裸眼立体視ディスプレイ
【課題】
プロジェクタから投影された光線は、マイクロレンズを通ったあと、非常に小さな領域(この領域を以下,偏向支点と呼ぶ)に集光され、この領域を支点として,指向性の光線として拡がるため、人が立体視ディスプレイを観察する際に、非常に小さな画素として認識される。現実的には偏向支点どうしの間隔は広く、人が画面を観察した際に、滑らかさのない、隙間のある映像として知覚されてしまう。
【解決手段】
裸眼立体視ディスプレイであって,二次元映像表示装置と,光学素子とを有し,前記光学素子が有する、前記二次元映像表示装置から出射した光の拡散と偏向を同時に行う構造によって立体映像を表示することを特徴とする裸眼立体視ディスプレイ。
プロジェクタから投影された光線は、マイクロレンズを通ったあと、非常に小さな領域(この領域を以下,偏向支点と呼ぶ)に集光され、この領域を支点として,指向性の光線として拡がるため、人が立体視ディスプレイを観察する際に、非常に小さな画素として認識される。現実的には偏向支点どうしの間隔は広く、人が画面を観察した際に、滑らかさのない、隙間のある映像として知覚されてしまう。
【解決手段】
裸眼立体視ディスプレイであって,二次元映像表示装置と,光学素子とを有し,前記光学素子が有する、前記二次元映像表示装置から出射した光の拡散と偏向を同時に行う構造によって立体映像を表示することを特徴とする裸眼立体視ディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裸眼立体視ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開2008−139524号公報(特許文献1)がある。この公報には、プロジェクタから投影された光線は、マイクロレンズアレイを通った時に偏向し、指向性の光線として拡がるため、人の左右の目に異なる光線が入射し、立体映像として知覚する技術が開示されている.このように光線を何らかの方法によって偏向する技術を用いて、その偏向した光線を人が見ることにより立体知覚が可能となる。ここで、「偏向」とは、光の進行方向を変えることである。また、一般に、物質内を光が通過する時、微視的には、物質を構成する原子や分子に光が散乱されたり、構造的な不連続部分で光が回折されたりする。これが、巨視的には、光の拡散、あるいは屈折として観測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−139524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1には、プロジェクタから投影された光線は、マイクロレンズを通ったあと、非常に小さな領域(この領域を以下、偏向支点と呼ぶ)に集光され、この領域を支点として、指向性の光線として拡がるため、人が立体視ディスプレイを観察する際に立体画像として認識され、偏向支点に集まった光が非常に小さな画素として認識される。
【0005】
プロジェクタが十分密に並び、となりあう上述の偏向支点どうしが十分に近ければ、問題ないが、現実的にはその間隔は広く、人が画面を観察した際に、滑らかさのない、隙間のある映像として知覚されてしまう。このように画素間の隙間を知覚されてしまうと、画素数としては多く存在していても、立体感や画質感が損なわれるという結果となってしまうという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、プロジェクタを密に並べることなく、表示される立体映像が滑らかとなり、立体感、画質感を向上した裸眼立体視ディスプレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、裸眼立体視ディスプレイであって、二次元映像表示装置と、光学素子とを有し、前記光学素子が前記二次元映像表示装置から出射した光の拡散と偏向を同時に行い立体映像を表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、表示される立体映像が滑らかとなり、立体感、画質感を向上した裸眼立体視ディスプレイを提供することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】裸眼立体視ディスプレイの構成図の例である。
【図2】光学素子の例である。
【図3】光学素子の例である。
【図4】光学素子の例である。
【図5】光学素子の例である。
【図6】光学素子の例である。
【図7】光学素子の例である。
【図8】光学素子の例である。
