説明

装置間通信システム

【課題】 親子局装置の間で授受される監視等の情報のデータ量に応じて変調方式を切替え、適切な伝送レートを設定可能な装置間通信システムを提供する。
【解決手段】 本発明の装置間通信システム100において、変調方式選択制御部であるMPU30,40が複数の変調部であるFSK・MOD31,45およびASK・MOD32,46と、複数の復調部であるFSK・DEM35,41およびASK・DEM36,42の中から装置間通信を行うデータ量に適合する変調部と復調部とを選択し、選択した変調部と復調部とを介して装置間通信を行わせることにより、親局装置120と子局装置141〜14nとの間にそれぞれ最適な伝送レートを設定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置間通信システムに関し、特に、基地局と電波不感地帯にある端末装置との間のRF信号の授受を可能にするために、基地局との間の通信を行う親局装置と、親局装置と光信号ケーブルを介して通信を行うとともに、親局装置と端末装置との間の通信を媒介する子局装置とを有し、親局装置と子局装置との間ではRF信号以外の監視および制御に関する装置間通信が行われる装置間通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
このような装置間通信システムは、基地局と、トンネル等の電波不感地帯にある端末装置との間の通信を良好に行うために用いられている。図5は、このような装置間通信システムの従来例を示すブロック図である。図5で示される装置間通信システム500は、基地局210と、親局装置220と、親局装置220に光回線231,232,〜,23nでそれぞれ接続された子局装置241,242,〜,24nと、モデム228および電話回線229を介して親局装置220に接続された監視局250とを有する。
【0003】
上述の装置間通信システム500において、基地局210と親局装置220との間の送受信は、有線あるいは無線で行われる。基地局210からの信号は、親局装置220で受信され、電気信号から光信号にE/O変換され、光回線231,232,〜,23nを通じて複数の子局装置241,242,〜,24nにそれぞれ伝達される。子局装置241,242,〜,24nは、受け取った光信号を電気信号にO/E変換し、RF信号としてアンテナから電波不感地帯に送信し、自局のサービスを受ける端末装置に受信させる。逆に、端末装置からの送信信号は、子局装置241,242,〜,24nに受信され、電気信号から光信号にE/O変換され、光回線231,232,〜,23nを通じて親局装置220に受信され、さらに、基地局210に伝達される。
【0004】
図6は、図5の親局装置220と、子局装置241(他の子局装置242,〜,24nについても同じである)との関係を詳しく示すブロック図である。図6の親局装置220において、基地局210からの下り信号DSは、親局制御部22cの制御の下で、増幅器22aによって増幅され、電気/光変換器22b(E/O変換器22b)によって光信号に変換され、光回線231の光信号ケーブル23aを介して子局装置241に引き渡される。子局装置241において、下り信号DSは子局制御部24cの制御の下で、光/電気変換器24a(O/E変換器24a)によって電気信号に変換され、増幅器24bによって増幅される。また、子局装置241が受信した上り信号PSは子局制御部24cの下で、増幅器24eによって増幅され、E/O変換器24dによって光信号に変換され、光回線231の光信号ケーブル23bを介して親局装置220に引き渡される。親局装置220において、上り信号PSは親局制御部22cの制御の下で、O/E変換器22eによって電気信号に変換され、増幅器22dによって増幅される。
【0005】
このように構成される親局装置220と子局装置241との間では、本線のRF信号の授受以外に、監視や制御に関する情報を授受できるようになっており、これを“装置間通信”と呼ぶ。これをさらに具体的にいうと、RF信号とは別の周波数帯を使用し、RF信号と重畳させて光信号ケーブルを介して通信を行うものである。そこで、このような装置間通信を行う機能部分を示したのが図7である。この図7においては、RF信号を授受する機能の部分の表示は、説明を簡略にするために省略されている。この場合、親局制御装置220から子局装置241に向けての下り回線において、送信信号はMPU50の制御の下でシリアル信号としてFSK変調部51(FSK・MOD51)に引き渡される。
【0006】
