説明

補助ドアハンドル装置

【課題】建設機械の運転室の側面にヒンジにて開閉可能に装着されるドアの閉止操作が容易で、走行時や掘削操作時の車体の揺れに対して、運転者が安全確実に把持でき、運転者を支持する補助ドアハンドル装置を提供する。
【解決手段】一端22aがヒンジ側に向かって延びるステー22をドア内側面10aに沿って配設し、当該ステーのヒンジ側一端22aにレバー24を、ステーの配設方向に対して角度をもって連設し、ブラケット25,26によってステー22を回動のみを可能に軸支してドア内側面に取り付け、もって、運転者は、運転席からのレバー操作(ドア閉止操作)が容易であり、ブラケットで支持されるステーを安全確実に把持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建設機械の運転室のドアの内側面に設けられる補助ドアハンドル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械、例えば油圧ショベルの運転室の昇降口には、ドアヒンジにて開閉自在なドアが装着さられている。このドアには、運転室への昇降に伴って運転者が操作するドア開閉装置がドアの内外側面に設けられているが、このドア開閉装置は、通常、ドアヒンジより離れた位置に取り付けられる。そのため、ドアを完全に開き放った状態では、運転席から手の届かない位置に位置することになるため、運転者のドア開閉操作を補助するものとして、ドア開閉装置とは別に、ドアの内側面(内側パネル)に取り付けた補助ドアハンドル装置が知られている。
【0003】
従来の補助ドアハンドル装置として、例えば棒状或いはパイプ状の部材からなる単純な構造のステーが例示できる。このステーは、例えば、ドアガラスの下方であってドアの略中央位置に、ドアの内側面に沿って水平に取り付けられている。
運転室内にいる運転者がこのステーを使用して、ほぼ完全に開放させた状態のドアを閉じようとする際には、ドアが、ドアヒンジより後方の運転室側面に接近した開扉位置に位置していることから、運転者が運転室の昇降口から身体を乗り出さずに補助ドアハンドル装置のステーを掴んでドアの閉止操作をしようとすると、運転者は無理な姿勢を取らざるを得ない。このような補助ドアハンドル装置では、運転者の身体への負担が大きいことや、身体を乗り出してステーを掴む際には転落の危険も有るという問題点があった。
【0004】
そこで、従来技術として、ドアの閉止操作が容易で運転者の安全性確保を目的とした補助ドアハンドル装置が提案されている(特許文献1参照)。
特許文献1に記載される装置は、ドア内側面中央部に装着されるハンドルの一端をピンにてドア内側面に回動自在に取り付けられる。すなわち、ピンは、ドア内側面に沿って上下方向に配設され、上述のハンドルがドア内側面に対してピン軸回りに引き起こし可能に取り付けられている。そしてハンドルの回動範囲(引き起こし可能範囲)は、回動中心付近に設けられたストッパにより規制され、ハンドルをストッパによる規制位置まで引き起こせば、ハンドルがピンを支点とするレバーとなってドアの閉止操作が容易になるように構成されている。そして、上記ピンの回動中心付近に戻りばねが設けられており、ドアの閉止操作を終えてハンドルから手を放せば、戻りばねに付勢されてハンドルが元の位置に戻り、ハンドルは、その他端がドア内側面に当接する位置で保持されるように構造されている。
【特許文献1】特開平8−4054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1が開示する従来公知の補助ドアハンドル装置は、上述したとおり、ハンドルがピン位置を支点とするレバーとなる。そして、ハンドルが、その一端ピン軸回りに回動してドア内側面に対して引き起こし可能に構成されているために、ハンドルを引き起こした際には、掴み位置がドア内側面から離れるため、ハンドルのモーメントアームを大きくすることができ、ドアの閉止操作においては、確かに小さい力でドアの回動操作を行うことができる。しかしながら、ハンドルを掴む際には、その掴み位置が運転席から視てドアヒンジより離れた位置にあるため、運転者は無理な姿勢をとるか、乗り出す必要があり、依然として運転者の負担軽減及び転落防止の解決には至っていない。
