装飾パネルの支持構造
【課題】タイルなどの比較的小片の装飾パネルから大面積の装飾パネルまで、壁面などに強固に取り付ける。
【解決手段】裏面側に庇状に張り出したオーバーハング部2と該オーバーハング部2と同じ高さでかつその頂部に接着剤を充填する溝3を有するリブ4,5とを備えた装飾パネル1と、波形の下地金物10からなり、下地金物10が被装飾側部材17に固定される凹状の取付部11と被装飾側部材17から離れて被装飾側部材17との間に空間を形成する畝状の装飾パネル支持部12とを交互に備え、装飾パネル支持部12と被装飾側部材17との間に貫通路16を形成すると共に、下地金物10の爪13に装飾パネル1のオーバーハング部2を引っ掛けて溝3に部分的に充填した接着剤21を孔14を通して下地金物10の装飾パネル支持面12の裏面側に流出させて固化させ、接着剤21の固まりによるリベット効果で装飾パネル1と下地金物10とを固定する。
【解決手段】裏面側に庇状に張り出したオーバーハング部2と該オーバーハング部2と同じ高さでかつその頂部に接着剤を充填する溝3を有するリブ4,5とを備えた装飾パネル1と、波形の下地金物10からなり、下地金物10が被装飾側部材17に固定される凹状の取付部11と被装飾側部材17から離れて被装飾側部材17との間に空間を形成する畝状の装飾パネル支持部12とを交互に備え、装飾パネル支持部12と被装飾側部材17との間に貫通路16を形成すると共に、下地金物10の爪13に装飾パネル1のオーバーハング部2を引っ掛けて溝3に部分的に充填した接着剤21を孔14を通して下地金物10の装飾パネル支持面12の裏面側に流出させて固化させ、接着剤21の固まりによるリベット効果で装飾パネル1と下地金物10とを固定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は装飾パネルとこれを被装飾側部材に取り付けるための下地金物とから成る装飾パネル支持構造に関する。さらに詳述すると、本発明は、建物の外断熱構造例えば外断熱用のタイルあるいはサイディングボードなどの外装材と該外装材を断熱材の上に固定するための支持下地とから成る外断熱構造に適用して好適な装飾パネルの支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
タイルなどの外装材あるいは内装材を仕上げ処理として建物の躯体に張り付けるには、通常躯体表面に下地モルタルあるいは接着剤を塗り付け、この下地モルタル等の上に張り付けモルタルあるいは接着剤を用いてタイルを張り付ける工法が一般的である。タイルの裏面側は平坦でかつ蟻足と呼ばれる凹凸が細かく形成されており、この蟻足を利用してモルタルあるいは接着剤を全面に塗布してから、建物の外壁の下地モルタルに接着させる。
【0003】
例えば、タイル張り工法が建物の外断熱構造に適用される場合には、建物躯体の外壁面にボード状の断熱材をブチルゴムなどの粘着シートでボード間の隙間を充填しながら張り付けた後に、この断熱材の外面に下地層を形成してその上にタイルを貼り付ける。具体的には、樹脂モルタル又は有機系接着剤で断熱材を建物躯体に張り付けた上から、第1層モルタルとして短繊維入り樹脂モルタルを仮差し押さえし、さらに金ごてでネットの上から第2層目のモルタルとしての短繊維入りモルタルを塗り付けて、ネットを埋め込んで下地モルタルを形成し、その下地モルタルの養生後に有機系接着剤によりタイルを張り付けるようにしている(特許文献1)。
【0004】
また、パネル状の外装材の場合には、建物躯体の外面に張り付けられた発泡プラスチックの板から成る断熱板の上から取付金具を躯体の柱などにねじ止めし、この取付金具で上下方向に隣接する2枚の外装材の縁を同時に支持して固定する構造が採用されている(特許文献2)。取付金具は壁面から突出するように配置される横向きの略Y字状の装着部の間で上下方向に外装材を挟持するようにして壁面の断熱材の上に空間を空けて外装材を固定するように設けられている。略Y字状の装着部は、上段の外装材を受け支える片と、下段の外装材の上端を押さえつける片とに分岐してY字状に広がっている。
【0005】
さらに、RC構造やメーソンリー構造などの熱容量の大きい建物に適用されることが一般的である外断熱工法においても、建物の外壁下地の外に配置される断熱材を囲う枠の両側の縦材にビス止めされる固定金具を利用して外装材(コンクリートパネル)の両端を固定することにより、断熱材の前面に鉛直方向に空気が抜ける空気路を形成する工法が提案されている(特許文献3)。この工法では、固定金具として縦方向に連続的に折り返されて横方向に開放された溝を形成した波形を成し、固定金具の溝を介して断熱材を囲う枠と枠との間で空気が横方向にも流れる構造とされている。この固定金具のよる外装材の支持は、下側の外装材の上端を抑えると共に上側の外装材の下端を同時に支えるフック形状の爪を備える一方、外装材の上端には固定金具の爪と嵌合する山形の突起が、下端には爪と嵌合する台形の凹部がそれぞれ形成されている。そして、フック形状の爪の凹部に下側の外装材の上端の台形状の突起を嵌合させると共に爪の凸部に上側の外装材の下端の台形状の凹部を嵌合させることにより、外装材を保持するようにしている。そして、上下の外装材の間の隙間をコーキング剤で封止するようにしている。
【0006】
【特許文献1】特開2003−105952
【特許文献2】特開2003−166301
【特許文献3】特開平6−240782
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、モルタルや接着剤によって壁面のモルタル下地などの下地材に直接外装材を貼り付ける従来の工法では、モルタルが不十分であったり、劣化したりすると、外装材・タイルが壁面などから落下する問題がある。しかも、外装材と断熱材との間に空気を流すための層が形成できないため、建物の外壁下地材と外装材の間に配置される断熱材を乾燥した状態に保つための通気層(流路)の確保が重要となる外断熱構造に適用するには不向きである。
【0008】
