説明

表面検査装置

【課題】 ウエハ表面の傷、膜残滓物等の存在を光学的に且つ的確に検出する。
【解決手段】 ウエハ10を保持するウエハ保持部20と、直線偏光の検査光を生成照射する検査光源31,32と、検査光源からの検査光をウエハ10の表面の検査部分に照射したときの検査部分からの反射光を検出する受光部33,34とを備えて表面検査装置が構成される。そして、検査光源からの検査光が検査部分の表面に対してブリュースター角で入射するように検査光源を配置し、且つ、検査光が検査部分の表面から正反射した光を避けて検査部分からの反射散乱光を受光する位置に受光部33,34を配置し、この受光部により受光した反射散乱光に基づいて検査部分の欠陥検査を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直線偏光を用いてシリコンウエハ、液晶ガラス基板等のような検査対象物の表面欠陥を検査する表面検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンウエハ上に電子回路を形成する半導体製造装置は従来から良く知られているが、この半導体製造は複雑な多岐に亘る工程を経て行われ、この工程中において、電子回路が形成される基板となるシリコンウエハの表面の傷や、レジスト膜の残滓物有無を検査することが必要である。これは例えば、シリコンウエハに傷があれば、半導体製造工程内にこの傷が原因でウエハにクラックが発生したり、割れたりしてそれまでの製造作業が無駄となるという問題があるためである。また、半導体製造工程、特に光リソグラフィー工程においてウエハの表面処理に用いられる薄膜は、ゴミの発生対策等のために円盤状ウエハの外周部においてその都度除去されウエハが露出するが、この部分に膜残滓物等が残っていると、これが後の製造工程で剥がれてウエハの表面側に付着して、製造不良を発生させるおそれがあるためである。
【0003】
そこで、製造工程中で薄膜が除去されてウエハ表面が露出するウエハ外周端部周辺部(例えば、アペックスや上下のベベル)を複数の方向から観察して膜残差物、傷等を検出する表面検査装置が考案されている(例えば、特許文献1を参照)。このような検査装置にはレーザ光等の照射により生じる散乱光を利用して表面欠陥を検出する構成のものや、ラインセンサにより被検基板の画像を帯状に形成して欠陥を検出する構成のものがある。
【特許文献1】特開2004−325389号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、このような表面検査装置は検査対象部に光を照射してその反射光(反射散乱光、正反射光等)から欠陥を検査する構成であるため、ウエハ表面の傷がこの表面に残された膜残滓物により覆われているようなときには、膜残滓物表面において照射光が反射されて(すなわち、膜残滓物により傷が隠されて)この傷が検出できないおそれがあるという問題がある。一方、半導体製造プロセスでウエハ表面に形成されるレジスト層等の薄膜は光透過性を有しているため、上記従来の検査装置では薄膜の存在を検出するのが難しいという問題もある。
【0005】
本発明はこのような問題に鑑みたもので、ウエハ表面の傷、膜残滓物等の存在を光学的に且つ的確に検出できるような表面検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的達成のため、第1の本発明おいては、検査対象物を保持する保持部と、直線偏光の検査光を生成照射する検査光源と、前記検査光源からの検査光を前記検査対象物の表面の検査部分に照射したときの前記検査部分からの反射光を検出する受光部とを備えて表面検査装置が構成される。そして、前記検査光源からの検査光が前記検査部分の表面に対してブリュースター角で入射するように前記検査光源を配置し、且つ、前記検査光が前記検査部分の表面から正反射した光を避けて前記検査部分からの反射散乱光を受光する位置に前記受光部を配置し、前記受光部により受光した反射散乱光に基づいて前記検査部分の欠陥検査を行うように構成される。
【0007】