【0006】
また、上述したステーやハンドルには、走行中或いは掘削操作中の車体の大きな揺れに対して咄嗟にこれらのステーやハンドルを掴んだ運転者を支持し、運転者の姿勢を維持し、安定させる機能を備えていなければならない。
特許文献1のハンドル装置は、ハンドルの一端がピンによりドアに固定されているものの、他端は戻りばねのばね力のみによりドア内側面に当接しているだけであり、ハンドル自体には運転者を支える支持力に乏しく、運転者の姿勢を維持し、安定させることが難しい。そのため、走行や掘削操作時の車体の揺れにより、運転者が転倒したり、投げ出されたりする等の危険が伴うという問題がある。
【0007】
本発明は、上記の問題を解決するために提案されたものであり、運転室の側面にヒンジにてドアが開閉可能に装着された建設機械において、ドアの閉止操作が容易で、しかも、建設機械の走行時や掘削操作時等における車体の揺れに対して、運転者が安全確実に把持でき、運転者を支持し、運転者の姿勢を安定させることができる補助ドアハンドル装置を提供することを目的にする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の本発明の補助ドアハンドル装置に依れば、建設機械の運転室の側面にヒンジにより開閉可能に装着されたドアの内側面に取り付けられる補助ドアハンドル装置において、ドア内側面に沿って配設され、一端が前記ヒンジ側に向かって延びるステーと、当該ステーのヒンジ側一端に、ステーの配設方向と角度をもって連設されたレバーと、及びステーを回動のみを可能に軸支すると共に、ステーをドア内側面に取り付ける支持手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
前記レバー及びステーは、好ましくは、同一部材を折曲して一体に形成される(請求項2)。
請求項3の本発明の補助ドアハンドル装置に依れば、請求項1又は2記載の補助ドアハンドル装置に、更に、前記支持手段とステーとの間に、レバーをドア内側面に当接する方向にステーを回動付勢する戻りバネを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項4の本発明の補助ドアハンドル装置に依れば、請求項1乃至3のいずれかに記載の補助ドアハンドル装置に、更に、前記レバーをドア内側面近傍の固定位置に保持する保持手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1及び2の発明に依れば、レバーが、支持手段によって回動自在に軸支されるステーの一端に、ステーの配設方向と角度をもって連設されているため、ドアの閉止操作時等において、レバー使用必要時にレバーをドア内側面から引き起こして使用することができ、レバーを引き起こすことによって、ステーの一端を支点とするモーメントアームが大となり、小さな力でドア閉止操作を行うことができる。
【0012】
そして、レバーが、ステーの一端に連設され、その連設位置がドアのヒンジ側に配置されるので、レバーは運転席に近い位置に配置されることになる。それ故、運転者は運転席に近いレバーを掴み、ステーを掴む必要が無く、運転者が無理な姿勢や、前記運転室から乗り出す必要がないため、運転者の負担軽減及び落下を防止することが出来る。
また、ステーは、支持部材によって、回動のみを可能に軸支され、ドア内側面に取り付けられており、閉止状態にあるドアの当該ステーを把持すれば、運転者の姿勢を安定させることが出来、走行や掘削操作時の揺れによる運転者の転倒や投げ出され等を防止することが出来る。
【0013】
請求項3の発明に依れば、支持手段とステーとの間に備えられた戻りバネは、ドア閉止操作終了後にレバーをドア内側面に当接する方向にステーを回動付勢してレバーをドア内側面近傍の固定位置に移動させ、戻りバネの付勢力が十分に大きければレバーをその固定位置に保持することから運転室内の居住空間を狭めずにレバーを格納出来る。
