説明

表面欠陥検出方法、および表面欠陥検出装置

【課題】本発明は、金属帯上の有害疵と、過検出とを弁別して検出することができる表面欠陥検出方法、および、該方法に使用される表面欠陥検出装置を提供することを目的とする。
【解決手段】走行する金属帯の表面欠陥を検出する表面欠陥検出方法において、疵候補領域の検出積算値、検出長さ、および検出幅を算出し、検出幅と検出積算値を検出長さで除して得られる密度幅(検出積算値/検出長さ)との比(検出幅/密度幅)を比較することにより、過検出と欠陥とを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面欠陥検出方法、および表面欠陥検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼板、アルミ板等、連続した金属帯の製造工程において、その品質管理あるいは品質保証を推進するために、これらの表面に発生する種々の表面欠陥を連続的に検出することが重要であり、従来より、光学的手法による表面欠陥検査方法が実用化されてきている(特許文献1)。
【0003】
例えば、走行する鋼板等の表面の被検査部を照明して、CCDカメラのような撮像装置により連続的に撮影して得られる画像信号に基づいて、鋼板等の表面の疵を検出している。より具体的には、得られた表面画像の画素ごとに所定の輝度値以上であるかを判断して、閾値以上(または以下)の画素を、疵を構成する可能性のある画素として抽出する。その後、抽出された画素を対象に、隣接する画素同士の連結処理を行う。
【0004】
鏡面に仕上げられた表面に対してわずかの疵があるという場合には、このような方法でも有効であるが、検査対象に地模様または汚れ等がある場合、これらを疵として検出してしまう、いわゆる「過検出」が引き起こされることがある。
このような過検出が生じた場合、従来の表面欠陥検出装置では正確な疵判定が困難となり、検出率に劣る目視検査に頼らざるを得なくなり、結果として重大欠陥の見逃しなどの懸念が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭58−204353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みて、金属帯上の有害疵と、過検出とを弁別して検出することができる表面欠陥検出方法、および、該方法に使用される表面欠陥検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、従来技術の問題点について鋭意検討した結果、金属帯の表面の荒れなどによって過検出される場合、検出される疵領域の大きさ、および、疵領域内の画素の輝度値の総和との間に一定の関係があることを見出した。本発明者らは、該知見に基づいてさらに検討を行ったところ、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0008】
(1) 走行する金属帯の表面欠陥を検出する表面欠陥検出方法であって、
走行する金属帯表面に光源から光を入射し、金属帯表面で反射した反射光を受光することにより、該金属帯表面の二次元画像を表す画像信号を取得する画像信号取得工程と、
該画像信号が表す輝度を、該金属帯表面の正常部の輝度を基準として正規化し、正規化された輝度値のそれぞれについて、正常部を示す輝度レベルを基準にして、正極性と負極性に対してあらかじめ定められた閾値を超える画素領域を疵候補点として抽出する疵候補点抽出工程と、
互いに所定距離範囲内に存在する複数の該疵候補点を連続した一つの疵候補領域として連結処理する連結処理工程と、
該疵候補領域に含まれる該疵候補点の正規化された輝度値の絶対値の総和(検出積算値)、該金属帯の走行方向での該疵候補領域の最大長さの画素数(検出長さ)、および、該金属帯の走行方向に直交する方向での該疵候補領域の最大長さの画素数(検出幅)を算出する算出工程と、
該検出幅と、該検出積算値を該検出長さで除して得られる密度幅(検出積算値/検出長さ)との比(検出幅/密度幅)が、該金属帯に応じて設定される基準値を超える場合は、検出した該疵候補領域を過検出と判定し、該金属帯に応じて設定される基準値以下の場合は、検出した該疵候補領域を欠陥と判定する判定工程とを備える、表面欠陥検出方法。
【0009】
(2) 走行する金属帯表面で反射した反射光を受光して、該金属帯表面の二次元画像を表す画像信号を取得する受光部と、
