説明

補間フレーム生成装置およびそれを搭載した表示装置

【課題】補間フレームの品質を向上させる。
【解決手段】動きベクトル検出部10は、第1フレームと第2フレームとの間で、ブロック単位または画素単位の動きベクトルを検出する。補間フレーム算出部20は、補間フレーム内の各画素を通過する動きベクトルをそれぞれ特定し、その動きベクトルの始点および終点に対応する、第1フレーム内の画素および第2フレーム内の画素の少なくとも一方を参照して、補間フレーム内の各画素を生成する。参照無効領域設定部30は、画面内に参照無効領域を設定する。補間フレーム算出部20は、補間フレーム内の対象画素を通過する動きベクトルの始点および終点に対応する、第1フレーム内の画素および第2フレーム内の画素の一方が参照無効領域に存在する場合、参照無効領域に存在するほうの画素を参照せず、参照無効領域に存在しないほうの画素を参照して、対象画素を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動きベクトルを用いて補間フレームを生成する補間フレーム生成装置、およびそれを搭載した表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フレーム補間技術を用いて動画像のコマ数を増やし、より滑らかで残像間の少ない動画像を生成する手法が実用化されている。たとえば、毎秒60フレーム(60Hz)の動画像を2倍速または4倍速して、120Hzまたは240Hzの動画像に変換して表示する技術も実用化されている。補間フレームの生成手法として、連続するフレーム間の動きベクトルを用いる手法が注目されている(たとえば、特許文献1、2参照)。
【0003】
日本では2006年4月からワンセグ放送が開始されている。ワンセグ放送は、携帯電話機などの携帯機器を主な受信対象とする狭帯域を利用した放送である。ワンセグ放送では、通常、毎秒15フレーム(15Hz)で映像が送信されるため、そのコマ数を増加させる必要性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−71842号公報
【特許文献2】特開2009−21868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
動きベクトルを用いる補間フレームの生成アルゴリズムの一つに、連続する第1フレームと第2フレーム間の動きベクトルをブロック単位または画素単位で特定し、第1フレーム内の画素が等速直線運動で第2フレームに移動すると仮定して、補間フレームの画素を決定するものがある。このアルゴリズムでは、たとえば、補間フレームの対象画素を通過する上記動きベクトルを特定し、その動きベクトルの始点および終点に対応する、第1フレーム内の画素および第2フレーム内の画素を、補間フレームの時間方向の位置に応じて加重平均した画素を、補間フレームの対象画素に割り当てる。
【0006】
ここで、補間フレームの対象画素を通過する上記動きベクトルを常に正確に求めることができれば、その動きベクトルの始点に対応する第1フレーム内の画素を、そのまま当該対象画素に割り当ててもよい。しかしながら、上記動きベクトルが誤検出された場合、第1フレーム内の画素および第2フレーム内の画素の両方を参照する手法と比較し、一つの画素しか参照しないため、大きなノイズが発生しやすくなる。このように、第1フレーム内の画素および第2フレーム内の画素の両方を参照する手法は、片方の画素しか参照しない手法と比較し、一般的に精度が高い手法といえる。
【0007】
しかしながら、上記動きベクトルが指し示す、第1フレーム内の画素および第2フレーム内の画素のいずれかが、参照画素として不適切な場合、その画素を参照しないほうが、補間フレームの対象画素の品質が維持される。たとえば、画面の両端に位置する画素は、同期パルスの影響により輝度値が大きく低下しやすく、参照画素として不適切といえる。輝度値が大きく低下した画素を参照すると、上記対象画素が大きく沈みこんでしまう。
【0008】
本発明はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、補間フレームの品質を向上させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様の補間フレーム生成装置は、第1フレームと第2フレームとの間の補間フレームを生成する補間フレーム生成装置であって、第1フレームと第2フレームとの間で、ブロック単位または画素単位の動きベクトルを検出する動きベクトル検出部と、補間フレーム内の各画素を通過する動きベクトルをそれぞれ特定し、その動きベクトルの始点および終点に対応する、第1フレーム内の画素および第2フレーム内の画素の少なくとも一方を参照して、補間フレーム内の各画素を生成する補間フレーム算出部と、画面内に参照無効領域を設定する参照無効領域設定部と、を備える。補間フレーム算出部は、補間フレーム内の対象画素を通過する動きベクトルの始点および終点に対応する、第1フレーム内の画素および第2フレーム内の画素の一方が参照無効領域に存在する場合、参照無効領域に存在するほうの画素を参照せず、参照無効領域に存在しないほうの画素を参照して、対象画素を生成する。
