説明

装飾カバーリング及びグリップ層を備える筐体要素を製造する方法、装飾フォイル、及び筐体要素

製品の筐体要素(1)は、装飾側部を備えるフォイル(30)を有する。フォイル(30)のこの側部は、グリップ効果を実現するようグリップ層(20)によってカバーされ、フォイル(30)の他側部は、支持層によってカバーされる。望ましくは、グリップ層(20)は、リブ構造である。筐体要素(1)を製造する望ましい方途において、支持層及びグリップ層(20)の各々は、射出成形工程においてフォイル(30)に対して適用される。グリップ層(20)の材料の加工温度は、フォイル(30)の装飾カバーリングの印刷インクの活性化温度より大幅に低いため、印刷インクの流失が防止される一方、フォイル(30)の接着層の材料は、この比較的低い温度においてグリップ層(20)の材料に対する接着を確立するよう適合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にはグリップ効果を実現するようソフトタッチのグリップ部を備える要素である、家庭用電気器具に対する製品又はパーソナルケア製品等である製品の一部として適用されるよう意図される要素を製造する方法に係る。当該要素を有する製品のユーザは、グリップ部がない場合と比較してよりしっかりとしたグリップを有し得る。
【0002】
本発明はまた、家庭用電気器具に対する製品又はパーソナルケア製品等である製品を製造する方法に係る。当該方法は、要素を製造する上述された方法を実行する段階を有する。
【背景技術】
【0003】
携帯電話、オーディオ機器、及びパーソナルケア製品等である手持ち式電気器具は、構成要素の縮小化により更に小型化されている。同時に、かかる電子器具の良く装飾された外見は、必要とされる。グリップ効果を実現するようソフトタッチのグリップ部を備える電気器具を与えるよう所望される場合、装飾部分に対するスペースは極僅かであり、その結果、電気器具は、消費者に対するアピールをより少なくしてしまう。
【0004】
ソフトタッチのグリップ部を備える電気器具の周知の一例は、シャワー等の濡れる環境において使用されるよう意図される電気シェーバである。多くの場合において、シェーバのユーザがシェーバにおけるグリップを失い、床に落下して損傷する状況につながり得ることを防ぐよう、シェーバの一部は、ゴム状材料によってカバーされる。この材料の存在によりユーザは、ユーザの手が濡れている際、並びに/あるいはシェーバが濡れている際でも、シェーバにおいてよりしっかりとしたグリップを有することができる。
【0005】
場合によっては、器具のソフトタッチのグリップ部は、例えばパッド印刷として既知である工程を用いて、局所的に装飾される。しかしながら、ソフトタッチのグリップ部の表面全体をカバーすることは、特に該部分及び表面が湾曲形状を有する際には可能ではない。
【0006】
要素を装飾するための周知の技術は、インモールドラベリング又は射出成形として既知である。これは、多くの用途を有し且つとりわけ射出成形製品をラベリングするために使用されるよう適切である、ラベリング技術である。ラベリング工程を実行することを目的として、インモールドラベルは与えられ、該インモールドラベルは、その上に適用される熱活性化された接着剤を有する。ラベリング工程は、インモールドラベルをモールド(鋳型)に配置する段階、モールドを閉じる段階、及び溶融プラスチック材料をモールドへと射出する段階、を有する。工程において、プラスチックからの熱は、接着剤を活性化させ、ラベルがプラスチック製品に対して接着するようにする。最新の技術にしたがって、インモールドラベリング技術がソフトタッチのグリップ部を備えられる必要もある要素を装飾するために使用される際、該グリップ部は、要素の装飾範囲の外側において与えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、グリップ効果を実現するようソフトタッチのグリップ部を備える要素を製造する方法を与える、ことを目的とする。当該方法において、グリップの存在に関わらず、要素の全体的な装飾された外観を作ることは、可能である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、家庭用電気器具に対する製品又はパーソナルケア製品等である製品の一部として適用されるよう意図される要素を製造する方法によって達成される。当該方法は:
・ 装飾側部(decorated side)を備えるフォイルを与える段階;
・ 第1の材料を有する支持層を装飾側部ではないフォイルの他側部に対して適用する段階;及び、
・ 第2の材料を有するグリップ層をフォイルの装飾側部に対して適用する段階、
を有する。
