説明

表面粗さ/形状測定装置

【課題】 測定子の移動が自動で行える表面粗さ/形状測定装置の実現。
【解決手段】 被測定物の表面位置の高さを検出する測定子6と、測定子を被測定物に対して相対的に移動する測定子移動機構とを備え、測定子を被測定物の表面に対して相対的に移動した時の被測定物の表面位置の高さの変化を検出することにより、被測定物の表面の粗さ又は形状を測定する表面粗さ/形状測定装置であって、測定子を、現在位置から、被測定物表面の指示された表面位置の高さを検出する測定指示位置に移動するのに必要な移動情報を生成する移動情報生成部16と、移動情報生成部の生成した移動情報に基づいて、測定子を被測定物に対して相対的に移動する移動制御部20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面粗さ/形状測定装置に関し、特に触針を被測定物の測定部分に接触させる操作を改良した表面粗さ/形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表面粗さ/形状測定装置は、被測定物(ワーク)表面に沿って、触針を有する測定子(ピックアップ)を移動させ、測定子の変位量を電気信号に変換してコンピュータ等の計算機に読み取ることで、被測定物(ワーク)表面の粗さ又は輪郭形状を測定する(例えば、下記特許文献1)。図1に、従来の表面粗さ/形状測定装置の基本構成を示す。
【0003】
表面粗さ/形状測定装置1は、テーブル2上に載置されたワークの表面粗さを測定する測定子(ピックアップ)6を有し、この測定子6は駆動部4に固定されるホルダ5に支持されている。
【0004】
測定子6は、先端に触針7を有し、この触針7の変位量が測定子6に内蔵された差動トランス(図示せず)によって電圧に変換される。そして、この電圧値はA/D変換器によってディジタル信号に変換され、コンピュータ等のデータ処理装置(図示せず)に入力される。これにより、データ処理装置によってワークの表面粗さを示す測定データが取得される。
なお、差動トランスの代わりに差動インダクタンスやレーザ干渉計を使用して触針7の変位量を検出する場合もある。また、触針を使用せずに、光学的な方法などを利用して非接触で表面位置を検出する場合もある。ここでは、触針7の変位量を差動トランスで検出する構成を例として説明を行うが、本発明はこれに限定されず、表面粗さ/形状測定装置であれば、どのような方式で表面位置の高さを検出してもよい。
【0005】
図1に示すとおり、駆動部4は、テーブル2に立設されたコラム3に取り付けられ、上記のデータ処理装置からの指示に従ってモータが駆動されることにより、駆動部4はホルダ5をワークが載置されるテーブル面上の所定の1方向である左右方向(X方向)に移動させることが可能であり、駆動部4全体もまた、ワークの高さにあわせて、コラム3に沿ってテーブル面に垂直な上下方向(Z方向)に移動させることが可能である。また、コラム3は、テーブル面上の所定の1方向である前後方向(Y方向)に移動させることが可能である。このように、測定子6は3軸(XYZ)方向に移動可能である。なお、Y方向にワークを移動させるY軸駆動用ユニットをテーブル2上に載置して、3軸方向に移動可能にする場合もある。更に、平行移動だけでなく、回転移動を組み合わせて3次元移動を実現する場合もある。いずれにしろ、操作部(図示せず)を操作して、測定子6を3次元に移動させることが可能である。
【0006】
測定を行う場合は、オペレータが、ワークをテーブル2の上に載置し、操作部を操作して測定子6をワークに対して移動し、触針7をワーク表面の測定する位置(測定位置)に接触させる。図2は、この触針7をワークの測定位置に接触させる動作を説明する図である。図2において、PMはワーク90上の測定位置であり、触針7を測定位置PMに接触させた後、触針7をワーク90の表面に接触させた状態で、測定子6をX軸方向に移動して測定を行う。ここでは、触針7の変位方向を測定子6の検出方向と称し、触針7をワーク90の表面に接触させる時には、測定子6の検出方向に移動して近づける。非接触型の測定子の場合には、測定子が測定位置の高さを測定する状態に移動する。ここでは、測定子がワーク表面の測定位置の高さを測定する状態、触針を有する場合には触針がワーク表面の測定位置に接触した状態を、測定指示位置と称する。
