説明

被加工物を回転する機能を有する表面処理装置

【課題】 従来,表面処理工程では,浸漬方式かもしくは噴射方式で,被加工物を表面処理しているが,主流は浸漬方式である.
課題は,両方式ともに多く,特に主流の浸漬方式に課題が多いが,噴射方式にも薄膜化・時間短縮という課題があることや,浸漬方式が容易で濡れに対して安心であることなどから,高精度で加工面・環境面ともにムダの少ない噴射方式への移行が進んでいない.
本発明では,被加工物を回転させることで,噴射方式の薄膜化および時間短縮という課題を解決し,噴射方式の対象部品を拡大する.
そしてそのことで,浸漬方式で非効率に表面処理されている部品の多くを噴射方式に変更し,表面処理工程全般の課題を抜本的に解決するものである.
【解決手段】 回転装置(1)によって被加工物(2)を回転させる.

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,表面処理加工(めっき・塗装・化成処理・研磨・洗浄・乾燥・熱処理など)の際に,被加工物を回転させることに関するものである.
【背景技術】
【0002】
従来,表面処理方式は,以下の2方式に大別される.
1.浸漬方式:加工材料やその溶液に浸漬させたり,雰囲気内を通過させる.
2.噴射方式:加工材料を液体や気体と混合し,加圧するなどして噴射する.
被加工物の動作は,いずれの場合も,バレル・カゴなどの容器中で攪拌されるかもしくは,治具に固定され2次元動作されている.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
1.浸漬方式の課題
▲1▼不必要面への表面処理が,材料・エネルギーなどの加工のムダを発生させている.また前工程で高精度加工済みの表面を表面処理せざるを得ず,表面処理前の精度への再加工のムダも発生している.部品によっては,これらのムダが加工コストの90%を超える.
▲2▼めっき処理中に発生するガスの悪影響により界面が遮断され,寸法精度(膜厚)などが不均一となる.これ以外にも,表面処理中の界面条件の差異が及ぼす品質への悪影響が多大である.
▲3▼被加工物に残留する溶液等が,寸法精度(膜厚)不均一化を招くばかりか,時には溶液のタレ・たまり跡が外観性にまで悪影響を及ぼす.
▲4▼被加工物に残留する溶液等は,後工程の洗浄工程等の溶液を劣化させ,溶液使用量・排水の無害化処理量・廃水放流量等を連鎖的に増加させ,コスト負担・環境負荷を招いている
2.噴射方式の課題
▲1▼薄膜化:表面材料を液体や気体等と混合し,高圧で噴射するためである.
▲2▼時間短縮:浸漬方式と比較しロット処理が困難でありまた,被加工物への噴射ノズルのハンドリングなどが困難であるからである.
【課題を解決するための手段】
【0004】
回転装置(1)によって被加工物(2)を回転させる.
【発明の効果】
【0005】
本発明により上記の課題は全て解決する.
中でも,2.の噴射方式の課題の▲1▼薄膜化および▲2▼時間短縮を,被加工物の高速回転化で容易に解決できることの効果が,絶大である.
なぜなら噴射方式の対象部品拡大が図れ,浸漬方式で非効率に表面処理されている部品の多くを,噴射方式に変更でき合理化できるからである.
つまり,噴射方式の課題を解決することが,表面処理工程全般の課題を抜本解決することに直結するのである.
実際に,量産されている部品で試作・評価した結果を,以下に例示する.
■部品名称:自動車自動変速機用油圧保持部品
■対象表面:後工程でオイルシールゴムを接着(加硫プレス)する全表面積のうちの約10%、
■付与機能:接着剤塗布によるゴム接着機能
■出荷数量:約130万個/月(対象サプライヤー1社のみが対象)
■部品出荷金額:約60億円 (同上)
■効果概要:本発明の実用化とノズル塗布方式の組み合わせで,被加工物の必要面のみへ,接着剤を高速塗布することが可能となり,従来と比較して,●加工時間を70%削減,●材料使用量を95%削減,●V.O.C発生量を95%削減,●廃棄溶液100%削減,●エネルギー使用量60%削減,これら製造費用に加え,●管理費も含めて大幅な経営費用低減が図れる.●品質面でも塗膜が均一化し,●接着機能も格段に向上するとの評価を得ている.
■従来方式と本発明の比較

【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
(1)の回転装置で,(2)の被加工物を回転させる.
(1)の回転装置の把持部やテーブル部の材質・機構・形状・制御方式などは,被加工物の要求品質に対応させる.
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】 本発明の図面である.
【符号の説明】
【0008】
1 回転装置
2 被加工物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を回転する機能を有する表面処理装置

【図1】
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【公開番号】特開2010−12452(P2010−12452A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198837(P2008−198837)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(506329982)
【Fターム(参考)】