説明

装飾品

【課題】透光性の宝飾石の輝きを損なうことなく宝飾石を保持することができ、さらに、宝飾石のパビリオンから光を入射させて、これまでにない輝きを発揮することのできる装飾品を提供すること。
【解決手段】装飾品1において、基台30にはパビリオン111の一部のみが挿入される固定穴31が形成され、固定穴31の縁部分310と、宝飾石10のパビリオン111において縁部分310と対向する部分とが接着剤40により固定されており、パビリオン111の一部のみに接着剤40が塗布されている。この状態において、パビリオン111の大部分が開放状態にあるので、光源装置5からパビリオン111に光を入射させてクラウン112側から出射させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、宝飾石を備えた装飾品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
宝飾石を用いた装飾品のうち、最も代表的な装飾品である指輪などでは、ブリリアントカットされた宝飾石のクラウンの一部やガードルが金属製の基台の爪部分によって保持されており、図10(a)に示すように、上側のクラウン112から入射した光は、下側のパビリオン111で反射して再び、クラウン112から出射される(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−137019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、宝飾石のクラウンの一部やガードルが金属製の基台の爪部分によって保持されている場合には、クラウンの一部が爪部分で覆われているため、出射すべき光が爪部分で遮られる分、輝きが損なわれるとともに、爪部分を折り曲げる際、クラウンに傷が付くおそれがある。
【0004】
また、装飾品の種類によっては、クラウン112まで基台の爪部分が被さる構造を採用できない場合があり、このような場合、図10(b)に示すように、下側のパビリオン111を遮光性の接着剤40により基台に全面接着した構造が考えられる。しかしながら、図10(b)に示す構造では、パビリオン111での反射率が低下し、輝きが低下するという問題点がある。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、透光性の宝飾石の輝きを損なうことなく宝飾石を保持することができる装飾品を提供することにある。
【0006】
また、本発明の課題は、宝飾石のパビリオンから光を入射させて、これまでにない輝きを発揮することのできる装飾品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、多面にカットされた上側のクラウン、および下側のパビリオンを備えた透光性の宝飾石を有する装飾品において、前記宝飾石は、透光性の樹脂材料により保持されていることを特徴とする。
【0008】
本発明では、宝飾石が透光性の樹脂材料で保持されているため、宝飾石への光の入射、および宝飾石からの光の出射が妨げられることがない。それ故、透光性の宝飾石の輝きを損なうことなく宝飾石を基台に保持することができる。
【0009】
本発明において、前記パビリオンの一部のみが挿入される固定穴が形成された基台を備え、前記宝飾石は、前記固定穴の縁部分と、前記パビリオンにおいて前記縁部分と対向する部分とが前記樹脂材料としての接着剤により固定されていることが好ましい。このように構成すると、基台にはパビリオンの一部のみが挿入される固定穴が形成され、固定穴の縁部分と、パビリオンにおいて縁部分と対向する部分とが接着剤により固定されているため、基台にクラウンに重なる爪部分がなくても、宝飾石を基台に確実に固定することができる。また、宝飾石と基台とは、基台の固定穴の縁部分と、パビリオンにおいて縁部分と対向する部分とが接着剤により固定されているため、パビリオンにおいて接着剤が塗布されている領域が極めて狭い。それ故、パビリオンでの反射率が高いので、クラウン側から入射した光は、パビリオンで反射して再び、クラウン側から出射されるため、優れた輝きを発揮する。
【0010】
本発明において、前記接着剤は、前記パビリオンの周方向において離間する複数個所で前記固定穴の縁部分と前記パビリオンとを固定していることが好ましい。このように構成すると、パビリオンにおいて接着剤が塗布されている領域を最小限に止めることができるので、クラウン側から入射した光は、パビリオンで反射して再び、クラウン側から出射され、優れた輝きを発揮する。
