状の被検査面に微小な凹凸がある場合、非検査面に平行光を当て、その反射光をスクリーンに投影したり、撮像素子に入射させたりすることにより、微小な凹凸を検出することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した魔鏡の原理を応用して被検査面の凹凸欠陥を検出しようとしても、この現象は表面粗さが0.1μm程度にまで研磨された鏡面に対してのみ適用可能であり、鋼板のように表面粗さが粗い被検査面に対しては有効でないという問題点がある。すなわち、このような被検査面に平行光を照射しても、凹凸欠陥に起因する集束光・拡散光が、非検査面の表面粗さに起因する拡散光に紛れてしまうため、疵を検出することができない。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、表面粗さの粗い被検査対象物においても、凹凸が数μm程度の微小凹凸性疵を確実に検出できる装置及び方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は次の発明により解決される。
【0010】
[1]鋼板表面に波長が10.6μm以上の光を照射する光源と、前記鋼板表面の微小凹凸疵で反射された光の集束及び発散によって得られる明暗パターンに基づいて微小欠陥を検出する検出系とを有することを特徴とする表面検査装置。
【0011】
すなわちこれは、鋼板表面の表面粗さと同等の深さの微小凹凸性疵を検出する表面検査装置において、鋼板表面に波長が10.6μm以上の光を照射する光源と、前記鋼板表面の微小凹凸疵の各点から反射された光の集束によって得られる明点に基づいて凹欠陥を、前記鋼板表面の微小凹凸疵の各点から反射された光の発散によって得られる暗点に基づいて凸欠陥を検出する検出系とを有することを特徴とする表面検査装置であることを意味する。
【0012】
[2]前記光源は、前記鋼板がロールに接している部位に光を照射するものであることを特徴とする上記[1]に記載の表面検査装置。
【0013】
[3]前記検出系は、前記鋼板表面により反射された光を投影するスクリーンと、当該スクリーン上の光強度分布を測定する受光器とを有してなることを特徴とする上記[1]または[2]のうちいずれか1項に記載の表面検査装置。
【0014】
[4]前記光源は、一次元方向には平行性を、もう一次元方向には拡散特性を有し、前記検出系は、前記鋼板表面により反射された光のうち、前記光源が拡散特性を有する方の一次元方向成分のみについては、被検査面の像を前記スクリーン上に結像する光学系を有することを特徴とする上記[3]に記載の表面検査装置。
【0015】
[5]前記検出系は、撮像素子と前記鋼板表面により反射された光を当該撮像素子上に投影する光学系とを有することを特徴とする上記[1]または[2]のうちいずれか1項に記載の表面検査装置。
【0016】
[6]前記光源は、一次元方向には平行性を、もう一次元方向には拡散特性を有し、前記検出系は、前記鋼板表面により反射された光のうち、前記光源が拡散特性を有する方の一次元方向成分のみについては、被検査面の像を前記撮像素子上に結像する光学系を有することを特徴とする上記[5]に記載の表面検査装置。
【0017】
[7]前記光源は、前記鋼板表面に平行光を照射する光源であることを特徴とする上記[1]から[3]、または上記[5]のうちいずれか1項に記載の表面検査装置。
【0018】
また、鋼板表面に入射角87度以上で、可視光を照射する光源と、前記鋼板表面の微小凹凸疵で反射された光の集束及び発散によって得られる明暗パターンに基づいて微小欠陥を検出する検出系とを有することを特徴とする表面検査装置。
【0019】
本発明者らは、表面粗さの粗い鋼板に対しても、反射光のうち鏡面反射が支配的な条件を作り出すことができれば、魔鏡現象が成立し、疵を検出することが可能になると考えた。そこで、まず、表面粗さと反射特性について検討を行った。
【0020】
Beckmann著The scattering of electromagnetic waves from rough surface (Pergamon Press, 1963)によると、凹凸量の分布が正規分布となるモデルを仮定した場合、下記のパラメータgが小さいほど鏡面性が高いといえる。また、σ、λ、θ1、θ2のそれぞれの値にかかわらず、gの値が等しければ鏡面性の程度は同等である。
g = {2πσ(cosθ1+cosθ2)/λ}2 ・・・(1)
