説明

補修積層塗膜及び補修積層塗膜の作製方法

【課題】ポリロタキサンを含有するような耐擦傷性を有する塗膜の塗膜欠陥に対し、補修跡が目立たない補修を実現し得る補修積層塗膜及びその作製方法を提供する。
【解決手段】下塗り塗膜層10と親油性ポリロタキサン等を含むPR含有上塗り塗膜層40を備え、このPR含有上塗り塗膜層に塗膜欠陥50を有する積層塗膜を補修して成る補修積層塗膜において、PR含有上塗り塗膜層40が、塗膜欠陥を研削して形成した研削部位52と、この研削部位に順次積層されたPR不含補修用塗膜層60及びPR含有補修用塗膜層70を備える。PR不含補修用塗膜層60が、親油性ポリロタキサン等を含有しないPR不含補修用上塗り塗料から形成された塗膜層であり、PR含有補修用塗膜層70が、親油性ポリロタキサン等を含有するPR含有補修用上塗り塗料から形成された塗膜層である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリロタキサンを含有する上塗り塗膜中に生じたブツなどの塗装欠陥を補修した補修塗膜及びその作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上塗り塗装された被塗装物の塗膜に、異物付着などに由来する突出部(通称「ブツ」)などの塗装欠陥が生じていれば、その部分に補修が施される。
上塗り塗装の補修方法には、塗装欠陥が生じている補修部位を研ぎ、上塗り塗装に用いた塗料と同一種の上塗り塗料を塗装して補修する方法がある。
【0003】
しかし、この方法では、上塗り塗料が補修部位周辺にも飛散することが多く、非補修部位には塗料ダストが付着することによる凸状部分が生成するため、被塗装物の外観が損なわれる。そこで、補修部位をペーパーで研ぎ、上塗り塗料を塗布した後、塗料ダストにぼかし液(上塗り材を含む上塗り塗料)をスプレー塗装し、最後に焼き付けを行い、コンパウンド含有ワックスで研磨後にワックスで仕上げることにより、補修部位の傷や塗料ダストが凸状に残るのを目立たなくし、外観が損なわれないようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開昭62−124460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ポリロタキサンを含むような耐擦傷性が良好な上塗り塗膜では、補修部位をコンパウンド含有ワックスで研削できないか又は研削して補修しても傷を目立たなくすることができないという問題がある。
また、補修に当たり耐擦傷性を付与することができないという問題もある。
【0005】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ポリロタキサンを含有するような耐擦傷性を有する塗膜の塗膜欠陥に対し、補修跡が目立たず、耐擦傷性との両立を実現し得る補修を実現し得る補修積層塗膜及びその作製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、所定のポリロタキサンを含有する塗料とこれを含有しない塗料を併用することにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明の塗膜積層塗膜は、下塗り塗膜層と親油性ポリロタキサン又は親水性ポリロタキサンを含むPR含有上塗り塗膜層を備え、このPR含有上塗り塗膜層に塗膜欠陥を有する積層塗膜を補修して成る補修積層塗膜である。
上記PR含有上塗り塗膜層が、上記塗膜欠陥を研削して形成した研削部位と、この研削部位に順次積層されたPR不含補修用塗膜層及びPR含有補修用塗膜層を備え、
上記PR不含補修用塗膜層が、親油性ポリロタキサン又は親水性ポリロタキサンを含有しないPR不含補修用上塗り塗料から形成された塗膜層であり、
上記PR含有補修用塗膜層が、親油性ポリロタキサン又は親水性ポリロタキサンを含有するPR含有補修用上塗り塗料から形成された塗膜層である、ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の補修積層塗膜の好適形態は、上記PR含有上塗り塗膜層に含まれる親油性ポリロタキサン又は親水性ポリロタキサンと、上記PR含有補修用塗膜層に含まれる親油性ポリロタキサン又は親水性ポリロタキサンとが同一種同士であることを特徴とする。
【0009】
更に、本発明の補修積層塗膜の他の好適形態は、上記下塗り塗膜層と上記PR含有上塗り塗膜層との間にベースコート塗膜層を付加して成り、上記研削部位がこのベースコート塗膜層に達しており、
この深い研削部位には、上記ベースコート塗膜層とほぼ同一成分の補修用ベースコート塗膜層、上記PR不含補修用塗膜層及び上記PR含有補修用塗膜層が順次積層されている、ことを特徴とする。
【0010】
一方、本発明の補修積層塗膜の作製方法は、上述の如き補修積層塗膜を作製する方法である。
上記塗膜欠陥を研削して研削部位を形成し、次いで、上記研削部位に、上記PR不含補修用上塗り塗料及び上記PR含有補修用上塗り塗料を順次塗装して成ることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の補修積層塗膜の他の作製方法は、上述の如き補修積層塗膜を作製する方法である。
上記塗膜欠陥を研削して上記深い研削部位を形成し、次いで、上記深い研削部位に、上記補修用ベースコート塗膜層を形成する補修用ベースコート塗料、上記PR不含補修用上塗り塗料及び上記PR含有補修用上塗り塗料を順次塗装して成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、所定のポリロタキサンを含有する塗料とこれを含有しない塗料を併用することとしたため、ポリロタキサンを含有するような耐擦傷性を有する塗膜の塗膜欠陥に対し、補修跡が目立たず、耐擦傷性との両立を実現し得る補修を実現し得る補修積層塗膜及びその作製方法を提供するすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の補修積層塗膜、及び補修積層塗膜の作製方法について詳細に説明する。なお、本明細書において、「%」は特記しない限り質量百分率を表すものとする。
上述の如く、本発明の補修積層塗膜は、下塗り塗膜層と親油性ポリロタキサン又は親水性ポリロタキサンを含むPR含有上塗り塗膜層とを備える積層塗膜を補修したものであるが、PR含有上塗り塗膜層に存在したブツなどの塗膜欠陥を補修して成る。
そして、PR含有上塗り塗膜層は、塗膜欠陥を研削して形成した研削部位と、この研削部位に順次積層されたPR不含補修用塗膜層及びPR含有補修用塗膜層を備える。
また、PR不含補修用塗膜層は、親油性ポリロタキサン又は親水性ポリロタキサンを含有しないPR不含補修用上塗り塗料から形成され、一方、PR含有補修用塗膜層は、親油性ポリロタキサン又は親水性ポリロタキサンを含有するPR含有補修用上塗り塗料から形成される。
【0014】
上述のように、本発明の補修積層塗膜は、少なくとも下塗り塗膜層とPR含有上塗り塗膜層を有するものであるが、これらの塗膜層以外にも、中塗り塗膜層やベースコート塗膜層を有していてもよい。