【図9】裸眼立体視ディスプレイの構成図の例である。
【図10】裸眼立体視ディスプレイの構成図の例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施例を、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0011】
本実施例では、拡散効果と偏向効果を同時に持つ光学素子アレイを有する裸眼立体視ディスプレイの例を説明する。
【0012】
図1は、本実施例における裸眼立体視ディスプレイの構成図の例である。
【0013】
裸眼立体視ディスプレイは、二次元映像表示デバイス1、光学素子2、を有する。
【0014】
二次元映像表示デバイス1から出射した光線は光学素子2で偏向され、図1の右側からユーザが観察した時に、右目3、左目4に、それぞれ別の光線5、6が入射する。違う色や輝度を持つ光線が右目3と左目4入射するため、裸眼で立体視が可能となる。二次元映像表示デバイス1は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、電界放出ディスプレイ、プロジェクタなどの一般的な映像表示装置として用いられているものであれば良い。
【0015】
光学素子2は、複数の単光学素子を有する.通常、単光学素子は、光軸が格子上に並んだり、光軸が最密充填構造の中心に一致するなどや何らかの規則に沿って並べられている。ここで光軸とは、単光学素子の中心を通り、単光学素子の入射面に垂直な直線である。単光学素子がレンズの場合は、光軸はレンズ中心を通りレンズ面に垂直な直線となる。
【0016】
図2は、単光学素子の構造を単光学素子の光軸を含む面で切断して見た例である。
【0017】
単光学素子21は、拡散素子22を含んでいる。単光学素子21は、通常レンズと呼ばれる素子で、可視光に対する屈折率が1から2の間であり、また、可視光に対して透過率50%以上である材質から出来ている。単光学素子21の形状は、片側が半球面で、その逆側が平面であることが一般的であるが、両側が球面であっても良い。
【0018】
一般に、従来技術では、単光学素子21は、直方体の拡散板と半球のレンズの貼りあわせにより実現している。また、直方体のみ、あるいは、直方体と半球との全体で光を散乱させ、半球の境界面で光を偏向させる。
【0019】
拡散素子22は、大きさが均一でない粒子状のもので、光を散乱させることによって光を全体として拡散させる機能を有する。拡散素子22は、単光学素子21の大きさに比べて十分小さい(可視光の波長程度)。
【0020】
図3は、単光学素子の構造を示す別の例である。
【0021】
単光学素子31は、片側球面、その逆側が平面の形状を有するが、球面部分の形状に対して、最大で元の球面の曲率半径に対して10%程度の長さのランダムな形状歪みを有する。ここで、ランダムとは、非規則的であることをさすが、コンピュータの乱数生成プログラムにより生成された乱数などを用いても良い。このランダムな形状歪によって片側球面の境界面で個々の光をランダムに屈折させて光の散乱を生じさせる。その結果、図3に示す構造は、形状歪による散乱と、球面による偏向の効果を持つ。
【0022】
図4は、単光学素子の構造を示す別の例である。
【0023】
単光学素子41は、透過部42、非透過部43、拡散素子22を有する。透過部42と拡散素子22は完全に分離されているのではなく、透過部42の一部に拡散素子22が混入した状態である。隣り合う非透過部43の間隔は、可視光の波長の数倍以上である。複数の非透過部43によって回折レンズが構成され、特定の向きに光を偏向させる。
【0024】
図5は、単光学素子の構造を示す別の例である。
【0025】
単光学素子41は、透過部42、非透過部43を有する。隣り合う非透過部43の間隔は、基準の長さに比べて10%程度のランダムな長さの変動幅を有する。この長さの変動幅は、可視光の波長の範囲よりも十分大きいものとする。複数の非透過部43によって回折レンズが構成され、特定の向きに光を偏向させる。
【0026】
図6は、単光学素子の構造を示す別の例である。
【0027】
単光学素子61は、複数の凸部62、複数の凹部63、拡散粒子22を有する。複数の凸部62と凹部63は単一の物質で構成されており、単光学素子の内部に拡散粒子22を含んでいる。凸部62と凹部63の境界の不連続部分から光の回折波が発生し、全体として回折レンズが構成され、特定の向きに光が偏向される。
【0028】
図7は、単光学素子の構造を示す別の例である。
【0029】