【0009】
本発明によれば、装飾側部を備えるフォイルは、要素の装飾された外見を実現するよう使用され、グリップ層は、フォイルの装飾側部に対して適用される。このようにして、要素のソフトタッチのグリップ部は、形成される。本発明の範囲内において、グリップ部の材料は半透明(translucent)であり得るため、装飾は、グリップ部を介して可視であり得る。フォイルの装飾側部に対して適用されるグリップ層に加えて、他の層、即ち支持層が与えられ、フォイルの他側部に対して適用される。この支持層に基づき、要素は、所望される剛性及び堅固性を獲得する。望ましくは、支持層を形成する材料は、温度300℃等である295℃を上回る温度において加工されるため、フォイルに対する支持層の十分な接着は、実現され得る。
【0010】
本発明の多くの実現可能な用途において、ある材料は、固化状態において支持層を形成する第1の材料より軟らかい場合、グリップ層を形成する第2の材料として使用される、ことが望ましい。比較的軟らかい材料は、所望されるグリップ効果を実現するよう適切である一方、比較的硬い材料は、要素の所望される剛性及び堅固性を実現するよう適切である。しかしながら、本発明に従った方法はまた、グリップ層を備える可撓性の要素を製造することを目的として適用され得、該要素において支持層は、グリップ層より更に軟らかい材料を有し得る。
【0011】
有利には、固化状態において70ショアAより低い硬度を備える材料は、グリップ層を形成するよう第2の材料として使用される。そのようにして、十分なグリップ効果が実現されることは、確実なものとされる。更には、所定のパターンに従った中断部(遮断、interruptions)を有するグリップ層を形成することは、グリップ効果に貢献する。例えば、中断部のパターンは、リブ構造がグリップ層において得られるよう、選択され得る。
【0012】
本発明に従った方法は、複雑な三次元形状を含む所望される形状を備える要素を製造することを目的として使用され得る。当該方法を実行する実用的な方途において、フォイルは、支持層及びグリップ層を適用する段階に先立って、所定の形状を与えられる。
【0013】
望ましくは、支持層をフォイルに対して適用する段階は、射出成形に対してモールドにおいてフォイルを配置すること、液化状態における第1の材料をモールドへと導入すること、及び、液体材料を凝固することによって実行され、また、支持層を備えるフォイルに対してグリップ層を適用する段階は、射出成形に対してモールドにおいて支持層を備えるフォイルを配置すること、液化状態における第2の材料をモールドへと導入すること、及び、液体材料を凝固させることによって実行される。
【0014】
一般的には、要素が2つの射出成形段階に基づいて製造される工程は、二液型(two−component)射出成形工程として既知である。該工程において、第1の射出成形段階の結果として得られる中間生成物は、第2の射出成形段階中に他の材料を有して更に充填される他のモールドにおいて配置される。周知の選択肢によれば、2つのモールドキャビティ及び1つの回転可能に配置されるモールド部を備えるモールドは、自動的に二液型射出成形工程を実行することを目的として適用される。
【0015】
本発明に従った方法が2つの射出成形段階を有する望ましい状況において、当該方法は、インモールドラベリング工程と二液型射出成形工程との組合せに基づき、フォイルは、インモールドラベルの一種としてみなされる、ことが認識され得る。高い可視性及び機能性要件において適切なグリップ感触を有する装飾要素を得るよう、互いに依存する複数の態様が考えられる必要がある。かかる態様には、フォイルに対する第1の材料及び第2の材料の接着、及び、フォイルの両側部上における射出成形工程中のフォイルにおける印刷インクの流失(washout)があげられる。
【0016】
本発明に従った方法が要素を製造することを目的として適用される際、たとえ要素が接着における低減する効果、及び/又は印刷インクの流失における増大する効果を有するような既知である特別な特性を備える場合であっても、フォイルに対する層の優れた接着を得ること、及び、装飾の劣化を避けることは、十分可能である。この点において、一般的に、金属表面効果が所望され、極度に湾曲された形状が所望され、半透明材料がグリップ層を形成するよう使用され、70ショアAより低い硬度を有する材料がグリップ層を形成するよう使用され、高い耐薬品性が所望され、並びに/あるいは小さな壁厚さを備える薄いゴムストリップを有するグリップ層を作ることが所望される、という状況において、影響を及されない装飾(unaffected decoration)及び十分な程度の接着を保証することは、より困難である、ことが留意される。