また、PR含有上塗り塗膜層としては、親油性又は親水性のポリロタキサンを含有している塗膜層であればよく、本発明においては、いわゆる上塗りクリヤー塗膜層以外にも、エナメル塗料から形成されるエナメル塗膜層も上塗り塗膜層と同等に取り扱うことができる。
【0015】
本発明の補修積層塗膜層において、ブツなどの塗膜欠陥をサンドペーパーなどで研削して形成される研削部位には、PR不含補修用塗膜層及びPR含有補修用塗膜層がこの順に積層される。
この場合、PR不含補修用塗膜層は、親油性又は親水性のポリロタキサンを含有しない上塗り塗料(PR不含補修用上塗り塗料)から形成されるが、この上塗り塗料としては、従来公知の上塗り塗料で差し支えない。
【0016】
具体的には、硬化型塗料として、メラミン硬化型アクリル塗料、メラミン硬化型ポリエステル塗料、2液型アクリルウレタン塗料及び2液型ポリエステルウレタン塗料、常乾型塗料として、アクリル系塗料、メラミン系塗料、ウレタン系塗料及びポリエステル系塗料などを挙げることができる。
【0017】
一方、PR含有補修用塗膜層は、親油性又は親水性のポリロタキサンを含有している上塗り塗料(PR含有補修用上塗り塗料)から形成されるものであることを要する。
これらの親油性又は親水性のポリロタキサンについては後述するが、親油性ポリロタキサンは有機系溶剤に可溶で、硬化型ないし常温乾燥型の溶剤系塗料用材料として機能するものであり、親水性ポリロタキサンは水系溶剤に可溶で、硬化型ないし常温乾燥型の水系塗料用材料として機能するものである。
【0018】
なお、PR含有補修用上塗り塗料としては、親油性又は親水性のポリロタキサンを含有する上塗り塗料であって、硬化型としては、メラミン硬化型アクリル塗料、メラミン硬化型ポリエステル塗料、2液型アクリルウレタン塗料及び2液型ポリエステルウレタン塗料、常乾型としては、アクリル系塗料、メラミン系塗料、ウレタン系塗料及びポリエステル系塗料などを挙げることができる。
【0019】
上述のように、本発明の補修積層塗膜においては、PR含有上塗り塗膜層とPR含有補修用上塗り塗膜層の双方に、親油性又は親水性のポリロタキサンが含まれていれば十分であり、PR含有上塗り塗膜層に含まれているポリロタキサンが親水性で、PR含有補修用塗膜層に含まれているポリロタキサンが親油性であってもよく、また、PR含有上塗り塗膜層に含まれているポリロタキサンが常乾型塗料用で、PR含有補修用塗膜層に含まれているポリロタキサンが硬化型塗料用であってもよい。
【0020】
但し、双方のポリロタキサンのなじみ性を考慮すれば、同一種同士、例えば、親油性に対しては親油性、親水性に対しては親水性、硬化型に対しては硬化型、常乾型に対しては常乾型となるように選定することが好ましく、更には、ポリロタキサン同士の化学構造が同一であるのがいっそう好ましく、PR含有上塗り塗料とPR含有補修用上塗り塗料の成分組成が全く同一であるのが最も好ましい。
なお、補修時間を短縮する観点からは、少なくともPR含有補修用塗料に含まれるポリロタキサンは、水系又は有機溶剤系の硬化型塗料用であることが望ましい。
【0021】
本発明の補修積層塗膜が中塗り塗膜層やベースコート塗膜層を有していてもよいことは上述の通りであるが、例えば、ベースコート塗膜層は下塗り塗膜層とPR含有上塗り塗膜層との間に付加される。
かかる積層塗膜において、塗膜欠陥がベースコート塗膜層に異物が付着したことに起因することがあり、この場合は、研削部位をこのベースコート塗膜層に到達させる必要がある。そして、本発明では、この深い研削部位に、ベースコート塗膜層とほぼ同一成分の補修用ベースコート塗膜層、PR不含補修用塗膜層及び上記PR含有補修用塗膜層を順次積層することにより、補修が行われる。
【0022】
かかるベースコート塗膜層を形成するのに用いられるベースコート塗料としては従来公知のものを挙げることができ、硬化型塗料として、メラミン硬化型アクリル塗料、メラミン硬化型ポリエステル塗料、2液型アクリルウレタン塗料及び2液型ポリエステルウレタン塗料、常乾型塗料として、アクリル系塗料、メラミン系塗料、ウレタン系塗料及びポリエステル系塗料などを挙げることができる。
また、ベースコート塗膜層が、着色顔料又は光輝材を含んでいてもよく、更には上記エナメル塗料や上塗り塗料が着色顔料や光輝材を含んでいてもよい。
なお、上記補修用ベースコート塗膜層を形成するのに用いられる補修用ベースコート塗料も従来公知のベースコート塗料でよいが、上記ベースコート塗膜層形成用のベースコート塗料と成分組成ないし形式が一致するものを用いることが好ましい。
【0023】
次に、本発明の補修積層塗膜の作製方法について、図面を参照して具体的に説明する。
図1は、本発明の補修積層塗膜の作製方法における各工程を段階的に示す断面説明図である。図1(A)において、補修対象である積層塗膜100は、下塗り塗膜層10、中塗り塗膜層20、ベースコート塗膜層30及びPR含有上塗り塗膜層40をこの順で積層して構成されており、親油性又は親水性のポリロタキサンを含有し耐擦傷性が良好なPR含有上塗り塗膜層40には、塗膜欠陥50が存在する。
【0024】
本発明においては、まず、塗膜欠陥50をサンドペーパーなどで研削して研削部位52を形成する。この研削については、コンパンウンドを含むワックスで磨きをかけることによって行うこともできる。
【0025】
次いで、この研削部位52に、上記ポリロタキサンを含有しない補修用塗料であるPR不含補修用上塗り塗料を塗布して、PR不含補修用塗膜層60を形成する(図1(B)参照。)。
なお、このPR不含補修用上塗り塗料の塗布を複数回に分けて行うことが可能であり、この場合、周辺の未補修部位とのなじみ(外観の一致)の観点から塗料の希釈率を徐々に高くすることが好ましい。
【0026】
次に、PR不含補修用塗膜層60とPR含有上塗り塗膜層40との境界部近傍に、図示しないシンナーを塗布する(図1(C)参照。)
このシンナーとしては、例えばPR含有上塗り塗料用溶剤などを用いることができ、このシンナー塗布により、周辺の未補修部位とのなじみ性を向上させることができるという効果が得られる。
【0027】
次に、PR不含補修用塗膜層60上に、上記ポリロタキサンを含有するPR含有補修用塗料を塗布してPR含有補修用塗膜層70を形成するが、この塗布の際、PR含有補修用塗料がPR不含補修用塗膜層60からはみ出さないように小面積で塗布することが好ましい。
かかる補修用塗料を塗布した後、この補修用塗料の型式、即ち硬化型又は常乾型に応じて加熱(例えば、80℃で30分間)又は常温で放置し、PR含有補修用塗膜層70を形成する(図1(D)参照。)
【0028】
その後、PR含有上塗り塗膜層40を研磨して、PR含有補修用塗膜層70の余剰分を除去し、積層塗膜100の塗膜欠陥50を補修した補修積層塗膜100Rの作製を完了する(図1(E)参照。)。
【0029】
