説明

被試験物表面の結露制御機構を備えた環境試験装置

【課題】被試験物に結露する結露量を安定して制御することができる環境試験装置を提供することを課題とする。
【解決手段】環境試験装置100は、結露検出器8と調節器4を有している。結露検出器8は、受光部82が受光する反射光量の変化で被試験物W自体の結露状態を検出し信号を出力する。また、調節器4の演算部45は、結露検出器8からの信号と腐食状態評価データとを照合し被試験物Wの結露状態を判断する。そして、被試験物Wの結露状態に基づいて、調節器4の制御部42が温湿度発生器3を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板や金属の環境試験に用いられ、被試験物の結露を制御可能な環境試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から結露による電子機器等の故障はよく知られていた。特に近年、電子機器の用途拡大により、様々な環境下で使用されることが予想される。また、電子機器の小型化、高密度実装などによる導体間の微細化が進んでいる。そのため、電子機器内に結露が発生すると、結露によって導体間がショートするなどして電子機器が故障する虞がある。そこで、電子機器等の性能評価の一つとして、結露による評価方法の必要性が高まってきており、結露試験を行う方法がいくつか提案されている。
【0003】
例えば、従来の結露試験では、試験室に入れられた被試験物に結露した結露状態を目視で観測し被試験物の結露状態を判断していた。ここで、目視により被試験物に結露する結露状態を判断する方法では、細かいレベルの結露状態がわからないため、安定した結露量の制御が難しいという問題がある。
【0004】
また、特許文献1に記載の結露制御式環境試験装置が知られている。この結露制御式環境試験装置は、被試験物が入れられる試験室に送られる空気を加湿する加湿手段と被試験物を冷却する冷却手段とを備えており、被試験物に結露させることのできる環境試験装置である。そして、当該環境試験装置は、結露の状態を検出する検出手段(テレビ撮影装置)と、当該検出手段で検出した結露の状態が目的とする結露の状態になるように、加湿手段の加湿能力又は冷却手段の冷却能力のうちの少なくとも一方を制御する制御手段とを有していることを特徴とする。
【0005】
【特許文献1】特開平10−78387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、結露状態検出手段としてテレビ撮影装置を用いた場合、画像処理に時間を要して検出遅れが生じ、安定した結露量を保つことが難しいという問題があった。そのため、被試験物表面の結露量を増加させてしまい、被試験物表面の結露量を細かく調整することが難しい、即ち、被試験物表面の結露状態を安定させることが難しいという問題があった。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、被試験物に結露する結露量を安定して制御することができる環境試験装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
本発明は、プリント配線板や金属の環境試験に用いられ、被試験物の結露を制御可能な環境試験装置に関するものである。そして、本発明に係る環境試験装置は、上記目的を達成するために以下のようないくつかの特徴を有している。即ち、本発明の環境試験装置は、以下の特徴を単独で、若しくは、適宜組み合わせて備えている。
【0009】
前記課題を解決するための本発明に係る環境試験装置の第1の特徴は、被試験物が入れられる試験室と、前記試験室内の空気を所定の温湿度に調節する空調手段と、試験室内に配置され、前記被試験物に光を投射する発光部と、試験室内に配置され、前記被試験物で反射した反射光を受光する受光部と、前記試験室内に収容されるとともに前記被試験物が上面に配置され、当該被試験物を冷却加熱する冷却加熱器と、前記被試験物に生じた結露による前記受光部が受光する反射光量の変化に基づいて、前記冷却加熱器の温度制御を行う制御手段とを備えることである。
【0010】
この構成によると、本発明に係る環境試験装置は、被試験物に光を投射する発光部と、被試験物で反射した反射光を受光する受光部とを備えており、当該受光部が受光する反射光量の変化に基づき、制御手段が冷却加熱器の温度制御を行う。そのため、被試験物自体の結露状態を検出することができる。その結果、被試験物の結露状態を直接精密に制御することができ、被試験物に結露する結露量を安定して制御することができる。
【0011】