【0021】
ここで、σは凹凸量の正規分布の標準偏差、λは照射光の波長、θ1は入射角、θ2は出射角である。ここで、正反射光を受光することを考え、入射角θ1及び出射角θ2がともに等しく、その値をθとすると、(1)式は、(2)式となる。
g = {4πσcosθ/λ}2 ・・・(2)
【0022】
上式によれば、σが大きな対象であっても、cosθ/λを所定の値以下にすれば、鏡面性を確保できることがわかる。 例えばσ=0.5μmの粗面を有する被検査体の鏡面性gを、σ=0.025μm程度の鏡面が、可視光の波長0.5μm、入射角0度に対して有するのと同程度の鏡面性gと同じ程度にしようとした場合、その方法の例としては、波長はそのままで入射角を87度程度に大きくするか、入射角はそのままで波長を10μm程度に大きくすることが考えられる。
【0023】
(1)、(2)式は、凹凸量が正規分布をなすことを仮定しているので、必ずしも全ての鋼板に対して適用できるとは限らないが、多くの場合、凹凸量は近似的に正規分布をなすと考えられるので、(1)、(2)式が適用できる。また、(1)、(2)式が適用できない場合であっても、(1)、(2)式に相当する関係式を実験的に求めることも可能である。
【0024】
すなわち、本手段においては、光源の波長λに対する前記入射角θの余弦の値の比cosθ/λが、前記被検体の表面粗さに対応して決定される所定の値以下となるように、前記波長と前記入射角の関係が選定されている。よって、鏡面性が上がって魔鏡現象が起こり、微小凹凸により反射された収束光・発散光が、表面粗さによる拡散光に紛れることがなくなるので、表面粗さと同等の深さの微小凹凸性疵を確実に検出することができる。 どの程度のg値とすべきかは、被検査体によっても異なるので、実験的に求めるようにする。
【0025】
ここで、魔鏡光学系によって得られる明暗のパターンについて考察する。図11に示すように、フラットであると仮定した被検査体上に座標軸xを、それと直交する方向にh軸をとり、被検査体の凹凸が一次元の分布h(x)をしているとする。このとき、入射角θで点(x、h(x))に入射した光が、点(x、h(x))における傾きφ(x)の微小面素により正反射し、スクリーン上に入射するとする。ここで、以下のような関係が成り立っている。
tanφ(x)=dh/dx
【0026】
スクリーンはx軸に対し角度Θで設置されているとし、スクリーン上にu軸をとる。u軸の原点は、x軸の原点の正反射位置に対応させ、それぞれの軸の原点間の距離をLとする。従って、u軸の原点は、x−h座標では(L・sinθ, L・cosθ)である。同様に、u軸上の任意の点は、x−h座標で(L・sinθ+u・cosΘ, L・cosθ−u・sinΘ)と表される。
【0027】
このとき、点(x、h(x))からの反射光がスクリーン上に照射される点uを求める。点(x、h(x))からの反射光は、h軸に対し角度θ−2φ(x)を有するから、(3)式となる。
【0028】
(L・sinθ+u・cosΘ−x)/(L・cosθ−u・sinΘ−h(x))=tan(θ−2φ(x)) ・・・(3)
よって、以下の(4)式のようになる。
【0029】
【数1】
【0030】
凹凸量が十分小さく、L・cosθ≫h(x)とおける場合は、以下の(5)式のようになる。
【0031】
【数2】
【0032】
ここで、スクリーンが光軸と垂直、すなわち、Θ=θの場合、(6)式のように書ける。
u={cosθ+sinθtan(2φ(x))}x−L・tan(2φ(x)) ・・・(6)
【0033】
さらに、入射光の傾きが被検査体上の凹凸の傾きよりも十分大きい、すなわち、1/tanθ≫tan(2φ(x))とすると、(7)式のようになる。
u=x・cosθ−L・tan(2φ(x))
≒x・cosθ−2L・dh/dx=cosθ(x−2L/cosθ・dh/dx) ・・・(7)
【0034】
ここで、スクリーン上の明点は、図12(a)のようにxを増加させたときに各点からの反射光がu軸上で重なり合ったり、図12(b)のように重なり合うことはなくても密になるということで説明できる。また、逆に暗点は各点からの反射光がu軸上で疎になる領域として理解することができる。特に、凹凸量が十分小さく、u(x)が一価関数となる場合には、スクリーン上の明暗は、微小区間dxに照射された光量が微小区間duへ投影されると考えると、dx/duで計算できる。
【0035】