請求項4の発明に依れば、ドア内側面近傍の固定位置に保持手段を備え、ドア内側面近傍の固定位置に手動あるいは、請求項3の戻りバネにより移動させたレバーを保持手段に保持させることにより、運転室の振動や揺動などによりレバーが不用意に回動することを防止することが出来る。かつ、居住空間を狭めずに格納出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る補助ドアハンドル装置の実施の形態を、図面を参照して説明する。
本発明が適用される建設機械としては特に限定されないが、例えば、図1に示すクローラ型の油圧ショベルに適用した場合を例に説明する。
図1の油圧ショベル1は下部走行体2を備え、この下部走行体2上には上部旋回体4が旋回可能に設けられている。上部旋回体4には、前部に運転室6が設けられると共に、その側方に作業フロント8が連結されている。運転室6側面には、図2に示す昇降口6aが設けられ、昇降口6aには昇降口後縁に取り付けられたヒンジ6b、6bに軸支されて開閉自在なドア10が装着されている。ドア10には、運転者視認用の上窓12と下窓14が取り付けられており、これらの上窓12、下窓14間のドア内側面(内側ドアパネル)10aに、本発明に係る補助ドアハンドル装置20が取付けられている。
【0015】
この補助ドアハンドル装置20は、その詳細が図3乃至図8に示されるように、ドアパネル10aに沿って配設され、一端22aがヒンジ6b、6b側に向かって延びるステー22と、ステーのヒンジ側一端22aに、ステーの配設方向と角度をもって連設されたレバー24と、ステー22を回動のみを可能に軸支すると共に、ステー22をドアパネル10aに取り付ける支持手段(ブラケット)25,26とを含んで構成されている。
【0016】
ステー22とレバー24は、この実施形態ではステンレス製の1本のパイプ部材をステーの一端22aで、ほぼ直角に、すなわちステー22の中心軸方向(ドアパネル10aに配設されることになるステー22の配設方向)に対して90°の角度をもって折曲してこれらを一体に成形したものである。この実施形態において、ステー22及びレバー24の部材の材質は特に限定するもでもなく、また、中実の棒部材を使用してもよい。更に、折曲角度も特に90°に限定するものでもない。
【0017】
このように成形されたステー22及びレバー24を、ステー22の両端をブラケット25,26で回動のみを可能に軸支させて、ドアパネル10aに取り付けられる。このとき、ステー22は、上窓12と下窓14間のドアパネル10aに、ステー軸が水平になるように配設され、ステーの一端22aは、ヒンジ6b側に向かって延びている。
このとき、レバー24は、詳細は後述するように、レバー端(グリップエンド)24aを上方に向けて、ドアヒンジ6bと上窓12間のドアパネル10aに、すなわち、ヒンジ6b近傍の、運転席から容易に手が届く固定位置に配置されて保持されると共に(図2)、レバー24をドアパネル10aから引き起こして、ドアパネル10aに対して垂直になるドア閉止操作位置に起立させることができる。
【0018】
ステー22を軸支するブラケット25,26は、カラー27、28を介して回動のみ可能に支持し、カラー27、28によって、ステー22の軸方向及び径方向への移動を防止して、ステー22がブラケット25,26から脱落することを防止している。これを、図3及び図5を参照して以下により詳細に説明する。
ブラケット25は、カラー27を介してステー22を軸支する、略円筒状の支軸部25a、ドアパネル10aから離間させて支軸部25aを支持する脚部25b、25b及び、各脚部25bに連設され、ブラケット25をドアパネル10aにボルトで固定するためのフット部25c、25cを有しており、ブラケット25は、鍛造或いは鋳造により一体成形される。図5を見て、支軸部25aのドアパネル10a側の下面が切り開かれており、各切開縁部に沿って上記脚部25bがそれぞれ連設されている。
【0019】
支軸部25aの内周壁には、カラー27を受容し、カラー27の長さとほぼ等しい溝幅の円周溝25dが形成されており、支軸部25aの内径はステー22の外径より僅かに大きく設定されている。一方、ステー22には、支軸部25aの円周溝25dに対応する位置に、円周溝25dと同じ溝幅の外周環状溝22bが形成されている。カラー27は、適度な硬さと弾性を有する略円筒状の樹脂で形成され、このカラー27も長手方向に切開されて断面C字状をなしている。