また、外装材の縁部を取付金具の装着部(フック形状の爪)で挟持するようにしてパネル状の外装材を保持する構造では、外装材を支える力が十分でないと、外装材が脱落する虞れがある。しかも、この取り付け構造は、コンクリートパネルのような大型の外装材への適用を前提としたものであり、数cm〜20cm程度の大きさの薄く軽量なタイルや窯業系サイディングの支持には実用的ではない。これら比較的小片の外装材の固定では、膨大な数の取付金具を必要とするばかりか、その取付け作業に手間がかかってコスト高となる。さらに、このように比較的大型で重量のある外装材の支持を目的とする取付金具は、必然的に容易には変形しない強度が必要であることから、上下の外装材を狂いなく嵌め込むには固定金具の取り付け位置を精確に出すことが必要であり、施工管理が難しい。依って、特許文献2や3に記載の外装材(装飾用パネル)の支持構造は、小さなタイルや窯業系サイディングなどの比較的小片の装飾パネルを1枚1枚貼り付けるには向かないという問題を有している。
【0009】
そこで、本発明は、小さなタイルや窯業系サイディングなどの比較的小片の装飾パネルから大面積の装飾パネルまで、壁面などに強固に取り付け可能な装飾パネル支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するため、請求項1記載の発明は、装飾パネルとこれを被装飾側部材に取り付けるための下地金物とから成る装飾パネル支持構造において、装飾パネルがその裏面側に庇状に張り出したオーバーハング部とオーバーハング部と同じ高さでかつその頂部に接着剤を充填する溝を有するリブとを備え、下地金物が、薄板により被装飾側部材と接して被装飾側部材に締結具で固定される凹状の取付部と被装飾側部材から離れて被装飾側部材との間に空間を形成する畝状の装飾パネル支持部とを交互に備えた波形を成し、装飾パネル支持部と被装飾側部材との間に貫通路を形成すると共に、各装飾パネル支持部に装飾パネルのオーバーハング部と鉛直方向において引っかかる爪と、装飾パネルの溝と少なくとも部分的に重なる位置に開けられた孔とを備え、下地金物の爪に装飾パネルのオーバーハング部を引っ掛けて溝に部分的に充填した接着剤を孔を通して下地金物の装飾パネル支持面の裏面側に流出させて固化させ、接着剤の固まりによるリベット効果で装飾パネルと下地金物とを固定するようにしている。
【0011】
また、請求項2記載の発明は、装飾パネルのオーバーハング部とリブ部とが、装飾パネルの横方向に貫通させて形成され、かつオーバーハング部の上と下とにそれぞれ同じ高さのリブ部が配置される一方、下地金物の爪と孔とが、装飾パネルのオーバーハング部並びにリブの溝と同じピッチで上下に連続して形成され、かつ爪が装飾パネル支持部の各畝毎に一対ずつ左右に分けて配置されると共に孔が爪の上と下にそれぞれ配置されているものである。
【0012】
さらに、請求項3記載の発明は、孔が左右一対の爪の列の間に配置されているものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の装飾パネル支持構造によれば、下地金物の畝状の装飾パネル支持部に対して、爪を利用して装飾パネルのオーバーハング部を引っ掛けると共に接着剤の一部を装飾パネル支持部の孔から裏側にはみ出させて固めることによる接着剤のリベット効果で、装飾パネルと下地金物とを精確に位置合わせしながら強固に固定することができ、装飾パネルの剥離を防止し得る。加えて、下地金物の爪に装飾パネルのオーバーハング部を引っ掛けて固着するので、装飾パネル例えばタイルの高さを簡単に揃えて取り付けることができ、熟練者でなくとも美しい模様を施工できる。しかも、下地金物の爪に装飾パネルのオーバーハング部を引っ掛けて装飾パネルのリブの溝に接着剤を充填して下地金物に押しつけるだけで簡単に取り付けられるので、作業が極めて簡単で施工性に優れる。
【0014】
また、請求項1の発明によると、被装飾側部材とこれに取り付けられる下地金物の畝状の装飾パネル支持部との間に貫通路・空間を形成しているので、特に、建物の外断熱構造における断熱材を覆う外装材の取り付けに適用する場合には、外壁下地の外側の断熱材と外装材との間に通気層を形成することができ、断熱材を乾燥した状態に保つことができる。しかも、下地金物には、小片のタイルを接着で固定できるので、一般的な木造軸組工法や枠組壁構法(ツー・バイ・フォー工法)などの戸建て住宅のタイル張りあるいはサイディング張り外断熱構造に適用した場合にも、建物の外壁下地材と外装材の間に配置される断熱材を乾燥した状態に保つことができ、優れた断熱性を長期間維持できる。
【0015】
さらに請求項2記載の装飾パネル支持構造によれば、タイルや窯業系サイディングのように製造上のばらつきが生じ易く1枚1枚微妙にオーバーハング部などにずれが生じることがある装飾パネルであったとしても、複数の点ないし短い線(連続して線ではない)で支持することでそのばらつきを吸収することができ、全体として装飾パネルの並びが不揃いになることを防げる。しかも、タイルのオーバーハング部の上と下とにそれぞれ同じ高さのリブ部が配置されることにより、装飾パネル支持部の各畝に対する高さが一定でかつ平行に維持できるため、装飾パネルの並びに大きな凹凸やうねりが生じることがなく、美麗な壁面を装うことができる。
【0016】
さらに請求項3記載の装飾パネル支持構造によれば、孔が左右一対の爪の列の間に配置されているので、装飾パネルのオーバーハング部とリブ部ひいては接着剤を盛る溝との間隔を狭くしてより小形のタイルに適用する場合にも、下地金物の爪と孔との間の間隔を十分にとることができることから、下地金物による装飾パネルの支持に関しての機械的強度の低下を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の構成を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1から図12に本発明の装飾パネル支持構造を建物のタイル張り外断熱構造に適用した実施の一形態を示す。このタイル張り外断熱工法において適用される本発明の装飾パネル支持構造は、装飾パネル1とこれを被装飾側部材即ち建物躯体側に固定されている部材に取り付けるための下地金物10とから成る。そして、タイル張り外断熱構造は、建物の外壁下地19の外側に断熱材20と外装材たる装飾パネル1を張り付けるものであって、外壁下地19に対して取付金具を介して下地金物10を取り付け、該下地金物10に装飾パネル1を引っ掛けるようにして接着剤で固定するように設けられている。 尚、本実施形態では外装材として発泡性の軽量タイルを用いた場合について説明をするが、通常の窯業系タイルあるいはセラミック系サイディングボードや石膏ボードのような外装材あるいは内装材(本発明においてはこれらを総称して装飾パネルと呼ぶ)を取り付ける場合に適用することも可能である。