(7)式は次のように理解できる。すなわち括弧の前のcosθは、スクリーン上に投影される像の大きさを表す倍率である。入射角が大きくなるほど、像の大きさは小さくなる。また、dh/dxの前に係数1/cosθがかかっており、図13に示すように、入射角θが大きいほど明暗のパターンが現れやすくなる。従って、cosθ/λを所定の値以下とし鏡面性を高めるためにθを大きく(すなわちcosθを小さく)することは、1/cosθだけ感度を向上することにもつながっている。
【0036】
以上、被検査体の凹凸が一次元の場合について考察したが、二次元の凹凸の場合にも同様の方法により考察することができる。
【0037】
また、スクリーンの角度をx軸と平行に設置した場合、(7)式に対応して、(8)式が得られる。
u=x−2L・tan2θ・dh/dx ・・・(8)
この場合、投影された像の倍率は入射角θによらず一定であるが、入射角が大きいほど感度が高いのは同様である。
【0038】
これらの考察によれば、被検査面に凹凸があるとき、その部分からの反射光がスクリーン上で正常部より明るくなったり、暗くなったりするので、スクリーン上の明点を検出することにより被検査面に発生する凹疵を、暗点を検出することにより凸疵を検出することができ、その検出感度は、照射光の入射角が大きいほど高いことが分かる。
【0039】
入射角として87度以上の大きな角度を用いることにより、波長の短い光源を使用することが可能となり、可視光を用いることができる。これにより、装置の調整、光軸合わせ等を容易に行うことができる。
【0040】
前記課題を解決するための前記[1]の手段においては、光源として波長が10.6μm以上の光を用いることにより、その分入射角を小さくすることができる。よって、被検査体の凹凸や振動に対しても、その影響を小さいものにすることができる。
【0041】
被検査体がロールに接している部位に光を照射する前記[2]の手段においては、被検査体がロールに接している部位に光を照射し、その部位からの反射光を検出して表面検査を行っているので、被検査体のばたつきや大きな凹凸を小さくすることができる。よって、照射光の入射角を大きくしても、受光位置が大きく変動することが無く、安定した検出が可能となる。
【0042】
発明者らは、被検査体がロールに接した状態にあるときに、パスライン変動があった場合の入射角の変化量の見積もりを行った。その過程を図14により説明する。パスライン変動が表面検査装置に与える影響は、入射光軸に対して垂直に変動する場合が最も影響が大きい。従って、図14のような場合を考える。パスライン変動が生じると、光の入射する位置が変わり、結果的に入射角の変動となる。よって、この場合について考察する。
【0043】
図14において、21は通常のパスライン、21’は入射光軸に対して直角方向にδだけずれたパスライン、22は入射光、23は定常状態における反射光(正反射光)、23’はパスラインが上記の値だけずれた場合の反射光(正反射光)である。いま、半径Rのロールに巻き付いている鋼板に、入射角θで光が入射している場合、入射光と垂直な方向にδだけパスライン変動が生じると、図14より以下の関係が得られる。
R・sinθ+δ=R・sin(θ+ε) ・・・(9)
∴ δ/R = sin(θ+ε)−sinθ
= 2・sin(ε/2)・cos(θ+ε/2) ・・・(10)
【0044】
従って、許容できる入射角変動の値を±εmaxとすると、(11)式で示す関係にある必要がある。
−2・sin(εmax /2)・cos(θ−εmax /2)≦δ/R ≦ 2・ sin(εmax /2)・cos(θ+ε
max /2) ・・・(11)
いま、εが十分小さいとすると、(12)および(13)式と近似することができ、(11)式は、(14)式となる。
sin(εmax /2)= εmax /2 ・・・(12)
cos(θ±εmax /2)=cosθ ・・・(13)
|δ|/R ≦ εmax・cosθ ・・・(14)
【0045】
前記課題を解決するための前記[3]の手段においては、前記検出系は、前記被検査体の表面により反射された光を投影するスクリーンと、当該スクリーン上の光強度分布を測定する受光器とを有するものである。
【0046】
本手段においては、被検査体の表面で反射された光は、たとえば半透明のスクリーンに投影される。受光器は、この半透明のスクリーンの裏側から、スクリーンに写った反射光線の像を撮像する。微小凹凸欠陥があると、その点が明部又は暗部となってスクリーンに写し出されるので、それを検出することにより、微小凹凸欠陥を検出することができる。