【0020】
ステー22をブラケット25に軸支させるためには、先ず、ステーの外周環状溝22bにカラー27を絞り嵌めした状態で、ステー22を支軸部25bに嵌合させ、カラー27を支軸部の円周溝25dに落とし込み、カラー27を介してステー22とブラケット25とを係合させる。円周溝25dに嵌合したカラー27は、その弾性によって半径方向外方に拡がり、円周溝25dと係合すると共に、ステーの外周環状溝22bにも係合しているので、ステー22は、支軸部25bに回動自在に軸支されると共に、支軸部25bから抜け落ちることはない。なお、カラー27の外径、内径、厚み、ステーの外周環状溝22b及び支軸部の円周溝25dの溝深さ等は、ステー22が円滑に回動でき、また、ステー22が支軸部25bから抜け落ちることはない適宜値に設定されることは勿論のことである。
【0021】
ステー22とブラケット26についても同様であり、ステー22がブラケット26にカラー28を介して回動のみ可能に軸支され、且つ、互いの位置がカラー28によって規制されブラケット26からステー22の抜け落ちが防止されている。
なお、図3,4等には図示しないが、ステー22には、車体が振動や揺動した場合に運転者がステー22を把持して運転者が姿勢を保持できる機能も具備させる必要があり、支持ブラケット25,26間のステー22の外周面を例えば軟質合成樹脂被膜で覆うようにすることが好ましい。滑り防止の被膜により、ステー22を把持しようとする運転者が確実にステー22を掴むことができる。
【0022】
ブラケット26の支軸部26bには、図6に示すとおり、ステー22の回動可能範囲を規制する回動規制手段29が設けられており、この規制手段29は、ステー22に植設される係止ピン22cと、支軸部26bに形成され、ピン22cを係止させるピン溝26dとで構成される。ピン溝26dは、支軸部26bの周方向にステー22の回動を許容する範囲に亘って、係止ピン22cの外径より僅かに大きいスリット幅を有するように形成される。
【0023】
ステー22には、支軸部26bに形成されたピン溝26dに対応する位置に、係止ピン22cを植設するためのピン孔が穿設されており、上述したようにステー22をブラケット26に嵌合させて組み立てた後、ピン溝26dからピン22cをステー22のピン孔に打ち込んでピン22cをピン溝26dに係合させる。ピン溝26dにピン22cを係合させることによって、ステー22の回動可能範囲を規制すると共に、ステー22がブラケット26から脱落することも防止することができる。
【0024】
図6に示すピン溝26dは、円周角で略90度の範囲に形成されており、係止ピン22cが両側の溝端に当接する範囲がステー22の回動可能範囲になる。図6に示すピン22cの最上端当接位置では、図3に示すようにレバー24が、詳細は後述する保持手段30に保持されて固定される位置に対応し、ステー22が回動して、ピン22cが、図6に示す最上端位置から時計回りに移動して最下端位置でピン溝26dの溝端に当接すると、ピン22cの最下端当接位置は、レバー24がドアパネル(内壁面)10に対して垂直に起立させた位置に対応することになる(図4参照)。
【0025】
ブラケット(支持手段)26とステー22との間には、レバー24をドア内側面10aに当接する方向にステー22を回動付勢する戻りバネ32が装着されている(図6及び7参照)。戻りばね32は、ブラケット26の支軸部26bの内周壁に沿うように、ステーの外周に巻回されており、その一端32bを脚部26bに係止させ、他端32bを係止ピン22cに係止させることによって、ステー22を回動させるばね力をステー22に付勢している。図面に示す実施形態では、ドア10の閉止操作時にレバー24をドアパネル10aに対して垂直に起立させるためには、運転者は、戻りばね32のばね力に抗してレバー24を引き起こすことになり、ドアの閉止操作が終わり、運転者がレバー24から手を放したり、操作力を緩めたりするとレバー24は、戻りばね32のばね力によって後述する保持手段(ハンドルレスト)30によって保持される位置に戻る。
【0026】
レバー24のレバー端には、運転者がレバー24を把持し易いように、樹脂製のグリップエンド24aが装着されている。本発明では、グリップエンド24aの形状や材質については特に限定されないことは勿論のことである。