【0019】
本実施形態において、取付金具は、外壁下地19に直接ねじ止めやボルト止めなどで固定されるL形のアルミ製のブラケット18と該ブラケットにビス止めされる横断面形状T形のアルミ形材17とで構成されている。勿論、ブラケット18とT形材17とはアルミ材に限られず、プラスチック材でも、木材でも、ステンレススティールやその他の耐食性金属材料あるいは防錆処理された鉄材でも実施可能である。
【0020】
そして、断熱材20は、外壁下地19にねじ止めやボルト止めされたブラケット18並びにT形材17を上下から挟むように詰め込まれている。換言すれば、断熱材20と断熱材20との継ぎ目にブラケット18とT形材17とが配置されて、断熱材20の前面に下地金物10が張り付けられるように設けられている。これにより、下地金物10と外壁下地19との間に断熱材20が充填される。因みに、断熱材の種類はとくに限定することはないが、ガラスマットやロックウールマットのようなものでも、硬質の発泡樹脂例えばポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレンなどでも良い。
【0021】
ここで、装飾パネル1はその裏面側に庇状に張り出したオーバーハング部2と該オーバーハング部2と同じ高さ(タイルの厚み方向)でかつその頂部に接着剤を充填する溝3を有する少なくとも1つのリブ4あるいは5を備えている。例えば、本実施形態のタイルの場合、図9及び図10に示すように、オーバーハング部2の上と下とにそれぞれ同じ高さのリブ部4,5が配置され、かつオーバーハング部2とリブ部4,5とが装飾パネル1の横方向にそれぞれ貫通するように形成されている。また、図11及び図12に示すように、オーバーハング部2と該オーバーハング部2の上下に配置される一組のリブ部4,5とが上下方向に複数段例えば3段程度形成されている縦長なタイルが、壁面の左右の端部などに用いられることもある。これらタイルとしては、発泡性の軽量タイルの使用が好ましい。尚、リブ4,5は必ずしもオーバーハング部2の上下にそれぞれ配置する必要はなく、場合によっては爪13の下方あるいは爪13の上方にのみ設けるようにしても良いし、いずれか一方のリブにのみ接着剤21を充填する溝3を設けるようにしても良い。装飾パネル1は下地金物10の爪13に引っ掛けながら接着剤で固定されるため、少なくとも一方のリブ4あるいは5とこれに対応する下地金物10の孔14とが存在すれば、固定可能である。しかしながら、オーバーハング部2の上と下とにそれぞれリブ部4,5を配置して爪13を挟んで上下で接着剤21で固定する方が、より安定的に固定できることから好ましい。
【0022】
また、タイル1の上端縁部には上側に配置される他のタイル1の下端縁部の下に潜り込む傾斜部7が形成されると共に、下端縁部には下側に配置される他のタイル1の上端縁部の傾斜部7が潜り込む肉薄部6が形成されている。そして、下地金物1の上に引っ掛けて固定したときに、上段のタイル1の肉薄部6とその内側に潜り込む下段のタイル1の傾斜部7との間に隙間8を開けて、空気の流入あるいは浸入雨水などの排水を可能としている。
【0023】
他方、下地金物1は、薄板により被装飾側部材17と接して被装飾側部材17にビスなどの締結具で固定される凹状の取付部11と法面15の存在によって被装飾側部材17から離れて被装飾側部材17との間に上下方向に貫通する空間(貫通路と呼ぶ)16を形成する畝状の装飾パネル支持部12とを交互に備えた波形を成し、装飾パネル支持部12と被装飾側部材17並びに断熱材20との間に貫通路16で通気層を形成するようにしている。そして、各装飾パネル支持部12に装飾パネル1のオーバーハング部2と鉛直方向において引っかかる爪13と、装飾パネル1の溝3と少なくとも部分的に重なる位置に開けられた孔14とを備えている。孔14は図6に示すように、装飾パネル支持部12の左右に配置された2列の爪13と爪13との間でかつ爪13を挟んで上下にそれぞれ位置するように配置されている。即ち、左右の2本の爪13とそれらを挟むように各爪13の上下でかつ各爪13の列の間に配置されている4つの孔14とを1組として、装飾パネル1に対する1組の固定手段を構成している。下地金物1は防錆効果や耐久性、耐候性などを考慮すると、ステンレススティールの板あるいは防錆処理した鉄板などで構成することが好ましいが、特にこれら材質に限定されるものではない。
【0024】
尚、凹状取付部11の間で畝状に突出する装飾パネル支持部12の背面側に形成される貫通路16は、施工時に上下方向(鉛直方向)に配置されるため、外断熱構造の通気層として機能し、壁内に浸入する湿気を自然対流に因って排出し、乾燥状態に保持することができる。また、夏季には壁面に吸収した太陽輻射熱を室内に伝えずに、通気層により排出できる。冬季は、逆に通気を抑えることにより、断熱効果を高めることができる。
【0025】
以上の構成の装飾パネルの支持構造並びにそれを用いたタイル張り外断熱工法によれば、まず図3に示すように、建物躯体の外壁下地19例えば合板などの上に、L型のブラケット18を直接ねじ止めやボルト止めなどで所定位置に固定すると共に、外壁下地19から突出したブラケット18の辺にT形材17をねじ止めなどで固定する。そして、そのブラケット18とT形材17とで囲まれた空間に断熱材20のマットを挟み込むように挿入し、さらに断熱材マット20の上端縁側にブラケット18とT形材17とを取り付けて断熱材マット20を保持する。さらに必要に応じて断熱材20のマットを鋲などで留めることもある。このようにして外壁下地19の全面に断熱材20を取り付けながら断熱材20のマットとマットとの間にブラケット18とT形材17とを配置する。