引き渡された信号は、FSK・MOD51でFSK変調を受け、アナログ信号として、E/O変換器22bに引き渡され、E/O変換器22bでE/O変換され、光信号ケーブル23aを介して子局装置241に送信される。子局装置241のO/E変換器24aに受信された信号は、O/E変換器24aでO/E変換され、FSK復調部61(FSK・DEM61)でFSK復調を受け、デジタル信号に復調される。子局装置241から親局装置220に向けての上り回線に関しても、FSK・MOD62、E/O変換器24d、光信号ケーブル23b、O/E変換器22e、FSK・DEM52を介して同様な原理で監視や制御に関する情報の送受信が行われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の従来の装置間通信システムにおいては、監視や制御に関する情報を伝送する場合にアナログ信号を用いるような構成となっている。この場合、監視系信号の出力を増大させると、本線のRF信号と干渉し、通信品質に悪影響を与えることが分かっている。そこで、低い信号レベルであっても通信品質の確保が可能なFSK変復調方式を採用してきた。しかし、この方式では、伝送レートは、1200bps程度が限度であり、例えば、親局装置から子局装置にデータダウンロードを行いたいといった要望があったとしても、その要望に対応するのは困難である。この要望に対応するのには、最低でも9600bps以上の伝送レートが必要だからである。FSK変復調方式の代わりにASK変復調方式を採用することも考えられるが、この方式はS/N比により伝送品質が大きく変動し、本線RF信号レベルとの干渉なく通信を行うためには極めて低い信号レベルに設定しなければならず、本線RF信号の伝送を停止することなく装置間通信を行うことはできない。
【0008】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、親局装置と子局装置との間の装置間通信における監視および制御に関する情報の授受の際に、授受する情報のデータ量に応じて変調方式を切り替え、適切な伝送レートを設定することができる装置間通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために本発明は、基地局と電波不感地帯にある端末装置との間のRF信号の授受を可能にするために、基地局との間の通信を行う親局装置と、親局装置と光信号ケーブルを介して通信を行うとともに、親局装置と端末装置との間の通信を媒介する子局装置とを有し、親局装置と子局装置との間ではRF信号以外の監視および制御に関する装置間通信が行われる装置間通信システムにおいて、親局装置と子局装置とのうち、少なくとも親局装置に配置され、装置間通信のために異なる変調方式をそれぞれ実行する複数の変調部と、前記複数の変調部からの変調信号を受ける親局装置または子局装置に配置された複数の復調部と、送信する情報のデータ量に適合する有利な変調方式を実行する変調部、および、その変調部に対応する復調部を選んで装置間通信を親局装置と子局装置との間で実行させる変調方式選択制御部とを有する。
【0010】
このような構成によれば、変調方式選択制御部は、複数の変調部および複数の復調部の中から装置間通信を行うデータ量に適合する変調部と復調部とを選択し、選択した変調部と復調部とを介して最適な装置間通信を行わせることができる。
【発明の効果】
【0011】
以上、詳述したように、本発明の装置間通信システムによれば、変調方式選択制御部が複数の変調部および複数の復調部の中から装置間通信を行うデータ量に適合する変調部と復調部とを選択し、選択した変調部と復調部とを介して装置間通信を行わせることにより、親局装置と子局装置との間に最適な伝送レートを設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の装置間通信システムの実施の形態1を示すブロック図、図2は、図1の親局装置と子局装置との構成及び接続を示すブロック図、図3は、図1の親局装置と子局装置との間の監視や制御に関する情報の授受を行う機能部分を示すブロック図である。図1の装置間通信システム100は、基地局110と、親局装置120と、親局装置120に光回線131,132,〜,13nでそれぞれ接続された子局装置141,142,〜,14nと、モデム128および電話回線129を介して親局装置120に接続された監視局150とを有する。
【0013】
上述の装置間通信システム100において、基地局110と親局装置120との間の送受信は、有線あるいは無線で行われる。基地局110からの信号は、親局装置120で受信され、電気信号から光信号にE/O変換され、光回線131,132,〜,13nを通じて複数の子局装置141,142,〜,14nに伝達される。子局装置141,142,〜,14nは、受け取った光信号を電気信号にO/E変換し、RF信号としてアンテナから電波不感地帯に送信し、自局のサービスを受ける端末装置に受信させる。逆に、端末装置からの送信信号は、子局装置141,142,〜,14nに受信され、電気信号から光信号にE/O変換され、光回線131,132,〜,13nを通じて親局装置120に受信され、さらに、基地局110に伝達される。