上述したレバー24の保持手段(ハンドルレスト)30は、図3に示す状態を見て、グリップエンド24aの下方のレバー部位を保持する位置、すなわち、レバー24をドア内側面(ドアパネル)10近傍に保持する固定位置に配設されている。
【0027】
図8は、ハンドルレスト30の詳細を示し、樹脂製のハンドルレスト30は、ボルト等でドアパネル10に取り付けされるプレート部材30aと、このプレート部材30aに立設され、レバー24に向かって開口し、立面視C字状の受容体30b、30bとで構成される。受容体30bの開口縁には、図8を視て、上方に向かって次第に拡開するリップ30cが形成されており、受容体30b、30bにレバー24を押し込んでこれを嵌装させる際、これらの両側のリップ30c、30cは、レバー24を受容体30b、30bにガイドしてステーの挿入を容易にする。レバー24は、合成樹脂製の受容体30b、30bの弾性によってハンドルレスト30に着脱可能に保持されることになる。
【0028】
次に、図9,10を用いて補助ドアハンドル装置20の操作手順を説明する。レバー不使用時にはレバー24は、戻りばね32の付勢力及びハンドルレスト30の受容体弾性保持力によりドアパネル10a近傍の固定位置に保持されている(図3、及び図9に実線で示すレバー24参照)。
ドア閉止操作を行う際には、運転者は、レバー24のグリップエンド24aを握ってレバー24を矢印X1方向へ引き起こし(図9)、更に、レバー24を矢印X2方向へ引っ張ることで、ドア10を、ヒンジ6bを中心に回動させて閉止させることが出来る。レバー24を引き起こして運転席側に引けば、レバー24自体の長さを、ステーの一端22aを支点とするモーメントアーム長にすることができるので、運転者は小さな操作力で済み、ドアの閉止操作が容易になる。
【0029】
ドア閉止後はレバー24を解放することで戻りばね32の作用によりドアパネル10aに取り付けられたハンドルレスト30に当接する位置まで矢印Y1方向へ回動し、戻りばね32の付勢力が強ければその力でレバー24が受容体30b、30bに嵌合してハンドルレスト30に保持され、付勢力が弱ければ、運転者が手でレバー24を受容体30b、30bに押し込んで嵌合させ、これをハンドルレスト30に保持させる。ハンドルレスト30は、不整地走行や掘削時等による車体の揺れや振動程度ではレバー24を脱落させることなく、レバー24の暴れを防止してこれを保持することができる。
【0030】
なお、戻りばね32の付勢力が強ければ、ハンドルレスト30自体が不要であり、不整地走行や掘削時等による車体の少々の揺れや振動程度では戻りばね32の付勢力だけで、レバー24が暴れることなく、レバー24をドア内側パネル10aに当接させた状態を維持して固定させることができる。
上述した本発明に係る補助ドアハンドル装置20によれば、レバー24が昇降口6a後方のヒンジ6b近傍に有り、運転者が運転席に座ったままで容易にレバー24に手が届くので、特許文献1が開示する装置を含む従来装置のように、ドアの閉止操作の際に、運転室から身体を乗り出して、或いは無理な姿勢をとってハンドルを掴む必要がないので、運転者の落下を防止し、身体への負担を軽減できる。
【0031】
また、運転席の昇降口側近傍には十分な空間的余裕が設けられておらず、また、通常、作業機の操作桿等が配置されることが多い。本発明に係る補助ドアハンドル装置20によれば、レバー24の不使用時にはレバー24をステー22よりも上方に跳ね上げ、ドアパネル10a近傍に折りたたんでハンドルレスト30に保持、収容させるので、運転室内の居住空間を損なうことなく格納出来、また、運転席や作業機の操作桿等とレバー24とが干渉することがなく、レバー24が作業機を操作する運転者の邪魔になることがない。
【0032】
更にまた、本発明に係る補助ドアハンドル装置20によれば、ステー22をブラケット25,26により両端支持したことにより、ステー22を把持する運転者を支持して運転者の姿勢を安定させ、ドア閉止状態での走行や掘削時などに生じる振動から運転者の転倒や投げ出しを防止することが出来る。
(変形例)
