説明

被覆電線断線箇所検出装置

【課題】被検電線の断線箇所を検出、同定できるようにする。
【解決手段】検査対象の被覆電線である被検電線31にパルスPoを印加するパルス生成回路13を設ける。被検電線31に対し容量結合する容量結合プローブ15を設け、当該容量プローブ15に現れる微分パルスPdを検出し、当該微分パルスPdが失われた時に報知手段17によりその旨報知させる微分パルス検出回路16を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力や電気信号を伝達する導体線であって、特に被覆されているために外部からは断線箇所が視認できない被覆電線の断線箇所を検出するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に被覆電線が断線しているか否かだけを検査するのであれば、そうした装置は従来から数多提案されている。逆に、特殊な検査装置は必要としなくても、電流が通じていないとか、電気信号が伝達していないとかは、負荷の状態から直感的に分ることが多い。ただ、電気信号を伝達する被検電線の場合には、装置筐体内に組まれていて直感的にはどの線であるのか分かり難いこともあり、そのために、例えば下記特許文献1,2に開示されているように、検査すべき被覆電線(以下、被検電線)に対して固定的に断線検出回路を配線接続し、断線していなければ検出する筈の信号を検出しない場合、当該被検電線の断線と判断するようなものも多くあった。
【0003】
断線検出装置でなくとも、古くから周知のクランプ電流計ならば、被検電線中を流れる電流の大きさは磁気結合原理により非接触で電気的に読み取ることができ、従って被検電線が断線していれば、検出電流値云々以前に、流れている筈の電流が全く検出されないため、被検電線が断線していると判断することができる。
【0004】
クランプ電流計の構造ももとより周知であるが、例えば下記特許文献3中、特に図4にはクランプ部の開閉状態の双方が分り易く示されている。念のため、説明するならば、洗濯ばさみと同じ原理の構造になっていて、一対のレバー装置(ノブ・アーム)を指で互いに相寄るように押し挟むと、支点を挟んでノブ・アームとは反対側にあり、閉じているときには相まって円環状をなす一対のクランプ・アームが互いに相離れるように押し開かれて当該円環の一部が割れるかのようになり、その割れて開いた口から被検電線を当該一対のクランプ・アームで囲まれる空間内に入れ、その後にノブ・アームの押し挟みを解いてクランプ・アームの開いていた口を閉じることで、一対のクランプ・アームで構成される円環状の磁性リングが閉成し、これが当該リングの中心孔を貫通する被検電線と非接触で磁気結合するようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-240810号公報
【特許文献2】特開平07-141583号公報
【特許文献3】特開2008-267951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、公知の断線検出装置ないしクランプ電流計に頼るような常套的手法では、被検電線が断線しているかどうかは分っても、被検電線の全長に亘り、どこで断線しているかは殆どの場合、分らない。被覆が邪魔をして視認不能なことはもとより、例え指で慎重に触りながら被検電線の長さ方向に沿って探っていっても、断線箇所が不明なことも多々ある。そのため、断線復旧に携わる作業者には相当な労力と作業時間を嫁すこととなっていた。
【0007】
また、特許文献1,2に開示されているような断線検出装置は、被検電線を含む回路に固定的なものであって可搬性はなく、あちこちの被検電線を回って次々と検査して行くということはできず、汎用性や機動力に乏しい。本発明はこのような従来の実情に鑑みてなされたもので、被検電線が断線しているかどうかだけではなく、その断線箇所を検出、同定できるようにせんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するため、
検査対象の被覆電線である被検電線にパルスを印加するパルス生成回路と;
被検電線に対し容量結合する容量結合プローブと;
この容量結合プローブに現れる微分パルスを検出し、当該微分パルスが失われた時に報知手段によりその旨報知させる微分パルス検出回路と;
を有する被覆電線断線箇所検出装置を提案する。
【0009】