【0014】
図2は、図1の親局装置120と、子局装置141(他の子局装置142,〜,14nについても同じである)との関係を詳しく示すブロック図である。図2で示される親局装置120において、基地局110からの下り信号DSは、親局制御部12cの制御の下で、増幅器12aによって増幅され、電気/光変換器12b(E/O変換器12b)によって光信号に変換され、光回線131の下り光信号ケーブル13aを介して子局装置141に引き渡される。子局装置141において、下り信号DSは子局制御部14cの制御の下で、光/電気変換器14a(O/E変換器14a)によって電気信号に変換され、増幅器14bによって増幅される。また、子局装置141が受信した上り信号PSは子局制御部14cの制御の下で、増幅器14eによって増幅され、E/O変換器14dによって光信号に変換され、光回線131の上り光信号ケーブル13bを介して親局装置120に引き渡される。親局装置120において、上り信号PSは親局制御部12cの制御の下で、O/E変換器12eによって電気信号に変換され、増幅器12dによって増幅される。
【0015】
このように構成される親局装置120と子局装置141との間では、本線のRF信号の授受以外に、監視や制御に関する情報を装置間通信として授受している。このような装置間通信を行う機能部分の第1の例を示したのが図3である。図3においては、RF信号を授受する機能の部分の表示は、説明を簡略にするために省略している。この場合、親局制御装置120から子局装置141に向けての下り回線において、送信信号はMPU30の制御の下でシリアル信号としてFSK変調部31(FSK・MOD31)、または、ASK変調部32(ASK・MOD32)に引き渡される。引き渡された信号は、FSK・MOD31でFSK変調を受けるか、ASK・MOD32でASK変調を受けるかしてスイッチ33に引き渡される。
【0016】
スイッチ33はMPU30の指示により、FSK・MOD31の出力、または、ASK・MOD32の出力を選択し、E/O変換器12bに引き渡す。E/O変換器12bに引き渡された出力は、E/O変換器12bでE/O変換され、光信号ケーブル13aを介して子局装置141に送信される。光信号ケーブル13aを介して子局装置141のO/E変換器14aに受信された信号は、O/E変換器14aでO/E変換される。O/E変換された信号は、MPU30によって指示されたFSK変調、または、ASK変調に対応して、FSK復調部41(FSK・DEM41)または、ASK復調部42(ASK・DEM42)に引き渡される。FSK・DEM41、または、ASK・DEM42の出力は、MPU30によって指示されたFSK変調、または、ASK変調に対応して切り替えが行われているスイッチ43を介してMPU40に引き渡される。
【0017】
また、子局装置141から親局装置120に向けての上り回線に関しても同様な原理で信号の送受信が行われる。すなわち、子局装置141からの送信がFSK変調で行われるか、または、ASK変調で行われるかによって、MPU40は、稼働させるべきFSK・MOD45、または、ASK・MOD46を決定し、その決定に基づきスイッチ49を切り替え、この経路を通って送信信号はE/O変換器14dに引き渡される。E/O変換器14dに引き渡された出力は、E/O変換器14dでE/O変換され、光信号ケーブル13bを介して親局装置120のO/E変換器12eに送られ、O/E変換される。O/E変換された信号は、MPU30,40によって指示されたFSK変調、または、ASK変調に対応して、FSK・DEM35、または、ASK・DEM36に引き渡される。FSK・DEM35、または、ASK・DEM36の出力は、MPU30によって指示されたFSK変調、または、ASK変調に対応して切り替えが行われているスイッチ39を介してMPU30に引き渡される。
【0018】
上述したように、MPU30,40は、送受信時の事情に合わせてFSK変調、または、ASK変調を選択して使用することができる。ASK変調が必要でないときには、MPU30,40は、従来通り、FSK・MOD31,45およびFSK・DEM35,41を作動させてFSK変調およびFSK復調を行う。しかし、ASK変調が必要なときには、MPU30,40は、RF本線の通信を停止し、ASK・MOD32,46およびASK・DEM36,42を作動させてASK変調およびASK復調を行う。このことにより、ASK変復調でソフトウェアデータのダウンロードなどの高速動作を必要とする作業を実行することができる。また、親局装置同士の専用線接続による通信を行うことなく、2つの親局装置およびその配下にある全ての子局装置の監視や制御に関する情報を1つの親局装置に集約することができ、そこから監視局装置に報告することも可能となる。なお、変調方式の切り替えは、上り下り同時に変更することができるが、状況によっては、どちらか一方のみの切り替えであっても対応は可能である。
