説明

被締付時の変形を考慮したワッシャ枚数の計測方法

【課題】ワッシャ押し潰し量の誤差を補正し、適切な枚数のワッシャが用いられているか正確に判定できるワッシャ枚数の計測方法を提供する。
【解決手段】ボルトを被締付部材に締め付ける際にワッシャの枚数を計測する方法であって、ボルトを回転させてボルトとワッシャと被締付部材とを着座させ、ボルトをさらに所定トルクが発生するまで回転させてワッシャを押し潰しながら締付を完了させ、締付完了時のワッシャ厚みを測定し、所定の回転角度とボルトのねじピッチとからワッシャの押し潰し距離を逆算し、締付完了時のワッシャ厚みと押し潰し距離とを加算して着座時のワッシャ厚みを求め、ワッシャの厚み仕様値にワッシャの厚みバラツキ許容量を加算および減算してワッシャ厚み閾値の上限値および下限値を求め、着座時のワッシャ厚みが閾値の上限値および下限値の範囲内に収まっていれば合格、着座時のワッシャ厚みが閾値の範囲外であれば不合格と判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワッシャを介してボルトを被締付部材に締め付ける際に使用されたワッシャの枚数が適正範囲にあるかを自動検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボルトを被締付部材に締め付けるにあたり、締付が弱すぎると部材に緩みが生じ、強すぎると部材の変形や破損が生じる虞があるため、これらを適正なトルクで締め付ける方法が検討されている。しかしながら、締付トルクと締付角度は厳密な比例関係にはなく、各部材の表面性状や寸法のわずかな差異によって、同じ締付角度によってもたらされる締付トルクに大きな違いが生じる場合があった。
【0003】
このような問題を解決して適正なトルクでの締付を行う方法として、例えば、締付トルクと締付角度の関係を求め、これらの間の誤差を補正することによって締付品質を高める方法(例えば、特許文献1参照)や、正常に締め付けられたか否かを信頼性高く判定する方法(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【0004】
しかしながら、これらの技術は、トルク管理によってボルトが正しく締め付けられていることは検出できても、ワッシャ脱落を検出することは、締付機やワーク等の位置ズレのため、誤りを減らし信頼性を高くすることは難しい。このように、これらの技術は、ボルト、ワッシャおよび被締付部材が適切に組み立てられた前提での締付トルクを適正化する技術であって、例えば自動組立工程等において、ボルトと被締付部材との間に配置されるワッシャの枚数が本来1枚であるべきところ、組立装置の不具合によって脱落して配置されていなかったり、逆に複数枚過剰に配置されていたりするような場合でも、ボルトに掛かるトルクが正常範囲であれば組立て自体も正常と判定されてしまう。このように、単にトルクを管理しただけではワッシャの過不足を検知してワッシャの枚数を信頼性高く検出することは困難である。
【0005】
このような問題に対しては、ボルトの締め付け後の検査において、ワッシャの厚みを計測することで、ワッシャが適正範囲の枚数であるかを判定することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開2006−272512号公報
【特許文献2】実開平9−174451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、たとえ締付後のワッシャ厚みの測定値が許容範囲内に収まっていたとしても、適正枚数よりも多い枚数であるにも関わらず著しく押し潰されていることで最終的な厚さが許容範囲に収まっていたり、あるいは逆に適正枚数より少ない枚数であるにも関わらず締付が緩いことで許容範囲に収まっていたりといった問題があった。また、適正枚数で締め付けられているにも関わらず、押し潰し量が大きくて適正枚数より少ないと判定されてしまうこともあった。このように、単に締付後の厚みを測定するだけでは、使用されたワッシャの枚数までも正確に管理することは困難であった。
【0008】
また、金型により被締付部材を連続的に鋳造した場合、経時的に金型が変化し、これにより被締付部材の表面性状すなわち鋳肌表面粗さが変化する。結果として、被締付部材とワッシャ間の摩擦力が変化する。さらに、被締付部材とワッシャとの接触面への油分の付着など他の外的要因によっても摩擦力が変化する。したがって、「締付角度=ワッシャ潰れ量」の関係が必ずしも成立せず、バラツキが顕著となってしまう。
【0009】
