説明

被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物

【課題】作業性や取り扱い性に優れ、低屈折率、良好な柔軟性および高硬度の被膜を形成可能な被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリシロキサン構造と分子中に2個以上の重合性不飽和二重結合とを有する樹脂(A)、および、下記の一般式(I)で示されるフッ素原子含有重合性不飽和単量体(B)を含有してなり、前記樹脂(A)と前記フッ素原子含有重合性不飽和単量体(B)との配合質量比が2/98〜50/50の範囲内にあることを特徴とする被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物。
[化1]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低屈折率の被膜を形成できる被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイなどの光学製品には、外光の反射によるコントラスト低下や像の映り込みを防止するために、例えば、画像表示部表面に高屈折率の樹脂層(以下、「高屈折率樹脂層」と言う。)や低屈折率の樹脂層(以下、「低屈折率樹脂層」と言う。)などの機能層が組み合わせられて設けられている。
【0003】
従来、このような機能層のなかでも、低屈折率樹脂層は、映像などの視認性の向上に大きく寄与する場合が多いことから、低屈折率樹脂層を形成可能な樹脂組成物の開発が進められている。
【0004】
低屈折率樹脂層を形成可能な樹脂組成物の一例としては、例えば、特定の含フッ素ジ(メタ)アクリル酸エステルと、特定の含フッ素(メタ)アクリル酸エステルおよび/または特定のフマル酸ジエステルとを組み合わせて重合して得られる重合体を含有するフッ素硬化性塗液が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかし、このフッ素硬化性塗液に含まれる重合体は、トリフルオロメチルベンゼンのような特定の有機溶媒には溶解するものの、汎用のエステル類やケトン類などには溶解し難いため、取り扱いが容易でなかった。さらに、フッ素硬化性塗液を用いて被膜を形成する際、樹脂組成物のラジカル重合を実用上十分なレベルまで進行させるためには、電子線の照射が必要であるなど工業的生産効率がよくなかった。
【0006】
また、低屈折率樹脂層を形成可能な樹脂組成物の他の例としては、例えば、含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルと、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシランカップリング剤およびフッ素含有シランカップリング剤によって変性されたコロイダルシリカとを含む含フッ素硬化性塗液が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
しかし、含フッ素硬化性塗液を用いて硬化塗膜を形成するためには、例えば、窒素雰囲気下のような低酸素濃度雰囲気下において、紫外線照射が必要な場合があり、被膜形成作業の効率化を図る上で問題があった。
【0008】
ところで、光学用途向け材料には、所定の屈折率を有する樹脂層を形成できるだけでなく、使用場面などに応じた適度な硬度が求められる場合がある。
例えば、光導波路に関する技術分野では、光導波路を構成するクラッド部として低屈折率の材料が用いられる場合がある。クラッド部を構成する材料としては、低屈折率であるとともに良好な柔軟性を有することが求められる。
【0009】
また、画像表示装置に関する技術分野のうち、有機EL型ディスプレイ用材料には、低屈折率であるとともに良好な柔軟性が求められる場合がある。一方、プラズマディスプレイや液晶ディスプレイ用材料には、低屈折率であるとともに、ある程度の硬さが求められる場合がある。
【0010】
このように、産業界からは、低屈折率であるとともに、用途に応じて被膜の硬度や柔軟性を任意に調整できる樹脂組成物が求められている。
しかし、これまでの樹脂組成物は、被膜の低屈折率を維持しようとすると、被膜の硬度を任意に調整することが難しくなる場合が多く、その結果、顧客からの様々な要請に対応することができない場合があった。
【特許文献1】特開平8−48935号公報
【特許文献2】特開2001−262011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、作業性や取り扱い性に優れ、かつ低屈折率の被膜を形成可能な被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、良好な柔軟性を有する低屈折率の被膜を形成可能な被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、高硬度でかつ低屈折率の被膜を形成可能な被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上記課題を解決するために検討するなかで、従来、低屈折率の樹脂層を形成可能な材料として知られるポリシロキサン樹脂に、各種フッ素原子含有重合性単量体を組み合わせることによって、より一層の低屈折率化が図れるものと考え、検討を進めた。しかし、多くのフッ素原子含有重合性単量体は、ポリシロキサン樹脂と相溶し難いため、工業的にも取り扱いが困難な場合があった。
そこで、本発明者等は、上記課題を解決するためにさらに検討を行った結果、特定の構造を有するフッ素原子含有重合性単量体と、特定のポリシロキサン構造を有する樹脂とを組み合わせた樹脂組成物は、相溶性に優れるとともに、低屈折率の硬化樹脂層を形成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
また、本発明者等は、上記課題を解決するために検討を行った結果、上記の樹脂組成物に対して、さらに、−30℃以下のガラス転移温度を有するホモポリマーを形成できる1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する単量体、1個の重合性不飽和二重結合と、−30℃以下のガラス転移温度とを有する重合体、または、3個以上の重合性不飽和二重結合を有する架橋剤を添加することによって、その樹脂組成物によって得られる硬化樹脂層の硬度を任意に調整できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、ポリシロキサン構造と分子中に2個以上の重合性不飽和二重結合とを有する樹脂(A)、および、下記の一般式(I)で示されるフッ素原子含有重合性不飽和単量体(B)を含有してなり、前記樹脂(A)と前記フッ素原子含有重合性不飽和単量体(B)との配合質量比が2/98〜50/50の範囲内にあることを特徴とする被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物を提供する。
【0014】
【化1】

【0015】
但し、上記の一般式(I)において、RはHまたはCH、RはHまたはF、n=1〜3の整数、m=1〜4の整数を表す。
【発明の効果】
【0016】