【0026】
次いで、T形材17を利用して、下地金物10をねじ止めやボルト止めなどで所定位置に固定して、爪13並びに孔14が一定ピッチで縦横に展開するように止めつける。ここで、建物の外壁面のコーナ部分などでは、例えば図8に示すようなコーナ覆い22を有する下地金物を用いることで、下部金物の面に連続性を与えることができる。そして、タイル1の裏面側のリブ4,5の各溝3に接着剤21をリブ4,5の上面から大きく盛り上がるだけの十分な量を充填してから、下地金物10の爪13にタイル1のオーバーハング部2を引っ掛けるようにして、タイル1を下地金物10に押しつける。タイル1の裏面の溝3に部分的に充填した接着剤21は、下地金物10の孔14を通過して下地金物10の装飾パネル支持部12の裏面側に流出するので、固化したときにリベットのように機能してタイル1と下地金物10とを強固に固定する。ここで、タイル1の裏面側のリブ4,5の各溝3に充填する接着剤21は、溝3の全域に充填しても良いが、少なくとも下地金物10の孔14と対応する位置とその近傍に部分的に充填すれば、固化した接着剤21のアンカー効果による下地金物10へのタイル1の固定が可能となる。
【0027】
タイル1は、裏面側のオーバーハング部2を下地金物10の爪13に引っ掛けるようにして、下から上へとタイル1を重ねるように次々に下地金物10に接着剤21で張り付けることにより、タイル1とタイル1との間にコーキング剤を施さずに施工できる。したがって、タイル目地は全て開放され、空気の流入を容易にして、断熱材の乾燥を速くする。また、下地金物10の爪13と孔14とは水平が出るように形成され、また外壁下地19に取りつけられていることから、軽量タイル1の製品精度が1枚1枚微妙にずれやばらつきが生じていても、これを点ないし短い線(連続して線ではない)で支持することで吸収できる。したがって、熟練した職人によらずとも、タイルの面が波打ったり並びが不揃いになることがない。さらに、この装飾パネルの支持構造は、コンクリート躯体建物や木造住宅や軸組工法による住宅など、あらゆる種類の建物の外断熱施工に適する。
【0028】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、本実施形態では、タイル張りによる建物の外断熱構造用の外装材を外張りする例に適用した場合について主に説明したが、これに特に限定されるものではなく、建物内の浴室やキッチン、リビングなどの壁面用内装タイルを張り付けるのに適用したり、金属製プレートやセラミックサイディングなどのタイル以外の内装品や外装品を固定するのに適用することも可能である。つまり、本発明の装飾パネルの支持構造は、外断熱構造に限られず、断熱材があってもなくても、下地金物と装飾パネルとの支持構造は使える。さらに、本実施形態で挙げた軽量タイルに限られず、金属プレート・パネルやサイディングあるいは石膏ボードなどのボード類でも、全ての外装材あるいは内装材の壁面などへの取り付けに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の装飾パネル支持構造を建物のタイル張り外断熱構造に適用した実施の一形態を示す拡大縦断面図である。
【図2】同外断熱構造を一部のタイルの図示を省略して説明する斜視図である。
【図3】同外断熱構造のタイルを支持する下地金物の支持状態を説明する斜視図である。
【図4】下地金物の一実施形態を示す正面図である。
【図5】下地金物を拡大して示す平面図である。
【図6】下地金物のX−X線で示す領域の拡大斜視図である。
【図7】下地金物のY−Y線に沿う拡大縦断面図である。
【図8】壁面の端で用いられる下地金物の一実施形態を示す斜視図である。
【図9】軽量タイルの一実施形態を示す裏側から見た斜視図である。
【図10】図9の軽量タイルの表側から見た斜視図である。
【図11】軽量タイルの他の実施形態を示す裏側から見た斜視図である。
【図12】図11の軽量タイルの表側から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
1 タイル(装飾パネル)
2 オーバーハング部
3 溝
4,5 リブ
10 下地金物
11 凹状の取付部
12 装飾パネル支持部
13 爪
14 孔
16 貫通路
17 横断面形状T形のアルミ形材(被装飾側部材)
19 建物躯体の外壁下地
20 断熱材
21 接着剤
【技術分野】
【0001】
本発明は装飾パネルとこれを被装飾側部材に取り付けるための下地金物とから成る装飾パネル支持構造に関する。さらに詳述すると、本発明は、建物の外断熱構造例えば外断熱用のタイルあるいはサイディングボードなどの外装材と該外装材を断熱材の上に固定するための支持下地とから成る外断熱構造に適用して好適な装飾パネルの支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
タイルなどの外装材あるいは内装材を仕上げ処理として建物の躯体に張り付けるには、通常躯体表面に下地モルタルあるいは接着剤を塗り付け、この下地モルタル等の上に張り付けモルタルあるいは接着剤を用いてタイルを張り付ける工法が一般的である。タイルの裏面側は平坦でかつ蟻足と呼ばれる凹凸が細かく形成されており、この蟻足を利用してモルタルあるいは接着剤を全面に塗布してから、建物の外壁の下地モルタルに接着させる。
【0003】
例えば、タイル張り工法が建物の外断熱構造に適用される場合には、建物躯体の外壁面にボード状の断熱材をブチルゴムなどの粘着シートでボード間の隙間を充填しながら張り付けた後に、この断熱材の外面に下地層を形成してその上にタイルを貼り付ける。具体的には、樹脂モルタル又は有機系接着剤で断熱材を建物躯体に張り付けた上から、第1層モルタルとして短繊維入り樹脂モルタルを仮差し押さえし、さらに金ごてでネットの上から第2層目のモルタルとしての短繊維入りモルタルを塗り付けて、ネットを埋め込んで下地モルタルを形成し、その下地モルタルの養生後に有機系接着剤によりタイルを張り付けるようにしている(特許文献1)。
