説明

被検体定量デバイスおよび被検体定量方法

【課題】 被検体の定量が、検出感度を低下させることなく広い範囲で可能となり、被検体の定量性能を著しく改善できる被検体定量技術を提供する。
【解決手段】 流路と被検体を捕捉して検出する被検体検出部と被検体を定量する定量測定部とを備えた被検体定量デバイスにおいて、被検体検出部が被検体を検出した時に生じる信号を、定量測定部が、流路の流れの方向に、複数に区分して処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオチップやDNAチップ等に利用される、被検体の定量方法および定量デバイスの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
2000年に米国において提唱されたナノテクノロジーイニシアティブの影響などもあり、近年、ナノテクノロジーが多くの人の関心を集めるキーワードとなっている。取り分け、半導体微細加工技術(半導体ナノテクノロジー)とバイオテクノロジーの融合領域であるナノバイオテクノロジーの領域は、既存の問題を根底から解決できる可能性を持つ新分野として、多くの研究開発が精力的に行われるようになってきている。
【0003】
中でも、DNAチップ(またはDNAマイクロアレイ)に代表されるバイオチップの技術は、遺伝子解析に有効な手段として注目されている。バイオチップとは、ガラス、シリコン、プラスチックなどからなる基板の表面上に、DNA、蛋白質などの生体高分子からなる多数の異なった検体を高密度に整列化してスポットしたもので、臨床診断や薬物治療などの分野で、核酸や蛋白質の試験を簡素化できるのが特徴である(たとえば特許文献1、非特許文献1参照)。
【0004】
そして、これらのチップのように、マイクロマシニング技術やセンシング技術を組み合わせて、微小な被検体を検出する技術のもとに作製されたデバイスは、一般的にMEMSやμTASと呼ばれ、従来の検出感度や検出時間を大幅に向上させるデバイスとして、注目されている。MEMSとは、Micro Electro Mechanical Systems(マイクロエレクトロメカニカルシステム)の略で、半導体の加工技術をもとに非常に微細なものを作る技術、または、その技術を用いて作製された精密微細機器を指す。一般に機械、光学、流体と言った複数の機能部分を複合化、微細化したシステムである。また、μTASとは、Micro Total Analysis System(マイクロトータルアナリシスシステム)の略で、マイクロポンプ、マイクロバルブ、センサ等を小型、集積、一体化した化学分析システムである。
【0005】
これらのデバイスの特長は、被検体を含む非常に微少な量のサンプルの評価が可能であり、サンプルを被検体検出部に流すことにより、リアルタイムでの評価が可能である。また、被検体検出部を並列または直列に配置することによって、同時に複数の被検体の評価が可能となる等の多くの利点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−235468号公報(段落番号0002〜0009)
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「ジャーナルオブアメリカンケミカルソサエティ(Journal of American Chemical Sciety)」,1997年,第119巻,p.8916〜8920
【非特許文献2】「アナリティカル ケミストリー(Analytical Chemistry)」,1998年,第70巻,p.4670〜4677
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、被検体検出部に非常に高感度のデバイスを配置すると、被検体の有無は検出できるものの、デバイス特性が被検体の量に対して、十分にリニアな特性を持たない場合は(換言すれば、被検体の量に対してダイナミックレンジが低い場合は)、ある少量の被検体の量で、被検体検出部の信号が飽和してしまい、被検体の定量が困難になると言う問題がある。
【0009】
特に、バイオチップ等の生体分子の検出には、生体分子と特異的に吸着する抗体等の分子を被検体検出部に用いることが多いが、この場合、被検体検出部と被検体は1対1で結合することが多く、被検体検出部の数が少なければ、少量の被検体で被検体検出部が飽和してしまい、広い範囲での定量が不可能となってしまう。また、定量性を持たせるために、被検体検出部の数を増やすと、検出感度の低下やバックグラウンドノイズの増加を生じることになる。
【0010】
本発明は上記の課題を解決し、バイオチップのような被検体検出部と被検体の結合がたとえば1対1の場合においても、検出感度を低下させることなく、被検体の定量を広い範囲で可能とする新規技術を提供することを目的とする。本発明のさらに他の目的および利点は、以下の説明から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、流路と被検体を捕捉して検出する被検体検出部と被検体を定量する定量測定部とを備えた被検体定量デバイスにおいて、被検体検出部が被検体を検出した時に生じる信号を、定量測定部が、流路の流れの方向に、複数に区分して処理する被検体定量デバイスが提供される。
【0012】
本発明態様に係る被検体定量デバイスを使用すれば、被検体の定量が、検出感度を低下させることなく広い範囲で可能となり、被検体の定量性能を著しく改善できる。
【0013】