【0011】
本発明において、前記接着剤は、前記パビリオンでの多面カットにより生じた凸部分で前記固定穴の縁部分と前記パビリオンとを固定していることが好ましい。このように構成すると、接着剤の塗布領域が広がらないので、パビリオンにおいて接着剤が塗布されている領域を最小限に止めることができる。
【0012】
本発明において、前記宝飾石は、前記樹脂材料としての基台にアウトサートモールドされて当該基台に保持されている構成を採用してもよい。このように構成すると、クラウンの一部が基台で覆われるが、基台は透光性の樹脂材料からなるため、光の出射を損なわない。また、金属製の基台を用いる場合と違って、爪部分を加工する際、宝飾石に傷が付くこともない。
【0013】
本発明において、前記基台に対して前記パビリオン側が位置する側には、前記パビリオンに対して光を出射するための光源を備えた光源装置が配置されていることが好ましい。本発明では、パビリオンの大部分が透光状態にあるので、光源装置によって、パビリオンに光を入射させてクラウン側から出射させることができ、宝飾石に対して、これまでにない輝きを発揮させることができる。それ故、携帯電話機の外ケースなどに、これまでない意匠性を付与することができる。
【0014】
本発明において、前記光源装置は、前記光源から出射された光の輝度分布を調整する光学部品、例えば、多数の凹凸が形成された光散乱シートや、多数のプリズム面が形成されたプリズムシートを備えていることが好ましい。このように構成すると、光源から出射された光が、輝度分布が調整された状態でパビリオンに入射するので、宝飾石に対して、これまでにない輝きを発揮させることができる。
【0015】
本発明において、前記光源は、LEDであることが好ましい。LEDであれば小型であるにもかかわらず、十分な光を出射することができる。また、携帯電話機などの電子機器ではLEDが搭載されていることが多いので、かかるLEDから出射された光の一部を、電子機器の一部に形成した装飾品(装飾部分)から出射する構成を採用することもでき、このように構成すると、携帯電話機でもモードに対応した輝きを発揮させることもできる。
【0016】
本発明において、前記宝飾石はキュービックジルコニア体であり、前記クラウンには、1層あるいは複数層のシリコン系化合物層からなる透光性のコーティング層が形成されていることが好ましい。キュービックジルコニア体に対する保護や、出射光の品位を高めることを目的に透光性のコーティング層を形成する際、シリコン系化合物層は、酸化チタン層や酸化ニオブ層に比して、強度が強く、傷や磨耗が発生しにくいという利点がある。
【0017】
本発明において、前記コーティング層では、前記窒化シリコン層および前記酸化シリコン層が各々2層以上積層されてなることが好ましい。このように構成すると、窒化シリコン層は酸化シリコン層に比して屈折率が大きく、酸化シリコン層は窒化シリコン層に比して屈折率が小さいので、コーティング層に入射した光は、窒化シリコン層と酸化シリコン層との界面で反射されるため、膜構成に応じた色調を生じることができるとともに、優れた輝きを発揮する。
【発明の効果】
【0018】
本発明においては、宝飾石が透光性の樹脂材料で保持されているため、宝飾石への光の入射、および宝飾石からの光の出射が妨げられることがない。それ故、透光性の宝飾石の輝きを損なうことなく宝飾石を基台に保持することができる。また、基台に対してパビリオン側が位置する側に光源装置を配置した場合、光源装置によって、パビリオンに光を入射させてクラウン側から出射させることができ、宝飾石に対して、これまでにない輝きを発揮させることができる。それ故、携帯電話機の外ケースなどに、これまでない意匠性を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した装飾品について説明する。なお、窒化シリコンは通常、SiNxとして表され、酸化シリコンは通常、SiOxとして表されるが、以下、窒化シリコンについてはSi34と表し、酸化シリコンについてはSiO2と表す。
【0020】
[実施の形態1]
図1(a)、(b)は、本発明の実施の形態1に係る装飾品の断面構成を模式的に示す説明図、およびこの装飾品での接着剤の塗布位置を模式的に示す説明図である。図2(a)〜(d)は各々、本形態の装飾品に用いた宝飾石(キュービックジルコニア体)の構成を模式的に示す説明図、この宝飾石をラウンドブリリアントカットしたときの側面図、平面図および側面図である。図3(a)、(b)は各々、本形態の装飾品に用いた宝飾石(キュービックジルコニア体)に形成したコーティング層の層構成を示す説明図である。図4は、本発明を適用した装飾品の製造方法でマスクスパッタ法を採用した場合の説明図である。
