説明

被加工物保持治具

【課題】 照明光を照射して光導波路を検出するときに検出を補助する機能を備えた被加工物保持治具を提供することである。
【解決手段】 被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物に加工を施す加工手段とを有する加工装置の該チャックテーブルに着脱自在に装着され、上面に被加工物を載置して吸引保持する被加工物保持治具であって、鏡面加工された上面と、該上面に形成された吸引溝と、一端が該吸引溝に連通し他端が底面側に貫通する貫通吸引路を有し、加工装置の該チャックテーブル上に載置されて、該鏡面加工された上面に載置された透明体からなる被加工物に該チャックテーブルからの負圧を該貫通吸引路及び該吸引溝を介して作用させて該被加工物を吸引保持し、該上面で吸引保持した該被加工物の上方から照明光を照射することで、該被加工物を透過し該鏡面で反射した反射光で該被加工物を下面側から一様に照らすことができることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を加工する加工装置における被加工物を保持するための被加工物保持治具に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信システムは、公衆通信、ケーブルテレビ(CATV)、コンピュータネットワーク等において実用化されており、大容量の多機能システムへと進化を続けている。光通信システムにおいて用いられる光回路部品の中には、石英等の透明基板の内部に周囲より屈折率の高いコアと呼ばれる光の回路を形成した光導波路があり、光通信システムの高速化及び大容量化に大きく貢献している(例えば、特開2004−85768号公報及び特許第4144427号公報参照)。
【0003】
このような光導波路が大きな基板中または基板上に複数形成された後、個々のチップに切断され部品化されている。光導波路基板の切断時に用いられるのが切削ブレードを高速回転させて光導波路基板を切削するダイシング装置と呼ばれる切削装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−85768号公報
【特許文献2】特許第4144427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このダイシング装置では、光導波路基板等の被加工物をCCDカメラを搭載した撮像ユニットで被加工物表面のパターン等を撮像し、パターンを基準にして分割予定位置を割り出し被加工物を分割する。
【0006】
光導波路基板の分割に際しては、基準になるパターンとして光導波路(コア)を用いるが、光導波路は光を透過する透明なものであるので、撮像するのが非常に困難であるという課題があった。
【0007】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、照明光を照射して光導波路を検出するときに検出を補助する機能を備えた被加工物保持治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物に加工を施す加工手段とを有する加工装置の該チャックテーブルに着脱自在に装着され、上面に被加工物を載置して吸引保持する被加工物保持治具であって、鏡面加工された上面と、該上面に形成された吸引溝と、一端が該吸引溝に連通し他端が底面側に貫通する貫通吸引路を有し、加工装置の該チャックテーブル上に載置されて、該鏡面加工された上面に載置された透明体からなる被加工物に該チャックテーブルからの負圧を該貫通吸引路及び該吸引溝を介して作用させて該被加工物を吸引保持し、該上面で吸引保持した該被加工物の上方から照明光を照射することで、該被加工物を透過し該鏡面で反射した反射光で該被加工物を下面側から一様に照らすことができることを特徴とする被加工物保持治具が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の被加工物保持治具は、上面が鏡面に加工されているため、上面に載置した光導波路基板のような透明な材質からなる被加工物に上面側から光を照射すると、被加工物保持治具の鏡面で反射した反射光が被加工物が光導波路基板である場合、透明基板部分は透過し、光導波路部分では部分的に吸収もしくは反射して光量の減少した透過光となるため、明暗のコントラストに基づいて、光導波路位置を容易に認識することができるという効果を奏する。
【0010】
更に、通常のダイシング装置のチャックテーブルに本発明の被加工物保持治具を装着することで、装置に何らの改造を加えることなく、本発明の被加工物保持治具により被加工物を載置する面を鏡面にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ダイシング装置の斜視図である。
【図2】切削ユニットの斜視図である。
【図3】本発明実施形態の保持治具上に光導波路ユニットを搭載する様子を示す分解斜視図である。
【図4】実施形態に係る被加工物保持治具の縦断面図である。
【図5】加工装置のチャックテーブル上に被加工物保持治具を介して導波路ユニットを吸引保持した状態の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1を参照すると、本発明の被加工物保持治具を使用するのに適した切削装置(ダイシング装置)2の斜視図が示されている。
【0013】
切削装置2は、被加工物を保持するチャックテーブル6と、チャックテーブル6に保持された被加工物を切削加工する切削ユニット4と、チャックテーブル6に保持された被加工物の分割すべき領域を検出する(割り出す)撮像ユニット8を備えている。撮像ユニット8は、顕微鏡及びCCDカメラを有しており、更に照明用の光源が一体化されている。
【0014】