本発明は、本発明の技術的思想を実施し、その特徴的な機能を損なわない限り、上述した実施形態に何ら限定されず、種々の変形例に適用可能であり、例えば下記の変形例を例示することができる。
【0033】
(1) 上述の実施形態ではレバー不使用時においてレバー24はステー22よりも上方に固定したが(図3)、ドアパネル(内側面)10aへの配置、運転室内の運転座席や作業機操作桿等の各種装置との干渉、運転者の操作性等を考慮し、これらの制限が許せば、レバー24や、ステーを回動支持するブラケット25,26の固定位置等、補助ドアハンドル装置20の取付け位置は任意の位置に定めて良い。
【0034】
レバー24をステー22の配設位置より下方に固定する場合には、上述した実施形態で説明した戻りバネ32は特に使用する必要がなく、レバー用済み後は、自重で固定位置に戻すことができ、レバーが戻った位置に保持手段(ハンドグリップ)30をドアパネルに設置しておけばよい。
(2) また、レバー24とステー22は同一棒部材または同一パイプ部材をステーの一端22aで90度に折曲して一体成形されているが、折曲角度は、ドアパネル(内側面)10aへの配置、運転室内の各種装置との干渉、運転者の操作性、耐久性、デザイン性等を考慮し、任意に定めて良い。
【0035】
また、ステー22も上記実施形態ではドアパネル10aに水平に取り付けたが、必ずしも水平に取り付けることはなく、機能が果たされる範囲でドアパネル10aに傾斜して取り付けてもよい。
さらに、ステー22は、上記実施形態では脚部25b、26bの高さが等しいブラケット25,26を使用してドアパネル10aに取り付けたが、脚部の高さが異なるブラケットを使用して、すなわちドアパネル(内側面)に対して傾斜して取り付けるようにしてもよい。
【0036】
また、レバー24とステー22はそれぞれ直線に延びる棒状或いはパイプ状部材を使用したが、ドアパネル(内側面)10aへの配置、運転室内の装置との干渉、運転者の操作性、耐久性、デザイン性等を考慮し、湾曲形状、或いは折曲形状の部材を使用しても良い。
(3) また、ステー22とレバー24は、1本の同一棒部材または同一パイプ部材を折曲して形成されているが、形成性、組立性、整備性、耐久性、デザイン性等を考慮し該レバー24‘とステー22’には別部材を用い、両者をステーの一端22a‘に任意の固設方法、例えばボルト23’により締結したり(図11参照)、溶接、ロー付けその他の方法により固設しても良い。
【0037】
(4) また、上述の実施形態の補助ドアハンドル装置では、カラー27(図5)や係止ピン22c(図6)によって、ステー22がブラケット25,26から脱落することを防止していたが、ステー22の脱落防止方法としては、これに限定されず、例えば図12に示すように、ステー22Aの外周溝に半割のカラー27aを嵌合させ、このカラー27aの両端をブラケット25Aの内周溝に係止させたCリング27bで移動を規制すれば、上述の実施形態と同じ脱落防止効果が得られる。
【0038】
上記カラー27,27aに代えてベアリング等を用いると、カラーよりされに円滑にステーの回転を軸支することができ、異音等の発生を防止することに効果的である。
(5) また、ブラケット25,26は、同一板部材を折曲して板金加工により、或いは同一素材から型鍛造により成形加工されるが、異なる複数の部材を組み合わせて構成してもよい。例えば図13に示すように、ブラケット25の構成である基台部、脚部、円筒支軸部の大部分を一体に形成させた部材25Bと円筒支軸部の一部分にフランジを取り付けた部材25Cとブラケット25‘で構成し、これら部材25B,25Cをボルト、ナットで締結して組立てるようにしてもよい。
【0039】
(6) 更にまた、上述の実施形態では、ステー22のほぼ両端を2個のブラケット25,26で回動自在に支持したが、ブラケットは、そのステー22の支持剛性が確保できれば、ブラケット25だけの片持ちでステー22を軸支することもできる。この場合、ブラケット25の支持剛性を確保するためには、支軸部25a、脚部25b、フット部25c、カラー27の厚みや軸方向長さ、ステー22の外径や肉厚等を適宜に設定し、車体の揺動等でステー22を掴む運転者を十分に支持できるようにすればよい。
