説明

製版装置

【課題】スクリーンマスター内に穿孔した画像情報領域よりも外側の余白領域にスクリーンマスターの向き情報を穿孔する。
【解決手段】印刷するための画像情報や文字情報を穿孔して画像領域MGを形成すると共に、画像領域MGよりも外側に印刷しない余白領域MYを形成して、スクリーンマスターMを製版する製版手段30を備えた製版装置10において、スクリーンマスターMの表裏の向きや、上下の向き又は左右の向きを示す向き情報を、製版手段30により余白領域MYに穿孔することを特徴とする製版装置10を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被印刷物上に画像情報や文字情報を印刷するためのスクリーンマスターを製版する製版手段を備えた製版装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、名刺や、Tシャツなどの布地や、電子機器の操作パネルなどに印刷する場合には、周知のスクリーン印刷装置が適用されている。
【0003】
この種のスクリーン印刷装置では、製版装置内に設けたサーマルヘッドにより孔版原紙に1版分の画像情報や文字情報を穿孔してスクリーンマスターを予め製版し、このスクリーンマスター上に滴下したインクをスキージにより広げて被印刷物上に画像情報や文字情報をスクリーン印刷している。
【0004】
この際、スクリーンマスターを製版するための孔版原紙は、熱可塑性樹脂フィルム上にポリエステルなどの繊維を織った織布を貼り合わせて帯状に形成されている。そして、長尺な孔版原紙は円環状のロールに巻き付けられており、この孔版原紙にサーマルヘッドで1版分の画像情報や文字情報を穿孔した後に、製版済みの孔版原紙をカッターにより1版分の長さに切断して1版分のスクリーンマスターを得ている。
【0005】
ところで、製版装置によりスクリーンマスターを製版するときに、サーマルヘッドにより1版分の画像情報や文字情報を印字して画像領域を形成すると同時に、この画像領域よりも外側に余白領域を形成して、この余白領域に複数の位置決めマークを印字するプリンタがある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1に開示されたプリンタでは、ここでの図示を省略するが、カラー印刷する場合に、Y(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン)の他にB(ブラック)のインクに対応して各色用のスクリーンマスター(公報では孔版原紙と記載されている)を製版し、各色用のスクリーンマスターを用いて被印刷物上に3回(Y,M,C)もしくは4回(Y,M,C,B)に分けてカラー印刷している。
【0007】
この際、スクリーンマスターの画像領域よりも外側に形成された余白領域に沿って透明な枠が貼着されており、この透明な枠の各コーナ部に基準位置マーク(トンボ)が印刷されている。
【0008】
一方、各色用のスクリーンマスターには、透明な枠の各コーナ部位に印刷した基準位置マークと対応して複数の位置決めマークがスクリーンマスターの画像領域よりも外側の余白領域に印字されている。
【0009】
従って、枠に対して各インク色ごとにスクリーンマスターを入れ換える場合に、透明な枠に印刷した複数の基準位置マークと、各色用のスクリーンマスターに印字した複数の位置決めマークとを合致させることにより、位置ずれなくカラー印刷ができる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平3−236969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、特許文献1に開示されたプリンタによれば、各色用のスクリーンマスターを用いてカラー印刷するときに、透明な枠に対して各色用のスクリーンマスターを位置ずれなくセットできるので、色ずれのない良好なカラー印刷が得られる。
【0012】
しかしながら、サーマルヘッドにより1版分の画像情報や文字情報が穿孔されたスクリーンマスターにおいて、画像からでは表裏の向きが判別しにくいし、又、画像でしか上下の向き又は左右の向きが判別できない。また、スクリーンマスターに穿孔された画像情報や文字情報に対して微小な画像違いを区別できない。
【0013】