図2は、本発明の補修積層塗膜の作製方法の他の例における各工程を段階的に示す断面説明図である。なお、以上に説明した部材・要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
図2(A)において、補修対象である積層塗膜110は、PR含有上塗り塗膜層40に塗膜欠陥50を有するが、本例において、この塗膜欠陥50はベースコート塗膜層30上に付着した異物50’に起因している。
【0030】
上記同様に、まず塗膜欠陥50をサンドペーパーなどで研削するが、本例においては、ベースコート塗膜層30上に存在する異物50’を除去すべく、研削をベースコート塗膜層30に達するまで行って、深い研削部位54を形成する。
次いで、この深い研削部位54に、ベースコート塗膜層30の形成に用いたベースコート塗料と同一種類の補修用ベースコート塗料を塗装して補修用ベースコート塗膜層80を形成し、更にこの上に、上記同様の処理を行ってPR不含補修用塗膜層60を形成する(図2(B)参照。)。
【0031】
その後、上記同様にシンナー塗布を行い(図2(C)参照。)、更にPR含有補修用塗膜層70を積層塗装し(図2(D)参照。)、しかる後、PR含有上塗り塗膜層40を研磨して、PR含有補修用塗膜層70の余剰分を除去し、積層塗膜110の塗膜欠陥50を補修した補修積層塗膜110Rの作製を完了する(図2(E)参照。)。
【0032】
本発明の補修積層塗膜の作製方法では、図1及び図2を用いて説明したように、最表層に位置するPR含有上塗り塗膜層40において、補修部位52又は54の境界部近傍にPR不含補修用塗膜層70が存在するので、この境界近傍を研磨することができ、従って、良好な外観をもって補修を行うことができる。
【0033】
以下、本発明の補修積層塗膜及び補修積層塗膜の作製方法で用いる親油性ポリロタキサン又は親水性ポリロタキサンについて詳細に説明する。
まず、ポリロタキサンは、環状分子と、この環状分子を串刺し状に包接する直鎖状分子と、この直鎖状分子の両末端に配置され上記環状分子の脱離を防止する封鎖基とを有する化合物である。
本発明の補修積層塗膜は、上述のポリロタキサンのうち、塗料用材料として機能する親油性のポリロタキサン又は親水性のポリロタキサンを配合したものである。
【0034】
まず、親油性ポリロタキサンについて説明する。
この親油性ポリロタキサンは、上記ポリロタキサンにおいて、直鎖状分子及び環状分子の少なくとも一方が疎水性を有するものであり、硬化型ないし常温乾燥型の溶剤系塗料用材料として機能するものである。
【0035】
具体的には、かかる親油性ポリロタキサンは、ポリロタキサンのうちでも、原則として、(イ)疎水性の直鎖状分子と親水性の環状分子若しくは疎水性の環状分子との組合せ、又は(ロ)親水性の直鎖状分子と疎水性の環状分子の組合せに係るものであるが、当該ポリロタキサン全体として親油性を呈すれば十分である。
なお、環状分子に疎水性を付与するには、(1)水酸基を有する環状分子の当該水酸基の全部又は一部を疎水性の修飾基で修飾すればよく、(2)直鎖状分子に疎水性を付与するには、特定の直鎖状分子を選定すればよい。また、(3)直鎖状分子が環状分子を包接する量を制御することによっても、当該ポリロタキサン全体を疎水化することができる。
【0036】
なお、本発明においては、有機系溶剤に可溶である限りにおいて親油性ポリロタキサンが架橋しているものであってもよく、かかる親油性架橋ポリロタキサンを、非架橋の親油性ポリロタキサンの代わりに又はこれに混合して用いることができる。
このような親油性架橋ポリロタキサンとしては、比較的低分子量のポリマー、代表的には分子量が数千程度のポリマーと架橋した親油性ポリロタキサンを挙げることができる。
【0037】
一方、親水性ポリロタキサンは、上記ポリロタキサンにおいて、直鎖状分子及び環状分子の少なくとも一方が親水性を有するものであり、硬化型ないし常温乾燥型の水系塗料用材料として機能するものである。
【0038】
具体的には、かかる親水性ポリロタキサンは、ポリロタキサンのうちでも、原則として、(ハ)親水性の直鎖状分子と親水性の環状分子若しくは疎水性の環状分子との組合せ、又は(ニ)疎水性の直鎖状分子と親水性の環状分子の組合せに係るものであるが、当該ポリロタキサン全体として親水性を呈すれば十分である。
なお、環状分子に親水性を付与するには、(4)水酸基を有する環状分子の当該水酸基の全部又は一部を疎水性の修飾基で修飾すればよい。
【0039】
なお、本発明においては、水系系溶剤に可溶である限りにおいて親水性ポリロタキサンが架橋しているものであってもよく、かかる親水性架橋ポリロタキサンを、非架橋の親油性ポリロタキサンの代わりに又はこれに混合して用いることができる。
このような親水性架橋ポリロタキサンとしては、比較的低分子量のポリマー、代表的には分子量が数千程度のポリマーと架橋した親水性ポリロタキサンを挙げることができる。
【0040】
上述の親油性ポリロタキサンは有機系溶剤に、親水性ポリロタキサンは水系溶剤にぞれぞれ可溶である。よって、上述の親油性の付与及び親水性の付与は、従来は有機系溶剤や水系溶剤に難溶性ないしは不溶性であったポリロタキサンに対し、有機系溶剤又は水系溶剤という反応場、典型的には架橋場を提供するものである。
即ち、上述の親油性ポリロタキサン及び親水性ポリロタキサンは、有機系溶剤や水系溶剤の存在下で、他のポリマーとの架橋や修飾基による修飾が容易に行える反応性の向上したものと言い得る。
【0041】
図3は、ポリロタキサンの基本構造を概念的に示す模式図である。
同図において、このポリロタキサン5は、直鎖状分子6と、複数個の環状分子7と、直鎖状分子6の両末端に配置された封鎖基8を有し、直鎖状分子6が環状分子7の開口部を貫通して環状分子7を包接している。
このような構造を有するポリロタキサンは、外力が加わった場合に、環状分子7が直鎖状分子6に沿って自由に移動する(滑車効果)ことから、伸縮性や粘弾性に優れ、クラックや傷が生じ難いという優れた特性を有している。
【0042】
本発明においては、(A)環状分子7及び直鎖状分子6の一方又は双方が疎水性を有し、全体として親油性を示す親油性ポリロタキサン、代表的には、環状分子7が水酸基を有し、これら環状分子の水酸基の全部又は一部が疎水性の修飾基で修飾されたポリロタキサンや、疎水性の直鎖状分子を有するポリロタキサン、
又は(B)環状分子7及び直鎖状分子6の一方又は双方が親水性を有し、全体として親水性を示す親水性ポリロタキサン、代表的には、環状分子7が水酸基を有し、これら環状分子の水酸基の全部又は一部が親水性の修飾基で修飾されたポリロタキサン、を配合するようにしている。
【0043】
なお、塗膜補修に際し、親油性ポリロタキサン(又は親水性ポリロタキサン)を含有するPR含有補修用上塗り塗料を補修部位に塗布すると、補修部位を有する塗膜の塗膜形成成分である塗料樹脂などと親油性ポリロタキサン(又は親水性ポリロタキサン)とが混在し、両者が架橋ないしは擬似架橋するものと推察され、補修部位に両者の架橋物や擬似架橋物が形成され、耐擦傷性を低減することなく補修が行われるものと思われる。
【0044】
