被覆銀超微粒子とその製造方法
【課題】耐熱性の低いフレキシブルプリント基材でも使用できる低温焼結可能な導電性形成材料としての被覆銀超微粒子とその製造方法を提供する。
【解決手段】粒子径が30nm以下の、保護分子アミンにより覆われた被覆銀超微粒子であって、熱重量測定において160℃の温度における重量減少率が30%以上であること、そして、100℃以下の温度において1時間以下で焼結し銀色の焼結膜となることを特徴とする。この被覆銀超微粒子は、加熱により分解して金属銀を生成する銀化合物と、アルキルアミン、アルキルジアミンとを混合して錯化合物とし、これを加熱することにより当該銀化合物を熱分解することにより調製する。
【解決手段】粒子径が30nm以下の、保護分子アミンにより覆われた被覆銀超微粒子であって、熱重量測定において160℃の温度における重量減少率が30%以上であること、そして、100℃以下の温度において1時間以下で焼結し銀色の焼結膜となることを特徴とする。この被覆銀超微粒子は、加熱により分解して金属銀を生成する銀化合物と、アルキルアミン、アルキルジアミンとを混合して錯化合物とし、これを加熱することにより当該銀化合物を熱分解することにより調製する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶剤への分散性に優れ、フレキシブルプリント基板上等で低温焼結により良好な導電性を発現するナノメートルサイズの被覆銀超微粒子とその製造方法、並びにこれを用いた焼結銀被着物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の目覚ましい進歩の背景には半導体デバイスなどの電子部品の進展とともに、これら電子部品を実装するプリント配線板の大きな発展がある。そして、電子機器の多くが小型・薄型・軽量化され、しかも生産性の向上が求められていることから、プリント配線板についてもこれに対応する様々な工夫、改善がさらに必要とされている。特に、そのために電子部品の導電性配線形成用材料の実装の高速度化および高密度化が要求されている。
【0003】
このような状況において、より低い温度において、配線形成材料が実装できる材料があれば、フレキシブルプリント配線基板として既に使用されているポリイミドのみならず、PET(ポリエチレンテレフタレート)やポリプロピレンなどの耐熱性がポリイミドより低い、加工性が容易な各種の有機高分子基板に対しても微細な電子回路形成が可能となるため、このような新しい材料の出現が期待されている。インクジェット印刷技術の進展により、現在ではナノサイズの金属微粒子がそのような材料の一つとして期待され、その検討が進められている(例えば非特許文献1)。しかしながら、これまでのところ150℃が最低の焼結温度であるため、さらなる低温焼結可能な材料が求められている。また、こうした金属超微粒子の合成において用いられる大量の反応溶媒、過剰の保護分子、還元剤から生じる副生成物を含む廃棄物の発生は、省資源・エコロジーの観点からも改善が求められる。
【0004】
これまでの検討においては、例えば特許文献1には、2種以上の遷移金属塩とアミン化合物を不活性雰囲気において熱処理する複合金属超微粒子の製造方法について開示されている。粒子径がナノメートル(nm)のレベルの超微粒子が形成され、それらは、トルエン、ヘキサン、リグロイン、石油エーテル、エチルエーテル等のどちらかといえば非極性溶剤に分散し、200℃〜300℃の熱処理で焼結することが開示されている。だが、それらが導電性を示すかどうかは不明である。また、熱処理温度が200℃以上であるので加工性が良い有機基板としても耐熱性のかなり優れたポリイミド等しか使用することできない。
【0005】
また、特許文献2には、不飽和長鎖脂肪族アミンであるオレイルアミンを必須構成要件としてシュウ酸銀および飽和脂肪族アミンとを反応させた場合にのみ、粒径のそろった被覆銀超微粒子が得られることが開示されている。しかしながら、得られた被覆銀超微粒子の溶剤への分散性や焼結温度とその導電性については必ずしも十分に検討も開示もされていない。実際のところ、さらなる改善が求められてもいる。
【0006】
特許文献1、2に記載される銀超微粒子が、銀の融点よりも遙かに低い200℃程度の温度で焼結して金属皮膜を形成する理由は、そのような銀超微粒子が非常に大きな比表面積を有しているために、その表面張力により表面積を小さくしようとする傾向が非常に大きいためと考えられる。このため、低温焼結を行おうする場合には、銀超微粒子の平均粒径をなるべく小さくすることで、大きな比表面積を与えることが必要となる。しかしながら、単に平均粒径の小さな銀超微粒子を製造しようとすると、その製造過程において銀超微粒子の有する表面張力により粒子が凝集(焼結)し、結果的にそれ以上の低温焼結を生じない粗大な粒子しか得ることができないという問題を生じる。
【0007】
このような問題を解消して微細な銀超微粒子を安定して製造し、また製造した銀超微粒子の保存性を高めるために、特許文献2に記載の銀超微粒子においては、上記のように不飽和長鎖脂肪族アミンであるオレイルアミンを必須構成要件としてシュウ酸銀の分解を利用して銀超微粒子を製造すると共に、製造された銀超微粒子の表面を当該オレイルアミンで保護することにより20nm程度の平均粒径を有する銀超微粒子を製造している。この銀超微粒子においては、銀超微粒子の表面にオレイルアミン分子が存在して銀粒子の表面同士が直接接触することが防止されるため、製造過程や保存中に銀超微粒子が意図しない焼結・凝集をすることを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−298921号公報
【特許文献2】特開2008−214695号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】河染 満 他、粉砕、No.50、27−31(2006/2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記のように、不飽和長鎖脂肪族アミンであるオレイルアミンにより表面が保護された銀超微粒子においては、実際に当該銀超微粒子を用いて焼結させようとした場合にも当該オレイルアミンの存在により銀超微粒子表面の接触が妨げられることとなって、焼結温度を十分に下げられないという問題が生じることとなる。
【0011】
本発明においては、そのような問題点を解決して、その製造過程や保存中においては十分に銀超微粒子が生成して、その凝集(焼結)が防止されると共に、当該銀超微粒子を焼結させようとした場合には低温で焼結が生じるような被覆銀超微粒子、及び、その製造方法を提供することを課題とする。具体的には、耐熱性の低いフレキシブルプリント基材でも使用できるより低温での焼結が可能な新しい導電性形成材料として120℃以下、さらには100℃以下の温度においても焼結可能な被覆銀超微粒子と、その製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記課題を解決するため、以下のことを特徴としている。
【0013】
第1:平均粒径が30nm以下であり保護分子により覆われた被覆銀超微粒子であって、熱重量測定において160℃まで加熱した際の当該保護分子アミンの重量減少率が30%以上であることを特徴とする被覆銀超微粒子。
【0014】
第2:平均粒径が30nm以下であり保護分子により覆われた被覆銀超微粒子であって、100℃以下の温度において1時間以下で焼結して銀色の金属膜を形成可能であることを特徴とする被覆銀超微粒子。
【0015】
第3:前記保護分子は、沸点が100℃〜250℃の範囲内にある中短鎖アルキルアミンと、沸点が100℃〜250℃の範囲内にある中短鎖アルキルジアミンを主成分として含むことを特徴とする被覆銀超微粒子。
【0016】
第4:上記のいずれかの被覆銀超微粒子を分散媒に分散させたことを特徴とする被覆銀超微粒子分散液。
【0017】
第5:加熱により分解して金属銀を生成する銀化合物と、沸点が100℃〜250℃である中短鎖アルキルアミンおよび沸点が100℃〜250℃である中短鎖アルキルジアミンとを混合して、当該銀化合物と当該アルキルアミンおよびアルキルジアミンを含む錯化合物を調製する第一行程と、当該錯化合物を加熱して当該銀化合物を熱分解させる第二行程を含むことを特徴とする被覆銀超微粒子の製造方法。
【0018】
第6:前記加熱により分解して金属銀を生成する銀化合物としてシュウ酸銀を用いることを特徴とする被覆銀超微粒子の製造方法。
【0019】
第7:前記銀化合物に混合されるアルキルアミンおよびアルキルジアミンにおいて、アミンの総量に対するアルキルジアミンの含有率が10〜90モル%であることを特徴とする被覆銀超微粒子の製造方法。
【0020】
第8:前記第一行程において、さらに反応系に含まれる銀原子に対して5モル%以下の脂肪酸を混合することを特徴とする被覆銀超微粒子の製造方法。
【0021】
このような特徴を有する本発明は、発明者における以下の知見に基づいて完成されたものである。
【0022】
すなわち、従来の問題点を鑑みて、鋭意研究した結果、驚くべきことに、発明者においては、銀の原料となる銀化合物を分解して銀超微粒子を製造する際に、沸点が100℃〜250℃の中短鎖アルキルアミンと中短鎖アルキルジアミンを介在させて用いることによって、無溶媒、低温、短時間で錯化合物が合成でき、この錯化合物を用いることで低温焼結可能な被覆銀超微粒子を製造することができた。より詳しくは、銀の原料となる銀化合物として、例えばシュウ酸銀を用いると共に、これに中短鎖アルキルアミンおよび中短鎖アルキルジアミンとを介在させることにより、シュウ酸銀に含まれる銀原子に当該中短鎖アルキルアミンと中短鎖アルキルジアミンが配位した錯化合物を調製し、この状態でシュウ酸銀を構成するシュウ酸イオンの部分を熱分解することにより、低温焼結可能な被覆銀超微粒子を高収率で調製することができた。さらに、得られた被覆銀超微粒子は極性溶剤を含む有機溶剤に良好に分散し、この分散液を用いてプラスチック基板上で作製した被覆銀超微粒子の塗布膜において、120℃以下、さらには100℃以下の極めて低い温度で被覆銀超微粒子同士が低温焼結することにより良好な導電膜を得ることができた。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、120℃以下、さらには100℃以下の室温近辺でも焼結可能な被覆銀超微粒子を提供することができ、PETおよびポリプロピレンのような耐熱性の低いプラスチック基板にも導電膜、導電配線を形成させることが可能となる。
【0024】
また、無溶媒、低温(室温)でも上記錯化合物を合成することができる。さらに、上記錯化合物を100℃近辺の低温で熱分解し、直接、被覆銀超微粒子を得ることができ、さらに他の方法のように、別途、還元剤を加える必要もなく、エネルギー・物質の消費量を大きく削減できる。本発明の方法は工業的生産に適している。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例1で得られた被覆銀超微粒子の粉末X線回折パターンを示す。シグナルピーク位置は金属銀のパターンと一致している。シグナルがブロードであるためナノサイズの結晶であることが分かる、そのシグナルの半値幅から単結晶子サイズを計算できる。
【図2】実施例1で得られた被覆銀超微粒子の熱重量示差熱分析結果を示す。熱重量減少(重量%)から被覆銀超微粒子中に含まれる保護分子アミン(アルキルアミン、アルキルジアミン)の重量%が求められ、同時に保護分子アミンの脱離温度がわかる。また、示差熱の結果から、その保護分子の脱離が発熱反応か吸熱反応かがわかる。示唆熱プロファイルが上向きの場合、発熱、下向きの場合、吸熱であることから、実施例1で得られた被覆銀超微粒子の保護分子の脱離は発熱反応である。
【図3】実施例1で得られた被覆銀超微粒子のn−ブタノールとn−オクタンの混合溶媒分散液を基板(銅メッシュ・コロジオン膜)に垂らし、乾燥後、観察した被覆銀超微粒子の透過型電子顕微鏡像を示す。
【図4】実施例1で得られた被覆銀超微粒子のn−ブタノールとn−オクタンの混合溶媒分散液(実施例2)の動的光散乱粒度測定による粒度分布を示す。
【図5】PET基板上に実施例1で得られた被覆銀超微粒子のスピンコート膜を作製し、数段階の焼結温度で焼結させた銀皮膜(実施例3)の電気抵抗(導電性)を示す。
【図6】実施例7で得られた被覆銀超微粒子の粉末X線回折パターンを示す。
【図7】実施例7で得られた銀超微粒子のn-ブタノールとn-オクタンの混合溶媒分散液を基板(銅メッシュ・コロジオン膜)に垂らし、乾燥後、観察した被覆銀超微粒子の透過型電子顕微鏡像を示す。
【図8】実施例7で得られた被覆銀超微粒子のn-ブタノールとn-オクタンの混合溶媒分散液の動的光散乱粒度測定による粒度分布を示す。
【図9】実施例10の被覆銀超微粒子の分散液に浸したメッシュ状ポリエステル生地を乾燥、加熱(80℃)した後の顕微鏡写真を示す。
【図10】実施例10で得られた被覆銀超微粒子のn−ブタノールとn−オクタンの混合溶媒分散液を基板(銅メッシュ・マイクログリッド)に垂らし、乾燥後、観察した被覆銀超微粒子の走査型電子顕微鏡像を示す。白丸が銀超微粒子である。
【図11】実施例10の被覆銀超微粒子の分散液を用いてPET基板に施したスピンコート膜を20℃で放置し、その後に100℃で焼成させた銀皮膜の電気抵抗を示す(実施例13)。
【図12】特許文献2の実施例1の方法で作製した被覆銀超微粒子の示差熱・熱重量測定の結果を示す。
【図13】特許文献2の実施例3の方法で作製した被覆銀超微粒子の示差熱・熱重量測定の結果を示す。
【図14】実施例10で作製した被覆銀超微粒子の示差熱・熱重量測定の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る被覆銀超微粒子、及びその製造方法について説明する。銀超微粒子を構成する銀の原料としては、含銀化合物の内で、加熱により容易に分解して金属銀を生成する銀化合物が好ましく使用される。このような銀化合物としては、ギ酸、酢酸、シュウ酸、マロン酸、安息香酸、フタル酸などのカルボン酸と銀が化合したカルボン酸銀の他、塩化銀、硝酸銀、炭酸銀等を用いることが可能であるが、分解により容易に金属銀を生成し、且つ、銀以外の不純物を生じにくい観点からシュウ酸銀が好ましく用いられる。シュウ酸銀は、銀含有率が高いと共に、加熱によりシュウ酸イオンが二酸化炭素として分解除去されるために、還元剤を必要とせず熱分解により金属銀がそのまま得られ、不純物が残留しにくい点で有利である。
【0027】
本発明においては、上記の銀化合物に対して所定のアルキルジアミンとアルキルアミンとを加えて、銀化合物と当該アミンの錯化合物を生成させることを特徴とする。この錯化合物には銀、アルキルアミン、アルキルジアミンおよびシュウ酸イオンが含まれる。当該混合により得られる銀化合物と当該アミンの錯化合物においては、銀化合物に含まれる各銀原子に対してアミンに含まれる窒素原子がその非共有電子対を介して配位結合することにより、錯化合物を生成しているものと推察される。なお、本明細書において、アルキルアミンとは一つのアミノ基を有するアルキルアミンを意味し、アルキルジアミンとは二つのアミノ基を有するアルキルアミンを意味するものとする。また、単にアミンと記載する場合は、上記アルキルアミンとアルキルジアミンの双方を含むものとする。
【0028】
本発明に係る被覆銀超微粒子の製造方法では、次に、当該銀化合物とアミンの錯化合物を適宜の条件で加熱することを特徴とする。このような加熱により、銀原子に対するアミンの配位結合を維持したままで、銀化合物を熱分解して金属銀を生成させることが可能である。例えば、銀化合物としてシュウ酸銀を用いる場合には、加熱によってシュウ酸イオンを構成する炭素と酸素が二酸化炭素として除去されることで、配位結合によりアミンが配位した金属銀原子が得られる。
【0029】
このように生成される銀原子は電気的に中性であり、アミンは当該銀原子に配位結合による弱い力で結合していると考えられ、比較的小さな駆動力によりアミンが離脱可能であって、金属銀が単離可能であると考えられる。このように電気的に中性な銀に対してアミンが容易に離脱可能な状態で配位していることが、本発明において得られる被覆銀超微粒子が極めて低い室温程度の温度で焼結することを可能にしていると考えられる。