本願発明は、上記状況に鑑みてなされたものであり、ワッシャの押し潰し量の誤差を補正して、適切な枚数のワッシャが用いられているか否かをより正確に判定することができるワッシャ枚数の計測方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、締付機によってワッシャを押し潰しながらボルトを被締付部材に締め付ける際に、使用されたワッシャの枚数を計測する方法であって、ボルトを回転させてボルトとワッシャと被締付部材とを着座させ、そこからボルトをさらに所定のトルクが発生するまで回転させてワッシャを押し潰しながら締付を完了させ、締付完了時のワッシャ厚みを測定し、所定の回転角度とボルトのねじピッチとからワッシャの押し潰し距離を逆算し、締付完了時のワッシャ厚みと押し潰し距離とを加算して着座時のワッシャ厚み(X)を求め、ワッシャの厚み仕様値にワッシャの厚みバラツキ許容量を加算および減算してワッシャ厚み閾値の上限値および下限値を求め、着座時のワッシャ厚み(X)が閾値の上限値および下限値の範囲内に収まっていれば合格と判定し、着座時のワッシャ厚み(X)が閾値の上限値および下限値の範囲外であれば不合格と判定することを特徴としている。
【0011】
本発明のワッシャ枚数の計測方法においては、被締付部材における少なくともワッシャ接触領域以外の表面は鋳肌で構成され、締付完了時のワッシャ厚みの測定は、ボルトとワッシャと鋳肌とにレーザーを照射して光学的に測定するものであり、ワッシャ厚み閾値の上限値および下限値を算出する工程において、予めボルトとワッシャと被締付部材との締付を所定の回数行ってそれぞれの着座時のワッシャ厚み(X)の値から移動区間平均値(Y)を算出し、直近の移動区間平均値(Y)にワッシャの厚みバラツキ許容量を加算および減算することによって次回締付時のワッシャ厚み閾値の上限値および下限値を求めることを好ましい態様としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、着座トルク発生時、すなわちボルトとワッシャと被締付部材が接触した時点からさらに所定のトルクが発生するまで締め付けた角度データが締付機から得られ、その角度とねじピッチによりワッシャの押し潰し量が算出され、この押し潰し量と締付後の厚み実測値とを加算することで着座トルク発生時(0度)での元のワッシャ厚みを得ることができ、これがバラツキ許容範囲内に収まっているか否かでワッシャの枚数を所定枚数であるかを計測することができる。
【0013】
また、本発明では、ボルトとワッシャと被締付部材の締付を所定の回数行い、それぞれの回で着座トルク発生時の元のワッシャ厚みを得てそれらの移動区間平均値を算出し、次回の締付時においてバラツキ許容範囲内に収まっているか否かの判断にその直近の移動区間平均値を用いるので、例えば被締付部材が鋳造されて鋳肌面を有していて、連続的に鋳造されることで鋳肌面の性状が一定の傾向で変化するような場合にも、直近の移動平均値を用いることでそのような鋳肌面の性状の変化の傾向による誤差を補正しながらワッシャの枚数を所定枚数であるかを計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明においてワッシャ厚みの実測方法を示す模式図である。
【図2】本発明のワッシャの枚数の計測方法のフローチャート図である。
【図3】本発明におけるボルトの締め付け角度とワッシャの厚み測定値との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本願発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
第1実施形態
本発明の第1実施形態は、締付機によってワッシャを押し潰しながらボルトを被締付部材に締め付ける際に、使用されたワッシャの枚数を計測する方法であって、ボルトを回転させてボルトとワッシャと被締付部材とを着座させ、そこからボルトをさらに所定のトルクが発生するまで回転させてワッシャを押し潰しながら締付を完了させ、締付完了時のワッシャ厚みを測定し、所定の回転角度とボルトのねじピッチとからワッシャの押し潰し距離を逆算し、締付完了時のワッシャ厚みと押し潰し距離とを加算して着座時のワッシャ厚み(X)を求め、ワッシャの厚み仕様値にワッシャの厚みバラツキ許容量を加算および減算してワッシャ厚み閾値の上限値および下限値を求め、着座時のワッシャ厚み(X)が閾値の上限値および下限値の範囲内に収まっていれば合格と判定し、着座時のワッシャ厚み(X)が閾値の上限値および下限値の範囲外であれば不合格と判定することを特徴としている。