【0047】
前記課題を解決するための前記[4]の手段においては、前記光源は、一次元方向には平行性を、もう一次元方向には拡散特性を有し、前記検出系は、前記鋼板表面により反射された光のうち、前記光源が拡散特性を有する方の一次元方向成分のみについては、被検査面の像を前記スクリーン上に結像する光学系を有するものである。
【0048】
本手段においては、光源としてラインライトガイド等のライン状のものを使用できるので、ラインの広幅方向を被検査面の幅方向に一致させれば、入射角の広がりを狭くすることができ、確実に魔鏡現象を起こすことができる。そして、被検査体又は表面検査装置を移動させることにより、平面の検査を行うことができる。入射光は、被検査面の幅方向には拡散光となるが、こちらの方向成分については、被検査面の像をスクリーン上に結像させることにより、拡散光により魔鏡現象の発生が阻害されるのを防止することができる。
【0049】
すなわち、後に発明の形態の欄で述べるように、ラインライトガイドとシリンドリカルレンズを使用する等の簡単な方法で、被検査体に対して入射角が一定である照射光を作り出すことができる。この光源を使用した場合には、光束の長手方向(拡散特性を有する方向)を被検査体表面に平行にし、平行性を有する方向を被検査体表面に垂直にすることにより、被検査体に対して入射角が一定である照射光を作り出すことができ、魔鏡現象を発生させることができるが、光束の長手方向には光が拡散するので、入射方向が一定でなく、ボケが発生する。これを防ぐためには、光が照射される被検査体表面の像を、スクリーン又は撮像面に結像させるようにすればよい。
【0050】
なお、本明細書で被検査面の「幅方向」というのは、被検査体と検査装置の相対的な運動方向に直角な方向をいうものであり、被検査体と検査装置の相対的な運動方向を被検査体の「長さ方向」と称する。
【0051】
前記課題を解決するための前記[5]の手段は、前記[1]の手段または[2]の手段のいずれかであって、前記検出系が、撮像素子と前記被検査体の表面により反射された光を当該撮像素子上に投影する光学系を有することを特徴とするものである。
【0052】
前記[3]の手段においては、反射された光をスクリーン上に投影して、スクリーン上の光強度分布を受光器で測定していたが、本手段においては、反射された光を直接撮像素子で測定している。よって、前記[5]の手段と同様の作用効果が得られる。
【0053】
前記課題を解決するための前記[6]の手段は、前記[5]の手段であって、前記検出系は、前記被検査体の表面により反射された光のうち、一次元方向成分については、被検査面の像を前記撮像素子上に結像する光学系を有することを特徴とするものである。本手段の作用効果は、前記[4]の手段と同じである。
【0054】
前記課題を解決するための前記[7]の手段は、前記[1]の手段から[3]の手段、または前記[5]の手段のいずれかであって、前記光源が、被検査体に平行光を照射する光源であることを特徴とするものである。
【0055】
本手段においては、被検査体に照射される光が平行光であるので、被検査体が平面状の場合、平行光の平行の方向を被検査体平面と平行とすることで、被検査体の各部位における照射光の入射角を等しくすることができる。よって、照射範囲が広くても、魔鏡現象を起こすようにすることができる。
【発明の効果】
【0056】
本発明のうち前記[1]に係る発明においては、照射された光が凹凸形状に応じて集束や発散することによってできる明暗パターン(魔鏡現象)を検査するようにしたので、表面粗さと同等の深さの微小凹凸性疵を確実に検出することができる。また、光源として波長が10.6μm以上の光を用いることにより、その分入射角を小さくすることができる。よって、被検査体の凹凸や振動に対しても、その影響を小さいものにすることができる。
【0057】
前記[2]に係る発明においては、被検査体のばたつきや大きな凹凸を小さくすることができるので、照射光の入射角を大きくしても、受光位置が大きく変動することが無く、安定した検出が可能となる。
【0058】
前記[3]に係る発明、前記[5]に係る発明においては、微小凹凸欠陥があると、その点が明部又は暗部となってスクリーンに写し出されたり撮像面に投影されるので、それを検出することにより、微小凹凸欠陥を検出することができる。
【0059】