その上で、本発明ではさらに、ノイズ耐性を上げて高感度化し、検出信頼性を高める工夫として、上記の容量結合プローブを主容量結合プローブとし、この主容量結合プローブとは別に被検電線に容量結合する補助容量結合プローブも設け、主容量結合プローブと補助容量結合プローブのそれらに現れる同相信号成分をノイズ低減回路で打ち消す方向に作用させる構成も提案する。このようにすると、上記のパルス生成回路が被検電線にパルスを印加している部位から見て相対的に近い位置にて補助容量結合プローブを被検電線に容量結合させ、その位置より遠い位置にて主容量結合プローブを被検電線に容量結合させた状態で、当該主容量結合プローブからの微分パルスが失われた時にのみ現れるノイズ低減回路の出力信号に基づき、微分パルス検出回路が微分パルスが失われたと判断して報知手段によりその旨報知させるようにすることができる。
【0010】
ここで、ノイズ低減回路は一般に差動増幅器で簡単に構成でき、その正相入力と逆相入力の中の一方の入力に主容量結合プローブを、他方に補助容量結合プローブを接続させることで、それらに現れる同相信号成分を除去した結果としての出力信号をノイズ低減回路出力に得ることができる。
【0011】
なお、パルス生成回路の出力するパルスは、被検電線にあって被覆で覆われていない露出部分(一般には被検電線の長さ方向端末において負荷や他の回路等に接続している部分)に対し、有線接続を介して印加されるようにしても良いし、そうではなく、被検電線に対し容量結合する出力導体部材を介して印加され、被検電線内には微分パルスとして印加されるようにしても良い。後者の場合には被検電線の被覆で覆われていない露出部分にアクセス出来ない場合でも、当該被検電線にパルスを注入、印加することができるし、任意箇所にての印加が可能なので、より作業性を高める。
【0012】
また、報知手段は発光ダイオード等の可視的報知手段でも、圧電スピーカその他の可聴的報知手段でも、あるいはその双方であっても良い。また、断線を検出した部位においてそれまでの第一の状態からそれとは異なる第二の状態への変化があることで断線部位の報知が出来ればよいので、例えば断線をしていない部分では発光ダイオードが点灯と続け、断線を検出した部分で消えても良いが、寧ろその逆に、断線を検出すると点灯するように回路を組む方が、装置としては直感的に報知結果を理解しやすい。可聴的報知手段を用いる場合も同様である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、被検電線にパルスを印加し、これを当該被検電線に対して容量結合しているプローブを介して取り出すので、当該プローブを被検電線の長さ方向に沿って動かして行けば、容量結合プローブを介しての微分パルスが検出されなくなった時点で当該容量結合プローブの位置している部分、ないしは容量結合プローブを被覆電線に沿って動かして行った方向での少し手前部分に、被検電線の断線箇所があると判断できる。断線の有無だけではなく、このような断線箇所の検出装置は従来提案されておらず、不便をしていたが、被覆電線の長さ方向に沿って非接触で自在に動かせる容量結合プローブを持つ本発明装置の提供により、断線修復のための作業労力、作業時間は大幅に短縮されるものとなる。
【0014】
さらに、本発明の特定の態様に従い、上記の容量結合プローブを主容量結合プローブとして、これとは別に補助容量結合プローブをも設ける場合には、それら主容量結合プローブと補助容量結合プローブに現れる同相ノイズ成分は打ち消し方向の作用を受けるので、パルス検出回路の誤検出の可能性を大きく低減できる。
【0015】
また、本発明装置を構成する各回路要素自体は公知の回路構成技術により簡単に構築でき、小型化も容易なので、可搬性のある装置とすることができ、様々な現場に持ち運び可能な、機動性の高い装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による被覆電線断線箇所検出装置の望ましい一実施形態の概略構成図である。
【図2】図1に示した実施形態の具体的回路構成例における回路構成図である。
【図3】本発明の他の実施形態の概略構成図である。
【図4】本発明のさらに他の実施形態の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1(A)には本発明の望ましい一実施形態における被覆電線断線箇所検出装置の概略構成図が示されており、図2には具体的な回路構成例が示されている。
【0018】