また、本発明に係る環境試験装置の第2の特徴は、前記制御手段は、前記受光部が受光する前記反射光量を計測し、計測した前記反射光量のデータ情報を予め記憶させておいた腐食状態評価データと照合して、前記被試験物の腐食による前記受光部が受光する前記反射光量の変化を補正することで、結露にのみ起因した前記反射光量の変化を算出することである。
【0012】
この構成によると、制御手段は、受光部が受光した反射光量のデータと、別途記憶させておいた被試験物の腐食状態評価データとを照合する。そして、被試験物の腐食による当該受光部が受光する反射光量の変化を補正する。そのため、被試験物が結露したことのみに起因した反射光量の変化を計測することができる。その結果、被試験物に結露する結露量を安定して制御することができる。
【0013】
また、本発明に係る環境試験装置の第3の特徴は、前記制御手段が、イオンマイグレーション試験時に、前記被試験物に結露が生じると前記被試験物への電圧の印加を停止させ、前記被試験物に結露が生じていなければ前記被試験物への電圧の印加を開始するように制御することである。
【0014】
この構成によると、イオンマイグレーション試験時に、制御手段は、被試験物に結露によるマイグレーションを発生させないような制御を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0016】
(環境試験装置の構成)
図1は、本実形態に係る環境試験装置100の概略構成図である。図1に示すように、本実施形態に係る環境試験装置100は、被試験物Wが入れられる試験室1と、試験室1から仕切られ温湿度発生器3(空調手段)を備える空調室2と、温湿度発生器3及び冷却加熱プレート9(冷却加熱器)を制御する調節器4(制御手段)とを有して構成されている。そして、試験室1と空調室2は、試験室1と空調室2との間の空気を循環させる連通部5および送風機34部を除き、仕切られた構造となっている。尚、本実施形態のように1つの筐体を試験室1と空調室2とに仕切って、その仕切って形成された空調室2に温湿度発生器3を収容するのではなく、空調室2を試験室1とはまったく別体として設けてもよい。また、試験室1内には、温湿度センサである乾球6と湿球7が設けられている。
【0017】
図1に示すように、試験室1内には、被試験物Wを冷却加熱する冷却加熱プレート9(冷却加熱器)が設けられている。当該冷却加熱プレート9は、被試験物Wを接触させて熱伝導により直接冷却加熱する冷却加熱面を備えた表面接触式冷却加熱器で、例えば、冷水等の冷媒を用いる冷媒冷却式や、ペルチェ効果を利用する熱電素子と冷却ファンを組み合わせた電子冷却式のものである。尚、冷却加熱プレート9は、被試験物Wの載置台を兼ねており、当該冷却加熱プレート9の上面には被試験物Wが載置される。冷却加熱プレート9内には、冷却加熱プレート9の温度を測定する温度センサ10が内蔵されている。尚、本実施形態では、冷却加熱プレート9の冷却加熱面と被試験物Wとの間に伝熱シート11を挟んでおり、当該伝熱シート11を介して被試験物Wが加熱冷却される。これにより、冷却加熱面と被試験物Wの密着性が高まり、被試験物Wへの熱伝導性が向上することになる。
【0018】
伝熱シート11は、熱伝導性・密着性に優れたシートであり、シリコーンゴム製シートやアクリルゴム製シートなどが考えられる。
【0019】
空調室2内に備えられた温湿度発生器3は、試験室1内へ供給する空気に対し水分を与える加湿器31と、試験室1内へ供給する空気を冷却する冷却器32と、試験室1内へ供給する空気を加熱する加熱器33と、試験室1及び空調室2の両室間で空気を循環させる送風機34とを有して構成されている。尚、試験室1の上部空間と空調室2との間は送風機34により連通されており、試験室1の下部空間と空調室2は、連通部5により連通されている。そして、当該温湿度発生器3は、任意の温湿度の空気を発生させることができる装置であり、当該温湿度発生器3で発生させた空気を送風機34により試験室1内に供給して、試験室1内を所定の温湿度条件に制御することができる。尚、本実施形態では、試験室1内の温湿度を所定の温湿度条件にするために温湿度発生器3を用いているが、これに限定されることはない。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る環境試験装置100には、被試験物Wに結露した結露状態を検出する結露検出器8が試験室1内に設けられている。当該結露検出器8は、LED発光素子等の発光部81と、フォトトランジスタ等の受光部82と、当該発光部81と受光部82を被試験物Wまで近づける可動部83とを有している。尚、当該可動部83は、可動部83を駆動するためのモータと、ボールネジ等の駆動伝達手段と、伸縮性のあるジャバラを有して構成されている。