本発明被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物によれば、煩雑な作業や取り扱いを伴うことなく、低屈折率の樹脂硬化物を得ることができる。また、本発明の被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物を用いて得られた樹脂硬化物は、透明性に優れ、その硬度を任意に調整できることから、例えば、液晶ディスプレイや、光導波路などの光学製品用途に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物の最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0018】
本発明の被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物は、ポリシロキサン構造と分子中に2個以上の重合性不飽和二重結合とを有する樹脂(A)、および、下記の一般式(I)で示されるフッ素原子含有重合性不飽和単量体(B)を含有してなり、樹脂(A)とフッ素原子含有重合性不飽和単量体(B)との配合質量比が2/98〜50/50の範囲内にあり、必要に応じてその他の添加剤を含有してなるものである。
【0019】
【化2】

【0020】
但し、上記の一般式(I)において、RはHまたはCH、RはHまたはF、n=1〜3の整数、m=1〜4の整数を表す。
【0021】
本発明の被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物は、屈折率が概ね1.45以下の比較的低屈折率の硬化物を形成するうえで、特定の樹脂(A)および特定のフッ素原子含有重合性不飽和単量体(B)を組み合わせて用いることが必須である。
ここで、本発明における屈折率とは、被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物がほぼ完全に硬化して形成された硬化物を、25℃の環境下にて、測定機器(ユニバーサルアッベ屈折計、ERMA Inc.製)を用いて測定した屈折率のことである。
【0022】
また、本発明の被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物は、単に、樹脂(A)とフッ素原子含有重合性不飽和単量体(B)とを組み合わせて用いればよいというものではなく、樹脂(A)とフッ素原子含有重合性不飽和単量体(B)との配合質量比が2/98〜50/50の範囲内にあり、この配合質量比が4/96〜30/70の範囲内にあることがより好ましい。この配合質量比が4/96〜30/70の範囲内にあれば、被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物から得られる硬化物の屈折率をより一層低下させることが可能となる。
また、樹脂(A)とフッ素原子含有重合性不飽和単量体(B)との配合質量比が2/98〜50/50の範囲外では、屈折率が概ね1.45以下である低屈折率の硬化物を形成することができない場合がある。
【0023】
本発明の被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物を構成する樹脂(A)は、主鎖にポリシロキサン構造を有する樹脂であって、分子中に2個以上の重合性不飽和二重結合を有するものである。
【0024】
樹脂(A)としては、低屈折率の硬化物を形成可能な被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物を得るうえで、ポリシロキサン構造を主鎖に有するものを用いることが必須である。
ポリシロキサン構造とは、ケイ素原子と酸素原子の結合からなる鎖状構造である。
樹脂(A)としては、必要に応じて、ケイ素原子にメチル基などのアルキル基が結合したものなどを用いることができる。
【0025】
ここで、樹脂(A)の代わりに、ポリシロキサン構造を有さない樹脂を使用した場合、このポリシロキサン構造を有さない樹脂を含む樹脂組成物を用いて形成される硬化物の屈折率は概ね1.46以上となり、この硬化物の屈折率を1.45以下に調整することができない場合がある。
【0026】
また、ポリシロキサン構造の比率は、樹脂(A)全体に対して35〜95質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは40〜90質量%である。
樹脂(A)全体に対するポリシロキサン構造の比率がこの範囲内であれば、低屈折率の硬化物を形成することが可能な被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物が得られる。
【0027】
また、樹脂(A)は、分子中に2個以上の重合性不飽和二重結合を有するものである。
樹脂(A)に存在する、これらの重合性不飽和二重結合は、後述するフッ素原子含有重合性不飽和単量体(B)が有する重合性不飽和二重結合、または、樹脂(A)が有する他の重合性不飽和二重結合とラジカル重合して、硬化物の形成に寄与する。
また、本発明の被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物は、樹脂(A)を含むので、その硬化反応を、空気中における紫外線照射によって十分に進行させることができる。したがって、従来のように、窒素雰囲気下などの特定条件下にて紫外線照射を行う必要がない。
【0028】
重合性不飽和二重結合の数は、樹脂(A)の主鎖に対して2個以上であり、好ましくは3個以上であり、より好ましくは3〜10個である。
樹脂(A)の主鎖に対する重合性不飽和二重結合の数がこの範囲内であれば、被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物のラジカル重合反応の反応性を向上することができる。
【0029】
また、樹脂(A)の数平均分子量は、1000〜5000であることが好ましく、より好ましくは1000〜3000である。
樹脂(A)の数平均分子量がこの範囲内であれば、被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物から得られる硬化物の透明性を向上することができる。
【0030】
樹脂(A)としては、具体的には、所定の重合性不飽和二重結合を有する、ポリシロキサン構造を有するウレタン(メタ)アクリレート(a1)、および、ポリシロキサン構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート(a2)からなる群より選ばれる1種または2種以上が用いられる。
【0031】
ウレタン(メタ)アクリレート(a1)としては、分子両末端に活性水素原子含有基を有するポリシロキサンおよびポリイソシアネートを反応させて生成されたイソシアネート基を2個以上含有するポリウレタンと、活性水素原子含有基を有する(メタ)アクリレートとを反応させて生成され、分子中に2個以上の重合性不飽和二重結合を有するものが用いられる。
ポリシロキサンとしては、分子両末端に水酸基、カルボキシル基、アミノ基などの活性水素原子含有基を有する鎖状のものが挙げられる。
また、(メタ)アクリレートとしては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基などの活性水素原子含有基を有するものが挙げられる。
ここで、ポリシロキサンが有する活性水素原子含有基と、ポリイソシアネートが有するイソシアネート基との反応割合は、[イソシアネート基/活性水素原子含有基]=1.1〜1.5の範囲であることが好ましい。
【0032】
ウレタン(メタ)アクリレート(a1)の製造に使用可能な、分子中に活性水素原子含有基を有するポリシロキサンとしては、例えば、ポリシロキサン鎖を構成するケイ素原子に活性水素原子含有基が直接結合したものや、ケイ素原子と活性水素原子含有基とがアルキレン基などの有機基を介して結合したものが挙げられる。
