説明

裁断方法及び裁断装置

【課題】短時間で、かつ、少ないスペースで、しかも、簡単な装置構成により積層体を形成でき、しかも、裁断して得られたパターンピースによって均質な被服を作製できる裁断方法及び裁断装置を提供すること。
【解決手段】裁断装置1は、裁断テーブル2と、解反機3と、巻き替え機4を備える。巻き替え機4により、単一の原反ロールRから3つの分割ロールPを作製し、3つの分割ロールPを解反機3に設置する。解反機3で3つの分割ロールPから布地Sを送り出すと共に、裁断テーブル2のベルトコンベヤ21で3つの布地Sが積み重なった状態で同時に移送して、裁断面に布地Sの積層体を形成する。積層体をカッターユニット4で裁断してパターンピースを作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚のシート材を裁断パターンに沿って裁断する裁断方法及び裁断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被服用の布地を裁断してパターンピースを作製する裁断装置として、プロッタ型の裁断装置がある。プロッタ型の裁断装置は、布地を支持する支持面を有する裁断テーブルと、裁断テーブルの長手方向の縁部に延在する2つのレールに沿って走行する1対のキャリッジと、これら1対のキャリッジの間に掛け渡された梁部材と、この梁部材に設置されたレールに沿って走行するカッターヘッドを含んで構成される。この裁断装置は、パターンピースの裁断パターンを表す裁断データが制御部に入力され、この裁断データに基づき、カッターヘッドに内蔵したカッターを作動させながらカッターを平面方向に駆動して布地を裁断し、パターンピースを作製する。
【0003】
裁断装置には、大量のパターンピースを効率的に裁断するために、複数枚の布地を積み重ねて積層体を形成し、この積層体を裁断して複数の布地を同時に裁断する積層型の裁断装置がある(例えば特許文献1)。この積層型の裁断装置は、裁断テーブルに隣接して配置された延反装置を備える。この延反装置は、布地を支持する支持面を有する延反テーブルと、延反テーブルの上を布地のロールを解反しつつ移動して延反テーブルの支持面に布地を引き出す延反キャリアを有する。この延反キャリアは、支持面を往復移動する毎に布地を1枚引き出すので、積層体を形成するとき、積層体が含むべき枚数に応じた回数の往復移動を行う。延反キャリアが所定回数の往復移動を行って積層体を形成すると、延反テーブルの縁端部に設けられた転送コンベヤにより、積層体を裁断テーブルに移送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−237801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の裁断装置は、積層体を形成する布地の枚数に応じた回数だけ延反キャリアが往復移動する必要があるので、積層体を作製するために時間がかかる不都合がある。さらに、延反テーブルで作製した積層体を、転送コンベヤで裁断テーブルに転送するので、転送の時間がかかり、また、転送コンベヤの設置により装置構成が大掛かりなものとなる不都合がある。また、裁断テーブルに隣接して延反テーブルを設置するので、裁断装置を設置するために、広いスペースが必要となる不都合がある。
【0006】
ところで、布地の製造工程において、一連の織り工程で作製された布地は、ロール状に巻回され、原反ロールとして流通している。布地の原反ロールは、製品の種別が同じであっても、製造工程で用いられた材料や織機の違いに起因して、原反ロールの間で色や柄に僅かな差が存在する。このため、異なる原反ロールから引き出した布地が混在する積層体を裁断すると、パターンピースの間に色や柄の差が生じ、これらのパターンピースを縫製すると、均質性に欠けた被服が作製されるという不都合が生じる。
【0007】
そこで、本発明の課題は、短時間で、かつ、少ないスペースで、しかも、簡単な装置構成により積層体を形成でき、しかも、裁断して得られたパターンピースによって均質な被服を作製できる裁断方法及び裁断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の裁断方法は、
単一の原反ロールから複数の分割ロールを作製する工程と、
上記複数の分割ロールから複数のシート材を同時に送り出すと共に、上記送り出された複数のシート材を積み重ねた状態で、裁断テーブルの裁断面の上に一端から他端に向かって同時に引き出して積層体を形成する工程と、