【0010】
本発明の別の態様は、表示装置である。この装置は、上述した補間フレーム生成装置と、補間フレーム生成装置により生成された補間フレームが挿入された画像を表示する表示部と、を備える。
【0011】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、補間フレームの品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る補間フレーム生成装置の構成を示す図である。
【図2】補間フレームの生成原理(2倍速変換)を示す図である。
【図3】補間フレームの生成原理(4倍速変換)を示す図である。
【図4】画面内に参照無効領域が設定されている場合における、補間フレーム算出部による画素生成処理の4つのケースを模試的に示す図である。
【図5】補間フレーム算出部による画素生成処理の4つのケースをまとめた図表である。
【図6】画面と、画面に映像を表示させるための映像信号を模式的に示す図である。
【図7】画面内の右端領域の近傍における、補間フレーム内の画素の生成処理を説明するための図である。図7(a)は、右端領域を参照無効領域に設定しない場合の、補間フレーム内の画素の生成処理を説明するための図である。図7(b)は、右端領域を参照無効領域に設定した場合の、補間フレーム内の画素の生成処理を説明するための図である。
【図8】実施の形態に係る補間フレーム生成装置を搭載した、表示装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係る補間フレーム生成装置100の構成を示す図である。補間フレーム生成装置100は、第1フレームと第2フレームとの間の補間フレームを生成する。たとえば、動画像に含まれる、隣接する二枚のフレーム間の補間フレームを生成する。
【0015】
補間フレーム生成装置100は、動きベクトル検出部10、補間フレーム算出部20および参照無効領域設定部30を備える。これらの構成は、ハードウェア的には、任意のプロセッサ、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウェア的にはメモリにロードされたプログラムによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組み合わせによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0016】
動きベクトル検出部10は、第1フレームと第2フレームとの間で、ブロック単位または画素単位の動きベクトルを検出する。たとえば、画素単位の動きベクトルを二段階のブロックマッチングにより検出する。
【0017】
当該二段階のブロックマッチングの第一段階では、第1フレームを複数のブロック(たとえば、8×8または16×16のマクロブロック)に分割して、第2フレーム内において、当該各ブロックと一致または誤差が最小のブロックを探索する。
【0018】
たとえば、第1フレーム内の対象ブロックと第2フレーム内の候補ブロック間で、両者に含まれる、対応する位置の画素の差分絶対値和または差分二乗和を求め、その値が最も小さい候補ブロックを、第2フレーム内の最適予測ブロックとする。また、第1フレーム内の対象ブロックと第2フレーム内の候補ブロック間で、両者に含まれる、対応する位置の画素が実質的に一致した数が最も多い候補ブロックを、第2フレーム内の最適予測ブロックとしてもよい。そして、第1フレーム内の各ブロックと、第2フレーム内の各最適予測ブロックとの動きベクトルを算出する。これにより、ブロック単位の動きベクトルを検出することができる。
【0019】
上記二段階のブロックマッチングの第二段階では、第1フレーム内の各ブロックと、第2フレーム内の各最適予測ブロックとの間で、画素値が実質的に一致しなかった画素の動きベクトルを求める。たとえば、上述した手法と同様の手法を用いて、第1フレーム内の各ブロック内の画素値が実質的に一致しなかった画素の領域と一致または誤差が最小の領域を、第2フレーム内において探索する。これにより、第1フレームと第2フレームとの間で、画素単位の動きベクトルを検出することができる。