単光学素子61は、複数の凸部62、複数の凹部63を有する。複数の凸部62と凹部63のそれぞれ幅が該単一の凸部62や凹部63の基準の長さaに比べてランダムに10%程度長さが異なる形状を有する。図5に示した構造と同様に、凸部62や凹部63の基準の長さaに対する上記幅のランダムな変動幅は、可視光の波長の範囲よりも十分大きいものとする。複数の凸部62と凹部63によって回折レンズが構成され、特定の向きに光を偏向させる。
【0030】
ここで、上記の図2〜図8に示した各構造をまとめると以下のようになる。
【0031】
図2及び3に示した単光学素子を複数個配列させた光学素子2は、半球面の形状を用いて、光を偏向させる半球面レンズである。図4及び5に示した単光学素子を複数個配列させた光学素子2は、透過部と非透過部を用いて光の透過の有無、即ち、光の振幅を制御することによって光を偏向させる振幅型回折格子レンズである。図6及び7に示した単光学素子を複数個配列させた光学素子2は、凸部と凹部を用いて光の透過行路の差、即ち、光の位相を制御することによって光を偏向させる位相型回折格子レンズである。さらに、図2、4及び6に示した単光学素子を複数個配列させた光学素子2は、単光学素子の内部に含まれた多数の拡散素子によって光を拡散するものであり、図3、5及び7に示した単光学素子を複数個配列させた光学素子2は、単光学素子の表面上に設けた構造の寸法をランダムに変動させることによって光を拡散するものである。
【0032】
図8は、単光学素子の構造を示す別の例である。
【0033】
単光学素子81は、計算機合成ホログラムである。この単光学素子81は、例えば、特殊なフィルムに形成されたホログラムパターンである。回折格子におけるパターンが一定であるのに対して、計算機合成ホログラムは任意のパターンを採用できる。図8に示したホログラムは、入射した光を散乱し、かつ、偏向させた光を出す。
【0034】
本発明の実施の形態においては、光学素子は二次元映像ディスプレイの画素と光学素子の単光学素子の周期に依存するモアレを減らす効果があり、立体映像の画質が向上する。
【実施例2】
【0035】
本実施例では、拡散効果と偏向効果を同時に持つ光学素子アレイを有するプロジェクタ方式裸眼立体視ディスプレイの例を説明する。
【0036】
図9は、本実施例の裸眼立体視ディスプレイの構成図である。
【0037】
図1の二次元映像表示デバイス1としてプロジェクタ91を用いたものである。その他の構成は、既に説明した図1に示された同一の符号を付された構成と、同一の機能を有するので、その説明は省略する。
【0038】
図1の構成との大きな違いは、プロジェクタ91を用いた場合、プロジェクタ91と光学素子2との距離が二次元映像表示デバイス1と光学素子2との距離よりも長くなる。実施例1の二次元映像表示デバイス1と光学素子2の距離は、通常、光学素子の焦点距離fにほぼ等しいのに対して、図9の構成では、プロジェクタ91と光学素子2の距離は、プロジェクタ91の焦点距離f’にほぼ等しくなる。通常f’>fである。
【0039】
本実施例においても、図9に示す光学素子2として図4〜図8に示した構造、あるいは光学素子2を構成する複数の単光学素子として図2及び図3に示した構造を適用できる。
【実施例3】
【0040】
本実施例では、拡散効果と偏向効果を同時に持つ光学素子アレイを有するマルチプロジェクタ方式裸眼立体視ディスプレイの例を説明する。
【0041】
図10は、本実施例の裸眼立体視ディスプレイの構成図である。
【0042】
図1の二次元映像表示デバイス1としてプロジェクタ群101を用いたものである。その他の構成は、既に説明した図1に示された同一の符号を付された構成と、同一の機能を有するので、その説明は省略する。本実施例においても、図9に示す光学素子2として図4〜図8に示した構造、あるいは光学素子2を構成する複数の単光学素子として図2及び図3に示した構造を適用できる。
【0043】
本構成では、複数台プロジェクタを用いているため、映像が明るくなり、また光線数が向上するため画質が向上する効果がある。また、光学素子が拡散効果を持つため、画素形状を大きくする効果があり、隣り合うプロジェクタより出射された光線が適度に混じりあい、滑らかで自然な立体映像の表示が可能となる。
【0044】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 二次元映像表示デバイス
2 光学素子
3 右目
4 左目
5 光線
6 光線
21 単光学素子
22 拡散素子
31 単光学素子
41 単光学素子
42 透過部