【0021】
モータにより当該可動部83を駆動させることで、発光部81と受光部82が試験室1内に入れられた被試験物Wの位置まで移動する。そして、発光部81及び受光部82を被試験物Wに対して任意の位置・角度に調節する。その後、当該発光部81から被試験物Wに光が投射され、当該受光部82が被試験物Wで反射した反射光を受光する。
【0022】
調節器4は、入力部41と、制御部42と、記憶部43と、出力部44と、演算部45を有して構成されている。また、調節器4は、乾球6・湿球7、結露検出器8、温湿度発生器3、冷却加熱プレート9に電気的に接続されている。そして、調節器4の演算部45は、結露検出器8、記憶部43からの信号を取り込み、取り込んだ信号をもとに、被試験物Wの結露状態を判断する。尚、演算部45は、受光部82が受光する反射光量を計測する。そして、調節器4の制御部42は、現状の被試験物Wの結露状態と、乾球6・湿球7、冷却加熱プレート9に内蔵されている温度センサ10からの信号を取り込み、取り込んだ信号をもとに、被試験物Wの表面に結露する結露量を所定の結露量に近づけるように、温湿度発生器3、冷却加熱プレート9を制御する。
【0023】
(試験室1内の温湿度の制御)
次に、試験室1内の温湿度の制御について説明する。まず、試験室1内の任意の温湿度の設定値を決め、当該設定値を調節器4の入力部41に入力する。そして、乾球6・湿球7からの信号に基づき、調節器4が温湿度発生器3を制御して試験室1内を所定の温湿度に調節する。尚、本実施形態では、試験室1の上部空間と空調室2が、送風機34により連通されており、温湿度発生器3で発生させた空気を試験室1に供給している。また、試験室1の下部空間と空調室2は、連通部5により連通されており、試験室1と空調室2の空気を循環させている。
【0024】
(被試験物Wの結露量の制御)
次に、被試験物W表面の結露量の制御について説明する。図2は、ある一定の高温高湿環境に被試験物Wをさらした時間と、当該被試験物Wが光を反射する反射光量との関係を示した図である。
【0025】
尚、本実施形態においては、単位面積当たりの結露質量([μg/mm])を制御している。例えば、3μg/mm、5μg/mm、10μg/mm、というように被試験物W表面の結露量を設定し、その結露量(結露状態)が設定値±0.2μg/mmを維持するように、調節器4は、冷却加熱プレート9を制御する。
【0026】
本実施形態における被試験物W表面の結露制御としては、まず、被試験物Wが試験室1内に入れられ、被試験物Wの材料情報や試験条件や被試験物W表面の結露量の設定値等を入力部41に入力する。その後、温湿度発生器3を制御して試験室1を一定の温湿度にする。次に、結露検出器8の可動部83をモータで駆動して発光部81と受光部82を被試験物Wが配置されている位置まで移動させる。そして、発光部81が投射する光が被試験物Wに当たるように発光部81及び受光部82の位置、角度を調節する。その後、発光部81により被試験物Wに光を投射し、当該被試験物Wにて反射した反射光を受光部82で受光する。したがって、被試験物Wに結露が生じた場合には、発光部81から被試験物Wに到達した光の反射角度が変化して受光部82に到達する反射光量が変化する。この反射光量の変化を計測することにより、被試験物Wに所定の結露量が発生しているか否かを検出することができる。尚、受光部82に到達する反射光量は調節器4に出力され、調節器4の演算部45が当該反射光量の変化に応じて被試験物Wに結露した結露量を判断する。
【0027】
尚、受光部82が受光する反射光量の変化は、被試験物Wの結露状態により決まる。即ち、被試験物Wに発生した結露量が多い状態の場合、受光部82が受光する反射光量は大きく変化する。また、被試験物Wに発生した結露量が少ない状態の場合、受光部82が受光する反射光量は小さく変化する。そのため、被試験物W表面の結露量の設定値に応じた受光部82が受光する反射光量の変化を予め実験を行って求めておき、記憶部43に記憶させておく。そして、実験で求めた反射光量の変化をΔCとし、当該ΔCを被試験物Wに結露する結露量を判断する判断基準とする。ここで、ΔCとは、例えば、被試験物Wに結露が発生していない状態で所定の光を投射し、演算部45が計測した反射光量C0と、設定値の結露量を発生させた被試験物Wに所定の光を投射し、演算部45が計測した反射光量との差とすることができる。尚、当該判断基準は、本実施形態に係る環境試験装置100を用いて実験する作業者が自由に設定してもよい。
【0028】