以下、動作を追いながら本実施形態の説明を行うと、電源スイッチ11が投入され、商用交流電源であっても良いし、充電池を含む乾電池であっても良い電源12からの稼働電力が与えられることで、パルス生成回路13がこの場合は矩形パルス列であるパルスPoを発振、生成する。図2に示す回路例では、マルチバイブレータ14を利用したものとなっている。
【0019】
この実施形態では、被覆32により被覆されている被覆電線31に対し、パルス生成回路13から出力されるパルスPoは、当該被覆電線31の長さ方向端末等、被覆が無く、露出している部分に直接に有線接続で印加される。図示していないが、この接続に公知の鰐口クリップ等を使うと便利である。
【0020】
被覆電線31には容量結合プローブ15が容量結合している。図1(A)中、仮想線の円Opで囲ったこの容量結合プローブ15の部分は図1(B)に断面で拡大して示してあるが、当該容量結合プローブ15は筒状導体で、その中央透孔内を被覆電線31が通るように配置される。本出願人における実験装置では、長さ数センチの銅パイプを縦割りにし、被覆電線の周りに被せてから閉じで再び筒状に戻しているが、汎用装置とするには、先に少し説明した公知のクランプ電流計と同様の機構を使うことができる。
【0021】
すなわち、洗濯ばさみと同様の原理で、一対のノブ・レバーを押し挟むと筒状導体である容量結合プローブの側面の一部が長さ方向全長に沿って口を開き、開いた口から被覆電線31を半径方向に嵌め入れるようにし、その後にノブ・レバーを戻して筒状導体に戻し、被検電線をクランプするような構造とすると良い。本発明に適した形態,構造の具体的一例は、後に図4に即して改めて説明する。
【0022】
いずれにしても、被覆電線31の被覆32の上であっても、近接してその中央透孔内を被覆電線31が通るようにすると、図1(B)中にて模式的に示した浮遊容量Cfpを介し、被覆電線31と容量結合プローブ15とは容量結合する。従って、パルス生成回路13の出力したパルスは、被覆電線31が断線していなければ、浮遊容量成分で微分され、微分パルスPdとなって容量結合プローブ15に現れる。
【0023】
そこで、これを微分パルス検出回路16で検出するようにし、当該微分パルスPdが検出されているときには報知手段17を第一の状態、例えば可視的報知手段であってそれが発光ダイオードであるならば消灯状態とし、可聴的報知手段であって適当なスピーカ手段であるならば無音状態とし、また、当該微分パルス検出回路16が容量結合プローブ15を介しての微分パルスPdを検出しなくなったときには、報知手段17を第一の状態とは異なる第二の状態、例えば発光ダイオードであるならば点灯、適当なるスピーカ手段であるならば発音状態とするようにしている。
【0024】
図2に示されている回路例では、微分パルス検出回路16は増幅回路18と、閾値回路19を兼ねるインバータ回路とから構成され、増幅回路出力に微分パルスPdの増幅出力が認められなくなると(閾値回路による検出閾値を下回ると)、報知手段17である発光ダイオード17を点灯させるようにしている。
【0025】
なお、微分パルスPdの信号強度が不安定なために、報知手段17が第一、第二状態間で変遷を細かに繰り返して不具合な場合には、公知のラッチ回路を組み込むことが出来る。もちろん、一旦、微分パルスPdの消失と判断されて報知手段17が例えば点灯することでその旨を表示した後、次の測定をする前には、ラッチ回路をリセットするスイッチを設け、これを操作して回路のリセットを図るようにはする必要がある。ただ、このような回路を組むことも、公知の回路技術からして当業者には極めて容易である。
【0026】
また、検出感度を最適なように調整する手段として、例えば図示実施形態の場合には増幅器18の帰還系に感度調整ボリュームVsを挿入している。このような感度調整回路を組むこともまた、本発明の回路例が開示された以上、種々の改変回路を含め、当業者であれば極めて容易である。
【0027】
いずれにしても、本被検電線断線箇所検出装置は、上述のように構成されているので、図2の方に模式的に示すように、パルス生成回路13が被覆電線31に対してパルスPoを印加している部分の近くから離れる方向fに容量結合プローブ15を被覆電線31に沿って動かして行くことで、被覆電線31の断線箇所を検出できる。つまり、仮にどこかの部位Xcで被覆電線31に断線が生じていた場合、その部位の直前までは容量結合プローブ15に微分パルスPdが現れているが、さらに容量結合プローブを矢印f方向に動かしたことで当該断線箇所Xcを越えると、図2中に符号15'で示している位置の容量結合プローブに認められるように、当然、そこには微分パルスPdは生じなくなるので、微分パルス検出回路16は報知手段17をしてその旨、報知させることができる。そして、この報知が出た位置、ないしその直前の位置が、被覆電線31における断線部位と判断することができる。
