説明

表面水率測定システム及び表面水率測定方法

【課題】即時的かつ連続的にCSG材の表面水率を得ることを可能とする表面水率測定システム及び表面水率測定方法を提供する。
【解決手段】表面水率測定システム1は、CSG材が搬送される搬送路A1を画成する排出筒部33と、中性子線を出射する出射ユニット21aと、出射ユニット21aからの中性子線を入射させる入射ユニット21bと、を有し、排出筒部33内のCSG材に放射線を透過させてCSG材の含水量を測定するRI水分計21と、を備えている。出射ユニット21a及び入射ユニット21bは、それぞれ排出筒部33の外壁面331,332に設置されており、稜線E1を挟んで近接している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤材料の表面水率を測定する表面水率測定システム及び表面水率測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のダム建設にあっては、材料の合理化、設計の合理化、及び施工の合理化を図るために、台形CSGダムに関する研究が盛んに行われている。台形CSGダムとは、地盤材料であるCSG材に水とコンクリートを混合してなるCSG(Cemented Sand and Gravel)を用いた台形状のダムである。また、CSG材とは、河床砂礫等の岩石質の母材で、分級等の調整を行っていないものであり、建設現場周辺で容易に採取可能なものである。このように、台形CSGダムでは、CSG材といった比較的確保しやすい材料が用いられるので、従来の重力式コンクリートダムに比較して、環境保全やコスト縮減が図られる。
【0003】
このようなCSG材は、前述のように分級等の調整がされていないことから、粒度や表面水率にバラツキがあることを前提とした管理が必要である。特に、CSGの強度を管理するためには、CSG材に混合する水の量を適切に制御することが必要である。例えば、台形CSGダムの施工にあたり、施工当日のCSG材の品質管理としては、1時間に1回程度の表面水率測定を行って混合する水の量を補正することが業界内で推奨されている。このようなCSG材に混合する水の量の適切な制御には、CSG材の表面水率を正確に得ることが必要となる。ここで、従来、CSG材の表面水率を測定する簡易的な方法としては、「電子レンジ法」や「フライパン法」と称される方法等が知られている(下記非特許文献1参照。)。
【非特許文献1】「土質試験の方法と解説」,社団法人地盤工学会,2000年3月,第一回改訂版,p.61−67.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記電子レンジ法やフライパン法によれば、最低1時間程度の測定時間が必要であり、上記の推奨される管理を円滑に実現することは難しい。更に、上記電子レンジ法やフライパン法では、表面水率を即時的に連続的に得ることはできないので、混合する水の量を自動的に制御することは困難である。従って、CSG材の表面水率を即時的かつ連続的に得ることが可能な測定の方式が求められる。
【0005】
そこで、本発明は、即時的かつ連続的に地盤材料の表面水率を得ることを可能とする表面水率測定システム及び表面水率測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の表面水率測定システムは、地盤材料の表面水率を測定する表面水率測定システムにおいて、地盤材料が搬送される搬送路を画成する筒状の搬送筒部と、放射線を出射する放射線出射部と、放射線出射部からの放射線を入射させる放射線入射部と、を有し、搬送筒部内の地盤材料に放射線を透過させて地盤材料の表面水率に関連する物理量を測定するRI測定装置と、を備え、放射線出射部及び放射線入射部は、互いの間に搬送路の少なくとも一部を挟んで、互いの間の直線距離が、RI測定装置による物理量の有効な測定を可能とする範囲の最大距離として定義される有効測定最大距離以下となるように、搬送筒部の外壁面に設置されていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の表面水率測定方法は、地盤材料の表面水率を測定する表面水率測定方法において、筒状の搬送筒部で画成される搬送路で地盤材料を搬送させる搬送ステップと、放射線を出射する放射線出射部と、放射線出射部からの放射線を入射させる放射線入射部と、を有するRI測定装置で、搬送筒部内の搬送中の地盤材料に放射線を透過させて地盤材料の表面水率に関連する物理量を測定するRI測定ステップと、を備え、RI測定ステップでは、放射線出射部及び放射線入射部を、互いの間に搬送路の少なくとも一部を挟んで、互いの間の直線距離が、RI測定装置による物理量の有効な測定を可能とする範囲の最大距離として定義される有効測定最大距離以下となるように、搬送筒部の外壁面に設置することを特徴とする。