そして、演算部45は、受光部82が受光する反射光量を計測し、当該反射光量の変化と、予め記憶部43に記憶させておいた判断基準ΔCとを照合する。つまり、演算部45は、当該反射光量の変化と判断基準ΔCを照合し、一致しているか否かを判断する。そして、被試験物W表面の結露量が設定した結露量であるか否かという信号を制御部42に出力する。これにより、制御部42は、冷却加熱プレート9の温度制御を行い、被試験物Wの結露量の制御を行う。
【0029】
ここで、被試験物Wの腐食による反射光量の補正について説明する。一般に、被試験物Wが高温高湿環境にさらされると、さらし時間の経過と伴に金属自体が腐食してしまい金属の反射光量が変化する。本実施形態に係る環境試験装置100においても、被試験物Wが高温高湿環境にさらされることで、被試験物Wが腐食するため、受光部82が受光する反射光量が変化する。そのため、被試験物Wが腐食し反射光量が変化することによる被試験物Wの結露状態の判断誤差を補正する必要がある。そこで、本実施形態に係る環境試験装置100は、図2に示す、被試験物Wを高温高湿環境にさらした時間と反射光量の関係を示した腐食状態評価データを実験と計算から求め、予め記憶部43に記憶させておく。そして、演算部45は、受光部82が受光する反射光量を計測し、計測した当該反射光量のデータ情報と当該腐食状態評価データとを照合する。これにより、被試験物Wの腐食による受光部82が受光する反射光量の変化を補正し、演算部45が被試験物Wの結露状態を判断することができる。そして、当該演算部45により出力された信号に基づいて、制御部42は冷却加熱プレート9を制御する。これにより、より正確な結露量の制御を行うことができる。
【0030】
尚、腐食状態評価データは、本実施形態に係る環境試験装置100を用いて実験を行い求めた。図2に実験で求めた腐食状態評価データを示す。図2に示すように、縦軸は、受光部82が受光する被試験物Wの反射光量とした。また、横軸は、被試験物Wをある一定の高温高湿環境にさらしたさらし時間とした。尚、試験室1内の湿度が40%RH、60%RH、80%RH、99%RHの4つの環境条件で行なった。尚、図2に示すように、被試験物Wを高温高湿環境(試験室1の湿度が99%RH)に時間T1さらしたとすると、被試験物Wの腐食により受光部82が受光する反射光量はC1となる。
【0031】
具体的には、まず、結露試験開始前に被試験物Wに結露させる結露量を設定する。そして、当該設定した結露量に対応した判断基準ΔCが選択される。そして、結露試験を開始し、受光部82が受光する反射光量がΔC変化したときの経過時間をT1とし、その時の受光部82が受光する反射光量をCとする。一方、演算部45は、腐食状態評価データから、被試験物Wを高温高湿環境(試験室1の湿度が99%RH)に時間T1さらした時の受光部82が受光する反射光量C1を求める。そして、演算部45は、受光部82が受光する反射光量Cと、腐食状態評価データから求めた反射光量C1とを照合する。
【0032】
ここで、受光部82が受光する反射光量Cは被試験物Wが結露したことと、被試験物Wが時間T1の間、高温高湿環境(試験室1内の湿度が99%RH)にさらされることで腐食したことにより得られる反射光量である。また、腐食状態評価データから求めた反射光量C1は被試験物Wが時間T1の間、高温高湿環境(試験室1内の湿度が99%RH)にさらされることで腐食したことにより得られる反射光量である。そのため、演算部45は、CとC1を照合して、前記被試験物Wの腐食による受光部82が受光する反射光量の変化を補正し、被試験物Wが結露したことのみに起因した反射光量の変化を算出することができる。即ち、被試験物Wが結露したことのみに起因した受光部82が受光する反射光量の変化と、設定した結露量に対応した判断基準ΔCが一致しているか否かを判断することができる。その結果、被試験物Wが結露したことのみに起因した受光部82が受光する反射光量の変化と判断基準ΔCが一致しない場合、演算部45が所定の結露量ではないという信号を制御部42に出力することになる。これにより、演算部45が被試験物Wの腐食状態を考慮した被試験物Wの結露量の判断をすることができることになり、より正確な結露量の制御を行うことができる。
【0033】
また、被試験物Wを試験室1に入れる段階において、被試験物Wの初期状態は様々である。つまり、各被試験物Wが試験室に入れられる段階において、各被試験物Wの腐食状態が異なる場合がある。そのため、腐食状態評価データから、被試験物Wを一定の高温高湿環境(試験室1内の湿度が99%RH)に時間T1さらした時の受光部82が受光する反射光量C1をそのまま求めてしまうと、反射光量C1に誤差が生じてしまう可能性がある。そこで、本実施形態では、被試験物Wが試験室1に入れられる際に、まず、発光部81が被試験物Wに一定光量の光を投射し、受光部82が受光する被試験物Wの反射光量C2を計測する。そして、図2に示す腐食状態評価データから当該反射光量C2に対応したさらし時間T2を求め、記憶部43に記憶しておく。