上記表面検査装置において、前記検査光源から前記検査部分に水平偏光の検査光および垂直偏光の検査光を切り換えて照射でき、前記受光部が水平偏光および垂直偏光を切り換えて受光できるように構成されていることが好ましい。
【0008】
さらにこの表面検査装置において、前記受光部により受光された水平偏光散乱光と垂直偏光散乱光との強度差に基づいて、検査対象物の欠陥の種類を区別する検査処理部を有していることが好ましい。
【0009】
上記表面検査装置において、検査対象物がシリコンウエハであり、前記検査処理部により前記シリコンウエハ表面における傷の有無および半導体製造プロセスで表面に形成される膜残滓物の有無を検出することが好ましい。
【0010】
第2の本発明に係る表面検査装置は、検査対象物を保持する保持部と、偏光方向が水平偏光方向に対して45度傾いた直線偏光の検査光を生成照射する検査光源と、前記検査光源からの検査光を前記検査対象物の表面の検査部分に照射したときの前記検査部分からの反射光を検出する受光部とを備えて構成される。そして、前記検査光源からの検査光が前記検査部分の表面に対して所定の角度で入射するように前記検査光源を配置し、且つ、前記検査光が前記検査部分の表面から正反射した光を受光する位置に前記受光部を配置し、前記受光部が前記検査光源からの検査光の直線偏光に対してクロスニコル関係となる直線偏光のみを通過させる直線偏光子を有し、前記直線偏光子を通過して前記受光部により受光した光に基づいて前記検査部分の欠陥検査を行うように構成される。
【0011】
上記表面検査装置において、検査対象物がシリコンウエハであり、前記検査処理部により前記シリコンウエハ表面における半導体製造プロセスで表面に形成される膜残滓物の有無を検出することが好ましい。
【0012】
第3の本発明に係る表面検査装置は、検査対象物を保持する保持部と、偏光方向が水平偏光方向に対して45度傾いた直線偏光の検査光を生成照射する検査光源と、前記検査光源からの検査光を前記検査対象物の表面の検査部分に照射したときの前記検査部分からの反射光を検出する第1受光部および第2受光部とを備えて構成される。そして、前記検査光源からの検査光が前記検査部分の表面に対してブリュースター角で入射するように前記検査光源を配置し、前記検査光が前記検査部分の表面から正反射した光を避けて前記検査部分からの反射散乱光を受光する位置に前記第1受光部を配置し、前記第1受光部により受光した反射散乱光に基づいて前記検査部分の欠陥検査を行い、前記第2受光部を前記検査光が前記検査部分の表面から正反射した光を受光する位置に配置し、前記第2受光部が前記検査光源からの検査光の直線偏光に対してクロスニコル関係となる直線偏光のみを通過させる直線偏光子を有し、前記直線偏光子を通過して前記第2受光部により受光した光に基づいても前記検査部分の欠陥検査を行うように構成される。
【0013】
なお、上記第1〜第3の本発明に係る表面検査装置において、前記検査光源および前記受光部に対して前記保持部により保持された前記検査対象物を相対移動させることが可能に構成され、前記検査対象物を相対移動させて前記検査部分を前記検査対象物の所望範囲内に広げて検査できることが好ましい。
【0014】
上記第1〜第3の本発明に係る表面検査装置において、前記検査対象物が円盤状のシリコンウエハである場合に、半導体製造プロセスにおいて表面に形成されたレジスト膜などが除去される前記シリコンウエハの外周部を前記検査部分として検査を行うことが好ましい。
【0015】
さらに、上記第1〜第3の本発明に係る表面検査装置において、前記検査光源が白熱ランプからの光を用いて前記検査光を生成するように構成したり、前記検査光源がレーザ光源からのレーザ光を用いて前記検査光を生成したりするように構成しても良い。
【発明の効果】
【0016】
上記のように構成された第1の本発明に係る表面検査装置によれば、検査光源からの検査光が検査部分の表面に対してブリュースター角で入射するので、表面に残滓膜が存在しても検査光はこの残滓膜を透過するため、残滓膜の下側に隠れた傷も的確に検出することができる。
【0017】