【0008】
このシステム及び方法によれば、搬送筒部で画成された搬送路を地盤材料が搬送される。この搬送筒部の外壁面には、搬送路の少なくとも一部を挟むように、RI測定装置の放射線出射部と放射線入射部とが設置される。そして、RI測定装置により、搬送筒部内の搬送路で搬送される地盤材料に放射線が透過され、表面水率に関する物理量が即時的に連続的に測定される。このとき、地盤材料の搬送流量を大きくすべく搬送路が太く設計されている場合にも、放射線出射部と放射線入射部との直線距離はRI測定装置の有効測定最大距離未満となるように設置されているので、搬送筒部内で搬送される地盤材料の物理量の測定が有効に行われる。
【0009】
また、本発明の表面水率測定システムでは、搬送筒部の外壁面は、互いに直交する方向に延在する第1の壁面及び第2の壁面を有しており、放射線出射部は、第1の壁面に取り付けられ、放射線入射部は、第2の壁面に取り付けられていることとしてもよい。
【0010】
このような外壁面の構成や、放射線出射部及び放射線入射部の配置により、放射線出射部と放射線入射部とを近接させやすくなり、RI測定装置による有効な測定がより容易になる。
【0011】
また、この場合、搬送筒部の外壁面は、第1の壁面に平行に対向する第3の壁面と、第2の壁面に平行に対向する第4の壁面と、を更に有し、放射線出射部は、第4の壁面よりも第2の壁面に近い位置に取り付けられ、放射線入射部は、第3の壁面よりも第1の壁面に近い位置に取り付けられることとしてもよい。この構成により、放射線出射部と放射線入射部とを更に近接させることができる。
【0012】
また、本発明の表面水率測定システムでは、搬送路に直交する面内における搬送筒部の最小幅が、RI測定装置の有効測定最大距離よりも大きいこととしてもよい。この場合、RI測定装置の放射線出射部及び放射線入射部を、対面させて搬送筒部の外壁面に設置するとすれば、放射線出射部と放射線入射部との直線距離は、RI測定装置の有効測定最大距離よりも大きくならざるを得ない。本発明は、搬送筒部がこのような構成をもつ場合に、特に、好適に適用でき、放射線出射部と放射線入射部との直線距離を、RI測定装置の有効測定最大距離以下にすることができる。
【0013】
また、本発明の表面水率測定システムは、上記RI測定装置を複数備えており、RI測定装置のうちの1つは、地盤材料が含有する水分量を測定するRI水分計であり、RI測定装置の他のうちの1つは、地盤材料の密度を測定するRI密度計であることとしてもよい。
【0014】
また、この場合、本発明の表面水率測定システムは、RI水分計で測定された地盤材料が含有する水分量の値と、RI密度計で測定された地盤材料の密度の値と、に基づいて、地盤材料の表面水率を算出する表面水率算出手段を更に備えてもよい。
【0015】
また、本発明の表面水率測定システムにおいて、上記の地盤材料は、CSG材であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の表面水率測定システム及び表面水率測定方法によれば、即時的かつ連続的に地盤材料の表面水率を得ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る表面水率測定システム及び表面水率測定方法の好適な一実施形態について詳細に説明する。
【0018】