【0028】
図3(A)には本発明の他の実施形態として、実質的には図1(A)に示された被覆電線断線箇所検出装置の回路構成、動作原理と同じではあるが、パルス生成回路13が被覆電線31に対してパルスを印加する部分の構造が異なっているものを示している。逆に言えば、その部分以外の説明はこれまでの説明を援用することができ、同じ構成要素には同じ符号を付すことで、繰り返しての説明は避ける。
【0029】
変更のある部分は、図3(A)中、仮想線の円Oaで囲った部分で、その部分の拡大断面図は図3(C)に示されているが、パルス生成回路13の出力するパルスPoが、被覆電線31に対し浮遊容量Cfaで容量結合する出力導体部材21を介して被覆電線に与えられ、従って被覆電線31には微分パルスに変換されたものが印加されるようになっている点である。この出力導体部材21もまた、先に説明した容量結合プローブ15と構造的には同じ構造であって良く、後述の図4に即する説明で取り上げられるような形態,構造の開閉可能な筒状導体部材であって良い。なお、図3(A)中、仮想線の円Opで囲った容量結合プローブ15の部分を拡大して示した図3(B)は、実質的に図1(B)と同じ内容を示している。
【0030】
この第二の実施形態に認められるように、パルス生成回路13の発生するパルスPoを被検電線31に対し容量結合する出力導体部材21を介して被検電線31に非接触で印加するように図ると、被検電線31の被覆のない露出部分に印加せねばならない制約も解かれ、任意の部位にて被検電線31に印加できるようになり、作業性は一層向上する。
【0031】
もちろん、容量結合プローブ15には、この実施形態においても被検電線31が断線していない所までは微分パルスPdが現れるので、断線有無の検出メカニズムは既に図1に即して説明した所と同じである。回路構成的にも、図2に示した回路と実質的に同じ回路を用いることが出来る。
【0032】
図4に示される実施形態は、さらに微分パルス検出回路16においてのノイズによる誤検出を効果的に防ぎ得る構成となっている。そもそも容量結合プローブ15に現れる微分パルスPdは一般に微弱信号となるため、外乱ノイズであるとか本装置の回路内部において発生するノイズにより、微分パルス検出回路16が誤動作を起こすことも時としてはあった。これを防ぐのが本実施形態の装置であり、図4(A)にはまずその概略構成が示されている。図1〜3中に付したと同じ符号の構成要素は同じか、少なくとも同様の構成要素を示し、従って重複する説明は避け、これまでの説明を援用する。回路動作も基本的な所では変わりがない。これまでの実施形態と異なっている所は、図1〜3中における容量結合プローブ15を主容量結合プローブ15とするならば、これとは別に、補助容量結合プローブ22が設けられていることである。
【0033】
補助容量結合プローブ22は、構造的には主容量結合プローブ15と同様であって良く、被検電線31に対し浮遊容量を介し容量結合するものであればよい。このように、一対の容量結合プローブ15,22を設けた上で、本実施形態ではさらに、当該主容量結合プローブ15と補助容量結合プローブ22のそれぞれに現れる同相信号成分を打ち消すように機能するノイズ低減回路23を設けている。
【0034】
そこで、パルス生成回路13が被検電線31にパルスPoを印加している部位から見て相対的に近い位置にて補助容量結合プローブ22を被検電線31に容量結合させ、その位置よりも遠い位置にて主容量結合プローブ15を被検電線31に容量結合させた状態で、補助容量結合プローブ22はその位置を固定したまま、主容量結合プローブ15のみを被検電線31に沿って補助容量結合プローブ22から遠ざける方向に動かして行くか、あるいはまた、それら一対のプローブ15,22を一定の間隔に保ったまま、それらを一緒に、パルス生成回路13が被検電線31にパルスPoを印加している部位から離れる方向に動かして行くと、次のような微分パルスの検出関係となる。
【0035】