図4は、親油性ポリロタキサン(又は親水性ポリロタキサン)と塗料樹脂との架橋構造を概念的に示す部分概念図である。
同図において、両者の架橋により生成する架橋ポリロタキサン1は、塗料樹脂3、3’と上記親油性ポリロタキサン(又は親水性ポリロタキサン)5を有する。そして、この架橋ポリロタキサン1は、環状分子7を介して架橋点9によって塗料樹脂3及び塗料樹脂3’と結合している。
【0045】
このような構造を有する架橋ポリロタキサン1に対し、図4(A)の矢印X−X’方向の変形応力が負荷されると、架橋ポリロタキサン1は、図4(B)に示すように変形して当該応力を吸収することができる。
即ち、図4(B)に示すように、環状分子7は滑車効果によって直鎖状分子6に沿って移動可能であるため、架橋ポリロタキサン1は上記応力をその内部で吸収可能である。
従って、かかる架橋ポリロタキサンが形成されている補修済み部位は、伸縮性や粘弾性に優れ、クラックや傷が生じ難いという性質を有する。
【0046】
一方、上記親油性ポリロタキサン(又は親水性ポリロタキサン)と塗料樹脂とが架橋しない場合であっても、両者は相互に接近して、ファンデルワールス力などによる擬似架橋を生じ、一体として組成物ないしは化合物として挙動するものと考えられる。
このような場合でも、少なくとも親油性ポリロタキサン(又は親水性ポリロタキサン)が上述の滑車効果を発揮するので、上記PR含有補修用上塗り塗料で補修した補修済み部位は、上記同様に伸縮性や粘弾性に優れ、クラックや傷が生じ難いという性質を有するものである。
【0047】
以下、親油性ポリロタキサンについて具体的に説明する。
この親油性ポリロタキサンにおいて、疎水性を示す修飾基は、疎水基又は疎水基と親水基を有し、全体として疎水性であればよい。
かかる疎水基としては、例えば、アルキル基、ベンジル基(ベンゼン環)及びベンゼン誘導体含有基、アシル基、シリル基、トリチル基、硝酸エステル基、トシル基などがある。
かかる親水基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基、アミノ基(第一級〜第三級)、第四級アンモニウム塩基、ヒドロキシアルキル基などがある。
【0048】
上記親油性ポリロタキサンにおける環状分子としては、直鎖状分子に包接されて滑車効果を奏するものである限り、特に限定されるものではなく、種々の環状物質を挙げることができる。なお、環状分子は水酸基を有するものが多い。
また、環状分子は実質的に環状であれば十分であって、「C」字状のように、必ずしも完全な閉環である必要はない。
【0049】
更に、環状分子としては、反応基を有するものが好ましく、これによって上述した疎水性修飾基などとの結合が行い易くなる。
このような反応基としては、環状分子の水酸基と結合した化合物由来の残基であって、例えば水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、チオール基、アルデヒド基などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。なお、反応基としては、後述する封鎖基を形成する(ブロック化反応)際に、この封鎖基と反応しない基が好ましい。
【0050】
また、本発明に用いる上記疎水性ポリロタキサンにおける上記環状分子の疎水性修飾基による修飾度については、環状分子の有する水酸基が修飾され得る最大数を1とするとき、0.02以上であることが好ましく、0.04以上であることがより好ましく、0.06以上であることが更に好ましい。
上記修飾度が0.02未満では、有機溶剤への溶解性が十分でなくなることがあり、不溶性ブツが生成することがある。
【0051】
なお、環状分子の水酸基が修飾され得る最大数とは、修飾する前に環状分子が有していた全水酸基数を意味する。また、修飾度とは、換言すれば、修飾された水酸基数の全水酸基数に対する比のことである。
【0052】
更に、上記ポリロタキサンが複数個の環状分子を有する場合、これら環状分子それぞれの水酸基の全部又は一部が疎水性修飾基によって修飾されている必要はない。換言すると、ポリロタキサン全体として疎水性を示す限り、疎水性修飾基によって修飾されていない水酸基を有する環状分子が部分的に存在したとしても何ら差し支えない。
【0053】
上記疎水性修飾基の導入方法としては、以下の方法を採用できる。
一例としては、ポリロタキサンの環状分子としてシクロデキストリンを用い、当該シクロデキストリンの水酸基をプロピレンオキシドを用いてヒドロキシプロピル化し、その後、ε‐カプロラクトンを添加し、2‐エチルへキサン酸スズを添加する。このときのε‐カプロラクトンの添加量を変更することで修飾率を任意に制御できる。
【0054】
上記親油性ポリロタキサンにおいて、直鎖状分子に包接される環状分子の個数(包接量)については、直鎖状分子が環状分子を包接し得る最大包接量を1とするとき、0.06〜0.61が好ましく、0.11〜0.22が更に好ましい。なお、この包接量を0.06〜0.17とすれば、上記環状分子の修飾や後述する直鎖状分子の選定とは別個に、対象とするポリロタキサンに親油性を付与できる。
この比が0.06未満では滑車効果が不十分となって補修済み部位の伸び率が低下することがある。0.61を超えると、環状分子が密に配置され過ぎて環状分子の可動性が低下し、補修部位に形成される塗膜の伸び率が不十分となって耐擦傷性が劣化する傾向がある。
【0055】
また、環状分子の包接量は、以下のようにして制御することができる。
一例としては、DMF(ジメチルホルムアミド)に、BOP試薬(ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム・ヘキサフルオロフォスフェート)、HOBt、アダマンタンアミン、ジイソプロピルエチルアミンを、この順番で添加し溶液とする。一方、DMF/DMSO(ジメチルスルホキシド)混合溶媒に、直鎖状分子に環状分子が串刺された包接錯体を分散させた溶液を得る。これら両者を混合し、このときのDMF/DMSOの混合比率を変更することで、環状分子の包接量を任意に制御できる。なお、DMF/DMSO比が高いほど環状分子の包接量は大きくなる。
【0056】
上記環状分子の具体例としては、種々のシクロデキストリン類、例えばα−シクロデキストリン(グルコース数:6個)、β−シクロデキストリン(グルコース数:7個)、γ−シクロデキストリン(グルコース数:8個)、ジメチルシクロデキストリン、グルコシルシクロデキストリン及びこれらの誘導体又は変性体、並びにクラウンエーテル類、ベンゾクラウン類、ジベンゾクラウン類、ジシクロヘキサノクラウン類及びこれらの誘導体又は変性体を挙げることができる。
【0057】
上述のシクロデキストリン等の環状分子は、その1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
なお、上記した種々の環状分子の中では、特にα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンが良好であり、とりわけ、被包接性の観点からはα−シクロデキストリンを使用することが好ましい。