【0019】
次に、本発明の装置間通信システムの実施の形態2について図4を参照して説明する。図4においては、装置間通信を行う機能部分の第2の例を示している。この場合の装置間通信システムにおいては、図3で示される親局装置120と子局装置141との代わりに親局装置320と子局装置341(子局装置342,〜,34nは不図示)とが用いられる。図4においては、図3の場合と異なり、2つの変調方式を用いるのは、親局装置320から子局装置341への下り回線の送信を行う場合だけである。子局装置341では、バンドパスフィルタ47,48を用いてASK変調の信号と、FSK変調の信号とを分離している。
【0020】
上述の場合、親局装置320は、MPU30からFSK・MOD31への信号と、ASK・MOD32への信号とを別系統として出力し、RF信号の周波数以外の2つの異なる周波数(搬送波)を用い、E/O変換器12bで重畳させることにより、切り替えを無くし、子局装置341において、バンドパスフィルタ47,48を用いてASK変調の信号と、FSK変調の信号とを分離している。このような構成により、RF本線の信号を停止すること無しに、ソフトウェアデータ等のダウンロードを行うことができる。また、通信回線の簡素化および原価の低減を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の装置間通信システムの実施の形態1を示すブロック図である。
【図2】図1の親局装置と子局装置との構成及び接続を示すブロック図である。
【図3】図1の親局装置と子局装置との間の監視や制御に関する情報の授受を行う機能部分を示すブロック図である。
【図4】本発明の装置間通信システムの実施の形態2における親局装置と子局装置との間の監視や制御に関する情報の授受を行う機能部分を示すブロック図である。
【図5】装置間通信システムの従来例を示すブロック図である。
【図6】図5の親局装置と子局装置との構成及び接続を示すブロック図である。
【図7】図5の親局装置と子局装置との間の監視や制御に関する情報の授受を行う機能部分を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0022】
12a,12d,14b,14e 増幅器、12b,14d E/O変換器、12c,32c 親局制御部、12e,14a O/E変換器、13a 下り光信号ケーブル、13b 上り光信号ケーブル、14c,34c 子局制御部、30,40 MPU、31,45 FSK/MOD、32,46 ASK・MOD、35,41 FSK・DEM、36,42 ASK・DEM、100 装置間通信システム、110 基地局、120,320 親局装置、128 モデム、129 電話回線、131〜13n 光回線、141〜14n,341〜34n 子局装置、150 監視局装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局と電波不感地帯にある端末装置との間のRF信号の授受を可能にするために、基地局との間の通信を行う親局装置と、親局装置と光信号ケーブルを介して通信を行うとともに、親局装置と端末装置との間の通信を媒介する子局装置とを有し、親局装置と子局装置との間ではRF信号以外の監視および制御に関する装置間通信が行われる装置間通信システムにおいて、
親局装置と子局装置とのうち、少なくとも親局装置に配置され、装置間通信のために異なる変調方式をそれぞれ実行する複数の変調部と、
前記複数の変調部からの変調信号を受ける親局装置または子局装置に配置された複数の復調部と、
送信する情報のデータ量に適合する有利な変調方式を実行する変調部、および、その変調部に対応する復調部を選んで装置間通信を親局装置と子局装置との間で実行させる変調方式選択制御部とを有することを特徴とする装置間通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−60340(P2006−60340A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−237859(P2004−237859)
【出願日】平成16年8月18日(2004.8.18)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】