【0020】
補間フレーム算出部20は、補間フレーム内の各画素を通過する上記動きベクトルをそれぞれ特定し、その動きベクトルの始点および終点に対応する、第1フレーム内の画素および第2フレーム内の画素の少なくとも一方を参照して、補間フレーム内の各画素を生成する。たとえば、両方の画素を合成して生成してもよいし、いずれか一方の画素を複写して生成してもよい。以下、図2、3を参照しながら両方の画素を合成して補間フレーム内の画素を生成する方法について説明する。
【0021】
図2は、補間フレームの生成原理(2倍速変換)を示す図である。2倍速変換では、第1原フレームFo1と第2原フレームFo2との間に、一枚の補間フレームFiを挿入する必要がある。補間フレームFiは、第1原フレームFo1と第2原フレームFo2との時間間隔を二等分した時間位置に挿入される。
【0022】
補間フレームFiの画素Piは、その画素Piを通過する動きベクトルmvの始点および終点に対応する、第1原フレームFo1の画素Po1および第2原フレームFo2の画素Po2を合成することにより生成される。たとえば、両者の画素値を平均して補間フレームFiの画素Piの画素値を算出してもよい。
【0023】
ここで、補間フレームFiの画素Piを通過する動きベクトルmvを常に正確に求めることができれば、その動きベクトルmvの始点に対応する第1原フレームFo1の画素Po1を、そのまま補間フレームFiの画素Piに割り当ててもよい。しかしながら、動きベクトルmvが誤検出された場合、片方の画素Po1しか参照しないため、大きなノイズが発生しやすくなる。そこで、本実施の形態では、第1原フレームFo1の画素Po1および第2原フレームFo2の画素Po2の両方を参照する。
【0024】
なお、補間フレームFiの対象画素を通過する動きベクトルが存在しない場合、たとえば、次のように処理する。すなわち、補間フレームFi内の周辺画素から空間的に補間した画素を当該対象画素に割り当てるか、補間フレームFiの対象画素と同じ位置の、第1原フレームFo1の画素および第2原フレームFo2の画素を合成した画素を当該対象画素に割り当てる。
【0025】
図3は、補間フレームの生成原理(4倍速変換)を示す図である。4倍速変換では、第1原フレームFo1と第2原フレームFo2との間に、三枚の補間フレーム(第1補間フレームFi1、第2補間フレームFi2および第3補間フレームFi3)を挿入する必要がある。第1補間フレームFi1、第2補間フレームFi2および第3補間フレームFi3は、第1原フレームFo1と第2原フレームFo2との時間間隔を四等分した時間位置にそれぞれ挿入される。
【0026】
第1補間フレームFi1の画素Pi1は、その画素Pi1を通過する動きベクトルmvの始点および終点に対応する、第1原フレームFo1の画素Po1および第2原フレームFo2の画素Po2を合成することにより生成される。たとえば、両者の画素値を加重平均して、第1補間フレームFi1の画素Pi1の画素値を算出してもよい。すなわち、前者の画素値を3/4し、後者の画素値を1/4し、両者を加算する。
【0027】
第2補間フレームFi2の画素Pi2は、図2に示した補間フレームFiの画素Piと同様に生成することができる。第3補間フレームFi3の画素Pi3も、第1原フレームFo1の画素Po1および第2原フレームFo2の画素Po2を合成することにより生成される。たとえば、両者の画素値を加重平均して、第3補間フレームFi3の画素Pi3の画素値を算出してもよい。すなわち、前者の画素値を1/4し、後者の画素値を3/4し、両者を加算する。
【0028】
図1に戻り、参照無効領域設定部30は、画面内に参照無効領域を設定し、その位置を補間フレーム算出部20に設定する。たとえば、補間フレーム算出部20内のレジスタに、当該参照無効領域とすべき画素位置を設定する。参照無効領域設定部30は、外部(たとえば、後述する図8の主制御部300)からの制御信号に応じて、当該参照無効領域を設定することができる。
【0029】
たとえば、当該参照無効領域は、レターボックス形式で表示される画面内の上下の余白領域(たとえば、黒帯領域)や、ピラーボックス形式で表示される画面内の左右の余白領域や、ウインドウボックス形式で表示される画面内の上下左右の余白領域に設定される。これらの余白は、アスペクト比が異なる映像の互換性をとるために、放送局側または受信機側で挿入される。たとえば、4:3の映像を16:9の画面に表示させる場合、ピラーボックス形式が採用され、画面内の左右に黒帯が表示される。
【0030】