前記[7]に係る発明においては、被検査体が平面状の場合、被検査体の各部位における照射光の入射角を等しくすることができる。よって、照射範囲が広くても、魔鏡現象を起こすようにすることができる。
【0060】
前記[4]に係る発明、前記[6]に係る発明においては、ラインライトガイドとシリンドリカルレンズを使用する等の簡単な方法で、被検査体に対して入射角が一定である照射光を作り出すことができる。
【0061】
また、入射角87度以上とすると、検査体の凹凸や振動に対しても、その影響を小さいものにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1の形態である表面検査装置の構成を示す概要図である。
【図2】冷延鋼板のロール疵及を測定した場合の、照射光の入射角θとS/N比の関係の例を示す図である。
【図3】本発明の第2の形態である表面検査装置の構成を示す概要図である。
【図4】本発明の第3の形態である表面検査装置の構成を示す概要図である。
【図5】本発明の第4の形態である表面検査装置の構成を示す概要図である。
【図6】ラインライトガイドとシリンドリカルレンズを組み合わせた光源の概要図である。
【図7】光が拡散性を有する方向について、結像光学系を設けた例を示す概要図である。
【図8】本発明の第5の形態である表面検査装置の構成を示す概要図である。
【図9】2枚のシリンドリカルレンズを用いたテレセントリック系の結像装置の例を示す概要図である。
【図10】検出ヘッドをトラバースさせて検査する例の概要を示す図である。
【図11】魔鏡光学系によって得られる明暗のパターンの発生を説明するための図である。
【図12】魔鏡光学系によって得られる明点における光線の収束状況を示す図である。
【図13】入射角と明暗のパターンのピッチとの関係を示す図である。
【図14】被検査体がロールに接した状態にあるときのパスライン変動の影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
本発明を実施するための形態を、以下図面を用いて説明を行う。図1は、本発明の第1の形態である表面検査装置の構成を示す概要図である。図1において1は鋼
板、2はロール、3は検出ヘッド、4は光源、5はミラー、6はスクリーン、7は2次元カメラ、8は信号処理装置、9は出力装置である。
【0064】
鋼板1は、2つのロール2によって張力をかけられ、平面に張られて走行している。鋼板1の表面に近接して検出ヘッド3が設置されている。検出ヘッド3中には、光源4が設けられ、鋼板1の表面に、可視域の波長の平行光を入射角θが90度近くの大きな角度、例えば87度で照射している。平行光は、ランプからからの光を一旦集光し、ピンホールを透過させた後、レンズまたは放物面鏡を用いて形成している。この平行光は、ミラー5で反射された後、前記の入射角で鋼板1の表面を照射する。
【0065】
鋼板1の表面で反射された光は、半透明のスクリーン6上に像を結ぶ。その像をスクリーン6の背面から2次元カメラ(CCDカメラ等)7で撮像し、信号処理装置8で画像処理を行うことにより凹凸性疵を検出する。鋼板表面からの反射光は鏡面反射光となるが、凹凸性疵があると、その部分が、明るい又は暗いパターンとしてスクリーン6に写るので、疵の存在を検出することができる。画像処理の方法としては、2値化処理等、周知の手法を使用することができる。鋼板1の移動速度が高速の場合、撮影した像のぶれを防ぐために、ストロボ光源を使用して照明時間を短くすることが必要である。
【0066】
図2は、冷延鋼板のロール疵及を測定した場合の、照射光の入射角θとS/N比の関係を示したものである。このように、これらの疵は、入射角87度以下では検出が困難であるのに対し、87度以上とすることによりS/N比を大きくでき、検出可能になっていることがわかる。 以上の形態では、ストロボ光源と二次元カメラを用いたが、線状光源とリニアアレイカメラを用いることもできる。
【0067】
本発明の第2の形態である表面検査装置の構成を概要図を図3に示す。以下の図においては、前出の図に示された要素と同じ要素には、同じ符号を付してその説明を省略することがある。図3に示した形態は、基本的には図1に示したものと同じであるが、光源4に波長10.6μmのパルス発振のCO2レーザを、2次元カメラにサーモカメラを用いている。このように、長い波長の光を用いると入射角θの制約がなくなり、入射角θを小さくすることができるので、パスライン変動によりスクリーン上の像がぶれる影響を小さくすることができる。