第2の本発明に係る表面検査装置によれば、偏光方向が水平偏光方向に対して45度傾いた直線偏光の検査光が検査部分に照射され、その正反射光のうち検査光とクロスニコル関係となる直線偏光のみが受光されるため、表面に残された膜残滓物に検査光が照射されてここで複屈折現象が生じると偏光面が回転するため、受光部でこれを検出でき、膜残滓物の存在を的確に検出することができる。
【0018】
第3の本発明に係る表面検査装置は、上記第1および第2の本発明の二つの構成を有する装置であり、これにより検査対象物表面の傷および膜残滓物を的確に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。本発明を適用した表面検査装置の一例を図1に示しており、この表面検査装置1は、シリコンウエハもしくは半導体ウエハ10(以下、単にウエハ10と称する)の外周端部および外周端部近傍における欠陥(傷、残滓膜等)の有無を自動的にもしくは目視で検査する構成である。なお、ウエハ10の表面に電子回路を形成する半導体製造プロセスにおいて、製品に使用されることがないウエハ10の外周部は表面に形成された薄膜が除去されてウエハ表面が露出する部分であり、表面検査装置1によりこの外周部分における傷、膜残滓物の有無の検査が行われる。
【0020】
検査対象となるウエハ10はシリコンからなる薄い円盤状に形成されており、その表面に複数の半導体チップに対応して回路パターンを形成するために、光リソグラフィー工程等の種々の工程を経て所定パターンで絶縁膜、電極配線膜、半導体膜等の薄膜が多層形成される。図2に示すように、ウエハの表面(上面)における外周端部には上ベベル部11がリング状に形成され、この上レベル部11より内周側の表面に回路パターンが形成される。また、ウエハ10の裏面(下面)における外周端部には下ベベル部12がリング状に且つ上ベベル部11と上下対称に形成される。そして、上ベベル部11と下ベベル部12とを繋ぐアペックス部13がウエハ端面を形成している。
【0021】
表面検査装置1は、ウエハ10を保持して回転させるウエハ保持部20と、ウエハ10の外周端部(上下ベベル部11,12及びアペックス部13)の表面に検査光を照射してその反射光を受光する検査部30と、検査部30で受光された光信号に基づいて欠陥検査処理を行う検査処理部4と、ウエハ保持部20によるウエハ10の回転移動制御および検査部30による検査制御を行う制御部5とを備える。さらに、制御部5に繋がって、画像表示部を備えたパソコンからなるインターフェース部6と、検査処理部4での検査結果を保存する記憶部7が設けられている。
【0022】
ウエハ保持部20は、回転駆動機構21と、回転駆動機構21から上方に延びた回転軸22と、回転軸22の上端部に略水平に取り付けられて上面側においてウエハ10を保持するウエハホルダ23とを有して構成される。ウエハホルダ23の内部には真空吸着機構(図示せず)が設けられており、ウエハホルダ23の上にウエハ10がその中心を回転軸22の中心と一致して真空吸着されて保持される。
【0023】
回転駆動機構21は回転軸22を回転駆動し、これにより回転軸22の上に取り付けられたウエハホルダ23とともにそこに吸着保持されたウエハ10をその回転中心Oを中心として回転させる。なお、ウエハホルダ23はウエハ10より径の小さい略円盤状に形成されており、ウエハホルダ23上にウエハ10が吸着保持された状態で、上ベベル部11、下ベベル部12およびアペックス部13を含むウエハ10の外周端部がウエハホルダ23から外周側にはみ出るようになっている。
【0024】
検査部30は、図2に示すように、ウエハ10の外周端部における上ベベル部11、下ベベル部12およびアペックス部13に対向し、且つ円周方向に離れて合計3個配設されており、ウエハ10の表面に所定検査光を照射し、その反射光を検出して表面検査を行うように構成されている。その具体的な構成および検査内容について、以下に説明するが、まず、図3を参照して、この検査装置による検査対象となるウエハ表面の傷および膜残滓物について説明する。
【0025】