該画像信号が表す輝度を、該金属帯表面の正常部の輝度を基準として正規化し、正規化された輝度値のそれぞれについて、正常部を示す輝度レベルを基準にして、正極性と負極性に対してあらかじめ定められた閾値を超える画素領域を疵候補点として抽出する疵候補点抽出手段と、
互いに所定距離範囲内に存在する複数の該疵候補点を連続した一つの疵候補領域として連結処理する連結処理手段と、
該疵候補領域に含まれる該疵候補点の正規化された輝度値の絶対値の総和(検出積算値)、該金属帯の走行方向での該疵候補領域の最大長さの画素数(検出長さ)、および、該金属帯の走行方向に直交する方向での該疵候補領域の最大長さの画素数(検出幅)を算出する算出手段と、
該検出幅と、該検出積算値を該検出長さで除して得られる密度幅(検出積算値/検出長さ)との比(検出幅/密度幅)が、該金属帯に応じて設定される基準値より大きい場合は、検出した該疵候補領域を過検出と判定し、該金属帯に応じて設定される基準値以下の場合は、検出した該疵候補領域を欠陥と判定する判定手段とを備える、表面欠陥検出装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、金属帯上の有害疵と、過検出とを弁別して検出することができる表面欠陥検出方法、および、該方法に使用される表面欠陥検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の表面欠陥検出装置の第1の実施形態の概略構成図である。
【図2】疵候補抽出手段、連結処理手段、および算出手段で得られた金属帯の表面の二次元画像の一実施態様を示す図である。
【図3】本発明の表面欠陥検出方法を行うフローを示す図である。
【図4】疵候補領域の一例を示す図である。
【図5】本発明の表面欠陥検出装置の第2の実施形態の概略構成図である。
【図6】実施例において使用された合金化溶融亜鉛めっき鋼板表面の検出結果を示す図である。
【図7】実施例において使用された溶融亜鉛めっき鋼板表面の検出結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の表面欠陥検出方法、および表面欠陥検出装置について、図面を参照して説明する。
【0013】
<表面欠陥検出装置(第1の実施形態)>
まず、以下に、本発明の表面欠陥検出装置の第1の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の表面欠陥検出装置の第1の実施形態の概略構成図である。
図1では、金属帯100と、光源12と、表面欠陥検出装置10と、表示手段24とが示される。表面欠陥検出装置10は、受光部14、疵候補点抽出手段16、連結処理手段18、算出手段20、および判定手段22を備える。
以下に、各構成について詳述する。
【0014】
(金属帯100)
金属帯100は長尺状の鋼板であればその種類は限定されず、例えば、冷延鋼板、各種めっき鋼板(亜鉛系めっき鋼板(溶融亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、亜鉛−アルミニウムめっき鋼板等))、ステンレス鋼板、アルミニウム板などが挙げられる。
金属帯100の搬送方法は特に制限されないが、例えば、一定間隔で配置された複数の搬送ロールの回転により搬送ライン上の金属帯100を搬送する。金属帯100表面の撮像を行うために、搬送ラインの上方に後述する光源12および受光部14を配置すればよい。
【0015】
(光源)
光源12は、金属帯100に対して光を照射する装置である。光源12は、金属帯100に対して一定入射角で、金属帯100の幅方向全体に光を入射するように配置される。例えば、図1で示されるように、金属帯100の搬送路の上方位置に1台の線状光源が金属帯100の幅方向の全幅にわたり配置されている。
光源12としては、拡散特性を持つ線状の光源、すなわち線状拡散光源を用いることが好ましい。また、金属帯100の正反射方向から鏡面反射成分と鏡面拡散反射成分とを分離して抽出する場合は、偏光を用いることが好ましい。線状拡散光源の効果に関しては、特許3275811号の段落[0050]〜[0092]に記載の通りである。
なお、線状拡散光源としては、蛍光灯を使用することもできる。また、バンドルファイバの出射端を直線上に整列させたファイバ光源を使用することもできる。
光源12の配置場所や数は、金属帯100の種類に合わせて適宜選択できる。
【0016】
(受光部)