この態様においては、被検体検出部が、被検体を捕捉するための被検体捕捉部を有すること、被検体検出部が流路の流れの方向に複数個配置されていること、被検体検出部の流れの方向の長さが流路の幅の2倍以上であること、被検体検出部が流路の幅方向に複数配置されていること、定量測定部が光信号により被検体を定量することまたは電気的信号により被検体を定量すること、被検体検出部の流路の厚さを、捕捉された被検体の実効的な高さの100倍以下にすること、被検体検出部の流路の厚さを下流に行くほど厚くすること、被検体検出部が電極であり、帯電した被検体を電極に電気的に引き寄せるための電位を電極に印加し得るようになしたものであること、特に帯電した被検体を電極に電気的に引き寄せるための電位を、流れの方向における電極の位置により変更し得るようになすこと、被検体を含む溶液を流路に流すために、マイクロポンプ、電気泳動または電気浸透流を利用すること、異なった被検体を特異的に検出する複数の被検体捕捉部を被検体検出部に設置すること、被検体がDNAであり、被検体捕捉部がDNAと特異的に結合する機能を有することまたは被検体が蛋白質であり、被検体捕捉部が蛋白質と特異的に結合する機能を有することが好ましい。
【0014】
本発明の他の一態様によれば、流路と被検体を捕捉して検出する被検体検出部と被検体を定量する定量測定部とを使用し、被検体検出部が被検体を検出した時に生じる信号を、定量測定部で、流路の流れの方向に、複数に区分して処理する被検体定量方法が提供される。
【0015】
本発明態様に係る被検体定量方法を使用すれば、被検体の定量が、検出感度を低下させることなく広い範囲で可能となり、被検体の定量性能を著しく改善できる。
【0016】
この態様においては、被検体検出部が、被検体を捕捉するための被検体捕捉部を有すること、被検体検出部を流路の流れの方向に複数個配置すること、被検体検出部に捕捉された被検体の、流路の流れの方向における数を最適化すること、より具体的には被検体の供給速度、流路の流れの方向の被検体検出部の長さ、流路の幅方向の被検体検出部の数および流路の厚さからなる群の少なくとも一つを変更することにより、最適化を行うこと、定量測定部で、光信号により被検体を定量することまたは電気的信号により被検体を定量すること、被検体検出部を電極とし、帯電した被検体を電極に電気的に引き寄せるための電位を電極に印加すること、特に帯電した被検体を電極に電気的に引き寄せるための電位を、流れの方向における電極の位置により変更すること、異なった被検体を特異的に検出する複数の被検体捕捉部を被検体検出部に設置すること、被検体がDNAであり、被検体捕捉部がDNAと特異的に結合する機能を有することまたは被検体が蛋白質であり、被検体捕捉部が蛋白質と特異的に結合する機能を有することが好ましい。
【0017】
本発明の更に他の態様としては、上記被検体定量デバイスを備えたマイクロエレクトロメカニカルシステムおよびマイクロトータルアナリシスシステムが提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、被検体の定量が、検出感度を低下させることなく広い範囲で可能となり、被検体の定量性能を著しく改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1−A】従来の被検体定量デバイスによる被検体の検出を説明する模式図である。
【図1−B】従来の被検体定量デバイスによる被検体の検出を説明する模式図である。
【図1−C】従来の被検体定量デバイスによる被検体の検出を説明する模式図である。
【図2−A】従来の被検体定量デバイスによる被検体の検出を説明する模式図である。
【図2−B】従来の被検体定量デバイスによる被検体の検出を説明する模式図である。
【図2−C】従来の被検体定量デバイスによる被検体の検出を説明する模式図である。
【図3−A】本発明に係る被検体定量デバイスによる被検体の検出を説明する模式図である。
【図3−B】本発明に係る被検体定量デバイスによる被検体の検出を説明する模式図である。
【図3−C】本発明に係る被検体定量デバイスによる被検体の検出を説明する模式図である。
【図4−A】本発明に係る被検体定量デバイスによる被検体の検出を説明する模式図である。
【図4−B】本発明に係る被検体定量デバイスによる被検体の検出を説明する模式図である。
【図4−C】本発明に係る被検体定量デバイスによる被検体の検出を説明する模式図である。
【図5】流路の厚さおよび被検体の高さを説明する模式図である。
【図6】捕捉部を設けない被検体定量デバイスを説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施の形態を図、実施例等を使用して説明する。なお、これらの図、実施例等及び説明は本発明を例示するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。本発明の趣旨に合致する限り他の実施の形態も本発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。図中、同一の符号は同一の要素を意味する。
【0021】
本発明に係る被検体定量デバイスは、流路と被検体を捕捉して検出する被検体検出部(以下、単に「検出部」ともいう)と被検体を定量する定量測定部とを備え、検出部が被検体を検出した時に生じる信号を、流路の流れの方向に、定量測定部が、複数に区分して処理するようになっている。このことにより、被検体を、感度よくかつ高いダイナミックレンジで定量できるようになる。
【0022】
定量測定部が被検体の定量のために処理する信号は、どのような信号でもよいが、電気的信号または光信号が信頼性が高く好ましい。
【0023】