【0007】
図2に示す位置から触針7を接触させるには、オペレータが、操作部を操作して、触針7を、その時点の位置から、測定位置PMを通るZ軸上の位置PRまで移動させる。その後接触動作を指示すると、測定子6が所定の速度で降下を開始し、触針7がワーク90の表面に接触し、検出信号が所定値になると、測定子6の降下が停止する。この状態で測定を指示すると、測定子6がX軸方向に移動を開始する。オペレータは、触針7とワーク90を見ながら、触針7を位置PRまで移動させる操作を行う。したがって、位置PRの座標及び位置PRと接触位置PMの距離は、オペレータの目視で設定される。
【0008】
上記のように、位置PRから測定位置PMまでの触針7の移動は、検出信号を監視して、触針7がワーク90の表面に接触したことを検出してから停止されるので、この時の移動速度をあまり高速にすることはできない。特に、微小な凹凸を検出する測定子6は、触針7の変位範囲(検出可能範囲)が狭く、移動速度を低速に制限する必要がある。
なお、この動作は、光学的な方法などで非接触で表面位置を検出する場合も同様であり、測定子を低速で表面に向けて移動し、測定子が測定状態になると、測定子の移動を停止する。
【0009】
従来、このような表面粗さ/形状測定装置は、例えば塗装面の光沢評価、フィルム膜の表面性状評価、液晶塗膜面の平坦度などの測定に専ら使用されており、操作性が良好であることが重要な課題であった。
【0010】
【特許文献1】特開2002−107144号公報
【特許文献2】特開平10−239042号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のように、表面粗さ/形状測定装置において、触針をワークの接触位置に接触させる動作、すなわち測定子を測定指示位置に移動させる動作はオペレータの操作により行われていた。そのため、ワークの複数箇所(ライン)の表面粗さ/輪郭形状を測定する時には、各箇所の測定が終了すると、オペレータが触針をワークの次の接触位置に接触させる操作(測定子を次の測定指示位置に移動する操作)を行う必要があった。そのため、オペレータは、測定の間常時表面粗さ/形状測定装置の傍にいて測定を監視する必要があり、その間他の作業をすることができないという問題があった。このため、表面粗さ/形状測定装置における触針の接触動作(測定子の移動動作)の自動化が求められている。
【0012】
更に、オペレータは、目視で測定子6が位置PRにあることを判定するが、触針7が見えにくく、触針7をワークの表面に接触させないようにするために、位置PRから接触位置PMまでの距離が長くなる傾向にある。この距離が長くなると、上記のように、図2における位置PRから接触位置PMまでの触針7の移動は低速で行う必要があり、動作時間が長くなるという問題がある。また、触針7が見えにくいため、接触位置PMを通るZ軸からずれた位置で触針7の移動を停止する場合がある。この場合、触針7の実際の接触位置が所望の接触位置からずれることになり、ずれが大きい場合には、触針7の接触動作をやり直さなければならなくなる。
非接触型の測定子の場合には、測定位置を判別するのが難しく、上記の問題は非接触型の測定子の場合により顕著になる。
【0013】
3次元座標測定装置については、触針を移動してワークに接触させる各種の制御方法が提案されており(例えば、特許文献2参照)、触針の移動経路を自動的に設定する装置も提案されている。しかし、座標測定装置の触針は、表面粗さ/形状測定装置の触針に比べて検出可能範囲が広く、座標測定装置における触針の自動移動接触技術を表面粗さ/形状測定装置に適用するのは難しいのが現状である。そのため、これまで触針の移動及びワークへの接触(測定子の測定指示位置への移動)を自動で行う表面粗さ/形状測定装置は実現されていなかった。
【0014】