上記裁断テーブルの裁断面の上の積層体を裁断する工程と
を備える。
【0009】
上記構成によれば、単一の原反ロールから複数の分割ロールが作製される。上記複数の分割ロールから複数のシート材が同時に送り出されると共に、上記送り出された複数のシート材が積み重なった状態で、裁断テーブルの裁断面の上に一端から他端に向かって同時に引き出されて積層体が形成される。この裁断テーブルの裁断面の上の積層体が、裁断される。上記積層体は、裁断テーブルの裁断面の上に、複数の分割ロールから複数のシート材が同時に引き出されて形成されるので、従来の裁断装置のように延反キャリアが往復移動する毎にロールから1枚ずつ引き出して積層体を形成するよりも、積層体を形成する時間を短くできる。したがって、従来よりも裁断にかかる時間を短くできる。また、裁断テーブルの裁断面の上に、複数の分割ロールから複数のシート材を引き出して積層体を形成するので、従来のように積層体を形成するための延反テーブルが不要であるから、裁断装置の設置スペースを小さくできる。また、従来の延反テーブル及び転送コンベヤが不要であるので、装置構成の簡単な裁断装置を用いて裁断を行うことができる。また、上記積層体は、単一の原反ロールを分割してなる複数の分割ロールから引き出されたシート材で形成されるので、上記積層体を裁断して得られるパターンピースは、同じ原反ロールから作製されたものである。したがって、これらのパターンピースの間に色や柄の差が生じないので、これらのパターンピースを縫製することにより、均質な被服が得られる。
【0010】
ここで、上記原反ロールとは、製造工程で連続して作製された一連のシート材が巻回されてなるロールをいい、例えば布地の場合は、織り工程で連続して作製された切れ目の無い布地が巻回されてなるロールをいう。また、上記裁断テーブルは、シート材が配置される裁断面と、この裁断面の上に配置されたシート材を所定の形状に裁断する裁断手段を有するものが広く該当する。また、裁断テーブルが裁断面にベルトコンベヤを有する場合、上記積層体を形成する工程において、上記複数のシート材の端部を重ねた状態でベルトコンベヤの一端に載置し、このベルトコンベヤで上記複数のシート材を移動させることにより、これらの複数のシート材を引き出してもよい。また、裁断テーブルが裁断面上を走行するキャリアを有する場合、上記積層体を形成する工程において、上記複数のシート材の端部をキャリアが把持して走行することにより、これらの複数のシート材を引き出してもよい。
【0011】
一実施形態の裁断方法は、上記分割ロールと裁断テーブルの裁断面の間に、上記複数のシート材の撓みを保持した状態で、上記複数の分割ロールからシート材を送り出す。
【0012】
上記実施形態によれば、分割ロールと裁断テーブルの裁断面の間に、複数のシート材の撓みを保持した状態で、上記複数の分割ロールからシート材を送り出すことにより、上記複数のシート材を送り出す速さと引き出す速さとを厳格に同期しなくても、上記複数のシート材を、ずれや皺を生じることなく適切に引き出すことができる。その結果、比較的容易な制御により、シート材に不整合の無い積層体を得ることができる。
【0013】
本発明の裁断装置は、上記裁断方法を実施するための裁断装置であって、
シート材を支持して裁断を行う裁断面を有する裁断テーブルと、
複数のシート材のロールを収容し、収容したロールからシート材を送り出す解反機と、
上記解反機で送り出されたシート材を上記裁断テーブルの裁断面の一端から他端に向かって移送する移送手段と、
上記裁断テーブルの裁断面の上を平面方向に駆動され、カッターによりシート材を裁断するカッターヘッドと
を備えることを特徴としている。
【0014】
上記構成によれば、解反機に複数の分割ロールを投入し、これらの分割ロールから複数のシート材を送り出すと共に、移送手段により、上記解反機から送り出されたシート材を裁断テーブルの裁断面の一端から他端に移送する。これにより、上記裁断面に、複数の分割ロールから送り出されたシート材を積層してなる積層体を得ることができる。この積層体をカッターヘッドで裁断することにより、単一の原反ロールから作製したパターンピースが得られる。
【0015】
一実施形態の裁断装置は、シート材のロールからシート材を送り出す解反ローラと、この解反ローラによって送り出されたシート材を巻き取ってシート材の新たなロールを作製する巻き取りローラとを有する巻き替え機を備える。
【0016】