図1に示すCSG製造設備10は、台形CSGダムの建設現場周辺で採取される地盤材料としてのCSG材に、セメントと水とを混合し、台形CSGダムの材料として用いられるCSG(Cemented Sand and Gravel)を製造するための設備である。ここで、CSG材とは、河床砂礫等の岩石質の母材で、分級等の調整を行っていないため大小様々な粒径の礫が混在したものである。このようなCSG材は、台形CSGダムの建設現場周辺で容易に採取可能であるため、骨材として利用することで建設コスト削減に寄与する。なお、CSG製造設備10に導入されるCSG材は、予め、オーバーサイズの礫を除去・破砕するといった処理が施されており、CSG材の最大粒径は約80mmとされている。
【0019】
このCSG製造設備10は、CSG材を導入するベルトコンベア3と、CSG材が投入されるホッパ5と、ホッパ5を通過したCSG材を搬送するベルトコンベア7と、混合装置9とを備えている。更に、CSG製造設備10は、ベルトコンベア7で搬送されるCSG材に、セメントを添加するセメント添加部13と、水を添加する給水部15とを備えている。上記ベルトコンベア3、ホッパ5、ベルトコンベア7、及び混合装置9は、この順にCSG材を搬送する搬送路Aを構成している。CSG製造設備10に導入されたCSG材は、この搬送路Aを搬送されながら、ベルトコンベア7においてセメント及び水が添加され、混合装置9で混合されて、CSGに加工される。
【0020】
このCSG製造設備10で製造されるCSGの強度を管理するためには、給水部15からの給水量を適切に制御することが必要である。そして、給水量の制御には、CSG材の表面水率の情報が必要であるので、CSG材の表面水率を即時的に連続的に得ることが必要となる。そこで、このCSG製造設備10は、給水部15よりも上流側において、搬送路Aを搬送されるCSG材の表面水率を得る表面水率測定システム1を備えている。
【0021】
表面水率測定システム1は、ホッパ5に設置されたRI水分計(RI測定装置)21及びRI密度計(RI測定装置)23と、RI水分計21及びRI密度計23から得られる情報に基づいてCSG材の表面水率を求める表面水率算出部(表面水率算出手段)25とを備えている。また、CSG製造設備10は、上記表面水率算出部25を含み、得られた上記表面水率に基づいて給水部15の給水量を制御する制御情報管理部17を有している。制御情報管理部17としては、例えば、パーソナルコンピュータ等が用いられてもよい。なお、制御情報管理部17は、セメント添加部13を制御し、CSG材に添加するセメント量を調整する機能も有している。
【0022】
以下、図2〜図4を参照し、RI水分計21、RI密度計23、及びホッパ5について詳細に説明する。図に示すように、ホッパ5は、ベルトコンベア3からのCSG材100を受ける立方体形状のホッパ本体部31を備えている。そして、ホッパ本体部31の下方には、断面積が絞られた排出筒部33が設けられている。ベルトコンベア3の下流端から落下したCSG材100は、ホッパ本体部31の上部の開口からホッパ本体部31内に投入され、ホッパ本体部31内で下方に搬送され、更に排出筒部33を通じて鉛直下方に搬送され、下部の開口からベルトコンベア7(図1)に排出される(搬送ステップ)。
【0023】
排出筒部33は、正方形断面の筒状をなす部分であり、搬送路A(図1)の一部である搬送路A1を画成する搬送筒部を構成している。この排出筒部33の断面積は、搬送路AにおけるCSG材100の必要流量が十分確保できるような面積に設定されており、排出筒部33の水平断面は、例えばここでは、一辺70cmの正方形とされている。この排出筒部33は、鉛直面をなす4つの外壁面331,332,333,334を有している。このうち、外壁面332はベルトコンベア3の搬送方向の前方側に位置している。また、外壁面334は、外壁面332に平行に対向し上記搬送方向の後方側に位置している。
【0024】
更に、外壁面331及び外壁面333は、上記外壁面332,334に直交する外壁面であり、互いに平行に対向している。なお、排出筒部33においては、上記各外壁面331〜334同士が交差する辺として、4つの稜線が形成されるが、以下の説明において、外壁面331と外壁面332との間の稜線を稜線E1、外壁面332と外壁面333との間の稜線を稜線E2、外壁面333と外壁面334との間の稜線を稜線E3、外壁面334と外壁面331との間の稜線を稜線E4、と称する。
【0025】