また、座標測定装置における触針の移動経路自動設定の技術は、複雑な3次元形状の座標を測定する座標測定装置の機能を使用することを前提としており、オペレータは複雑な経路を簡易に設定できる。これに対して、表面粗さ/形状測定装置は、オペレータが上記のような操作を行うことを前提としており、3次元空間における複雑な移動を行う機能及びそのような経路を簡易に設定する機能を有していない。そのため、現状の表面粗さ/形状測定装置で測定子の移動経路自動設定が簡易に行える技術が求められている。
【0015】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、測定子の測定指示位置への移動が自動で行える表面粗さ/形状測定装置の実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の表面粗さ/形状測定装置は、被測定物の表面位置の高さを検出する測定子と、前記測定子を被測定物に対して相対的に移動する測定子移動機構とを備え、前記測定子を被測定物の表面に対して相対的に移動した時の被測定物の表面位置の高さの変化を検出することにより、被測定物の表面の粗さ又は形状を測定する表面粗さ/形状測定装置であって、上記目的を実現するため、前記測定子を、現在位置から、被測定物表面の指示された表面位置の高さを検出する測定指示位置に移動するのに必要な移動情報を生成する移動情報生成部と、移動情報生成部の生成した移動情報に基づいて、測定子を被測定物に対して相対的に移動する移動制御部とを備えることを特徴とする。
【0017】
移動情報生成部は、測定子を、現在位置から、触針が接触位置まで移動する経路を生成する移動経路生成部と、移動経路生成部の生成した経路を移動する時の速度を決定する移動速度情報生成部とを備える。
【0018】
移動経路生成部は、測定位置、測定子の検出方向、測定子の現在位置、測定子が測定状態であるかの情報、あらかじめ設定された安全距離、及びあらかじめ設定された安全範囲の情報に基づいて、経路を生成する。経路の生成手法は各種の方法がある。以下、例を述べる。
【0019】
移動経路生成部は、測定子が、測定指示位置から測定子の検出方向に伸びる直線上の位置に移動した後、測定位置まで移動する経路を生成する。
【0020】
移動経路生成部は、測定子が、測定指示位置から測定子の検出方向に安全距離離れた基準位置を通過するように、経路を生成する。
【0021】
移動経路生成部は、測定子の現在位置が、測定子の検出方向において、基準位置より低い時には、測定子が基準位置の高さまで上昇した後、基準位置に移動するように、経路を生成する。
【0022】
移動経路生成部は、測定子が測定状態である時には、測定子を、測定子の検出方向に安全距離だけ上昇した後、基準位置に移動するように、経路を生成する。
【0023】
安全範囲は、例えば、基準位置を頂点とし、測定子の検出方向を軸とする円錐である。
【0024】
移動経路生成部は、安全範囲内では、触針が直線上を前記基準位置に移動するように、経路を生成する。
【0025】
移動速度情報生成部は、測定子の移動速度を、基準位置から測定指示位置に移動する経路では低速に、それ以外の経路では高速に設定する。
【0026】
本発明の表面粗さ/形状測定装置では、安全距離及び安全範囲をあらかじめ設定しておき、ワークごとに測定位置及び測定子の検出方向を設定すれば、測定子の現在位置及び測定子が測定状態であるかの情報は測定装置から得られるので、測定子を測定指示位置に移動させる動作を自動的に行える。測定位置及び測定子の検出方向は複数設定でき、各設定値に応じた測定動作を順次行う。
【0027】
生成される経路は、安全範囲外では、測定子の検出方向(Z方向)の移動とそれに垂直な方向の移動(XY平面内の移動)のみで構成され、経路は簡単に生成できる。また、安全範囲外では、基準位置より低い状態では測定子の検出方向に垂直な方向には移動しないので、触針のワークへの衝突が避けられる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の表面粗さ/形状測定装置によれば、所定の簡単な設定を行うだけで、測定子を測定指示位置に移動させる動作を自動的に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施例の表面粗さ/形状測定装置を説明する。実施例の表面粗さ/形状測定装置は、図1に示すような、測定子を3次元で移動可能な装置であるが、本発明はこれに限定されず、測定子を2次元で移動可能な装置にも適用可能である。また、測定子をワークに対して2次元又は3次元で相対的に移動可能であればよく、ワークを移動して一部の移動を実現することも、平行移動だけでなく、回転移動で移動を実現することも可能である。