【0016】
図2は、これら工程を示すフローチャート図である。表面を機械加工した被締付部材等の表面にねじ孔を穿孔形成し、ワッシャを介してボルトを挿入して、締付機によってボルトの締付を開始する(ステップS10)。この締付機は、締付に伴うトルクおよび締付(回転)角度を計測することができ、締付トルクデータD1および締付角度データD2として出力することができる公知の締付機である。
【0017】
ステップS11では、締付機によって角度を計測し、かつトルクを監視して締付トルクデータD1および締付角度データD2を得ながらボルトの締付を続行し、ボルトとワッシャと被締付部材が接触してトルクが急激に上昇する着座トルクが発生して規定値を超えるトルクとなった場合(ステップS12)は、ステップS13へ移行する。規定値を超えるトルクが発生しない場合はステップS11に戻って締付を続行する。
【0018】
着座トルクの発生したステップS13では、そこからワッシャの押し潰しが開始するとみなし、締付角度データD2をリセットし、0度とする。ステップS14では、締付機によって角度を計測し、かつトルクを監視して締付トルクデータD1および締付角度データD2を得ながら、ワッシャをボルトによって押し潰しながらボルトの締付を続行する。
【0019】
ステップS15では、締付角度データD2が所定の規定値を超えた時点で、異常による締付終了とされ(ステップS17)、払い出される(ステップS19)。一方、締付角度データD2が規定値を超えず、かつ締付トルクデータD1のみが規定値に達した場合は、正常に締付が終了したとされ(ステップS18)、払い出される(ステップS19)。締付トルクデータD1および締付角度データD2のいずれもが規定値に達しない場合は、ステップS14に戻り、締付が続行される。
【0020】
これら一連のフローによって正常に締付が終了して払い出された部材の個々について、締付完了後の押し潰されたワッシャ厚みが測定される。このときの模式図を図1に示す。符号1は被締付部材であり、ワッシャ2を介してボルト3が締め付けられている。ワッシャ2の厚みは、図1(a)に示すように撮像手段4によって撮影されてその解像度によって映像を解析してもよいし、図1(b)に示すようにレーザー照射手段5によって被締付部材表面とボルト高さを測定してもよいし、図1(c)に示すように接触センサー6によって測定してもよい。
【0021】
ここで、締付角度データD2とボルトのねじピッチから計算される、ねじが被締付部材内を進んだ距離(ワッシャの押し潰し量)が逆算され、上記の押し潰されたワッシャの厚みの実測値に対して、このワッシャ押し潰し量を加算することで、押し潰される前の、着座トルクが発生した時点のワッシャの元の厚み(X)を算出する。
【0022】
次に、このワッシャの元の厚み(X)が許容範囲内であるか否かを判定する。ワッシャには、仕様値としての厚みが与えられているので、この仕様値に対して所定のバラツキ許容量を加算してワッシャ厚み閾値上限値とし、また、仕様値に対して所定のバラツキ許容量を減算してワッシャ厚み閾値下限値とする。例えば、ワッシャの規定枚数が1枚で仕様値が2mmであれば、バラツキ許容量は半分の1mm程度とすることが好ましく、この場合1mmが下限値、3mmが上限値となり、この範囲内にワッシャの元の厚み(X)が入ればワッシャ枚数は1枚で合格とされる。
【0023】
下限の1mm未満であればワッシャが0枚と判定され、上限の3mmを超えると2枚と判定されて不合格となる。なお、実施例に示すように、バラツキ許容量は仕様値の半分よりも小さいと、計測がより正確になるのでより好ましい(解像度換算で仕様値の半分は7.7pixであるのに対してバラツキ許容量は±6.5pixに設定)。
【0024】
第2実施形態
本発明の第2実施形態は、上記第1実施形態において、被締付部材における少なくともワッシャ接触領域以外の表面は鋳肌で構成され、締付完了時のワッシャ厚みの測定は、ボルトとワッシャと鋳肌とにレーザーを照射して光学的に測定することを前提としており、このような条件下でワッシャ厚み閾値の上限値および下限値を算出する工程において、予めボルトとワッシャと被締付部材との締付を所定の回数行ってそれぞれの着座時のワッシャ厚み(X)の値から移動区間平均値(Y)を算出し、直近の移動区間平均値(Y)にワッシャの厚みバラツキ許容量を加算および減算することによって次回締付時のワッシャ厚み閾値の上限値および下限値を求めることを特徴としている。
【0025】