【0033】
ここで、ポリシロキサンの代わりに、ポリアルキレンオキサイドを用いて調製されたウレタン(メタ)アクリレートを用いた樹脂組成物では、樹脂組成物を用いて形成される被膜(硬化物)の屈折率を、概ね1.45以下に低下させることは困難である。一方、上記のポリシロキサンを用いて調製されたウレタン(メタ)アクリレート(a1)を用いれば、低屈折率の硬化物を形成することができる被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物が得られる。
【0034】
ポリシロキサンとしては、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリメチルエチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリエチルフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサンなどが挙げられる。
これらのポリシロキサンの中でも、本発明の被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物からなる硬化物の屈折率をより一層低下させることができるという観点から、2個以上のアルキル基が結合したケイ素原子から構成されるポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリエチルメチルシロキサンが好ましく、ポリジメチルポリシロキサンが特に好ましい。
【0035】
ポリシロキサンの分子量は、700〜4500であることが好ましく、より好ましくは900〜2700である。
ポリシロキサンの分子量がこの範囲内であれば、透明性に優れ、かつ、低屈折率の硬化物を形成することができる被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物が得られる。
【0036】
本発明の被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物に適用可能な活性水素原子含有基を有するポリシロキサンの市販品としては、特に限定されないが、例えば、信越化学工業株式会社製のX−22−160AS、KF−6001、KF−6002、東レ・ダウコーニング社製のFZ−2191などが挙げられる。
【0037】
ウレタン(メタ)アクリレート(a1)の生成に用いられるポリイソシアネートについて説明する。
【0038】
ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートの異性体またはこれら異性体の混合物、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」と略す。)、キシリレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネートなどのジイソシアネートや、前記のジイソシアネートとトリメチロールプロパンなどの3価以上の脂肪族多価アルコールとのアダクト体、ジイソシアネートの3量体であるイソシアヌレート構造体、ジイソシアネートと水との反応により生成したビュレット体、もしくは、ポリメリックMDIなどが用いられる。
【0039】
ポリイソシアネートとしては、本発明の被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物を用いて得られる硬化物の変色を防止し、かつ、その屈折率を一層低下させる観点から、2個以上のイソシアネート基を有する脂肪族系のポリイソシアネートを用いることが好ましい。また、ウレタン(メタ)アクリレート(a1)とフッ素原子含有重合性不飽和単量体(B)との相溶性を向上する観点から、ポリイソシアネートとしては、シクロヘキサン環を有するものを用いることがより好ましい。
【0040】
ウレタン(メタ)アクリレート(a1)の生成に用いられる活性水素原子含有基を有する(メタ)アクリレートについて説明する。
【0041】
活性水素原子含有基を有する(メタ)アクリレートは、樹脂(A)中に重合性不飽和二重結合を導入する際に用いられる。
ここで、活性水素原子含有基を有する(メタ)アクリレートの代わりに、重合性不飽和基を持たない活性水素含有化合物、例えば、一般に知られるジエチレングリコールなどを用いても、ラジカル重合反応を速やかに進行させることができない。
【0042】
活性水素原子含有基を有する(メタ)アクリレートとしては、重合性不飽和二重結合を1個以上有するものを用いることが好ましく、ラジカル重合反応を速やかに進行させる観点から、重合性不飽和二重結合を2〜5個有するものを用いることがより好ましい。
【0043】
活性水素原子含有基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、または、これらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、ε−カプロラクタン付加物、ε−カプロラクタム付加物、あるいは、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンメタクリルレートアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどから選択される1種または2種以上が用いられる。
これらの(メタ)アクリレートの中でも、本発明の被膜形成用ラジカル硬化性樹脂組成物のラジカル硬化反応の反応性を向上することができる観点から、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンメタクリルレートアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールへプタ(メタ)アクリレートなどを用いることが好ましい。特に、紫外線照射によってラジカル重合反応を進行させる場合、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンメタクリルレートアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールへプタアクリレートなどを用いることが好ましい。
【0044】
また、ウレタン(メタ)アクリレート(a1)を生成する際、本発明の被膜形成用ラジカル硬化性樹脂組成物が空気により硬化が阻害されるのを防ぐ目的で、活性水素原子含有基を有する(メタ)アクリレートの他に、水酸基含有アリルエーテル化合物を併用してもよい。
【0045】
水酸基含有アリルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、トリプロピレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、1,2−ブチレングリコールモノアリルエーテル、1,3−ブチレングリコールモノアリルエーテル、ヘキシレングリコールモノアリルエーテル、オクチレングリコールモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルなどの多価アルコール類のアリルエーテル化合物などが用いられる。
【0046】
また、ウレタン(メタ)アクリレート(a1)を生成する際、ポリイソシアネートおよび活性水素原子含有基を有する(メタ)アクリレートの代わりに、重合性不飽和二重結合とイソシアネート基とを有する2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1−ビス((メタ)アクリロイロキシメチル)エチルイソシアネート、昭和電工社製のカレンズMOI−EGなどを用いることもできる。