検出部が被検体を捕捉する方法としてはどのようなものでもよいが、検出部が被検体を捕捉するための被検体捕捉部(以下、単に「捕捉部」ともいう)を有するやり方が最も簡便であり、好ましい。なお、以下の説明では、一般的に検出部と捕捉部とを区別して説明しているが、本発明の趣旨に反しない限り、検出部に捕捉部を含めてその全体を検出部と呼んでも差し支えない。
【0024】
検出部が被検体を検出した時に生じる信号を、定量測定部が、流路の流れの方向に、複数に区分して処理できるようにする方法についてもどのようなものでもよい。定量測定部が光信号により被検体を定量する場合には、検出部上の蛍光等の光信号をスキャンする方法でもよく、検出部上の光信号を全体的に受像し、この画像を複数に区分して解析してもよい。
【0025】
光信号の場合には、予め信号の発生源を分けておかなくとも、複数に区分して観察することが容易である。しかしながら、定量測定部が電気信号により被検体を定量する場合には、検出部を、流路の流れの方向に複数個に分けて配置し、複数の電気信号として取り出すことが必要である。
【0026】
「流路の流れの方向に」とは、「流路中で被検体を含む媒体が流れる方向に」の意味であり、「流路の流れの方向に、複数に区分して処理」することは、たとえば、流路の流れの方向に光信号をスキャンすることや、流路の流れの方向に検出部を複数並べ、そのそれぞれから電気信号を取り出すことで実現することができる。なお、この場合の「流路の流れの方向」は必ずしも一直線である必要はない。たとえば、複数の検出部が一直線上に並んでいる必要はない。また、流路の幅方向への光信号のスキャンを組み合わせてもよく、流路の幅方向に複数の検出部がある場合には、それらからの電気信号を併用してもよい。
【0027】
以下、図1〜3について、検出部に捕捉部が一つ設けられており、定量測定部が電気信号により被検体を定量する場合について説明する。
【0028】
図1〜3は、従来例と本発明の原理を示す被検体定量デバイスの模式図である。図1〜3では、MEMSやμTAS用の被検体定量デバイス11が、その流路12内に、被検体に対して1対1で特異的に結合し、結合に際して電気的な信号を発する捕捉部14を備えた検出部13を有している。
【0029】
従来例の被検体定量デバイスについて、図1−A〜Cおよび図2−A〜Cを使用して説明する。被検体定量デバイス11は、図1−Aに示すように、検出部に1個の捕捉部を備え、図1−Bに示すように、被検体19を含む検査溶液18が流路を流れ、検査部13を通過すると、図1−Cに示すように、被検体19と捕捉部14とが特異的に結合し、電気的な信号が発生する。この信号は信号取り出し電極15から取り出され、信号処理回路16にて必要な処理(増幅、変換)がされ、モニター17上で信号の変化として確認される。
【0030】
従来例のように、検出部13に1個の捕捉部14を用いる場合には、図2−Aに示すように2個以上の被検体19を含む溶液18が流路12を流れてきたときには、図2−Bに示すように、その中の1個の被検体のみが捕捉部と結合して信号を発生し、残りの被検体は結合できず、流路を流れ去ってしまい、被検体の正確な定量が不可能となってしまう。
【0031】
また、定量性を、たとえば図2−Cのように3倍に上げるために、検出部に3個の捕捉部を設けた場合には、3倍の電気信号に対応できるようにダイナミックレンジを上げるか(図の上側のモニター17)、感度を1/3に低下させる(図の下側のモニター17)必要がある。
【0032】
これに対し本発明では、検出部を流路の流れの方向に複数に区分して処理する。たとえば、図3−Aに示すように、それぞれ1個の捕捉部14を持つ検出部13を5個(番号1〜5で示してある)、流路の流れの方向に、直列に電気的に分離させて配置する。
【0033】
また、電極からの信号を交互にモニターできるようにスイッチング電極31を設ける。こうすることにより、図3−Bに示すように、流路を流れてきた被検体が上流から順次捕捉部と結合すると、被検体の量に従って、上流の検出部から順次信号が発せられる。
【0034】
このとき、図3−Cに示すように、スイッチを順次切り替えて、図中丸1〜丸5の検出部からの信号に対し、信号処理回路16にて必要な処理(増幅、変換)を行い、モニター17により常時モニターすることによって、溶液中の被検体の量が3個の場合は、上流から3個目の検出部まで信号が観測され、被検体の量を信号の観察される検出部の位置で定量することが可能となる。このスイッチング電極31、信号処理回路16およびモニター17が本発明に係る定量測定部を構成する。
【0035】
本発明を利用すれば、従来の信号処理回路とたとえば簡単なスイッチとの組み合わせだけで被検体の定量性を上げることができ感度を低下させずに検出デバイスのダイナミックレンジを向上できる。
【0036】
上記は、検出部に捕捉部が一つ設けられている場合について説明したが、被検体の数が多い場合を考慮して、検出部に捕捉部が複数設けられている場合についても、同様の効果を得ることができる。一般的に言えば、検出部に設ける捕捉部の数を一つに限定することは容易ではないので、検出部に捕捉部を複数設ける方式の方が実用的である場合が多い。この場合、検出部に設ける捕捉部の数が多すぎると検出感度が低下するので、検出部のサイズを小さくしたり、捕捉部の密度を小さくしたりする等により、検出部に設ける捕捉部の数を可能な限り少なくすることが好ましい場合が多い。
【0037】
また、捕捉を介さず直接検出部で被検体を捕捉する場合も、上記と同様、一つの検出部で複数の被検体を捕捉できるようになっていてもよいが、この場合も、検出部のサイズを小さくする等により、一つの検出部で捕捉できる被検体の数を可能な限り少なくすることが好ましい場合が多い。
【0038】