受光部14は、金属帯100で反射された反射光を受光し、画像信号を得る装置である。例えば、CCDカメラが使用され、金属帯100表面上の光が照射された箇所に視野を設定する。受光部14は、1台で金属帯100の幅方向(搬送方向に対し直交方向)全てを測定できない場合には、幅方向に複数台設置してもよい。
受光部14が取得したアナログ画像信号は、図示しない受光部14内部に配置されるA/D変換部において、デジタル画像信号に変換される。生成された画像信号は後述する疵候補点抽出手段16に出力される。
なお、受光部14によって取得された画像信号は、必要に応じて、図示しない前処理部において輝度むらの補正処理(シェーディング補正)がされて、その後疵候補点抽出手段16に出力される。
【0017】
(疵候補点抽出手段)
疵候補点抽出手段16は、受光部14によって取得された画像信号に基づいて、疵候補点を抽出する手段である。
より具体的には、まず、疵候補点抽出手段16は受光部14によって取得された画像信号が表す輝度を、金属帯100表面の正常部の輝度を基準として正規化し、正常部に対する相対的な偏差を示す輝度信号(輝度値)に変換する。言い換えると、画像信号を、金属帯100表面の正常部の輝度が全階調の所定の輝度になるように正規化し、偏差を示す輝度信号に変換する。正常部に対して明るい高輝度の画素領域は正極性の輝度信号として検出され、正常部に対して暗い低輝度の画素領域は負極性の輝度信号として検出される。
次に、疵候補点抽出手段16では、この各画素の正規化された輝度値のそれぞれについて、正常部を示す輝度レベルを基準にして、正極性と負極性に対して、金属帯100の種類に応じてあらかじめ定められた閾値を超える画素領域を疵候補領域として抽出する。つまり、正常部を示す輝度値を基準にして、正極性輝度信号と負極性輝度信号に対してあらかじめ定められた閾値を超える画素領域を疵候補点として抽出する。言い換えると、金属帯100に応じて設定された正常部からの所定偏差より大きい画素領域を疵候補点として抽出する。疵候補点抽出手段16で得られたデータは、後述する連結処理手段18に出力される。
【0018】
(連結処理手段)
連結処理手段18は、疵候補点抽出手段16によって抽出された疵候補点を基に、疵候補領域を生成する手段である。
より具体的には、連結処理手段18は、疵候補点抽出手段16によって抽出された疵候補点のうち、互いに所定距離範囲内に存在する複数の疵候補点を連続した一つの疵候補領域として連結処理する手段である。
連結処理の一例を、図2に示す。図2(A)は、受光部14で得られた画像信号から疵候補点抽出手段16によって疵候補点が抽出された図である。図2(A)中の一マスは一画素に対応し、着色部が疵候補点として抽出された画素である。次に、ある疵候補点から2画素離れた位置にある疵候補点までを連結処理する場合、図2(B)中の黒太線で囲まれた疵候補領域Xが疵候補領域となる。なお、連結処理を施す疵候補点間の所定距離とは金属帯100の種類によって適宜変更されるが、例えば、一つの疵候補点と縦横斜めのいずれかで隣り合う疵候補点同士を連結処理してもよい。
連結処理手段18で得られたデータは、後述する算出手段20に出力される。
【0019】
(算出手段)
算出手段20は、連結処理手段18で得られた疵候補領域に関する特徴値を算出する手段である。
より具体的には、算出手段20は、連結処理手段18で得られた疵候補領域に含まれる疵候補点の正規化された輝度値の絶対値の総和(検出積算値)、金属帯100の走行方向での疵候補領域の最大長さの画素数(検出長さ)、および、金属帯100の走行方向に直交する方向での疵候補領域の最大長さの画素数(検出幅)を算出する手段である。得られた検出積算値、検出長さ、および検出幅に関するデータは、後述する判定手段22に出力される。
【0020】
(判定手段)
判定手段22は、上記算出手段20で算出された疵候補領域の特徴値(検出積算値、検出長さ、検出幅)から算出される密度幅と、金属帯100に応じて設定される基準値とを比較して、疵候補領域を過検出または欠陥と判定する手段である。
【0021】
(表示手段24)
表示手段24では、金属帯100表面の二次元画像と共に、判定手段22で得られた判定データを表示する装置である。表示画像範囲に、欠陥がある場合には、推定部の外枠表示、点滅表示、色変更表示等を行うとともに、検査員の注意を喚起し、検査見逃しの防止のために、警報音、アナウンスなどを行ってもよい。
【0022】
<表面欠陥検出方法>
図3のフローチャートを参照して、本発明の表面欠陥検出方法の一例について説明する。