【0047】
ウレタン(メタ)アクリレート(a1)は、次の2段階の反応工程により生成することができる。
【0048】
第1段目の反応工程は、ポリシロキサンの水酸基1当量と、ポリイソシアネートのイソシアネート基2当量以上とを反応させることによって、ポリシロキサン構造を有するポリウレタンを生成する工程である。
【0049】
第1段目の反応工程は、窒素雰囲気下、室温〜100℃程度の範囲にて行うことが好ましい。
また、この反応工程は、無溶剤下で行うこともできるが、必要に応じて、有機溶剤やフッ素原子含有重合性不飽和単量体(B)を溶媒として用いることもできる。
【0050】
また、第1段目の反応工程では、必要に応じて触媒を用いてもよい。
触媒としては、例えば、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラエチルチタネートなどの有機チタン化合物、オクチル酸スズ、ジブチルスズオキシド、シブチルスズジラウレートなどの有機スズ化合物、さらには、塩化第一スズ、臭化第一スズ、ヨウ化第一スズなどの酸やアルカリなど公知の触媒を用いることができる。
触媒の添加量は、ウレタン(メタ)アクリレート(a1)の原料の全仕込み量に対して、10〜10000ppmであることが好ましい。
【0051】
第2段目の反応工程は、第1段目の反応工程にて生成したポリウレタンの有するイソシアネート基と、活性水素原子含有基を有する(メタ)アクリレートの有する水酸基などの活性水素原子含有基とを反応させる工程である。
【0052】
活性水素原子含有基を有する(メタ)アクリレートは、ポリウレタンの有するイソシアネート基1当量に対して、この(メタ)アクリレートの有する水酸基などの活性水素原子含有基が1〜1.5当量の範囲となる割合で用いることが好ましい。
【0053】
第2段目の反応工程は、空気雰囲気下、室温〜90℃程度の範囲にて行うことが好ましい。
また、この反応工程は、無溶剤下で行うこともできるが、必要に応じて、有機溶剤やフッ素原子含有重合性不飽和単量体(B)を溶媒として用いることもできる。
【0054】
また、第2段目の反応工程では、必要に応じて第1段目の反応工程で使用可能な触媒と同様の触媒を用いてもよい。
また、第2段目の反応工程中、ウレタン(メタ)アクリレート(a1)の有する重合性不飽和二重結合のラジカル重合反応によるゲル化を防ぐ目的で、必要に応じて、ラジカル重合禁止剤を用いることができる。
【0055】
ラジカル重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノンモノメチルエーテル、d−t−ブチルハイドロキノン、p−t−ブチルカテコール、フェノチアジンなどが用いられる。
ラジカル重合禁止剤の添加量は、ウレタン(メタ)アクリレート(a1)の原料の全仕込み量に対して、10〜10000ppmであることが好ましい。
【0056】
樹脂(A)として用いられるエポキシ(メタ)アクリレート(a2)について説明する。
エポキシ(メタ)アクリレート(a2)としては、例えば、エポキシ基含有ポリシロキサンと、(メタ)アクリル酸などの重合性不飽和二重結合含有モノカルボン酸とを反応させて得られるものや、カルボキシル基含有ポリシロキサンと、エポキシ基および重合性不飽和二重結合含有化合物とを反応させて得られるものなどが用いられる。
【0057】
エポキシ基含有ポリシロキサンとしては、例えば、ジメチルポリシロキサンのケイ素原子とエポキシ基とが、有機基を介して結合した化合物が用いられ、このような化合物の中でも、エポキシ当量が400〜2500のものを用いることが好ましい。
エポキシ基含有ポリシロキサンとしては、具体的には、信越化学工業株式会社製のKF−105、X−22−163A、X−22−163Bなどが挙げられる。
【0058】
エポキシ基含有ポリシロキサンと反応し得る重合性不飽和二重結合含有モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、桂皮酸、クロトン酸、ソルビン酸などのモノカルボン酸や、モノメチルマレート、モノメチルフマレート、モノプロピルマレート、モノブチルマレート、または、モノ(2−エチルヘキシル)マレートなどの不飽和ジカルボン酸モノアルキルエステルが用いられる。
【0059】
また、カルボキシル基含有ポリシロキサンとしては、例えば、ジメチルポリシロキサンのケイ素原子とカルボキシル基とが、有機基を介して結合した化合物が用いられ、このような化合物の中でも、カルボキシル基当量が400〜2500のものを用いることが好ましい。
【0060】
カルボキシル基含有ポリシロキサンとしては、具体的には、信越化学工業株式会社製のX−22−162Cなどが挙げられる。
【0061】
カルボキシル基含有ポリシロキサンと反応し得るエポキシ基および重合性不飽和二重結合含有化合物としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートなどが用いられる。
【0062】
フッ素原子含有重合性不飽和単量体(B)について説明する。
フッ素原子含有重合性不飽和単量体(B)としては、下記の一般式(I)で示される特定の構造を有するものが用いられる。
例えば、フッ素原子含有重合性不飽和単量体(B)の代わりに、下記一般式(I)に含まれない2−パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレートなどのフッ素原子含有重合性不飽和単量体を用いても、ラジカル重合反応を速やかに進行させることができない場合がある。
【0063】
【化3】

【0064】
但し、上記の一般式(I)において、RはHまたはCH、RはHまたはF、n=1〜3の整数、m=1〜4の整数を表す。
【0065】
フッ素原子含有重合性不飽和単量体(B)としては、具体的には、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレートなどが用いられる。これらのフッ素原子含有重合性不飽和単量体(B)中でも、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレートは、樹脂(A)との相溶性に優れるとともに、ラジカル重合反応を速やかに進行させることができるため特に好ましい。
【0066】
次に、本発明の被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物の製造方法について説明する。
本発明の被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物は、例えば、樹脂(A)とフッ素原子含有重合性不飽和単量体(B)とを、60℃に調整した容器中で一括して混合、攪拌することによって製造される。
なお、フッ素原子含有重合性不飽和単量体(B)は、樹脂(A)を生成する際の溶媒として用いてもよい。
【0067】
また、後述する各種添加剤を用いる場合、樹脂(A)やフッ素原子含有重合性不飽和単量体(B)とともに、添加剤を一括して混合、攪拌することが好ましい。
【0068】
本発明の被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物は、もっぱら被膜形成用途に用いられる。具体的には、各種基材の表面に、本発明の被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物を塗布し、硬化させることにより、この基材の表面に被膜を形成する。