上述の第1実施形態においては、被締付部材の表面は機械加工等で平滑化されていて、被締付部材ごとの表面性状の差異は抑制されている状況を含んでいるため、バラツキ許容量を算出する際には、ワッシャ厚みの仕様値という単一の値を用いて、これにバラツキ許容量を加減算してワッシャ厚み閾値上限値および下限値を計算していた。
【0026】
一方、第2実施形態では、例えば被締付部材が金型による鋳造によって製造され、ワッシャが接触するねじ孔周縁部のみを機械加工で平滑化してそれ以外の部分は鋳肌のままであることが前提となっており、また、締付完了後のワッシャ厚みの測定は、図1(b)に示すようにレーザー照射手段によって被締付部材表面とボルト高さを測定することが前提となっている。
【0027】
このような場合、連続的に被締付部材を鋳造することによって金型表面が損耗により荒れる等の変化が生じるため、鋳造される被締付部材は、例えば表面の凹凸が経時的に顕著になる等の傾向を持った変化が生じる。そこで、図1(b)のようにレーザー光でボルト頂部と被締付部材表面の高さの差を計測する場合、その表面の凹凸が大きくなることにより経時的にワッシャ厚みの測定の誤差も拡大していく。
【0028】
したがって、第2実施形態では、バラツキ許容量を算出する際には、ワッシャ厚みの仕様値という単一の値を用いるのではワッシャ厚みの測定の誤差に追従できなくなるため、直近の被締付部材の表面性状の変化を反映させながらバラツキ許容量を加減算してワッシャ厚み閾値上限値および下限値を計算する。
【0029】
具体的には、まず第1実施形態同様にボルトとワッシャと被締付部材の締付を行い、着座時のワッシャ厚みXを求める。このXに対して、第1実施形態同様にワッシャ厚みの仕様値にバラツキ許容量を加減算してワッシャ厚み閾値上限値および下限値を計算し、合格していれば、次の別のボルトとワッシャと被締付部材の締付についても同様に行ってXを求め、以下同様にして所定の回数行ってX〜Xを求める。そして、これらの移動区間平均値Y=(X+・・・+X)/nを求めておく。
【0030】
次に、第n+1回目のボルトとワッシャと被締付部材の締付を行い、同様に着座時のワッシャ厚みXn+1を求める。そして、このXn+1に対しては、直近の移動区間平均Yにワッシャの厚みバラツキ許容量を加算および減算することによってワッシャ厚み閾値の上限値および下限値を求め、厚みXn+1が合格か不合格かを判定する。以下、第n+2回目の着座時のワッシャ厚みXn+2の判定を行う際は、直近のn個の移動区間平均Yn+1=(X+・・・+Xn+1)/nによって行う。
【0031】
以上のような第2実施形態におけるワッシャ厚み閾値の上限値および下限値の変遷を図3のグラフに示す。実線で示す第1実施形態では、閾値の上限値および下限値が固定であるのに対し、破線で示す第2実施形態では、閾値の上限値および下限値が変化する。第2実施形態では、被締付部材が金型による鋳造によって製造され、ワッシャが接触するねじ孔周縁部のみを機械加工で平滑化してそれ以外の部分は鋳肌のままである。被締付部材を連続的な鋳造により製造すると、経時的に金型の表面が劣化していき金型表面に微細な凹凸が成長していく。これにより被締付部材の表面性状すなわち鋳肌表面粗さが増大する。結果として、被締付部材とワッシャ間の摩擦力が増大する方向に変化する。また、逆に、被締付部材とワッシャとの接触面への油分の付着など他の外的要因によっても摩擦力が減少する方向に変化するものもある。
【0032】
このように、摩擦力が増大すると、想定より少ない回転角度にて所定のトルクが発生し易くなり、このような場合にはワッシャの潰れ量は小さい。一方、摩擦力が減少すると、想定より多い回転角度にて所定のトルクが発生し易くなり、このような場合にはワッシャの潰れ量が大きい。したがって、「締付角度=ワッシャ潰れ量」の関係が必ずしも成立せず、両者の相関関係にバラツキが顕著となってしまい、適切な閾値を一律に設定することができない。
【0033】
本実施形態によれば、図3に示すように、回転角度の大小すなわち摩擦力の大小によりワッシャ潰れ量の閾値を変化させている。これにより、仮に締付が正常であっても閾値の上限値および下限値が固定値であることにより誤差が大きくなってしまう状況が抑制され、被締付部材の表面性状による回転角度のすなわち摩擦力の誤差を抑制した正しい閾値の上限値および下限値を求めることができる。なお、移動区間平均を取る個数nは特に限定されないが、通常5〜20程度とされる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明する。