図3には、ウエハ10の外周端部に傷および残滓膜が存在する例を示している。図3(A)および(B)が一つの例で、図3(C)および(D)が別の例を示しており、図3(A)および(C)がウエハ端部を断面して傷K1〜K5および膜M1〜M4の具体例を示しており、図3(B)および(D)にその側面から見た状態を示している。このように、特にウエハ10の端部に傷K1〜K5が存在すると、ここを起点としてウエハ10にクラックが生じてウエハ10が破損するおそれがあるため、このような傷の検出は非常に重要である。また、ウエハ10の表面に残滓膜M1〜M4が存在すると、半導体製造プロセスにおいてウエハ表面10から残滓膜M1〜M4が剥がれ、これが回路パターンが形成されるウエハ10の表面に付着して不良品を発生させるおそれがあるため、このような残滓膜の検出も非常に重要である。
【0026】
このような傷K1〜K5および残滓膜M1〜M4の検出を行うために検査部30が設けられており、第1の実施例としての検査部30の構成および作動について、図4を参照して説明する。なお、図4では、ウエハ10の上ベベル部11の表面を検査対象部とした例を示しており、この検査対象部に傷Kおよびこの傷Kの上にこれを覆う形で残滓膜Mが存在する例を示している。
【0027】
この検査部30は、光源31と、この光源31からの光を透過させて垂直偏光を作り出す(垂直偏光成分のみを透過させる)第1垂直偏光子32aおよび水平偏光を作り出す第1水平偏光子32bとを切換使用自在に有した照射側偏光子32を備える。なお、図示しないが、光源31の光を所定方向に揃えて照射検査光L1を作り出す照射光学系が設けられており、且つ、この入射検査光L1が照射側偏光子32を通って直線偏光にされてウエハ10の検査対象部に照射されるようになっている。このとき、入射検査光L1が残滓膜Mに対してブリュースター角で入射するように設定されている。すなわち、半導体製造プロセスで使用される膜材料は予め分かっているため、この膜材料による残滓膜Mが残っているとして、これに対して入射検査光L1がブリュースター角となるように、光源31、入力側偏光子32および入射光学系が配置されている。
【0028】
検査部30はさらに、ブリュースター角で入射した入射検査光L1が正反射する光路L2を避けた暗視野位置(傷や残滓膜等の異常が無い場合は暗く見える)に受光素子34を有している。すなわち、図4に示すように、入射検査光L1が傷Kにおいて散乱反射されたときにその散乱光成分L3を受ける位置に受光素子34が設けられている。さらに、この受光素子34の前側で散乱光成分L3の光路中に位置して、垂直偏光成分のみを透過させる第2垂直偏光子33aおよび水平偏光成分のみを透過させる第2水平偏光子33bを切換使用自在に有した受光側偏光子33が設けられている。なお、図示しないが、散乱光成分L3を、受光側偏光子33を通過させて受光素子34に導く受光光学系が設けられている。
【0029】
受光素子34により受光された受光信号は検査処理部4に送られて、傷Kおよび残滓膜Mの検出が行われるのであるが、これについて以下に説明する。
【0030】
まず、図4に示すように、照射検査光L1の光路中に第1垂直偏光子32aが位置するように照射側偏光子32の切換位置が設定され、且つ散乱光成分L3の光路中に第2垂直偏光子33aが位置するように受光側偏光子33の切換位置が設定され、光源31からの照射光が照射光学系により光路L1を通って検査対象部に照射される。このとき、光源31からの光は第1垂直偏光子32aを通って垂直偏光となり、これが検査対象部に照射される。
【0031】
ここで、この光路L1は検査対象部の表面に対してブリュースター角となる設定であるため、この光路L1を通って検査対象部に入射された垂直偏光は検査対象部に対する反射率がほぼ零となり、表面に光透過性を有する残滓膜Mがあってもこれをそのまま透過し、その下側のウエハ10の表面に到達する。このため、もし残滓膜Mの下側に図示のように傷Kがあると、ウエハ10は光透過性を有していないため、この傷に当たって散乱し、その散乱光の一部が光路L3の方に出射される。この光路L3には第2垂直偏光子33aが設けられているが、検査対象部に照射された垂直偏光はその偏光方向をほぼ維持したまま散乱光として光路L3に出射されるため、第2垂直偏光子33aを通って受光素子34に受光される。