RI水分計21は、対象物に中性子線を透過させて対象物に含有される水分量を測定する装置である。RI水分計21は、中性子線を出射する出射ユニット21aと、対象物透過後の出射ユニット21aからの中性子線を入射させ検出する入射ユニット21bと、入射ユニット21bで検出された中性子線を分析して対象物の含水量を得る制御部(図示せず)と、を備えている。RI密度計23は、対象物にガンマ線を透過させて対象物の密度を測定する装置である。RI密度計23は、ガンマ線を出射する出射ユニット23aと、対象物透過後の出射ユニット23aからのガンマ線を入射させ検出する入射ユニット23bと、入射ユニット23bで検出されたガンマ線を分析して対象物の密度を得る制御部(図示せず)と、を備えている。なお、上記したRI水分計21の制御部及びRI密度計23の制御部は、制御情報管理部17に含まれてもよい。
【0026】
このようなRI水分計21及びRI密度計23にあっては、出射ユニット21a(23a)と入射ユニット21b(23b)との間の直線距離が大きくなるほど、正確な測定値が得難くなる。従って、この種のRI水分計21及びRI密度計23では、満足な測定精度が得られる有効な測定を可能とするための、出射ユニット21a(23a)と入射ユニット21b(23b)との最大の距離が設定される。あるいは、このような最大距離が、機器の仕様として設定されている場合もある。この距離を、以下の説明では「有効測定最大距離」と称する。RI水分計、RI密度計における有効測定最大距離は、一般には、35cm程度である。ここでは、RI水分計21及びRI密度計23の有効測定最大距離が、共に35cmと設定されている場合を例として説明する。
【0027】
ここで、前述のように排出筒部33の水平断面は一辺70cmの正方形であることから、排出筒部33の水平断面内での最小幅は70cmであり、上記有効測定最大距離35cmよりも大きい。従って、出射ユニット21aと出射ユニット21aとを対面させる向きで排出筒部33の外壁面に設置しようとすれば、出射ユニット21aと出射ユニット21aとの直線距離が有効測定最大距離の35cmを超えてしまう。その結果、RI水分計21によるCSG材の含水量測定は不可能となってしまう。また、同様に、RI密度計23によるCSG材の密度測定も不可能となってしまう。一方、排出筒部33の寸法を小さくしようとすれば、CSG製造装置10におけるCSG材の必要流量が確保できなくなるおそれがある。
【0028】
そこで、この表面水率測定システム1では、上記RI水分計21の出射ユニット21aが、排出筒部33の外壁面331(第1の壁面)に取り付けられており、排出筒部33の内側に向けて(すなわち、搬送路A1に向けて)中性子線を出射することができる。そして、外壁面331に隣接する外壁面332(第2の壁面)には、上記中性子線を入射させるための入射ユニット21bが取り付けられている。また、出射ユニット21aの設置位置は外壁面334(第4の壁面)よりも外壁面332(第2の壁面)に近い位置であり、入射ユニット21bの設置位置は外壁面333(第3の壁面)よりも外壁面331(第1の壁面)に近い位置である。また、出射ユニット21aと入射ユニット21bとは、稜線E1から同じ距離だけ離れて設置され、同じ高さに位置している。
【0029】
このような配置により、出射ユニット21aと入射ユニット21bとが稜線E1を挟んで直近に位置することになるので、出射ユニット21aと入射ユニット21bとの直線距離を小さくすることができる。この配置によれば、排出筒部33の水平断面内における最小幅がRI水分計21の有効測定最大距離35cmよりも大きい場合であっても、出射ユニット21aと入射ユニット21bとの直線距離を有効測定最大距離35cm以下にすることが可能になる。例えば、図に示した例では、出射ユニット21aと入射ユニット21bとの直線距離は、幾何学的な関係から、20〜30cm程度にすることが可能である。
【0030】
この構成に基づき、出射ユニット21aが排出筒部33の内側に向けて中性子線を出射すると、中性子線は、稜線E1の近辺にあるCSG材100を透過して、入射ユニット21bに入射する。そして、RI水分計21の制御部では、入射ユニット21bで検出された中性子線に基づいて所定の演算が行われ、CSG材100の単位重量当たりの含水量が得られる(RI測定ステップ)。なお、この含水量の演算に用いる各パラメータは、事前の校正試験により決定され上記制御部に組み込まれている。ここで得られた含水量の値は、制御情報管理部17の表面水率算出部25(図1)に入力される。