【0004】
また、パネル状の外装材の場合には、建物躯体の外面に張り付けられた発泡プラスチックの板から成る断熱板の上から取付金具を躯体の柱などにねじ止めし、この取付金具で上下方向に隣接する2枚の外装材の縁を同時に支持して固定する構造が採用されている(特許文献2)。取付金具は壁面から突出するように配置される横向きの略Y字状の装着部の間で上下方向に外装材を挟持するようにして壁面の断熱材の上に空間を空けて外装材を固定するように設けられている。略Y字状の装着部は、上段の外装材を受け支える片と、下段の外装材の上端を押さえつける片とに分岐してY字状に広がっている。
【0005】
さらに、RC構造やメーソンリー構造などの熱容量の大きい建物に適用されることが一般的である外断熱工法においても、建物の外壁下地の外に配置される断熱材を囲う枠の両側の縦材にビス止めされる固定金具を利用して外装材(コンクリートパネル)の両端を固定することにより、断熱材の前面に鉛直方向に空気が抜ける空気路を形成する工法が提案されている(特許文献3)。この工法では、固定金具として縦方向に連続的に折り返されて横方向に開放された溝を形成した波形を成し、固定金具の溝を介して断熱材を囲う枠と枠との間で空気が横方向にも流れる構造とされている。この固定金具のよる外装材の支持は、下側の外装材の上端を抑えると共に上側の外装材の下端を同時に支えるフック形状の爪を備える一方、外装材の上端には固定金具の爪と嵌合する山形の突起が、下端には爪と嵌合する台形の凹部がそれぞれ形成されている。そして、フック形状の爪の凹部に下側の外装材の上端の台形状の突起を嵌合させると共に爪の凸部に上側の外装材の下端の台形状の凹部を嵌合させることにより、外装材を保持するようにしている。そして、上下の外装材の間の隙間をコーキング剤で封止するようにしている。
【0006】
【特許文献1】特開2003−105952
【特許文献2】特開2003−166301
【特許文献3】特開平6−240782
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、モルタルや接着剤によって壁面のモルタル下地などの下地材に直接外装材を貼り付ける従来の工法では、モルタルが不十分であったり、劣化したりすると、外装材・タイルが壁面などから落下する問題がある。しかも、外装材と断熱材との間に空気を流すための層が形成できないため、建物の外壁下地材と外装材の間に配置される断熱材を乾燥した状態に保つための通気層(流路)の確保が重要となる外断熱構造に適用するには不向きである。
【0008】
また、外装材の縁部を取付金具の装着部(フック形状の爪)で挟持するようにしてパネル状の外装材を保持する構造では、外装材を支える力が十分でないと、外装材が脱落する虞れがある。しかも、この取り付け構造は、コンクリートパネルのような大型の外装材への適用を前提としたものであり、数cm〜20cm程度の大きさの薄く軽量なタイルや窯業系サイディングの支持には実用的ではない。これら比較的小片の外装材の固定では、膨大な数の取付金具を必要とするばかりか、その取付け作業に手間がかかってコスト高となる。さらに、このように比較的大型で重量のある外装材の支持を目的とする取付金具は、必然的に容易には変形しない強度が必要であることから、上下の外装材を狂いなく嵌め込むには固定金具の取り付け位置を精確に出すことが必要であり、施工管理が難しい。依って、特許文献2や3に記載の外装材(装飾用パネル)の支持構造は、小さなタイルや窯業系サイディングなどの比較的小片の装飾パネルを1枚1枚貼り付けるには向かないという問題を有している。
【0009】
そこで、本発明は、小さなタイルや窯業系サイディングなどの比較的小片の装飾パネルから大面積の装飾パネルまで、壁面などに強固に取り付け可能な装飾パネル支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するため、請求項1記載の発明は、装飾パネルとこれを被装飾側部材に取り付けるための下地金物とから成る装飾パネル支持構造において、装飾パネルがその裏面側に庇状に張り出したオーバーハング部とオーバーハング部と同じ高さでかつその頂部に接着剤を充填する溝を有するリブとを備え、下地金物が、薄板により被装飾側部材と接して被装飾側部材に締結具で固定される凹状の取付部と被装飾側部材から離れて被装飾側部材との間に空間を形成する畝状の装飾パネル支持部とを交互に備えた波形を成し、装飾パネル支持部と被装飾側部材との間に貫通路を形成すると共に、各装飾パネル支持部に装飾パネルのオーバーハング部と鉛直方向において引っかかる爪と、装飾パネルの溝と少なくとも部分的に重なる位置に開けられた孔とを備え、下地金物の爪に装飾パネルのオーバーハング部を引っ掛けて溝に部分的に充填した接着剤を孔を通して下地金物の装飾パネル支持面の裏面側に流出させて固化させ、接着剤の固まりによるリベット効果で装飾パネルと下地金物とを固定するようにしている。
【0011】
また、請求項2記載の発明は、装飾パネルのオーバーハング部とリブ部とが、装飾パネルの横方向に貫通させて形成され、かつオーバーハング部の上と下とにそれぞれ同じ高さのリブ部が配置される一方、下地金物の爪と孔とが、装飾パネルのオーバーハング部並びにリブの溝と同じピッチで上下に連続して形成され、かつ爪が装飾パネル支持部の各畝毎に一対ずつ左右に分けて配置されると共に孔が爪の上と下にそれぞれ配置されているものである。
【0012】
さらに、請求項3記載の発明は、孔が左右一対の爪の列の間に配置されているものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の装飾パネル支持構造によれば、下地金物の畝状の装飾パネル支持部に対して、爪を利用して装飾パネルのオーバーハング部を引っ掛けると共に接着剤の一部を装飾パネル支持部の孔から裏側にはみ出させて固めることによる接着剤のリベット効果で、装飾パネルと下地金物とを精確に位置合わせしながら強固に固定することができ、装飾パネルの剥離を防止し得る。加えて、下地金物の爪に装飾パネルのオーバーハング部を引っ掛けて固着するので、装飾パネル例えばタイルの高さを簡単に揃えて取り付けることができ、熟練者でなくとも美しい模様を施工できる。しかも、下地金物の爪に装飾パネルのオーバーハング部を引っ掛けて装飾パネルのリブの溝に接着剤を充填して下地金物に押しつけるだけで簡単に取り付けられるので、作業が極めて簡単で施工性に優れる。