【0017】
本発明はまた、装飾側部を備えるフォイルを製造する方法に係る。フォイルは、例えば前述された工程であるような、家庭用電気器具に対する製品又はパーソナルケア製品等である製品の一部として適用されるよう意図される要素を製造する工程において使用されるよう適切である。本発明によれば、装飾側部を有するフォイルを製造する方法は、以下の段階:
・ ベースフォイルを与える段階;
・ 着色材料を有する少なくとも1つの有色層を有する装飾カバーリングを装飾側部であるよう意図されるベースフォイルの一側部に対して適用する段階;及び、
・ 結合材料を有する接着層を装飾カバーリングの上部上において適用する段階、
を有し、該結合材料は、装飾カバーリングの少なくとも1つの有色層の着色材料の活性化温度より大幅に低い活性化温度を有する。
【0018】
かかる段階を実行する結果として、ベースフォイル、ベースフォイルの一側上に配置される装飾カバーリング、及び装飾カバーリングの上部上に配置される接着層を有するフォイルは、獲得される。フォイルが装飾された外観及びソフトタッチのグリップ部を有する要素を製造する工程において適用される際、支持層は、ベースフォイルの自由側部、即ち、装飾カバーリング及び接着層が位置決めされる側部ではないベースフォイルの他側部に対して適用される。工程において、装飾カバーリングにおける印刷インクの流失は、ベースフォイルが支持層の材料と装飾カバーリングとの間においてバリアを構成するため、発生しない。
【0019】
フォイルの装飾カバーリングは、着色材料を有する1つ又はそれより多くの有色層を有する。この材料の活性化温度は比較的高く、例えば260℃を上回る一方、接着層の材料の活性化温度は比較的低く、例えば200℃を下回る。フォイルが装飾的外観及びソフトタッチのグリップ部を備える要素を製造する工程において適用される際、比較的軟らかい材料を有するグリップ層は、接着層の上部上に適用される。フォイルの接着層及び装飾カバーリングの材料の異なる活性化温度により、一方ではフォイルの接着層に対する優れた接着を保証するよう、また他方では装飾カバーリングの印刷インクの流失を防ぐようある温度においてグリップ層の材料を加工することは、十分に可能である。例えば、処理温度は、200℃に接近され得る。特にはグリップ層及びフォイルを有する要素が消費者製品である場合に、グリップ層が接着層から容易に剥がれ落ち得る状況は避けられる必要があるため、フォイルの接着層に対するグリップ層の優れた接着は大変重要である、ことが完全性のために留意される。
【0020】
フォイルの装飾カバーリングの少なくとも1つの有色層は、少なくとも1つの中断部を有して形成され得る。このようにして、有色層において1つ又はそれより多くの窓を作ることは可能である。装飾カバーリングが複数の有色層を有する際、また少なくとも1つの他の有色層によってカバーされる有色層の1つが少なくとも1つの中断部を与えられる際、特別な視覚的効果が得られ得る。フォイルが半透明材料を有するグリップ層を備える要素の一部であり、要素が内部光源を備える製品の外側において位置付けられる筐体要素である際、フォイルにおける少なくとも1つの窓は、光を通し得、光は、上部有色層及びグリップ層によって散乱される。
【0021】
本発明の範囲内において、興味深い視覚的効果を得る多くの方途は、実現可能である。例えば、装飾カバーリングは、金属表面効果を実現するよう半透過性(semitransparent)真空金属化層を有し得る。
【0022】
本発明は更に、家庭用電気器具に対する製品又はパーソナルケア製品等である製品に対する要素に係る。当該要素は:
・ 装飾側部を備えるフォイル;
・ 該装飾側部ではないフォイルの他側部をカバーする一方、フォイルの該他側部に固定的に接続される、第1の材料を有する支持層;及び、
・ フォイルの装飾側部をカバーする一方、フォイルの装飾側部に対して固定的に接続される、第2の材料を有するグリップ層、
を有する。
【0023】
要素は、前述された方途において製造され得る。更には、要素の一部であるフォイルは、前述されたフォイルであり得る。しかしながら、フォイルは、他の種類でもあり得、例えばベースフォイル及び装飾カバーリングのみを有し、接着層を有さないフォイルであり得る。
【0024】
望ましくは、要素は、製品の外側において位置付けられるよう意図される筐体要素である。その場合、要素の存在に基づいて、製品は、所望の通り装飾を有し得る一方、手が濡れている際でも、製品のユーザが製品をしっかりと掴み得るようグリップ層を有する。
【0025】
本発明は、前述された要素にのみ係るのではなく、この要素を有する、家庭用電気器具に対する製品及びパーソナルケア製品等である製品を有する製品の一群から選択される製品にも係る。