また、各種基材の表面に、本発明の被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物を塗布し、次いで、その塗布面に別の基材を載置し、硬化させることにより、[基材層/樹脂硬化物層/基材層]からなる積層体を形成することができる。
また、各種基材の表面に、本発明の被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物を塗布し、硬化させた後、その硬化物を基材の表面から剥離して得られた被膜を、フィルムやシートなどとして用いることができる。
【0069】
本発明の被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物を用いて形成される被膜の硬度を高め、例えば、プラズマディスプレイや液晶ディスプレイの画像表示装置用に使用可能な被膜を形成する場合、樹脂(A)およびフッ素原子含有重合性不飽和単量体(B)に加えて、さらに、3個以上の重合性不飽和二重結合を有する架橋剤を添加することが好ましい。
【0070】
架橋剤としては、3個以上の(メタ)アクリレート基を有する(メタ)アクリレートが用いられ、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジヘキサエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジヘキサエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジヘキサエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0071】
架橋剤の配合量は、樹脂(A)およびフッ素原子含有重合性不飽和単量体(B)の合計100質量部に対して、10〜20質量部であることが好ましい。
架橋剤の配合量がこの範囲内であれば、本発明の被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物を用いて得られる硬化物の屈折率を低く維持することができる。
【0072】
また、本発明の被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物を用いて形成される被膜には、低屈折率であることに加え、耐薬品性や耐熱性、耐溶剤性などが求められることがある。これらの特性は、被膜の屈折率を維持し、かつ被膜の硬度を高めることによって両立することができる。
【0073】
このような被膜を形成可能な被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物としては、例えば、樹脂(A)およびフッ素原子含有重合性不飽和単量体(B)に加え、さらに、3個以上の(メタ)アクリレート基を有する架橋剤を含むものを用いることが好ましい。
【0074】
一方、被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物を用いて形成される被膜には、低屈折率であることに加え、良好な柔軟性が求められることがある。
このような被膜を形成可能な被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物としては、例えば、樹脂(A)およびフッ素原子含有重合性不飽和単量体(B)に加え、さらに、−30℃以下のガラス転移温度を有するホモポリマーを形成できる1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する単量体、および、1個の重合性不飽和二重結合と、−30℃以下のガラス転移温度とを有する重合体からなる群より選ばれる1種または2種以上を含むものを用いることが好ましい。
【0075】
−30℃以下のガラス転移温度を有するホモポリマーを形成できる1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する単量体としては、例えば、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、並びに、それらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、および、ε−カプロラクタム付加物、アクリルニトリルなどが用いられる。
【0076】
また、−30℃以下のガラス転移温度を有するホモポリマーを形成できる1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する単量体としては、(メタ)アクリロイル基、スチリル基、アリール基、ビニルエーテル基などを分子末端に有する化合物なども挙げられる。
1個の(メタ)アクリロイル基と、−30℃以下のガラス転移温度とを有する重合体は、例えば、メルカプト酢酸などの連鎖移動剤存在下、−30℃以下のガラス転移温度を有するカルボキシル基含有重合体とグリシジル(メタ)アクリレートなどとを反応させることにより生成することができる。
【0077】
また、1個のスチリル基と、−30℃以下のガラス転移温度とを有する重合体は、例えば、カルボキシル基含有重合体の有するカルボキシル基を中和したものと、クロロメチルスチレンとを反応させることにより生成することができる。
また、1個のアリール基と、−30℃以下のガラス転移温度とを有する重合体は、例えば、カルボキシル基含有重合体とアリールグリシジルエーテルなどとを反応させることにより生成することができる。
また、1個のビニルエーテル基と、−30℃以下のガラス転移温度とを有する重合体は、例えば、メルカプトエタノールなどの連鎖移動剤存在下、水酸基含有重合体とトリレンジイソシアネートなどのジイソシアネートとブタンジオールモノビニルエーテルなどのグリコールモノビニルエーテルとを反応させることにより生成することができる。
【0078】
1個の重合性不飽和二重結合と、−30℃以下のガラス転移温度とを有する重合体の数平均分子量は、1000〜40000であることが好ましく、より好ましくは2000〜25000である。
なお、本発明における数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0079】
また、1個の重合性不飽和二重結合と、−30℃以下のガラス転移温度とを有する重合体としては、1個の(メタ)アクリロイル基と、−30℃以下のガラス転移温度とを有する重合体を用いることが好ましく、具体的には、東亞合成社製のマクロモノマーAB−6(メタクリロイル基含有ポリブチルアクリレート)を用いることが好ましい。
【0080】
−30℃以下のガラス転移温度を有するホモポリマーを形成できる1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する単量体、および、1個の重合性不飽和二重結合と、−30℃以下のガラス転移温度とを有する重合体の配合量は、樹脂(A)とフッ素原子含有重合性不飽和単量体(B)との合計100質量部に対して、10〜20質量部であることが好ましい。
−30℃以下のガラス転移温度を有するホモポリマーを形成できる1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する単量体、および、1個の重合性不飽和二重結合と、−30℃以下のガラス転移温度とを有する重合体の配合量がこの範囲内であれば、本発明の被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物を用いて得られる硬化物の低屈折率と柔軟性の向上とを両立できる。