光信号を利用する場合には、捕捉部で捕捉された被検体がそれぞれ光信号を発するので、この場合には、検出部を複数設ける必要はなく、上記したように、定量測定部が、これらの信号を、流路の流れの方向に、複数に区分して処理できれば充分である。
【0039】
図4−A〜Cは、捕捉部で捕捉された被検体が蛍光を発している様子を示す被検体定量デバイスの模式図である。図4−A〜Cには、被検体を捕捉した捕捉部と被検体を捕捉していない捕捉部とが示されている。また、この場合には、一つの検出部の、流路の流れの方向にも幅方向にも複数の捕捉部がある。このような場合には、流路の流れの方向にスキャンすることにより得た信号を、定量測定部が、流路の幅方向に、複数に区分して処理することもできる。このとき、図4−Cに例示するように、流路の流れの方向における被検体を捕捉した捕捉部の数が、流路の幅方向に異なる場合もあり得るが、そのような場合は、たとえば平均値を使用して定量することが合理的である。
【0040】
定量測定部は、被検体毎、捕捉部毎または検出部毎に光信号を分けて処理する必要は必ずしもない。たとえば流れの方向に、いくつかの被検体、捕捉部または検出部を纏めて処理してもよい。たとえば一定の長さ毎の信号を纏めて処理してもよい。
【0041】
検出部が直接被検体を捕捉できる場合には捕捉部を設ける必要は必ずしもない。検出部に被検体を物理吸着させたり電気的に吸着させたりする場合である。しかしながら、このような吸着は一般的には弱いので、検出部に被検体を捕捉できる捕捉部を設けることが好ましい。異なった被検体を特異的に検出する複数の捕捉部を使用すると、複数の異なった被検体を同時に定量できるため好ましい場合が多い。
【0042】
検出部の流れの方向の長さは、流路の幅の2倍以上であることが好ましい。この場合の検出部の流れの方向の長さとは、検出部が流れの方向にひとつあればその長さであり複数あればその全長である。このようにすると、流れの方向の複数の捕捉部または複数の検出部で被検体を捕捉することがより容易になり、検出感度を高めることができる。
【0043】
なお、流路の幅が一個の検出部の幅より大きい場合は、検出部を流路の幅方向に複数配置してもよい。本発明に係る流路は、たとえば、幅が100μm〜5mm、高さが1μm〜1mmと言うように微細なものであり、流速も10cm/秒以下と層流領域にあるのが一般的であるので、検出部を流路の幅方向に複数配置することは必ずしも必要ではないが、より精度の高い定量のためには好ましい。たとえば、流路の長さの方向にスキャンした信号を幅方向に平均化することにより、幅方向に検出部が一つしかない被検体定量デバイスでの測定を複数回繰り返す場合と同じ数のデータを一回の測定で得ることができるようになる。
【0044】
なお、上記においては、被検体が上流から順次捕捉部と結合する場合について説明したが、これは必須の要件ではない。用いる捕捉部や被検体によっては、結合のし易さ、速度が被検体の流れる流速に対して十分でなく、被検体が上流の捕捉部から順次結合できない場合もあり得る。このような場合には、流路の流れの方向に複数に区分されて配置された検出部の数または長さを充分大きく取ってあれば、被検体が上流から順次捕捉部と結合しないかも知れないが、すべての被検体が捕捉部と結合する限り正確な定量が可能である。
【0045】
また、流路の流れの方向に対して直列に並べた検出部の数を多くするのではなく、あるいはそのような検出部の数を多くすると共に、検出部の流路の厚さを、被検体の実効的な高さに対して十分に薄くしたり、下流に行くほど流路の厚さを厚くして、流速を順次遅くし、少なくなった被検体が捕捉部と結合する時間を確保したりすることも有効である。
【0046】
流路の厚さとしては捕捉された被検体の実効的な高さの100倍以下にすることが、被検体を充分捕捉する上で好ましいことが分かった。被検体の実効的な高さとは、検出部の表面から被検体の最上部までの高さを意味し、図5に示すように捕捉部の高さも勘定に入れられる。図5は、捕捉部14の高さも勘定に入れた被検体19の高さ51を説明するための、被検体定量デバイスの模式的な部分的断面図である。この場合の「流路の厚さ」52は、検出部表面53から流路の天井部54までの高さを意味する。検出部表面が流路の底面55より高い場合には、検出部が流路の幅方向一杯に設けられているか、または、検出部のない流路部分についても、検出部の側部(幅方向の部分)については、その底面が検出部表面と同じ高さかまたはそれより高いことが好ましい。
【0047】
「実効的」とは、実際に被検体が検出部に捕捉されたときの高さ(図5の符号51)の平均値であり、被検体や捕捉部が分子の場合にはその形状を加味したものである。被検体や捕捉部が分子の場合には、一般に実効的な高さを知ることが困難である。このような場合には、分子を延ばしたときの最大の長さの50〜80%を実効的な分子の長さとして、被検体の実効的な高さを求めてもよい。
【0048】
さらに、検出部の流路の厚さを下流に行くほど厚くすることが好ましい。用いる捕捉部や被検体によっては、結合のし易さ、速度が流速に対して十分でなく、厚さの大きい流路で、被検体が上流の捕捉部と順次結合できず、定量に支障を来す場合には、このような流路が特に有用である。
【0049】
さらに、被検体がDNAや蛋白質のような全体あるいは一部が帯電した分子の場合、検出部が電極であり、帯電した被検体を電極に電気的に引き寄せるための電位を電極に印加し得ることが好ましい。このようにすると、この電位を電極に印加して、被検体と捕捉部との結合を促進し、検出時間を短縮し、検出感度を向上させることができる。
【0050】
さらに、帯電した被検体を電極に電気的に引き寄せるための電位を、流れの方向における電極の位置により変更し得るようになっていることが好ましい。このようにすると、たとえば、下流ほど媒体中の被検体の濃度が低く、被検体の捕捉効率が落ちるので、電位を電極の位置により変更して、下流に行くほど電位による引き寄せ効果を増加させ、感度の低下を抑えることもできる。