【0021】
図1(a)に示す装飾品1は、透光性の宝飾石10と、この宝飾石10が固定された板状の基台30とを備えており、本形態において、基台30は、携帯電話機などの電子機器に用いられている金属製あるいはプラスチック製の外ケースである。
【0022】
宝飾石10は、図2(a)〜(d)に示すように、多面の円錐状のパビリオン111の上部に多面の円錐台状のクラウン112を備えるようにブリリアントカットされたキュービックジルコニア体11を備えており、クラウン112側の表面には透光性のコーティング層13が形成されている。
【0023】
本形態において、コーティング層13は、図3(a)に示すように、複数層のシリコン系化合物層からなる。さらに具体的には、コーティング層13では、窒化シリコン層(Si34/可視域での屈折率=約2.0)および酸化シリコン層(SiO2/可視域での屈折率=約1.46)が交互に6層ずつ形成されており、その最下層において、キュービックジルコニア体11と接する層は窒化シリコン層である。また、コーティング層13において、最上層は、酸素より窒素を多く含む酸窒化シリコン層(SiNxy)になっている。かかる層はいずれも、反応性スパッタ法により形成されている。すなわち、ターゲットをシリコンとして、キュービックジルコニア体11にスパッタ法により成膜する際、アルゴンガス(放電ガス)などに反応ガスとして窒素ガスを導入して窒化シリコン層を形成する操作と、アルゴンガスなどに反応ガスとして酸素ガスを導入して酸化シリコン層を形成する操作とを交互に行ない、最後に、アルゴンガスなどに反応ガスとして酸素ガスおよび窒素ガスを導入して、酸窒化シリコン層を形成する操作を行なう。かかるスパッタ法によれば、成膜時の成膜分子のエネルギーが蒸着法に比して大きいので、層の密着性を高めることができる。
【0024】
その際、成膜時間を制御すれば、各層の厚さを制御することができ、表1に示す層構成を実現することができる。表1において、例えば、最も左欄に示す膜厚プロファイルを示すように、コーティング層13を形成すれば、赤みがかった光が宝飾石10から出射され、膜厚プロファイルを右側に示すように条件変更するにともなって、宝飾石10から出射される光が帯びる色合いは、黄色、緑色、青色に変化する。
【0025】
【表1】

【0026】
また、本形態のように、多面のクラウン112の表面にコーティング層13を形成すると、場所によって、各層の厚さが連続的に変化し、表1の最も左欄に示す膜厚プロファイルを有する部分からは、赤みがかった光が出射され、その他の部分からは、黄色、緑色、青色を帯びた光が出射される。それ故、装飾品10からは虹色の光が出射されることになる。
【0027】
ここで、コーティング層13の形成工程において、多面のクラウン112の一部の表面に膜厚の薄い層を積極的に形成するには、図4に示すように、その箇所にスパッタ時のスパッタ分子(粒子)の入射量を抑えるマスキング治具90を配置する。このような方法を採用すると、マスキング治具90を配置した部分のクラウン112の表面には膜厚の薄い層が形成され、マスキング治具90を配置しない部分のクラウン112の表面には膜厚の厚い層が形成されることとなる。そのため、クラウン112の場所によって、各層の厚さが連続的に変化することとなるので、表1の最も左欄に示す膜厚プロファイルを有する部分からは赤みがかった光が出射され、その他の部分からは、黄色、緑色、青色を帯びた光が出射される。それ故、装飾品10からは虹色の光が出射されることになる。
【0028】
また、コーティング層13で反射される反射光(原色側)と、クラウン112側から入射した光がパビリオン111内で反射してコーティング層13側に戻る戻り光、あるいはパビリオン111側から照射されてコーティング層13側に向かって放出される光(補色側)との2つの光が重なり合うことによって、装飾品10は、特有の色調をもつ光を出射することになる。
【0029】
なお、本形態では、酸素より窒素を多く含む酸窒化シリコン層を用いたが、酸窒化シリコン層に代えて、窒素より酸素を多く含む窒酸化シリコン層を用いてもよい。また、コーティング層13は、図3(b)および表2に示すように、窒化シリコン層(Si34)および酸化シリコン層(SiO2)が交互に4層ずつ形成された構造でもよく、図3(b)に示すコーティング層13は、その最下層において、キュービックジルコニア体11と接する層は酸化シリコン層になっている。また、コーティング層13において、最上層は酸化シリコン層になっており、酸化シリコン層は計5層になっている。かかる層構成によれば、ピンク光が出射される。