上記実施形態によれば、解反ローラで原反ロールからシート材を送り出すと共に、送り出されたシート材を巻き取りローラで巻き取って新たなロールを作製する。新たなロールのシート材の長さが原反ロールよりも短い所定長さになると、シート材を切断して原反ロールから切り離し、原反ロールの残部から新たなロールを作製する。これを繰り返すことにより、単一の原反ロールから複数の分割ロールを作製することができる。
【0017】
一実施形態の裁断装置は、上記移送手段は、上記裁断テーブルに内蔵されたベルトコンベヤである。
【0018】
上記実施形態によれば、裁断テーブルに内蔵されたベルトコンベヤにより、比較的簡易な機構によってシート材を裁断テーブルの裁断面の上で移送することができる。
【0019】
一実施形態の裁断装置は、上記解反機は、上記ロールから送り出したシート材に撓み部分を形成する撓み形成手段を有する。
【0020】
上記実施形態によれば、解反機の撓み形成手段が、ロールから送り出したシート材に撓み部分を形成することにより、移送手段がシート材を移送する速さと、解反機がシート材を送り出す速さとを厳格に同期しなくても、上記複数のシート材を、ずれや皺を生じることなく適切に裁断面に引き出すことができる。その結果、比較的容易な制御により、シート材に不整合の無い積層体を得ることができる。
【0021】
一実施形態の裁断装置は、上記撓み形成手段は、上記シート材の撓みを検出する撓み検出部と、この撓み検出部が所定量の撓みを検出するまで、上記移送手段がシート材を移送する速度よりも、上記解反機がシート材を送り出す速度が高くなるように制御する制御部とを有する。
【0022】
上記実施形態によれば、撓み形成手段は、検出部でシート材の撓みを検出し、この検出部がシート材の所定量の撓みを検出するまで、移送手段がシート材を移送する速度よりも、上記解反機がシート材を送り出す速度が高くなるように制御部で制御することにより、所定量の撓みを容易に形成することができる。さらに、撓み形成手段は、撓み検出部が所定量の撓みを検出すると、制御部は、解反機がシート材を送り出す速度を、移送手段がシート材を移送する速度以下に制御するのが好ましい。これにより、シート材の撓みを所定量よりも小さくすることができる。
【0023】
一実施形態の裁断装置は、上記撓み検出部は、上記シート材の撓み部分で遮られる光路に沿って検出光を出射する発光手段と、この発光手段からの検出光を受光する光センサを有する。
【0024】
上記実施形態によれば、撓み検出部が、発光手段から出射された検出光の有無を光センサで検出することにより、シート材の所定量の撓みが形成されたことを容易に検知できる。
【0025】
一実施形態の裁断装置は、上記撓み検出部は、上記シート材の撓み部の内側に配置され、このシート材の撓み量に応じて移動する移動部材と、この移動部材の移動を検出する位置センサ又は角度センサを有する。
【0026】
上記実施形態によれば、撓み検出部が、移動部材の移動を位置センサ又は角度センサで検出することにより、シート材の撓み量を容易に検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態の裁断装置を模式的に示す側面図である。
【図2】実施形態の裁断装置が備える巻き替え機を示す正面図である。
【図3】巻き替え機の構造を模式的に示す断面図である。
【図4】原反ロールと分割ロールの関係を示す模式図である。
【図5】裁断テーブルと解反機の動作の様子を示す模式図である。
【図6】解反機の撓み形成手段の一例を示す模式図である。
【図7】解反機の撓み形成手段の他の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0029】
図1は、実施形態の裁断装置を模式的に示す側面図である。実施形態の裁断装置1は、裁断テーブル2と、解反機3と、巻き替え機4を備える。
【0030】
裁断テーブル2は、シート材としての布地Sを一端から他端に向かって移送する移送手段としてのベルトコンベヤ21を内蔵している。ベルトコンベヤ21は、裁断テーブル2の両端部に内蔵されたプーリ24,24の間にコンベヤベルト22が掛け渡されて構成されている。コンベヤベルト22の上側部の表面が、裁断テーブル2の上側面に露出して裁断面として機能する。コンベヤベルト22は、基布に立毛が編み込まれてなるモケット状のシートで形成されている。ベルトコンベヤ21の解反機3に近い側の端部には、プーリ24の設置位置の上方に、コンベヤベルト22の上に布地Sを導くガイドローラ25が配置されている。
【0031】