まず、上述した光源12から走行する金属帯100に光が照射され、金属帯100表面からの反射光が受光部14(例えば、CCD)で受光され、金属帯100表面の画像信号が取得される(ステップS101)。取得された画像信号をアナログ信号からデジタル信号に変換する為、A/D変換され、金属帯100表面の二次元画像を表すデジタル画像信号の取得が行われる(ステップS102)。
【0023】
次に、デジタル画像信号に光源12からの照明光に起因した輝度むら等を補正するシェーディング補正等を行ってから、画像信号を、正常部の信号を基準レベルとして、正常部の信号が256階調の中心階調値「128」になるように正規化する(ステップS103)。より具体的には、各画素の輝度について基準値「128」を「0」とし、該基準値より高い輝度を有する画素領域(明るい画素領域)を正極性輝度信号として検出し(例えば、「+10」)、該基準値より低い輝度を有する画素領域(暗い画素領域)は負極性輝度信号として検出する(例えば、「−10」)。
なお、正規化する際の階調度は上記では256階調であるが、その階調度は特に制限されず、128階調、512階調、1024階調であってもよい。例えば、正常部の信号が128階調の中心階調値「64」になるように正規化してもよい。
上記一態様では、金属帯表面の正常部が全階調の中心輝度になるように正規化し、正常部を示す全階調の中心レベルを基準にして、正極性輝度信号および負極性輝度信号を検出している。なお、正常部からの輝度変化が正常部からひとつの方向に偏っている場合などは、偏りを考慮して、全階調の中心以外に正常部の輝度を設定する。
【0024】
次に、正規化された輝度値と、金属帯100に応じてあらかじめ設定された閾値とを比較する(ステップS104)。閾値は、金属帯100の種類によって適宜設定されるが、通常、正極性信号と負極性信号のそれぞれに設けられる。例えば、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の正常部の信号を256階調の中心階調値「128」になるように正規化し、正常部の輝度値を「0」として、「40」および「−40」をそれぞれ閾値として設定した場合、正常部を基準にした偏差が「40」を超えるか否かで判定がなされる。
正規化された輝度値が閾値を超えない画素領域は、正常部と判断される(ステップS105)。正規化された輝度値が閾値を超える画素領域は、疵候補点として抽出される。
【0025】
疵候補点があると判断された場合、互いに所定距離範囲内に存在する複数の疵候補点を連続した一つの疵候補領域として連結処理する(ステップS106)。
図4では、ステップS104において疵候補点をして抽出された点を着色画素部で表し、それらを連結処理して得られる領域を疵候補領域として示す。着色画素部内に示される数値は、正常部の輝度値を「0」として計算される各着色画素部の正規化された輝度値である。
【0026】
次に、疵候補領域に含まれる疵候補点の正規化された輝度値の絶対値の総和(検出積算値)、金属帯100の走行方向での疵候補領域の最大長さの画素数(検出長さ)、および、金属帯100の走行方向に直交する方向での疵候補領域の最大長さの画素数(検出幅)を算出する(ステップS107)。
例えば、図4において縦方向が走行方向に該当し、この場合、検出長さは「10」と算出され、検出幅は「4」と算出される。さらに、図4において、検出積算値は、疵候補領域内の各疵候補点の正規化された輝度値を足して1000と算出される。
【0027】
次に、検出幅と、検出積算値を検出長さで除して得られる密度幅(検出積算値/検出長さ)との比(検出幅/密度幅)を算出し、金属帯100に応じて設定される基準値との比較を行う(ステップS108)。例えば、図4をもとにすると、密度幅は「100」と算出される。
設定される基準値は金属帯100の種類、および、上記正規化した際の階調度によって異なるが、例えば、正常部の信号が256階調の中心階調値「128」になるように正規化し、金属帯100として溶融亜鉛めっき鋼板を使用した場合、その基準値は「10」と算出される。
【0028】
上記比(検出幅/密度幅)が金属帯100に応じて設定される基準値より大きい場合、検出した疵領域を過検出と判定する(ステップS109)。
また、上記比(検出幅/密度幅)が金属帯100に応じて設定される基準値以下の場合、検出した疵領域を欠陥(有害疵)と判定する(ステップS110)。
【0029】
欠陥と判定された疵候補領域は、正常部からの輝度値が大きく異なり、互いに密に隣接して存在する画素領域が多数連結されて構成される。