【0030】
【表2】

【0031】
このように構成した宝飾石10を、図1(a)に示す基台30に固定するにあたって、基台30には、宝飾石10のパビリオン111の一部のみが下方に突き出る貫通穴からなる固定穴31が形成されており、本形態では、固定穴31の斜め上向きの縁部分310と、パビリオン111において縁部分310と対向する部分とが透光性の接着剤40(透光性の樹脂材料)により固定されている。ここで、パビリオン111には、多面カットにより複数の稜線部分116(凸部分)が形成されており、図1(b)、図2に示す例では6箇所の稜線部分116が周方向で等角度間隔に形成されている。本形態において、接着剤40は、稜線部分116と固定穴31の縁部分310とを固定している。本形態において、接着剤40としては、紫外線硬化樹脂など、低屈折率、かつ、透明性の高い樹脂が望ましい。より具体的には、接着剤40は、キュービックジルコニア体11(屈折率=約2.19)よりも屈折率の低い接着剤、例えばUV硬化性のアクリル樹脂(屈折率=約1.50)や、エポキシ樹脂(屈折率=約1.60)からなり、パビリオン111の稜線部分116に塗布されている。
【0032】
また、本形態では、基台30に対してパビリオン111側が位置する側には、パビリオン111に対して光を出射するための光源51をパビリオン111の真下位置に備えた光源装置5が配置されている。本形態において、光源51は、基板52上に実装された白色LEDからなり、その表面は透光性のケーシング53で覆われている。
【0033】
以上説明したように、本形態の装飾品1において、基台30にはパビリオン111の一部のみが挿入される固定穴31が形成され、固定穴31の縁部分310と、宝飾石10のパビリオン111において縁部分310と対向する部分とが接着剤40により固定されている。このため、基台30にクラウン112に重なる爪部分がなくても、宝飾石10を基台30に確実に固定することができる。
【0034】
また、宝飾石10と基台30とは、基台30の固定穴31の縁部分310と、パビリオン111において縁部分310と対向する部分とが接着剤40により固定されているため、パビリオン111において接着剤40が塗布されている領域が極めて狭い。それ故、パビリオン111の壁面での反射率が高いので、図1に矢印で示すように、クラウン112側から入射した光は、パビリオン111で反射して再び、クラウン112側から出射されるので、優れた輝きを発揮する。
【0035】
また、接着剤40は、パビリオン111の周方向において離間する複数個所で固定穴31の縁部分310とパビリオン111とを固定しているため、パビリオン111において接着剤40が塗布されている領域を最小限に止めることができる。しかも、接着剤40は、パビリオン111において多面カットにより形成された複数の稜線部分116(凸部分)で固定穴31の縁部分310とパビリオン111とを固定しているため、接着剤40の広がりを防止でき、パビリオン111において接着剤40が塗布されている領域が極めて狭い。それ故、クラウン112側から入射した光は、パビリオン111で反射して再び、クラウン112側から効率よく出射されるので、優れた輝きを発揮する。
【0036】
さらに、本形態では、パビリオン111の大部分が開放状態にあるので、光源装置5によって、パビリオン111に光を入射させてクラウン112側から出射させている。それ故、宝飾石10に対して、これまでにない輝きを発揮させることができる。
【0037】
さらにまた、本形態では、キュービックジルコニア体11に対する保護や、出射光の品位を高めることを目的に透光性のコーティング層13を形成しているが、かかるコーティング層13はシリコン系化合物層からなるため、酸化チタン層や酸化ニオブ層に比して、強度が強く、傷や磨耗が発生しにくい。しかも、コーティング層13では、窒化シリコン層および酸化シリコン層が各々2層以上積層されており、窒化シリコン層は酸化シリコン層に比して屈折率が大きく、酸化シリコン層は窒化シリコン層に比して屈折率が小さい。それ故、コーティング層13に入射した光は、窒化シリコン層と酸化シリコン層との界面で反射しながら、クラウン112側から出射されるため、膜構成に対応する特有の色調をもった光を優れた輝きをもって出射する。
【0038】