【0081】
本発明の被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物は、活性エネルギー線による硬化、過酸化物の使用による加熱硬化、過酸化物と還元剤の使用による常温硬化、のいずれの硬化方法によっても硬化させることができる。なお、本発明の被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物は、窒素雰囲気下などの特定の環境下における紫外線照射でのみ硬化するものではなく、空気雰囲気下における紫外線照射によって十分に硬化を進行できるという点で、従来技術と比較して優位性がある。
【0082】
本発明の被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物を活性エネルギー線によって硬化させる際には、硬化剤として光重合開始剤を用いることが好ましい。
【0083】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチルオルソベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノンや、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントンなどのチオキサントン類;ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノンなどのアセトフェノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾインエーテル類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドなどのアシルホスフィンオキサイド類、メチルベンゾイルホルメート、1,7−ビスアクリジニルヘプタン、9−フェニルアクリジンなどが用いられる。
【0084】
本発明の被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物を活性エネルギー線によって硬化させる場合、必要に応じて光重合開始剤とともに、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸アミル、4−ジメチルアミノアセトフェノンなどの公知の光増感剤を用いてもよい。
【0085】
本発明の被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物を加熱硬化させる際には、硬化剤として、例えば、ジアシルパーオキサイド系、パーオキシエステル系、ハイドロパーオキサイド系、ジアルキルパーオキサイド系、ケトンパーオキサイド系、パーオキシケタール系、アルキルパーエステル系、パーカーボネート系などの過酸化物が用いられる。
【0086】
また、本発明の被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物を常温硬化させる際には、過酸化物と、硬化促進剤であるナフテン酸コバルト、オクテン酸コバルトなどの有機金属塩やジメチルアニリン、ジエチルアニリン、パラトルイジンなどの芳香族アミン化合物とを組み合わせて用いることができる。
【0087】
硬化剤の配合量は、本発明の被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物の100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜6質量部である。
【0088】
また、本発明の被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物は、必要に応じて、重合禁止剤を添加してもよい。
重合禁止剤としては、例えば、トリハイドロキノン、ハイドロキノン、1,4−ナフトキノン、パラベンゾキノン、トルハイドロノン、p−tert−ブチルカテコール、2,6−tert−ブチル−4−メチルフェノールなどが用いられる。
重合禁止剤の配合量は、本発明の被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物中、10〜1000ppmであることが好ましい。
【0089】
また、本発明の被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で、一般に知られている重合性不飽和単量体、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂類、アルキッド樹脂類、尿素樹脂類、メラミン樹脂類、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル系共重合体、ポリジエン系エラストマー、飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエーテル類、セルローズ類およびその誘導体、油脂類、その他の慣用の天然および合成高分子化合物、アルコキシランの縮合物の無機充填材や帯電防止剤などのイオン性化合物を添加することもできる。
【実施例】
【0090】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0091】
「合成例1」ポリシロキサン由来の構造を有するウレタンアクリレート(A−1)の調製
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、および、還流冷却器を備えた容量2リットルの四つ口フラスコに、水酸基を有するポリシロキサン(商品名:FZ−2191、水酸基価:45.9、東レ・ダウコーニング社製)を24質量部(0.02mol)仕込み、イソホロンジイソシアネートを144.3質量部(0.65mol)加え、発熱を抑制しながら、80℃にて2時間反応させた。
【0092】
イソシアネート基の当量が、ポリシロキサンの有する水酸基が全てイソシアネート基と反応した場合の理論値とほぼ同じ131.5となったのを確認した後、50℃に冷却し、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(商品名:SR−399E、サートマー社製)を1600質量部(3.1mol)加え、反応促進触媒としてスズ触媒を0.02質量部添加し、空気雰囲気下、90℃にて7時間反応させた。
そして、未反応のイソシアネート基が0.3質量%以下となった後、ハイドロキノン0.1質量部を加えることによって、ポリシロキサン由来の構造を有する数平均分子量1968のウレタンアクリレート(A−1)を得た。
【0093】
「合成例2」ポリシロキサン由来の構造を有するウレタンアクリレート(A−2)の調製
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、および、還流冷却器を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、水酸基を有するポリシロキサン(商品名:FZ−2191、水酸基価:45.9、東レ・ダウコーニング社製)を37質量部(0.03mol)仕込み、ノルボルネンジイソシアネートを206質量部(1mol)加え、発熱を抑制しながら、80℃にて2時間反応させた。
【0094】
イソシアネート基の当量が、ポリシロキサンの有する水酸基が全てイソシアネート基と反応した場合の理論値とほぼ同じ123となったのを確認した後、50℃に冷却し、ペンタエリスリトールトリアクリレートを375質量部(1.26mol)、2−ヒドロキシエチルアクリレートを122質量部(1.05mol)加え、反応促進触媒としてスズ触媒を0.02質量部添加し、空気雰囲気下、90℃にて7時間反応させた。