このために、表裏の向きや、上下の向き又は左右の向きが判別しにくいスクリーンマスターを製版した場合や、微小な画像違いのスクリーンマスターが複数存在する場合に、枠に対してスクリーンマスターをセットミスしたり、あるいは、スクリーンマスターの取り違いをしてしまい、被印刷物上に目的の印刷物が得られないなどの損失が発生してしまう。
【0014】
そこで、印刷するための画像情報や文字情報を穿孔して画像領域を形成すると共に、画像領域よりも外側に印刷しない余白領域を形成して、スクリーンマスターを製版手段により製版するときに、余白領域にスクリーンマスターの表裏の向きや、上下の向き又は左右の向きを示す向き情報を穿孔でき、更に、余白領域に画像情報に付随する画像付随情報や印刷条件情報も穿孔できる製版装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、請求項1に記載の発明は、印刷するための画像情報や文字情報を穿孔して画像領域を形成すると共に、前記画像領域よりも外側に印刷しない余白領域を形成して、スクリーンマスターを製版する製版手段を備えた製版装置において、
前記スクリーンマスターの表裏の向きや、上下の向き又は左右の向きを示す向き情報を、前記製版手段により前記余白領域に穿孔することを特徴とする製版装置である。
【0016】
また、請求項2に記載の発明は、前記画像情報に付随する画像付随情報及び前記スクリーンマスターを用いて印刷するときの印刷条件情報の少なくとも一方の情報を、前記製版手段により前記余白領域に穿孔することを特徴とする請求項1に記載の製版装置である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の製版装置によると、印刷するための画像情報や文字情報を穿孔して画像領域を形成すると共に、画像領域よりも外側に印刷しない余白領域に形成してスクリーンマスターを製版手段により製版する際に、余白領域にスクリーンマスターの表裏の向きや、上下の向き又は左右の向きを示す向き情報を製版手段により穿孔しているので、スクリーンマスター内に穿孔した画像からでは判別しにくい表裏の向きや、画像でしか判別できない上下の向き又は左右の向きを、余白領域に表示された向き情報により目視で確認できるので、印刷時に用いる枠に対してスクリーンマスターを正しい向きにセットすることができると共に、このスクリーンマスターを用いて被印刷物上に印刷したときに目的の印刷物を得ることができる。
【0018】
また、請求項2に記載の製版装置によると、画像情報に付随する画像付随情報及びスクリーンマスターを用いて印刷するときの印刷条件情報の少なくとも一方の情報を、製版手段により余白領域に穿孔しているので、スクリーンマスターの余白領域に画像付随情報を表示した場合に、スクリーンマスター内に穿孔した画像に対する微小な画像違いを、余白領域に表示された画像付随情報により目視で確認できるので、微小な画像違いのスクリーンマスターが複数存在する場合でも、印刷時に用いる枠に対して所望のスクリーンマスターをセットミスなく取り付けることができる。
【0019】
また、スクリーンマスターの余白領域に印刷条件情報を表示した場合に、スクリーンマスターを使って印刷するときに、印刷条件情報が目視できるとユーザにとって有利であり、この印刷条件情報に従って被印刷物上にミスなく印刷することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る製版装置の外観を示した斜視図である。
【図2】(a)は図1に示した製版装置をイーイ矢視方向に断面して示した縦断面図であり、(b)は製版装置内に設けた製版手段を一部拡大して示した斜視図である。
【図3】(a),(b),(c)はスクリーン印刷時に下枠と上枠との間にスクリーンマスターを挟み込んでセットする状態を説明するための斜視図、縦断面図,“ロ部”拡大図である。
【図4】製版済みのスクリーンマスターを示した平面図である。
【図5】本発明に係る製版装置内に設けた制御部を説明するための図である。
【図6】本発明に係る製版装置のブロック図である。
【図7】本発明に係る製版装置によって製版されたスクリーンマスターを用いて被印刷物上に印刷するスクリーン印刷装置を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明に係る製版装置の一実施例について、図1〜図7を参照して詳細に説明する。
【実施例】
【0022】
図1に示す如く、本発明に係る製版装置10は、例えば、後述するスクリーン印刷装置50(図7)に用いられるスクリーンマスターMを製版するものであり、この製版装置10はパソコンPCと接続されている。