【0030】
このように生成するアミンが配位した金属銀原子は、その生成後に速やかに凝集し、相互に金属結合を生成して結合し銀超微粒子を形成する。この際に、各銀原子に配位したアミンが銀超微粒子の表面に保護膜を形成するため、一定数の銀原子が集合して銀超微粒子を形成した後は、当該アミンによる保護膜によってそれ以上の銀原子が結合することが困難になると考えられる。このため、錯化合物に含まれる銀化合物の分解と銀超微粒子の生成を、溶媒が存在せず銀原子が極めて高密度に存在する状態で行った場合でも、典型的には粒径が30nm以下で粒径の揃った銀超微粒子が安定して得られるものと考えられる。また、このように溶媒が存在せず、高密度に銀原子が存在する状態で銀超微粒子が生成するために、銀超微粒子として回収されない銀原子の割合を小さくすることが可能であり、使用する銀化合物に含まれる銀を高い歩留まりで銀超微粒子として回収することができる。また、得られる銀超微粒子の平均粒径が30nm以下であり、更には平均粒径が20nm以下であるため、その表面に設けられた保護膜が脱離することで室温付近の温度においても十分にその焼結が可能である。
【0031】
アルキルジアミンとアルキルアミンとを加えて銀化合物とアミンの錯化合物を生成させる際には、銀化合物に含まれる銀原子とアルキルアミンやアルキルジアミンの総量とのモル比を1:1〜4程度とすることが好ましい。銀化合物とアミンの錯化合物は、銀化合物に所定量のアミンを混合して、当該アミンの沸点より十分に低い温度で混合物が粘性を帯びるまで撹拌することにより生成する。また、銀化合物に対するアミンの配位反応は発熱を伴うため、銀化合物の分解反応開始を抑制するために必要に応じて室温以下に冷却して撹拌を行うことも好ましい。
【0032】
銀化合物とアミンの錯化合物の生成において、アミンの量が上記の範囲を超えて少なくなると、アミンが配位していない銀原子の割合が増加し、銀化合物とアミンの錯化合物を熱分解して得られる銀超微粒子が肥大化するようになる。また、銀原子の2倍量以上のアミンが存在することにより、ほぼ30nm以下の銀超微粒子が安定して得られるようになることから、この程度のアミン量により確実に全ての銀原子がアミンにより配位可能になるものと考えられる。アミンが銀原子の4倍量以上となると、反応系における銀原子の密度が低下して最終的な銀の回収歩留まりが低下すると共に環境負荷が増加するため、アミンの使用量は、銀原子の4倍量以下とすることが好ましい。なお、銀原子とアミンの総量のモル比を1:1程度とする場合には、全てのアミンが銀原子に配位して錯化合物を形成して反応系を保持する分散媒が存在しないことになるため、必要に応じてメタノール等の反応溶媒を混合することも好ましい。
【0033】
また、以下に説明するように、銀化合物との錯化合物を形成するためのアルキルジアミンとアルキルアミンは、共に沸点が100℃〜250℃の中短鎖アルキルアミン及び中短鎖アルキルジアミンを用いることが低温で焼結可能な被覆銀超微粒子が得られる点で好ましい。つまり、本発明により得られる銀超微粒子が低温で焼結を生じるためには、保護膜であるアミンが当該焼結温度において被覆銀超微粒子の表面から良好に離脱する必要があるが、蒸気圧の小さな(沸点が高い)アミンを用いた場合には、銀原子に対する配位結合が切れた後においてもアミン分子同士の凝集力によってアミンが銀超微粒子の周囲に残存することにより保護膜が除去されず、低温での銀超微粒子の焼結が困難になる。
【0034】
種々の検討を行った結果、250℃以下の沸点を有するアルキルジアミンとアルキルアミンを銀化合物との錯化合物を形成するためのアミンの主成分として使用することで、概ね150℃以下の温度でも十分な速度で離脱可能な保護膜が形成可能となり、低温で焼結可能な被覆銀超微粒子が得られることが明らかになった。なお、長鎖のアルキルアミンであるオレイルアミン(沸点349℃)等を保護膜に含むことで、得られる被覆銀超微粒子の非極性溶媒への分散性を高めることができるため、必要に応じて銀化合物との錯化合物を形成するためのアミンに混合して用いることが可能である。しかし、当該長鎖のアルキルアミンを用いた場合には、銀化合物との錯化合物の生成速度が低下すると共に、保護膜の離脱速度が低下するため、沸点が250℃以上のアミンの使用量は用いるアミンの総量の20モル%程度を上限とし、保護膜を形成する保護分子アミンの主成分として80モル%以上を250℃以下の沸点を有するアルキルジアミンとアルキルアミンにすることが好ましい。この場合には、残部のアミンとしてより低沸点のものを使用することが、銀超微粒子の焼結温度の低温下の点で好ましい。
【0035】
また、100℃以下の沸点を有するアルキルジアミンとアルキルアミンを銀化合物との錯化合物を形成するためのアミンとして使用した場合には、銀超微粒子の保護膜におけるアミン分子間の凝集力が小さくなり、特に錯化合物に含まれる銀化合物を熱分解する際に保護膜が不安定となり生成する銀微粒子の粗大化を生じる点で、100℃以上の沸点を有するアルキルジアミンとアルキルアミンが銀化合物との錯化合物を形成するためのアミンとして好ましい。
【0036】
また、上記沸点が100〜250℃のアミンを用いる際に、特に沸点が180℃以下の分子量の小さなアミンを用いた場合には、得られた被覆銀超微粒子の分散媒への分散性が低下して使用される分散媒の種類に制限を生じ易くなる傾向が見られる。一方、沸点が180〜250℃のアミンを用いた場合には、得られた被覆超銀微粒子は多様な分散媒に対して良好な分散性を示す一方で、焼結温度が上昇する傾向を示す。このため、銀化合物との錯化合物を形成するためのアミンとして、沸点が100〜180℃のアミンと、沸点が180〜250℃のアミンを混合して用いることで、低温焼結性と分散媒への分散性を両立させることが望ましい。また、この際に沸点が180〜250℃のアミンがアミン総量の2〜30モル%とすることが低温焼結性と分散媒への分散性を良好に両立させる点で好ましい。
【0037】
本発明においては、銀化合物との錯化合物を形成するためのアミンとしてアルキルアミンと共にアルキルジアミンを用いることを特徴としている。一般にアルキルジアミンはアルキルアミンよりも極性が強いため、銀化合物との錯化合物を形成する際の反応速度を速めると共に、各銀原子へのアミンの配位を確実に行える点で好ましい。また、銀化合物とアミンの錯化合物を加熱して銀化合物を熱分解する際に、アルキルジアミンを含む錯化合物では低温、且つ短時間で熱分解が完了すると共に、最終的に被覆銀超微粒子として得られる銀の歩留まりが向上する傾向が見られる。このように、銀化合物との錯化合物を形成するためのアミンとしてアルキルアミンと共にアルキルジアミンを用いることによる効果は、特に銀化合物としてシュウ酸銀等の配位高分子を形成するものを用いる場合に顕著に観察される。この理由は明らかでないが、シュウ酸銀等が相互に形成する配位結合をアルキルジアミンが効果的に切断等して、アミンが確実に銀原子に配位可能となるように作用するためと推察される。
【0038】
このため、特に被覆銀超微粒子の焼結温度を低くする目的で低沸点のアミンを用いる際には、適宜の割合でアルキルジアミンを混在させることで銀化合物の熱分解の際に銀原子からのアミンの脱離を防止することができる点で有効である。更に、アルキルジアミンを用いて形成した被覆銀超微粒子の保護膜は極性が強いため、極性溶媒への分散性を高める作用が期待できる。一方、アルキルジアミンが銀原子に配位結合する際の結合強度は、アルキルアミンの場合に比較して大きいため、過剰な量のアルキルジアミンを用いた場合には得られる被覆銀超微粒子の焼結温度が高くなる傾向が見られる。
【0039】
以上のことから、銀化合物との錯化合物を形成するためのアミンにおけるアルキルジアミンの割合は、その混合目的に応じて適宜決定されるが、被覆銀超微粒子の低温焼結性の確保のためには、好ましくは90モル%以下であり、更に好ましくは70モル%以下である。また、銀化合物との錯化合物を形成する際の反応速度を高めるため、及び錯化合物の熱分解を低温短時間で行う観点からは、10%モル%以上、好ましくは20%モル%以上のアルキルジアミンをアルキルアミンに混合して用いることが好ましい。
【0040】
なお、上記のとおり、本発明で使用するアルキルジアミンはその沸点が100℃〜250℃の範囲にあるものであれば良好に銀化合物との錯化合物を形成できるが、特にアルキルジアミンが有するアミノ基の一方が3級アミンとなっているものが好ましい。これは、アルキルジアミンの有する2つのアミノ基の両方が1級アミン、又は2級アミンである場合、双方のアミノ基がそれぞれ銀化合物の銀原子に配位する結果、非常に複雑なネットワークを形成して銀化合物の熱分解温度が高まる傾向があるためである。
【0041】
銀化合物とアミンの錯化合物を撹拌しながら加熱すると、青色光沢を呈する懸濁液となり、この懸濁液から過剰のアミン等を除去することで、本発明に係る被覆銀超微粒子が得られる。以下に説明するように、当該銀化合物とアミンの錯化合物を加熱することにより、銀原子に対するアミンの配位結合を維持したままで銀化合物が熱分解して金属銀を生成し、次にアミンが配位した銀原子が凝集してアミン保護膜で被覆された被覆銀超微粒子が得られると考えられる。
【0042】
銀化合物とアミンの錯化合物を加熱して被覆銀超微粒子を得る際の条件は、使用する銀化合物やアミンの種類に応じて、熱分解を行う際の温度、圧力、雰囲気などの条件を適宜選択できる。この際に、生成する被覆銀超微粒子が、熱分解を行う雰囲気との反応により汚染されたり、保護膜が分解されたりすることを防止する観点からは、Ar雰囲気などの不活性雰囲気内で銀化合物の熱分解を行うことが好ましい。一方、銀化合物としてシュウ酸銀を用いる場合には、シュウ酸イオンの分解によって発生する二酸化炭素により反応空間が保護されるため、大気中においてシュウ酸銀とアミンの錯化合物を加熱することでシュウ酸銀の熱分解が可能である。
【0043】
銀化合物の熱分解のために銀化合物とアミンの錯化合物を加熱する温度は、アミンの脱離を防止する観点から概ね使用するアミンの沸点以下の温度が好ましいが、本発明においては一般には80〜120℃程度に加熱することでアミンからなる保護膜を有する被覆銀超微粒子を得ることができる。なお、本発明において銀化合物としてシュウ酸銀を用いた場合、上記錯化合物に含まれるシュウ酸銀の分解は100℃程度で生じることが確認されている。このように錯化合物を形成することでシュウ酸銀の熱分解温度が100℃以上も低下する理由は明らかでないが、アミンとの錯化合物を生成する際に、純粋なシュウ酸銀が形成する配位高分子構造が切断されているためと推察される。
【0044】
以上説明したような機構により、シュウ酸銀等の銀化合物と、中短鎖アルキルアミン、および中短鎖アルキルジアミンの反応で生成したシュウ酸イオン・アルキルアミン・アルキルジアミン・銀錯化合物等を加熱により二酸化炭素を発生しながら熱分解し、同時に銀イオンが還元されることで、数nm〜数十nmの粒子径の被覆銀超微粒子を高収率で得ることができる。
【0045】
上記で説明したとおり、一般に、銀に対して過剰量のアルキルアミンを必要とする他の被覆銀超微粒子の合成法に比べて、本発明では、銀原子:アルキルアミンやアルキルジアミンの総量が1:1(モル比)でも被覆銀超微粒子が高収率で合成できるため、アルキルアミンやアルキジアミンの使用量を削減できる。また、シュウ酸イオンの熱分解で生じる二酸化炭素は、反応系外に容易に除去されるため、還元剤に由来する副生成物等がなく、反応系から被覆銀超微粒子の分離も簡単にでき、被覆銀超微粒子の純度も高く、廃棄物の削減や反応原料のリサイクルが容易になり、環境に負荷の少ない生産工程となる。
【0046】
また、従来のオレイルアミンなどの長鎖アルキルアミンと比較して、本発明におけるオクチルアミンなどの中短鎖アルキルアミンやN,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパンなどの中短鎖アルキルジアミンはシュウ酸銀との反応速度が速く、メタノールや水などの反応溶媒を必要とせず無溶媒で反応が短時間で完結し、シュウ酸イオン・アルキルアミン・アルキルジアミン・銀錯化合物が得られる。なお中短鎖アルキルジアミンは反応性が高いので、適切な比率で中短鎖アルキルアミンと反応させることが好ましい。反応させるアミンの中でアルキルジアミンの含有率はモル比で90%以下が好ましい。より好ましくは70%以下が好ましい。さらに好ましくは50%以下が好ましい。無溶媒で実施できるため、被覆銀超微粒子の製造において物質消費量を大きく削減できる。
【0047】
これまで、オレイルアミンを多量に含む脂肪族アミン銀錯化合物は、100℃よりも低温では、その熱分解速度が遅く不十分になるため、被覆銀超微粒子の収量の低下や得られた被覆銀超微粒子の溶剤への分散性が低下する恐れがあった。実際に、長鎖オレイルアミンを大量に含む脂肪族アミン銀錯化合物の最適な熱分解温度は150℃であり、積極的な加熱工程が必要であるのみならず、150℃近辺、あるいは、それ以下の沸点の脂肪族アミンとを組み合わせた被覆銀超微粒子を合成するには加圧容器を使用しなければいけない等の課題がある。非極性溶剤への分散性が良好な被覆銀超微粒子を得るために、オレイルアミン:脂肪族アミン=1:2よりもオレイルアミンの混合モル比を多くする必要がある。一方で、高沸点のオレイルアミン(沸点349℃)を多量に含んだ被覆銀超微粒子は非極性溶剤への分散性は向上するが、逆に、被覆銀超微粒子どうしの120℃以下の低温焼結は困難になる。
【0048】
一方、本発明においては、N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン(沸点136℃)などの中短鎖アルキルジアミンとオクチルアミン(沸点176℃)などの中短鎖アルキルアミンを用いることにより、シュウ酸イオン・アルキルアミン・アルキルジアミン・銀錯化合物は100℃より低温でも、短時間でその熱分解反応が進行し、被覆銀超微粒子が90%を超える高収率で合成できるようになった。この低温・短時間の熱分解反応が可能になったことから、沸点が100℃〜250℃の多様な中短鎖アルキルアミン及び中短鎖アルキルジアミン類で保護された被覆銀超微粒子の高効率合成が実現できる。また、従来よりも、更に、被覆銀超微粒子の合成における加熱等のエネルギー消費量が低減できる。
【0049】
このように生成される保護分子であるアミンに覆われた被覆銀超微粒子では、実施例に基づいて表1で説明するように、熱重量測定において160℃まで加熱した際に保護分子の30重量%以上が脱離するものであって、120℃においては数分間で焼結して金属光沢を示し、100℃でも1時間以内で焼結して金属光沢を示すものである。また、特に熱重量測定において160℃まで加熱した際に保護分子の50重量%以上が脱離するものを用いることで、20℃においても焼結して金属光沢を示すなど、極めて焼結性に優れた被覆銀超微粒子を提供することができる。これは、低温で脱離可能な保護被膜で銀超微粒子を被覆することで、室温程度の低い温度においても保護膜が銀超微粒子から脱離して銀超微粒子が露出することにより、銀超微粒子の表面が接触して焼結が生じることで金属皮膜が形成可能となるものと考えられる。
【0050】
これに対し、熱重量測定において160℃まで加熱した際の保護分子の脱離率が30重量%に満たない従来の被覆銀超微粒子においては、100℃程度の温度において金属光沢を示すためには長時間の焼結時間が必要となり、耐熱性の低い樹脂基板上に金属皮膜を形成する点で生産性に問題を有する。
【0051】
本発明に係る被覆銀超微粒子は、適宜の溶剤に分散可能であって、室温で長期間の保存が可能である。特に、先に説明したように、本発明においては比較的分子量の小さな中短鎖アルキルアミンや、極性の強い中短鎖アルキルジアミンを用いて銀超微粒子を被覆することを特徴としているため、極性溶剤への親和性が増大し、ブタノール等のアルコール溶剤、あるいはオクタンなどの非極性溶剤とアルコール溶剤の混合溶剤にも良好に分散できるため、その使用目的に応じて適宜の溶剤に分散して用いることができる。また、本発明に係る被覆銀超微粒子を大気等の気相に晒した場合には、保護被膜を構成するアミンが脱離して銀超微粒子間で焼結が開始するが、適切な分散媒中に分散させることにより当該アミンの脱離が抑制されて、被覆銀超微粒子として長期間の保存が可能である。