裁断テーブル2の上側面には、裁断面の上に載置された布地Sを裁断するカッターユニット4が設けられている。カッターユニット4は、裁断テーブル2の縁部に対向配置された2つのレールに沿って走行する一対のキャリッジと、これら1対のキャリッジの間に掛け渡された梁部材と、この梁部材に設置されたレールに沿って走行するカッターヘッド23を備える。カッターヘッド23は、布地を切断するカッターを内蔵している。カッターヘッド23は、キャリッジにより梁部材が裁断テーブル2のレールに沿って移動すると共に、カッターヘッド23に内蔵された駆動機構により梁部材の延在方向に移動することにより、裁断テーブル2の裁断面と平行の面内に駆動される。カッターヘッド23を裁断面と平行に駆動しながらカッターヘッド23のカッターを作動させることにより、裁断面上の布地Sを所定形状に裁断するようになっている。
【0032】
解反機3は、ベルトコンベヤ21の一端側に、裁断テーブル2に隣接して配置されている。解反機3は、本体フレーム31に、上下方向に配置された3つの解反ユニット32,32,32を有する。解反ユニット32は、図示しないモータによって回転駆動され、回転軸が所定間隔をおいて平行に配置された2つの解反ローラ34,34を有する。これら2つの解反ローラ34,34に接するように、解反ローラ34の間の上側に布地のロールが載置され、解反ローラ34が回転するに伴ってロールから布地を取り出すように構成されている。解反ユニット32には、解反ローラ34よりも裁断テーブル2側に、解反ローラ34から取り出された布地を裁断テーブル2に送るガイドローラ35が設けられている。裁断テーブル2側の解反ローラ34と、ガイドローラ35との間には、後に詳述する撓み形成手段が設けられている。
【0033】
巻き替え機4は、解反機3の近傍に配置され、布地の原反ロールRから解反機3に投入する分割ロールPを作製するものである。巻き替え機4は、上部に平行に配置された2つの巻き取りローラ41,41と、下部に平行に配置された2つの解反ローラ42,42と、巻き取りローラ41及び解反ローラ42の両端を支持すると共に巻き取りローラ41及び解反ローラ42の駆動装置が内蔵された支持フレーム43,43を有する。巻き替え機4は、図3に示すように、2つの解反ローラ42,42の間の上側に原反ロールRが配置され、解反ローラ42,42が回転するに伴って原反ロールRから布地を取り出す。原反ロールRから取り出された布地を上部に引き上げ、2つの巻き取りローラ41,41で巻き取って分割ロールPを作製するように構成されている。
【0034】
上記構成の裁断装置2により、布地Sを裁断してパターンピースを作製する動作を説明する。
【0035】
まず、布地の原反ロールRが巻き替え機4の解反ローラ42,42の上に配置され、巻き取りローラ41,41の上に芯材が配置され、この芯材に原反ロールRの布地が接続される。この後、巻き取りローラ41,41を回転駆動し、原反ロールRから取り出した布地を芯材に巻き取って分割ロールPを作成する。分割ロールPに所定長さの生地が巻き取られると、生地が切断されて原反ロールRと切り離され、新たな芯材が巻き取りローラ41,41の上に配置される。新たな芯材に、原反ロールPから取り出された布地が接続され、巻き取りローラ41,41を回転駆動し、原反ロールRから取り出した布地を芯材に巻き取って新たな分割ロールPを作成する。新たな分割ロールPに所定長さの生地が巻き取られると、生地が切断されて原反ロールRと切り離される。原反ロールRの残部は、3つ目の分割ロールPとして用いられる。こうして、図4に示すように、単一の原反ロールRから3つの分割ロールPが作製される。
【0036】
3つの分割ロールPは、解反機3の3つの解反ユニット32,32,32に夫々設置される。分割ロールPは、解反ユニット32の2つの解反ローラ34,34の上に配置され、分割ロールPから取り出された布地Sの先端部が、ガイドローラ35を通して裁断テーブル2のベルトコンベヤ21の一端側に、コンベヤベルト22とガイドローラ25の間に挟持される状態で設置される。3つの解反ユニット32の分割ロールPの布地Sの先端部が、裁断テーブル2のベルトコンベヤ21とガイドローラ25との間に挟持されると、解反ユニット32の解反ローラ34,34を回転駆動すると共に、ベルトコンベヤ21を作動させる。これにより、図5に示すように、解反機3により3つの分割ロールPから3つの布地Sが送り出されると共に、ベルトコンベヤ21により、3つの布地Sが積み重なった状態で一端から他端に移送される。こうして、ベルトコンベヤ21の表面の裁断面に、3つの布地Sを積層してなる積層体が形成される。