まず、主容量結合プローブ15も補助容量結合プローブ22も、パルス生成回路13がパルスPoを被検電線31に印加している部位から、それらが今、被検電線31に現に容量結合している部位までの間に当該被検電線31に断線が生じていなければ、それら一対のプローブ15,22には多少の信号強度差はあっても、同じ波形と見なせる微分パルスPdが生じ、従ってノイズ低減回路23の出力信号は第一の状態の信号、例えば低レベル信号となる。併せて、両プローブ15,22を介して印加されてしまう同相ノイズ成分も打ち消され、理想的には零レベルとなるか、少なくとも信号強度差分にまで低減された状態で認知されるので、設定する閾値レベルの如何により、ノイズ低減回路23は有意の出力を発しないようにでき、微分パルス検出回路16もまた、有意の報知出力を発しない。
【0036】
実際、ノイズ低減回路23は、効果的にノイズを打ち消す(理想的には零にするか、少なくともノイズ信号強度を低下させる)ことができるので、本出願人における実験例でも、微分パルス検出回路16が誤検出を起こす可能性は大いに低下した。
【0037】
次に、補助容量結合プローブ22を固定したまま、あるいは適当な感覚を保って一緒に動かすにしても、主容量結合プローブ15をパルス生成回路13が被検電線31にパルスPoを印加している部位から遠ざかる方向に被検電線31に沿って動かしていった結果、ある所で、図4(A)中において符号Pnで模式的に示すように、それまで現れていた微分パルスPdが失われて実質的に無信号となると、ノイズ低減回路23はこのように一方のプローブのみ、すなわち主容量結合プローブ15にてのみ、微分パルスが失われたことに基づき、上記した第一の状態と異なる第二の状態、例えば、高レベルの出力信号を発し得る。
【0038】
このことを微分パルス検出回路16が検出するように構成することで、被検電線31の断線を報知手段17を介して報知でき、その時に主容量結合プローブ15が位置している部位か、少なくともその直前部位に断線箇所があると同定できる。
【0039】
ノイズ低減回路23は、例えば図2に示した増幅器18を差動増幅器として用いることで構成でき、当該差動増幅器の正相入力と逆相入力の中の一方の入力に主容量結合プローブ15を、他方の入力に補助容量結合プローブ22を接続すると、上記した選択的出力状態を具現できる。図示の場合は補助容量結合プローブ22を正相入力In+に、主容量結合プローブ15を逆相入力In-に接続しているので、両プローブ15,22に共に微分パルスPdが現れている場合にはノイズ低減回路23の出力信号は第一の状態の信号として低レベルであり、主容量結合プローブ15に微分パルスPdが現れなくなった時には第二の状態の信号として出力信号が高レベルとなるように組まれていて、微分パルス検出回路16はこの高レベル信号を受けることで報知手段17を駆動するように組まれている。もちろん、弁別が付けば良いので、ノイズ低減回路23の出力信号の第一の状態が高レベルであって、第二の状態が低レベルであっても良く、いずれにしても第二の状態のときに報知手段17を介し、作業者に断線を報知するように微分パルス検出回路16が機能するように組めばよい。
【0040】
このように、図4(A)のような装置構成に従い、ノイズ低減回路23を設けると、効果的にノイズを打ち消す(ノイズ信号強度レベルを低減する)ことができるので、微分パルス検出回路16が誤検出を起こす可能性は大いに低下し、装置としての信頼性は大いに高まる。
【0041】
図4(B)には、全くの一例としてではあるが、先に少し説明した洗濯ばさみの原理構造に従う、本装置に用いると作業に便利な形状、機械構造のクランプ構造である主容量結合プローブ15,補助容量結合プローブ22が示されている。予め述べておくと、ここで説明するクランプ構造は、図1,図2に示した実施形態におけるように、単独の容量結合プローブ15を用いる場合の当該容量結合プローブ15にも、また、図3に示す実施形態に即して説明した、被覆電線31に対し浮遊容量Cfaで容量結合し、パルス生成回路13の出力するパルスPoを微分パルスとして当該被検電線31に印加する出力導体部材21にも採用することができる。
【0042】
まず、一対のノブ・レバー15n,15n:22n,22nがあり、これをバネ部材15s,22sの付勢力に抗して互いに相寄る方向に指等で押し挟み、支点軸15a,22aの周りに回動させると、支点軸15a,22aを挟んで反対側にある一対のクランプ・アーム15c,15c:22c,22cが互いに相離れる方向に回動し、被検電線を半径方向に嵌め入れる隙間が開く。クランプ・アーム15c,15c:22c,22cは導電性部材で、それぞれ半円筒形状をなしている。被検電線31を嵌め入れてからを一対のノブ・レバー15n,15n:22n,22nを押し挟んでいた力を釈放すると、バネ部材15s,22sの復元力で一対のクランプ・アーム15c,15c:22c,22cが互いに当接して、被検電線31と同心状に位置する筒状導体15,22となり、当該被検電線31に容量結合する主容量結合プローブ15と補助容量結合プローブ22となる。