【0023】
また、上記した製版装置10は、箱状に形成した筐体11の上方部位に蓋12が開閉自在に取り付けられており、蓋12を開くことによりスクリーンマスターMを製版するための素材となる孔版原紙G(図2)が装着可能になっている。
【0024】
また、筐体11の前方部位には、製版済みの孔版原紙G(図2)から1版分の長さに切断されたスクリーンマスターMを排出するための開口部11aが形成されており、この開口部11aに沿ってスクリーンマスターMを受ける受台13が取り付けられている。更に、筐体11の右上方部位に操作パネル14が設けられている。
【0025】
ここで、製版装置10の構成についてより具体的に説明すると、図2(a)に示す如く、筐体11内には、装置全体を制御するための制御部20が適宜な場所に設置されており、この制御部20は、コネクタCを介してパソコンPCと接続されることで、両者20,PC間で各種の信号を送受信可能になっている。尚、制御部20については後で述べる。
【0026】
また、筐体11内には、スクリーンマスターMを製版するための製版手段30が設けられている。
【0027】
上記した製版手段30では、筐体11内の右方に設けたマスターホルダー11b内に長尺な孔版原紙Gを巻回した円環状の孔版原紙ロール31が回転自在に支持されていると共に、この孔版原紙ロール31はマスターホルダー11bに対して着脱可能に支持されている。
【0028】
上記した孔版原紙Gは、先に背景技術で説明したように、熱可塑性樹脂フィルム上にポリエステルなどの繊維を織った織布を貼り合わせて帯状に形成されたものである。
【0029】
また、筐体11内で孔版原紙ロール31より下流には、ガイドローラ32と、プラテン用パルスモータ33によって図示反時計方向に所定の一定速度で回転駆動されるプラテンローラ34と、複数の発熱体35aが紙面垂直方向に一列に配列されて孔版原紙Gをプラテンローラ34側に押圧しながら複数の発熱体35aの熱により孔版原紙Gに情報を穿孔するサーマルヘッド35と、サーマルヘッド35により穿孔された孔版原紙Gを1版分の長さに切断して1版分のスクリーンマスターMを得るための上下一対のカッター部材36と、プラテン用パルスモータ33を共用して回転駆動されて製版済みのスクリーンマスターMを搬送する上下一対のフィードローラ37と、製版済みのスクリーンマスターMを筐体11の開口部11aを経て受台13に向けて排出するように案内するガイド板38とが孔版原紙Gの搬送路に沿って上記順に設けられている。
【0030】
また、図2(b)に拡大して示す如く、孔版原紙Gは、矢印で示した搬送方向と直交する幅方向の寸法W1が後述の図3で説明する下枠51及び上枠52の外形サイズに略対応して設定されている。
【0031】
また、孔版原紙Gは、サーマルヘッド35によって印刷するための1版分の画像情報や文字情報を穿孔して画像領域MGが形成されていると共に、画像領域MGよりも外側に印刷しない余白領域MYが形成されている。
【0032】
そして、孔版原紙Gから画像領域MG及び余白領域MYを含んで1版分のスクリーンマスターMが上下一対のカッター部材36{図2(a)}により切断されている。
【0033】
一方、複数の発熱体35aが一列に配列されたサーマルヘッド35の幅方向の寸法W2は、孔版原紙Gの幅方向の寸法W1よりも大きく設定されており、これにより、後述するように、サーマルヘッド35によって孔版原紙G内に穿孔される画像領域MGよりも外側の余白領域MYにも情報を穿孔できるようになっている。
【0034】
尚、この実施例による製版手段30では、サーマルヘッド35を用いて孔版原紙Gに情報を穿孔しているが、これに限ることなく、不図示のレーザービームを孔版原紙Gに照射して、レーザービームの熱により孔版原紙Gに情報を穿孔する方法でも良い。
【0035】
ここで、図3(a)〜(c)に示す如く、上記した製版装置10によって製版されたスクリーンマスターMを用いてスクリーン印刷する場合には、スクリーンマスターMをスクリーン印刷時に用いる下枠51と上枠52との間に挿入し、両枠51,52でスクリーンマスターMの画像領域MGよりも外側に形成した余白領域MYを挟み込んでスクリーンマスターMをセットしている。
【0036】