【0026】
本発明の上述及び他の態様は、以下の本発明に従った要素の一実施例の説明を参照して明らかに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の望ましい実施例に従った要素の斜視図を概略的に示す。
【図2】本発明の望ましい実施例に従った要素の斜視図を概略的に示す。
【図3】図1及び2に示される要素の断面の一部の側面図を概略的に示す。
【図4】図1及び2に示される要素を有するシェーバの側面図を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明はこれより、図面を参照して更に詳述される。図中、同等又は同様の部分は、同一の参照符号によって示される。
【0029】
図1及び2は、シェーバにおいて使用されるよう意図される筐体要素1を示す。特には、筐体要素1は、シェーバのグリップ部の一部、即ちユーザがシェーバを用いてシェービング行為を行なうことを所望する際にユーザによって掴まれるシェーバの一部分、であるよう意図される。図1中、筐体要素1は外側を上方にして図示され、図2中、筐体要素1は内側を上方にして図示される。
【0030】
図示される例において、筐体要素1は、2つの穴2を有する。穴2の数は、本発明の範囲内において必須ではなく、穴2は全て省略され得る。穴2は、例えば、シェーバを操作するためのボタン又はそれと同様のものを収容するか、あるいはディスプレイに対して妨害されない視野を与える役割を有する。
【0031】
筐体要素1は、複数層構造を有し、該層は、しっかりと相互に接続される。特には、筐体要素1は、比較的硬い材料を有する支持層10、グリップ効果を与えるよう比較的軟らかい材料を有するグリップ層20、及び、支持層10とグリップ層20との間において配置されるフォイル30を有する。
【0032】
支持層10は、筐体要素1の一定の剛性を保証する役割を有する。図示される例において、支持層10は半透明であるため、筐体要素1は、内部光源を備えるシェーバの一部として適用されるよう適切であり、筐体要素1の少なくとも複数の部分を介して筐体要素11の内側から外側まで光を光らせることは、所望される。支持層10は、例えばポリカーボネート(PC)、メチルメタクリラートアクリロニトリルブタジエンスチレン(MABS)、ポリメチルメタクリラート(PMMA)、又はポリエチレンテレフタレート(PET)である適切な材料を有し得る。
【0033】
グリップ層20は、グリップ効果を実現する役割を有する。言い換えれば、グリップ層20は、ユーザが筐体要素1をしっかりと掴むようにする。グリップ効果に寄与する2つの要因は、グリップ層20が比較的軟らかい変形可能な材料を有するという事実、及び、グリップ層20がリブ構造を有するという事実である。特には、リブ構造は、グリップ層20が複数の細長い中断部21を備えられるという事実に基づいて実現され、2つの中断部21間において延在するグリップ層20の一部は、リブ22として見なされ得る。中断部21の位置において、フォイル30は、自由にアクセス可能である。図示される例において、中断部21はいずれも、グリップ層20の周囲に対して完全に延在していないため、リブ22は、いずれも自由端を有さないが、その代りにグリップ層20の材料の周囲リムに対して接続される。この中断部21及びリブ22の構造は、フォイル30上におけるリブ22の安定した位置付けに寄与し、またリブ22がユーザによって加えられ得る剪断力に耐え得るようにする。
【0034】
望ましくは、際だったグリップ効果を実現するよう、グリップ層20の材料の硬度は、70ショアAより低い。グリップ層20は、半透明であり得、下方におけるフォイル30は、中断部21を介して示されるだけではなく、グリップ層20の材料が存在する位置においても示され得る。グリップ層20において適用され得る材料の一例は、例えばスチレンエチレンブチレンスチレン(SEBS)である、熱可塑性エラストマ(TPE)等の合成ゴム状材料である。
【0035】
フォイル30は、良く装飾される外見を備える筐体要素1を与える役割を有する。フォイル30の構造はこれより、図3に基づいて説明される。
【0036】
フォイル30は、ベースフォイル31、装飾カバーリング32、及び接着層33を有する。装飾カバーリング32は、ベースフォイル31と接着層33との間に挟まれ、接着層33は、半透明である。ベースフォイル31は、筐体要素1の製造工程中に装飾カバーリング32の劣化を防ぐよう、装飾カバーリング32から支持層10を分離する機能を有し、また、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、又はポリプロピレン(PP)等の材料を有し得る。接着層33は、フォイル30及びグリップ層20を相互に接続する機能を有する。有利には、接着層33は、200℃を下回る活性化温度を有する結合材料を有するため、筐体要素1の製造工程中、フォイル30に対するグリップ層20の強化された接着は、後述される通り、装飾カバーリング32の劣化の危険性を有することなく得られ得る。