【0032】
以上のことから分かるように、図4に記載の検査部30を用いれば、残滓膜Mの下に傷Kが存在する場合でも、この傷Kを検出できる。なお、膜残滓Mに被われることなく傷Kが露出している場合には、ウエハ10は光透過性を有していないため、光路L1を通って入射した検査光は傷Kに当たると散乱し、光路L3を通る散乱光成分は第2垂直偏光子33aを通って受光素子34に受光されるため、これも当然検出できる。
【0033】
さらに、図4に記載の検査部30での検査に際しては、上記のように照射検査光L1の光路中に第1垂直偏光子32aを位置させるとともに散乱光成分L3の光路中に第2垂直偏光子33aを位置させた状態で、光源31から第1垂直偏光子33aを通過した垂直偏光の検査光を検査対象部に照射して表面検査を行った後、照射検査光L1の光路中に第1水平偏光子32bを位置させるとともに散乱光成分L3の光路中に第2水平偏光子33bを位置させた状態で、光源31から第1水平偏光子33bを通過した水平偏光の検査光を検査対象部に照射して同一部分の表面検査を行う。
【0034】
ここで、検査光が垂直偏光のときと水平偏光のときには、ブリュースター角で入射しても、水平偏光の方が残滓膜Mを透過する率が低く、ある程度は残滓膜Mの表面で正反射される。このため、受光素子34により散乱光を受光して傷Kを検出したときに、傷Kの表面に残滓膜Mがあるときには、この傷Kからの散乱光強度が、垂直偏光を用いた場合の方が水平偏光を用いた場合より大きくなる。一方、傷Kの表面に残滓膜Mが無く、傷Kが露出している場合には、垂直および水平偏光での散乱強度に差が無くなる。このように、垂直および水平偏光に対する散乱光強度の差の有無に基づいて、傷Kの表面が残滓膜Mにより覆われているか否かを検出することができる。
【0035】
次に、第2実施例に係る検査部130を用いた表面欠陥の検査について、図5を参照して説明する。この検査部130は、光源131と、この光源131からの光を透過させて、偏光方向が水平偏光方向に対して45度傾いた直線偏光を作り出す照射側直線偏光子132を備える。ここでも、図示しないが、光源131の光を所定方向に揃えて照射検査光L11を作り出す照射光学系が設けられており、且つ、この入射検査光L11が照射側直線偏光子132を通って直線偏光にされてウエハ10の検査対象部に照射されるようになっている。但し、このときの入射検査光L11の入射角は任意の角度で良く、上述のようにブリュースター角で入射するように設定する必要はない。
【0036】
検査部130はさらに、このように入射した入射検査光L11が正反射する光路L12上に受光素子134を有しており、この受光素子134の前側で正反射光L12の光路中に位置して、照射側直線偏光子132に対してクロスニコル関係となる直線偏光のみを通過させる受光側直線偏光子133が設けられている。これも図示しないが、正反射光L12を、受光側直線偏光子133を通過させて受光素子34に導く受光光学系が設けられている。
【0037】
この検査部130による検査は、ウエハ10の表面に付着して残された残滓膜Mを検出するもので、光源131からの光は照射側直線偏光子132を通過して偏光方向が水平偏光方向に対して45度傾いた直線偏光からなる検査光L11が作り出され、この検査光L11がウエハ10の表面の検査対象部に照射される。この検査光L11は検査対象部において反射され、その正反射光L12は受光側直線偏光子133を通過して受光素子34に入り込む。
【0038】
ここで、受光側直線偏光子133は照射側直線偏光子132に対してクロスニコル関係となる直線偏光のみを通過させるものであるため、残滓膜Mが無い状態のウエハ10の表面において反射されたときには、偏光方向は変化せずにそのまま反射されるため、受光側直線偏光子133において反射光が遮断され、受光素子34に反射光は入り込まない。ところが、図5に示すように、ウエハ10の表面に残滓膜Mが存在すると、ここに照射された検査光は残滓膜Mにより複屈折現象を起こした後に正反射光L12として反射される。このように残滓膜Mによる複屈折現象、すなわち、垂直偏光と水平成分との屈折率が相違する現象が生じると、検査光L11は偏光方向が水平偏光方向に対して45度傾いた直線偏光であるため、正反射光L12に円偏光成分が生じ、この成分に対応する光が受光側直線偏光子133を通過し、受光素子134がその光を検出する。