また、上記参照無効領域は、設計者によりあらかじめ設定されることも可能である。たとえば、ノイズが発生しやすい、画素または領域に設定される。後述する画面内の右端領域および左端領域はその一例である。
【0031】
以下、図4、図5を参照して、画面内に参照無効領域が設定されている場合における、補間フレーム算出部20による画素生成処理について説明する。図4は、画面40内に参照無効領域42a、42bが設定されている場合における、補間フレーム算出部20による画素生成処理の4つのケースを模試的に示す図である。図5は、補間フレーム算出部20による画素生成処理の4つのケースをまとめた図表である。
【0032】
図4に示す画面40はピラーボックス形式の画面であり、当該画面40は、映像が表示される有効領域41と、その左右の余白領域である参照無効領域42a、42bとに分割される。なお、画面40外の領域は、参照無効領域42a、42bと同様に扱う。
【0033】
ケースaは、補間フレームFi内の対象画素Pia、第1原フレームFo1内の参照画素Po1aおよび第2原フレームFo2内の参照画素Po2aのすべてが有効領域41に存在するケースである。すなわち、補間フレーム算出部20は、補間フレームFi内の対象画素Piaを通過する上記動きベクトルの始点および終点に対応する、第1原フレームFo1内の画素Po1aおよび第2原フレームFo2内の画素Po2aの両方が有効領域41に存在する場合、両方の画素Po1a、Po2aを参照して、対象画素Piaを生成する。たとえば、両方の画素Po1a、Po2aを合成(たとえば、平均)した画素を、補間フレームFi内の対象画素Piaに割り当てる。
【0034】
ケースbは、補間フレームFi内の対象画素Pibが参照無効領域42a、42bに存在するケースである。すなわち、補間フレーム算出部20は、補間フレームFi内の対象画素Pibが参照無効領域42a、42bに存在する場合、対象画素Pibの位置に対応または一致する、第1原フレームFo1内の画素および第2原フレームFo2内の画素の少なくとも一方を参照して、対象画素Pibを生成する。たとえば、原フレームFo1内の当該画素を、補間フレームFi内の対象画素Pibに複写する。なお、第2原フレームFo2内の当該画素を複写してもよい。また、第1原フレームFo1内の当該画素および第2原フレーム内の当該画素を合成(たとえば、平均)した画素を、補間フレームFi内の対象画素Pibに複写してもよい。
【0035】
なお、ケースbでは、補間フレームFi内の対象画素Pibを通過する上記動きベクトルの始点および終点に対応する、第1原フレームFo1内の画素Po1bおよび第2原フレームFo2内の画素Po2bは、有効領域41に存在するか参照無効領域42a、42bに存在するかを問わず、いずれも参照されない。
【0036】
ケースcは、補間フレームFi内の対象画素Picが有効領域41に存在し、第1原フレームFo1内の参照画素Po1cおよび第2原フレームFo2内の参照画素Po2cの一方が有効領域41に存在し、他方が参照無効領域42a、42bに存在するケースである。すなわち、補間フレーム算出部20は、補間フレームFi内の対象画素Picを通過する上記動きベクトルの始点および終点に対応する、第1原フレームFo1内の画素Po1cおよび第2原フレームFo2内の画素Po2cの一方が参照無効領域42a、42bに存在する場合、他方を参照して対象画素Picを生成する。図4では、参照無効領域42a、42bに存在するほうの第1原フレームFo1内の画素Po1cを参照せず、参照無効領域42a、42bに存在しないほうの第2原フレームFo2内の画素Po2cを参照して、対象画素Picを生成する。図4では、参照無効領域42a、42bに存在しないほうの第2原フレームFo2内の画素Po2cを、補間フレームFi内の対象画素Picに複写する。
【0037】
ケースdは、補間フレームFi内の対象画素Pidが有効領域41に存在し、第1原フレームFo1内の参照画素Po1dおよび第2原フレームFo2内の参照画素Po2dの両方が参照無効領域42a、42b(画面40外の領域を含む)に存在するケースである。すなわち、補間フレーム算出部20は、補間フレームFi内の対象画素Pidを通過する上記動きベクトルの始点および終点に対応する、第1原フレームFo1内の画素Po1dおよび第2原フレームFo2内の画素Po2dの両方が参照無効領域42a、42bに存在する場合、対象画素Pidの位置に対応または一致する、第1原フレームFo1内の画素および第2原フレームFo2内の画素の少なくとも一方を参照して、対象画素Pidを生成する。たとえば、両方の画素を合成(たとえば、平均)して生成してもよいし、いずれか一方の画素を複写して生成してもよい。