【0031】
以上のように、出射ユニット21aと入射ユニット21bとの直線距離を有効測定最大距離35cm以下にすることにより、RI水分計21を用いて、出射ユニット21aと入射ユニット21bとの間にある搬送路A1内のCSG材の含水量を測定することができる。また、RI水分計を採用したことにより、即時的に測定値を得ることができ、搬送路A1内の搬送中のCSG材の含水量を連続的に得ることができる。
【0032】
また、同様に、上記RI密度計23の出射ユニット23aは、排出筒部33の外壁面334に取り付けられ、排出筒部33の内側に向けて(すなわち、搬送路A1に向けて)ガンマ線を出射することができる。また、入射ユニット23bは、外壁面333に取り付けられる。そして、出射ユニット23aは、外壁面331よりも外壁面333に近い位置に取り付けられ、入射ユニット23bは、外壁面332よりも外壁面334に近い位置に取り付けられている。また、出射ユニット23aと入射ユニット23bとは、稜線E3から同じ距離だけ離れて設置され、同じ高さに位置している。
【0033】
このような配置により、出射ユニット23aと入射ユニット23bとが稜線E3を挟んで直近に位置することになるので、出射ユニット23aと入射ユニット23bとの直線距離を小さくすることができる。このような配置によれば、排出筒部33の水平断面内における最小幅がRI密度計23の有効測定最大距離35cmよりも大きい場合であっても、出射ユニット23aと入射ユニット23bとの直線距離を有効測定最大距離35cm以下にすることが可能になる。
【0034】
この構成に基づき、出射ユニット23aが排出筒部33の内側に向けてガンマ線を出射すると、ガンマ線は、稜線E3の近辺にあるCSG材100を透過して、入射ユニット23bに入射する。そして、RI密度計23の制御部では、入射ユニット23bで検出されたガンマ線に基づいて所定の演算が行われ、CSG材100の密度が得られる(RI測定ステップ)。なお、この密度の演算に用いる各パラメータは、事前の校正試験により決定され上記制御部に組み込まれている。ここで得られた密度の値は、制御情報管理部17の表面水率算出部25(図1)に入力される。
【0035】
以上のように、前述のRI水分計21と同様に、出射ユニット23aと入射ユニット23bとの直線距離を有効測定最大距離以下にすることにより、RI密度計23を用いて、出射ユニット23aと入射ユニット23bとの間にある搬送路A1内のCSG材の密度を測定することができる。また、RI密度計を採用したことにより、即時的に測定値を得ることができ、搬送路A1内の搬送中のCSG材の密度を連続的に得ることができる。
【0036】
前述のとおり、表面水率算出部25には、RI水分計21からの含水量の値(ρmRとする)と、RI密度計からの密度の値(ρtRとする)とが入力される。そして、表面水率算出部25は、下式(1),(2)によりCSG材100の表面水率HRI(%)を算出する。
wRI=ρmR・100/(ρtR−ρmR) …(1)
HRI=(wRI−Q)/(1+Q/100) …(2)
ここで、wRIはCSG材100の含水比(%)を表している。また、QはCSG材100の吸水率(%)を表しており、Qの値は、制御情報管理部17に別途入力される。
【0037】
制御情報管理部17は、表面水率算出部25が算出した表面水率が急変した等の場合には、給水量を補正するように給水部15を制御する。例えば、表面水率HRIが急激に増加した場合には給水量を減少させ、表面水率HRIが急激に減少した場合には給水量を増加させるように給水部15を制御する。このような給水量の制御により、CSG材の表面水率の変動に関わらず、台形CSGダムの材料であるCSGの強度を一定に管理することができる。
【0038】
また、フライパン法や電子レンジ法でCSG材の表面水率を測定する場合には、CSG材のサンプリング方法によって結果が偏る場合があるところ、上述した表面水率測定システム1及び表面水率測定方法によれば、サンプリングが不要であるので、このような問題が発生しない点で優れている。また、表面水率測定システム1及び表面水率測定方法では、フライパン法や電子レンジ法に比べて、CSG材を直接パーソナルコンピュータ等に入力することができ、給水部15の自動制御を図ることもできるので、CSGの品質管理の省力化が可能である。また、また、表面水率測定システム1及び表面水率測定方法は、ホッパ3の外壁面に出射ユニット21a,23aと入射ユニット21b,23bを取付けることで、複雑な改造等を必要とすることなく、既存のホッパ3を利用することができる。