【0039】
以上の説明から分かるように、検査光L11がウエハ10の表面において直接正反射されたときには受光素子134は光を検出しないが、ウエハ10の表面に残された残滓膜Mに照射されたときには複屈折現象が生じるために受光素子134が光を検出し、残滓膜Mの存在を検出することができる。
【0040】
次に、第3実施例に係る検査部230を用いた表面欠陥の検査について、図6を参照して説明する。この検査部230は、上述した第1実施例の検査部30と第2実施例の検査部130とを組み合わせた構成となっている。すなわち、検査部230は、光源231と、この光源231からの光を透過させて、垂直偏光を作り出す第1垂直偏光子232a、水平偏光を作り出す第1水平偏光子232bおよび偏光方向が水平偏光方向に対して45度傾いた直線偏光を作り出す照射側直線偏光子232c(図示せず)とを切換使用自在に有した照射側偏光子232を備える。ここでも図示しないが、光源231の光を所定方向に揃えて照射検査光L21を作り出す照射光学系が設けられており、且つ、この入射検査光L21が照射側偏光子232を通って直線偏光にされてウエハ10の検査対象部にブリュースター角で照射されるようになっている。
【0041】
さらに、ブリュースター角で入射した入射検査光L21が正反射する光路L23を避けた暗視野位置に第1受光素子234を有している。すなわち、図6に示すように、入射検査光L21が傷Kにおいて散乱反射されたときにその散乱光成分L22を受ける位置に第1受光素子234が設けられている。さらに、この第1受光素子234の前側で散乱光成分L22の光路中に位置して、垂直偏光成分のみを透過させる第2垂直偏光子233aおよび水平偏光成分のみを透過させる第2水平偏光子233bを切換使用自在に有した第1受光側偏光子233が設けられている。なお、図示しないが、散乱光成分L22を、第1受光側偏光子233を通過させて第1受光素子234に導く受光光学系が設けられている。
【0042】
この検査部230はさらに、ブリュースター角で入射した入射検査光L21が正反射する光路L23上に、第2受光素子236を有しており、この第2受光素子236の前側で正反射光L23の光路中に位置して、照射側直線偏光子232cに対してクロスニコル関係となる直線偏光のみを通過させる第2受光側直線偏光子235が設けられている。これも図示しないが、正反射光L23を、第2受光側直線偏光子235を通過させて第2受光素子236に導く受光光学系が設けられている。
【0043】
以上の構成の第3実施例による検査部230は、第1および第2実施例の組み合わせであるので、その検査方法を以下に簡単に説明する。
【0044】
まず、図6に示すように、照射検査光L21の光路中に第1垂直偏光子232aを位置させ、散乱光成分L22の光路中に第2垂直偏光子233aを位置させた状態で、光源231からの光を、第1垂直偏光子232aを通って垂直偏光の検査光とし、これを検査対象部に照射する。
【0045】
このとき、照射光路L21は検査対象部の表面に対してブリュースター角となる設定であるため、表面に光透過性を有する残滓膜Mがあってもこれをそのまま透過し、もし残滓膜Mの下側に図示のように傷Kがあると、検査光はこの傷に当たって散乱し、その散乱光の一部が光路L22の方に出射され、これが第2垂直偏光子233aを通って第1受光素子234に受光され、傷Kを検出する。なお、当然ながら、膜残滓Mに被われることなく傷Kが露出している場合にも、第1受光素子234が傷Kからの散乱光を受光することにより傷Kを検出する。
【0046】
さらに、この後に、照射検査光L21の光路中に第1水平偏光子232bを位置させるとともに散乱光成分L22の光路中に第2水平偏光子233bを位置させた状態で、光源31から第1水平偏光子233bを通過した水平偏光の検査光を検査対象部に照射して同一部分の表面検査を行う。そして、上記第1実施例と同様に、同一部分の垂直偏光による検出散乱光強度と水平偏光による検出散乱光強度とを比較し、傷Kの表面が残滓膜Mにより覆われているか否かを検出することができる。