【0038】
すなわち、ケースdでは上記動きベクトルをゼロと考える。なお、補間フレームFi内の対象画素Pidを通過する上記動きベクトルの始点および終点に対応する、第1原フレームFo1内の画素Po1dおよび第2原フレームFo2内の画素Po2dは、いずれも参照されない。
【0039】
図6は、画面60と、画面60に映像を表示させるための映像信号VSを模式的に示す図である。NTSC(National Television System Committee)方式などで規定された映像信号VSは、一水平走査線信号1Hごとに同期信号HSYNCが挿入される。一水平走査線信号1Hは、同期信号HSYNCが挿入され、その次に図示しないバースト信号が挿入され、その次に実際の映像信号が挿入される。なお、図6では当該映像信号をアナログ信号で描いているが、デジタル信号であってもよい。
【0040】
ここで、実際の映像信号の両端は、同期信号HSYNCの影響により歪みやすい性質を有する。すなわち、同期信号HSYNCの低い値(ペデスタルレベル)に引っ張られて、当該映像信号の両端の値が低下しやすくなる。この性質に鑑み、参照無効領域設定部30は、当該映像信号の両端に対応する、画面60内の左端領域62aおよび右端領域62bの少なくとも一方を、上記参照無効領域に設定する。なお、左端領域62aは、画面60の左端から1〜3本程度の垂直画素ラインで形成される領域であってもよい。同様に、右端領域62bは、画面60の最も右端から1〜3本程度の垂直画素ラインで形成される領域であってもよい。
【0041】
図7は、画面60内の右端領域62bの近傍における、補間フレームFi内の画素の生成処理を説明するための図である。図7(a)は、右端領域62bを参照無効領域に設定しない場合の、補間フレームFi内の画素の生成処理を説明するための図である。図7(b)は、右端領域62bを参照無効領域に設定した場合の、補間フレームFi内の画素の生成処理を説明するための図である。
【0042】
まず、図7(a)を参照して、右端領域62bを参照無効領域に設定しない場合について説明する。補間フレームFi内の第1対象画素Pixの生成処理は、上記ケースaとなる。したがって、補間フレーム算出部20は、補間フレームFi内の第1対象画素Pixを通過する上記動きベクトルの始点および終点に対応する、第1原フレームFo1内の画素Po1xaおよび第2原フレームFo2内の画素Po2xaを平均して、第1対象画素Piaを生成する。
【0043】
ここで、第2原フレームFo2内の画素Po2xaは、右端領域62b内に存在するため、画素値が低下しやすい。仮に、その画素値が本来の値ではなくゼロになってしまった場合、参照画素の一方がゼロであるため、演算により生成される第1対象画素Pixの画素値が大きく低下してしまう。すなわち、本来の画素値の約半分になってしまう。第1対象画素Pixが属する垂直画素ライン内の他の画素についても同様であり、この場合、当該垂直画素ラインの輝度が低下し、画面60内に黒い縦線のノイズが入ってしまう。
【0044】
補間フレームFi内の第2対象画素Piyは、第1対象画素Pixの一つ右隣ラインの画素である。第2対象画素Piyの生成処理は、上記ケースcとなる。補間フレームFi内の第2対象画素Piyを通過する上記動きベクトルの終点に対応する、第2原フレームFo2内の画素Po2yc位置が画面60の外にはみ出るためである。
【0045】
したがって、補間フレーム算出部20は、補間フレームFi内の第2対象画素Piyを通過する上記動きベクトルの始点に対応する、第1原フレームFo1内の画素Po1ycを複写して、第2対象画素Piyを生成する。画面60の外にはみ出した位置の値を平均化処理の基礎データとしないため、第2対象画素Piyの画素値が、本来の値より大きく低下することを抑制することができる。第2対象画素Piyが属する垂直画素ライン内の他の画素についても同様であり、画面60内の当該垂直画素ラインの位置に、縦線のノイズが入ることを抑制することができる。
【0046】
つぎに、図7(b)を参照して、右端領域62bを参照無効領域に設定する場合について説明する。補間フレームFi内の第2対象画素Piyについては、図7(a)で説明した、右端領域62bを参照無効領域に設定する場合と同様である。図7(b)では、補間フレームFi内の第1対象画素Pixの生成処理は、右端領域62bが参照無効領域に設定されているため、上記ケースcとなる。したがって、補間フレーム算出部20は、補間フレームFi内の第1対象画素Pixを通過する上記動きベクトルの始点に対応する、第1原フレームFo1内の画素Po1xcを複写して、第1対象画素Pixを生成する。
【0047】