【0058】
一方、直鎖状分子は、実質的に直鎖であればよく、回転子である環状分子が回動可能で滑車効果を発揮できるように包接できる限り、分岐鎖を有していてもよい。
また、環状分子の大きさにも影響を受けるが、その長さについても、環状分子が滑車効果を発揮できる限り特に限定されない。
【0059】
なお、直鎖状分子としては、その両末端に反応基を有するものが好ましく、これにより、上記封鎖基と容易に反応させることができるようになる。
かかる反応基としては、採用する封鎖基の種類などに応じて適宜変更することができるが、水酸基、アミノ基、カルボキシル基及びチオール基などを例示することができる。
【0060】
このような直鎖状分子としては、特に限定されるものではなく、ポリアルキレン類、ポリカプロラクトンなどのポリエステル類、ポリプロピレングリコールやポリエチレングリコールなどのポリエーテル類、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド類、ポリアクリル類及びベンゼン環を有する直鎖状分子を挙げることができる。
これら直鎖状分子のうち、特にポリエチレングリコール、ポリカプロラクトンが良好であり、水や溶剤系溶剤への溶解性の観点からはポリエチレングリコールを用いることが好ましい。
なお、直鎖状分子としてポリカプロラクトンを選択すれば、上記環状分子の修飾や最大包接量の制御とは別個に、ポリロタキサンに親油性を付与できる。
【0061】
また、上記直鎖状分子の分子量としては、1,000〜100,000とすることが望ましく、10,000〜50,000が更に好ましい。
直鎖状分子の分子量が1,000未満では、環状分子による滑車効果が十分に得られなくなって耐擦傷性が劣化するがある。分子量が100,000を超えると、透明樹脂との相溶性が低下し、透明性が低下することがある。
なお、直鎖状分子としてポリカプロラクトンを選択した場合、その分子量を5,000〜100,000とすれば、ポリロタキサンへの親油性の付与が良好に行える。
【0062】
他方、上記封鎖基は、上記のような直鎖状分子の両末端に配置されて、環状分子が直鎖状分子によって串刺し状に貫通された状態を保持できる基でさえあれば、どのような基であっても差し支えない。
このような基としては、「嵩高さ」を有する基又は「イオン性」を有する基などを挙げることができる。なお、ここで「基」とは、分子基及び高分子基を含む種々の基を意味する。
【0063】
「嵩高さ」を有する基としては、球形をなすものや、側壁状の基を例示することができる。
また、「イオン性」を有する基のイオン性と、環状分子の有するイオン性とが相互に影響を及ぼし合い、例えば反発し合うことにより、環状分子が直鎖状分子に串刺しにされた状態を保持することができる。
【0064】
このような封鎖基の具体例としては、2,4−ジニトロフェニル基、3,5−ジニトロフェニル基などのジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類及びピレン類、並びにこれらの誘導体又は変性体を挙げることができる。
【0065】
ここで、本発明に用いる親油性ポリロタキサンの製造方法の一例について説明する。
上述の如き、親油性ポリロタキサンは、
(1)環状分子と直鎖状分子とを混合し、環状分子の開口部を直鎖状分子で串刺し状に貫通して直鎖状分子に環状分子を包接させる工程と、
(2)得られた擬ポリロタキサンの両末端(直鎖状分子の両末端)を封鎖基で封鎖して、環状分子が串刺し状態から脱離しないように調製する工程と、
(3)得られたポリロタキサンの環状分子の水酸基を疎水性修飾基で修飾する工程、
によって処理することにより得られる。
【0066】
なお、上記(1)工程において、環状分子が有する水酸基を予め疎水性修飾基で修飾したものを用いることによっても、親油性ポリロタキサンを得ることができ、その場合には、上記(3)工程を省略することができる。
【0067】
かかる製造方法によって、上述の如く有機系溶剤に対する溶解性に優れた親油性ポリロタキサンが得られる。
かかる有機系溶剤としては、特に限定されるものではないが、イソプロピルアルコールやブチルアルコールなどのアルコール類、酢酸エチルや酢酸ブチルなどのエステル類、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテルやジオキサンなどのエーテル類、トルエンやキシレンなどの炭化水素溶剤などを挙げることができ、該親油性ポリロタキサンは、これらの2種以上を混合した溶媒についても良好な溶解性を示す。
【0068】
なお、PR含有補修用上塗り塗料に配合された親油性ポリロタキサンは、上述の如く、補修対象とする塗膜の塗膜形成成分、特に塗料樹脂と架橋ないしは擬似架橋するが、この場合、生成する架橋ないしは擬似架橋ポリロタキサンは、親油性ポリロタキサン及び架橋対象である塗料樹脂の物性を損なうことなく、当該塗料樹脂と当該ポリロタキサンとを複合体化したものとなる。
【0069】
通常、架橋ポリロタキサンは、(a)親油性ポリロタキサンを他の塗膜形成成分と混合し、(b)当該塗膜形成成分の少なくとも一部を物理的及び/又は化学的に架橋させ、(c)当該塗膜形成成分の少なくとも一部と親油性ポリロタキサンとを環状分子を介して結合させる(硬化反応)、ことにより形成される。
また、これらの工程は硬化剤を用いることでより円滑に行うことができる。
【0070】
(b)、(c)工程においては、化学架橋させることが好ましく、例えば、上述の如き親油性ポリロタキサンの環状分子が有する水酸基と、塗膜形成成分の一例であるメラミン樹脂とが、ウレタン結合を繰返し形成することによって、架橋ポリロタキサンが得られる。
(a)工程の混合工程は、用いる塗膜形成成分に依存するが、溶媒無しで又は溶媒中で行うことができる。また、溶媒は塗膜形成時に加熱処理などで除去できる。
【0071】
なお、本発明においては、上記PR含有補修用上塗り塗料を補修部位に塗布し、必要に応じて加熱することにより、補修対象である塗膜の塗膜形成成分と親油性ポリロタキサンとの架橋ないしは擬似架橋ポリロタキサンを生成させることができる。
この際、硬化剤を用いてもよく、硬化剤はPR含有補修用上塗り塗料に予め配合しておいてもよいが、塗布の際に混合して使用するような、いわゆる2液型にしておく方が取り扱いに便利である。
【0072】
上記硬化剤の具体例としては、メラミン樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、塩化シアヌル、トリメソイルクロリド、テレフタロイルクロリド、エピクロロヒドリン、ジブロモベンゼン、グルタールアルデヒド、フェニレンジイソシアネート、ジイソシアン酸トリレイン、ジビニルスルホン、1,1’−カルボニルジイミダゾール又はアルコキシシラン類を挙げることができ、本発明では、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、上記硬化剤は、分子量が2000未満、好ましくは1000未満、更に好ましくは600未満、いっそう好ましくは400未満のものを用いることができる。