【0034】
これにより、被試験物Wが一定の高温高湿環境にさらされたことによる被試験物Wの腐食状態を被試験物Wが試験室1に入れられた初期状態からの腐食として、被試験物Wの結露状態を判断することができる。即ち、腐食状態評価データの反射光量C2に対応した時間T2から被試験物Wを一定の高温高湿環境に時間T1さらした時間T3(T1+T2)における反射光量C3を求めることができる。そのため、演算部45は、CとC3を照合することで、被試験物Wが結露したことのみに起因した反射光量の変化を算出することができ、被試験物Wの初期状態に対応した被試験物Wの腐食による反射光量の補正をすることができる。その結果、被試験物Wの結露状態をより正確に判断することができ、被試験物W表面の結露量を安定して制御することができる。
【0035】
また、本実施形態に係る環境試験装置100を用いて、被試験物Wの結露の生成と乾燥をより速く繰り返す結露サイクル試験等を行う場合においても、被試験物Wの腐食による反射光量の補正を行うことができる。即ち、サイクル試験が開始され、被試験物Wが乾燥している状態において、受光部82が受光する反射光量を計測し、腐食状態評価データから当該反射光量に対応したさらし時間を求め、記憶部43に記憶させておく。これにより、各サイクルにおいて、演算部45は被試験物Wの腐食による反射光量の補正をすることができ、被試験物Wが結露したことのみに起因した反射光量の変化を算出することができる。その結果、被試験物Wの結露状態をより正確に判断することができ、被試験物W表面の結露量を安定して制御することができる。
【0036】
ところで、受光部82が受光する反射光量の変化速度により被試験物Wの結露状態を判断してもよい。即ち、反射光量の変化速度が遅い場合は、被試験物Wは乾燥状態と判断する。また、反射光量の変化速度が速くなった場合、被試験物Wの結露が微小水滴として点状に発生した(ぬれ状態)と判断する。また、反射光量の変化速度がさらに速くなった場合は、小水滴同士が合体して大きな水滴になり、試料の表面が全体的に濡れるようになった(過度のぬれ状態)と判断する。尚、反射光量の変化速度の変化が、被試験物Wが腐食しているためか、被試験物Wに結露が発生したためか判断できないときは、上述した演算部45が計測した反射光量のデータ情報と腐食状態評価データとを照合することにより被試験物Wの結露状態を判断する。
【0037】
(イオンマイグレーション試験)
次に、本実施形態に係る環境試験装置100を用いてイオンマイグレーション試験をおこなう構成について説明する。一般に、イオンマイグレーション試験とは、高温高湿環境で被試験物Wに直流電流を印加し、イオンマイグレーションにより導体間が短絡するまでの時間を比較する試験法である。図3に示すように、イオンマイグレーション試験で使用される被試験物Wは、一対の測定用導体12,13を有している。そして、当該一対の測定用導体12,13には、端子12a,13aが接続されており、反端子側は、くし形状に配列された複数の電極14,15となっている。これら電極14,15は所定間隔をもって近接して配置されており、この場合、一方の電極14間に、他方の電極15が入り込むように配置されている。そして、互いに対向する電極14,15によって測定用電極対が構成されている。
【0038】
また、調節器4に電気的に接続され、被試験物Wの一対の測定用導体12,13間に電圧を印加する直流電源16と、この直流電源16と端子12a,13aとの間を接続する一対の通電路17,18間の電圧を測定する電圧センサ19と、一方の通電路18の電流を測定する電流センサ20と、それら電圧センサ19及び電流センサ20からの信号により測定用導体12,13の複数の電極対14,15間の抵抗値を求める抵抗検出回路21とから構成されている。そして、直流電源16により直流端子12aと端子13b間に電圧を印加して、抵抗検出回路21で電極14,15間の絶縁抵抗値を測定する。
【0039】