【0068】
図4に、本発明の第3の形態である表面検査装置の構成の概要図を示す。本形態においては、図のように、鋼板1がロール2に巻き付いている部分を測定している。さらに、測定点の各点における入射角が等しくなるように、光源4から、ミラー5を介して、ロール径に合わせて収束する光を入射させている。このように、ロールに巻き付いている位置で測定することにより、被検査体のパスライン変動を極力抑えることができる。
【0069】
図5に本発明の第4の形態である表面検査装置の構成の概要図を示す。(a)が側面図、(b)が平面図であり、7’はリニアアレイセンサ、10はシリンドリカルレンズである。
【0070】
光源4にはレーザが用いられており、スリット状の平行なレーザ光が入射角87度以上でロール2に巻きつけられた鋼板1に入射する。スリット状のレーザ光は、その広幅方向が、鋼板1の幅方向に一致するようにされている。スリット光の狭幅wは、ロールの偏心等でパスラインが変動した場合でも検査線が等しい光量で照射されるよう余裕を持って設定しておく。
【0071】
鋼板1で反射された光は、シリンドリカルレンズ10により、図5(b)に示すように、鋼板1の幅方向については、リニアアレイセンサ7’上に縮小投影される。一方、図5(a)に示すように、鋼板1に垂直な面内においては、ロール2の形状により拡がる光となり、シリンドリカルレンズ10の影響は受けずにリニアアレイセンサ7’上に入射される。シリンドリカルレンズ10を用いるのは、幅の広いレーザースリット光を、幅の狭いリニアアレイセンサ7’面に収束させるためである。
【0072】
すなわち、この形態は、鋼板1の幅方向に長い一次元の検査範囲を有している。そして、鋼板1は、ロール2の回転により図5(a)の矢印方向に移動するので、順次リニアアレイセンサ7’からの信号を読み出し、図示しない信号処理装置に入力することで、鋼板1を2次元的に検査する。信号処理装置は、明暗の画像信号より凹凸性疵の有無を判定する。
【0073】
この形態においてはシリンドリカルレンズ7’を用いているが、例えば球面レンズ等を用いるなどにより、図5(a)の紙面内についても反射光の広がりを変化させると、全体の光束に対するセンサの相対的な大きさが変化することになるので、魔鏡像を検出する際の位置や分解能を変えることができる。
【0074】
次にラインライトガイドを光源に用いた形態について説明する。具体的な形態の説明に先立ち、図6にラインライトガイドとシリンドリカルレンズを組み合わせた光源を示す。図6において(a)が平面図、(b)が側面図であり、10’はシリンドリカルレンズ、11はラインライトガイド、11aはバンドルファイバである。
【0075】
本光源は、水平方向に長いラインライトガイド11と、垂直方向で凸レンズ作用を有し、水平方向ではレンズ作用を有しないシリンドリカルレンズ10’を組み合わせたものである。光発生源からバンドルファイバ11aを介して伝達された光は、ラインライトガイド11の先端部から放出されるが、各光ファイバの開口角(半角)はΦとなっている。そして、垂直方向の光の放出点の幅はdであり、水平方向には十分大きな放出幅を有している。ラインライトガイド11の光放出面は、シリンドリカルレンズ10’の焦点面位置に置かれている。
【0076】
よって、シリンドリカルレンズ10’の焦点距離をfとするとき、図6(b)に示されるように、垂直方向断面では、この光源からの光は、平行度d/fの平行光となっている。一方、水平方向断面では図6(a)に示されるように、ファイバの開口角Φの2倍の開き角を有する拡散光源となっている。すなわち、この光源からの光は、一次元方向には平行性を、もう一次元方向には拡散特性を有している。このような光源を用いて魔鏡現象を観察しようとしても、魔鏡の原理による明点及び暗点は、水平方向の光の拡散性のためにボケを生じるので、そのままでは明瞭に現れない。
【0077】
そこで、図7に示すように、光源が拡散性を有する水平方向について、被検査体の一点から反射された光を結像するためのシリンドリカルレンズ10を設ける。すると、光源が拡散性を有する方向については、被検査面の像がリニアアレイセンサ7’表面に結像するので、光源の拡散性によるボケを生じることなく、また、光源が平行性を有する方向については、従来通り魔鏡の原理が成立するため、結果として魔鏡の原理による明点及び暗点が観察できるようになる。このような系を構成することにより、従来においてはランプの光を一旦ピンホールによって絞ってからレンズ系で平行光束を作るのに対し、バンドルファイバ全体に入射する光を全て利用できるので、光発生源からの光量を有効に利用することができる。