【0052】
これに対してナノサイズの被覆銀超微粒子が凝集しないようにする保護分子として、長鎖アルキルアミンのみ、あるいは、これを大量に含有した被覆銀超微粒子では、極性溶媒に対する分散性が著しく減少する。一方で、本発明におけるシュウ酸イオン・中短鎖アルキルアミン・中短鎖アルキルジアミン・銀錯化合物の低温熱分解で生じた被覆銀超微粒子は、特に、中短鎖アルキルアミンより極性が強い中短鎖アルキルジアミンを含むことにより極性溶剤への親和性が増大するため、ブタノール等のアルコール溶剤、あるいはオクタンなどの非極性溶剤との混合溶剤にも良好に分散できるようになる。極性溶剤、あるいは極性と非極性の混合溶剤への分散性に優れた被覆銀超微粒子は、その分散媒の種類、その組み合わせおよび混合比等の豊富なバリエーションの適切な選択により、その揮発性や粘度の調整などが容易となり、インクジェットなど様々な印刷技術で利用可能なインクの製造に好適となる。
【0053】
被覆銀超微粒子が150℃以下、さらには120℃以下の低温でもその保護分子が除去され、お互いが焼結し良好な導電性を発現するためには、250℃以下の沸点である中短鎖アルキルアミン及び中短鎖アルキルジアミンの組み合わせで被覆銀超微粒子を合成することが望まれる。中短鎖アルキルアミン単独で被覆銀超微粒子を製造する熱分解の反応温度は、アルキルジアミンと組み合わせた時よりも高い温度と長い反応時間が必要である。120℃以下で焼結可能な被覆銀超微粒子を得るための中短鎖アルキルアミンとしては、ドデシルアミン(248℃)やオクチルアミン(176℃)などが挙げられる。このように100℃〜250℃の沸点の中短鎖アルキルアミンや中短鎖アルキルジアミンを用いて合成された被覆銀超微粒子は、耐熱性の低い樹脂基板等への導電性被膜・配線形成材料として優れている。
【0054】
銀超微粒子は黄色の鮮明な色材として期待されているが、従来一般に、その表面プラズモンバンドの極大波長が400nmよりも長波長に現れるため、鮮明な黄色の色剤として課題がある。これに対し、本発明のシュウ酸イオン・アルキルアミン・アルキルジアミン・銀錯化合物の熱分解では、表面プラズモンバンドの極大波長が400nmよりも短波長にある被覆銀超微粒子を得ることが容易であり、装飾品等の色材としても有用である。
【0055】
本発明に係る被覆銀超微粒子が400nmよりも短波長側に表面プラズモンバンドの極大波長を有することは、当該銀超微粒子を構成する銀原子が電気的に中性な金属銀からなることを示しており、被覆を構成するアミンが配位結合により金属銀に結合していることを示すものである。本発明においては、このように保護膜を形成するアミンと銀超微粒子の結合を弱い結合により構成すること、及び、保護膜を形成するアミンを100℃〜250℃の沸点を有するアルキルアミンやアルキルジアミンに特定することにより、低温で容易に脱離可能な保護膜を銀超微粒子の表面に形成することが可能となった。
【0056】
本発明に係る被覆銀超微粒子を適宜の揮発性の分散媒に分散させた分散液を用いて、スピンコート法やインクジェット法によって所望の基体上に塗布を行い、120℃程度以下の適宜の温度に晒すことによって、分散媒を揮発させ被覆銀超微粒子の保護膜を形成するアミンを離脱させることにより銀超微粒子が焼結し、当該基体上に金属銀の薄膜が形成される。この現象を利用することで、被覆銀超微粒子が適宜の分散媒に分散した分散液をインクとして、金属薄膜を所望の基体上に印刷により形成することが可能である。
【0057】
本発明に係る被覆銀超微粒子を分散媒として用いられる溶剤等に分散させる際には、銀超微粒子の保護膜を脱離させないような条件で、保護膜を形成する際に用いた過剰のアルキルアミン等を除去すると共に使用する溶剤に置換することで、被覆銀超微粒子が分散した分散液を得ることが好ましい。特に、本発明に係る被覆銀超微粒子を大気等に晒した場合には、低温でもその保護膜が脱離して銀超微粒子の凝集と焼結が開始されるため、被覆銀超微粒子をアルキルアミン等から適宜の溶剤に置換する際には、被覆銀超微粒子が直接大気等に晒されないような条件を選択して置換を行うことが好ましい。典型的には、銀化合物とアミンの錯化合物を加熱して銀化合物を熱分解して得た被覆銀超微粒子を遠心分離、メタノールなどで溶媒洗浄した後、更に分散媒として用いる溶剤を加えて分散液とすることが望ましい。また、被覆銀超微粒子を生成する際に用いたアミンが被覆銀超微粒子の分散液に残留してもよい場合には、銀化合物とアミンの錯化合物から被覆銀超微粒子を得る際に反応溶媒として予めインクの分散媒を加えておけば簡便に被覆銀超微粒子の分散液を得ることができる。
【0058】
被覆銀超微粒子の分散液における被覆銀超微粒子の含有割合は、その使用目的により適宜決定されるが、被覆銀超微粒子が30重量%以上の高密度で分散する分散液であっても、室温で1ヶ月以上安定に保存可能である。
【0059】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
(シュウ酸銀)
シュウ酸銀は、銀含有率が高く、通常200℃で分解する。熱分解すると、シュウ酸イオンが二酸化炭素として除去され金属銀がそのまま得られるため、還元剤を必要とせず、不純物が残留しにくい点で有利である。このため、本発明において被覆銀超微粒子を得るための銀の原料となる銀化合物としてはシュウ酸銀が好ましく用いられるため、以下、銀化合物としてシュウ酸銀を用いた場合について本発明を説明する。ただし、上記のように、銀化合物と所定のアミンとの間で生成する錯化合物において、当該アミンが銀原子に配位した状態で熱分解可能な銀化合物であればシュウ酸銀に限定されずに用いられることはいうまでもない。
【0060】
本発明の実施に用いられるシュウ酸銀として制限はなく、例えば、市販のシュウ酸銀を用いることができる。また、シュウ酸銀のシュウ酸イオンに20モル%以下の炭酸イオン、硝酸イオン、酸化物イオンの1種以上で置換しても良い。特に、シュウ酸イオンの20モル%以下を炭酸イオンで置換した場合、シュウ酸銀の熱的安定性を高める効果がある。置換量が20モル%を超えると前記錯化合物が熱分解しにくくなる場合がある。
(中短鎖アルキルジアミン、中短鎖アルキルアミン)
特に、沸点が250℃以下のアルキルアミン及びアルキルジアミンを含んだシュウ酸イオン・アルキルアミン・アルキルジアミン・銀錯化合物では、100℃以下の低い温度での熱分解で被覆銀超微粒子を高効率で得ることができる。
【0061】
中短鎖アルキルジアミンは、特に、その構造に制限がないが、シュウ酸銀と反応して、前記錯化合物を形成するため(銀イオンに配位するため)、少なくとも1つのアミノ基が一級アミノ基であるRNH2(Rは炭化水素鎖)または二級アミノ基であるR1R2NH(R1、R2は炭化水素鎖で同じであっても異なっていてもよい)であることが望ましい。
中短鎖アルキルジアミンとしては、前記錯化合物の熱分解温度を考慮すれば100℃以上の沸点であること、また、得られた被覆銀超微粒子の低温焼結性を考慮すれば、250℃以下の沸点であることが考慮される。例えば、エチレンジアミン(118℃)、N,N−ジメチルエチレンジアミン(105℃)、N,N’−ジメチルエチレンジアミン(119℃)、N,N-ジエチルエチレンジアミン(146℃)、N,N’−ジエチルエチレンジアミン(153℃)、1,3−プロパンジアミン(140℃)、2,2-ジメチル−1,3−プロパンジアミン(153℃)、N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン(136℃)、N,N’−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン(145℃)、N,N−ジエチル−1,3−ジアミノプロパン(171℃)、1,4−ジアミノブタン(159℃)、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン(193℃)、1,6−ジアミノヘキサン(204℃)、N,N’−ジメチル−1,6−ジアミノヘキサン(228℃)、1,7−ジアミノヘプタン(224℃)、1,8−ジアミノオクタン(225℃)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
中短鎖アルキルアミンは、特に、その構造に制限がないが、シュウ酸銀と反応して、前記錯化合物を形成するため(銀イオンに配位するため)、一級アミノ基であるRNH2(Rは炭化水素鎖)または二級アミノ基であるR1R2NH(R1、R2は炭化水素鎖で同じであっても異なっていてもよい)であることが望ましい。また、中短鎖アルキルアミンとしては、前記錯化合物の熱分解温度を考慮すれば100℃以上の沸点であること、また、得られた被覆銀超微粒子の低温焼結性を考慮すれば、250℃以下の沸点であることが考慮される。例えば、2−エトキシエチルアミン(105℃)、ジプロピルアミン(107℃)、ジブチルアミン(159℃)、ヘキシルアミン(131℃)、シクロヘキシルアミン(134℃)、ヘプチルアミン(155℃)、3−ブトキシプロピルアミン(170℃)、オクチルアミン(176℃)、ノニルアミン(201℃)、デシルアミン(217℃)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(217℃)、ドデシルアミン(248℃)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
中短鎖アルキルジアミン及び中短鎖アルキルアミンの脂肪族炭化水素鎖において飽和脂肪族アミンおよび不飽和脂肪族アミンが挙げられるが、いずれかに限定されるものではない。
【0064】
複数の異なる中短鎖アルキルアミン及び中短鎖アルキルジアミンを同時にシュウ酸銀と反応させ、生成したシュウ酸イオン・アルキルアミン・アルキルジアミン・銀錯化合物の熱分解を行えば、複数の異なるアルキルアミンやアルキルジアミンで保護された被覆銀超微粒子が得られる。その中短鎖アルキルアミンや中短鎖アルキルジアミンの種類、数および混合比等を適切に選択することにより、非極性または極性溶剤への分散性を調整することができる。
【0065】
250℃以下の沸点の中短鎖アルキルアミンや中短鎖アルキルジアミンで保護された被覆銀超微粒子は、耐熱性の弱い樹脂基板上でも、例えば、120℃以下の加熱で、その保護分子が除去され、被覆銀超微粒子同士が焼結し、良好な導電性を発現させることが可能である。
【0066】
120℃以下の低温焼結性と溶媒への分散性に優れた被覆銀超微粒子が得られる限りにおいては、シュウ酸イオン・アルキルアミン・アルキルジアミン・銀錯化合物の熱分解反応において、長鎖アルキルアミンを添加して実施することは特に制限を設けないが、使用する中短鎖アルキルアミン及び中短鎖アルキルジアミンの総計に対する長鎖アルキルアミンのモル含有率が20モル%以下であれば、低温焼結で得られた銀被着材は実用的な導電性を示したので、アルキルアミンおよびアルキルジアミンの総計に対して20モル%以下の長鎖アルキルアミンを使用する場合も、本発明の範囲内である。
【0067】
本発明における、シュウ酸イオン・アルキルアミン・アルキルジアミン・銀錯化合物の調製においては、シュウ酸銀とアルキルアミン及びアルキルジアミンの総量のモル比は1:2〜1:4であることが望ましいが、それに限定されるものではない。シュウ酸銀にアルキルアミン及びアルキルジアミンのアミノ基が、銀原子:アミノ基=1:1で結合し、前記シュウ酸イオン・アルキルアミン・アルキルジアミン・銀錯化合物が生成する。従って、シュウ酸銀と中短鎖アルキルアミン及び中短鎖アルキルジアミンの総量の化学量論比(モル比)は1:2となる。シュウ酸銀と中短鎖アルキルアミンのみを使用する場合にも化学量論比(モル比)は1:2となる。そのため、シュウ酸銀に対して中短鎖アルキルアミン及び中短鎖アルキルジアミンのモル比が2倍以下になると、未反応のシュウ酸銀が残るため、均一な前記錯化合物の低温分解が阻害され、被覆銀超微粒子の収率が低下する場合がある。シュウ酸銀と中短鎖アルキルアミンのみを使用する場合にも、同様である。逆に、4倍以上であっても、前記錯化合物の均一熱分解は進むが、中短鎖アルキルアミンおよび中短鎖アルキルジアミンを無駄に使用するばかりか、廃棄物の増大に繋がるため経済性の面で好ましくない。シュウ酸銀と中短鎖アルキルアミンのみを使用する場合にも、同様である。
【0068】
シュウ酸イオン・アルキルアミン・アルキルジアミン・銀錯化合物を生成させるために、メタノールや水などの反応溶媒を用いることは特に制限はないが、沸点が250℃以下の中短鎖アルキルアミンや中短鎖アルキルジアミンを用いた場合、メタノールなどの溶媒を用いることなく無溶媒でも、前記錯化合物が生成する。また、こうして生じた前記錯化合物は、その低温熱分解で直接、被覆銀超微粒子へ変換できる。このように、本発明による被覆銀超微粒子の製造は無溶媒で実施できるため、物質消費を低減した製造が可能である。作製した被覆銀超微粒子の単離法は、特に制限はないが、例えば、熱分解後の反応混合物に、メタノールや水などを少量加え、被覆銀超微粒子を余剰のアルキルアミン及びアルキルジアミンから遠心分離により粉体として単離できる。大量の有機溶媒中で被覆銀超微粒子を合成する方法に比べ、本発明では、無溶媒合成であり、さらに還元剤を使用しないため、被覆銀超微粒子の単離作業に用いるメタノール等の有機溶媒の量を大幅に削減できる特長がある。
【0069】
また、本発明においては、生成する被覆銀超微粒子の分散媒への分散性を向上させるための分散剤として、例えばオレイン酸などの脂肪酸をアミンに混合して用いてもよい。ただし、過剰な量の脂肪酸を使用した場合には、被覆銀超微粒子からの保護被膜の脱離温度が上昇する傾向が見られるため、その添加量は反応系に含まれる銀原子に対して5モル%以下とすることが望ましい。
【0070】
以上のように、本発明の被覆銀超微粒子の製造方法は、シュウ酸銀と中短鎖アルキルジアミンと中短鎖アルキルアミンとを反応させてその錯化合物を生成させた後、この錯化合物を低温熱分解させることで、溶剤への分散性と低温焼結性に優れた被覆銀超微粒子を高収率で得ることができる。また、極めて単純な製造プロセスで被覆銀超微粒子を製造することができる。さらには、得られた被覆銀超微粒子は粉体でも、溶剤に分散した状態でも長期に安定に保存できる。
【0071】
以下に、実施例として、被覆銀超微粒子の製造法及びその溶媒への分散性、低温焼結性などの評価を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0072】
N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン(東京化成、特級)2.04g(20.0 mmol)、n−オクチルアミン(花王、純度98%)1.94g(15.0 mmol)と、n−ドデシルアミン(関東化学、特級)0.93g(5.0 mmol)を混合し、この混合溶液にシュウ酸銀〔硝酸銀(関東化学、一級)とシュウ酸アンモニウム一水和物またはシュウ酸二水和物(関東化学、特級)から合成したもの〕6.08g(20.0mmol)を加え、3分間撹拌し、シュウ酸イオン・アルキルアミン・アルキルジアミン・銀錯化合物を調製した。これを95℃で20〜30分加熱撹拌すると、二酸化炭素の発泡を伴う反応が完結し、青色光沢を呈する懸濁液へと変化した。これにメタノール(関東化学、一級)10mLを加え、遠心分離により得られた沈殿物を自然乾燥すると、青色光沢の被覆銀超微粒子の固体物4.62g(銀基準収率97.0%)が得られた。
【0073】
[解析と評価]
得られた青色光沢の固体物について、粉末X線回折計(リガク MiniFlex II )により解析を行ったところ、粉末X線回折パターン(図1)から金属銀が生成していることが確認された。また、そのシグナル半値幅から、単結晶子サイズが4.0nmの被覆銀超微粒子であることが分かった。
【0074】
