説明

補修用速硬性ポリマーセメントモルタル組成物及びその施工方法

【課題】風力発電所に代表される繰り返し載荷を受けるコンクリート構造物のひび割れや剥離の補修に有用なモルタル組成物を提供する。
【解決手段】(A)11CaO・7Al23・CaX2(Xはハロゲン原子を示す)又はアーウィンを有効成分とする速硬性セメント組成物100質量部に対し、(B)真比重が2.0以上であって粒径600μm以上のものと600μm未満のものの比率が1:0.30〜1:0.60である細骨材 100〜400質量部、(C)ポリマー 固形分換算で10〜50質量部、(D)繊維 0.2〜1.5質量部、(E)遅延剤 0.1〜1.0質量部、及び(F)収縮低減剤 0.5〜1.5質量部を含有する補修用速硬性ポリマーセメントモルタル組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電所コンクリート構造部等の繰り返し載荷を受けるコンクリート構造物の補修に用いる速硬性ポリマーセメントモルタル組成物及びその施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
風力発電所のコンクリート基礎部分の表層部は、風力発電設備が風圧を受けることで発生する正負の繰り返し載荷を受ける。その結果、ひび割れと剥離が発生し、その剥離は、繰り返し載荷を受け続けることから、時間の経過とともに剥離はコンクリート内部に進行し、有害な損傷を受けることになる。
【0003】
通常のコンクリート構造物のひび割れや剥離の補修には、セメント水和物に起因する乾燥収縮性、耐薬品性、及び強度などに関する課題を解決する目的で、モルタル、コンクリートに、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョンやアクリル酸エステル共重合体エマルジョンのようなポリマーエマルジョン、あるいは、スチレン−ブタジエンゴムのようなゴムラテックスを混和することが従来より行われており、建設材料として広く用いられている。しかしながら、従来のポリマーセメント組成物では、セメントが硬化するまでに長時間かかり、特に低温では顕著になるため、現場での施工に関しては必ずしも十分とはいえるものではないため、速硬性ポリマーセメント組成物が提案されている(特許文献1、2)。しかし、ポリマーを混和する目的が乾燥収縮性、耐薬品性、強度発現性の改善にあったため、風力発電所のように繰り返し載荷を受けた際の損傷低減には寄与しなかった。
【0004】
また、水で濡れたコンクリート表面との付着力を向上する目的で、アーウィン系速硬セメントとエポキシ樹脂エマルションを組み合わせたポリマーセメントモルタルとその施工方法が考案されている(特許文献3)が、風力発電所のように風圧による正負の繰り返し載荷を受ける箇所へ適用するには十分とは言えない。また、速硬性セメント組成物としては、11CaO・7Al23・CaX2(Xはハロゲン原子を示す)、アーウィン等が提案され、凝結遅延剤としてクエン酸、ヘプトン酸、コハク酸等が提案されている。これらの成分は、凝結時間の調整には有効であるが、断面修復材として仕上がり面の改善ひび割れ低減の改善に関しては有効とは言えない(特許文献4、5、6)。
その他、断面修復材に混和した補強用繊維の分散性改善方法の提案、靭性を付与するためナイロン繊維、ビニロン繊維、アクリル繊維を混和することが提案されているが、乾燥収縮の低減、風力発電所のような繰返し載荷に対する耐久性向上には結びつかない(特許文献7、8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−321540号公報
【特許文献2】特開平4−132648号公報
【特許文献3】特開2000−185957号公報
【特許文献4】特開平5−208857号公報
【特許文献5】特開平11−278903号公報
【特許文献6】特開平9−295842号公報
【特許文献7】特開2005−8486号公報
【特許文献8】特開2007−289537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
風力発電所のコンクリート基礎部分に施工されたコンクリートは一般的なコンクリートであり、風力発電設備から受ける静的載荷については考慮されているが、風圧による繰り返し載荷については十分に考慮されていない。そのため、表層部にひび割れと剥離が発生し、時間の経過とともにその剥離が内部にまで進行し、有害な損傷を受けている。
通常の断面修復用ポリマーセメントモルタルでひび割れ、剥離箇所の補修を行っても乾燥収縮,既設コンクリートとの付着性は考慮して設計されているが、繰り返し載荷に対する抵抗性を考慮した設計にはなっていない。したがって、通常の断面修復用ポリマーセメントモルタルで補修した場合、時間経過とともに再び損傷を受けてしまう。