図7(b)では、画素値が低下しやすい右端領域62b内の画素を平均化処理の基礎データとしないため、第1対象画素Pixの画素値が、本来の値より大きく低下してしまうことを抑制することができる。第1対象画素Pixが属する垂直画素ライン内の他の画素についても同様であり、画面60内の当該垂直画素ラインの位置に、縦線のノイズが入ることを抑制することができる。
【0048】
以上説明したように本実施の形態によれば、上述した動きベクトルを用いる補間フレーム技術を用いて補間フレームを生成する場合において、補間フレームの品質を向上させることができる。すなわち、ノイズが混入しやすい位置の画素を参照無効領域に設定することにより、当該画素を参照画素から外すことができ、補間フレーム内の画素にノイズが混入されることを抑制することができる。たとえば、画面内の右端領域および左端領域は、ノイズが混入しやすい位置であり、その右端領域および左端領域を参照無効領域に設定することにより、画面内に縦線のノイズが入ることを抑制することができる。
【0049】
また、補間フレーム内の参照無効領域の画素は、第1原フレーム内または第2原フレーム内の対応する位置の画素を参照して生成することにより、目立ちやすいちらつきの発生を抑制することができる。参照無効領域は、黒帯など、静止している領域に設定されることが多い。その場合、上記参照無効領域内の画素は、前フレームの同じ位置の画素を踏襲したほうが、上述した動きベクトルを用いた補間演算により生成するより、高精度を実現しやすい。また、単純に前フレームの画素値を踏襲すれば、演算量を低減させることができる。
【0050】
図8は、実施の形態に係る補間フレーム生成装置100を搭載した、表示装置500を示す図である。表示装置500は、ワンセグ放送を受信し、表示再生する機能を搭載した機器である。たとえば、ワンセグ放送の受信再生専用機であってもよいし、その機能を搭載した携帯電話機、PDA、携帯型音楽プレーヤ、電子辞書、カーナビゲーション装置などであってもよい。
【0051】
当該表示装置500は、アンテナ200、主制御部300、フレームレート変換装置150および表示部400を備える。主制御部300は、受信部310、復号部320およびフレームレート変換部330を含む。受信部310は、アンテナ200を介してワンセグ放送を受信し、選択されたチャンネルの信号を復調して、復号部320へ出力する。
【0052】
復号部320は、受信部310から入力される符号化データを復号する。ワンセグ放送画像の符号化には、AVC/H.264規格が採用されている。復号部320は、復号したフレームをフレームレート変換部330に出力する。なお、復号されたフレームがフレームレート変換部330に入力される前に、実際は図示しないスケーラによる解像度変換が施されるが、ここではそれに注目しないため、省略している。
【0053】
フレームレート変換部330は、入力されるフレームを単純に複写して、フレーム数を増加させる。ここでは、15Hzの動画像の各フレームを3回複写してフレーム数を4倍にすることにより、15Hzの動画像を60Hzの動画像に変換する。なお、単純に複写するのではなく、増加させるべきフレームの少なくとも一枚について、連続する二枚の原フレームを簡易合成することにより、生成してもよい。たとえば、一方の原フレームの上部領域と他方の原フレームの下部領域を空間的に合成してもよい。
【0054】
フレームレート変換装置150は、上述した実施の形態に係る補間フレーム生成装置100を含み、フレームレート変換部330から入力される動画像を2倍速変換または4倍速変換する。すなわち、フレームレート変換装置150は、入力される動画像を、フレームレート変換部330によりフレーム数が増加される前の状態に戻す。そして、その戻された動画像に含まれる、連続する二枚の原フレーム間の補間フレームを補間フレーム生成装置100により生成し、それら二枚の原フレーム間に挿入して出力する。
【0055】
2倍速変換では、図2に示したように、二枚の原フレーム間に一枚の補間フレームを挿入する。60Hzの動画像を出力する場合、各原フレームおよび各補間フレームを二枚ずつ出力する。4倍速変換では、図3に示したように、二枚の原フレーム間に段階的な三枚の補間フレームを挿入する。
【0056】
表示部400は、フレームレート変換装置150により倍速変換された動画像を表示する。
【0057】
以上説明したようにワンセグ放送を受信して表示再生する表示装置500に、実施の形態に係る補間フレーム生成装置100を含むフレームレート変換装置150を搭載することにより、ワンセグ映像の画質を向上させることができる。なお、図8では既存の主制御部300に対して、フレームレート変換装置150を追加することにより、ワンセグ映像の倍速変換を実現する例を示したが、主制御部300内に、フレームレート変換部330の代わりに、フレームレート変換装置150が初めから搭載されてもよい。