FT−IRスペクトル(日本分光 FT/IR−4100)から、得られた固体物にはアルキルアミン、アルキルジアミンが含有されていることが確認された。示差熱・熱重量分析(島津DTG−60により、80mL/分の合成空気気流中で10℃/分の速度で昇温)から、得られた固体物には、9.30重量%アミンが保護分子として含有されており(図2)、銀基準収率は97.0%であった。また、100℃以下でも保護分子であるアルキルアミンおよびアルキルジアミンの脱離に由来する大きな重量減少が見られた。このことから、低温焼結による導電性発現が十分期待できる試料であることが明らかである(実施例3参照)。
【0075】
得られた被覆銀超微粒子を透過型電子顕微鏡(FEI Co.,Model TECNAI−G2)で観察した。5〜15nm程度の球状粒子が観察された(図3)
【実施例2】
【0076】
実施例1で得られた被覆銀超微粒子の溶媒への分散性を評価した。その結果、n−ブタノール(関東化学、特級)及びn−ブタノールとn−オクタン(関東化学、特級)の混合溶媒に良好に分散した。そのn−ブタノールとn−オクタン混合溶媒分散溶液の動的光散乱粒度測定(大塚電子 ELS−Z2M)により、得られた被覆銀超微粒子は数平均粒子径18nmで良好に分散できることがわかった(図4)。また、得られた固体物から、30重量%あいはそれ以上の被覆銀超微粒子の分散液も調製でき、その分散液の紫外可視吸収スペクトル(島津UV3150)から、400nmよりも短波長の極大波長を有する被覆銀超微粒子に由来する表面プラズモンバンドも観測された。また、その分散液、例えば、40重量%の分散液は、室温で1ヶ月以上安定に保存できる。同様に粉体でも1ヶ月以上安定に保存できる。
【実施例3】
【0077】
実施例1で得られた被覆銀超微粒子の低温焼結性を評価した。実施例2で調製した被覆銀超微粒子のn−ブタノール分散液を用いて、PET(ポリエチレンテレフタレート)基板(富士フィルムアクシア(株)OHPシート)に被覆銀超微粒子のスピンコート膜を作製した。これを60、80、100、120、150℃で加熱焼成し、その電気抵抗(共和理研 K−705RS、四探針法)を測定した(図5、縦軸対数表示)。150℃焼成では、10分で体積抵抗率が10-5〜10-6 Ωcmの金属銀に近い良好な導電膜(金属光沢膜)が得られた(図5(a))。120℃では30分加熱で、100℃では40分加熱で10-5〜10-6 Ωcmに達した(図5(a))。80℃の低温焼成でも3時間加熱で〜10-5Ωcmを示す良好な導電膜が得られた(図5(b))。また、60℃加熱でもゆっくりであるが焼結は進み、15時間後には〜10-4Ωcmの良好な導電膜が得られた。
【実施例4】
【0078】
実施例2で調製した被覆銀超微粒子の分散液をポリエチレンフィルムにスピンコートし、100℃の温度で1〜2時間加熱すると、金属光沢を有するポリエチレフィルムが得られ、体積抵抗率が〜10-5 Ωcmの良好な導電性を示した。
【実施例5】
【0079】
実施例2で作製した被覆銀超微粒子の分散液にメッシュ状ポリエステル生地(糸の太さ;12.5μm、糸と糸の間隔;150μm、光透過率;80%)を浸し、分散媒を乾燥後、被覆銀超微粒子が付着した生地を100℃で1時間加熱すると銀光沢のメッシュ生地が得られた。その生地の導電性を測定したところ、抵抗率300mΩ/□の良好な光透過性メッシュ生地であることがわかった。
【実施例6】
【0080】
実施例2で調製した被覆銀超微粒子の分散液を薬包紙に塗布し、分散媒を乾燥後、100℃で1〜2時間加熱すると銀光沢の紙が得られた。その導電性を測定したところ、抵抗率600mΩ/□の良好な導電紙であることがわかった。
【実施例7】
【0081】
n−オクチルアミン2.16g(16.7 mmol)とn−ドデシルアミン0.624g(3.37 mmol)を混合し、この混合液にシュウ酸銀3.04 g(10.0 mmol)を加え、10分間撹拌し、シュウ酸イオン・アルキルアミン・銀錯化合物を調製した。これを100℃で60分加熱撹拌すると、青色光沢を呈する懸濁液へと変化した。これにメタノール5 mLを加え、遠心分離により得られた沈殿物を自然乾燥すると、青色光沢の被覆銀超微粒子の固体物2.25 g(銀基準収率94.5%)が得られた。
[解析と評価]
得られた青色光沢の固体物について、粉末X線回折計により解析を行ったところ、粉末X線回折パターン(図6)から金属銀が生成していることが確認された。また、そのシグナル半値幅から、単結晶子サイズが4.1nmの被覆銀超微粒子であることが分かった。得られた被覆銀超微粒子を透過型電子顕微鏡で観察した。10〜20nm程度の球状粒子が観察された(図7)。FT−IRスペクトルから得られた固体物にはアルキルアミンが含有していることが確認された。熱重量分析から、得られた固体物には9.30重量%アルキルアミンが保護分子として含有されており、使用したシュウ酸銀に対する銀基準収率は94.5%であることが明らかになった。
【実施例8】
【0082】
実施例7で得られた被覆銀超微粒子の溶媒への分散性を調べた結果、n-ブタノールとn-オクタンの混合溶媒に良好に分散した。その分散溶液の動的光散乱粒度測定により、得られた被覆銀超微粒子は数平均粒子径18nmで良好に分散できることが分かった(図8)。また、得られた固体物から、30重量%あいはそれ以上の被覆銀超微粒子の分散液も調製できる。その分散液の紫外可視吸収スペクトルから、400 nmよりも短波長の極大波長を有する被覆銀超微粒子に由来する表面プラズモンバンドも観測された。その分散液、例えば、40重量%の分散液は、室温で1ヶ月以上安定に保存できる。同様に粉体でも1ヶ月以上安定に保存できる。
【実施例9】
【0083】
実施例7で得られた被覆銀超微粒子の低温焼結性を調べた。実施例8で調製した被覆銀超微粒子のn-ブタノールとn−オクタン混合溶媒分散液を用いて、PET基板に被覆銀超微粒子のスピンコート膜を作製した。これを100、120℃で加熱し、その電気抵抗を調べた。120℃加熱では、40分で10-5〜10-6Ωcm程度の良好な導電膜(金属光沢膜)が得られた。100℃では120分加熱で10-5〜10-6 Ωcmに達した。
【実施例10】
【0084】
n−ヘキシルアミン5.78g(57.1mmol)とn−ドデシルアミン0.885g(4.77mmol)、N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン3.89g(38.1mmol)、オレイン酸(東京化成、>85.0%)0.251g(0.889mmol)を混合し、この混合液にシュウ酸銀7.60g(25.0mmol)を加え、約1時間撹拌すると、シュウ酸イオン・アルキルアミン・アルキルジアミン・銀錯化合物が生成し、粘性のある固体物へと変化した。これを100℃で10分加熱撹拌すると、二酸化炭素の発泡を伴う反応が完結し、青色光沢を呈する懸濁液へと変化した。これにメタノール10mLを加え、遠心分離により得られた沈殿物を分離し、もう一度、メタノール10mLを加え、沈殿物を撹拌し、遠心分離により得られた被覆銀超微粒子の沈殿物を得た。被覆銀超微粒子の沈殿物にn−オクタンとn−ブタノールの混合溶媒(体積比4:1v/v)を加えて撹拌することで、50重量%の被覆銀超微粒子が良好に分散する分散液を得た。また、この被覆銀超微粒子を熱重量分析した際の残留する銀固形成分の重量から、被覆銀超微粒子の銀基準収率は97.0%であった。
【0085】
上記の混合溶媒分散液を基板(銅メッシュ・マイクログリッド)に垂らして乾燥させた後、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノジーズ SU1510)で観察した結果を図10に示す。5〜20nm程度の球状の被覆銀超微粒子が観察された。
【実施例11】
【0086】
実施例10で得られた被覆銀超微粒子のn−オクタンとn−ブタノール(体積比4:1v/v)混合溶媒への分散液の分散性を動的光散乱粒度測定により調べたところ、得られた被覆銀超微粒子は数平均粒子径12nmで良好に分散できることが分かった。また、その分散液の紫外可視吸収スペクトルから、400nmよりも短波長の極大波長を有する被覆銀超微粒子に由来する表面プラズモンバンドが観測された。また、その分散液は、室温で1ヶ月以上安定に保存できた。
【実施例12】
【0087】
実施例10で作製した被覆銀超微粒子の分散液にメッシュ状ポリエステル生地(糸の太さ;12.5μm、糸と糸の間隔;150μm、光透過率;80%)を浸し、分散媒を乾燥後、被覆銀超微粒子が付着した生地を80℃で1時間加熱すると銀光沢のメッシュ生地が得られた(図9)。その生地の導電性を測定したところ、抵抗率300mΩ/□の良好な光透過性メッシュ生地であることがわかった。
【実施例13】
【0088】
実施例10で得られた被覆銀超微粒子の低温焼結性を調べるために、実施例10で調製した被覆銀超微粒子のn−オクタンとn−ブタノール混合分散液を用いて、PET基板に被覆銀超微粒子のスピンコート膜を作製した。これを室温(20℃)で放置し、その電気抵抗(四探針法)を測定した(図11、縦軸対数表示)。1〜2時間で急激に抵抗値が減少し、5時間後には体積抵抗率が10-4Ωcm程度になり、十分な導電性を示すようになった。この塗布膜を100℃でさらに加熱すると、30分以内には体積抵抗率10-5〜10-6 Ωcm程度に達し、導電性がさらに向上した。
【実施例14】
【0089】
実施例10で調製した被覆銀超微粒子のn−オクタンとn−ブタノール混合分散液を用いて、PET基板上へのスピンコート直後の被覆銀超微粒子青色膜(塗布膜A)を原子間力顕微鏡(AFM)観察(島津SPM−9600)したところ、5〜20nm程度の球状の銀超粒子が観察された。また、塗布膜Aを室温(20℃)で24時間放置して銀色の焼結膜(塗布膜B)となったものを同様にAFM観察したところ、わずかであるが塗布膜Bでは塗布膜Aに比べて粒子成長(20〜30nm)が進むことが観察された。また、実施例13に示した100℃加熱で導電性が急激に向上した塗布膜Cでは、塗布膜A、Bに比べて粒子どうしの焼結が進み、平均粒径が約200nm程度の粒子からなる金属皮膜が形成されていることがAFM観察から分かった。
<比較例1>
【0090】
特許文献2の実施例3に記載の方法により作製した被覆銀超微粒子の低温焼結性を評価した。その結果、特許文献2の実施例3により合成した被覆銀超微粒子のn−オクタン分散液を用いてPET基板に作製したスピンコート膜を、80℃で3時間加熱したが、被覆銀超微粒子の焼結は見られず導電性は示さなかった。100及び120℃の場合でも、2時間加熱では殆ど導電性は発現しなかった。
【0091】
この結果を、本発明の実施例3、9、13と比較すると、長鎖アルキルアミンであるオレイルアミンを含まない本発明のアルキルアミン及びアルキルジアミンのみで保護された被覆銀超微粒子塗布膜の低温焼結性は特許文献2の実施例3記載の方法により合成した被覆銀超微粒子よりも、その焼結温度、焼結速度の点で、大きく改善されていることがわかる。
<比較評価>
【0092】
表1には、本発明の実施例1、10で作製した青色光沢を呈する被覆銀超微粒子を、それぞれ実施例2、10に記載した方法でn−オクタンとn−ブタノールの混合液に30重量%の割合で分散させた後、その分散液を用いてPET基板に作製した被覆銀超微粒子のスピンコート膜を、20〜120℃の各温度で一定に保った送風恒温器中で保持した際に、被覆銀超微粒子が示す焼結性についての評価結果を記載した。焼結性の評価は、青色光沢を呈する被覆銀超微粒子膜が焼結により銀色の金属光沢を示すまでの時間を評価した。また、比較のために、特許文献2の実施例1、3に記載された条件で作製した被覆銀超微粒子を、n−オクタンまたはトルエンに30重量%の割合で分散させた後、その分散液を用いてPET基板上へスピンコートして同様に評価した評価結果を表1に記載した。
【0093】
また、特許文献2の実施例1、3と本発明の実施例10で得られたそれぞれの被覆銀超微粒子について、本発明の実施例1についてと同様に示差熱・熱重量分析(島津DTG−60により、80mL/分の合成空気気流中で10℃/分の速度で昇温)を行った結果をそれぞれ図12〜14に示す。また、各被覆銀超微粒子の熱重量分析において160℃まで加熱した際の重量減少量を、各被覆銀超微粒子が有していた保護膜の総重量(400〜500℃まで加熱して重量が一定になった際の重量減少量)で除した値を保護膜の重量減少率として求め、焼結性の評価結果と共に表1に記載した。
【0094】
【表1】
【0095】
いずれの被覆銀超微粒子においても加熱開始と共に保護膜の脱離に伴う重量減少を生じるが、本発明の実施例1、10で得られた被覆銀超微粒子においては、特許文献2に記載された被覆銀超微粒子に比べて速い速度で重量減少を生じることが明らかである。そして、表1に示すとおり、低い温度で重量減少の大きな被覆銀超微粒子は、より低い温度において短時間で焼結を生じることが観察された。
【0096】
本発明に係る種々の被覆銀超微粒子について示差熱・熱重量分析と焼結性の評価を行った結果、80mL/分の合成空気気流中で10℃/分の割合で160℃まで昇温した際に保護膜の30重量%以上が脱離する被覆銀超微粒子を用いることで、基体にスピンコートした被覆銀超微粒子を1時間程度の120℃加熱により焼結させて銀の皮膜を生成できることが明らかになった。また、同様の測定条件で保護膜の35重量%以上が脱離する被覆銀超微粒子を用いた場合には、100℃程度に加熱することで速やかに焼結を生じて銀の皮膜を生成できることが明らかになった。更に、同様の測定条件で保護膜の40重量%、望ましくは50重量%以上が脱離する被覆銀超微粒子を用いた場合には、加熱により速やかに焼結を生じると共に、特に加熱を行わずに室温の環境に24時間程度放置することによっても焼結を生じて銀の皮膜を生成することが可能であり、耐熱性が極めて低い基体や、大型であるなどの理由で加熱が困難な基体等に対しても被覆銀超微粒子の分散液を塗布して乾燥させるのみで銀皮膜を形成させることができることが明らかになった。
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶剤への分散性に優れ、フレキシブルプリント基板上等で低温焼結により良好な導電性を発現するナノメートルサイズの被覆銀超微粒子とその製造方法、並びにこれを用いた焼結銀被着物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の目覚ましい進歩の背景には半導体デバイスなどの電子部品の進展とともに、これら電子部品を実装するプリント配線板の大きな発展がある。そして、電子機器の多くが小型・薄型・軽量化され、しかも生産性の向上が求められていることから、プリント配線板についてもこれに対応する様々な工夫、改善がさらに必要とされている。特に、そのために電子部品の導電性配線形成用材料の実装の高速度化および高密度化が要求されている。
【0003】
このような状況において、より低い温度において、配線形成材料が実装できる材料があれば、フレキシブルプリント配線基板として既に使用されているポリイミドのみならず、PET(ポリエチレンテレフタレート)やポリプロピレンなどの耐熱性がポリイミドより低い、加工性が容易な各種の有機高分子基板に対しても微細な電子回路形成が可能となるため、このような新しい材料の出現が期待されている。インクジェット印刷技術の進展により、現在ではナノサイズの金属微粒子がそのような材料の一つとして期待され、その検討が進められている(例えば非特許文献1)。しかしながら、これまでのところ150℃が最低の焼結温度であるため、さらなる低温焼結可能な材料が求められている。また、こうした金属超微粒子の合成において用いられる大量の反応溶媒、過剰の保護分子、還元剤から生じる副生成物を含む廃棄物の発生は、省資源・エコロジーの観点からも改善が求められる。
【0004】