ここで、コーティング層13は、透過強度と反射強度が補色の関係にある。このため、例えば、クラウン112で緑色を強く反射させるようなコーティング層13を形成すると、昼間、外光がクラウン112に入射すると、宝飾石10が緑色に光る一方、夜間、光源51から出射された白色光のうち、緑色と補色の関係にあるピンク色の光が透過しやすいので、宝飾石10はピンク色に光る。それ故、携帯電話機の外ケースにこれまでにない意匠性を付与することができる。
【0039】
[実施の形態2]
図5は、本発明の実施の形態2に係る装飾品の断面構成を模式的に示す説明図である。なお、本形態の基本的な構成は、実施の形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0040】
図5に示す装飾品1は、実施の形態1と同様、透光性の宝飾石10と、この宝飾石10が固定された板状の基台30とを備えている。宝飾石10は、図2(a)〜(d)を参照して説明したように、多面の円錐状のパビリオン111の上部に多面の円錐台状のクラウン112を備えるようにブリリアントカットされたキュービックジルコニア体11を備えており、クラウン112側の表面には透光性のコーティング層13が形成されている。
【0041】
このように構成した宝飾石10を、基台30に固定するにあたって、本形態でも実施の形態1と同様、基台30には、宝飾石10のパビリオン111の一部のみが突き出る固定穴31が形成されており、本形態では、固定穴31の斜め上向きの縁部分310と、パビリオン111において縁部分310と対向する部分とが接着剤40により固定されている。
【0042】
さらに、本形態でも、実施の形態1と同様、基台30に対してパビリオン111側が位置する側には、パビリオン111に対して光を出射するための光源51を備えた光源装置5が配置されている。
【0043】
本形態において、光源51は、パビリオン111の真下位置ではなく、パビリオン111から側方にずれた位置に配置され、光源51(LED)が実装された基板52は、光源51を横向き姿勢にして基台30の下面に固定されている。このため、光源装置50が占有するスペースの薄型化を図ることができ、携帯電話機などへの搭載に適している。
【0044】
このように構成した本形態の装飾品1においても、実施の形態1と同様、基台30にクラウン112に重なる爪部分がなくても、宝飾石10を基台30に確実に固定することができる。また、パビリオン111において接着剤40が塗布されている領域が極めて狭いため、クラウン112側から入射した光は、パビリオン111で反射して再び、クラウン112側から出射されるので、優れた輝きを発揮する。さらに、光源装置5によって、パビリオン111に光を入射させてクラウン112側から出射させているので、宝飾石10に対して、これまでにない輝きを発揮させることができるなど、実施の形態1と同様な効果を奏する。
【0045】
[実施の形態3]
図6は、本発明の実施の形態3に係る装飾品の断面構成を模式的に示す説明図である。なお、本形態の基本的な構成は、実施の形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0046】
図6に示す装飾品1でも、実施の形態1と同様、基台30に対してパビリオン111側が位置する側には、パビリオン111に対して光を出射するための光源51を備えた光源装置5が配置されている。本形態において、光源51は、パビリオン111の真下位置ではなく、パビリオン111から側方にずれた位置に配置され、光源51(LED)は斜め上向きに配置されている。
【0047】
ここで、光源装置5は、光源51から出射された光の輝度分布を調整する光学部品55が配置されている。本形態において、光学部品55には、光源51から出射された光を様々な方向に向けて出射する多数のプリズム面が形成されているとともに、その表面には光散乱用の微細な凹凸が形成されており、光学部品55は、光散乱シートおよびプリズムシートの機能を備えている。このこのように構成すると、光源51から出射された光が輝度分布が調整された状態でパビリオン111に入射するので、宝飾石10に対して、これまでにない輝きを発揮させることができる。また、光源装置5は、パビリオン111の真下で光を出射するので、実施の形態2に比して、光をパビリオン111内に効率よく入射させることができる。
【0048】
[実施の形態4]
図7は、本発明の実施の形態4に係る装飾品の断面構成を模式的に示す説明図である。なお、本形態の基本的な構成は、実施の形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0049】