【0078】
図8に、具体的な形態(第5の形態)の概要図を示す。図示しないランプの光は、バンドルファイバ11aへ入射され、ファイバが紙面に垂直な方向に線状に配置されたラインライトガイド11より出射される。出射された光は、図8の紙面に平行な方向については、シリンドリカルレンズ10’により平行光とされ、鋼板1に入射する。一方、紙面に垂直な方向については、拡散光として鋼板1に入射する。鋼板1からの反射光は、紙面に垂直な方向については、シリンドリカルレンズ10によって、検査線上の一点がリニアアレイ7’上の一点に結像される。
【0079】
すなわち、この形態も、鋼板1の幅方向に長い一次元の検査範囲を有している。そして、鋼板1は走行するので、順次リニアアレイセンサ7’からの信号を読み出し、図示しない信号処理装置に入力することで、鋼板1を2次元的に検査する。信号処理装置は、明暗の画像信号より凹凸性疵の有無を判定する。
【0080】
このような、反射光を一次元方向について結像させて観察するという考え方は、例えば図5に示すような平行光源の場合にも適用することができる。すなわち、入射角を大きくすることにより魔鏡の感度が向上している図5(a)の断面で見た方向に関しては結像系を用いず、図5(b)の断面で見た方向について結像系を導入することにより、検出能は維持したまま、若干の拡散反射に起因する像のボケや受光光量ロスを向上させることができる。
【0081】
以上の形態においては、一方向のみの結像のためにシリンドリカルレンズ1枚を用いたが、本発明はこのような実施例に限定されるものではないことは言うまでもない。たとえば、レンズを複数枚使用したり、図9に示すように、2枚のシリンドリカルレンズを用いたテレセントリック系を用いることも可能である。このようにテレセントリック系を用いることにより、素子ごとの光量むらを減少させることができる。
【0082】
また、以上の形態においては、被検査面による反射光をリニアアレイセンサ上に投影したが、リニアアレイセンサの代わりにスクリーンを設け、スクリーン上の像を撮像装置で観察することも可能である。
【0083】
図10に、以上の各形態における検出ヘッド3と鋼板1との関係の1例を示す。図10において12はリニアガイドである。図10(a)に示すように、これら各形態においては、検出ヘッド3は、鋼板1の板幅全域に亘って検査が可能なものではなく、検査視野はその一部のみをカバーするようになっている。そして、図に示すように、リニアガイド12に沿って鋼板1の幅方向にトラバースして往復し、鋼板1の表面をジグザグに検査するようになっている。
【0084】
鋼板1の検査される面の様子を、図10(b)に示す。検出ヘッド3の視野範囲は、図に示すように斜めになっている。そして、検出ヘッド3が、その視野幅だけ横に移動する間に、鋼板1は、周期性を有する疵の想定最大周期の2倍以上の長さだけ移動するようになっている。これにより、鋼板1の幅方向同一位置は、鋼板1が、周期性を有する疵の想定最大周期の2倍以上の長さだけ移動する間に亘って連続的に検査されるので、最大周期を有する疵でも、この間に必ず2回検出できる。よって、周期性を有する疵の周期を判別することができる。
【0085】
このように、周期性を有する疵の検出を目的とする場合には、鋼板1の一部のみの検査視野を有する検査装置をトラバースさせて鋼板1全面の欠陥検出を行うことができ、安価な装置とすることができる。また、本形態では、幅方向に連続的にトラバースしながら測定を行なったが、一定位置で最大周期の2倍以上の距離を測定した後、検出ヘッドの視野分移動するというように、間欠的にトラバースさせても構わない。
【符号の説明】
【0086】
1 鋼板
2 ロール
3 検出ヘッド
4 光源
5 ミラー
6 スクリーン
7 2次元カメラ
7’ リニアアレイセンサ
8 信号処理装置
9 出力装置
10、10’ シリンドリカルレンズ
11 ラインライトガイド
11a バンドルファイバ
12 リニアガイド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板表面に波長が10.6μm以上の光を照射する光源と、