43 非透過部
61 単光学素子
62 凸部
63 凹部
81 単光学素子
91 プロジェクタ
101 プロジェクタ群
112 単光学素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、裸眼立体視ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開2008−139524号公報(特許文献1)がある。この公報には、プロジェクタから投影された光線は、マイクロレンズアレイを通った時に偏向し、指向性の光線として拡がるため、人の左右の目に異なる光線が入射し、立体映像として知覚する技術が開示されている.このように光線を何らかの方法によって偏向する技術を用いて、その偏向した光線を人が見ることにより立体知覚が可能となる。ここで、「偏向」とは、光の進行方向を変えることである。また、一般に、物質内を光が通過する時、微視的には、物質を構成する原子や分子に光が散乱されたり、構造的な不連続部分で光が回折されたりする。これが、巨視的には、光の拡散、あるいは屈折として観測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−139524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1には、プロジェクタから投影された光線は、マイクロレンズを通ったあと、非常に小さな領域(この領域を以下、偏向支点と呼ぶ)に集光され、この領域を支点として、指向性の光線として拡がるため、人が立体視ディスプレイを観察する際に立体画像として認識され、偏向支点に集まった光が非常に小さな画素として認識される。
【0005】
プロジェクタが十分密に並び、となりあう上述の偏向支点どうしが十分に近ければ、問題ないが、現実的にはその間隔は広く、人が画面を観察した際に、滑らかさのない、隙間のある映像として知覚されてしまう。このように画素間の隙間を知覚されてしまうと、画素数としては多く存在していても、立体感や画質感が損なわれるという結果となってしまうという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、プロジェクタを密に並べることなく、表示される立体映像が滑らかとなり、立体感、画質感を向上した裸眼立体視ディスプレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、裸眼立体視ディスプレイであって、二次元映像表示装置と、光学素子とを有し、前記光学素子が前記二次元映像表示装置から出射した光の拡散と偏向を同時に行い立体映像を表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、表示される立体映像が滑らかとなり、立体感、画質感を向上した裸眼立体視ディスプレイを提供することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】裸眼立体視ディスプレイの構成図の例である。
【図2】光学素子の例である。
【図3】光学素子の例である。
【図4】光学素子の例である。
【図5】光学素子の例である。
【図6】光学素子の例である。
【図7】光学素子の例である。
【図8】光学素子の例である。
【図9】裸眼立体視ディスプレイの構成図の例である。
【図10】裸眼立体視ディスプレイの構成図の例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施例を、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0011】
本実施例では、拡散効果と偏向効果を同時に持つ光学素子アレイを有する裸眼立体視ディスプレイの例を説明する。
【0012】
図1は、本実施例における裸眼立体視ディスプレイの構成図の例である。
【0013】
裸眼立体視ディスプレイは、二次元映像表示デバイス1、光学素子2、を有する。
【0014】
二次元映像表示デバイス1から出射した光線は光学素子2で偏向され、図1の右側からユーザが観察した時に、右目3、左目4に、それぞれ別の光線5、6が入射する。違う色や輝度を持つ光線が右目3と左目4入射するため、裸眼で立体視が可能となる。二次元映像表示デバイス1は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、電界放出ディスプレイ、プロジェクタなどの一般的な映像表示装置として用いられているものであれば良い。
【0015】