【0051】
上記のようにして被検体を、感度よくかつ高いダイナミックレンジで定量できるようになるが、これを被検体の定量方法の観点から見た場合には、検体検出部に捕捉される被検体の、流路の流れの方向における数を最適化することが重要であるといえる。ここで「最適化する」とは、被検体の定量における感度やダイナミックレンジを現実の定量目的に応じた適切な範囲になるよう定量条件を選択することを意味する。具体的には、被検体の供給速度、流路の流れの方向の検出部の長さ、流路の幅方向の検出部の数および流路の厚さからなる群の少なくとも一つを変更することにより、最適化を行うことが好ましい。
【0052】
このうち、被検体の供給速度については、流速に変動が少なく、流速を自由に変更できると、流速を変更して定量の最適化を図りやすくなる。このための送液手段としては、マイクロポンプを利用することができる。また、外部電場の印加による、電気泳動(Electro−phoresis)や電気浸透流(Electro−osmotic Flow)等、被検体を含む媒体を検出部まで移動できるものであればどのような手段を利用することもできる。
【0053】
本発明に係る被検体定量デバイスでは、被検体の定量が、検出感度を低下させることなく広い範囲で可能となり、被検体の定量性能を著しく改善できるため、マイクロエレクトロメカニカルシステムやマイクロトータルアナリシスシステムの一部として有効に使用することができる。
【0054】
本発明に係る被検体定量デバイスの作製には公知のどのような技術を利用してもよい。以下に、その一例を示す。
【0055】
まず、基板上に流路用の溝を形成する。基板にはガラスやプラスチック、半導体等、本発明の趣旨に反しない限り、どのようなものを用いてもよい。流路としての溝は機械工作、半導体加工技術のエッチング技術等、どのようなものを用いてもよい。基板表面は被検体の溶液が乾燥または飛散しないように、カバーすることが好ましい。この際、光学的に流路を観察する必要がある場合には、観察波長に対して透明な材料をカバー材として用いるべきであることは言うまでもない。
【0056】
流路の一部には被検体を検出するための捕捉部を付着させた検出部を設ける。本発明に係る検出部は、本発明の趣旨に反しない限りどのようなものでもよく、その形状にも特別な制限はない。
【0057】
本発明に係る被検体としては、本発明に係る定量デバイスで定量できるものであればどのようなものでも使用することができる。被検体としては、蛋白質、DNA、RNA、抗体、天然または人工の1本鎖のヌクレオチド体、天然または人工の2本鎖のヌクレオチド体、アプタマー、抗体を蛋白質分解酵素で限定分解して得られる産物、蛋白質に対して親和性を有する有機化合物、蛋白質に対して親和性を有する生体高分子、これらの複合体およびそれらの任意の組み合わせよりなる群から選ばれたものが好ましい。なお本発明において、上記複合体の例としては、DNAとマイナスに帯電したポリマーとの結合体等、上記の物質と他の物質との結合体を挙げることができる。
【0058】
被検体の捕捉には、共有結合、配位結合のような化学的結合の他、生物学的結合、静電気的結合、物理吸着、化学吸着等、本発明の趣旨に反しない限りどのような結合を使用することもできる。
【0059】
例えば、ガラス、セラミックス、プラスチック、金属等を検出部として使用し、その表面に被検体を捕捉し得る捕捉部を設けることができる。検出部は単層であっても多層であってもよく、層状以外の構造を有していてもよい。
【0060】
検出部の材質は目的に応じて任意に定めることができるが、Auが特に好ましい。電極として使用して、電気信号を取り出すのに利用したり、被検体の捕捉を促進するために電位を付与することが容易であり、また、捕捉部の検出部への固定が容易に行える場合が多いからである。
【0061】
特に捕捉部を設けなくても被検体を捕捉し得る場合は、検出部の表面に捕捉部を設ける必要はない。被検体がヌクレオチド体よりなり、そのチオール基を介して、Au層と直接結合できる場合を例示すると、ポリッシュしたAu電極と室温で24時間反応させて、図6に示すように、サファイア基板62上に設けたAu電極(検出部13)に、蛍光標識部61を持つ被検体19が結合した状態の被検体定量デバイスを挙げることができる。1本鎖オリゴヌクレオチド構造の下部にあるSは、被検体19がチオール基を介して、Au電極13と直接結合していることを表している。
【0062】
捕捉部としては、本発明の趣旨に合致する限りどのようなものでもよいが、上記の被検体に対して特異的に結合する性質を有することが好ましい。たとえば、被検体がDNAである場合には、捕捉部がDNAと特異的に結合する機能を有することが好ましく、被検体が蛋白質である場合には、捕捉部が蛋白質と特異的に結合する機能を有することが好ましい。
【0063】
このような捕捉部としては、蛋白質、DNA、RNA、抗体、天然または人工の1本鎖のヌクレオチド体、天然または人工の2本鎖のヌクレオチド体、アプタマー、抗体を蛋白質分解酵素で限定分解して得られる産物、蛋白質に対して親和性を有する有機化合物、蛋白質に対して親和性を有する生体高分子、これらの複合体およびそれらの任意の組み合わせよりなる群から選ばれた少なくとも一つの物質よりなるものであることが好ましい。なお本発明において、上記複合体の例としては、DNAとマイナスに帯電したポリマーとの結合体等、上記の物質と他の物質との結合体を挙げることができる。
【0064】