これまでの検討においては、例えば特許文献1には、2種以上の遷移金属塩とアミン化合物を不活性雰囲気において熱処理する複合金属超微粒子の製造方法について開示されている。粒子径がナノメートル(nm)のレベルの超微粒子が形成され、それらは、トルエン、ヘキサン、リグロイン、石油エーテル、エチルエーテル等のどちらかといえば非極性溶剤に分散し、200℃〜300℃の熱処理で焼結することが開示されている。だが、それらが導電性を示すかどうかは不明である。また、熱処理温度が200℃以上であるので加工性が良い有機基板としても耐熱性のかなり優れたポリイミド等しか使用することできない。
【0005】
また、特許文献2には、不飽和長鎖脂肪族アミンであるオレイルアミンを必須構成要件としてシュウ酸銀および飽和脂肪族アミンとを反応させた場合にのみ、粒径のそろった被覆銀超微粒子が得られることが開示されている。しかしながら、得られた被覆銀超微粒子の溶剤への分散性や焼結温度とその導電性については必ずしも十分に検討も開示もされていない。実際のところ、さらなる改善が求められてもいる。
【0006】
特許文献1、2に記載される銀超微粒子が、銀の融点よりも遙かに低い200℃程度の温度で焼結して金属皮膜を形成する理由は、そのような銀超微粒子が非常に大きな比表面積を有しているために、その表面張力により表面積を小さくしようとする傾向が非常に大きいためと考えられる。このため、低温焼結を行おうする場合には、銀超微粒子の平均粒径をなるべく小さくすることで、大きな比表面積を与えることが必要となる。しかしながら、単に平均粒径の小さな銀超微粒子を製造しようとすると、その製造過程において銀超微粒子の有する表面張力により粒子が凝集(焼結)し、結果的にそれ以上の低温焼結を生じない粗大な粒子しか得ることができないという問題を生じる。
【0007】
このような問題を解消して微細な銀超微粒子を安定して製造し、また製造した銀超微粒子の保存性を高めるために、特許文献2に記載の銀超微粒子においては、上記のように不飽和長鎖脂肪族アミンであるオレイルアミンを必須構成要件としてシュウ酸銀の分解を利用して銀超微粒子を製造すると共に、製造された銀超微粒子の表面を当該オレイルアミンで保護することにより20nm程度の平均粒径を有する銀超微粒子を製造している。この銀超微粒子においては、銀超微粒子の表面にオレイルアミン分子が存在して銀粒子の表面同士が直接接触することが防止されるため、製造過程や保存中に銀超微粒子が意図しない焼結・凝集をすることを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−298921号公報
【特許文献2】特開2008−214695号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】河染 満 他、粉砕、No.50、27−31(2006/2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記のように、不飽和長鎖脂肪族アミンであるオレイルアミンにより表面が保護された銀超微粒子においては、実際に当該銀超微粒子を用いて焼結させようとした場合にも当該オレイルアミンの存在により銀超微粒子表面の接触が妨げられることとなって、焼結温度を十分に下げられないという問題が生じることとなる。
【0011】
本発明においては、そのような問題点を解決して、その製造過程や保存中においては十分に銀超微粒子が生成して、その凝集(焼結)が防止されると共に、当該銀超微粒子を焼結させようとした場合には低温で焼結が生じるような被覆銀超微粒子、及び、その製造方法を提供することを課題とする。具体的には、耐熱性の低いフレキシブルプリント基材でも使用できるより低温での焼結が可能な新しい導電性形成材料として120℃以下、さらには100℃以下の温度においても焼結可能な被覆銀超微粒子と、その製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記課題を解決するため、以下のことを特徴としている。
【0013】
第1:平均粒径が30nm以下であり保護分子により覆われた被覆銀超微粒子であって、熱重量測定において160℃まで加熱した際の当該保護分子アミンの重量減少率が30%以上であることを特徴とする被覆銀超微粒子。
【0014】
第2:平均粒径が30nm以下であり保護分子により覆われた被覆銀超微粒子であって、100℃以下の温度において1時間以下で焼結して銀色の金属膜を形成可能であることを特徴とする被覆銀超微粒子。
【0015】
第3:前記保護分子は、沸点が100℃〜250℃の範囲内にある中短鎖アルキルアミンと、沸点が100℃〜250℃の範囲内にある中短鎖アルキルジアミンを主成分として含むことを特徴とする被覆銀超微粒子。
【0016】
第4:上記のいずれかの被覆銀超微粒子を分散媒に分散させたことを特徴とする被覆銀超微粒子分散液。
【0017】
第5:加熱により分解して金属銀を生成する銀化合物と、沸点が100℃〜250℃である中短鎖アルキルアミンおよび沸点が100℃〜250℃である中短鎖アルキルジアミンとを混合して、当該銀化合物と当該アルキルアミンおよびアルキルジアミンを含む錯化合物を調製する第一行程と、当該錯化合物を加熱して当該銀化合物を熱分解させる第二行程を含むことを特徴とする被覆銀超微粒子の製造方法。
【0018】
第6:前記加熱により分解して金属銀を生成する銀化合物としてシュウ酸銀を用いることを特徴とする被覆銀超微粒子の製造方法。
【0019】
第7:前記銀化合物に混合されるアルキルアミンおよびアルキルジアミンにおいて、アミンの総量に対するアルキルジアミンの含有率が10〜90モル%であることを特徴とする被覆銀超微粒子の製造方法。
【0020】
第8:前記第一行程において、さらに反応系に含まれる銀原子に対して5モル%以下の脂肪酸を混合することを特徴とする被覆銀超微粒子の製造方法。
【0021】
このような特徴を有する本発明は、発明者における以下の知見に基づいて完成されたものである。
【0022】
すなわち、従来の問題点を鑑みて、鋭意研究した結果、驚くべきことに、発明者においては、銀の原料となる銀化合物を分解して銀超微粒子を製造する際に、沸点が100℃〜250℃の中短鎖アルキルアミンと中短鎖アルキルジアミンを介在させて用いることによって、無溶媒、低温、短時間で錯化合物が合成でき、この錯化合物を用いることで低温焼結可能な被覆銀超微粒子を製造することができた。より詳しくは、銀の原料となる銀化合物として、例えばシュウ酸銀を用いると共に、これに中短鎖アルキルアミンおよび中短鎖アルキルジアミンとを介在させることにより、シュウ酸銀に含まれる銀原子に当該中短鎖アルキルアミンと中短鎖アルキルジアミンが配位した錯化合物を調製し、この状態でシュウ酸銀を構成するシュウ酸イオンの部分を熱分解することにより、低温焼結可能な被覆銀超微粒子を高収率で調製することができた。さらに、得られた被覆銀超微粒子は極性溶剤を含む有機溶剤に良好に分散し、この分散液を用いてプラスチック基板上で作製した被覆銀超微粒子の塗布膜において、120℃以下、さらには100℃以下の極めて低い温度で被覆銀超微粒子同士が低温焼結することにより良好な導電膜を得ることができた。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、120℃以下、さらには100℃以下の室温近辺でも焼結可能な被覆銀超微粒子を提供することができ、PETおよびポリプロピレンのような耐熱性の低いプラスチック基板にも導電膜、導電配線を形成させることが可能となる。
【0024】
また、無溶媒、低温(室温)でも上記錯化合物を合成することができる。さらに、上記錯化合物を100℃近辺の低温で熱分解し、直接、被覆銀超微粒子を得ることができ、さらに他の方法のように、別途、還元剤を加える必要もなく、エネルギー・物質の消費量を大きく削減できる。本発明の方法は工業的生産に適している。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例1で得られた被覆銀超微粒子の粉末X線回折パターンを示す。シグナルピーク位置は金属銀のパターンと一致している。シグナルがブロードであるためナノサイズの結晶であることが分かる、そのシグナルの半値幅から単結晶子サイズを計算できる。
【図2】実施例1で得られた被覆銀超微粒子の熱重量示差熱分析結果を示す。熱重量減少(重量%)から被覆銀超微粒子中に含まれる保護分子アミン(アルキルアミン、アルキルジアミン)の重量%が求められ、同時に保護分子アミンの脱離温度がわかる。また、示差熱の結果から、その保護分子の脱離が発熱反応か吸熱反応かがわかる。示唆熱プロファイルが上向きの場合、発熱、下向きの場合、吸熱であることから、実施例1で得られた被覆銀超微粒子の保護分子の脱離は発熱反応である。
【図3】実施例1で得られた被覆銀超微粒子のn−ブタノールとn−オクタンの混合溶媒分散液を基板(銅メッシュ・コロジオン膜)に垂らし、乾燥後、観察した被覆銀超微粒子の透過型電子顕微鏡像を示す。
【図4】実施例1で得られた被覆銀超微粒子のn−ブタノールとn−オクタンの混合溶媒分散液(実施例2)の動的光散乱粒度測定による粒度分布を示す。
【図5】PET基板上に実施例1で得られた被覆銀超微粒子のスピンコート膜を作製し、数段階の焼結温度で焼結させた銀皮膜(実施例3)の電気抵抗(導電性)を示す。
【図6】実施例7で得られた被覆銀超微粒子の粉末X線回折パターンを示す。
【図7】実施例7で得られた銀超微粒子のn-ブタノールとn-オクタンの混合溶媒分散液を基板(銅メッシュ・コロジオン膜)に垂らし、乾燥後、観察した被覆銀超微粒子の透過型電子顕微鏡像を示す。
【図8】実施例7で得られた被覆銀超微粒子のn-ブタノールとn-オクタンの混合溶媒分散液の動的光散乱粒度測定による粒度分布を示す。
【図9】実施例10の被覆銀超微粒子の分散液に浸したメッシュ状ポリエステル生地を乾燥、加熱(80℃)した後の顕微鏡写真を示す。
【図10】実施例10で得られた被覆銀超微粒子のn−ブタノールとn−オクタンの混合溶媒分散液を基板(銅メッシュ・マイクログリッド)に垂らし、乾燥後、観察した被覆銀超微粒子の走査型電子顕微鏡像を示す。白丸が銀超微粒子である。
【図11】実施例10の被覆銀超微粒子の分散液を用いてPET基板に施したスピンコート膜を20℃で放置し、その後に100℃で焼成させた銀皮膜の電気抵抗を示す(実施例13)。
【図12】特許文献2の実施例1の方法で作製した被覆銀超微粒子の示差熱・熱重量測定の結果を示す。
【図13】特許文献2の実施例3の方法で作製した被覆銀超微粒子の示差熱・熱重量測定の結果を示す。
【図14】実施例10で作製した被覆銀超微粒子の示差熱・熱重量測定の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る被覆銀超微粒子、及びその製造方法について説明する。銀超微粒子を構成する銀の原料としては、含銀化合物の内で、加熱により容易に分解して金属銀を生成する銀化合物が好ましく使用される。このような銀化合物としては、ギ酸、酢酸、シュウ酸、マロン酸、安息香酸、フタル酸などのカルボン酸と銀が化合したカルボン酸銀の他、塩化銀、硝酸銀、炭酸銀等を用いることが可能であるが、分解により容易に金属銀を生成し、且つ、銀以外の不純物を生じにくい観点からシュウ酸銀が好ましく用いられる。シュウ酸銀は、銀含有率が高いと共に、加熱によりシュウ酸イオンが二酸化炭素として分解除去されるために、還元剤を必要とせず熱分解により金属銀がそのまま得られ、不純物が残留しにくい点で有利である。
【0027】
本発明においては、上記の銀化合物に対して所定のアルキルジアミンとアルキルアミンとを加えて、銀化合物と当該アミンの錯化合物を生成させることを特徴とする。この錯化合物には銀、アルキルアミン、アルキルジアミンおよびシュウ酸イオンが含まれる。当該混合により得られる銀化合物と当該アミンの錯化合物においては、銀化合物に含まれる各銀原子に対してアミンに含まれる窒素原子がその非共有電子対を介して配位結合することにより、錯化合物を生成しているものと推察される。なお、本明細書において、アルキルアミンとは一つのアミノ基を有するアルキルアミンを意味し、アルキルジアミンとは二つのアミノ基を有するアルキルアミンを意味するものとする。また、単にアミンと記載する場合は、上記アルキルアミンとアルキルジアミンの双方を含むものとする。
【0028】
本発明に係る被覆銀超微粒子の製造方法では、次に、当該銀化合物とアミンの錯化合物を適宜の条件で加熱することを特徴とする。このような加熱により、銀原子に対するアミンの配位結合を維持したままで、銀化合物を熱分解して金属銀を生成させることが可能である。例えば、銀化合物としてシュウ酸銀を用いる場合には、加熱によってシュウ酸イオンを構成する炭素と酸素が二酸化炭素として除去されることで、配位結合によりアミンが配位した金属銀原子が得られる。
【0029】
このように生成される銀原子は電気的に中性であり、アミンは当該銀原子に配位結合による弱い力で結合していると考えられ、比較的小さな駆動力によりアミンが離脱可能であって、金属銀が単離可能であると考えられる。このように電気的に中性な銀に対してアミンが容易に離脱可能な状態で配位していることが、本発明において得られる被覆銀超微粒子が極めて低い室温程度の温度で焼結することを可能にしていると考えられる。
【0030】
このように生成するアミンが配位した金属銀原子は、その生成後に速やかに凝集し、相互に金属結合を生成して結合し銀超微粒子を形成する。この際に、各銀原子に配位したアミンが銀超微粒子の表面に保護膜を形成するため、一定数の銀原子が集合して銀超微粒子を形成した後は、当該アミンによる保護膜によってそれ以上の銀原子が結合することが困難になると考えられる。このため、錯化合物に含まれる銀化合物の分解と銀超微粒子の生成を、溶媒が存在せず銀原子が極めて高密度に存在する状態で行った場合でも、典型的には粒径が30nm以下で粒径の揃った銀超微粒子が安定して得られるものと考えられる。また、このように溶媒が存在せず、高密度に銀原子が存在する状態で銀超微粒子が生成するために、銀超微粒子として回収されない銀原子の割合を小さくすることが可能であり、使用する銀化合物に含まれる銀を高い歩留まりで銀超微粒子として回収することができる。また、得られる銀超微粒子の平均粒径が30nm以下であり、更には平均粒径が20nm以下であるため、その表面に設けられた保護膜が脱離することで室温付近の温度においても十分にその焼結が可能である。
【0031】
アルキルジアミンとアルキルアミンとを加えて銀化合物とアミンの錯化合物を生成させる際には、銀化合物に含まれる銀原子とアルキルアミンやアルキルジアミンの総量とのモル比を1:1〜4程度とすることが好ましい。銀化合物とアミンの錯化合物は、銀化合物に所定量のアミンを混合して、当該アミンの沸点より十分に低い温度で混合物が粘性を帯びるまで撹拌することにより生成する。また、銀化合物に対するアミンの配位反応は発熱を伴うため、銀化合物の分解反応開始を抑制するために必要に応じて室温以下に冷却して撹拌を行うことも好ましい。
【0032】
銀化合物とアミンの錯化合物の生成において、アミンの量が上記の範囲を超えて少なくなると、アミンが配位していない銀原子の割合が増加し、銀化合物とアミンの錯化合物を熱分解して得られる銀超微粒子が肥大化するようになる。また、銀原子の2倍量以上のアミンが存在することにより、ほぼ30nm以下の銀超微粒子が安定して得られるようになることから、この程度のアミン量により確実に全ての銀原子がアミンにより配位可能になるものと考えられる。アミンが銀原子の4倍量以上となると、反応系における銀原子の密度が低下して最終的な銀の回収歩留まりが低下すると共に環境負荷が増加するため、アミンの使用量は、銀原子の4倍量以下とすることが好ましい。なお、銀原子とアミンの総量のモル比を1:1程度とする場合には、全てのアミンが銀原子に配位して錯化合物を形成して反応系を保持する分散媒が存在しないことになるため、必要に応じてメタノール等の反応溶媒を混合することも好ましい。
【0033】
また、以下に説明するように、銀化合物との錯化合物を形成するためのアルキルジアミンとアルキルアミンは、共に沸点が100℃〜250℃の中短鎖アルキルアミン及び中短鎖アルキルジアミンを用いることが低温で焼結可能な被覆銀超微粒子が得られる点で好ましい。つまり、本発明により得られる銀超微粒子が低温で焼結を生じるためには、保護膜であるアミンが当該焼結温度において被覆銀超微粒子の表面から良好に離脱する必要があるが、蒸気圧の小さな(沸点が高い)アミンを用いた場合には、銀原子に対する配位結合が切れた後においてもアミン分子同士の凝集力によってアミンが銀超微粒子の周囲に残存することにより保護膜が除去されず、低温での銀超微粒子の焼結が困難になる。