【0073】
次に、親水性ポリロタキサンについて具体的に説明する。なお、記載していない事項については、基本的に上述の親油性ポリロタキサンの場合と同じである。
この親水性ポリロタキサンにおいて、上記修飾基は、親水基又は親水基と疎水基を有し、全体として親水性であればよい。かかる親水基及び疎水基は上述の通りである。
【0074】
また、環状分子についても上述の通りであり、更に、環状分子としては、反応基を有するものが好ましく、これによって、親水性修飾基などとの結合が行い易くなる。
このような反応基としては、例えば水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、チオール基、アルデヒド基などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。なお、反応基としては、後述する封鎖基を形成する(ブロック化反応)際に、この封鎖基と反応しない基が好ましい。
【0075】
また、親水性ポリロタキサンにおける上記環状分子の親水性修飾基による修飾度については、環状分子の有する水酸基が修飾され得る最大数を1とするとき、0.1以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましく、0.5以上であることがさらに好ましい。
上記修飾度が0.1未満であると、水や水系溶剤への溶解性が十分でなくなることがあり、不溶性ブツが生成することがある。
【0076】
更に、上記ポリロタキサンが多数の環状分子を有する場合、これら環状分子それぞれの水酸基の全部又は一部が親水基によって修飾されている必要はない。換言すると、ポリロタキサン全体として親水性を示す限り、親水基によって修飾されていない水酸基を有する環状分子が部分的に存在したとしても何ら差し支えない。
【0077】
ここで、親水基は少なくとも1つでよいが、環状分子、例えばシクロデキストリン環1つに対して1つの親水基を有するのが望ましい。
また、官能基を有している親水基を導入することにより、他のポリマーとの反応性を向上させることが可能になる。
【0078】
なお、ポリロタキサンの環状分子への親水性修飾基の導入方法としては、例えば、上記環状分子としてシクロデキストリンを用いた場合には、該シクロデキストリンの水酸基をプロピレンオキシドを用いてヒドロキシプロピル化することが例示でき、このとき、プロピレンオキシドの添加量を変更することによって、上記ヒドロキシアルキル基による修飾度を制御することができる。
【0079】
上記親水性ポリロタキサンにおいて、直鎖状分子に包接される環状分子の個数(包接量)については、直鎖状分子が環状分子を包接し得る最大包接量を1とするとき、0.06〜0.61が好ましく、0.11〜0.48がさらに好ましく、0.24〜0.41がいっそう好ましい。
包接量が0.06未満では滑車効果が不十分となって補修部位を形成する塗膜の伸び率が低下することがあり、0.61を超えると、環状分子が密に配置され過ぎて環状分子の可動性が低下し、同様に塗膜の伸び率が不十分となって耐擦傷性が劣化する傾向があることによる。
【0080】
このような直鎖状分子としては、特に限定されるものではないが、水や水系溶剤への溶解性の観点からはポリエチレングリコールを用いることが好ましい。
【0081】
また、上記直鎖状分子の分子量としては、1,000〜40,000とすることが望ましく、10,000〜40,000が好ましく、さらには20,000〜35,000の範囲であることが好ましい。
直鎖状分子の分子量が1,000未満では、環状分子による滑車効果が十分に得られなくなって補修部位を形成する塗膜の伸び率が低下し、耐擦傷性が劣化する一方、分子量が40,000を超えると、塗料への溶解性が低下し、また、表面の膜形成によってクリヤー塗膜としての平滑性などの外観が劣化する傾向があることによる。
【0082】
次に、上記親水性ポリロタキサンの製造方法の一例について説明する。
上述の如き、親水性ポリロタキサンは、
(1)環状分子と直鎖状分子とを混合し、環状分子の開口部を直鎖状分子で串刺し状に貫通して直鎖状分子に環状分子を包接させる工程と、
(2)得られた擬ポリロタキサンの両末端(直鎖状分子の両末端)を封鎖基で封鎖して、環状分子が串刺し状態から脱離しないように調整する工程と、
(3)得られたポリロタキサンの環状分子が有する水酸基を親水性修飾基で修飾する工程、
によって処理することにより得られる。
【0083】
なお、上記(1)工程において、環状分子が有する水酸基を予め親水性修飾基で修飾したものを用いることによっても、親水性ポリロタキサンを得ることができ、その場合には、上記(3)工程を省略することができる。
【0084】
本発明において、水系溶剤とは、水との間で相互作用し合い、水との親和力が強い性質をもつ溶剤のことを意味し、具体的には、例えば、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコールなどのようなアルコール類、セロソルブアセテート、ブチルセロソロブアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのようなエーテルエステル類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのようなグリコールエーテル類などを挙げることができ、本発明に用いる親水性ポリロタキサンは、これらの2種以上を混合した溶剤についても良好な溶解性を示す。
これらのうち、より好適なものとしてアルコール類、更に好適なものとしてグリコールエーテル類を挙げることができる。なお、トルエンのような有機溶剤が若干含まれていても、全体として水との親和力が強い性質を有すれば、水系溶剤としてよい。
【0085】
なお、PR含有補修用上塗り塗料に配合された親水性ポリロタキサンは、上記親油性ポリロタキサンと同様に、補修対象とする塗膜の塗膜形成成分、特に塗料樹脂と架橋ないしは擬似架橋するが、この場合、親水性ポリロタキサンが有する親水性の修飾基や他の官能基が塗膜形成成分と反応し、耐擦傷性や耐チッピング性に優れた塗膜を形成する。また、クラックなども発生し難く、耐候性、耐汚染性や密着性等にも優れたものとなる。
【0086】
また、上記親油性ポリロタキサンの場合と同様に、親水性ポリロタキサンによる架橋ないしは擬似架橋ポリロタキサンは、親水性ポリロタキサンの架橋対象である塗膜形成成分の物性を損なうことなく、当該塗膜形成成分と当該ポリロタキサンとを複合体化したものと言うことができる。従って、以下に説明するように、補修塗膜中に架橋ポリロタキサンを形成させることによって、上記塗膜形成成分の物性と親水性ポリロタキサン自体の物性を兼ね備えた塗膜が得られ、ポリマー種などを選択することにより、所望の機械的強度などを有する補修塗膜とすることができる。
【0087】
ここで、上記親水性ポリロタキサンの架橋について説明する。