【0047】
次に、照射検査光L21の光路中に照射側直線偏光子232cを位置させ、光源231からの光を、照射側直線偏光子232cを通って偏光方向が水平偏光方向に対して45度傾いた直線偏光を作り出し、これを検査光として検査対象部に照射する。この検査光L21は検査対象部において反射され、その正反射光L23は第2受光側直線偏光子235を通過して第2受光素子236に入り込む。
【0048】
ここで、第2受光側直線偏光子235は照射側直線偏光子232cに対してクロスニコル関係となる直線偏光のみを通過させるものであり、残滓膜Mが無い状態のウエハ10の表面において反射された正反射光は偏光方向はそのままのため、第2受光側直線偏光子235において反射光が遮断され、第2受光素子34に反射光は入り込まないので、残滓膜Mがないことが分かる。一方、ウエハ10の表面に残滓膜Mが存在すると、ここに照射された検査光は残滓膜Mにより複屈折現象を起こし、円偏光成分を有する正反射光L23として第2受光側直線偏光子235に入射し、円偏光成分に対応する光が第2受光側直線偏光子235を通過し、第2受光素子236がその光を検出して残滓膜Mの存在が検出される。
【0049】
なお、上記第1〜第3実施例において受光素子34,134,234,236により検出された光情報は、検査処理部4において処理されて傷Kおよび残滓膜Mの有無が判断され、制御部5によるウエハ保持部20の回転駆動制御内容と対比してウエハ10上における傷Kおよび残滓幕Mの位置が算出され、その内容がインターフェース部6に画像表示され、記憶部7に記憶される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の好ましい実施形態に係る表面検査装置の概略構成図である。
【図2】上記表面検査装置による検査対象となるウエハの外周部と、検査部との位置関係を示す側断面図である。
【図3】検査対象となるウエハの外周部に形成される傷、残滓膜の例を示す断面図および側面図である。
【図4】第1実施例に係る検査部の構成およびこの検査部によるウエハ表面の欠陥検査例を示す概略図である。
【図5】第2実施例に係る検査部の構成およびこの検査部によるウエハ表面の欠陥検査例を示す概略図である。
【図6】第3実施例に係る検査部の構成およびこの検査部によるウエハ表面の欠陥検査例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0051】
1 表面検査装置 4 検査処理部
10 ウエハ 20 ウエハ保持部
30,130,230 検査部
31,131,231 光源
32,132,232 照射側偏光子
33,133,233 受光側偏光子
34,134,234,236 受光部
K 傷 M 残滓幕

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物を保持する保持部と、直線偏光の検査光を生成照射する検査光源と、前記検査光源からの検査光を前記検査対象物の表面の検査部分に照射したときの前記検査部分からの反射光を検出する受光部とを備えて構成され、
前記検査光源からの検査光が前記検査部分の表面に対してブリュースター角で入射するように前記検査光源を配置し、且つ、前記検査光が前記検査部分の表面から正反射した光を避けて前記検査部分からの反射散乱光を受光する位置に前記受光部を配置し、前記受光部により受光した反射散乱光に基づいて前記検査部分の欠陥検査を行うように構成された表面検査装置。
【請求項2】
前記検査光源から前記検査部分に水平偏光の検査光および垂直偏光の検査光を切り換えて照射でき、前記受光部が水平偏光および垂直偏光を切り換えて受光できるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の表面検査装置。
【請求項3】