前記鋼板表面の微小凹凸疵で反射された光の集束及び発散によって得られる明暗パターンに基づいて微小欠陥を検出する検出系とを有することを特徴とする表面検査装置。
【請求項2】
前記光源は、前記鋼板がロールに接している部位に光を照射するものであることを特徴とする請求項1に記載の表面検査装置。
【請求項3】
前記検出系は、前記鋼板表面により反射された光を投影するスクリーンと、当該スクリーン上の光強度分布を測定する受光器とを有してなることを特徴とする請求項1または請求項2のうちいずれか1項に記載の表面検査装置。
【請求項4】
前記光源は、一次元方向には平行性を、もう一次元方向には拡散特性を有し、
前記検出系は、前記鋼板表面により反射された光のうち、前記光源が拡散特性を有する方の一次元方向成分のみについては、被検査面の像を前記スクリーン上に結像する光学系を有することを特徴とする請求項3に記載の表面検査装置。
【請求項5】
前記検出系は、撮像素子と前記鋼板表面により反射された光を当該撮像素子上に投影する光学系とを有することを特徴とする請求項1または請求項2のうちいずれか1項に記載の表面検査装置。
【請求項6】
前記光源は、一次元方向には平行性を、もう一次元方向には拡散特性を有し、
前記検出系は、前記鋼板表面により反射された光のうち、前記光源が拡散特性を有する方の一次元方向成分のみについては、被検査面の像を前記撮像素子上に結像する光学系を有することを特徴とする請求項5に記載の表面検査装置。
【請求項7】
前記光源は、前記鋼板表面に平行光を照射する光源であることを特徴とする請求項1から請求項3、または請求項5のうちいずれか1項に記載の表面検査装置。
【請求項1】
鋼板表面に波長が10.6μm以上の光を照射する光源と、
前記鋼板表面の微小凹凸疵で反射された光の集束及び発散によって得られる明暗パターンに基づいて微小欠陥を検出する検出系とを有することを特徴とする表面検査装置。
【請求項2】
前記光源は、前記鋼板がロールに接している部位に光を照射するものであることを特徴とする請求項1に記載の表面検査装置。
【請求項3】
前記検出系は、前記鋼板表面により反射された光を投影するスクリーンと、当該スクリーン上の光強度分布を測定する受光器とを有してなることを特徴とする請求項1または請求項2のうちいずれか1項に記載の表面検査装置。
【請求項4】
前記光源は、一次元方向には平行性を、もう一次元方向には拡散特性を有し、
前記検出系は、前記鋼板表面により反射された光のうち、前記光源が拡散特性を有する方の一次元方向成分のみについては、被検査面の像を前記スクリーン上に結像する光学系を有することを特徴とする請求項3に記載の表面検査装置。
【請求項5】
前記検出系は、撮像素子と前記鋼板表面により反射された光を当該撮像素子上に投影する光学系とを有することを特徴とする請求項1または請求項2のうちいずれか1項に記載の表面検査装置。
【請求項6】
前記光源は、一次元方向には平行性を、もう一次元方向には拡散特性を有し、
前記検出系は、前記鋼板表面により反射された光のうち、前記光源が拡散特性を有する方の一次元方向成分のみについては、被検査面の像を前記撮像素子上に結像する光学系を有することを特徴とする請求項5に記載の表面検査装置。
【請求項7】
前記光源は、前記鋼板表面に平行光を照射する光源であることを特徴とする請求項1から請求項3、または請求項5のうちいずれか1項に記載の表面検査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−133967(P2010−133967A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1194(P2010−1194)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【分割の表示】特願2004−277357(P2004−277357)の分割
【原出願日】平成12年2月7日(2000.2.7)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【分割の表示】特願2004−277357(P2004−277357)の分割
【原出願日】平成12年2月7日(2000.2.7)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】
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