この架橋ポリロタキサンは、通常、
(a)親水性ポリロタキサンを他の塗膜形成成分と混合し、
(b)当該塗膜形成成分の少なくとも一部を物理的及び/又は化学的に架橋させ、
(c)当該塗膜形成成分の少なくとも一部と親水性ポリロタキサンとを環状分子を介して結合させる(硬化反応)ことにより形成できる。
【0088】
なお、親水性ポリロタキサンは、水や水系溶剤に可溶であるため、(a)〜(c)工程を水、水系溶剤、及びこれらの混合溶媒中で円滑に行うことができる。また、これらの工程は硬化剤を用いることでより円滑に行うことができる。
【0089】
(b)、(c)工程においては、化学架橋することが好ましく、例えば、これは上述の如き親水性ポリロタキサンの環状分子が有する水酸基と、塗料形成成分の一例であるメラミン樹脂とが、ウレタン結合を繰返し形成することによって、架橋ポリロタキサンが得られる。また、(b)工程と(c)工程はほぼ同時に実施してもよい。
【0090】
(a)工程の混合工程は、用いる塗膜形成成分に依存するが、水や水系溶剤などの溶媒中で、又はこれら溶媒なしで行なうことができる。また、溶媒は塗膜形成時に加熱処理などで除去できる。
【0091】
なお、PR含有補修用上塗り塗料の補修部位への塗布により親水性ポリロタキサンの架橋ないしは擬似架橋を行うことができることや、加熱や硬化剤の使用・選定については、上記親油性ポリロタキサンの場合と同様である。
【0092】
本発明の補修対象となる塗膜は、特に限定されるものではないが、以上に説明した親油性ポリロタキサン又は親水性ポリロタキサンと架橋ないしは擬似架橋し得るような樹脂成分(塗料樹脂)を含む塗膜が好ましく、本発明は自動車塗装塗膜の補修に特に好適である。
【0093】
かかる樹脂成分としては、特に限定されるものではないが、主鎖又は側鎖に水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、ビニル基、チオール基又は光架橋基、及びこれらの任意の組合せに係る基を有するものが好ましい。
なお、光架橋基としては、ケイ皮酸、クマリン、カルコン、アントラセン、スチリルピリジン、スチリルピリジニウム塩及びスチリルキノリン塩などを例示できる。
【0094】
また、これら樹脂成分の2種以上が混合使用されている塗膜であってもよいが、この場合、少なくとも1種の樹脂成分が環状分子を介してポリロタキサンと結合していること望ましい。
更に、かかる樹脂成分は、ホモポリマーでもコポリマーでもよい。コポリマーの場合、2種以上のモノマーから構成されるものでもよく、ブロックコポリマー、交互コポリマー、ランダムコポリマー又はグラフトコポリマーのいずれであってもよい。
【0095】
具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミン、ポリエチレンイミン、カゼイン、ゼラチン、澱粉及びこれらの共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン及び他のオレフィン系単量体との共重合樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレンやアクリロニトリル−スチレン共重合樹脂などのポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートや(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−メチルアクリレート共重合体などのアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂及びこれらの誘導体又は変性体、ポリイソブチレン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアニリン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ナイロン(登録商標)などのポリアミド類、ポリイミド類、ポリイソプレン、ポリブタジエンなどのポリジエン類、ポリジメチルシロキサンなどのポリシロキサン類、ポリスルホン類、ポリイミン類、ポリ無水酢酸類、ポリ尿素類、ポリスルフィド類、ポリフォスファゼン類、ポリケトン類、ポリフェニレン類、ポリハロオレフィン類、及びこれらの誘導体を挙げることができる。
誘導体としては、上述した水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、ビニル基、チオール基又は光架橋基及びこれらの組合せに係る基を有するものが好ましい。
【実施例】
【0096】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0097】
(実施例1)
[親油性ポリロタキサンの調製]
水酸基をヒドロキシプロピル基で修飾したヒドロキシプロピル化ポリロタキサン500mgに、モレキュラーシーブで乾燥させたε−カプロラクトン10mLを加え、室温で30分撹拌して浸透させた。その後、2−エチルヘキサン酸スズ0.2mLを加え、100℃で1〜8時間反応させた。
反応終了後、試料を50mLのトルエンに溶解させ、撹拌した450mLのヘキサン中に滴下して析出させ回収した。
【0098】
[積層塗膜鋼板の作製]
リン酸亜鉛処理した厚み0.8mm、70mm×150mmのダル鋼板に、カチオン電着塗料(商品名「パワートップU600M」、日本ペイント社製カチオン型電着塗料)を、乾燥膜厚が20μmとなるように電着塗装した後、160℃で30分間焼き付けた。その後、日本油脂社製のグレーの中塗り(商品名:ハイエピコNo.560)を30μm塗装し、140℃で30分間焼き付けた。
次に、第1層(ベースコート塗膜層)及び第2層(上記の親油性ポリロタキサンを含有する耐傷付き性が良好なクリヤー塗膜層)を塗装して積層塗膜を形成した。
【0099】
この際、第1層は乾燥膜厚が10μmとなるようにスプレー塗装し、第2層は乾燥膜厚が30μmとなるようにスプレー塗装した。その後、140℃で30分間焼き付けた。
なお、第1層の塗料及び第2層の塗料(親油性ポリロタキサン以外の成分)としては、以下のものを用いた。
・第1層用塗料
溶剤型黒色塗料…日本油脂(株)製のメラミン硬化型アクリル塗料「ベルコートNo.6010」
・第2層目用塗料
上述の如く得られたポリロタキサンをトルエンで30%になるように溶解した。次いで、日本油脂株式会社製のベルコートNo.6200GN1 アクリル・メラミン硬化型クリア塗料に、溶解したポリロタキサンを撹拌しながら添加し、得られた溶剤型クリヤー塗料を第2層目用塗料とした。
【0100】
[塗膜欠陥の形成]
上記第2層塗装時に、第2層表面に粒径500μmの異物を付着させたまま塗装を行い、図1に示すような塗膜欠陥を有する積層塗膜鋼板を作製した。
【0101】
[補修処理]
図1に示すように、上記の塗膜欠陥をサンドペーパーで研削して研削部位を形成した。