更に、本発明は、光学的な方法などの非接触で表面位置を検出する方式の測定子を有する表面粗さ/形状測定装置にも適用可能である。
【0030】
図3は、実施例の表面粗さ/形状測定装置の構成を示す図である。実施例の表面粗さ/形状測定装置は、図1に示した表面粗さ/形状測定装置に対応する測定機1と、触針7がワークの測定位置で接触する処理を自動的に行う処理装置10とを有する。処理装置10は、測定位置などを入力するためのキー入力11及びマウス入力12と、ホストコンピュータなどとの外部通信部13と、記憶装置14と、測定子(すなわち触針)の位置情報及び測定子が測定状態(すなわち触針が接触状態)にあるかの情報を測定機1から受ける測定子情報部15と、移動情報生成部16と、移動情報生成部16で生成された移動情報を記憶する移動情報部19と、移動情報部19に記憶された移動情報に基づいて触針をワーク表面の測定位置に接触させるように測定機1における測定子の移動を制御する移動制御部20とを有する。処理装置10は、コンピュータシステムで実現される。
【0031】
図4は、処理装置10における触針7をワークの測定位置に接触させる処理の概略を示すフローチャートである。触針7をワークの測定位置に接触させる接触動作が指示されると、移動経路を自動的に生成する移動経路自動生成処理101を行い、生成された移動経路における速度を決定する移動速度情報生成処理102を行い、生成された移動経路及び速度に基づいて移動動作103を行う。
【0032】
移動経路自動生成処理101は、ワーク上における測定位置、測定子の現在位置、触針が接触状態であるかを示す測定子検出情報、測定子の検出方向、あらかじめ設定された安全距離、及びあらかじめ設定された安全範囲を示す安全領域情報に基づいて、経路を自動的に生成する。安全距離及び安全領域情報は、キー入力11、マウス入力11及び外部通信部13などを利用して移動情報生成部16に入力される。入力された安全距離及び安全領域情報は、記憶装置14に記憶される。また、測定位置及び測定子の検出方向は、キー入力11、マウス入力11及び外部通信部13などを利用してワークごとに設定され、記憶装置14に記憶される。測定位置は、順番を付して複数設定することが可能であり、触針を接触位置に接触させて1ラインの測定を行う動作を、指定された接触位置に対して指定された順番で行う。なお、オペレータが触針を移動させて測定位置に接触させる動作を行い、その位置を測定位置として記憶させ、測定動作及び測定位置への移動を順次自動で行わせることも可能である。また、測定子の検出方向は、測定位置の面の向きに応じて設定される。触針を移動させる座標系と実際のワーク表面の位置関係は、例えば、従来と同様にオペレータの操作により触針をワーク表面に接触させた状態の接触点の位置を、座標系内で設定することにより行う。
【0033】
測定子の現在位置及び測定子検出情報は、測定機1で生成され、測定子情報部15を介して移動情報生成部16に入力される。
【0034】
移動速度情報生成処理102は、生成された経路及び安全領域情報に基づいて、経路における速度を自動的に設定する。
【0035】
図5は触針の移動経路及び速度を決定する処理を説明する図であり、図6は触針の移動経路及び速度を決定する処理を示すフローチャートである。以下、図5及び図6を使用して触針の移動経路の生成及び移動速度の決定について説明する。
【0036】
図5は、ワーク90の断面を示す図であり、ここでは図の平面内の移動を例として説明するが、横方向の移動に紙面に垂直な方向の移動を組み合わせることも可能である。符号PMはワーク90の表面上の触針を接触させる位置、すなわち測定位置である。測定子の測定方向は、面に垂直な方向である。ここでは測定位置PMを原点とする直角座標を規定し、測定子の測定方向(面に垂直な方向)をZ軸方向とする。横方向は、X軸又はY軸方向である。