そして、未反応のイソシアネート基が0.3質量%以下となった後、ハイドロキノン0.1質量部を加えることによって、ポリシロキサン由来の構造を有する数平均分子量1842のウレタンアクリレート(A−2)を得た。
【0095】
「合成例3」ポリシロキサン由来の構造を有するウレタンアクリレート(A−3)の調製
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、および、還流冷却器を備えた容量2リットルの四つ口フラスコに 水酸基を有するジメチルポリシロキサン(商品名:X22−160A、数平均分子量:935、信越化学工業株式会社製)を468質量部(0.5mol)仕込み、イソホロンジイソシアネート(IPDI)を222質量部(1mol)加え、発熱を抑制しながら、80℃にて5時間反応させた。
【0096】
イソシアネート基の当量が、ポリシロキサンの有する水酸基が全てイソシアネート基と反応した場合の理論値とほぼ同じ690となり安定したので、40℃に冷却し、ペンタエリスリトールトリアクリレートを188質量部(0.63mol)、2−ヒドロキシエチルアクリレートを61質量部(0.53mol)加え、反応促進触媒としてスズ触媒を0.02質量部添加し、空気雰囲気下、90℃にて7時間反応させた。
そして、未反応のイソシアネート基が0.3質量%以下となった後、ハイドロキノン0.05質量部を加えることによって、ポリシロキサン由来の構造を有する数平均分子量1793のウレタンアクリレート(A−3)を得た。
【0097】
「合成例4」ポリシロキサン由来の構造を有するエポキシアクリレート(A−4)の調製
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、および、還流冷却器を備えた容量2リットルの四つ口フラスコに エポキシ基を有するジメチルポリシロキサン(商品名:KF−105、数平均分子量:980、信越化学工業株式会社製)を980質量部(1mol)仕込み、アクリル酸を144質量部(2mol)加え、110℃にて8時間反応させた。
酸価が4となり安定したので、ハイドロキノン0.05質量部を加えることによって、ポリシロキサン由来の構造を有する数平均分子量1124のエポキシアクリレート(A−4)を得た。
【0098】
「合成例5」ポリシロキサン由来の構造を有するウレタンアクリレート(A−5)の調製
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、および、還流冷却器を備えた容量2リットルの四つ口フラスコに 水酸基を有するジメチルポリシロキサン(商品名:KF−6003、数平均分子量:5100、信越化学工業株式会社製)を1275質量部(0.25mol)仕込み、イソホロンジイソシアネート(IPDI)を111質量部(0.5mol)加え、発熱を抑制しながら、80℃にて5時間反応させた。
【0099】
イソシアネート基の当量が、ポリシロキサンの有する水酸基が全てイソシアネート基と反応した場合の理論値とほぼ同じ2772となり安定したので、40℃に冷却し、2−ヒドロキシエチルアクリレートを61質量部(0.52mol)加え、反応促進触媒としてスズ触媒を0.02質量部添加し、空気雰囲気下、90℃にて7時間反応させた。
そして、未反応のイソシアネート基が0.3質量%以下となった後、ハイドロキノン0.05質量部を加えることによって、ポリシロキサン由来の構造を有する数平均分子量5776のウレタンアクリレート(A−5)を得た。
【0100】
「合成例6」ポリシロキサン由来の構造を有さないウレタンアクリレート(A−6)の調製
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、および、還流冷却器を備えた容量2リットルの四つ口フラスコに、ヘキサメチレンイソシアネート(商品名:デュラネート24A−100、旭化成社製)を536質量部(1mol)、2−ヒドロキシエチルアクリレートを365質量部(3.15mol)加え、反応促進触媒としてスズ触媒を0.02質量部添加し、空気雰囲気下、90℃にて7時間反応させた。
そして、未反応のイソシアネート基が0.3質量%以下となった後、ハイドロキノン0.1質量部を加えることによって、ポリシロキサン由来の構造を有さない数平均分子量1956のウレタンアクリレート(A−6)を得た。
【0101】
「合成例7」ポリシロキサン由来の構造を有するウレタンアクリレート(A−7)の調製
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、および、還流冷却器を備えた容量2リットルの四つ口フラスコに 水酸基を有するジメチルポリシロキサン(商品名:X22−160A、数平均分子量:935、信越化学工業株式会社製)を242質量部(0.25mol)仕込み、イソホロンジイソシアネート(IPDI)を111質量部(0.5mol)加え、発熱を抑制しながら、80℃にて5時間反応させた。
【0102】
イソシアネート基の当量が、ジメチルポリシロキサンの有する水酸基が全てイソシアネート基と反応した場合の理論値とほぼ同じ722となり安定したので、40℃に冷却し、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(商品名:SR−399E、サートマー社製)を625質量部(1.2mol)加え、反応促進触媒としてスズ触媒を0.02質量部添加し、空気雰囲気下、90℃にて7時間反応させた。
そして、未反応のイソシアネート基が0.3質量%以下となった後、ハイドロキノン0.05質量部を加えることによって、ポリシロキサン由来の構造を有する数平均分子量2427のウレタンアクリレート(A−7)を得た。
【0103】
「実施例1」
60℃にて、ウレタンアクリレート(A−1)を9質量部と、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレートを91質量部と、ジヘキサエリスリトールヘキサアクリレートを14質量部とを攪拌、混合し、均一溶液とすることにより、実施例1の被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物を調製した。
【0104】
「実施例2〜7、比較例1〜2」
合成例1から6で得られたウレタンアクリレート(A−1〜A−6)、フッ素原子含有重合性不飽和単量体、架橋剤などを、表1または表2に記載の組成とした以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜7および比較例1〜2の被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物を調製した。
【0105】
[屈折率の測定方法]
実施例1〜7および比較例1〜2で調製したそれぞれの被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物に、イルガキュアー184(チバ・ジャパン社製)を3質量%溶解させたものを、離型フィルム(商品名:PHT、厚み:35μm、フタムラ化学社製)の表面に、厚み約0.1mmとなるように塗布し、空気雰囲気下にて、その塗布面にUVランプ120Wメタルハライド1灯(UV照射量1000mJ/cm1pass)を用いて紫外線を照射し、被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物を硬化させることによって、被膜を形成した。