一方、過検出と判定された疵候補領域は、散逸して存在する疵候補点が連結されて検出幅及び検出長さが大きな疵として構成される傾向にある。
本発明者らは、このような知見に基づいて、密度幅と検出幅とを比較することにより、過検出と欠陥との判定ができることを見出している。
【0030】
<表面欠陥検出装置(第2の実施形態)>
まず、以下に、本発明の表面欠陥検出装置の第2の実施形態を図面を参照して説明する。図5(A)は、本発明の表面疵検査装置の第2の実施形態の受光部付近の側面図であり、図5(B)は同装置の上面図である。
図5(A)および(B)では、金属帯100と、線状拡散光源30と、シリンドリカルレンズ32と、偏光板34と、表面欠陥検出装置50と、表示手段24とが示される。表面欠陥検出装置50は、受光部36、疵候補点抽出手段16、連結処理手段18、算出手段20、および判定手段22を備える。受光部36は、検光子38a、38b、38cおよび受光カメラ40a、40b、40cとから構成される。
図5(A)および(B)では、線状拡散光源30と、シリンドリカルレンズ32と、偏光板34と、受光部36の点を除いて、図1に示す態様と同様の構成を有するものであるので、同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その説明を省略し、主として線状拡散光源30と、シリンドリカルレンズ32と、偏光板34と、受光部36について説明する。
【0031】
第2の実施形態においては、金属帯100表面からの反射光に含まれる鏡面反射成分と鏡面拡散反射成分とを区別して検出することよって、被検査面における表面の割れ・抉れ・めくれ上がりのような顕著な凹凸性を持たない模様状ヘゲ欠陥を確実に検出でき、より高い欠陥検出精度を発揮することができる。
なお、鏡面反射成分と鏡面拡散反射成分との検出メカニズムについては、特開平11−183398号の段落[0022]〜[0092]に記載の通りである。
【0032】
線状拡散光源30は、一部に拡散反射塗料を塗布した透明導光棒の両端から内部へメタルハライド光源の光を投光することによって、幅方向に一様の出射光を得る。
線状拡散光源30の各位置から出射された金属帯100に対する入射光は、シリンドリカルレンズ32と偏光板34を介して走行状態の金属帯100の全幅に対して、例えば60°の入射角θで照射する。偏光板34の方位角(偏光角)αは45°に設定されている。
【0033】
受光部36は、レンズの前に検光角βがそれぞれ−45°、45°、90°に設定された検光子38a、38b、38cを有する3台のリニアアレイカメラからなる受光カメラ40a、40b、40cから構成されている。
各受光カメラ40a、40b、40cの各光軸は互いに平行に維持されている。このように各受光カメラ40a、40b、40cの光軸が平行に維持されていると、3台の受光カメラ40a、40b、40cの各画素は同一視野サイズで一対一に対応する。
【0034】
各受光カメラ40a、40b、40cで受光された反射光における金属帯100の幅方向の1ライン分の各画素の輝度値はそれぞれ輝度信号a,b,cに正規化されて疵候補点抽出手段16へ送信される。
【0035】
疵候補点抽出手段16においては、各輝度信号a〜cが表す輝度を金属帯100表面の正常部の輝度を基準として正規化し、正常部に対する相対的な偏差を示す画像信号に変換する。
その後、あらかじめ定めた疵候補判定基準により、疵を確定する。
【0036】
その後、上述した連結処理工程、算出工程、判定工程を経て、「欠陥」または「過検出」の検出が行われる。
【実施例】
【0037】
図1に記載の表面欠陥検出装置を使用して、合金化溶融亜鉛めっき鋼板および溶融亜鉛めっき鋼板の表面欠陥の検出を行った。なお、疵候補点抽出工程においては、得られた画像信号を、正常部の信号が256階調の中心階調値「128」になるように正規化し、該基準値「128」を「0」として正常部に対する相対的な偏差を示す輝度信号に変換した。該基準値より高い輝度を有する画素領域(明るい画素領域)を正極性輝度信号として検出し、該基準値より低い輝度を有する画素領域(暗い画素領域)は負極性輝度信号として検出した。その後、正常部からの所定偏差を「40」と設定し(言い換えると、輝度値「+40」および「−40」を閾値として設定し)、正規化された輝度値が該閾値(偏差)を超える画素を疵候補点として抽出した。
【0038】
なお、判定工程において、「過検出」または「欠陥」を判定する基準値は、この場合「10」とした。