【0014】
また、請求項1の発明によると、被装飾側部材とこれに取り付けられる下地金物の畝状の装飾パネル支持部との間に貫通路・空間を形成しているので、特に、建物の外断熱構造における断熱材を覆う外装材の取り付けに適用する場合には、外壁下地の外側の断熱材と外装材との間に通気層を形成することができ、断熱材を乾燥した状態に保つことができる。しかも、下地金物には、小片のタイルを接着で固定できるので、一般的な木造軸組工法や枠組壁構法(ツー・バイ・フォー工法)などの戸建て住宅のタイル張りあるいはサイディング張り外断熱構造に適用した場合にも、建物の外壁下地材と外装材の間に配置される断熱材を乾燥した状態に保つことができ、優れた断熱性を長期間維持できる。
【0015】
さらに請求項2記載の装飾パネル支持構造によれば、タイルや窯業系サイディングのように製造上のばらつきが生じ易く1枚1枚微妙にオーバーハング部などにずれが生じることがある装飾パネルであったとしても、複数の点ないし短い線(連続して線ではない)で支持することでそのばらつきを吸収することができ、全体として装飾パネルの並びが不揃いになることを防げる。しかも、タイルのオーバーハング部の上と下とにそれぞれ同じ高さのリブ部が配置されることにより、装飾パネル支持部の各畝に対する高さが一定でかつ平行に維持できるため、装飾パネルの並びに大きな凹凸やうねりが生じることがなく、美麗な壁面を装うことができる。
【0016】
さらに請求項3記載の装飾パネル支持構造によれば、孔が左右一対の爪の列の間に配置されているので、装飾パネルのオーバーハング部とリブ部ひいては接着剤を盛る溝との間隔を狭くしてより小形のタイルに適用する場合にも、下地金物の爪と孔との間の間隔を十分にとることができることから、下地金物による装飾パネルの支持に関しての機械的強度の低下を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の構成を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1から図12に本発明の装飾パネル支持構造を建物のタイル張り外断熱構造に適用した実施の一形態を示す。このタイル張り外断熱工法において適用される本発明の装飾パネル支持構造は、装飾パネル1とこれを被装飾側部材即ち建物躯体側に固定されている部材に取り付けるための下地金物10とから成る。そして、タイル張り外断熱構造は、建物の外壁下地19の外側に断熱材20と外装材たる装飾パネル1を張り付けるものであって、外壁下地19に対して取付金具を介して下地金物10を取り付け、該下地金物10に装飾パネル1を引っ掛けるようにして接着剤で固定するように設けられている。 尚、本実施形態では外装材として発泡性の軽量タイルを用いた場合について説明をするが、通常の窯業系タイルあるいはセラミック系サイディングボードや石膏ボードのような外装材あるいは内装材(本発明においてはこれらを総称して装飾パネルと呼ぶ)を取り付ける場合に適用することも可能である。
【0019】
本実施形態において、取付金具は、外壁下地19に直接ねじ止めやボルト止めなどで固定されるL形のアルミ製のブラケット18と該ブラケットにビス止めされる横断面形状T形のアルミ形材17とで構成されている。勿論、ブラケット18とT形材17とはアルミ材に限られず、プラスチック材でも、木材でも、ステンレススティールやその他の耐食性金属材料あるいは防錆処理された鉄材でも実施可能である。
【0020】
そして、断熱材20は、外壁下地19にねじ止めやボルト止めされたブラケット18並びにT形材17を上下から挟むように詰め込まれている。換言すれば、断熱材20と断熱材20との継ぎ目にブラケット18とT形材17とが配置されて、断熱材20の前面に下地金物10が張り付けられるように設けられている。これにより、下地金物10と外壁下地19との間に断熱材20が充填される。因みに、断熱材の種類はとくに限定することはないが、ガラスマットやロックウールマットのようなものでも、硬質の発泡樹脂例えばポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレンなどでも良い。
【0021】
ここで、装飾パネル1はその裏面側に庇状に張り出したオーバーハング部2と該オーバーハング部2と同じ高さ(タイルの厚み方向)でかつその頂部に接着剤を充填する溝3を有する少なくとも1つのリブ4あるいは5を備えている。例えば、本実施形態のタイルの場合、図9及び図10に示すように、オーバーハング部2の上と下とにそれぞれ同じ高さのリブ部4,5が配置され、かつオーバーハング部2とリブ部4,5とが装飾パネル1の横方向にそれぞれ貫通するように形成されている。また、図11及び図12に示すように、オーバーハング部2と該オーバーハング部2の上下に配置される一組のリブ部4,5とが上下方向に複数段例えば3段程度形成されている縦長なタイルが、壁面の左右の端部などに用いられることもある。これらタイルとしては、発泡性の軽量タイルの使用が好ましい。尚、リブ4,5は必ずしもオーバーハング部2の上下にそれぞれ配置する必要はなく、場合によっては爪13の下方あるいは爪13の上方にのみ設けるようにしても良いし、いずれか一方のリブにのみ接着剤21を充填する溝3を設けるようにしても良い。装飾パネル1は下地金物10の爪13に引っ掛けながら接着剤で固定されるため、少なくとも一方のリブ4あるいは5とこれに対応する下地金物10の孔14とが存在すれば、固定可能である。しかしながら、オーバーハング部2の上と下とにそれぞれリブ部4,5を配置して爪13を挟んで上下で接着剤21で固定する方が、より安定的に固定できることから好ましい。