【0058】
以上、本発明をいくつかの実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0059】
たとえば、上記実施の形態では、二段階のブロックマッチングにより画素単位の動きベクトルを検出する手法を説明したが、一回のブロックマッチングにより得られるブロック単位の動きベクトルを用いて、補間フレーム内の各画素を通過する動きベクトルを求めてよい。また、ブロックマッチングではなく、勾配法を用いて画素単位の動きベクトルを検出してもよい。
【0060】
また、上記実施の形態では、ワンセグ放送される動画像を倍速変換する例を説明したが、本発明に係る補間フレーム生成装置100を含むフレームレート変換装置150は、その用途に限定されることなく、様々な動画像のフレームレート変換に適用可能である。とくに、低スペックなカメラで撮影された動画像など、低フレームレートの動画像への適用に有効である。たとえば、15Hz未満の動画像のフレームレート変換にも適用可能である。
【符号の説明】
【0061】
10 動きベクトル検出部、 20 補間フレーム算出部、 30 参照無効領域設定部、 100 補間フレーム生成装置、 150 フレームレート変換装置、 200 アンテナ、 300 主制御部、 310 受信部、 320 復号部、 330 フレームレート変換部、 400 表示部、 500 表示装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1フレームと第2フレームとの間の補間フレームを生成する補間フレーム生成装置であって、
前記第1フレームと前記第2フレームとの間で、ブロック単位または画素単位の動きベクトルを検出する動きベクトル検出部と、
前記補間フレーム内の各画素を通過する前記動きベクトルをそれぞれ特定し、その動きベクトルの始点および終点に対応する、前記第1フレーム内の画素および前記第2フレーム内の画素の少なくとも一方を参照して、前記補間フレーム内の各画素を生成する補間フレーム算出部と、
画面内に参照無効領域を設定する参照無効領域設定部と、を備え、
前記補間フレーム算出部は、前記補間フレーム内の対象画素を通過する前記動きベクトルの始点および終点に対応する、前記第1フレーム内の画素および前記第2フレーム内の画素の一方が前記参照無効領域に存在する場合、前記参照無効領域に存在するほうの画素を参照せず、前記参照無効領域に存在しないほうの画素を参照して、前記対象画素を生成することを特徴とする補間フレーム生成装置。
【請求項2】
前記補間フレーム算出部は、前記補間フレーム内の対象画素を通過する前記動きベクトルの始点および終点に対応する、前記第1フレーム内の画素および前記第2フレーム内の画素の両方が前記参照無効領域に存在する場合、前記対象画素の位置に対応する、前記第1フレーム内の画素および前記第2フレーム内の画素の少なくとも一方を参照して、前記対象画素を生成することを特徴とする請求項1に記載の補間フレーム生成装置。
【請求項3】
前記補間フレーム算出部は、前記補間フレーム内の対象画素が前記参照無効領域に存在する場合、前記対象画素の位置に対応する、前記第1フレーム内の画素および前記第2フレーム内の画素の少なくとも一方を参照して、前記対象画素を生成することを特徴とする請求項1または2に記載の補間フレーム生成装置。
【請求項4】
前記参照無効領域設定部は、画面内の右端領域および左端領域の少なくとも一方を、前記参照無効領域に設定することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の補間フレーム生成装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の補間フレーム生成装置と、
前記補間フレーム生成装置により生成された補間フレームが挿入された画像を表示する表示部と、
を備えることを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−35595(P2011−35595A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178910(P2009−178910)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(506227884)三洋半導体株式会社 (1,155)
【Fターム(参考)】