光学素子2は、複数の単光学素子を有する.通常、単光学素子は、光軸が格子上に並んだり、光軸が最密充填構造の中心に一致するなどや何らかの規則に沿って並べられている。ここで光軸とは、単光学素子の中心を通り、単光学素子の入射面に垂直な直線である。単光学素子がレンズの場合は、光軸はレンズ中心を通りレンズ面に垂直な直線となる。
【0016】
図2は、単光学素子の構造を単光学素子の光軸を含む面で切断して見た例である。
【0017】
単光学素子21は、拡散素子22を含んでいる。単光学素子21は、通常レンズと呼ばれる素子で、可視光に対する屈折率が1から2の間であり、また、可視光に対して透過率50%以上である材質から出来ている。単光学素子21の形状は、片側が半球面で、その逆側が平面であることが一般的であるが、両側が球面であっても良い。
【0018】
一般に、従来技術では、単光学素子21は、直方体の拡散板と半球のレンズの貼りあわせにより実現している。また、直方体のみ、あるいは、直方体と半球との全体で光を散乱させ、半球の境界面で光を偏向させる。
【0019】
拡散素子22は、大きさが均一でない粒子状のもので、光を散乱させることによって光を全体として拡散させる機能を有する。拡散素子22は、単光学素子21の大きさに比べて十分小さい(可視光の波長程度)。
【0020】
図3は、単光学素子の構造を示す別の例である。
【0021】
単光学素子31は、片側球面、その逆側が平面の形状を有するが、球面部分の形状に対して、最大で元の球面の曲率半径に対して10%程度の長さのランダムな形状歪みを有する。ここで、ランダムとは、非規則的であることをさすが、コンピュータの乱数生成プログラムにより生成された乱数などを用いても良い。このランダムな形状歪によって片側球面の境界面で個々の光をランダムに屈折させて光の散乱を生じさせる。その結果、図3に示す構造は、形状歪による散乱と、球面による偏向の効果を持つ。
【0022】
図4は、単光学素子の構造を示す別の例である。
【0023】
単光学素子41は、透過部42、非透過部43、拡散素子22を有する。透過部42と拡散素子22は完全に分離されているのではなく、透過部42の一部に拡散素子22が混入した状態である。隣り合う非透過部43の間隔は、可視光の波長の数倍以上である。複数の非透過部43によって回折レンズが構成され、特定の向きに光を偏向させる。
【0024】
図5は、単光学素子の構造を示す別の例である。
【0025】
単光学素子41は、透過部42、非透過部43を有する。隣り合う非透過部43の間隔は、基準の長さに比べて10%程度のランダムな長さの変動幅を有する。この長さの変動幅は、可視光の波長の範囲よりも十分大きいものとする。複数の非透過部43によって回折レンズが構成され、特定の向きに光を偏向させる。
【0026】
図6は、単光学素子の構造を示す別の例である。
【0027】
単光学素子61は、複数の凸部62、複数の凹部63、拡散粒子22を有する。複数の凸部62と凹部63は単一の物質で構成されており、単光学素子の内部に拡散粒子22を含んでいる。凸部62と凹部63の境界の不連続部分から光の回折波が発生し、全体として回折レンズが構成され、特定の向きに光が偏向される。
【0028】
図7は、単光学素子の構造を示す別の例である。
【0029】
単光学素子61は、複数の凸部62、複数の凹部63を有する。複数の凸部62と凹部63のそれぞれ幅が該単一の凸部62や凹部63の基準の長さaに比べてランダムに10%程度長さが異なる形状を有する。図5に示した構造と同様に、凸部62や凹部63の基準の長さaに対する上記幅のランダムな変動幅は、可視光の波長の範囲よりも十分大きいものとする。複数の凸部62と凹部63によって回折レンズが構成され、特定の向きに光を偏向させる。
【0030】
ここで、上記の図2〜図8に示した各構造をまとめると以下のようになる。
【0031】
図2及び3に示した単光学素子を複数個配列させた光学素子2は、半球面の形状を用いて、光を偏向させる半球面レンズである。図4及び5に示した単光学素子を複数個配列させた光学素子2は、透過部と非透過部を用いて光の透過の有無、即ち、光の振幅を制御することによって光を偏向させる振幅型回折格子レンズである。図6及び7に示した単光学素子を複数個配列させた光学素子2は、凸部と凹部を用いて光の透過行路の差、即ち、光の位相を制御することによって光を偏向させる位相型回折格子レンズである。さらに、図2、4及び6に示した単光学素子を複数個配列させた光学素子2は、単光学素子の内部に含まれた多数の拡散素子によって光を拡散するものであり、図3、5及び7に示した単光学素子を複数個配列させた光学素子2は、単光学素子の表面上に設けた構造の寸法をランダムに変動させることによって光を拡散するものである。