得られた被膜の屈折率は、25℃の環境下にて、測定機器(ユニバーサルアッベ屈折計、ERMA Inc.製)を用いて測定した。
この屈折率は、概ね1.45以下であれば、実用上十分な低屈折率であるといえる。
【0106】
[ヘーズ、全光線透過率および硬度の測定方法]
実施例1〜7および比較例1〜2で調製したそれぞれの被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物に、イルガキュアー184(チバ・ジャパン社製)を3質量%溶解させたものを、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなるフィルム(商品名:A4100、厚み:100μm、東洋紡社製)の易接着処理面に、厚み約5μmに塗布し、その塗布面にUVランプ120Wメタルハライド1灯(UV照射量1000mJ/cm1pass)を用いて紫外線を照射し、被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物を硬化させることによって、被膜を形成した。
得られた被膜の硬度は、被膜表面の鉛筆硬度をJIS K5600「引っかき硬度(鉛筆法)」に準拠して測定した。
また、得られた被膜のヘーズおよび全光線透過率は、ヘーズメーター(商品名:NDH5000、日本電色工業社製)を用いて測定した。
【0107】
【表1】

【0108】
【表2】

【0109】
「実施例8」
60℃にて、ウレタンアクリレート(A−7)を29質量部と、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレートを71質量部と、メタクリロイル基含有ポリブチルアクリレート(商品名:マクロモノマーAB−6、東亞合成社製)を14質量部とを攪拌、混合し、均一溶液とすることにより、実施例8の被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物を調製した。
【0110】
「実施例9〜11、比較例3〜4」
配合組成を表3に記載したものとした以外は、実施例8と同様にして、実施例9〜11および比較例3〜4の被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物を調製した。
【0111】
[屈折率の測定方法]
実施例8〜11および比較例3〜4で調製したそれぞれの被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物の硬化物(被膜)の屈折率は、実施例1〜7および比較例1〜2で調製したそれぞれの被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物の硬化物(被膜)の場合と同様にして測定した。
【0112】
[ヘーズ、全光線透過率の測定方法]
実施例8〜11および比較例3〜4で調製したそれぞれの被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物の硬化物(被膜)のヘーズと全光線透過率は、実施例1〜7および比較例1〜2で調製したそれぞれの被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物の硬化物(被膜)の場合と同様にして測定した。
【0113】
[柔軟性の評価方法]
実施例8〜11および比較例3〜4で調製したそれぞれの被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物に、イルガキュアー184(チバ・ジャパン社製)を3質量%溶解させたものを、離型フィルム(商品名:PHT、厚み:35μm、フタムラ化学社製)の表面に、厚み約0.1mmとなるように塗布し、空気雰囲気下にて、その塗布面にUVランプ120Wメタルハライド1灯(UV照射量1000mJ/cm1pass)を用いて紫外線を照射し、被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物を硬化させることによって、被膜を形成した。
次いで、得られた被膜を離型フィルムから剥離した。
得られた被膜を、幅10mm、長さ70mmの大きさの短冊形に切り出して、試験片とした。
得られた試験片の引っ張り弾性率、破断伸び率、および引張り強さは、ビデオ式伸び計付のオートグラフ(商品名:AG−I、島津製作所製)を用いて、試験速度4.0mm/min、標線間隔20mmの条件で測定した。計算方法は、JIS K 7113「プラスチックの引張試験方法」に準拠した。
【0114】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリシロキサン構造と分子中に2個以上の重合性不飽和二重結合とを有する樹脂(A)、および、下記の一般式(I)で示されるフッ素原子含有重合性不飽和単量体(B)を含有してなり、
前記樹脂(A)と前記フッ素原子含有重合性不飽和単量体(B)との配合質量比が2/98〜50/50の範囲内にあることを特徴とする被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物。
【化1】

(但し、上記の一般式(I)において、RはHまたはCH、RはHまたはF、n=1〜3の整数、m=1〜4の整数を表す。)
【請求項2】
前記樹脂(A)の数平均分子量は、1000〜5000である請求項1に記載の被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂(A)は、ウレタン(メタ)アクリレート(a1)およびエポキシ(メタ)アクリレート(a2)からなる群より選ばれる1種または2種以上である請求項1に記載の被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(a1)は、分子両末端に活性水素原子含有基を有するポリシロキサンおよびポリイソシアネートを反応させて生成されたイソシアネート基含有ポリウレタンと、活性水素原子含有基を有する(メタ)アクリレートとを反応させて生成されたものである請求項3に記載の被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、3個以上の重合性不飽和二重結合を有する架橋剤を含有してなる請求項1に記載の被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、−30℃以下のガラス転移温度を有するホモポリマーを形成できる1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する単量体、および、1個の重合性不飽和二重結合と、−30℃以下のガラス転移温度とを有する重合体からなる群より選ばれる1種または2種以上を含有する請求項1に記載の被膜形成用ラジカル硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
紫外線硬化性である請求項1に記載の被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の被膜形成用ラジカル重合性樹脂組成物を硬化させてなる被膜。


【公開番号】特開2010−111800(P2010−111800A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−286461(P2008−286461)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(505273017)ディーエイチ・マテリアル株式会社 (17)
【Fターム(参考)】