【0037】
図示される例において、装飾カバーリング32は、着色材料を有する3つの有色層34,35,36を有する。装飾カバーリング32の有色層34,35,36の数は必須ではなく、有色層34,35,36の数は、装飾カバーリング32が位置決めされるフォイル30の側部、即ちフォイル30の装飾側部の外観に関する所望に依存して、3つより少なくてもよく、あるいは3つより多くてもよい、ことが留意される。更には、装飾カバーリング32の少なくとも1つの有色層34,35,36は、適切な特徴を有し得、したがって、有色層34,35,36の以下の詳細な説明は、本発明の範囲内に存在する多数の可能性の一例としてのみ理解されるべきである。
【0038】
内側有色層34、即ちベースフォイル31をカバーする有色層34は、暗色ベースを実現するよう黒色の印刷インクを有する。内側有色層34は、中断部37を有する。該中断部37は、筐体要素1のうちいずれか一項記載の側から筐体要素1の外側まで光を通過させるよう窓としての役割を有するよう意図される。
【0039】
中間有色層35、即ち内側有色層34をカバーする有色層35は、半透過性真空金属化層であり、ミラー効果を達成する役割を有する。
【0040】
外側有色層36、即ち中間有色層35をカバーする有色層36は、有色印刷インクを有する。外側有色層36は、1つ又はそれより多くの印刷インクを有するサブ層を有し得、異なる色の印刷インクが使用され得るため、所望される装飾が実現され得る。
【0041】
望ましくは、装飾カバーリング32において使用される全ての印刷インクは、260℃を越える活性化温度を有する。このようにして、筐体要素1の製造工程中における印刷インクの流失は、防がれる。接着層33の結合材料が200℃を下回る活性化温度を有するという事実により、グリップ層20の材料の加工温度がより高くされる必要はなく、装飾カバーリング32における印刷層の温度は、その活性化温度に近付かない。
【0042】
以下において、筐体要素1の製造工程を実行する望ましい方途が説明される。
【0043】
まず始めに、フォイル30は、ベースフォイル31を与えること;装飾カバーリング32の多種の有色層34,35,36を連続的に形成することによってベースフォイル31に対して装飾カバーリング32を適用すること;及び、接着層33を装飾カバーリング32に対して適用すること、によって製造される。更には、適切な場合、フォイル30が成形及び切断される。
【0044】
第二に、フォイル30に基づき、筐体要素1は、以下の段階を実行することによって形成される:
・ モールドにおけるモールドキャビティ(図示せず)においてフォイル30を位置付ける段階。スペースは、ベースフォイル31が位置決めされるフォイル30の側部において存在する。;
・ モールドを閉じる段階;
・ 液化状態において筐体要素11の支持層10を形成する材料をモールドに導入する段階。該材料は、例えばモールドにおけるスペースの充填を確実なものとするよう、またベースフォイル31に対する材料の十分な接着を達成するよう300℃の比較的高温で加工される。;
・ 支持層10の材料を凝固させる段階;
・ モールドを開放し、フォイル30及び支持層10を有する中間生成物をモールドキャビティから取り出す段階;
・ モールドの他のモールドキャビティにおいて中間生成物を位置付けるか、あるいは、他のモールド(図示せず)を与えて、該モールドのモールドキャビティにおいて中間生成物を位置付ける段階。スペースは、接着層33が位置決めされるフォイル30の側部において存在する。;
・ モールドを閉じる段階;
・ 液化状態において筐体要素1のグリップ層20を形成する材料をモールドに導入する段階。材料は、例えばフォイル30の装飾層32の印刷インクの流失を防ぐよう195℃である比較的低温で加工される。;
・ グリップ層20の材料を凝固させる段階;
・ モールドを開放し、フォイル30、支持層10、及びグリップ層20を有する最終生成物をモールドキャビティから取り出す段階。
【0045】
前述された方法を適用することによって、装飾とグリップ効果との独特な組合せは、例えば一体的な全体を形成するよう接合される装飾部とグリップ部を備える製品を与えることによって実現され得る。フォイル30の装飾カバーリング32に基づき、所望される通りに装飾的外見を作ることは、可能である。グリップ層20が半透明である際、全ての装飾は示され得、追加的な視覚効果は、グリップ層20の構造の結果として得られる。グリップ層20はまた、材料の中断部のない層(uninterrupted layer)を有し得るが、リブ構造がグリップ効果に大きく寄与するため、かかる構造を有することが望ましくあり得る。