【0043】
このようなクランプ構造の適当な部位にはクランプ・アーム15c,15c:22c,22cにより構成される筒状導体に電気的に導通する端子を設け、そこにノイズ低減回路23への信号線15y,22yを接続する。
【0044】
図示の場合には、主容量結合プローブ15と補助容量結合プローブ22は単独のクランプ構造となっているが、両者を一定の間隔を保ちながら被検電線31に沿って動かすように作業する場合には、これらを適当な連結部材で一定間隔を保つように一体化しても良いし、また、その場合、一対の共通ノブ・レバーを操作するだけで、主容量結合プローブ15のクランプ・アーム15c,15cも補助容量結合プローブ22のクランプ・アーム22c,22cも連動して開閉するようにしても良い。
【0045】
以上、本発明装置の幾つかの望ましい実施形態例につき説明したが、本発明の要旨構成に即する限り、任意の改変は自由である。
【符号の説明】
【0046】
11 電源スイッチ
12 電源
13 パルス生成回路
15 容量結合プローブ(主容量結合プローブ)
16 微分パルス検出回路
17 報知手段
21 出力導体部材
22 補助容量結合プローブ
23 ノイズ低減回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象の被覆電線である被検電線にパルスを印加するパルス生成回路と;
該被検電線に対し容量結合する容量結合プローブと;
該容量結合プローブに現れる微分パルスを検出し、該微分パルスが失われた時に報知手段によりその旨報知させる微分パルス検出回路と;
を有する被覆電線断線箇所検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の被覆電線断線箇所検出装置であって;
上記容量結合プローブを主容量結合プローブとして、該主容量結合プローブとは別に上記被検電線に容量結合する補助容量結合プローブも有し;
該主容量結合プローブと補助容量結合プローブは、それらに現れる同相信号成分を打ち消すように機能することでノイズを低減するノイズ低減回路に接続しており;
上記パルス生成回路が上記被検電線に上記パルスを印加している部位から見て相対的に近い位置にて上記補助容量結合プローブを該被検電線に容量結合させ、その位置よりも遠い位置にて上記主容量結合プローブを該被検電線に容量結合させた状態で、該主容量結合プローブからの上記微分パルスが失われた時にのみ現れる該ノイズ低減回路の出力信号に基づき、上記微分パルス検出回路は上記微分パルスが上記失われたと判断し、上記報知手段によりその旨報知させること;
を特徴とする被覆電線断線箇所検出装置。
【請求項3】
請求項2記載の被覆電線断線箇所検出装置であって;
上記ノイズ低減回路は差動増幅器を含み、その正相入力と逆相入力の中の一方の入力に上記主容量結合プローブが、他方に上記補助容量結合プローブが接続していること;
を特徴とする被覆電線断線箇所検出装置。
【請求項4】
請求項1または2記載の被覆電線断線箇所検出装置であって;
上記パルス生成回路の出力する上記パルスは、上記被検電線にあって被覆で覆われていない露出部分に対し、有線接続を介して印加されること;
を特徴とする被覆電線断線箇所検出装置。
【請求項5】
請求項1または2記載の被覆電線断線箇所検出装置であって;
上記パルス生成回路の出力する上記パルスは、上記被検電線に対し容量結合する出力導体部材を介して印加され、該被検電線内には微分パルスとして印加されること;
を特徴とする被覆電線断線箇所検出装置。
【請求項6】
請求項1または2記載の被覆電線断線箇所検出装置であって;
上記報知手段は可視的報知手段、可聴的報知手段のどちらかであるか、または双方であること;
を特徴とする被覆電線断線箇所検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−174727(P2011−174727A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37237(P2010−37237)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000174426)阪神エレクトリック株式会社 (291)
【Fターム(参考)】