前記受光部により受光された水平偏光散乱光と垂直偏光散乱光との強度差に基づいて、検査対象物の欠陥の種類を区別する検査処理部を有していることを特徴とする請求項2に記載の表面検査装置。
【請求項4】
検査対象物がシリコンウエハであり、前記検査処理部により前記シリコンウエハ表面における傷の有無および半導体製造プロセスで表面に形成される膜残滓物の有無を検出することを特徴とする請求項3に記載の表面検査装置。
【請求項5】
検査対象物を保持する保持部と、偏光方向が水平偏光方向に対して45度傾いた直線偏光の検査光を生成照射する検査光源と、前記検査光源からの検査光を前記検査対象物の表面の検査部分に照射したときの前記検査部分からの反射光を検出する受光部とを備えて構成され、
前記検査光源からの検査光が前記検査部分の表面に対して所定の角度で入射するように前記検査光源を配置し、且つ、前記検査光が前記検査部分の表面から正反射した光を受光する位置に前記受光部を配置し、前記受光部が前記検査光源からの検査光の直線偏光に対してクロスニコル関係となる直線偏光のみを通過させる直線偏光子を有し、前記直線偏光子を通過して前記受光部により受光した光に基づいて前記検査部分の欠陥検査を行うように構成された表面検査装置。
【請求項6】
検査対象物がシリコンウエハであり、前記検査処理部により前記シリコンウエハ表面における半導体製造プロセスで表面に形成される膜残滓物の有無を検出することを特徴とする請求項5に記載の表面検査装置。
【請求項7】
検査対象物を保持する保持部と、偏光方向が水平偏光方向に対して45度傾いた直線偏光の検査光を生成照射する検査光源と、前記検査光源からの検査光を前記検査対象物の表面の検査部分に照射したときの前記検査部分からの反射光を検出する第1受光部および第2受光部とを備えて構成され、
前記検査光源からの検査光が前記検査部分の表面に対してブリュースター角で入射するように前記検査光源を配置し、
前記検査光が前記検査部分の表面から正反射した光を避けて前記検査部分からの反射散乱光を受光する位置に前記第1受光部を配置し、前記第1受光部により受光した反射散乱光に基づいて前記検査部分の欠陥検査を行い、
前記第2受光部を前記検査光が前記検査部分の表面から正反射した光を受光する位置に配置し、前記第2受光部が前記検査光源からの検査光の直線偏光に対してクロスニコル関係となる直線偏光のみを通過させる直線偏光子を有し、前記直線偏光子を通過して前記第2受光部により受光した光に基づいても前記検査部分の欠陥検査を行うように構成された表面検査装置。
【請求項8】
前記検査光源および前記受光部に対して前記保持部により保持された前記検査対象物を相対移動させることが可能に構成され、前記検査対象物を相対移動させて前記検査部分を前記検査対象物の所望範囲内に広げて検査できることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の表面検査装置。
【請求項9】
前記検査対象物が円盤状のシリコンウエハであり、半導体製造プロセスにおいて表面に形成されたレジスト膜などが除去される前記シリコンウエハの外周部を前記検査部分として検査を行うことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の表面検査装置。
【請求項10】
前記検査光源が白熱ランプからの光を用いて前記検査光を生成することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の表面検査装置。
【請求項11】
前記検査光源がレーザ光源からのレーザ光を用いて前記検査光を生成することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の表面検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−141119(P2011−141119A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−119500(P2008−119500)
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】