【0039】
算出工程で得られた比(検出幅/密度幅)を縦軸、検出幅を横軸として各疵候補領域をプロットすると共に、目視確認により各疵候補領域を「過検出」または「欠陥」を判定した(図6:合金化溶融亜鉛めっき鋼板、図7:溶融亜鉛めっき鋼板)。
【0040】
図6から確認できるように、比(検出幅/密度幅)が基準値「10」以下の場合の疵候補領域は、目視確認から「欠陥」であることが確認された。一方、比(検出幅/密度幅)が基準値「10」超の場合の疵候補領域は、目視確認から「過検出」であることが確認された。
つまり、比(検出幅/密度幅)と基準値「10」とを比較することにより、「過検出」または「欠陥」を判定できることが確認された。
【0041】
なお、図7においても同様に、比(検出幅/密度幅)と基準値「10」とを比較することにより、「過検出」または「欠陥」を判定できることが確認された。
【符号の説明】
【0042】
100 金属帯
10、50 表面欠陥検出装置
12 光源
14 受光部
16 疵候補点抽出手段
18 連結処理手段
20 算出手段
22 判定手段
24 表示手段
30 線状拡散光源
32 シリンドリカルレンズ
34 偏光板
36 受光部
38a、38b、38c 検光子
40a、40b、40c 受光カメラ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行する金属帯の表面欠陥を検出する表面欠陥検出方法であって、
走行する金属帯表面に光源から光を入射し、金属帯表面で反射した反射光を受光することにより、前記金属帯表面の二次元画像を表す画像信号を取得する画像信号取得工程と、
前記画像信号が表す輝度を、前記金属帯表面の正常部の輝度を基準として正規化し、正規化された輝度値のそれぞれについて、正常部を示す輝度レベルを基準にして、正極性と負極性に対してあらかじめ定められた閾値を超える画素領域を疵候補点として抽出する疵候補点抽出工程と、
互いに所定距離範囲内に存在する複数の前記疵候補点を連続した一つの疵候補領域として連結処理する連結処理工程と、
前記疵候補領域に含まれる前記疵候補点の正規化された輝度値の絶対値の総和(検出積算値)、前記金属帯の走行方向での前記疵候補領域の最大長さの画素数(検出長さ)、および、前記金属帯の走行方向に直交する方向での前記疵候補領域の最大長さの画素数(検出幅)を算出する算出工程と、
前記検出幅と、前記検出積算値を前記検出長さで除して得られる密度幅(検出積算値/検出長さ)との比(検出幅/密度幅)が、前記金属帯に応じて設定される基準値を超える場合は、検出した前記疵候補領域を過検出と判定し、前記金属帯に応じて設定される基準値以下の場合は、検出した前記疵候補領域を欠陥と判定する判定工程とを備える、表面欠陥検出方法。
【請求項2】
走行する金属帯表面で反射した反射光を受光して、前記金属帯表面の二次元画像を表す画像信号を取得する受光部と、
前記画像信号が表す輝度を、前記金属帯表面の正常部の輝度を基準として正規化し、正規化された輝度値のそれぞれについて、正常部を示す輝度レベルを基準にして、正極性と負極性に対してあらかじめ定められた閾値を超える画素領域を疵候補点として抽出する疵候補点抽出手段と、
互いに所定距離範囲内に存在する複数の前記疵候補点を連続した一つの疵候補領域として連結処理する連結処理手段と、
前記疵候補領域に含まれる前記疵候補点の正規化された輝度値の絶対値の総和(検出積算値)、前記金属帯の走行方向での前記疵候補領域の最大長さの画素数(検出長さ)、および、前記金属帯の走行方向に直交する方向での前記疵候補領域の最大長さの画素数(検出幅)を算出する算出手段と、
前記検出幅と、前記検出積算値を前記検出長さで除して得られる密度幅(検出積算値/検出長さ)との比(検出幅/密度幅)が、前記金属帯に応じて設定される基準値より大きい場合は、検出した前記疵候補領域を過検出と判定し、前記金属帯に応じて設定される基準値以下の場合は、検出した前記疵候補領域を欠陥と判定する判定手段とを備える、表面欠陥検出装置。

【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−229928(P2012−229928A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96828(P2011−96828)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】