【0034】
種々の検討を行った結果、250℃以下の沸点を有するアルキルジアミンとアルキルアミンを銀化合物との錯化合物を形成するためのアミンの主成分として使用することで、概ね150℃以下の温度でも十分な速度で離脱可能な保護膜が形成可能となり、低温で焼結可能な被覆銀超微粒子が得られることが明らかになった。なお、長鎖のアルキルアミンであるオレイルアミン(沸点349℃)等を保護膜に含むことで、得られる被覆銀超微粒子の非極性溶媒への分散性を高めることができるため、必要に応じて銀化合物との錯化合物を形成するためのアミンに混合して用いることが可能である。しかし、当該長鎖のアルキルアミンを用いた場合には、銀化合物との錯化合物の生成速度が低下すると共に、保護膜の離脱速度が低下するため、沸点が250℃以上のアミンの使用量は用いるアミンの総量の20モル%程度を上限とし、保護膜を形成する保護分子アミンの主成分として80モル%以上を250℃以下の沸点を有するアルキルジアミンとアルキルアミンにすることが好ましい。この場合には、残部のアミンとしてより低沸点のものを使用することが、銀超微粒子の焼結温度の低温下の点で好ましい。
【0035】
また、100℃以下の沸点を有するアルキルジアミンとアルキルアミンを銀化合物との錯化合物を形成するためのアミンとして使用した場合には、銀超微粒子の保護膜におけるアミン分子間の凝集力が小さくなり、特に錯化合物に含まれる銀化合物を熱分解する際に保護膜が不安定となり生成する銀微粒子の粗大化を生じる点で、100℃以上の沸点を有するアルキルジアミンとアルキルアミンが銀化合物との錯化合物を形成するためのアミンとして好ましい。
【0036】
また、上記沸点が100〜250℃のアミンを用いる際に、特に沸点が180℃以下の分子量の小さなアミンを用いた場合には、得られた被覆銀超微粒子の分散媒への分散性が低下して使用される分散媒の種類に制限を生じ易くなる傾向が見られる。一方、沸点が180〜250℃のアミンを用いた場合には、得られた被覆超銀微粒子は多様な分散媒に対して良好な分散性を示す一方で、焼結温度が上昇する傾向を示す。このため、銀化合物との錯化合物を形成するためのアミンとして、沸点が100〜180℃のアミンと、沸点が180〜250℃のアミンを混合して用いることで、低温焼結性と分散媒への分散性を両立させることが望ましい。また、この際に沸点が180〜250℃のアミンがアミン総量の2〜30モル%とすることが低温焼結性と分散媒への分散性を良好に両立させる点で好ましい。
【0037】
本発明においては、銀化合物との錯化合物を形成するためのアミンとしてアルキルアミンと共にアルキルジアミンを用いることを特徴としている。一般にアルキルジアミンはアルキルアミンよりも極性が強いため、銀化合物との錯化合物を形成する際の反応速度を速めると共に、各銀原子へのアミンの配位を確実に行える点で好ましい。また、銀化合物とアミンの錯化合物を加熱して銀化合物を熱分解する際に、アルキルジアミンを含む錯化合物では低温、且つ短時間で熱分解が完了すると共に、最終的に被覆銀超微粒子として得られる銀の歩留まりが向上する傾向が見られる。このように、銀化合物との錯化合物を形成するためのアミンとしてアルキルアミンと共にアルキルジアミンを用いることによる効果は、特に銀化合物としてシュウ酸銀等の配位高分子を形成するものを用いる場合に顕著に観察される。この理由は明らかでないが、シュウ酸銀等が相互に形成する配位結合をアルキルジアミンが効果的に切断等して、アミンが確実に銀原子に配位可能となるように作用するためと推察される。
【0038】
このため、特に被覆銀超微粒子の焼結温度を低くする目的で低沸点のアミンを用いる際には、適宜の割合でアルキルジアミンを混在させることで銀化合物の熱分解の際に銀原子からのアミンの脱離を防止することができる点で有効である。更に、アルキルジアミンを用いて形成した被覆銀超微粒子の保護膜は極性が強いため、極性溶媒への分散性を高める作用が期待できる。一方、アルキルジアミンが銀原子に配位結合する際の結合強度は、アルキルアミンの場合に比較して大きいため、過剰な量のアルキルジアミンを用いた場合には得られる被覆銀超微粒子の焼結温度が高くなる傾向が見られる。
【0039】
以上のことから、銀化合物との錯化合物を形成するためのアミンにおけるアルキルジアミンの割合は、その混合目的に応じて適宜決定されるが、被覆銀超微粒子の低温焼結性の確保のためには、好ましくは90モル%以下であり、更に好ましくは70モル%以下である。また、銀化合物との錯化合物を形成する際の反応速度を高めるため、及び錯化合物の熱分解を低温短時間で行う観点からは、10%モル%以上、好ましくは20%モル%以上のアルキルジアミンをアルキルアミンに混合して用いることが好ましい。
【0040】
なお、上記のとおり、本発明で使用するアルキルジアミンはその沸点が100℃〜250℃の範囲にあるものであれば良好に銀化合物との錯化合物を形成できるが、特にアルキルジアミンが有するアミノ基の一方が3級アミンとなっているものが好ましい。これは、アルキルジアミンの有する2つのアミノ基の両方が1級アミン、又は2級アミンである場合、双方のアミノ基がそれぞれ銀化合物の銀原子に配位する結果、非常に複雑なネットワークを形成して銀化合物の熱分解温度が高まる傾向があるためである。
【0041】
銀化合物とアミンの錯化合物を撹拌しながら加熱すると、青色光沢を呈する懸濁液となり、この懸濁液から過剰のアミン等を除去することで、本発明に係る被覆銀超微粒子が得られる。以下に説明するように、当該銀化合物とアミンの錯化合物を加熱することにより、銀原子に対するアミンの配位結合を維持したままで銀化合物が熱分解して金属銀を生成し、次にアミンが配位した銀原子が凝集してアミン保護膜で被覆された被覆銀超微粒子が得られると考えられる。
【0042】
銀化合物とアミンの錯化合物を加熱して被覆銀超微粒子を得る際の条件は、使用する銀化合物やアミンの種類に応じて、熱分解を行う際の温度、圧力、雰囲気などの条件を適宜選択できる。この際に、生成する被覆銀超微粒子が、熱分解を行う雰囲気との反応により汚染されたり、保護膜が分解されたりすることを防止する観点からは、Ar雰囲気などの不活性雰囲気内で銀化合物の熱分解を行うことが好ましい。一方、銀化合物としてシュウ酸銀を用いる場合には、シュウ酸イオンの分解によって発生する二酸化炭素により反応空間が保護されるため、大気中においてシュウ酸銀とアミンの錯化合物を加熱することでシュウ酸銀の熱分解が可能である。
【0043】
銀化合物の熱分解のために銀化合物とアミンの錯化合物を加熱する温度は、アミンの脱離を防止する観点から概ね使用するアミンの沸点以下の温度が好ましいが、本発明においては一般には80〜120℃程度に加熱することでアミンからなる保護膜を有する被覆銀超微粒子を得ることができる。なお、本発明において銀化合物としてシュウ酸銀を用いた場合、上記錯化合物に含まれるシュウ酸銀の分解は100℃程度で生じることが確認されている。このように錯化合物を形成することでシュウ酸銀の熱分解温度が100℃以上も低下する理由は明らかでないが、アミンとの錯化合物を生成する際に、純粋なシュウ酸銀が形成する配位高分子構造が切断されているためと推察される。
【0044】
以上説明したような機構により、シュウ酸銀等の銀化合物と、中短鎖アルキルアミン、および中短鎖アルキルジアミンの反応で生成したシュウ酸イオン・アルキルアミン・アルキルジアミン・銀錯化合物等を加熱により二酸化炭素を発生しながら熱分解し、同時に銀イオンが還元されることで、数nm〜数十nmの粒子径の被覆銀超微粒子を高収率で得ることができる。
【0045】
上記で説明したとおり、一般に、銀に対して過剰量のアルキルアミンを必要とする他の被覆銀超微粒子の合成法に比べて、本発明では、銀原子:アルキルアミンやアルキルジアミンの総量が1:1(モル比)でも被覆銀超微粒子が高収率で合成できるため、アルキルアミンやアルキジアミンの使用量を削減できる。また、シュウ酸イオンの熱分解で生じる二酸化炭素は、反応系外に容易に除去されるため、還元剤に由来する副生成物等がなく、反応系から被覆銀超微粒子の分離も簡単にでき、被覆銀超微粒子の純度も高く、廃棄物の削減や反応原料のリサイクルが容易になり、環境に負荷の少ない生産工程となる。
【0046】
また、従来のオレイルアミンなどの長鎖アルキルアミンと比較して、本発明におけるオクチルアミンなどの中短鎖アルキルアミンやN,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパンなどの中短鎖アルキルジアミンはシュウ酸銀との反応速度が速く、メタノールや水などの反応溶媒を必要とせず無溶媒で反応が短時間で完結し、シュウ酸イオン・アルキルアミン・アルキルジアミン・銀錯化合物が得られる。なお中短鎖アルキルジアミンは反応性が高いので、適切な比率で中短鎖アルキルアミンと反応させることが好ましい。反応させるアミンの中でアルキルジアミンの含有率はモル比で90%以下が好ましい。より好ましくは70%以下が好ましい。さらに好ましくは50%以下が好ましい。無溶媒で実施できるため、被覆銀超微粒子の製造において物質消費量を大きく削減できる。
【0047】
これまで、オレイルアミンを多量に含む脂肪族アミン銀錯化合物は、100℃よりも低温では、その熱分解速度が遅く不十分になるため、被覆銀超微粒子の収量の低下や得られた被覆銀超微粒子の溶剤への分散性が低下する恐れがあった。実際に、長鎖オレイルアミンを大量に含む脂肪族アミン銀錯化合物の最適な熱分解温度は150℃であり、積極的な加熱工程が必要であるのみならず、150℃近辺、あるいは、それ以下の沸点の脂肪族アミンとを組み合わせた被覆銀超微粒子を合成するには加圧容器を使用しなければいけない等の課題がある。非極性溶剤への分散性が良好な被覆銀超微粒子を得るために、オレイルアミン:脂肪族アミン=1:2よりもオレイルアミンの混合モル比を多くする必要がある。一方で、高沸点のオレイルアミン(沸点349℃)を多量に含んだ被覆銀超微粒子は非極性溶剤への分散性は向上するが、逆に、被覆銀超微粒子どうしの120℃以下の低温焼結は困難になる。
【0048】
一方、本発明においては、N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン(沸点136℃)などの中短鎖アルキルジアミンとオクチルアミン(沸点176℃)などの中短鎖アルキルアミンを用いることにより、シュウ酸イオン・アルキルアミン・アルキルジアミン・銀錯化合物は100℃より低温でも、短時間でその熱分解反応が進行し、被覆銀超微粒子が90%を超える高収率で合成できるようになった。この低温・短時間の熱分解反応が可能になったことから、沸点が100℃〜250℃の多様な中短鎖アルキルアミン及び中短鎖アルキルジアミン類で保護された被覆銀超微粒子の高効率合成が実現できる。また、従来よりも、更に、被覆銀超微粒子の合成における加熱等のエネルギー消費量が低減できる。
【0049】
このように生成される保護分子であるアミンに覆われた被覆銀超微粒子では、実施例に基づいて表1で説明するように、熱重量測定において160℃まで加熱した際に保護分子の30重量%以上が脱離するものであって、120℃においては数分間で焼結して金属光沢を示し、100℃でも1時間以内で焼結して金属光沢を示すものである。また、特に熱重量測定において160℃まで加熱した際に保護分子の50重量%以上が脱離するものを用いることで、20℃においても焼結して金属光沢を示すなど、極めて焼結性に優れた被覆銀超微粒子を提供することができる。これは、低温で脱離可能な保護被膜で銀超微粒子を被覆することで、室温程度の低い温度においても保護膜が銀超微粒子から脱離して銀超微粒子が露出することにより、銀超微粒子の表面が接触して焼結が生じることで金属皮膜が形成可能となるものと考えられる。
【0050】
これに対し、熱重量測定において160℃まで加熱した際の保護分子の脱離率が30重量%に満たない従来の被覆銀超微粒子においては、100℃程度の温度において金属光沢を示すためには長時間の焼結時間が必要となり、耐熱性の低い樹脂基板上に金属皮膜を形成する点で生産性に問題を有する。
【0051】
本発明に係る被覆銀超微粒子は、適宜の溶剤に分散可能であって、室温で長期間の保存が可能である。特に、先に説明したように、本発明においては比較的分子量の小さな中短鎖アルキルアミンや、極性の強い中短鎖アルキルジアミンを用いて銀超微粒子を被覆することを特徴としているため、極性溶剤への親和性が増大し、ブタノール等のアルコール溶剤、あるいはオクタンなどの非極性溶剤とアルコール溶剤の混合溶剤にも良好に分散できるため、その使用目的に応じて適宜の溶剤に分散して用いることができる。また、本発明に係る被覆銀超微粒子を大気等の気相に晒した場合には、保護被膜を構成するアミンが脱離して銀超微粒子間で焼結が開始するが、適切な分散媒中に分散させることにより当該アミンの脱離が抑制されて、被覆銀超微粒子として長期間の保存が可能である。
【0052】
これに対してナノサイズの被覆銀超微粒子が凝集しないようにする保護分子として、長鎖アルキルアミンのみ、あるいは、これを大量に含有した被覆銀超微粒子では、極性溶媒に対する分散性が著しく減少する。一方で、本発明におけるシュウ酸イオン・中短鎖アルキルアミン・中短鎖アルキルジアミン・銀錯化合物の低温熱分解で生じた被覆銀超微粒子は、特に、中短鎖アルキルアミンより極性が強い中短鎖アルキルジアミンを含むことにより極性溶剤への親和性が増大するため、ブタノール等のアルコール溶剤、あるいはオクタンなどの非極性溶剤との混合溶剤にも良好に分散できるようになる。極性溶剤、あるいは極性と非極性の混合溶剤への分散性に優れた被覆銀超微粒子は、その分散媒の種類、その組み合わせおよび混合比等の豊富なバリエーションの適切な選択により、その揮発性や粘度の調整などが容易となり、インクジェットなど様々な印刷技術で利用可能なインクの製造に好適となる。
【0053】
被覆銀超微粒子が150℃以下、さらには120℃以下の低温でもその保護分子が除去され、お互いが焼結し良好な導電性を発現するためには、250℃以下の沸点である中短鎖アルキルアミン及び中短鎖アルキルジアミンの組み合わせで被覆銀超微粒子を合成することが望まれる。中短鎖アルキルアミン単独で被覆銀超微粒子を製造する熱分解の反応温度は、アルキルジアミンと組み合わせた時よりも高い温度と長い反応時間が必要である。120℃以下で焼結可能な被覆銀超微粒子を得るための中短鎖アルキルアミンとしては、ドデシルアミン(248℃)やオクチルアミン(176℃)などが挙げられる。このように100℃〜250℃の沸点の中短鎖アルキルアミンや中短鎖アルキルジアミンを用いて合成された被覆銀超微粒子は、耐熱性の低い樹脂基板等への導電性被膜・配線形成材料として優れている。
【0054】
銀超微粒子は黄色の鮮明な色材として期待されているが、従来一般に、その表面プラズモンバンドの極大波長が400nmよりも長波長に現れるため、鮮明な黄色の色剤として課題がある。これに対し、本発明のシュウ酸イオン・アルキルアミン・アルキルジアミン・銀錯化合物の熱分解では、表面プラズモンバンドの極大波長が400nmよりも短波長にある被覆銀超微粒子を得ることが容易であり、装飾品等の色材としても有用である。
【0055】
本発明に係る被覆銀超微粒子が400nmよりも短波長側に表面プラズモンバンドの極大波長を有することは、当該銀超微粒子を構成する銀原子が電気的に中性な金属銀からなることを示しており、被覆を構成するアミンが配位結合により金属銀に結合していることを示すものである。本発明においては、このように保護膜を形成するアミンと銀超微粒子の結合を弱い結合により構成すること、及び、保護膜を形成するアミンを100℃〜250℃の沸点を有するアルキルアミンやアルキルジアミンに特定することにより、低温で容易に脱離可能な保護膜を銀超微粒子の表面に形成することが可能となった。
【0056】