ところで、本実施形態に係る環境試験装置100は、受光部82が受光する反射光量の変化を演算部45が計測することにより、被試験物W自体の結露状態を判断することができる。そのため、本実施形態に係る環境試験装置100を用いてイオンマイグレーション試験を行う場合、制御部42は、演算部45が被試験物Wに結露が生じていると判断した場合は被試験物Wへの電圧の印加を停止(直流電源16をOFF)し、演算部45が被試験物Wに結露が無いと判断場合は被試験物Wへの電圧の印加を開始(直流電源16をON)するという制御を安定して行うことができる。これにより、イオンマイグレーション試験時に、被試験物Wに結露によるマイグレーションを発生させないような制御を行うことができる。即ち、装置性能や被試験物Wの熱容量等によって、被試験物Wが結露してしまった場合でも、湿度のみに起因したマイグレーションを被試験物に発生させることができる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態に係る環境試験装置100は、光を被試験物Wに投射する発光部81と、当該被試験物Wにて反射した反射光を受光する受光部82を有している。そして、当該受光部82が受光する反射光量の変化に基づき、調節器4の制御部42が冷却加熱プレート9の温度制御を行う。そのため、被試験物W自体の結露状態を検出することができる。その結果、被試験物Wの結露状態を直接精密に制御することができ、被試験物Wに結露する結露量を安定して制御することができる。
【0041】
また、被試験物Wの腐食状態の経時変化データである腐食状態評価データを備えている。そのため、演算部45が被試験物Wに結露した結露量を判断する際に、演算部45が計測した受光部82が受光する反射光量のデータと当該腐食状態評価データとを照合することで、被試験物Wの腐食による受光部82が受光する反射光量の変化を補正することができる。即ち、被試験物が結露したことのみに起因した反射光量の変化を計測することができる。その結果、被試験物Wに結露した結露量をより正確に判断することができ、被試験物に結露する結露量を安定して制御することができる。
【0042】
また、イオンマイグレーション試験時に、制御部42が、演算部45が被試験物Wに結露が生じていると判断した場合は被試験物Wへの電圧の印加を停止し、演算部45が被試験物Wに結露が無いと判断場合は被試験物Wへの電圧の印加を開始するという制御を行うことができる。これにより、被試験物Wに結露によるマイグレーションを発生させないような制御を行うことができる。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することが可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本実形態に係る環境試験装置の概略構成図である。
【図2】一定の高温高湿環境に被試験物をさらした時間と、当該被試験物が当該光量を反射する反射光量との関係を示した図である。
【図3】イオンマイグレーション試験が行われる被試験物の回路図である。
【符号の説明】
【0045】
1 試験室
2 空調室
3 温湿度発生器(空調手段)
4 調節器(制御手段)
8 結露検出器
81 発光部
82 受光部
100 環境試験装置
W 被試験物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験物が入れられる試験室と、
前記試験室内の空気を所定の温湿度に調節する空調手段と、
試験室内に配置され、前記被試験物に光を投射する発光部と、
試験室内に配置され、前記被試験物で反射した反射光を受光する受光部と、
前記試験室内に収容されるとともに前記被試験物が上面に配置され、当該被試験物を冷却加熱する冷却加熱器と、
前記被試験物に生じた結露による前記受光部が受光する反射光量の変化に基づいて、前記冷却加熱器の温度制御を行う制御手段と、
を備えていることを特徴とする環境試験装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記受光部が受光する前記反射光量を計測し、計測した前記反射光量のデータ情報を予め記憶させておいた腐食状態評価データと照合して、前記被試験物の腐食による前記受光部が受光する前記反射光量の変化を補正することで、結露にのみ起因した前記反射光量の変化を算出することを特徴とする請求項1に記載の環境試験装置。
【請求項3】
前記制御手段は、イオンマイグレーション試験時に、前記被試験物に結露が生じると前記被試験物への電圧の印加を停止させ、前記被試験物に結露が生じていなければ前記被試験物への電圧の印加を開始するように制御することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の環境試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−85346(P2010−85346A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257142(P2008−257142)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(000108797)エスペック株式会社 (282)
【Fターム(参考)】