従って、本発明の課題は、風力発電所に代表される繰り返し載荷を受けるコンクリート構造物のひび割れや剥離の補修に有用なモルタル組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者は、繰り返し載荷を受けるコンクリート部のひび割れや剥離の補修に有効なモルタル組成について種々検討したところ、11CaO・7Al23・CaX2又はアーウィンを有効成分とする速硬性セメント組成物100質量部に対し、真比重2.0以上粒径600μm以上のものと600μm未満のものの比率が1:0.30〜1:0.60である細骨材を100〜400質量部配合することにより乾燥収縮の低減が可能であるとともにポリマーを固形分換算で10〜50質量部混和しても良好なコテ作業性が得られることを見出した。また、ポリマーを固形分換算で10〜50質量部混和することにより繰り返し載荷に対する抵抗性を付与することが可能となり、繊維0.2〜1.5質量部、遅延剤0.1〜1.0質量部を混和させることによりひび割れ抵抗性を向上し、適切な可使時間の確保と良好な施工性が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、(A)11CaO・7Al23・CaX2(Xはハロゲン原子を示す)又はアーウィンを有効成分とする速硬性セメント組成物100質量部に対し、(B)真比重が2.0以上であって粒径600μm以上のものと600μm未満のものの比率が1:0.30〜1:0.60である細骨材 100〜400質量部、(C)ポリマー 固形分換算で10〜50質量部、(D)繊維 0.2〜1.5質量部、(E)遅延剤 0.1〜1.0質量部、及び(F)収縮低減剤 0.5〜1.5質量部を含有する補修用速硬性ポリマーセメントモルタル組成物を提供するものである。
また、本発明は、上記の補修用速硬ポリマーセメントモルタル組成物を練り混ぜ後、混練物を振動機を用いて振動させて補修部に充填することを特徴とする風力発電所のコンクリート構造部の補修施工方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明により従来のポリマーセメントモルタルよりも早期にコンクリート及び金属との高い付着強度が得られ、曲げ強度も向上する。その結果、繰り返し載荷に対する抵抗性が著しく向上し、風力発電所コンクリート構造部等の補修が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】付着強度の評価のために本発明モルタルを打設した状態の概略図である。
【図2】繰り返し載荷試験用試験体の設置状態を示す図である。左側がモルタル面、右側が鋼板面である。
【図3】負曲げ試験概略図である。白矢印は、載荷を示す。
【図4】載荷のタイムコースを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の補修用速硬性ポリマーセメントモルタル組成物には、前記(A)速硬性セメント組成物、(B)細骨材、(C)ポリマー、(D)繊維、(E)遅延剤及び収縮低減剤を含む。まず、(A)速硬性セメント組成物は、11CaO・7Al23・CaX2(Xはハロゲン原子を示す)又はアーウィンを有効成分として含有する。11CaO・7Al23・CaX2は、いわゆるカルシウムアルミネートハロゲン化物系セメントであり、ジェットセメント、スーパージェットセメント(超速硬セメント)と呼ばれるものである。ハロゲン原子としては、フッ素原子が特に好ましい。また、アーウィンは、カルシウムサルホアルミネート(3CaO・3Al23・CaSO4)系セメントとも称されるものである。
【0012】
本発明の(A)速硬性セメント組成物中の11CaO・7Al23・CaX2及び/又はアーウィンの含有量は、所望の速硬性を奏する量であれば限定されないが、練混ぜ後5時間でコンクリートとの付着強度1.0N/mm2以上、曲げ強度3.0N/mm2以上を得る量であるのが好ましく、具体的には、5〜85質量%、さらに10〜75質量%、特に15〜70質量%であるのが好ましい。
【0013】
本発明の(A)速硬性セメントモルタル組成物には、さらにポルトランドセメント、消泡剤、減水剤、防錆剤、撥水剤を配合してもよい。ここでポルトランドセメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメントが使用でき、その含有量は可使時間確保、金属との付着強度、繰り返し載荷に対する耐久性の点で、成分(A)中に、20〜70質量%、さらに25〜65質量%が好ましい。成分(A)中に消泡剤は0.1〜1.0質量%、減水剤は、0.1〜1.0質量%が好ましい。ここで減水剤には、高性能減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤、分散剤が含まれる。
【0014】
本発明に用いる(B)細骨材は、真比重が2.0以上であって粒径600μm以上のものと600μm未満のものの比率が1:0.30〜1:0.60である細骨材である。
真比重が2.0未満の細骨材を用いると、練混ぜ水量が大きくなり、長さ変化率が材齢7日で0.01%を超えるため金属との付着強度が低下し、繰り返し載荷に対する耐久性が低下する。また、曲げ強度が低下する。また、粒径600μm以上のものと600μm未満のものとの比率(600μm以上:600μm未満)が1:0.3未満の場合には、施工性が低下し、付着強度が低下する。
また、この比率が0.60を超える場合は、長さ変化率が材齢7日で0.01%を超えるため金属との付着強度が低下し、繰返し載荷に対する耐久性が低下する。