【0037】
Lは安全距離であり、測定位置PMから上方に安全距離L離れた位置を基準位置PSとする。基準位置PSを頂点とし、基準位置PSを通過するZ軸方向の直線を軸とする円錐の範囲内が安全領域Hである。安全領域Hは、その中にワークの表面は存在せず、触針がワークに衝突することがないので、測定子を自由に移動できる領域である。本実施例では、安全領域HはZ軸と母線がなす角度が45度の例を示しているが、角度は任意に設定できる。
【0038】
触針を測定位置PMに接触させる場合、触針は基準位置PSに移動し、その後Z軸に沿って低速で移動し、触針がワーク表面に接触したことを検出してから停止させる。本実施例では、測定位置PMと基準位置PSの間の距離を安全距離Lとしたが、これに限定されず、測定位置PMと基準位置PSの間の距離は安全距離L以下の任意の値に設定することが可能である。
【0039】
図6に示すように、触針の測定位置PMへの接触が指示されると、ステップ111で測定位置PMを原点とする座標系における触針の現在位置を算出する。前述のように、この情報は測定機1からの測定子情報部15を介して入力される信号から得られる。ステップ112では、現在位置がZ軸上にあるかを判定する。Z軸上である時にはステップ113に進み、測定子が測定状態(オン状態)、すなわち、触針がワークに接触しているかを判定する。測定子がオン状態の時には、触針がワークの測定位置PMに接触している状態、すなわち測定状態14であるので、ステップ129に進んで経路選定処理を終了する。測定子がオン状態でない時には、ステップ115に進み、触針の現在位置のZ座標値P(Z)が基準位置PSのZ座標値PS(Z)より小さいかを判定する。P(Z)がPS(Z)より小さい時には、触針の現在位置は図5のPMとPSの間、例えばP1の位置であり、ステップ116の経路1を選定し、ステップ129に進む。経路1は、現在位置からPMに向かって低速で移動する経路である。P(Z)がPS(Z)より大きい時には、触針の現在位置は図5のZ軸上のPSより上の位置、例えばP2の位置であり、ステップ117の経路2を選定し、ステップ129に進む。経路2は、現在位置からPSに高速で移動した後、PSからPM向かって低速で移動する経路である。
【0040】
ステップ112で、現在位置がZ軸上にないと判定された時にはステップ118に進み測定子がオン状態であるか判定する。測定子がオン状態である時には、ステップ119に進みP(Z)が測定位置PMのZ座標より小さいか、すなわち負であるかを判定する。P(Z)が負の時は、触針の現在位置は、例えば図5のP3の位置であり、ステップ120の経路3を選定し、ステップ129に進む。経路3は、現在位置から基準位置PSのZ座標値まで上昇した位置、すなわちP3’の位置まで上昇した後、PSに移動し、更にPMに移動する経路である。これらの経路は、P3からPSまでは高速の移動が行われ、PSからPMまでの移動が低速で行われる経路である。
【0041】
ステップ119でP(Z)が正であると判定された時は、触針の現在位置は、例えば図5のP4の位置であり、ステップ121の経路4を選定し、ステップ129に進む。経路4は、現在位置から安全距離Lだけ上昇した位置、すなわちP4’の位置まで上昇した後、Z軸上の位置P4’’に移動し、P4’’からPS及びPMに移動する経路である。この経路は、P4からPSまでは高速の移動が行われ、PSからPMまでの移動が低速で行われる経路である。
【0042】
ステップ118で測定子がオン状態でないと判定された時には、ステップ122に進みP(Z)が負であるかを判定する。P(Z)が負の時は、触針の現在位置は、例えば図5のP5の位置であり、ステップ123の経路5を選定し、ステップ123に進む。経路5は、現在位置から基準位置PSのZ座標値まで上昇した位置、すなわちP5’の位置まで上昇した後、PSに移動し、更にPMに移動する経路である。これらの経路は、P5からPSまでは高速の移動が行われ、PSからPMまでの移動が低速で行われる経路である。