【0040】
(7) また、レバー24をドア内側面近傍の固定位置に保持する保持手段としては、上述の実施形態のハンドルレスト30の他にも種々の変形例を挙げることができ、上述したように、戻りバネ32のバネ付勢力が強い場合には、戻りバネ32自体がレバー24をドア内側面近傍の固定位置に保持する保持手段として機能させることができる。
また、上記実施形態における係止ピン22cとピン溝26dとの関係において、図6に示す係止ピン位置、すなわち、レバー24がドア内側面近傍で固定され、保持されるべき位置に対応したピン位置で、ピン溝26dの溝幅を狭く設定し、係止ピン22cとピン溝26dと嵌合させる、所謂「ディテント機構」を付与することにより、レバー24を固定位置に保持する保持力を発生させることができる。このような場合には、上記実施形態におけるハンドルレスト30を省略することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る補助ドアハンドル装置が好適な建設機械を例示するもので、その運転室等の構成を説明するためのクローラ型油圧ショベルの側面図。
【図2】図1に示す油圧ショベルの運転室6に設けられ、全開した状態のドア10を示す正面図。
【図3】本発明に係る補助ドアハンドル装置を示し、そのハンドル24を固定位置に保持した状態を示す、ステー22部分の一部省略平面図。
【図4】図3に示す補助ドアハンドル装置の、ハンドル24を引き起こした状態を示す、ステー22部分の一部省略立面図。
【図5】図3のA−A矢視断面図。
【図6】図3のB−B矢視断面図。
【図7】図3の円C部分の一部切欠き拡大図。
【図8】図3に示すD−D矢視一部断面図であり、同図に示す保持手段(ハンドレスト)30の立面図。
【図9】補助ドアハンドル装置20のレバー操作手順を説明するための運転室6の正面縦断面図。
【図10】補助ドアハンドル装置20のレバー操作手順を説明するための運転室6の上面図。
【図11】ステーに連設されるレバーの変形例を示す部分平面図。
【図12】ステー22Aがカラー27aを介してブラケット25Aに軸支されている状態の変形例を示す横断面図。
【図13】本発明に係る補助ドアハンドル装覆の支持手段(ブラケット)の変形例を説明するための立面図。
【符号の説明】
【0042】
1 油圧ショベル(建設機械)
6 運転室
6a 昇降口
6b ヒンジ
10 ドア
10a ドアパネル(ドア内側面)
20 補助ドアハンドル装置
22 ステー
25,26 ブラケット(支持手段)
30 保持手段(ハンドレスト)
32 戻りバネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械の運転室の側面にヒンジにより開閉自在に装着されたドアの内側面に取り付けられる補助ドアハンドル装置において、
前記ドア内側面に沿って配設され、一端が前記ヒンジ側に向かって延びるステーと、
当該ステーの前記ヒンジ側一端に、ステーの配設方向と角度をもって連設されたレバーと、及び
前記ステーを回動のみを可能に軸支すると共に、ステーを前記ドア内側面に取り付ける支持手段と
を備えることを特徴とする補助ドアハンドル装置。
【請求項2】
前記レバー及びステーは同一部材を折曲して形成されることを特徴とする、請求項1記載の補助ドアハンドル装置。
【請求項3】
前記支持手段とステーとの間に、前記レバーをドア内側面に当接する方向にステーを回動付勢する戻りバネを備えたことを特徴とする、請求項1又は2記載の補助ドアハンドル装置。
【請求項4】
前記レバーを前記ドア内側面近傍の固定位置に保持する保持手段を備えることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の補助ドアハンドル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−196262(P2008−196262A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−34631(P2007−34631)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】