次いで、この研削部位に、ポリロタキサンを含有しない従来の補修用塗料「ベルコートNo.6200 GN1」を塗布して、PR不含補修用塗膜層を形成した。次に、PR不含補修用塗膜層と第2層との境界部近傍にシンナーを塗布した。
【0102】
更に、PR不含補修用塗膜層に、上記第2層塗料を塗布してPR含有補修用塗膜層を形成した。この塗布の際、第2層塗料がPR不含補修用塗膜層はみ出さないように塗布した。
次いで、140℃で30分間加熱し、PR含有補修用塗膜層を形成した。しかる後、第2層を研磨して、PR含有補修用塗膜層の余剰分を除去し、本例の補修(済み)積層塗膜の作製を完了した。
【0103】
(比較例1)
ポリロタキサンを含有しない第2層目用塗料を用いた以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の補修(済み)積層塗膜を作製した。
【0104】
[性能評価]
上記各例の補修積層塗膜につき、下記の特性評価を行った。
【0105】
(塗膜欠陥の消失程度)
塗膜欠陥の消失程度を目視により評価した。得られた結果を表1に示す。なお、表1中の記号の意味は下記の通りである。
○:傷が目立たない。
△:少し傷が見える。
×:多くの傷が見える。
【0106】
(耐洗車傷付き性)
各例の補修積層塗膜に対し、洗車機を用いて5回洗車を行い傷付きの程度を目視評価した。なお、表1中の記号の意味は下記の通りである。
○:傷が目立たない。
△:少し傷が見える。
×:多くの傷が見える。
【0107】
【表1】

【0108】
表1の結果から明らかなように、本発明の範囲に含まれる実施例1の補修積層塗膜では、塗膜の欠陥が消失しており、良好な外観回復と耐擦傷性付与が両立できた。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の補修積層塗膜の作製方法における各工程を段階的に示す断面説明図である。
【図2】本発明の補修積層塗膜の作製方法の他の例における各工程を段階的に示す断面説明図である。
【図3】ポリロタキサンの基本構造を概念的に示す模式図である。
【図4】ポリロタキサンと樹脂との架橋構造を概念的に示す部分概念図である。
【符号の説明】
【0110】
1 架橋ポリロタキサン
3 透明樹脂
3’ 透明樹脂
5 ポリロタキサン
6 直鎖状分子
7 環状分子
8 封鎖基
9 架橋点
10 下塗り塗膜層
20 中塗り塗膜層
30 ベースコート塗膜層30
40 PR含有上塗り塗膜層40
50 塗膜欠陥
50’ 異物
52 研削部位
54 深い研削部位
60 PR不含補修用塗膜層
70 PR含有補修用塗膜層
80 補修用ベースコート塗膜層
100 積層塗膜
100R 補修積層塗膜
110 積層塗膜
110R 補修積層塗膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下塗り塗膜層と親油性ポリロタキサン又は親水性ポリロタキサンを含むPR含有上塗り塗膜層を備え、このPR含有上塗り塗膜層に塗膜欠陥を有する積層塗膜を補修して成る補修積層塗膜であって、
上記PR含有上塗り塗膜層が、上記塗膜欠陥を研削して形成した研削部位と、この研削部位に順次積層されたPR不含補修用塗膜層及びPR含有補修用塗膜層を備え、
上記PR不含補修用塗膜層が、親油性ポリロタキサン又は親水性ポリロタキサンを含有しないPR不含補修用上塗り塗料から形成された塗膜層であり、
上記PR含有補修用塗膜層が、親油性ポリロタキサン又は親水性ポリロタキサンを含有するPR含有補修用上塗り塗料から形成された塗膜層である、ことを特徴とする補修積層塗膜。
【請求項2】
上記PR含有上塗り塗膜層に含まれる親油性ポリロタキサン又は親水性ポリロタキサンと、上記PR含有補修用塗膜層に含まれる親油性ポリロタキサン又は親水性ポリロタキサンとが同一種同士であることを特徴とする請求項1に記載の補修積層塗膜。
【請求項3】
上記下塗り塗膜層と上記PR含有上塗り塗膜層との間にベースコート塗膜層を付加して成り、上記研削部位がこのベースコート塗膜層に達しており、
この深い研削部位には、上記ベースコート塗膜層とほぼ同一成分の補修用ベースコート塗膜層、上記PR不含補修用塗膜層及び上記PR含有補修用塗膜層が順次積層されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の補修積層塗膜。
【請求項4】
上記ベースコート塗膜層が、着色顔料又は光輝材を含むことを特徴とする請求項3に記載の補修積層塗膜。
【請求項5】
上記親油性ポリロタキサンが、環状分子と、この環状分子を串刺し状に包接する直鎖状分子と、この直鎖状分子の両末端に配置され上記環状分子の脱離を防止する封鎖基とを有有し、溶剤系塗料用材料として機能することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の補修積層塗膜。
【請求項6】
上記親油性ポリロタキサンは、その直鎖状分子及び/又は環状分子が疎水性を示すことを特徴とする請求項5に記載の補修積層塗膜。
【請求項7】
上記親水性ポリロタキサンが、環状分子と、この環状分子を串刺し状に包接する直鎖状分子と、この直鎖状分子の両末端に配置され上記環状分子の脱離を防止する封鎖基とを有有し、水系塗料用材料として機能することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の補修積層塗膜。
【請求項8】
上記親水性ポリロタキサンは、その直鎖状分子及び/又は環状分子が親水性を示すことを特徴とする請求項7に記載の補修積層塗膜。
【請求項9】
請求項1、2、5〜8のいずれか1つの項に記載の補修積層塗膜を作製するに当たり、
上記塗膜欠陥を研削して研削部位を形成し、
次いで、上記研削部位に、上記PR不含補修用上塗り塗料及び上記PR含有補修用上塗り塗料を順次塗装して成ることを特徴とする補修積層塗膜の作製方法。
【請求項10】
請求項3〜8のいずれか1つの項に記載の補修積層塗膜を作製するに当たり、
上記塗膜欠陥を研削して上記深い研削部位を形成し、
次いで、上記深い研削部位に、上記補修用ベースコート塗膜層を形成する補修用ベースコート塗料、上記PR不含補修用上塗り塗料及び上記PR含有補修用上塗り塗料を順次塗装して成ることを特徴とする補修積層塗膜の作製方法。
【請求項11】
上記PR不含補修用上塗り塗料を複数回に分けて塗装し、この際、後の塗装に用いるPR不含補修用上塗り塗料ほど希釈率を高くすることを特徴とする請求項9又は10に記載の補修積層塗膜の作製方法。
【請求項12】
上記塗膜欠陥の研削を、コンパウンドを含むワックスによる磨きにより行うことを特徴とする請求項9〜11のいずれか1つの項に記載の補修積層塗膜の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−105620(P2007−105620A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−298573(P2005−298573)
【出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】