鋳造した被締付部材の締付部に表面加工を行ってねじ孔穿孔を行い、厚さ2mmのアルミニウム製ワッシャを介して、M8ボルトを締付した。M8ボルトのねじピッチは、1回転360度で1.25mmである。厚み測定用のカメラとしてはキーエンス社製XG7500を使用し、カメラのレンズおよび距離は、カメラの解像度1ピクセル(以下、pix)=0.13mmとなるように設定した。締付機としては第一電通社製NFT311RH1B−SAを使用した。
【0035】
カメラの解像度1pix=0.13mmおよびM8ボルトのねじピッチ360deg=1.25mmより、回転角度あたりのピクセル量は下記表1に示すように、0.0267pix/degとなり、この変換係数を用いて、撮像画像のピクセル量から回転角度を計算した。また、厚みバラツキ許容量としては、ワッシャ厚み2mm=15.4pixの半分である7.7pixより狭い6.5pixとした。また、移動区間平均計算に用いた直近のデータ数nは5個とした。
【0036】
【表1】

【0037】
以上の条件下で、第2実施形態において説明したように、ボルトとワッシャと被締付部材の締付を行い、その結果を表2に示した。第1〜5回目は、ワッシャの厚み仕様値2mm=15.4pixから、閾値の下限値は8.9pix、上限値は21.9pixである。第1〜5回目のいずれもカメラ画像の目視により許容範囲であったので、これら測定値16.62pix〜16.01pixの移動区間平均16.03pixを、第6回目の判定に用いる値とし、これに±6.5pixを加減算して下限値を9.53pix、上限値を22.53pixとした。第6回目の着座時のワッシャ厚み測定値は16.38pixであったので、自動機判定によって合格とされた。
【0038】
次に、第7回目の着座時のワッシャ厚み測定値の判定には第2〜6回目の着座時のワッシャ厚み測定値の平均値を用いて閾値の下限値と上限値を設定し、判定を行った。以下同様にして、第10回目までの締付を行い、着座時のワッシャ厚み測定値は全て合格と判定された。
【0039】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0040】
自動締付機において、締付完了後のワッシャの押し潰し量が変動してもワッシャの枚数が許容範囲内であるかを正確に判定することができる。
【符号の説明】
【0041】
1…被締付部材、
2…ワッシャ、
3…ボルト、
4…撮像手段(カメラ)、
5…レーザー照射手段、
6…接触センサ。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
締付機によってワッシャを押し潰しながらボルトを被締付部材に締め付ける際に、使用されたワッシャの枚数を計測する方法であって、
前記ボルトを回転させて前記ボルトと前記ワッシャと前記被締付部材とを着座させ、
そこから前記ボルトをさらに所定のトルクが発生するまで回転させて前記ワッシャを押し潰しながら締付を完了させ、
前記締付完了時のワッシャ厚みを測定し、
前記所定の回転角度と前記ボルトのねじピッチとから前記ワッシャの押し潰し距離を逆算し、
前記締付完了時のワッシャ厚みと前記押し潰し距離とを加算して着座時のワッシャ厚み(X)を求め、
ワッシャの厚み仕様値にワッシャの厚みバラツキ許容量を加算および減算してワッシャ厚み閾値の上限値および下限値を求め、
前記着座時のワッシャ厚み(X)が前記閾値の上限値および下限値の範囲内に収まっていれば合格と判定し、
前記着座時のワッシャ厚み(X)が前記閾値の上限値および下限値の範囲外であれば不合格と判定することを特徴とするワッシャ枚数の計測方法。
【請求項2】
前記被締付部材における少なくともワッシャ接触領域以外の表面は鋳肌で構成され、
前記締付完了時のワッシャ厚みの測定は、前記ボルトと前記ワッシャと前記鋳肌とにレーザーを照射して光学的に測定するものであり、
前記ワッシャ厚み閾値の上限値および下限値を算出する工程において、
予めボルトとワッシャと被締付部材との締付を所定の回数行ってそれぞれの着座時のワッシャ厚み(X)の値から移動区間平均値(Y)を算出し、
直近の前記移動区間平均値(Y)に前記ワッシャの厚みバラツキ許容量を加算および減算することによって次回締付時のワッシャ厚み閾値の上限値および下限値を求めることを特徴とする請求項1に記載のワッシャ枚数の計測方法。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−66354(P2012−66354A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213895(P2010−213895)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】