本発明に係る被覆銀超微粒子を適宜の揮発性の分散媒に分散させた分散液を用いて、スピンコート法やインクジェット法によって所望の基体上に塗布を行い、120℃程度以下の適宜の温度に晒すことによって、分散媒を揮発させ被覆銀超微粒子の保護膜を形成するアミンを離脱させることにより銀超微粒子が焼結し、当該基体上に金属銀の薄膜が形成される。この現象を利用することで、被覆銀超微粒子が適宜の分散媒に分散した分散液をインクとして、金属薄膜を所望の基体上に印刷により形成することが可能である。
【0057】
本発明に係る被覆銀超微粒子を分散媒として用いられる溶剤等に分散させる際には、銀超微粒子の保護膜を脱離させないような条件で、保護膜を形成する際に用いた過剰のアルキルアミン等を除去すると共に使用する溶剤に置換することで、被覆銀超微粒子が分散した分散液を得ることが好ましい。特に、本発明に係る被覆銀超微粒子を大気等に晒した場合には、低温でもその保護膜が脱離して銀超微粒子の凝集と焼結が開始されるため、被覆銀超微粒子をアルキルアミン等から適宜の溶剤に置換する際には、被覆銀超微粒子が直接大気等に晒されないような条件を選択して置換を行うことが好ましい。典型的には、銀化合物とアミンの錯化合物を加熱して銀化合物を熱分解して得た被覆銀超微粒子を遠心分離、メタノールなどで溶媒洗浄した後、更に分散媒として用いる溶剤を加えて分散液とすることが望ましい。また、被覆銀超微粒子を生成する際に用いたアミンが被覆銀超微粒子の分散液に残留してもよい場合には、銀化合物とアミンの錯化合物から被覆銀超微粒子を得る際に反応溶媒として予めインクの分散媒を加えておけば簡便に被覆銀超微粒子の分散液を得ることができる。
【0058】
被覆銀超微粒子の分散液における被覆銀超微粒子の含有割合は、その使用目的により適宜決定されるが、被覆銀超微粒子が30重量%以上の高密度で分散する分散液であっても、室温で1ヶ月以上安定に保存可能である。
【0059】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
(シュウ酸銀)
シュウ酸銀は、銀含有率が高く、通常200℃で分解する。熱分解すると、シュウ酸イオンが二酸化炭素として除去され金属銀がそのまま得られるため、還元剤を必要とせず、不純物が残留しにくい点で有利である。このため、本発明において被覆銀超微粒子を得るための銀の原料となる銀化合物としてはシュウ酸銀が好ましく用いられるため、以下、銀化合物としてシュウ酸銀を用いた場合について本発明を説明する。ただし、上記のように、銀化合物と所定のアミンとの間で生成する錯化合物において、当該アミンが銀原子に配位した状態で熱分解可能な銀化合物であればシュウ酸銀に限定されずに用いられることはいうまでもない。
【0060】
本発明の実施に用いられるシュウ酸銀として制限はなく、例えば、市販のシュウ酸銀を用いることができる。また、シュウ酸銀のシュウ酸イオンに20モル%以下の炭酸イオン、硝酸イオン、酸化物イオンの1種以上で置換しても良い。特に、シュウ酸イオンの20モル%以下を炭酸イオンで置換した場合、シュウ酸銀の熱的安定性を高める効果がある。置換量が20モル%を超えると前記錯化合物が熱分解しにくくなる場合がある。
(中短鎖アルキルジアミン、中短鎖アルキルアミン)
特に、沸点が250℃以下のアルキルアミン及びアルキルジアミンを含んだシュウ酸イオン・アルキルアミン・アルキルジアミン・銀錯化合物では、100℃以下の低い温度での熱分解で被覆銀超微粒子を高効率で得ることができる。
【0061】
中短鎖アルキルジアミンは、特に、その構造に制限がないが、シュウ酸銀と反応して、前記錯化合物を形成するため(銀イオンに配位するため)、少なくとも1つのアミノ基が一級アミノ基であるRNH2(Rは炭化水素鎖)または二級アミノ基であるR1R2NH(R1、R2は炭化水素鎖で同じであっても異なっていてもよい)であることが望ましい。
中短鎖アルキルジアミンとしては、前記錯化合物の熱分解温度を考慮すれば100℃以上の沸点であること、また、得られた被覆銀超微粒子の低温焼結性を考慮すれば、250℃以下の沸点であることが考慮される。例えば、エチレンジアミン(118℃)、N,N−ジメチルエチレンジアミン(105℃)、N,N’−ジメチルエチレンジアミン(119℃)、N,N-ジエチルエチレンジアミン(146℃)、N,N’−ジエチルエチレンジアミン(153℃)、1,3−プロパンジアミン(140℃)、2,2-ジメチル−1,3−プロパンジアミン(153℃)、N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン(136℃)、N,N’−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン(145℃)、N,N−ジエチル−1,3−ジアミノプロパン(171℃)、1,4−ジアミノブタン(159℃)、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン(193℃)、1,6−ジアミノヘキサン(204℃)、N,N’−ジメチル−1,6−ジアミノヘキサン(228℃)、1,7−ジアミノヘプタン(224℃)、1,8−ジアミノオクタン(225℃)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
中短鎖アルキルアミンは、特に、その構造に制限がないが、シュウ酸銀と反応して、前記錯化合物を形成するため(銀イオンに配位するため)、一級アミノ基であるRNH2(Rは炭化水素鎖)または二級アミノ基であるR1R2NH(R1、R2は炭化水素鎖で同じであっても異なっていてもよい)であることが望ましい。また、中短鎖アルキルアミンとしては、前記錯化合物の熱分解温度を考慮すれば100℃以上の沸点であること、また、得られた被覆銀超微粒子の低温焼結性を考慮すれば、250℃以下の沸点であることが考慮される。例えば、2−エトキシエチルアミン(105℃)、ジプロピルアミン(107℃)、ジブチルアミン(159℃)、ヘキシルアミン(131℃)、シクロヘキシルアミン(134℃)、ヘプチルアミン(155℃)、3−ブトキシプロピルアミン(170℃)、オクチルアミン(176℃)、ノニルアミン(201℃)、デシルアミン(217℃)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(217℃)、ドデシルアミン(248℃)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
中短鎖アルキルジアミン及び中短鎖アルキルアミンの脂肪族炭化水素鎖において飽和脂肪族アミンおよび不飽和脂肪族アミンが挙げられるが、いずれかに限定されるものではない。
【0064】
複数の異なる中短鎖アルキルアミン及び中短鎖アルキルジアミンを同時にシュウ酸銀と反応させ、生成したシュウ酸イオン・アルキルアミン・アルキルジアミン・銀錯化合物の熱分解を行えば、複数の異なるアルキルアミンやアルキルジアミンで保護された被覆銀超微粒子が得られる。その中短鎖アルキルアミンや中短鎖アルキルジアミンの種類、数および混合比等を適切に選択することにより、非極性または極性溶剤への分散性を調整することができる。
【0065】
250℃以下の沸点の中短鎖アルキルアミンや中短鎖アルキルジアミンで保護された被覆銀超微粒子は、耐熱性の弱い樹脂基板上でも、例えば、120℃以下の加熱で、その保護分子が除去され、被覆銀超微粒子同士が焼結し、良好な導電性を発現させることが可能である。
【0066】
120℃以下の低温焼結性と溶媒への分散性に優れた被覆銀超微粒子が得られる限りにおいては、シュウ酸イオン・アルキルアミン・アルキルジアミン・銀錯化合物の熱分解反応において、長鎖アルキルアミンを添加して実施することは特に制限を設けないが、使用する中短鎖アルキルアミン及び中短鎖アルキルジアミンの総計に対する長鎖アルキルアミンのモル含有率が20モル%以下であれば、低温焼結で得られた銀被着材は実用的な導電性を示したので、アルキルアミンおよびアルキルジアミンの総計に対して20モル%以下の長鎖アルキルアミンを使用する場合も、本発明の範囲内である。
【0067】
本発明における、シュウ酸イオン・アルキルアミン・アルキルジアミン・銀錯化合物の調製においては、シュウ酸銀とアルキルアミン及びアルキルジアミンの総量のモル比は1:2〜1:4であることが望ましいが、それに限定されるものではない。シュウ酸銀にアルキルアミン及びアルキルジアミンのアミノ基が、銀原子:アミノ基=1:1で結合し、前記シュウ酸イオン・アルキルアミン・アルキルジアミン・銀錯化合物が生成する。従って、シュウ酸銀と中短鎖アルキルアミン及び中短鎖アルキルジアミンの総量の化学量論比(モル比)は1:2となる。シュウ酸銀と中短鎖アルキルアミンのみを使用する場合にも化学量論比(モル比)は1:2となる。そのため、シュウ酸銀に対して中短鎖アルキルアミン及び中短鎖アルキルジアミンのモル比が2倍以下になると、未反応のシュウ酸銀が残るため、均一な前記錯化合物の低温分解が阻害され、被覆銀超微粒子の収率が低下する場合がある。シュウ酸銀と中短鎖アルキルアミンのみを使用する場合にも、同様である。逆に、4倍以上であっても、前記錯化合物の均一熱分解は進むが、中短鎖アルキルアミンおよび中短鎖アルキルジアミンを無駄に使用するばかりか、廃棄物の増大に繋がるため経済性の面で好ましくない。シュウ酸銀と中短鎖アルキルアミンのみを使用する場合にも、同様である。
【0068】
シュウ酸イオン・アルキルアミン・アルキルジアミン・銀錯化合物を生成させるために、メタノールや水などの反応溶媒を用いることは特に制限はないが、沸点が250℃以下の中短鎖アルキルアミンや中短鎖アルキルジアミンを用いた場合、メタノールなどの溶媒を用いることなく無溶媒でも、前記錯化合物が生成する。また、こうして生じた前記錯化合物は、その低温熱分解で直接、被覆銀超微粒子へ変換できる。このように、本発明による被覆銀超微粒子の製造は無溶媒で実施できるため、物質消費を低減した製造が可能である。作製した被覆銀超微粒子の単離法は、特に制限はないが、例えば、熱分解後の反応混合物に、メタノールや水などを少量加え、被覆銀超微粒子を余剰のアルキルアミン及びアルキルジアミンから遠心分離により粉体として単離できる。大量の有機溶媒中で被覆銀超微粒子を合成する方法に比べ、本発明では、無溶媒合成であり、さらに還元剤を使用しないため、被覆銀超微粒子の単離作業に用いるメタノール等の有機溶媒の量を大幅に削減できる特長がある。
【0069】
また、本発明においては、生成する被覆銀超微粒子の分散媒への分散性を向上させるための分散剤として、例えばオレイン酸などの脂肪酸をアミンに混合して用いてもよい。ただし、過剰な量の脂肪酸を使用した場合には、被覆銀超微粒子からの保護被膜の脱離温度が上昇する傾向が見られるため、その添加量は反応系に含まれる銀原子に対して5モル%以下とすることが望ましい。
【0070】
以上のように、本発明の被覆銀超微粒子の製造方法は、シュウ酸銀と中短鎖アルキルジアミンと中短鎖アルキルアミンとを反応させてその錯化合物を生成させた後、この錯化合物を低温熱分解させることで、溶剤への分散性と低温焼結性に優れた被覆銀超微粒子を高収率で得ることができる。また、極めて単純な製造プロセスで被覆銀超微粒子を製造することができる。さらには、得られた被覆銀超微粒子は粉体でも、溶剤に分散した状態でも長期に安定に保存できる。
【0071】
以下に、実施例として、被覆銀超微粒子の製造法及びその溶媒への分散性、低温焼結性などの評価を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0072】
N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン(東京化成、特級)2.04g(20.0 mmol)、n−オクチルアミン(花王、純度98%)1.94g(15.0 mmol)と、n−ドデシルアミン(関東化学、特級)0.93g(5.0 mmol)を混合し、この混合溶液にシュウ酸銀〔硝酸銀(関東化学、一級)とシュウ酸アンモニウム一水和物またはシュウ酸二水和物(関東化学、特級)から合成したもの〕6.08g(20.0mmol)を加え、3分間撹拌し、シュウ酸イオン・アルキルアミン・アルキルジアミン・銀錯化合物を調製した。これを95℃で20〜30分加熱撹拌すると、二酸化炭素の発泡を伴う反応が完結し、青色光沢を呈する懸濁液へと変化した。これにメタノール(関東化学、一級)10mLを加え、遠心分離により得られた沈殿物を自然乾燥すると、青色光沢の被覆銀超微粒子の固体物4.62g(銀基準収率97.0%)が得られた。
【0073】
[解析と評価]
得られた青色光沢の固体物について、粉末X線回折計(リガク MiniFlex II )により解析を行ったところ、粉末X線回折パターン(図1)から金属銀が生成していることが確認された。また、そのシグナル半値幅から、単結晶子サイズが4.0nmの被覆銀超微粒子であることが分かった。
【0074】
FT−IRスペクトル(日本分光 FT/IR−4100)から、得られた固体物にはアルキルアミン、アルキルジアミンが含有されていることが確認された。示差熱・熱重量分析(島津DTG−60により、80mL/分の合成空気気流中で10℃/分の速度で昇温)から、得られた固体物には、9.30重量%アミンが保護分子として含有されており(図2)、銀基準収率は97.0%であった。また、100℃以下でも保護分子であるアルキルアミンおよびアルキルジアミンの脱離に由来する大きな重量減少が見られた。このことから、低温焼結による導電性発現が十分期待できる試料であることが明らかである(実施例3参照)。
【0075】
得られた被覆銀超微粒子を透過型電子顕微鏡(FEI Co.,Model TECNAI−G2)で観察した。5〜15nm程度の球状粒子が観察された(図3)
【実施例2】
【0076】
実施例1で得られた被覆銀超微粒子の溶媒への分散性を評価した。その結果、n−ブタノール(関東化学、特級)及びn−ブタノールとn−オクタン(関東化学、特級)の混合溶媒に良好に分散した。そのn−ブタノールとn−オクタン混合溶媒分散溶液の動的光散乱粒度測定(大塚電子 ELS−Z2M)により、得られた被覆銀超微粒子は数平均粒子径18nmで良好に分散できることがわかった(図4)。また、得られた固体物から、30重量%あいはそれ以上の被覆銀超微粒子の分散液も調製でき、その分散液の紫外可視吸収スペクトル(島津UV3150)から、400nmよりも短波長の極大波長を有する被覆銀超微粒子に由来する表面プラズモンバンドも観測された。また、その分散液、例えば、40重量%の分散液は、室温で1ヶ月以上安定に保存できる。同様に粉体でも1ヶ月以上安定に保存できる。
【実施例3】
【0077】
実施例1で得られた被覆銀超微粒子の低温焼結性を評価した。実施例2で調製した被覆銀超微粒子のn−ブタノール分散液を用いて、PET(ポリエチレンテレフタレート)基板(富士フィルムアクシア(株)OHPシート)に被覆銀超微粒子のスピンコート膜を作製した。これを60、80、100、120、150℃で加熱焼成し、その電気抵抗(共和理研 K−705RS、四探針法)を測定した(図5、縦軸対数表示)。150℃焼成では、10分で体積抵抗率が10-5〜10-6 Ωcmの金属銀に近い良好な導電膜(金属光沢膜)が得られた(図5(a))。120℃では30分加熱で、100℃では40分加熱で10-5〜10-6 Ωcmに達した(図5(a))。80℃の低温焼成でも3時間加熱で〜10-5Ωcmを示す良好な導電膜が得られた(図5(b))。また、60℃加熱でもゆっくりであるが焼結は進み、15時間後には〜10-4Ωcmの良好な導電膜が得られた。
【実施例4】
【0078】
実施例2で調製した被覆銀超微粒子の分散液をポリエチレンフィルムにスピンコートし、100℃の温度で1〜2時間加熱すると、金属光沢を有するポリエチレフィルムが得られ、体積抵抗率が〜10-5 Ωcmの良好な導電性を示した。
【実施例5】
【0079】
実施例2で作製した被覆銀超微粒子の分散液にメッシュ状ポリエステル生地(糸の太さ;12.5μm、糸と糸の間隔;150μm、光透過率;80%)を浸し、分散媒を乾燥後、被覆銀超微粒子が付着した生地を100℃で1時間加熱すると銀光沢のメッシュ生地が得られた。その生地の導電性を測定したところ、抵抗率300mΩ/□の良好な光透過性メッシュ生地であることがわかった。