【0032】
図8は、単光学素子の構造を示す別の例である。
【0033】
単光学素子81は、計算機合成ホログラムである。この単光学素子81は、例えば、特殊なフィルムに形成されたホログラムパターンである。回折格子におけるパターンが一定であるのに対して、計算機合成ホログラムは任意のパターンを採用できる。図8に示したホログラムは、入射した光を散乱し、かつ、偏向させた光を出す。
【0034】
本発明の実施の形態においては、光学素子は二次元映像ディスプレイの画素と光学素子の単光学素子の周期に依存するモアレを減らす効果があり、立体映像の画質が向上する。
【実施例2】
【0035】
本実施例では、拡散効果と偏向効果を同時に持つ光学素子アレイを有するプロジェクタ方式裸眼立体視ディスプレイの例を説明する。
【0036】
図9は、本実施例の裸眼立体視ディスプレイの構成図である。
【0037】
図1の二次元映像表示デバイス1としてプロジェクタ91を用いたものである。その他の構成は、既に説明した図1に示された同一の符号を付された構成と、同一の機能を有するので、その説明は省略する。
【0038】
図1の構成との大きな違いは、プロジェクタ91を用いた場合、プロジェクタ91と光学素子2との距離が二次元映像表示デバイス1と光学素子2との距離よりも長くなる。実施例1の二次元映像表示デバイス1と光学素子2の距離は、通常、光学素子の焦点距離fにほぼ等しいのに対して、図9の構成では、プロジェクタ91と光学素子2の距離は、プロジェクタ91の焦点距離f’にほぼ等しくなる。通常f’>fである。
【0039】
本実施例においても、図9に示す光学素子2として図4〜図8に示した構造、あるいは光学素子2を構成する複数の単光学素子として図2及び図3に示した構造を適用できる。
【実施例3】
【0040】
本実施例では、拡散効果と偏向効果を同時に持つ光学素子アレイを有するマルチプロジェクタ方式裸眼立体視ディスプレイの例を説明する。
【0041】
図10は、本実施例の裸眼立体視ディスプレイの構成図である。
【0042】
図1の二次元映像表示デバイス1としてプロジェクタ群101を用いたものである。その他の構成は、既に説明した図1に示された同一の符号を付された構成と、同一の機能を有するので、その説明は省略する。本実施例においても、図9に示す光学素子2として図4〜図8に示した構造、あるいは光学素子2を構成する複数の単光学素子として図2及び図3に示した構造を適用できる。
【0043】
本構成では、複数台プロジェクタを用いているため、映像が明るくなり、また光線数が向上するため画質が向上する効果がある。また、光学素子が拡散効果を持つため、画素形状を大きくする効果があり、隣り合うプロジェクタより出射された光線が適度に混じりあい、滑らかで自然な立体映像の表示が可能となる。
【0044】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 二次元映像表示デバイス
2 光学素子
3 右目
4 左目
5 光線
6 光線
21 単光学素子
22 拡散素子
31 単光学素子
41 単光学素子
42 透過部
43 非透過部
61 単光学素子
62 凸部
63 凹部
81 単光学素子
91 プロジェクタ
101 プロジェクタ群
112 単光学素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
裸眼立体視ディスプレイは,二次元映像表示装置と,光学素子とを有し,前記光学素子を構成する複数の単光学素子のそれぞれは、前記二次元映像表示装置から出射した光の拡散と偏向を同時に行う構造を有することを特徴とする裸眼立体視ディスプレイ。
【請求項2】
前記裸眼立体視ディスプレイにおいて,該光学素子を構成する単光学素子が半球面レンズであり,前記単光学素子の内部に拡散粒子を有することを特徴とする請求項1に記載の裸眼立体視ディスプレイ。
【請求項3】
前記裸眼立体視ディスプレイにおいて,該光学素子を構成する単光学素子が半球面レンズであり,該半球面レンズの球面部分の形状が球面の曲率の最大10%の凹凸を持つことを特徴とする請求項1に記載の裸眼立体視ディスプレイ。
【請求項4】
前記裸眼立体視ディスプレイにおいて,該光学素子を構成する単光学素子が透過部と非透過部からなる振幅型回折格子レンズであり,前記単光学素子の透過部の内部に拡散粒子を有することを特徴とする請求項1に記載の裸眼立体視ディスプレイ。
