説明

袋体を用いた壁面工構築方法

【課題】 被災箇所が山間部等であり、現場までの工事用道路の敷設が困難な場合であっても、大型施工機械を必要とせずに施工可能な袋体を用いた壁面工構築方法を提供する。
【解決手段】 袋体を用いた壁面工構築方法において、地山3ののり面に配置される大型土のう4の上に袋体5をのり肩からのり尻にかけて配置し、前記袋体5に前記のり肩側から充填材を充填し、前記地山3と前記袋体5の型枠6との間に定着材7を配置することにより壁体を構築する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被災盛土に対する大型土のうによる復旧時の壁面工の構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模な降雨や地震など多くの自然災害が発生し、鉄道や道路の盛土に大きな被害を受けることがある。盛土は比較的復旧しやすい構造物であるが、周辺条件や被災条件により施工法が制限される場合もある。ただし、インフラとしての重要性から被災時には早期に復旧することが望まれる場合が多い。
このような状況の時、従来は、大型土のうを作製し盛土ののり面に配置することにより仮復旧するようにしている。この大型土のうによる仮復旧を本復旧とする場合には、大型土のう表面の風化防止や盛土としての安定性を高める観点から、大型土のう表面に壁面工を施工する必要がある。大型土のう表面に壁面工を施工する場合、場所打ちのコンクリート壁や吹付けコンクリートによる施工が行われる。
【0003】
図7は従来の場所打ちのコンクリート壁による壁面工の施工方法(その1)を示す模式図である。
この図において、101は地盤、102は盛土、103は地山、104は大型土のう、105はコンクリート、106は型枠である。
盛土102ののり面に大型土のう104を配置して仮復旧を行った場合、図7に示すように、型枠106を設置し、この型枠106と大型土のう104の間にコンクリート105を打設することで壁面工を施工している。
【0004】
図8は従来の場所打ちのコンクリート壁による壁面工の施工方法(その2)を示す模式図である。
この図において、201は地山、202はのり面、203はアンカーボルト、204はスペーサー金具、205は型枠、206はコンクリートである。
コンクリート擁壁の構築方法として、地山201ののり面202に、コンクリートの打設圧力に対向する十分な反力をとれる深さまでアンカーボルト203を打ち込み、このアンカーボルト203ののり面202からの露出端に、アンカーボルト203の軸方向に伸縮可能なスペーサー金具204を取り付け、このスペーサー金具204の自由端には、のり面202と一定の間隔をおき、かつ前記アンカーボルト203とほぼ直角に位置するようにして型枠205を取り付け、この型枠205とのり面202との間にコンクリート206を打設して擁壁を構築したものが開示されている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2571724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、被災箇所が山間部等であり、現場までの工事用道路の敷設が困難な場合、材料や施工機械の運搬が制約され、上記のような壁面工の施工が困難となるといった問題があった。
本発明は、上記状況に鑑みて、壁体の構築を短時間で行うことができ、その施工も容易である袋体を用いた壁面工構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕袋体を用いた壁面工構築方法において、地山ののり面に配置される大型土のうの上に袋体をのり肩からのり尻にかけて配置し、前記袋体に前記のり肩側から充填材を充填し、前記地山と前記袋体の型枠との間に定着材を配置することにより壁体を構築することを特徴とする。
【0008】
〔2〕上記〔1〕記載の袋体を用いた壁面工構築方法において、前記充填材がセメントミルクであることを特徴とする。
〔3〕上記〔1〕記載の袋体を用いた壁面工構築方法において、前記袋体が筒状のビニール製袋体であることを特徴とする。
〔4〕上記〔3〕記載の袋体を用いた壁面工構築方法において、前記筒状のビニール製袋体上に前記型枠となる鋼材を腹起こし材として水平に配置し、前記鋼材を前記地山に達する前記定着材を用いて定着させることを特徴とする。
【0009】
〔5〕上記〔1〕記載の袋体を用いた壁面工構築方法において、前記袋体が面状のビニール製袋体であることを特徴とする。
〔6〕上記〔5〕記載の袋体を用いた壁面工構築方法において、前記面状のビニール製袋体と前記大型土のうの隙間を充填材で充填し、前記面状のビニール製袋体の前記型枠を前記地山に達する前記定着材を用いて定着させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、施工が容易で壁体の構築を短時間に行うことができる。また、大型の施工機械を必要とせず、機械の持ち込みが困難な箇所でも壁面工の施工が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施例を示す袋体を用いた壁面工構築概要図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】壁面工構築に用いられる筒状のビニール製袋体を示す図である。
【図4】本発明の第2実施例を示す袋体を用いた壁面工構築概要図である。
【図5】図4のB−B線断面図である。
【図6】壁面工構築に用いられる面状のビニール製袋体を示す図である。
【図7】従来の場所打ちのコンクリート壁による壁面工の施工方法(その1)を示す模式図である。