【実施例6】
【0080】
実施例2で調製した被覆銀超微粒子の分散液を薬包紙に塗布し、分散媒を乾燥後、100℃で1〜2時間加熱すると銀光沢の紙が得られた。その導電性を測定したところ、抵抗率600mΩ/□の良好な導電紙であることがわかった。
【実施例7】
【0081】
n−オクチルアミン2.16g(16.7 mmol)とn−ドデシルアミン0.624g(3.37 mmol)を混合し、この混合液にシュウ酸銀3.04 g(10.0 mmol)を加え、10分間撹拌し、シュウ酸イオン・アルキルアミン・銀錯化合物を調製した。これを100℃で60分加熱撹拌すると、青色光沢を呈する懸濁液へと変化した。これにメタノール5 mLを加え、遠心分離により得られた沈殿物を自然乾燥すると、青色光沢の被覆銀超微粒子の固体物2.25 g(銀基準収率94.5%)が得られた。
[解析と評価]
得られた青色光沢の固体物について、粉末X線回折計により解析を行ったところ、粉末X線回折パターン(図6)から金属銀が生成していることが確認された。また、そのシグナル半値幅から、単結晶子サイズが4.1nmの被覆銀超微粒子であることが分かった。得られた被覆銀超微粒子を透過型電子顕微鏡で観察した。10〜20nm程度の球状粒子が観察された(図7)。FT−IRスペクトルから得られた固体物にはアルキルアミンが含有していることが確認された。熱重量分析から、得られた固体物には9.30重量%アルキルアミンが保護分子として含有されており、使用したシュウ酸銀に対する銀基準収率は94.5%であることが明らかになった。
【実施例8】
【0082】
実施例7で得られた被覆銀超微粒子の溶媒への分散性を調べた結果、n-ブタノールとn-オクタンの混合溶媒に良好に分散した。その分散溶液の動的光散乱粒度測定により、得られた被覆銀超微粒子は数平均粒子径18nmで良好に分散できることが分かった(図8)。また、得られた固体物から、30重量%あいはそれ以上の被覆銀超微粒子の分散液も調製できる。その分散液の紫外可視吸収スペクトルから、400 nmよりも短波長の極大波長を有する被覆銀超微粒子に由来する表面プラズモンバンドも観測された。その分散液、例えば、40重量%の分散液は、室温で1ヶ月以上安定に保存できる。同様に粉体でも1ヶ月以上安定に保存できる。
【実施例9】
【0083】
実施例7で得られた被覆銀超微粒子の低温焼結性を調べた。実施例8で調製した被覆銀超微粒子のn-ブタノールとn−オクタン混合溶媒分散液を用いて、PET基板に被覆銀超微粒子のスピンコート膜を作製した。これを100、120℃で加熱し、その電気抵抗を調べた。120℃加熱では、40分で10-5〜10-6Ωcm程度の良好な導電膜(金属光沢膜)が得られた。100℃では120分加熱で10-5〜10-6 Ωcmに達した。
【実施例10】
【0084】
n−ヘキシルアミン5.78g(57.1mmol)とn−ドデシルアミン0.885g(4.77mmol)、N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン3.89g(38.1mmol)、オレイン酸(東京化成、>85.0%)0.251g(0.889mmol)を混合し、この混合液にシュウ酸銀7.60g(25.0mmol)を加え、約1時間撹拌すると、シュウ酸イオン・アルキルアミン・アルキルジアミン・銀錯化合物が生成し、粘性のある固体物へと変化した。これを100℃で10分加熱撹拌すると、二酸化炭素の発泡を伴う反応が完結し、青色光沢を呈する懸濁液へと変化した。これにメタノール10mLを加え、遠心分離により得られた沈殿物を分離し、もう一度、メタノール10mLを加え、沈殿物を撹拌し、遠心分離により得られた被覆銀超微粒子の沈殿物を得た。被覆銀超微粒子の沈殿物にn−オクタンとn−ブタノールの混合溶媒(体積比4:1v/v)を加えて撹拌することで、50重量%の被覆銀超微粒子が良好に分散する分散液を得た。また、この被覆銀超微粒子を熱重量分析した際の残留する銀固形成分の重量から、被覆銀超微粒子の銀基準収率は97.0%であった。
【0085】
上記の混合溶媒分散液を基板(銅メッシュ・マイクログリッド)に垂らして乾燥させた後、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノジーズ SU1510)で観察した結果を図10に示す。5〜20nm程度の球状の被覆銀超微粒子が観察された。
【実施例11】
【0086】
実施例10で得られた被覆銀超微粒子のn−オクタンとn−ブタノール(体積比4:1v/v)混合溶媒への分散液の分散性を動的光散乱粒度測定により調べたところ、得られた被覆銀超微粒子は数平均粒子径12nmで良好に分散できることが分かった。また、その分散液の紫外可視吸収スペクトルから、400nmよりも短波長の極大波長を有する被覆銀超微粒子に由来する表面プラズモンバンドが観測された。また、その分散液は、室温で1ヶ月以上安定に保存できた。
【実施例12】
【0087】
実施例10で作製した被覆銀超微粒子の分散液にメッシュ状ポリエステル生地(糸の太さ;12.5μm、糸と糸の間隔;150μm、光透過率;80%)を浸し、分散媒を乾燥後、被覆銀超微粒子が付着した生地を80℃で1時間加熱すると銀光沢のメッシュ生地が得られた(図9)。その生地の導電性を測定したところ、抵抗率300mΩ/□の良好な光透過性メッシュ生地であることがわかった。
【実施例13】
【0088】
実施例10で得られた被覆銀超微粒子の低温焼結性を調べるために、実施例10で調製した被覆銀超微粒子のn−オクタンとn−ブタノール混合分散液を用いて、PET基板に被覆銀超微粒子のスピンコート膜を作製した。これを室温(20℃)で放置し、その電気抵抗(四探針法)を測定した(図11、縦軸対数表示)。1〜2時間で急激に抵抗値が減少し、5時間後には体積抵抗率が10-4Ωcm程度になり、十分な導電性を示すようになった。この塗布膜を100℃でさらに加熱すると、30分以内には体積抵抗率10-5〜10-6 Ωcm程度に達し、導電性がさらに向上した。
【実施例14】
【0089】
実施例10で調製した被覆銀超微粒子のn−オクタンとn−ブタノール混合分散液を用いて、PET基板上へのスピンコート直後の被覆銀超微粒子青色膜(塗布膜A)を原子間力顕微鏡(AFM)観察(島津SPM−9600)したところ、5〜20nm程度の球状の銀超粒子が観察された。また、塗布膜Aを室温(20℃)で24時間放置して銀色の焼結膜(塗布膜B)となったものを同様にAFM観察したところ、わずかであるが塗布膜Bでは塗布膜Aに比べて粒子成長(20〜30nm)が進むことが観察された。また、実施例13に示した100℃加熱で導電性が急激に向上した塗布膜Cでは、塗布膜A、Bに比べて粒子どうしの焼結が進み、平均粒径が約200nm程度の粒子からなる金属皮膜が形成されていることがAFM観察から分かった。
<比較例1>
【0090】
特許文献2の実施例3に記載の方法により作製した被覆銀超微粒子の低温焼結性を評価した。その結果、特許文献2の実施例3により合成した被覆銀超微粒子のn−オクタン分散液を用いてPET基板に作製したスピンコート膜を、80℃で3時間加熱したが、被覆銀超微粒子の焼結は見られず導電性は示さなかった。100及び120℃の場合でも、2時間加熱では殆ど導電性は発現しなかった。
【0091】
この結果を、本発明の実施例3、9、13と比較すると、長鎖アルキルアミンであるオレイルアミンを含まない本発明のアルキルアミン及びアルキルジアミンのみで保護された被覆銀超微粒子塗布膜の低温焼結性は特許文献2の実施例3記載の方法により合成した被覆銀超微粒子よりも、その焼結温度、焼結速度の点で、大きく改善されていることがわかる。
<比較評価>
【0092】
表1には、本発明の実施例1、10で作製した青色光沢を呈する被覆銀超微粒子を、それぞれ実施例2、10に記載した方法でn−オクタンとn−ブタノールの混合液に30重量%の割合で分散させた後、その分散液を用いてPET基板に作製した被覆銀超微粒子のスピンコート膜を、20〜120℃の各温度で一定に保った送風恒温器中で保持した際に、被覆銀超微粒子が示す焼結性についての評価結果を記載した。焼結性の評価は、青色光沢を呈する被覆銀超微粒子膜が焼結により銀色の金属光沢を示すまでの時間を評価した。また、比較のために、特許文献2の実施例1、3に記載された条件で作製した被覆銀超微粒子を、n−オクタンまたはトルエンに30重量%の割合で分散させた後、その分散液を用いてPET基板上へスピンコートして同様に評価した評価結果を表1に記載した。
【0093】
また、特許文献2の実施例1、3と本発明の実施例10で得られたそれぞれの被覆銀超微粒子について、本発明の実施例1についてと同様に示差熱・熱重量分析(島津DTG−60により、80mL/分の合成空気気流中で10℃/分の速度で昇温)を行った結果をそれぞれ図12〜14に示す。また、各被覆銀超微粒子の熱重量分析において160℃まで加熱した際の重量減少量を、各被覆銀超微粒子が有していた保護膜の総重量(400〜500℃まで加熱して重量が一定になった際の重量減少量)で除した値を保護膜の重量減少率として求め、焼結性の評価結果と共に表1に記載した。
【0094】
【表1】
【0095】
いずれの被覆銀超微粒子においても加熱開始と共に保護膜の脱離に伴う重量減少を生じるが、本発明の実施例1、10で得られた被覆銀超微粒子においては、特許文献2に記載された被覆銀超微粒子に比べて速い速度で重量減少を生じることが明らかである。そして、表1に示すとおり、低い温度で重量減少の大きな被覆銀超微粒子は、より低い温度において短時間で焼結を生じることが観察された。
【0096】
本発明に係る種々の被覆銀超微粒子について示差熱・熱重量分析と焼結性の評価を行った結果、80mL/分の合成空気気流中で10℃/分の割合で160℃まで昇温した際に保護膜の30重量%以上が脱離する被覆銀超微粒子を用いることで、基体にスピンコートした被覆銀超微粒子を1時間程度の120℃加熱により焼結させて銀の皮膜を生成できることが明らかになった。また、同様の測定条件で保護膜の35重量%以上が脱離する被覆銀超微粒子を用いた場合には、100℃程度に加熱することで速やかに焼結を生じて銀の皮膜を生成できることが明らかになった。更に、同様の測定条件で保護膜の40重量%、望ましくは50重量%以上が脱離する被覆銀超微粒子を用いた場合には、加熱により速やかに焼結を生じると共に、特に加熱を行わずに室温の環境に24時間程度放置することによっても焼結を生じて銀の皮膜を生成することが可能であり、耐熱性が極めて低い基体や、大型であるなどの理由で加熱が困難な基体等に対しても被覆銀超微粒子の分散液を塗布して乾燥させるのみで銀皮膜を形成させることができることが明らかになった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径が30nm以下であり、保護分子により覆われた被覆銀超微粒子であって、熱重量測定において160℃まで加熱した際の当該保護分子の重量減少率が30%以上であることを特徴とする被覆銀超微粒子。
【請求項2】
平均粒径が30nm以下であり、保護分子により覆われた被覆銀超微粒子であって、100℃以下の温度において1時間以下で焼結して銀色の金属膜を形成可能であることを特徴とする被覆銀超微粒子。
【請求項3】
前記保護分子は、沸点が100℃〜250℃の範囲内にある中短鎖アルキルアミンと、沸点が100℃〜250℃の範囲内にある中短鎖アルキルジアミンを主成分として含むことを特徴とする請求項1または2に記載の被覆銀超微粒子。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の被覆銀超微粒子を分散媒に分散させたことを特徴とする被覆銀超微粒子分散液。
【請求項5】
加熱により分解して金属銀を生成する銀化合物と、沸点が100℃〜250℃である中短鎖アルキルアミンおよび沸点が100℃〜250℃である中短鎖アルキルジアミンとを混合して、当該銀化合物と当該アルキルアミンおよびアルキルジアミンを含む錯化合物を調製する第一行程と、当該錯化合物を加熱して当該銀化合物を熱分解させる第二行程を含むことを特徴とする被覆銀超微粒子の製造方法。
【請求項6】
前記加熱により分解して金属銀を生成する銀化合物としてシュウ酸銀を用いることを特徴とする請求項5に記載の被覆銀超微粒子の製造方法。
【請求項7】
前記銀化合物に混合されるアルキルアミンおよびアルキルジアミンにおいて、アミンの総量に対するアルキルジアミンの含有率が10〜90モル%であることを特徴とする請求項5または6に記載の被覆銀超微粒子の製造方法。
【請求項8】
前記第一行程において、さらに反応系に含まれる銀原子に対して5モル%以下の脂肪酸を混合することを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の被覆銀超微粒子の製造方法。
【請求項1】
平均粒径が30nm以下であり、保護分子により覆われた被覆銀超微粒子であって、熱重量測定において160℃まで加熱した際の当該保護分子の重量減少率が30%以上であることを特徴とする被覆銀超微粒子。
【請求項2】
平均粒径が30nm以下であり、保護分子により覆われた被覆銀超微粒子であって、100℃以下の温度において1時間以下で焼結して銀色の金属膜を形成可能であることを特徴とする被覆銀超微粒子。
【請求項3】
前記保護分子は、沸点が100℃〜250℃の範囲内にある中短鎖アルキルアミンと、沸点が100℃〜250℃の範囲内にある中短鎖アルキルジアミンを主成分として含むことを特徴とする請求項1または2に記載の被覆銀超微粒子。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の被覆銀超微粒子を分散媒に分散させたことを特徴とする被覆銀超微粒子分散液。
【請求項5】
加熱により分解して金属銀を生成する銀化合物と、沸点が100℃〜250℃である中短鎖アルキルアミンおよび沸点が100℃〜250℃である中短鎖アルキルジアミンとを混合して、当該銀化合物と当該アルキルアミンおよびアルキルジアミンを含む錯化合物を調製する第一行程と、当該錯化合物を加熱して当該銀化合物を熱分解させる第二行程を含むことを特徴とする被覆銀超微粒子の製造方法。
【請求項6】
前記加熱により分解して金属銀を生成する銀化合物としてシュウ酸銀を用いることを特徴とする請求項5に記載の被覆銀超微粒子の製造方法。
【請求項7】
前記銀化合物に混合されるアルキルアミンおよびアルキルジアミンにおいて、アミンの総量に対するアルキルジアミンの含有率が10〜90モル%であることを特徴とする請求項5または6に記載の被覆銀超微粒子の製造方法。
【請求項8】
前記第一行程において、さらに反応系に含まれる銀原子に対して5モル%以下の脂肪酸を混合することを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の被覆銀超微粒子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図3】
【図7】
【図9】
【図10】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図3】
【図7】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−265543(P2010−265543A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47170(P2010−47170)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年9月4日 錯体化学会発行の「第59回錯体化学討論会講演要旨集」に発表
【出願人】(304036754)国立大学法人山形大学 (59)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年9月4日 錯体化学会発行の「第59回錯体化学討論会講演要旨集」に発表
【出願人】(304036754)国立大学法人山形大学 (59)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]