図7に示す装飾品1でも、実施の形態1と同様、基台30に対してパビリオン111側が位置する側には、パビリオン111に対して光を出射するための光源51(LED)を備えた光源装置5が配置されている。本形態において、光源51は、パビリオン111の真下位置ではなく、パビリオン111から側方にずれた位置に横向きに配置され、光源51の出射面に対向する位置に導光板56が配置されている。
【0050】
ここで、導光板56に対してパビリオン111と反対側には反射板54が配置されている一方、導光板56とパビリオン111との間には、プリズムシート57および光散乱シート58が配置されている。プリズムシート57および光散乱シート58は、光源51から出射された光の輝度分布を調整する機能を担い、反射板54は、光源51から出射された光を効率よくパビリオン111に向けて導く機能を担っている。このように構成した場合も、実施の形態3と同様、光源51から出射された光が輝度分布が調整された状態でパビリオン111に入射するので、宝飾石10に対して、これまでにない輝きを発揮させることができる。また、光源装置5は、パビリオン111の真下で光を出射するので、実施の形態2に比して、光をパビリオン111内に効率よく入射させることができる。
【0051】
[本発明の他の実施の形態]
図8(a)、(b)は、本発明の他の実施の形態に係る装飾品の断面構成を模式的に示す説明図、および本発明の他の実施の形態に係る装飾品における接着剤の塗布パターンを示す説明図である。
【0052】
上記実施の形態1〜4では、基台30に対してパビリオン111側が位置する側に光源装置を配置したが、かかる光源装置を配置しない場合に本発明を適用してもよい。すなわち、図8(a)に示すように、基台30には、宝飾石10のパビリオン111の一部のみが挿入される有底の固定穴35が形成されており、固定穴35の斜め上向きの縁部分350と、パビリオン111において縁部分350と対向する部分とが接着剤40により固定されている。このように構成した場合も、パビリオン111の壁面での反射率が高いため、クラウン112側から入射した光は、パビリオン111で反射して再び、クラウン112側から出射されるので、優れた輝きを発揮する。
【0053】
また、上記実施の形態1〜4において、接着剤40は、パビリオン111の周方向の複数個所に塗布されていたが、宝飾石10の外径が2.5mmであるなど小さい場合には、図8(b)に示すように、接着剤40を環状に塗布してもよい。いずれの場合でも、接着剤40の塗布面積は、パビリオン111の面積の40%以下であることが好ましい。
【0054】
さらに、上記実施の形態1〜4においては、コーティング層13が形成された宝飾石10を用いた例を説明したが、コーティング層13が形成されていない宝飾石10を用いる場合に本発明を適用してもよい。さらにまた、光源装置5では、光ファイバなどを用いてもよい。
【0055】
さらにまた、上記の実施の形態では、固定穴31、35を備えた基台30に対して、宝飾石10のパビリオン111を接着固定した構成であったが、図9に示すように、装飾品1において、宝飾石10が透光性の樹脂材料からなる基台38にアウトサートモールドされて基台38に保持されている構成を採用してもよい。この場合、宝飾石10のクラウン112に基台38の爪部分39が被さる構成になるが、基台30は、爪部分39も含めて透光性の樹脂材料からなるため、宝飾石10から出射される光が爪部分39で遮られることがない。それ故、クラウン112が金属製の爪部分で覆われている構成と比較して、宝飾石10は優れた輝きを発揮することができる。また、金属製の爪部分で固定する場合と違って、爪部分を形成する際、宝飾石10に傷を付けることもない。さらに、アウトサートモールドであれば、ナイロン樹脂やフッ素樹脂などといった接着機能を有しない樹脂材料を用いて宝飾石10を保持することもできる。なお、本形態でも、基台38の下方側に対して、前記した光源装置を配置してもよい。また、宝飾石10を基台38に対してより強固に固定する場合には、パビリオン111の外周の一部、または全周を樹脂材料によって覆うこともできる。この場合であっても、透光性の樹脂材料で覆うため、金属等でパビリオン112を覆う構成と比較して、光を遮らないため宝飾石10は優れた輝きを発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】(a)、(b)は、本発明の実施の形態1に係る装飾品の断面構成を模式的に示す説明図、およびこの装飾品での接着剤の塗布位置を模式的に示す説明図である。