このような細骨材としては、川砂、珪砂、砕砂、寒水石、石灰石砂、スラグ骨材等が挙げられ、これらの細骨材の中から、真比重及び粒径比率が前記範囲のものを選択して用いるのが好ましい。
【0015】
(B)細骨材を(A)速硬性セメント組成物100質量部に対して100〜400質量部含有させることにより、乾燥収縮が低減され、高い金属との付着強度及び繰り返し載荷に対する耐久性が得られる。好ましい含有量は、成分(A)100質量部に対し150〜380質量部であり、特に好ましくは200〜350質量部である。
【0016】
本発明に用いる(C)ポリマーとしては、通常ポリマーセメントに用いられるポリマーであれば特に限定されないが、高い靱性を得る点から、アクリル酸エステル系ポリマー、アクリルスチレン系ポリマー、スチレンブタジエン(SBR)系ポリマー、酢酸ビニル系ポリマー、エチレン酢酸ビニル系ポリマー、酢酸ビニル/バーサチック酸ビニルエステル系ポリマー、エチレンビニルアルコール(EVA)系ポリマー、酢酸ビニル/バーサチック酸ビニル/アクリル酸エステル系ポリマー等が好ましい。これらのポリマーは、通常ポリマーディスパージョンの形態で市販されているもの、及び再乳化粉末樹脂として市販されているもののいずれでもよく、いずれもJIS A 6203に規定のものを用いることができる。
【0017】
(C)ポリマーの含有量は、成分(A)100質量部に対して、10〜50質量部含有させると、金属、コンクリートとの付着強度、繰り返し載荷に対する耐久性、及び初期強度が良好になる。10質量部未満では、金属、コンクリートとの付着強度が十分でない。一方、50質量部を超えると、長さ変化率が材齢7日で0.01%を超えるため金属との付着度が低下し、繰り返し載荷に対する耐久性が低下する。また、初期強度発現性が低下する。より好ましい含有量は12〜45質量部、さらに好ましくは12〜42質量部である。
【0018】
本発明に用いる(D)繊維としては、合成繊維、ガラス繊維及び炭素繊維のいずれでもよく、繊維の配合によりひび割れ分散効果、靱性向上効果が得られる。合成繊維としては、ポリアミド系繊維(ナイロン)、ポリビニルアルコール系繊維(ビニロン)、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリ塩化ビニール系繊維、ポリアクリルニトリル系繊維(アクリル)、ポリエステル系繊維、ポリエチレン系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリウレタン系繊維、ポリフルオロエチレン系繊維、アラミド繊維の群から選択された1種又は2種以上が好適に用いられる。炭素繊維としては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等が用いられる。これらのうち、ガラス繊維、ビニロン繊維、アラミド繊維が特に補強効果及びひび割れ分散効果の点で好ましい。
【0019】
(D)繊維の含有量は、成分(A)100質量部に対し0.2〜1.5質量部であると、優れた補強効果及びひび割れ分散効果が得られる。0.2質量部未満では、補強効果、ひび割れ分散効果が得られない。また、1.5質量部を超えると、練混ぜ水量が増し、部長さ変化率が材齢7日で0.01%を超えるため金属との付着度が低下し、繰り返し載荷に対する耐久性が低下する。好ましい(C)繊維の含有量は成分(A)100質量部に対し、0.3〜1.5質量部であり、さらに好ましくは0.4〜1.5質量部である。
【0020】
本発明に用いる(E)遅延剤としては、有機系、無機系のいずれの凝結遅延剤でもよく、例えば、オキシカルボン酸類、ヘプトン酸、コハク酸、珪フッ化物又はそれらの塩等が用いられる。より具体的には酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸及びその塩等が挙げられる。これらの遅延剤は、組み合わせて使用することが可能であり、遅延剤を使用することにより適正な施工時間が確保できる。
【0021】
(E)遅延剤の含有量は、施工時間の確保と強度発現性のバランスの点から、成分(A)100質量部に対し0.1〜1.0質量部であり、より好ましくは0.2〜0.8質量部である。
【0022】
本発明に用いる(E)収縮低減剤としては、グリコールエーテル系、低級アルコールのアルキレンオキシド付加物、ポリエーテル系等が用いられる。収縮低減剤の配合により、乾燥収縮が抑制され、金属との付着強度向上、繰り返し載荷に対する耐久性が向上する。(F)収縮低減剤の含有量は成分(A)に対し0.5〜1.5質量部であり、好ましくは0.6〜1.5質量部、より好ましくは0.6〜1.4質量部である。0.5質量部未満では、長さ変化率が材齢7日で0.01%を超えるため金属との付着強度が低下し、繰り返し載荷に対する耐久性が低下する。1.5質量部を超えると、強度発現性が低下する。
【0023】
本発明の補修用速硬性ポリマーセメントモルタル組成物は、通常のポリマーセメントモルタルと同様に、ホバートミキサ、ハンドミキサ、傾胴ミキサ、2軸ミキサ等を用いて練り混ぜ後に混練物を補修必要箇所に充填施工すればよい。ただし、速硬性であるため、混練後は速やかに施工するのが好ましく、また補修箇所に充填する際は振動機を用いて振動させるのが好ましい。さらに表面仕上げはコテで行えばよい。