ここで、本発明において「ヌクレオチド体」とは、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドよりなる群のいずれか一つまたはその混合物を意味する。このような物質は、マイナスに帯電していることが多い。1本鎖あるいは2本鎖を用いることができる。ハイブリダイゼーションすることにより被検体と特異的に結合することもできる。なお、蛋白質、DNA、ヌクレオチド体が混在していてもよい。また、生体高分子には、生体に由来するものの他、生体に由来するものを加工したもの、合成された分子も含まれる。
【0065】
上記「産物」とは、抗体を蛋白質分解酵素で限定分解して得られるものであり、本発明の趣旨に合致する限り、抗体のFabフラグメントまたは(Fab)2フラグメントや抗体のFabフラグメントまたは(Fab)2フラグメントに由来する断片、さらにはその誘導体等どのようなものを含めることもできる。
【0066】
抗体としては、たとえば、モノクローナルな免疫グロブリンIgG抗体を使用することができる。また、IgG抗体に由来する断片として、たとえばIgG抗体のFabフラグメントまたは(Fab)2フラグメントを使用することもできる。更に、そのようなFabフラグメントまたは(Fab)2フラグメントに由来する断片などを使用することもできる。蛋白質に対して親和性を有する有機化合物として使用可能な例を挙げると、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)等の酵素基質アナログや酵素活性阻害剤、神経伝達阻害剤(アンタゴニスト)などがある。蛋白質に対して親和性を有する生体高分子の例としては、蛋白質の基質または触媒となる蛋白質、分子複合体を構成する要素蛋白質同士等を挙げることができる。
【0067】
付着させる捕捉部の全数としては、予想される被検体の数よりも十分に大きい数を用いればよいが、検出感度の観点から、予想される被検体の数の2倍から10倍程度が好ましい。この場合、定量対象の被検体が複数ある場合には、それぞれの被検体の数に対して、捕捉部の数を決めるべきである。
【0068】
この例のようにして作製された本発明に係る被検体定量デバイスは、微少量の微小な被検体の定量に適しており、たとえば、上記したマイクロエレクトロメカニカルシステムやマイクロトータルアナリシスシステムとして好適に利用できる。用途的には、たとえばバイオチップやDNAチップ等に好適に利用できる。
【0069】
なお、本発明の被検体定量方法では、上記のような機能を有する被検体定量デバイスを使用して、あるいは、その他のデバイスについて、流路と被検体を捕捉して検出する検出部と被検体を定量する定量測定部とを使用し、検出部が被検体を検出した時に生じる信号を、定量測定部で、流路の流れの方向に、複数に区分して処理する。このようにすることで、本発明に係る被検体定量デバイスについて説明したと同様、被検体の定量を、検出感度を低下させることなく広い範囲で行うことが可能となり、被検体の定量性能を著しく改善できる。
【0070】
この場合、複数のデバイスを直列や並列に使用し、付属装置を取り付ける等してもよい。このような場合には、本発明に係る被検体定量デバイスを使用する場合に比べ設備が複雑になったり、測定に時間が掛かったりする等の欠点が多くなることも多いが、それでも、本発明に係る被検体定量デバイスを使用する場合に近い効果を上げることも可能である。
【0071】
本発明態様についても、検出部が、被検体を捕捉するための捕捉部を有すること、検出部を流路の流れの方向に複数個配置すること、定量測定部で、光信号により被検体を定量することまたは電気的信号により被検体を定量すること、異なった被検体を特異的に検出する複数の捕捉部を検出部に設置することが好ましい。
【0072】
定量の際には、本発明に係る被検体定量デバイスについてすでに説明したように、検出部に捕捉された被検体の、流路の流れの方向における数を最適化することにより、定量性能を改善することができる。具体的には、被検体の供給速度、検出部の流れの方向の長さ、検出部の流路の幅方向の数および流路の厚さからなる群の少なくとも一つを変更することにより、最適化を行うことができる。
【0073】
また、被検体を急速に検出部で捕捉するには、検出部を電極とし、帯電した被検体を電極に電気的に引き寄せるための電位を電極に印加することが好ましい。この場合の電位は定量に要する時間や定量精度を勘案して適宜定めることができる。
【0074】
帯電した被検体を電極に電気的に引き寄せるための電位を、流れの方向における電極の位置により変更することも有用である。下流ほど媒体中の被検体の濃度が低く、被検体の捕捉効率が落ちるので、電位を電極の位置により変更して、下流に行くほど電位による引き寄せ効果を増加させ、感度の低下を抑えることが有用である。
【0075】
なお、被検体がDNAであり、捕捉部がDNAと特異的に結合する機能を有する場合や被検体が蛋白質であり、捕捉部が蛋白質と特異的に結合する機能を有する場合に本発明に係る被検体定量方法は特に有用である。
【実施例】
【0076】
以下、実施例を参照して本発明を更に説明する。本実施例は一本鎖DNAを捕捉部として検出部に設け、水溶液中の被検体である相補鎖DNAの濃度を検知するDNAチップに関する。
【0077】
実施例のDNAチップの概略図と簡単な動作原理を図4−A〜Cを用いて説明する。まず、図4−Aに示すように、幅1mmの流路を持つ流路の一部に、流路に沿って細長く流路の底面にAu薄膜を設置し検出部13とする。このAu薄膜13の上に捕捉部としてSH基を一端に持つ一本鎖DNA42を表面密度5×1012個/cm2で付着させ(たとえば非特許文献2参照)、捕捉部とする。一本鎖DNAを付着させた流路の上には、この捕捉部からの蛍光信号を観察できるように、二次元のCCD受光部41を設置する。