【0046】
支持層10及びグリップ層20をフォイル30に対して適用することを目的とする射出成形技術の適用は、自動大量生産を可能にするため、望ましい。2つのモールドを使用すること、並びに、フォイル30及び支持層10を有する中間生成物を第1のモールドから第2のモールドまで移すことは可能であるが、一般的な二液型射出成形工程から既知である通り、2つのモールドキャビティを備える1つのモールドと回転可能に配置されるモールド部分とを使用することも可能である。筐体要素1の製造工程は、二液型射出成形工程に非常に類似するが、フォイル30がまず与えられ、支持層10を形成する材料が射出される前にモールドにおいて位置付けられ、その後グリップ層20を形成する材料がフォイル30上へと射出される、という点において異なる。
【0047】
支持層10は、例えばシェーバの組立て中にシェーバの1つ又はそれより多くの他の部分に対して筐体要素1を取り付けるよう、適切な突起、フック形状部材等を備えられ得る、ことが留意される。
【0048】
フォイル30の製造の工程の直後には、支持層10及びグリップ層20をフォイル30に対して適用する工程が続く、ということは必ずしも必須ではない。実際には、両方の工程を独立して行なうことが望ましい場合もあり得る。一利点は、筐体要素1の異なる装飾外観を作ることにおける大きな柔軟性が得られる、ということであり、高価な機器を適合させる必要はない。新しい外観を作るよう必要とされるのは、フォイル30の製造工程中にフォイル30の装飾カバーリング32の異なる材料及び異なる印刷インクを与えることのみである。
【0049】
ポリカーボネート等である材料に対してグリップ層20の材料の接着を比較すると、フォイル30の接着層33に対するグリップ層20の材料の接着は、更に優れている。接着力は、大変高くあり得るため、フォイル30のグリップ層20を剥がすよう必要とされる一方、グリップ層20の表面に対して45°の角度の元で加えられる力は、70Nより高く、実際には、手でグリップ層20をフォイル30から取り外すことは不可能である。
【0050】
図4は、シェービング行為を行なうことを目的としてシェーバ40のユーザによって掴まれるよう意図されるグリップ部41を備える電気シェーバ40を示す。グリップ部41は、本発明に従った上述の筐体要素11を有する。故に、優れたグリップ効果が実現され、シェーバ40が濡れた環境において使用される際でも、ユーザの手からシェーバ40が滑り落ちる危険性は、実際にはない。
【0051】
完全性のため、シェーバ40は、シェービングされるべき皮膚の一部に接触するよう意図される複数のシェービングヘッド43を備えるシェービング部42を有する。各シェービングヘッド43の内部において、毛髪を切断するよう適合された可動に配置されるカッター部材(図示せず)は存在し、シェービングヘッド43の内部空間に対してシェービングされる毛髪を通し、かかる毛髪がカッター部材の作動範囲に到達し得るようにするための穴を備えるキャップ44によってカバーされる。ユーザがグリップ部41を掴み、皮膚の一部に沿ってシェービング部42を動かす際、カッター部材が動かされる一方、シェービングヘッド43のキャップ44において毛髪を捕捉し、カッター部材によってかかる毛髪を切断する連続的な工程、即ちシェービング工程は、実行される。
【0052】
本発明に従った筐体要素1の適用がシェーバ40に関連して図示されるという事実は、筐体要素1の適用がこの状況に制限されること等を意味するよう理解されるべきではなく、本発明に従った筐体要素1は、家庭用電気器具に対する製品及びパーソナルケア製品を含む広範囲の製品において適用されるよう適切である。
【0053】
本発明の範囲は前述の例に限定されず、その複数の補正及び修正は、添付の請求項において定義付けられる本発明の範囲から逸脱することなく可能である、ということは当業者にとって明らかである。本発明が図面及び明細書において詳細に図示及び説明されてきたが、かかる図示及び説明は、解説又は典型であるだけであり、制限的ではないと考えられるべきである。本発明は、開示される実施例に限定されない。
【0054】
本発明は、複雑な三次元形状を含む所望される形状を有する要素を製造することを目的として適用され得、該要素は、装飾的外観が評価されるいかなる製品での使用にも適切であり得る。シェーバ40の上述された例に加えて、かかる要素は、ヘアトリマ、ヘアドライヤ、(携帯)電話等である手持ち式電気器具、又はコーヒーメーカ等である家庭用電気器具であり得る。本発明はまた、着用可能な電子機器、オーディオ、及びビデオの分野においても十分に適用可能である。