【図8】従来の場所打ちのコンクリート壁による壁面工の施工方法(その2)を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の袋体を用いた壁面工構築方法は、地山ののり面に配置される大型土のうの上に袋体をのり肩からのり尻にかけて配置し、前記袋体に前記のり肩側から充填材を充填し、前記地山と前記袋体の型枠との間に定着材を配置することにより壁体を構築する。
【実施例】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明の第1実施例を示す袋体を用いた壁面工構築概要図、図2は図1のA−A線断面図、図3はその壁面工構築に用いられる筒状のビニール製袋体を示す図である。
これらの図において、1は地盤、2は盛土であり、地盤1と盛土2を合わせて地山3と呼ぶ。4は大型土のう、5は大型土のう4の上にのり肩からのり尻にかけて配置される筒状のビニール製袋体、6は筒状のビニール製袋体5上に腹起こし材として水平に配置される鋼材(型枠)、7は地山3と鋼材6との間に配置される定着材である。
【0014】
地山3ののり面に配置される大型土のう4の上に、のり肩からのり尻にかけて図3に示すような筒状のビニール製袋体5を配置し、この筒状のビニール製袋体5にのり肩側から(図1の矢印参照)セメントミルクを充填する。次に、セメントミルクを充填した筒状のビニール製袋体5上に腹起こし材として水平に鋼材6を配置し、地山3と鋼材6との間に定着材7を施工することにより壁体を構築する。
【0015】
このように、筒状のビニール製袋体5を使用して壁体を構築する場合は、セメントミルクを充填した筒状のビニール製袋体5上にH鋼等の鋼材6を腹起こし材として水平に配置し、その鋼材6と地山3とを定着材7を用いて定着させることにより、敷設延長方向への剛性を高め、大型土のう4と地山3の一体化を図ることができる。
図4は本発明の第2実施例を示す袋体を用いた壁面工構築概要図、図5は図4のB−B線断面図、図6はその壁面工構築に用いられる面状のビニール製袋体を示す図である。
【0016】
これらの図において、11は地盤、12は盛土であり、地盤11と盛土12を合わせて地山13と呼ぶ。14は大型土のう、15は大型土のう14の上にのり肩からのり尻にかけて配置される面状のビニール製袋体、16は面状のビニール製袋体15と大型土のう14の隙間を充填する充填材、17は型枠、18は型枠17と地山13との間に配置される定着材である。
【0017】
地山13ののり面に配置される大型土のう14の上に、のり肩からのり尻にかけて図6に示すような面状のビニール製袋体15を配置し、この面状のビニール製袋体15にのり肩側から(図4の矢印参照)セメントミルクを充填する。次に、セメントミルクを充填した面状のビニール製袋体15と大型土のう14の隙間を充填材16で充填し、この面状のビニール製袋体15の型枠17と地山13との間に定着材18を施工することにより壁体を構築する。
【0018】
以上のように構成したので、壁体の構築を短時間で容易に行うことができる。また、容易に運搬することができるビニール製袋体に現場で充填材を充填して構築する壁面工の施工方法であるので、大型の施工機械を必要とせず、山間部等の機械の持ち込みが困難な箇所でも施工が可能である。
なお、上記実施例では、袋体がビニール製であること、袋体に充填されるのがセメントミルクであることが記載されているが、これに限定されるものではなく、その他の材料であってもよい。
【0019】
また、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の袋体を用いた壁面工構築方法は、山間部等の現場で容易に施工することできる壁面工の構築方法として利用可能である。
【符号の説明】
【0021】
1,11 地盤
2,12 盛土
3,13 地山
4,14 大型土のう
5 筒状のビニール製袋体
6 鋼材(型枠)
7,18 定着材
15 面状のビニール製袋体
16 充填材
17 型枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地山ののり面に配置される大型土のうの上に袋体をのり肩からのり尻にかけて配置し、前記袋体に前記のり肩側から充填材を充填し、前記地山と前記袋体の型枠との間に定着材を配置することにより壁体を構築することを特徴とする袋体を用いた壁面工構築方法。
【請求項2】
請求項1記載の袋体を用いた壁面工構築方法において、前記充填材がセメントミルクであることを特徴とする袋体を用いた壁面工構築方法。
【請求項3】
請求項1記載の袋体を用いた壁面工構築方法において、前記袋体が筒状のビニール製袋体であることを特徴とする袋体を用いた壁面工構築方法。
【請求項4】
請求項3記載の袋体を用いた壁面工構築方法において、前記筒状のビニール製袋体上に前記型枠となる鋼材を腹起こし材として水平に配置し、前記鋼材を前記地山に達する前記定着材を用いて定着させることを特徴とする袋体を用いた壁面工構築方法。
【請求項5】
請求項1記載の袋体を用いた壁面工構築方法において、前記袋体が面状のビニール製袋体であることを特徴とする袋体を用いた壁面工構築方法。
【請求項6】
請求項5記載の袋体を用いた壁面工構築方法において、前記面状のビニール製袋体と前記大型土のうの隙間を充填材で充填し、前記面状のビニール製袋体の前記型枠を前記地山に達する前記定着材を用いて定着させることを特徴とする袋体を用いた壁面工構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−94443(P2011−94443A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251969(P2009−251969)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】