【0039】
ところで、上述した表面水率測定システム1及び表面水率測定方法によれば、稜線E1近辺を通過する一部のCSG材100の含水量が測定され、稜線E3近辺を通過する他の一部のCSG材100の密度が測定され、これらの測定値に基づいて表面水率が算出されることになる。ここで、CSG材100の粒度分布がホッパ5内で均質であるとは限らないので、得られた表面水率が、CSG材100全体としての表面水率を正しく表していないことも考えられる。例えば、図2に示すように、CSG材がベルトコンベア3で搬送されホッパ5に投入される場合には、粒径が大きいものほどベルトコンベア3からの落下の際に前方側に投げ出されるので、ホッパ5の外壁面332に近い側に粒径が大きいものが偏ってしまう傾向があると考えられる。
【0040】
そこで、本発明者らは、上述したCSG製造設備10において、表面水率測定システム1及び表面水率測定方法の実効性を評価する実験を行った。この実験では、同じCSG材のサンプルに対して、上述の表面水率測定システム1による表面水率の測定と、JIS A 1203:1999に規定された乾燥法による表面水率の測定と、を行い両測定値を比較した。そして、測定した全データについて、両測定値の相関図を図5に示し、両測定値の偏差のヒストグラムを図6に示した。
【0041】
図5、図6によれば、大半のデータが、偏差±1.0%の範囲内(図5では破線の間の範囲内)に分布していることが判る。この結果により、表面水率測定システム1及び表面水率測定方法は、実効精度が1.0%以内であり、CSG材の表面水量を測定するにあたり、乾燥法と同様に採用可能であることが確認された。なお、偏差が極端に大きいデータは、特異点として、図5において×印で示し、図6において斜線部として示している。
【0042】
更に、本発明者らは、上述した表面水率測定システム1から、RI密度計23による密度測定を省略した場合についても、同様に、実効性を評価する実験を行った。すなわち、この場合、表面水率算出部25には、RI密度計23の測定値に代えて、固定値を入力した。これは、同じ現場から採取されたCSG材であれば、密度の変動は小さいと考えられるからである。そして、同じCSG材のサンプルに対して、RI密度計23を省略した表面水率測定システム1による表面水率の測定と、乾燥法による表面水率の測定と、を行い両測定値を比較した。そして、測定した全データについて、両測定値の相関図を図7に示し、両測定値の偏差のヒストグラムを図8に示した。
【0043】
図7、図8によれば、大半のデータが、偏差±1.0%の範囲内(図7では破線の間の範囲内)に分布していることが判る。この結果により、RI密度計23による密度測定を省略した場合でも、表面水率測定システム1及び表面水率測定方法の実効精度は、1.0%以内であることが確認された。この結果から、同じ現場から採取されたCSG材を使用する限り、RI密度計23による密度測定を省略しても、表面水率測定システム1及び表面水率測定方法は、同様の実効精度が期待できることが判った。なお、偏差が極端に大きいデータは、特異点として、図7において×印で示し、図8において斜線部として示している。
【0044】
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。例えば、表面水率測定システム1では、排出筒部33の断面形状を正方形としているが、他の正多角形、円形などの他の断面形状としてもよい。例えば、排出筒部33に代えて、図9に示す円形断面の排出筒部35を採用した場合を考えると、出射ユニット21a(23a)の取付け面に接する平面35aと、入射ユニット21b(23b)の取付け面に接する平面35bとが交差する角度αが、30°以上になるように、両ユニットの取付け位置を設定することが好ましい。このような取付け位置であれば、幾何学的な条件から、出射ユニット21a(23a)と入射ユニット21b(23b)との間の直線距離を35cmとしたときに、中性子線(ガンマ線)を、CSG材100の粒径80mmの粒子の中心に透過させることができ、正確な測定を行うことができる。