【0043】
ステップ122でP(Z)が正であると判定された時は、更にステップ124に進みP(Z)がPS(Z)より小さいかを判定する。P(Z)がPS(Z)より小さい時は、触針の現在位置は、例えば図5のP6の位置であり、ステップ125で経路6を選定し、ステップ129に進む。経路6は、現在位置から基準位置PSのZ座標値まで上昇した位置、すなわちP6’の位置まで上昇した後、PSに移動し、更にPMに移動する経路である。これらの経路は、P6からPSまでは高速の移動が行われ、PSからPMまでの移動が低速で行われる経路である。
【0044】
ステップ124でP(Z)がPS(Z)より大きいと判定された時は、更にステップ126に進み現在位置が安全領域内であるかを判定する。安全領域内であれば、触針の現在位置は、例えば図5のP7の位置であり、ステップ127で経路7を選定し、ステップ129に進む。経路7は、現在位置から基準位置PSまで直線で高速に移動した後、更にPMに低速で移動する経路である。
【0045】
ステップ126で現在位置が安全領域内でないと判定された時には、触針の現在位置は、例えば図5のP8の位置であり、ステップ128で経路8を選定し、ステップ129に進む。経路8は、現在位置からZ軸上の位置P8’に移動し、P8’からPSを経てPMに移動する経路である。これらの経路は、P8からPSまでは高速の移動が行われ、PSからPMまでの移動が低速で行われる経路である。
【0046】
以上説明したように、本実施例では、現在位置がZ軸上の時には、そのまま接触位置PMに接触させる。現在位置がZ軸上でない時には、少なくとも基準位置PSと同じ高さまで上昇した後Z軸上に移動した後、そのまま接触位置PMに接触させる。もし測定子がオン状態で現在位置が接触位置PMより高い、すなわち現在位置のZ座標が正であれば、基準位置PSの高さでの移動では安全上不十分であるので、現在位置から安全距離Lだけ上昇する。したがってこの時点のZ座標は基準位置PSのZ座標より大きい。そして、Z軸上に移動する。後は、Z軸上と同じ動作を行う。移動経路のうち、PSからPMまでの経路は、測定子の検出信号を監視しながら低速で移動し、それ以外の経路は高速で移動する。
言い換えれば、本実施例では、Z軸方向の下側への移動は、PSからPM及び安全領域内でのみ発生する。安全領域内での移動は衝突の恐れはないので高速の移動が可能である。更に、Z軸方向の上側への移動は、ワークから離れる方向であるから衝突の恐れはないので高速の移動が可能である。また、Z軸に垂直な方向の移動は、少なくとも基準位置より高い位置で行われるので高速の移動が可能である。このように、本実施例では、PSからPMへの移動は低速で、それ以外の移動は高速で行われる。
なお、基準位置PSから接触位置PMまでの移動をもっとも低速にし、それ以外の安全領域外の経路ではそれより高速に移動し、安全領域内の経路では更に高速で移動するようにしてもよい。
【0047】
移動経路の生成は各種の変形例が可能であり、図7を参照してそのいくつかを説明する。上記の経路4では、P4’まで上昇した後Z軸上の位置P4’’に移動したが、P4’から水平に移動して安全領域H内に入ったら、すなわちP4’’’に移動したら、P4’’’からPSに直線で移動するようにする。この変形例は経路8でも同様に可能である。
【0048】
上記の経路6では、現在位置から一旦基準位置PSと同じ高さの位置P6’まで上昇した後PSまで移動したが、現在位置から同じ高さを維持したままZ軸上の位置P6’’に移動するようにしてもよい。これは、P6は測定子がオンでない位置であり、付近にワークは存在しないと仮定してワークとの衝突の恐れはないと考えられる場合の経路である。
【0049】
また、安全領域は任意に設定することができ、図7に示すように、図5の円錐の範囲に加えて、所定以上の高さ領域を安全領域としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明により、表面粗さ/形状測定装置の作業性が改善されるので、これまで生産性の点から表面粗さ/形状測定装置使用できなかった分野でも表面粗さ/形状測定装置が使用できるようになり、表面粗さ/形状測定装置の使用分野が拡大する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】表面粗さ/形状測定装置の外観を示す図である。