【0078】
次に、図4−Bに示すように、蛍光ラベル44を付着させた被検体の相補鎖DNA43を含む水溶液を流路に流し、図4−Cに示すように、一本鎖DNA42とハイブリダイズさせ、二本鎖を形成する。二本鎖を形成した部分は相補鎖に付着させた蛍光ラベル44からの蛍光を受光部41が検出する。
【0079】
被検体を含む水溶液は流路の上流より検出部に流れ込むため、二本鎖の形成は検出部の上流より開始され、被検体が無くなるまで下流に進むことになる。検出部の上にある捕捉部の数は、上記表面密度により求められているので、蛍光信号から検出される捕捉部の長さから、被検体の相補鎖DNAの数、従ってその濃度を求めることができる。
【0080】
この例では、流路が幅1mmであるため、流路の流れの方向に5mmまで蛍光信号が観察された場合は、蛍光信号が観察される面積が0.05cm2となり、相補鎖DNAの絶対量は5×1012個/cm2×0.05cm2=2.5×1011個となる。そこで、使用した相補鎖DNAを含む溶液の体積がたとえば100μLであれば、被検体の相補鎖DNAの最初の濃度は2.5×1011個/(0.1cm3)=2.5×1012個と定量することができる。
【0081】
なお、上記に開示した内容から、下記の付記に示した発明が導き出せる。
【0082】
(付記1)
流路と被検体を捕捉して検出する被検体検出部と被検体を定量する定量測定部とを備えた被検体定量デバイスにおいて、
当該被検体検出部が被検体を検出した時に生じる信号を、当該定量測定部が、当該流路の流れの方向に、複数に区分して処理する、
被検体定量デバイス。
【0083】
(付記2)
前記被検体検出部が、前記被検体を捕捉するための被検体捕捉部を有する、付記1に記載の被検体定量デバイス。
【0084】
(付記3)
前記被検体検出部が当該流路の流れの方向に複数個配置されている、付記1または2に記載の被検体定量デバイス。
【0085】
(付記4)
前記被検体検出部の流れの方向の長さが当該流路の幅の2倍以上である、付記1〜3のいずれかに記載の被検体定量デバイス。
【0086】
(付記5)
前記被検体検出部が前記流路の幅方向に複数配置されている、付記1〜4のいずれかに記載の被検体定量デバイス。
【0087】
(付記6)
前記定量測定部が光信号により被検体を定量する、付記1〜5のいずれかに記載の被検体定量デバイス。
【0088】
(付記7)
前記定量測定部が電気的信号により被検体を定量する、付記1〜5のいずれかに記載の被検体定量デバイス。
【0089】
(付記8)
前記被検体検出部の流路の厚さを、捕捉された被検体の実効的な高さの100倍以下にした、付記1〜7のいずれかに記載の被検体定量デバイス。
【0090】
(付記9)
前記被検体検出部の流路の厚さを下流に行くほど厚くした、付記1〜8のいずれかに記載の被検体定量デバイス。
【0091】
(付記10)
前記被検体検出部が電極であり、帯電した被検体を電極に電気的に引き寄せるための電位を電極に印加し得るようになしたものである、付記1〜9のいずれかに記載の被検体定量デバイス。
【0092】
(付記11)
前記帯電した被検体を電極に電気的に引き寄せるための電位を、前記流れの方向における電極の位置により変更し得るようになした、付記10に記載の被検体定量デバイス。
【0093】
(付記12)
前記被検体を含む溶液を前記流路に流すために、マイクロポンプ、電気泳動または電気浸透流を利用する、付記1〜11のいずれかに記載の被検体定量デバイス。
【0094】
(付記13)
異なった被検体を特異的に検出する複数の被検体捕捉部を前記被検体検出部に設置してなる、付記1〜12のいずれかに記載の被検体定量デバイス。
【0095】
(付記14)
前記被検体がDNAであり、前記被検体捕捉部がDNAと特異的に結合する機能を有する、付記13に記載の被検体定量デバイス。
【0096】
(付記15)
前記被検体が蛋白質であり、前記被検体捕捉部が蛋白質と特異的に結合する機能を有する、付記13に記載の被検体定量デバイス。
【0097】
(付記16)
付記1〜15に記載の被検体定量デバイスを備えたマイクロエレクトロメカニカルシステム。
【0098】
(付記17)
付記1〜15に記載の被検体定量デバイスを備えたマイクロトータルアナリシスシステム。
【0099】
(付記18)
流路と被検体を捕捉して検出する被検体検出部と被検体を定量する定量測定部とを使用し、
当該被検体検出部が被検体を検出した時に生じる信号を、当該定量測定部で、当該流路の流れの方向に、複数に区分して処理する
被検体定量方法。
【0100】
(付記19)
前記被検体検出部が、前記被検体を捕捉するための被検体捕捉部を有する、付記18に記載の被検体定量方法。
【0101】
(付記20)
前記被検体検出部を前記流路の流れの方向に複数個配置する、付記18または19に記載の被検体定量方法。
【0102】
(付記21)
前記被検体検出部に捕捉された被検体の、前記流路の流れの方向における数を最適化する、付記18〜20のいずれかに記載の被検体定量方法。
【0103】
(付記22)
前記被検体の供給速度、前記流路の流れの方向の前記被検体検出部の長さ、前記流路の幅方向の前記被検体検出部の数および前記流路の厚さからなる群の少なくとも一つを変更することにより、前記最適化を行う、付記18〜21のいずれかに記載の被検体定量方法。
【0104】
(付記23)
前記定量測定部で、光信号により被検体を定量する、付記18〜22のいずれかに記載の被検体定量方法。
【0105】
(付記24)
前記定量測定部で、電気的信号により被検体を定量する、付記18〜22のいずれかに記載の被検体定量方法。