【0055】
本発明を適用することによって得られる要素は、軽量であり得、比較的小さな厚さを備える。例えば、支持層10の厚さは1mmより大きい必要はなく、グリップ層20は更に薄くなり得、その厚さは例えば0.65mmであり得る。
【0056】
開示される実施例に対する変形は、図面、明細書、及び添付の請求項の研究から本願発明を事項する当業者によって理解及び達成され得る。請求項中、「有する」という語は、その他の段階又は要素を除外するものではなく、単数形で示される語は、その複数の存在を除外するものではない。特定の方策が相互に異なる従属請求項においてあげられているという単なる事実は、かかる方策の組合せが有利に使用され得ない、ことを示すものではない。請求項における参照符号は、本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。
【0057】
前述において、シェーバ40等である製品の筐体要素1が説明されてきた。筐体要素1は、装飾側部を備えるフォイル30を有する。フォイル30の該側部は、グリップ効果を実現するようグリップ層20によってカバーされる。フォイル30の他側部は、筐体要素1の所望される剛性を実現するよう支持層10によってカバーされる。特には、フォイル30は、ベースフォイル31、装飾カバーリング32、及び接着層33を有し、装飾カバーリング32は、着色材料を有する少なくとも1つの有色層34,35,36を有する。望ましくは、グリップ層20は、リブ構造を有し、支持層10の材料より軟らかい材料を有する。
【0058】
筐体要素1を製造する望ましい方途において、支持層10及びグリップ層20の各々は、射出成形工程においてフォイル30に対して適用される。グリップ層20の材料の加工温度は、フォイル30の装飾カバーリング32の印刷インクの活性化温度より大幅に低いため、印刷インクの流失が防がれる一方、フォイル30の接着層33の材料は、この比較的低温においてグリップ層20の材料に対する接着を確立するよう適合される。
【0059】
グリップ層20は、半透明材料を有し得る。いずれの場合においても、本発明が実用化される際、優れた装飾外見及び優れたグリップ特性をいずれも備える要素1を得ることは、可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
家庭用電気器具に対する製品又はパーソナルケア製品等である製品の一部として適用されるよう意図される要素を製造する方法であって:
・ 装飾側部を備えるフォイルを与える段階と;
・ 第1の材料を有する支持層を前記装飾側部ではない前記フォイルの他側部に対して適用する段階と;
・ 第2の材料を有するグリップ層を前記フォイルの前記装飾側部に対して適用する段階と、
を有する方法。
【請求項2】
固化状態において前記支持層を形成する前記第1の材料より軟らかい材料は、前記グリップ層を形成する前記第2の材料として使用される、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
固化状態において70ショアAより低い硬度を有する材料は、前記グリップ層を形成する前記第2の材料として使用される、
請求項1記載の方法。
【請求項4】
半透明の材料は、前記グリップ層を形成する前記第2の材料として使用される、
請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記グリップ層は、所定のパターンに従って中断部を有して形成される、
請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記支持層及び前記グリップ層を適用する前記段階に先立って、前記フォイルは、所定の形状を与えられる、
請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記支持層を前記フォイルに対して適用する前記段階は、前記フォイルを射出成形に対してモールドにおいて配置することと、液化状態における前記第1の材料を前記モールドへと導入することと、該液体材料を凝固させることとによって実行される、
請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記支持層を備える前記フォイルに対して前記グリップ層を適用する前記段階は、射出成形に対してモールドにおいて前記支持層を備える前記フォイルを配置することと、液化状態における前記第2の材料を前記モールドへと導入することと、該液体材料を凝固させることとによって実行される、