【0037】
ここで、解反機3の解反ユニット32は、撓み形成手段により、布地Sに撓みを形成しながら布地Sを送り出すようになっている。図6に示すように、解反ユニット32には、解反ローラ34とガイドローラ35の間に、解反ローラ34よりも下方に、撓み検出部として、検出光を出射する発光素子37と光センサ38が配置されている。発光素子37はLED(発光ダイオード)や半導体レーザ素子で形成されたもの用いることができ、光センサ38は光電センサを用いることができる。発光素子37及び光センサ38は、ベルトコンベヤ21及び解反機ユニット32の動作を制御する制御部に接続されている。上記発光素子37、光センサ38及び制御部により、撓み形成手段が構成されている。
【0038】
撓み形成手段は、次のように動作する。まず、解反機ユニット32に分割ロールPが設置され、分割ロールPの布地Sの先端部がベルトコンベヤ21とガイドローラ25との間に挟持された後、解反ユニット32の解反ローラ34,34とベルトコンベヤ21の駆動が開始される。このとき、光センサ38が発光素子37の光を検知すると、制御部は、解反ローラ34,34の駆動速度を増大させ、解反ユニット32が布地Sを送り出す速度を、ベルトコンベヤ21が布地Sを移送する速度よりも大きくする。これにより、解反ローラ34とガイドローラ35の間に、布地Sの撓みが形成される。布地Sの撓み部が増大して垂下し、撓み部によって発光素子37の光が遮られると、光センサ38による光の検知が停止する。これに応じて制御部は、解反ローラ34,34の駆動速度を低減させ、解反ユニット32が布地Sを送り出す速度を、ベルトコンベヤ21が布地Sを移送する速度と同じ又は少なくする。この後、布地Sの撓みが減少して光センサ38が発光素子37の光を再度検知すると、制御部は、解反ユニット32が布地Sを送り出す速度を、ベルトコンベヤ21が布地Sを移送する速度よりも大きくする。このように、光センサ38による発光素子37の光検出に応じて、解反ユニット32とコンベヤ21の動作を制御することにより、解反ユニット32とコンベヤ21の作動速度を厳密に同期しなくても、布地Sの撓みを保持することができる。布地Sの撓みを保持することにより、布地Sを、ずれや皺を生じることなく適切にベルトコンベヤ21の裁断面に引き出すことができる。その結果、比較的容易な制御により、布地Sに不整合の無い積層体を得ることができる。
【0039】
撓み形成手段は、撓み検出部として、発光素子37と光センサ38を用いるほか、図7に示すように、移動部材としての揺動アーム51と位置センサ54を用いることができる。揺動アーム51は、揺動軸53で解反機ユニット32に枢着されており、先端に布地Sと接触する接触部52を有する。揺動アーム51は、布地Sに撓み部の内側に接触部52が位置するように配置されている。揺動軸53には、揺動アーム51の接触部52を下方に付勢する付勢手段が内蔵されており、布地Sに撓みが生じると、接触部52が下方に移動するようになっている。位置センサ54はホール素子を含み、揺動アーム51にはホール素子で位置が検出される磁石が固定されている。位置センサ54は、接触部52が下方に位置するときの揺動アーム51の位置に配置されている。位置センサ54が揺動アーム51の接近を検知すると、接触部52が下方に移動したことが検知され、布地Sに撓みが形成されたことが検知されるようになっている。
【0040】
ベルトコンベヤ21の表面の裁断面に、3つの布地Sを積層してなる積層体が形成されると、カッターヘッド23が起動し、積層体の裁断を行ってパターンピースを作製する。
【0041】
このように、本実施形態によれば、3つの分割ロールPから3つの布地Sを同時に送り出すと共に、送り出された3つの布地を、積み重ねた状態で、ベルトコンベヤ21で裁断面の一端から他端に向かって同時に引き出して積層体を形成するので、従来の裁断装置よりも積層体を形成する時間を短くできる。したがって、従来よりも裁断にかかる時間を短くできる。また、裁断テーブル2の裁断面の上に、3つの分割ロールPから3つの布地Sを引き出して積層体を形成するので、従来の延反テーブルが不要であるから、裁断装置1の設置スペースを小さくできる。また、従来の延反テーブル及び転送コンベヤが不要であるので、裁断装置1の装置構成を簡単にできる。また、積層体は、単一の原反ロールRを分割してなる3つの分割ロールSから引き出された布地Sで形成されるので、この積層体を裁断して得られるパターンピースは、同じ原反ロールRから作製されたものである。したがって、これらのパターンピースの間に色や柄の差が生じないので、これらのパターンピースを縫製することにより、均質な被服が得られる。