【0045】
また、表面水率測定システム1では、RI水分計21の出射ユニット21aと入射ユニット21bとを、稜線E1を挟んで近接させるように設置し、RI密度計23の出射ユニット23aと入射ユニット23bとを、稜線E3を挟んで近接させるように設置しているが、RI水分計21及びRI密度計23の設置位置は、これ以外の組み合わせとしてもよい。なお、上記のような位置関係で出射ユニットと入射ユニットとを稜線E1〜E4を挟んで近接させるようにRI測定装置を設置することを、以下の説明では、例えば「RI測定装置を稜線E1位置に設置する」等と簡易的に表現する。
【0046】
例えば、図10に示すように、RI水分計21を稜線E1位置に設置し、RI密度計23を稜線E2位置に設置してもよい。この構成によれば、ホッパ5内におけるCSG材の粒度分布の対称性から、ほぼ同じ粒度組成のCSG材について含水量値と密度値とが測定され、表面水率が算出されるので、より正確な表面水率が得られる。
【0047】
また、図11に示すように、RI水分計21及びRI密度計23を同じ稜線位置に上下に並べて設置すれば、ほぼ同じ位置のCSG材の含水量値と密度値とに基づいて表面水率が算出されるので、より正確な表面水率が得られるといった点で好ましいと考えられる。一方で、上述の表面水率測定システム1や図10の形態では、RI水分計21及びRI密度計23の各ユニットを上下方向に並べるスペースが必要ないので、排出筒部33の上下方向の寸法を抑えられる点で好ましい。
【0048】
また、図12に示すように、RI水分計21及びRI密度計23を複数(ここでは、2個ずつ)として、稜線E1〜E4位置に設置してもよい。また、前述の通り、排出筒部33にはRI水分計21のみを設置してRI密度計23を省略し、制御情報管理部17には密度の固定値を入力するようにしてもよい。この場合にも、RI水分計21を複数用いてもよい。また、表面水率測定システム1では、RI水分計21及びRI密度計23の2種類の機器を準備しているが、双方の機能を併せ持つRI水分密度計を採用することにより、出射/入射ユニットの設置スペースを削減してもよい。
【0049】
また、この表面水率測定システム1は、RI密度計23による測定データを用いて、CSG材のレキ率(粒径25.6mmの割合)を推定し、粒度の判定や異種材料混入を判定するといった利用方法にも展開できる可能性がある。なお、上述した各構成は、適宜組み合わせて採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る表面水率測定システム及び表面水率測定方法が適用されるCSG製造設備を示すブロック図である。
【図2】図1のCSG製造設備に含まれるベルトコンベア及びホッパを示す斜視図である。
【図3】図2のホッパの鉛直方向の断面図である。
【図4】図2のホッパの排出筒部における水平断面図である。
【図5】本発明者らによる実験の結果を示す相関図である。
【図6】本発明者らによる実験の結果を示すヒストグラムである。
【図7】本発明者らによる実験の結果を示す相関図である。
【図8】本発明者らによる実験の結果を示すヒストグラムである。
【図9】円形断面をもつ排出筒部に出射ユニットと入射ユニットとを設置する例を示す水平断面図である。
【図10】ホッパの排出筒部にRI水分計及びRI密度計を設置する他の例を示す水平断面図である。
【図11】ホッパの排出筒部にRI水分計及びRI密度計を設置する更に他の例を示す斜視図である。
【図12】ホッパの排出筒部にRI水分計及びRI密度計を設置する更に他の例を示す水平断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1…表面水率測定システム、21…RI水分計(RI測定装置)、21a…出射ユニット(放射線出射部)、21b…入射ユニット(放射線入射部)、23…RI密度計(RI測定装置)、23a…出射ユニット(放射線出射部)、23b…入射ユニット(放射線入射部)、25…表面水率算出部(表面水率算出手段)、33…排出筒部(搬送筒部)、331…外壁面(第1の壁面)、332…外壁面(第2の壁面)、333…外壁面(第3の壁面)、334…外壁面(第4の壁面)、100…CSG材(地盤材料)、A,A1…搬送路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤材料の表面水率を測定する表面水率測定システムにおいて、