【図2】従来例における触針の接触動作を説明する図である。
【図3】本発明の実施例の表面粗さ/形状測定装置の構成を示す図である。
【図4】実施例の触針の接触動作の基本フローチャートである。
【図5】実施例の触針の接触動作を説明する図である。
【図6】実施例の触針の接触動作の詳細を示すフローチャートである。
【図7】実触針の接触動作の変形例を説明する図である。
【符号の説明】
【0052】
1 表面粗さ/形状測定装置
2 テーブル
3 コラム
4 駆動部
5 ホルダ
6 測定子(ピックアップ)
7 触針
10 処理装置
16 移動情報生成部
17 移動経路自動生成部
18 移動速度情報生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物の表面位置の高さを検出する測定子と、前記測定子を被測定物に対して相対的に移動する測定子移動機構とを備え、前記測定子を被測定物の表面に対して相対的に移動した時の被測定物の表面位置の高さの変化を検出することにより、被測定物の表面の粗さ又は形状を測定する表面粗さ/形状測定装置であって、
前記測定子を、現在位置から、被測定物表面の指示された表面位置の高さを検出する測定指示位置に移動するのに必要な移動情報を生成する移動情報生成部と、
前記移動情報生成部の生成した移動情報に基づいて、前記測定子を被測定物に対して相対的に移動する移動制御部とを備えることを特徴とする表面粗さ/形状測定装置。
【請求項2】
前記移動情報生成部は、
前記測定子を、現在位置から、前記測定指示位置まで移動する経路を生成する移動経路生成部と、
前記移動経路生成部の生成した経路を移動する時の速度を決定する移動速度情報生成部とを備える請求項1に記載の表面粗さ/形状測定装置。
【請求項3】
前記移動経路生成部は、
前記測定指示位置、
前記測定子の検出方向、
前記測定子の現在位置、
前記測定子が測定状態であるかの情報、
あらかじめ設定された安全距離、及び
あらかじめ設定された安全範囲の情報に基づいて、前記経路を生成する請求項2に記載の表面粗さ/形状測定装置。
【請求項4】
前記移動経路生成部は、
前記測定子が、前記測定指示位置から前記測定子の検出方向に伸びる直線上の位置に移動した後、前記測定指示位置まで移動する経路を生成する請求項3に記載の表面粗さ/形状測定装置。
【請求項5】
前記移動経路生成部は、
前記測定子が、前記測定指示位置から前記測定子の検出方向に前記安全距離離れた基準位置を通過するように、前記経路を生成する請求項4に記載の表面粗さ/形状測定装置。
【請求項6】
前記移動経路生成部は、
前記測定子の現在位置が、前記測定子の検出方向において、前記基準位置より低い時には、前記測定子が前記基準位置の高さまで上昇した後、前記基準位置に移動するように、前記経路を生成する請求項5に記載の表面粗さ/形状測定装置。
【請求項7】
前記移動経路生成部は、
前記測定子が測定状態である時には、前記測定子を、前記測定子の検出方向に前記安全距離だけ上昇した後、前記基準位置に移動するように、前記経路を生成する請求項5に記載の表面粗さ/形状測定装置。
【請求項8】
前記安全範囲は、前記基準位置を頂点とし、前記測定子の検出方向を軸とする円錐である請求項3に記載の表面粗さ/形状測定装置。
【請求項9】
前記移動経路生成部は、
前記安全範囲内では、前記測定子が直線上を前記基準位置に移動するように、前記経路を生成する請求項3又は8に記載の表面粗さ/形状測定装置。
【請求項10】
前記移動速度情報生成部は、
前記測定子の移動速度を、前記基準位置から前記測定指示位置に移動する経路では低速に、それ以外の経路では高速に設定する請求項5から7のいずれか1項に記載の表面粗さ/形状測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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