【0024】
本発明の補修用速硬性ポリマーセメントモルタル組成物は、速硬性、強度発現性、金属、コンクリートとの付着性が良好であるとともに、繰り返し載荷に対する耐久性が極めて高いので、風力発電所コンクリート構造部の補修用として特に好適である。
【実施例】
【0025】
次に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0026】
実施例(及び参考例)に使用した材料は次の中から選定した。
【0027】
<使用材料>
A1:スーパージェットセメント 小野田ケミコ(株)製 速硬セメント組成物
A2:普通セメント 太平洋セメント(株)製商品名 普通ポルトランドセメント
A3:アーウィン カルシウムサルホアルミネート(3CaO・Al23・CaSO4)比表面積 ブレーン4000cm2/g
A4:II型無水石膏 比表面積 ブレーン8000cm2/g
A5:炭酸リチウム 市販試薬 粉末状
A6:クエン酸 市販試薬 顆粒状
B1:鹿島珪砂3号 高野商事(株)製商品名 鹿島珪砂3号B
B2:珪砂5号 前田建材工業(株)製 JIS5号珪砂
B3:珪砂6号/7号混合珪砂 前田建材工業(株)製 JIS6号50%7号50%混合珪砂
B4:寒水石 ニッチツ(株)製商品名 NSK−5 粒度 0.6〜2.5mm
B5:寒水石4号 日立寒水石(株)製 日立寒水石4号 粒度 0.3〜1.2mm
B6:重質炭酸カルシウム 粒度 88〜300μm
B7:黒曜石発泡細骨材 太平洋マテリアル製 最大粒径2mm 平均粒径0.8mm 嵩比重 0.23
B8:真珠岩発泡細骨材 太平洋マテリアル製 最大粒径88μm 平均粒径40μm 嵩比重0.21
C1:SBRエマルジョン 太平洋マテリアル(株)製商品名 太平洋CX−B
C2:EVA系粉末樹脂 旭化成ケミカルズ(株)製商品名 ビナパス7055N
D:ガラス繊維 収束型 繊維長10mm
E:ロッシェル塩 酒石酸ナトリウムカリウム
F1:液体型収縮低減剤 太平洋マテリアル(株)製商品名 テトラガードAS21
F2:粉末型収縮低減剤 太平洋マテリアル(株)製商品名 テトラガードPW
【0028】
[コンシステンシーの評価]
JISR5201に準拠した方法で、20℃の実験室で練り上がった直後のモルタルのフロー値を測定し、左官施工に適ったコンシステンシーが得られているかの評価指標とした。尚、コンシステンシーはフロー値が慨ね140〜180mmであれば工事に適うと判断される。
【0029】
[単位容積質量の測定]
20℃の実験室で練り上がった直後の本発明のモルタルをJISA1171により500mLステンレス製容器で単位容積質量を測定した。
【0030】
[曲げ強度の評価]
温度20℃湿度60%の実験室で作製した4×4×16cmの曲げ強度試験用供試体を用い、JISR5201に準拠した方法で、20℃の試験室で曲げ強度を測定した。曲げ強度試験は、材齢5時間、1日、7日で実施した。
【0031】
[付着強度の評価]
温度20℃、湿度60%の実験室で300×300×50mmの型枠の底板に鋼鉄製40×40mmアタッチメントを取り付け、練り上げた本発明のモルタルを、図1のように打設した。所定材齢まで温度20℃、湿度60%の実験室で養生し、材齢5時間、1日、7日で付着強度を測定した。付着強度は鋼板製アタッチメントを用い、建研式接着力試験機で測定した。
【0032】
[繰返し載荷試験]
本発明のモルタルの繰返し載荷に対する耐久性を評価するため、410×500×50mmの試験体を20℃、湿度60%RHの試験室で作製し、材齢7日で繰返し載荷試験を実施し、ひび割れ発生状況を確認した。
(1)試験体の作製
1)供試体の作成は、両面Rz80以上でショットブラストを施した500×500×12mm)鋼板に本発明のモルタルを500×400×45mm打設した。
2)ひずみゲージ・Π型変位計を本発明のモルタル上に設置した(図2)。
【0033】
各ひずみゲージから測定器へ接続後,鉄板面を荷重の載荷面とし試験を行った。試験は、本発明のモルタル練混ぜから7日後に実施した。負曲げ試験は、最大100kNの曲げ試験機を使用して行い、載荷は以下の手順で実施した。
【0034】
Step1
1.モルタルが降伏するまで2kNピッチで載荷した。
2.載荷荷重を保持したままひび割れ状況を目視にて観察した。
3.観察後、載荷荷重を0kNまで除荷した。
【0035】
Step2
4.再度2kNピッチにて50kNまで荷重を載荷した。
5.載荷荷重を保持したままひび割れ進展状況を目視にて観察した。
6.観察後、載荷荷重を0kNまで除去した。
【0036】
Step3
7.その後、繊維の状況、モルタルひずみ、鋼板ひずみの状況に応じ2kNピッチにて鋼板ゲージを確認しながら3回目の載荷を開始した。
8.載荷荷重を保持したままひび割れ進展状況を目視にて観察した。
9.観察後、載荷荷重を0kNまで除去し、終了した。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
【表3】