即ち、図3(a)に示す如く、上記した下枠51は、矩形状に形成した枠部51aの内側に沿って矩形孔51bが貫通して形成されており、この矩形孔51bのサイズはスクリーンマスターM内で1版分の画像情報や文字情報を穿孔して形成した画像領域MGと同じ大きさに設定されている。また、下枠51の枠部51aの内周に沿ってガイド壁51a1が幅狭く且つ突出量が低く矩形状に突出形成されている。
【0037】
この際、下枠51の厚みTは、スクリーン印刷時のインク特性や、印刷する被印刷物TS(図7)などの印刷条件によって異なっており、上記した厚みTを零(0)に設定する場合もあり、厚みTを零(0)に設定する場合には下枠51を用いる必要がなくなる。
【0038】
一方、上記した上枠52も、下枠51と同様に、矩形状に形成した枠部52aの内側に沿って矩形孔52bが貫通して形成されており、この矩形孔52bのサイズは下枠51の枠部51aの内側に形成したガイド壁51a1の外形サイズにスクリーンマスターMの厚みを考慮した大きさに設定されている。
【0039】
また、下枠51の枠部51aの上面及び上枠52の枠部52aの上面には、スクリーンマスターMに対して表裏の向きや、上下の向き又は左右の向きを示す向き情報が少なくとも表示されている。この際、実施例では、枠部51a,52aの各上面の上部に「表面」,「TOP」が表示され、且つ、枠部51a,52aの各上面の下部に「END」が表示されている。
【0040】
また、スクリーンマスターMの画像領域MGの外側には、印刷しない余白領域MYが形成されており、この余白領域MYは下枠51の枠部51a及び上枠52の枠部52aと対向するようになっている。
【0041】
この際、スクリーンマスターMの外形サイズは、下枠51と上枠52との間にスクリーンマスターMを挟み込むときに、スクリーンマスターMの外周端を手で把持しながらテンションを加えることができるように余白領域MYの外形サイズよりも大きく設定されている。
【0042】
そして、図3(b),(c)に示す如く、スクリーンマスターMの余白領域MYに表示された表裏の向き、及び、上下の向き又は左右の向きを、下枠51の枠部51aに表示された表裏の向き、及び、上下の向き又は左右の向きと同じ方向に合わせた上で、下枠51の枠部51aの内側に沿って形成したガイド壁51a1上にスクリーンマスターMを載せて、スクリーンマスターMの画像領域MGをガイド壁51a1の内側に合致させている。
【0043】
この後、上方から上枠52の枠部52aをスクリーンマスターMを介して下枠51のガイド壁51a1の外側に嵌め込んで、スクリーンマスターMの外周端を手で把持しながらテンションを加えてスクリーンマスターMを上下の枠51,52間に緊張した状態で挟持させている。
【0044】
尚、下枠51を用いない場合には、スクリーンマスターMの余白領域MYに表示された表裏の向き、及び、上下の向き又は左右の向きを、上枠52の枠部52aに表示された表裏の向き、及び、上下の向き又は左右の向きと同じ方向に合わせた上で、スクリーンマスターMを上枠52の下面に貼着させれば良い。
【0045】
また、図4に示す如く、製版済みのスクリーンマスターMは、X軸及びY軸に対して左上コーナを原点(0,0)にして画像領域MG及び余白領域MYが設定されている。そして、スクリーンマスターMは、サーマルヘッド35(図2)により1版分の画像情報や文字情報を穿孔して画像領域MGが形成されると共に、画像領域MGよりも外側に形成された印刷しない余白領域MYに余白情報をサーマルヘッド35(図2)により穿孔している。
【0046】
上記したスクリーンマスターMの余白領域MYに表示する余白情報は、スクリーンマスターMの向き情報と、スクリーンマスターM内に穿孔した画像情報に付随する画像付随情報と、スクリーンマスターMを用いてスクリーン印刷する時の印刷条件情報とがあり、スクリーンマスターMの向き情報は必ず表示する必要があるが、画像付随情報及び印刷条件情報は必要に応じて表示すれば良いものである。
【0047】
以下、これらの各情報について具体的に説明する。
【0048】
まず、上記したスクリーンマスターMの向き情報は、スクリーンマスターMの表裏の向きを示すための文字又は記号と、スクリーンマスターMの上下の向き又は左右の向きを示すための文字又は記号とがサーマルヘッド35(図2)により穿孔されている。
【0049】
この際、実施例におけるスクリーンマスターMの向き情報の一例として、表裏の向きを示すために「表面」が余白領域MYの上部に表示され、また、上下の向きを示すために「TOP」と「END」とが余白領域MYの上部と下部に分かれて表示されているので、下枠51及び上枠52に表示した向き情報と対応できる。