【0106】
(付記25)
前記被検体検出部を電極とし、帯電した被検体を電極に電気的に引き寄せるための電位を電極に印加する、付記18〜24のいずれかに記載の被検体定量方法。
【0107】
(付記26)
前記帯電した被検体を電極に電気的に引き寄せるための電位を、前記流れの方向における電極の位置により変更する、付記25に記載の被検体定量方法。
【0108】
(付記27)
異なった被検体を特異的に検出する複数の被検体捕捉部を前記被検体検出部に設置する、付記18〜26のいずれかに記載の被検体定量方法。
【0109】
(付記28)
前記被検体がDNAであり、前記被検体捕捉部がDNAと特異的に結合する機能を有する、付記27に記載の被検体定量方法。
【0110】
(付記29)
前記被検体が蛋白質であり、前記被検体捕捉部が蛋白質と特異的に結合する機能を有する、付記27に記載の被検体定量方法。
【符号の説明】
【0111】
11 被検体定量デバイス
12 流路
13 検査部
14 捕捉部
15 信号取り出し電極
16 信号処理回路
17 モニター
18 検査溶液
19 被検体
31 スイッチング電極
41 CCD受光部
42 一本鎖DNA
43 相補鎖DNA
44 蛍光ラベル
51 被検体の高さ
52 流路の厚さ
53 検出部表面
54 流路の天井部
55 流路の底面
61 蛍光標識部
62 サファイア基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路と、
被検体を捕捉して検出する被検体検出部と、
前記検出された被検体を定量する定量測定部と、
を備え、
前記定量測定部は、前記流路の流れの方向に前記被検体検出部をスキャンすることにより得た信号を前記流路の流れの方向に複数に区分して処理する、
被検体定量デバイス。
【請求項2】
前記被検体検出部が、前記被検体を捕捉するための被検体捕捉部を有する、請求項1に記載の被検体定量デバイス。
【請求項3】
前記被検体検出部が前記流路の幅方向に複数配置されている、請求項1または2に記載の被検体定量デバイス。
【請求項4】
前記被検体検出部の流路の厚さを、捕捉された被検体の実効的な高さの100倍以下にした、請求項1〜3のいずれかに記載の被検体定量デバイス。
【請求項5】
前記被検体検出部が電極であり、帯電した被検体を電極に電気的に引き寄せるための電位を電極に印加し得るようになしたものである、請求項1〜4のいずれかに記載の被検体定量デバイス。
【請求項6】
流路と、被検体を捕捉して検出する被検体検出部と被検体を定量する定量測定部とを使用し、
前記定量測定部が、前記流路の流れの方向に前記被検体検出部をスキャンすることにより得た信号を前記流路の流れの方向に複数に区分して処理する、
被検体定量方法。
【請求項7】
前記被検体検出部が、前記被検体を捕捉するための被検体捕捉部を有する、請求項6に記載の被検体定量方法。
【請求項8】
前記被検体検出部が前記流路の幅方向に複数配置されている、請求項6または7に記載の被検体定量デバイス。
【請求項9】
前記被検体検出部に捕捉された被検体の、前記流路の流れの方向における数を最適化する、請求項6〜8のいずれかに記載の被検体定量方法。
【請求項10】
前記被検体の供給速度、前記流路の流れの方向の前記被検体検出部の長さ、前記流路の幅方向の前記被検体検出部の数および前記流路の厚さからなる群の少なくとも一つを変更することにより、前記最適化を行う、請求項6〜9のいずれかに記載の被検体定量方法。

【図1−A】
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【図1−B】
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【図1−C】
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【図2−A】
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【図2−B】
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【図2−C】
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【図3−A】
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【図3−B】
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【図3−C】
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【図4−A】
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【図4−B】
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【図4−C】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−66271(P2010−66271A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254600(P2009−254600)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【分割の表示】特願2004−283245(P2004−283245)の分割
【原出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】