請求項1記載の方法。
【請求項9】
装飾側部を有するフォイルを製造する方法であって、
該フォイルは、家庭用電気器具に対する製品又はパーソナルケア製品等である製品の一部として適用されるよう意図される要素を製造する工程において使用されるよう適切であり、
当該方法は:
・ ベースフォイルを与える段階と;
・ 着色材料を有する少なくとも1つの有色層を有する装飾カバーリングを前記装飾側部であるよう意図される前記ベースフォイルの一側部に対して適用する段階と;
・ 結合材料を有する接着層を前記装飾カバーリングの上部上において適用する段階と、
を有し、
前記結合材料は、前記装飾カバーリングの前記少なくとも1つの有色層の前記着色材料の活性化温度より大幅に低い活性化温度を有する、
方法。
【請求項10】
260℃を上回る活性化温度を有する材料は、前記装飾カバーリングの前記少なくとも1つの有色層を形成するよう前記着色材料として使用され、
200℃を下回る活性化温度を有する材料は、前記接着層を形成するよう前記結合材料として使用される、
請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記装飾カバーリングの前記少なくとも1つの有色層は、少なくとも1つの中断部を有して形成される、
請求項9記載の方法。
【請求項12】
家庭用電気器具に対する製品又はパーソナルケア製品等である製品の一部として適用されるよう意図される要素を製造する工程において使用されるよう適切である、装飾側部を備えるフォイルであって:
・ ベースフォイルと;
・ 該ベースフォイルの一側部をカバーする、着色材料を有する少なくとも1つの有色層を有する装飾カバーリングと;
・ 前記装飾カバーリングの上部において適用される、前記装飾カバーリングの前記少なくとも1つの有色層の前記着色材料の活性化温度より大幅に低い活性化温度を有する結合材料を有する接着層と、
を有するフォイル。
【請求項13】
前記装飾カバーリングの前記少なくとも1つの有色層の前記着色材料の前記活性化温度は、260℃を上回り、
前記接着層の前記結合材料の前記活性化温度は、200℃を下回る、
請求項12記載のフォイル。
【請求項14】
前前記装飾カバーリングの記少なくとも1つの有色層は、少なくとも1つの中断部を備えられる、
請求項12記載のフォイル。
【請求項15】
前記装飾カバーリングの前記少なくとも1つの有色層は、半透過性真空金属化層である、
請求項12記載のフォイル。
【請求項16】
家庭用電気器具に対する製品又はパーソナルケア製品等である製品を製造する方法であって、
請求項1記載の方法を実行することを含む前記製品の筐体素子を製造する段階を有する、
方法。
【請求項17】
家庭用電気器具に対する製品又はパーソナルケア製品等である製品に対する要素であって:
・ 装飾側部を備えるフォイルと;
・ 該装飾側部ではない前記フォイルの他側部をカバーする一方、前記フォイルの前記他側部に対して固定的に接続される、第1の材料を有する支持層と;
・ 前記フォイルの前記装飾側部をカバーする一方、前記フォイルの前記装飾側部に対して固定的に接続される、第2の材料を有するグリップ層と、
を有する要素。
【請求項18】
前記グリップ層の前記第2の材料は、前記支持層の前記第1の材料より軟らかい、
請求項17記載の要素。
【請求項19】
前記グリップ層の前記第2の材料の硬度は、70ショアAより低い、
請求項17記載の要素。
【請求項20】
前記第2の材料は、半透明である、
請求項17記載の要素。
【請求項21】
前記グリップ層は、所定のパターンに従って中断部を備えられる、
請求項17記載の要素。
【請求項22】
前記フォイルは、請求項12記載のフォイルである、
請求項17記載の要素。
【請求項23】
製品の外側において位置付けられるよう意図される筐体要素である、
請求項17記載の要素。
【請求項24】
家庭用器具に対する製品及びパーソナルケア製品を有する一群の製品から選択される製品であって、
請求項17記載の要素を有する、
製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−510901(P2010−510901A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537757(P2009−537757)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【国際出願番号】PCT/IB2007/054822
【国際公開番号】WO2008/065621
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】