【図2】(a)〜(d)は各々、本発明の実施の形態1に係る装飾品に用いた宝飾石(キュービックジルコニア体)の構成を模式的に示す説明図、この宝飾石をラウンドブリリアントカットしたときの側面図、平面図および側面図である。
【図3】(a)、(b)は各々、本発明の実施の形態1に係る装飾品に用いた宝飾石(キュービックジルコニア体)に形成したコーティング層の層構成を示す説明図である。
【図4】本発明を適用した装飾品の製造方法でマスクスパッタ法を採用した場合の説明図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る装飾品の断面構成を模式的に示す説明図である。
【図6】本発明の実施の形態3に係る装飾品の断面構成を模式的に示す説明図である。
【図7】本発明の実施の形態4に係る装飾品の断面構成を模式的に示す説明図である。
【図8】(a)、(b)は、本発明の他の実施の形態に係る装飾品の断面構成を模式的に示す説明図、および本発明の他の実施の形態に係る装飾品における接着剤の塗布パターンを示す説明図である。
【図9】本発明のさらに他の実施の形態に係る装飾品の平面構成を模式的に示す説明図である。
【図10】(a)、(b)は各々、キュービックジルコニア体の説明図、およびこのキュービックジルコニア体のパビリオンを全面接着した場合の説明図である。
【符号の説明】
【0057】
1 装飾品
5 光源装置
10 宝飾石
11 キュービックジルコニア体
13 コーティング層
30 基台
31、35 固定穴
38 基台(透光性の樹脂材料)
39 爪部分
40 接着剤(透光性の樹脂材料)
51 光源
111 パビリオン
112 クラウン
310、350 縁部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多面にカットされた上側のクラウン、および下側のパビリオンを備えた透光性の宝飾石を有する装飾品において、
前記宝飾石は、透光性の樹脂材料により保持されていることを特徴とする装飾品。
【請求項2】
前記パビリオンの一部のみが挿入される固定穴が形成された基台を備え、
前記宝飾石は、前記固定穴の縁部分と、前記パビリオンにおいて前記縁部分と対向する部分とが前記樹脂材料としての接着剤により固定されていることを特徴とする請求項1に記載の装飾品。
【請求項3】
前記接着剤は、前記パビリオンの周方向において離間する複数個所で前記固定穴の縁部分と前記パビリオンとを固定していることを特徴とする請求項2に記載の装飾品。
【請求項4】
前記接着剤は、前記パビリオンでの多面カットにより生じた凸部分で前記固定穴の縁部分と前記パビリオンとを固定していることを特徴とする請求項3に記載の装飾品。
【請求項5】
前記宝飾石は、前記樹脂材料としての基台にアウトサートモールドされて当該基台に保持されていることを特徴とする請求項1に記載の装飾品。
【請求項6】
前記基台に対して前記パビリオン側が位置する側には、前記パビリオンに向けて光を出射するための光源を備えた光源装置が配置されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の装飾品。
【請求項7】
前記光源装置は、前記光源から出射された光の輝度分布を調整する光学部品を備えていることを特徴とする請求項6に記載の装飾品。
【請求項8】
前記光源は、LEDであることを特徴とする請求項6または7に記載の装飾品。
【請求項9】
前記宝飾石は、キュービックジルコニア体であり、
前記クラウンには、1層あるいは複数層のシリコン系化合物層からなる透光性のコーティング層が形成されていることを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の装飾品。
【請求項10】
前記コーティング層では、前記窒化シリコン層および前記酸化シリコン層が各々2層以上積層されてなることを特徴とする請求項9に記載の装飾品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−100856(P2009−100856A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273662(P2007−273662)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】