【0022】
また、タイル1の上端縁部には上側に配置される他のタイル1の下端縁部の下に潜り込む傾斜部7が形成されると共に、下端縁部には下側に配置される他のタイル1の上端縁部の傾斜部7が潜り込む肉薄部6が形成されている。そして、下地金物1の上に引っ掛けて固定したときに、上段のタイル1の肉薄部6とその内側に潜り込む下段のタイル1の傾斜部7との間に隙間8を開けて、空気の流入あるいは浸入雨水などの排水を可能としている。
【0023】
他方、下地金物1は、薄板により被装飾側部材17と接して被装飾側部材17にビスなどの締結具で固定される凹状の取付部11と法面15の存在によって被装飾側部材17から離れて被装飾側部材17との間に上下方向に貫通する空間(貫通路と呼ぶ)16を形成する畝状の装飾パネル支持部12とを交互に備えた波形を成し、装飾パネル支持部12と被装飾側部材17並びに断熱材20との間に貫通路16で通気層を形成するようにしている。そして、各装飾パネル支持部12に装飾パネル1のオーバーハング部2と鉛直方向において引っかかる爪13と、装飾パネル1の溝3と少なくとも部分的に重なる位置に開けられた孔14とを備えている。孔14は図6に示すように、装飾パネル支持部12の左右に配置された2列の爪13と爪13との間でかつ爪13を挟んで上下にそれぞれ位置するように配置されている。即ち、左右の2本の爪13とそれらを挟むように各爪13の上下でかつ各爪13の列の間に配置されている4つの孔14とを1組として、装飾パネル1に対する1組の固定手段を構成している。下地金物1は防錆効果や耐久性、耐候性などを考慮すると、ステンレススティールの板あるいは防錆処理した鉄板などで構成することが好ましいが、特にこれら材質に限定されるものではない。
【0024】
尚、凹状取付部11の間で畝状に突出する装飾パネル支持部12の背面側に形成される貫通路16は、施工時に上下方向(鉛直方向)に配置されるため、外断熱構造の通気層として機能し、壁内に浸入する湿気を自然対流に因って排出し、乾燥状態に保持することができる。また、夏季には壁面に吸収した太陽輻射熱を室内に伝えずに、通気層により排出できる。冬季は、逆に通気を抑えることにより、断熱効果を高めることができる。
【0025】
以上の構成の装飾パネルの支持構造並びにそれを用いたタイル張り外断熱工法によれば、まず図3に示すように、建物躯体の外壁下地19例えば合板などの上に、L型のブラケット18を直接ねじ止めやボルト止めなどで所定位置に固定すると共に、外壁下地19から突出したブラケット18の辺にT形材17をねじ止めなどで固定する。そして、そのブラケット18とT形材17とで囲まれた空間に断熱材20のマットを挟み込むように挿入し、さらに断熱材マット20の上端縁側にブラケット18とT形材17とを取り付けて断熱材マット20を保持する。さらに必要に応じて断熱材20のマットを鋲などで留めることもある。このようにして外壁下地19の全面に断熱材20を取り付けながら断熱材20のマットとマットとの間にブラケット18とT形材17とを配置する。
【0026】
次いで、T形材17を利用して、下地金物10をねじ止めやボルト止めなどで所定位置に固定して、爪13並びに孔14が一定ピッチで縦横に展開するように止めつける。ここで、建物の外壁面のコーナ部分などでは、例えば図8に示すようなコーナ覆い22を有する下地金物を用いることで、下部金物の面に連続性を与えることができる。そして、タイル1の裏面側のリブ4,5の各溝3に接着剤21をリブ4,5の上面から大きく盛り上がるだけの十分な量を充填してから、下地金物10の爪13にタイル1のオーバーハング部2を引っ掛けるようにして、タイル1を下地金物10に押しつける。タイル1の裏面の溝3に部分的に充填した接着剤21は、下地金物10の孔14を通過して下地金物10の装飾パネル支持部12の裏面側に流出するので、固化したときにリベットのように機能してタイル1と下地金物10とを強固に固定する。ここで、タイル1の裏面側のリブ4,5の各溝3に充填する接着剤21は、溝3の全域に充填しても良いが、少なくとも下地金物10の孔14と対応する位置とその近傍に部分的に充填すれば、固化した接着剤21のアンカー効果による下地金物10へのタイル1の固定が可能となる。
【0027】
タイル1は、裏面側のオーバーハング部2を下地金物10の爪13に引っ掛けるようにして、下から上へとタイル1を重ねるように次々に下地金物10に接着剤21で張り付けることにより、タイル1とタイル1との間にコーキング剤を施さずに施工できる。したがって、タイル目地は全て開放され、空気の流入を容易にして、断熱材の乾燥を速くする。また、下地金物10の爪13と孔14とは水平が出るように形成され、また外壁下地19に取りつけられていることから、軽量タイル1の製品精度が1枚1枚微妙にずれやばらつきが生じていても、これを点ないし短い線(連続して線ではない)で支持することで吸収できる。したがって、熟練した職人によらずとも、タイルの面が波打ったり並びが不揃いになることがない。さらに、この装飾パネルの支持構造は、コンクリート躯体建物や木造住宅や軸組工法による住宅など、あらゆる種類の建物の外断熱施工に適する。
【0028】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、本実施形態では、タイル張りによる建物の外断熱構造用の外装材を外張りする例に適用した場合について主に説明したが、これに特に限定されるものではなく、建物内の浴室やキッチン、リビングなどの壁面用内装タイルを張り付けるのに適用したり、金属製プレートやセラミックサイディングなどのタイル以外の内装品や外装品を固定するのに適用することも可能である。つまり、本発明の装飾パネルの支持構造は、外断熱構造に限られず、断熱材があってもなくても、下地金物と装飾パネルとの支持構造は使える。さらに、本実施形態で挙げた軽量タイルに限られず、金属プレート・パネルやサイディングあるいは石膏ボードなどのボード類でも、全ての外装材あるいは内装材の壁面などへの取り付けに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の装飾パネル支持構造を建物のタイル張り外断熱構造に適用した実施の一形態を示す拡大縦断面図である。