前記地盤材料が搬送される搬送路を画成する筒状の搬送筒部と、
放射線を出射する放射線出射部と、前記放射線出射部からの前記放射線を入射させる放射線入射部と、を有し、前記搬送筒部内の前記地盤材料に前記放射線を透過させて前記地盤材料の前記表面水率に関連する物理量を測定するRI測定装置と、を備え、
前記放射線出射部及び前記放射線入射部は、
互いの間に前記搬送路の少なくとも一部を挟んで、
互いの間の直線距離が、前記RI測定装置による前記物理量の有効な測定を可能とする範囲の最大距離として定義される有効測定最大距離以下となるように、
前記搬送筒部の外壁面に設置されていることを特徴とする表面水率測定システム。
【請求項2】
前記搬送筒部の前記外壁面は、互いに直交する方向に延在する第1の壁面及び第2の壁面を有しており、
前記放射線出射部は、前記第1の壁面に取り付けられ、
前記放射線入射部は、前記第2の壁面に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の表面水率測定システム。
【請求項3】
前記搬送筒部の前記外壁面は、前記第1の壁面に平行に対向する第3の壁面と、前記第2の壁面に平行に対向する第4の壁面と、を更に有し、
前記放射線出射部は、前記第4の壁面よりも前記第2の壁面に近い位置に取り付けられ、
前記放射線入射部は、前記第3の壁面よりも前記第1の壁面に近い位置に取り付けられることを特徴とする請求項2に記載の表面水率測定システム。
【請求項4】
前記搬送路に直交する面内における前記搬送筒部の最小幅が、前記RI測定装置の前記有効測定最大距離よりも大きいことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の表面水率測定システム。
【請求項5】
前記RI測定装置を複数備えており、
前記RI測定装置のうちの1つは、前記地盤材料が含有する水分量を測定するRI水分計であり、
前記RI測定装置の他のうちの1つは、前記地盤材料の密度を測定するRI密度計であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の表面水率測定システム。
【請求項6】
前記RI水分計で測定された前記地盤材料が含有する水分量の値と、前記RI密度計で測定された前記地盤材料の密度の値と、に基づいて、前記地盤材料の表面水率を算出する表面水率算出手段を更に備えたことを特徴とする請求項5に記載の表面水率測定システム。
【請求項7】
前記地盤材料は、CSG材であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の表面水率測定システム。
【請求項8】
地盤材料の表面水率を測定する表面水率測定方法において、
筒状の搬送筒部で画成される搬送路で前記地盤材料を搬送させる搬送ステップと、
放射線を出射する放射線出射部と、前記放射線出射部からの前記放射線を入射させる放射線入射部と、を有するRI測定装置で、前記搬送筒部内の搬送中の前記地盤材料に前記放射線を透過させて前記地盤材料の前記表面水率に関連する物理量を測定するRI測定ステップと、を備え、
前記RI測定ステップでは、
前記放射線出射部及び前記放射線入射部を、
互いの間に前記搬送路の少なくとも一部を挟んで、
互いの間の直線距離が、前記RI測定装置による前記物理量の有効な測定を可能とする範囲の最大距離として定義される有効測定最大距離以下となるように、
前記搬送筒部の外壁面に設置することを特徴とする表面水率測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−121930(P2009−121930A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−295921(P2007−295921)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】