【0040】
【表4】

【0041】
【表5】

【0042】
【表6】

【0043】
【表7】

【0044】
【表8】

【0045】
【表9】

【0046】
表1〜表9に示すように、本発明モルタル組成物を用いれば曲げ強度に優れ、コンクリート及び金属に対する付着強度が優れ、7日齢の長さ変化が0.01%以下であり、コテ作業性とも優れる。また、繰り返し載荷に対する耐久性が極めて良好であることから、風力発電所のコンクリート部の補修に特に有用であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)11CaO・7Al23・CaX2(Xはハロゲン原子を示す)又はアーウィンを有効成分とする速硬性セメント組成物100質量部に対し、(B)真比重が2.0以上であって粒径600μm以上のものと600μm未満のものの比率が1:0.30〜1:0.60である細骨材 100〜400質量部、(C)ポリマー 固形分換算で10〜50質量部、(D)繊維 0.2〜1.5質量部、(E)遅延剤 0.1〜1.0質量部、及び(F)収縮低減剤 0.5〜1.5質量部を含有する補修用速硬性ポリマーセメントモルタル組成物。
【請求項2】
(A)11CaO・7Al23・CaX2(Xはハロゲン原子を示す)又はアーウィンを有効成分とする速硬性セメント組成物中に、ポルトランドセメントを20〜70質量%含有する請求項1記載の補修用速硬性ポリマーセメントモルタル組成物。
【請求項3】
繰り返し載荷を受けるコンクリート構造物の補修用である請求項1又は2記載の補修用速硬性ポリマーセメントモルタル組成物。
【請求項4】
風力発電所施設のコンクリート構造物の補修用である請求項1〜3のいずれか1項記載の速硬ポリマーセメントモルタル組成物。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項記載の補修用速硬ポリマーセメントモルタル組成物を練り混ぜ後、混練物を振動機を用いて振動させて補修部に充填することを特徴とする風力発電所のコンクリート構造部の補修施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−16681(P2011−16681A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161534(P2009−161534)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(501173461)太平洋マテリアル株式会社 (307)
【Fターム(参考)】