【図2】同外断熱構造を一部のタイルの図示を省略して説明する斜視図である。
【図3】同外断熱構造のタイルを支持する下地金物の支持状態を説明する斜視図である。
【図4】下地金物の一実施形態を示す正面図である。
【図5】下地金物を拡大して示す平面図である。
【図6】下地金物のX−X線で示す領域の拡大斜視図である。
【図7】下地金物のY−Y線に沿う拡大縦断面図である。
【図8】壁面の端で用いられる下地金物の一実施形態を示す斜視図である。
【図9】軽量タイルの一実施形態を示す裏側から見た斜視図である。
【図10】図9の軽量タイルの表側から見た斜視図である。
【図11】軽量タイルの他の実施形態を示す裏側から見た斜視図である。
【図12】図11の軽量タイルの表側から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
1 タイル(装飾パネル)
2 オーバーハング部
3 溝
4,5 リブ
10 下地金物
11 凹状の取付部
12 装飾パネル支持部
13 爪
14 孔
16 貫通路
17 横断面形状T形のアルミ形材(被装飾側部材)
19 建物躯体の外壁下地
20 断熱材
21 接着剤
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装飾パネルとこれを被装飾側部材に取り付けるための下地金物とから成る装飾パネル支持構造において、前記装飾パネルはその裏面側に庇状に張り出したオーバーハング部と前記オーバーハング部と同じ高さでかつその頂部に接着剤を充填する溝を有するリブとを備え、前記下地金物は、薄板により前記被装飾側部材と接して前記被装飾側部材に締結具で固定される凹状の取付部と前記被装飾側部材から離れて前記被装飾側部材との間に空間を形成する畝状の装飾パネル支持部とを交互に備えた波形を成し、前記装飾パネル支持部と前記被装飾側部材との間に貫通路を形成すると共に、前記各装飾パネル支持部に前記装飾パネルのオーバーハング部と鉛直方向において引っかかる爪と、前記装飾パネルの前記溝と少なくとも部分的に重なる位置に開けられた孔とを備え、前記下地金物の爪に前記装飾パネルのオーバーハング部を引っ掛けて前記溝に部分的に充填した接着剤を前記孔を通して前記下地金物の前記装飾パネル支持面の裏面側に流出させて固化させ、前記接着剤の固まりによるリベット効果で前記装飾パネルと下地金物とを固定することを特徴とする装飾パネル支持構造。
【請求項2】
前記装飾パネルの前記オーバーハング部と前記リブ部とが、前記装飾パネルの横方向に貫通させて形成され、かつ前記オーバーハング部の上と下とにそれぞれ同じ高さの前記リブ部が配置される一方、前記下地金物の前記爪と前記孔とが、前記装飾パネルの前記オーバーハング部並びに前記リブの溝と同じピッチで上下に連続して形成され、かつ前記爪が前記装飾パネル支持部の各畝毎に一対ずつ左右に分けて配置されると共に前記孔が前記爪の上と下にそれぞれ配置されているものである請求項1記載の装飾パネル支持構造。
【請求項3】
前記孔が左右一対の前記爪の列の間に配置されているものである請求項2記載の装飾パネル支持構造。
【請求項1】
装飾パネルとこれを被装飾側部材に取り付けるための下地金物とから成る装飾パネル支持構造において、前記装飾パネルはその裏面側に庇状に張り出したオーバーハング部と前記オーバーハング部と同じ高さでかつその頂部に接着剤を充填する溝を有するリブとを備え、前記下地金物は、薄板により前記被装飾側部材と接して前記被装飾側部材に締結具で固定される凹状の取付部と前記被装飾側部材から離れて前記被装飾側部材との間に空間を形成する畝状の装飾パネル支持部とを交互に備えた波形を成し、前記装飾パネル支持部と前記被装飾側部材との間に貫通路を形成すると共に、前記各装飾パネル支持部に前記装飾パネルのオーバーハング部と鉛直方向において引っかかる爪と、前記装飾パネルの前記溝と少なくとも部分的に重なる位置に開けられた孔とを備え、前記下地金物の爪に前記装飾パネルのオーバーハング部を引っ掛けて前記溝に部分的に充填した接着剤を前記孔を通して前記下地金物の前記装飾パネル支持面の裏面側に流出させて固化させ、前記接着剤の固まりによるリベット効果で前記装飾パネルと下地金物とを固定することを特徴とする装飾パネル支持構造。
【請求項2】
前記装飾パネルの前記オーバーハング部と前記リブ部とが、前記装飾パネルの横方向に貫通させて形成され、かつ前記オーバーハング部の上と下とにそれぞれ同じ高さの前記リブ部が配置される一方、前記下地金物の前記爪と前記孔とが、前記装飾パネルの前記オーバーハング部並びに前記リブの溝と同じピッチで上下に連続して形成され、かつ前記爪が前記装飾パネル支持部の各畝毎に一対ずつ左右に分けて配置されると共に前記孔が前記爪の上と下にそれぞれ配置されているものである請求項1記載の装飾パネル支持構造。
【請求項3】
前記孔が左右一対の前記爪の列の間に配置されているものである請求項2記載の装飾パネル支持構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−179982(P2009−179982A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−18882(P2008−18882)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(508005945)株式会社アルファ・エンジニアリング (1)
【出願人】(508006056)東和産業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(508005945)株式会社アルファ・エンジニアリング (1)
【出願人】(508006056)東和産業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
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