【請求項5】
前記裸眼立体視ディスプレイにおいて,該光学素子を構成する単光学素子が透過部と非透過部からなる振幅型回折格子レンズであり,前記単光学素子の各非透過部の長さが最大10%の長さの変動幅を持つことを特徴とする請求項1に記載の裸眼立体視ディスプレイ。
【請求項6】
前記裸眼立体視ディスプレイにおいて,該光学素子を構成する単光学素子が凸部と凹部からなる位相型回折格子レンズであり,前記単光学素子の内部に拡散粒子を有することを特徴とする請求項1に記載の裸眼立体視ディスプレイ。
【請求項7】
前記裸眼立体視ディスプレイにおいて,該光学素子を構成する単光学素子が凸部と凹部からなる位相型回折格子レンズであり,前記単光学素子の各凸部と凹部のそれぞれ長さがそれぞれの最大10%の変動幅を持つことを特徴とする請求項1に記載の裸眼立体視ディスプレイ。
【請求項8】
前記裸眼立体視ディスプレイにおいて,該光学素子を構成する単光学素子が計算機合成ホログラフィであることを特徴とする請求項1に記載の裸眼立体視ディスプレイ。
【請求項9】
前記裸眼立体視ディスプレイであって,前記二次元映像表示装置がプロジェクタであることを特徴とする請求項2から8のいずれかに記載の裸眼立体視ディスプレイ。
【請求項10】
前記裸眼立体視ディスプレイであって,前記二次元映像表示装置が複数台のプロジェクタで構成されることを特徴とする請求項2から8のいずれかに記載の裸眼立体視ディスプレイ。
【請求項1】
裸眼立体視ディスプレイは,二次元映像表示装置と,光学素子とを有し,前記光学素子を構成する複数の単光学素子のそれぞれは、前記二次元映像表示装置から出射した光の拡散と偏向を同時に行う構造を有することを特徴とする裸眼立体視ディスプレイ。
【請求項2】
前記裸眼立体視ディスプレイにおいて,該光学素子を構成する単光学素子が半球面レンズであり,前記単光学素子の内部に拡散粒子を有することを特徴とする請求項1に記載の裸眼立体視ディスプレイ。
【請求項3】
前記裸眼立体視ディスプレイにおいて,該光学素子を構成する単光学素子が半球面レンズであり,該半球面レンズの球面部分の形状が球面の曲率の最大10%の凹凸を持つことを特徴とする請求項1に記載の裸眼立体視ディスプレイ。
【請求項4】
前記裸眼立体視ディスプレイにおいて,該光学素子を構成する単光学素子が透過部と非透過部からなる振幅型回折格子レンズであり,前記単光学素子の透過部の内部に拡散粒子を有することを特徴とする請求項1に記載の裸眼立体視ディスプレイ。
【請求項5】
前記裸眼立体視ディスプレイにおいて,該光学素子を構成する単光学素子が透過部と非透過部からなる振幅型回折格子レンズであり,前記単光学素子の各非透過部の長さが最大10%の長さの変動幅を持つことを特徴とする請求項1に記載の裸眼立体視ディスプレイ。
【請求項6】
前記裸眼立体視ディスプレイにおいて,該光学素子を構成する単光学素子が凸部と凹部からなる位相型回折格子レンズであり,前記単光学素子の内部に拡散粒子を有することを特徴とする請求項1に記載の裸眼立体視ディスプレイ。
【請求項7】
前記裸眼立体視ディスプレイにおいて,該光学素子を構成する単光学素子が凸部と凹部からなる位相型回折格子レンズであり,前記単光学素子の各凸部と凹部のそれぞれ長さがそれぞれの最大10%の変動幅を持つことを特徴とする請求項1に記載の裸眼立体視ディスプレイ。
【請求項8】
前記裸眼立体視ディスプレイにおいて,該光学素子を構成する単光学素子が計算機合成ホログラフィであることを特徴とする請求項1に記載の裸眼立体視ディスプレイ。
【請求項9】
前記裸眼立体視ディスプレイであって,前記二次元映像表示装置がプロジェクタであることを特徴とする請求項2から8のいずれかに記載の裸眼立体視ディスプレイ。
【請求項10】
前記裸眼立体視ディスプレイであって,前記二次元映像表示装置が複数台のプロジェクタで構成されることを特徴とする請求項2から8のいずれかに記載の裸眼立体視ディスプレイ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−208211(P2012−208211A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72210(P2011−72210)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【Fターム(参考)】
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