【0042】
上記実施形態において、単一の原反ロールRから3つの分割ロールPを作製したが、分割ロールPの数は2つ以上の何個でもよい。すなわち、積層体を形成する布地Sの枚数に応じた数の分割ロールPを作製すればよい。
【0043】
また、解反機3は3つの解反ユニット32を有したが、解反ユニット32の個数は2つ以上の何個でもよい。
【0044】
また、解反機3に、3つの解反ユニット32を上下方向に配置したが、複数の解反ユニット32を解反機3から裁断テーブル2に向かう方向に配置してもよい
【0045】
また、積層体を形成する工程で、裁断テーブル2のベルトコンベヤ21により3枚の布地Sを引き出したが、裁断テーブル2に、裁断面上を走行するキャリアを設置し、複数の布地Sの端部をキャリアで把持して走行させることにより、複数の布地Sを裁断面の上に引き出してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 裁断装置
2 裁断テーブル
3 解反機
4 巻き替え機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の原反ロールから複数の分割ロールを作製する工程と、
上記複数の分割ロールから複数のシート材を同時に送り出すと共に、上記送り出された複数のシート材を積み重ねた状態で、裁断テーブルの裁断面の上に一端から他端に向かって同時に引き出して積層体を形成する工程と、
上記裁断テーブルの裁断面の上の積層体を裁断する工程と
を備えることを特徴とする裁断方法。
【請求項2】
請求項1に記載の裁断方法において、
上記分割ロールと裁断テーブルの裁断面の間に、上記複数のシート材の撓みを保持した状態で、上記複数の分割ロールからシート材を送り出すことを特徴とする裁断方法。
【請求項3】
請求項1に記載の裁断方法を実施するための裁断装置であって、
シート材を支持して裁断を行う裁断面を有する裁断テーブルと、
複数のシート材のロールを収容し、収容したロールからシート材を送り出す解反機と、
上記解反機で送り出されたシート材を上記裁断テーブルの裁断面の一端から他端に向かって移送する移送手段と、
上記裁断テーブルの裁断面の上を平面方向に駆動され、カッターによりシート材を裁断するカッターヘッドと
を備えることを特徴とする裁断装置。
【請求項4】
請求項3に記載の裁断装置において、
シート材のロールからシート材を送り出す解反ローラと、この解反ローラによって送り出されたシート材を巻き取ってシート材の新たなロールを作製する巻き取りローラとを有する巻き替え機を備えることを特徴とする裁断装置。
【請求項5】
請求項3に記載の裁断装置において、
上記移送手段は、上記裁断テーブルに内蔵されたベルトコンベヤであることを特徴とする裁断装置。
【請求項6】
請求項3に記載の裁断装置において、
上記解反機は、上記ロールから送り出したシート材に撓み部分を形成する撓み形成手段を有することを特徴とする裁断装置。
【請求項7】
請求項6に記載の裁断装置において、
上記撓み形成手段は、上記シート材の撓みを検出する撓み検出部と、この撓み検出部が所定量の撓みを検出するまで、上記移送手段がシート材を移送する速度よりも、上記解反機がシート材を送り出す速度が高くなるように制御する制御部とを有することを特徴とする裁断装置。
【請求項8】
請求項7に記載の裁断装置において、
上記撓み検出部は、上記シート材の撓み部分で遮られる光路に沿って検出光を出射する発光手段と、この発光手段からの検出光を受光する光センサを有することを特徴とする裁断装置。
【請求項9】
請求項7に記載の裁断装置において、
上記撓み検出部は、上記シート材の撓み部の内側に配置され、このシート材の撓み量に応じて移動する移動部材と、この移動部材の移動を検出する位置センサ又は角度センサを有することを特徴とする裁断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−79455(P2013−79455A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218814(P2011−218814)
【出願日】平成23年10月2日(2011.10.2)
【出願人】(591264474)有限会社ナムックス (10)
【Fターム(参考)】