図2を参照すると、切削ユニット4の斜視図が示されている。切削ユニット4は、スピンドルハウジング10中に回転可能に収容されたスピンドル12と、スピンドル12の先端に装着された切削ブレード14と、切削ブレード14の上半分をカバーするホイールカバー16と、被加工物の切削時に切削水を切削ブレード14に供給する切削水供給ノズル18とを備えている。
【0015】
切削加工時には、切削ブレード14は矢印A方向に回転される。20は切削ブレード14の着脱時にスピンドル12の回転を停止するためのロック機構であり、係合部材がスピンドル12に形成された係合穴に係合することによりスピンドル12をロックする。
【0016】
図3を参照すると、本発明実施形態の被加工物保持治具36に光導波路ユニット34を搭載する様子を示す分解斜視図が示されている。光導波路基板22は石英等の透明部材から形成され、内部に複数の光導波路24が形成されている。
【0017】
光導波路24はTi等の元素をドープすることにより、周辺の光導波路基板22より屈折率を高めた領域であり、光信号が全反射を繰り返しながら光導波路24内を伝搬する。
光導波路基板22は透明なワックス又はボンド剤30を使用してガラス又はアクリル樹脂等の透明体から形成された支持基板32に接着され、光導波路ユニット34を形成して、この光導波路ユニット34を切削ブレード14で切削加工する被加工物とする。
【0018】
36は本発明実施形態に係る被加工物保持治具であり、その上面36aは鏡面38に加工されている。被加工物保持治具36は例えば樹脂等から形成され、複数の光導波路ユニット34の分割に際して繰り返し使用される。
【0019】
図3及び図4に示されるように、被加工物保持治具36は、その上面36aに一対の吸引溝40が形成されており、各吸引溝40は垂直吸引路42により被加工物保持治具36の裏面に形成された吸引凹部44に接続されている。
【0020】
図5に示すように、光導波路ユニット34を被加工物保持治具36の鏡面38上に搭載し、被加工物保持治具36を切削装置2のチャックテーブル6上に搭載して、チャックテーブル6の吸引保持部を吸引溝7及び吸引路9を介して吸引源46に接続すると、被加工物保持治具36はチャックテーブル6に吸引保持されるとともに、被加工物保持治具36の鏡面38上に搭載された光導波路ユニット34には、吸引凹部44、垂直吸引路42及び吸引溝40を介して負圧が作用するため、光導波路ユニット34は被加工物保持治具36上に吸引保持される。
【0021】
この状態でチャックテーブル6に保持された光導波路ユニット34を撮像ユニット8の直下に移動する。そして、撮像ユニット8に内蔵されている照明光源から光導波路基板22に照明光を照射しつつ、撮像ユニット8で光導波路基板22の表面を撮像する。
【0022】
被加工物保持治具36の鏡面38で反射された反射光は透明体から形成された支持基板32を透過し、光導波路基板22に入射する。光導波路24が形成されていない部分を通過する反射光は光導波路基板22が透明体から形成されているため、殆ど減衰することなく光導波路基板22を透過してその上面から出射する。
【0023】
一方、光導波路24部分を通過する反射光は、光導波路24部分でその一部が吸収及び乱反射されるため、強度が減少した反射光が光導波路基板22の上面から出射される。よって、撮像ユニット8のCCDカメラで光導波路基板22の表面を撮像すると、明暗のコントラストに基づいて光導波路24を検出することができる。
【0024】
光導波路24の位置を基に分割予定位置を割り出し、この分割予定位置を切削装置2のコントローラのメモリに登録する。メモリに登録された分割予定位置に切削ブレード14を位置づけ、光導波路基板22を通して切削ブレード14で支持基板32の一部まで切り込み、チャックテーブル6をX軸方向に加工送りすることにより、光導波路基板22を個々の光導波路24を含む光導波路チップに分割することができる。
【0025】
本実施形態では、光導波路基板22を支持基板32に接着した光導波路ユニット34を形成し、この光導波路ユニット34を切削ブレードで切削加工するため、被加工物保持治具36は切削加工により損傷することなく繰り返し使用することができる。
【符号の説明】
【0026】
2 切削装置
4 切削ユニット
6 チャックテーブル
8 撮像ユニット
14 切削ブレード
22 光導波路基板
24 光導波路
32 支持基板
34 光導波路ユニット
36 被加工物保持治具
38 鏡面
40 吸引溝
42 吸引路
44 吸引凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物に加工を施す加工手段とを有する加工装置の該チャックテーブルに着脱自在に装着され、上面に被加工物を載置して吸引保持する被加工物保持治具であって、
鏡面加工された上面と、該上面に形成された吸引溝と、一端が該吸引溝に連通し他端が底面側に貫通する貫通吸引路を有し、
加工装置の該チャックテーブル上に載置されて、該鏡面加工された上面に載置された透明体からなる被加工物に該チャックテーブルからの負圧を該貫通吸引路及び該吸引溝を介して作用させて該被加工物を吸引保持し、該上面で吸引保持した該被加工物の上方から照明光を照射することで、該被加工物を透過し該鏡面で反射した反射光で該被加工物を下面側から一様に照らすことができることを特徴とする被加工物保持治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−71222(P2013−71222A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213280(P2011−213280)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】