【0050】
尚、スクリーンマスターMの上下の向き又は左右の向きは、上向き、下向き、左側、又は右側のうち少なくとも一つを表示していれば良く、また、「TOP」や「END」に限ることなく、「上部」,「下部」の文字や、「UP」,「DOWN」の文字や、「左」,「右」の文字や、「L」,「R」の文字や、「△」,「▽」の記号などいずれでも良い。
【0051】
従って、スクリーンマスターMの余白領域MYに向き情報を表示することにより、スクリーンマスターM内に穿孔した画像からでは判別しにくい表裏の向きや、画像でしか判別できない上下の向き又は左右の向きを、余白領域MYに表示された向き情報により目視で確認できるので、印刷時に用いる枠(例えば、下枠51及び上枠52)に対してスクリーンマスターMを正しい向きにセットすることができる共に、このスクリーンマスターMを用いて被印刷物TS(図7)上に印刷したときに目的の印刷物(図示せず)を得ることができる。
【0052】
次に、上記したスクリーンマスターMの画像付随情報は、スクリーンマスターMの画像領域MGに穿孔された画像情報に対して画像違いが判別できる記号、あるいは、文字(画像番号,画像名、画像ファイル名、作者、制作日時など)がサーマルヘッド35(図2)により穿孔されている。
【0053】
この際、実施例におけるスクリーンマスターMの画像付随情報の一例として、「画像ファイル名」が余白領域MYの上部に表示され、また、「制作日時」が余白領域MYの下部に表示されている。
【0054】
従って、スクリーンマスターMの余白領域MYに画像付随情報を表示した場合に、スクリーンマスターM内に穿孔した画像に対する微小な画像違いを、余白領域MYに表示された画像付随情報により目視で確認できるので、微小な画像違いのスクリーンマスターMが複数存在する場合でも、印刷時に用いる枠(例えば、下枠51及び上枠52)に対して所望のスクリーンマスターMをセットミスなく取り付けることができる。
【0055】
次に、上記したスクリーンマスターMの印刷条件情報は、製版済みのスクリーンマスターMを用いてスクリーン印刷設定が判別できる記号、あるいは、文字(インク色,印刷機、下枠及び上枠のフレームサイズ、下枠の厚みなど)がサーマルヘッド35(図2)により穿孔されている。
【0056】
この際、実施例におけるスクリーンマスターMの印刷条件情報の一例として、1色印刷を示すために「黒インク」が余白領域MYの下部に表示されている。
【0057】
従って、スクリーンマスターMの余白領域MYに印刷条件情報を表示した場合に、スクリーンマスターMを使って印刷するときに、印刷条件情報が目視できるとユーザにとって有利であり、この印刷条件情報に従って被印刷物TS(図7)上にミスなく印刷することができる。
【0058】
尚、カラー印刷する場合に、ここでの図示を省略するが、先に背景技術で説明したと同様に、スクリーンマスターMは複数のインク色に応じて複数製版されるので、下枠51及び上枠52は透明な材料を用い、これらの枠51,52の各コーナ部位に基準位置マーク(トンボ)を表示すると共に、枠51,52の各コーナ部位に表示した基準位置マークと対応して各色用のスクリーンマスターMの各コーナ部位に位置決めマークをサーマルヘッド35(図2)により穿孔した上で、枠51,52の基準位置マーク(トンボ)とスクリーンマスターMの位置決めマークとを合致させてセットすれば良い。
【0059】
次に、製版装置10(図2)内に設けた制御部20について、図5を用いて説明する。
【0060】
図5に示す如く、上記した制御部20は、この装置全体を制御するCPU20aと、製版装置10の動作プログラムや、スクリーンマスターMの余白領域MYに表示する余白情報を必要に応じて格納するROM20bと、製版装置10内で変更可能な情報などを一時的に格納するRAM20cとを有している。尚、余白情報が変更可能な情報であるときには、余白情報をROM20bに代えてRAM20c内に一時的に格納すれば良い。
【0061】
そして、制御部20は、前述したようにパソコンPCと送受信可能に接続されていると共に、図2を用いて説明した製版手段30を制御し、更に、後述する画像情報処理部21,余白情報処理部22,合成画像情報処理部23,サーマルヘッド駆動回路部24などを制御している。
【0062】
次に、本発明に係る製版装置10(図2)の動作について、図6を用いて説明する。
【0063】
図6に示す如く、本発明に係る製版装置10において、ユーザはパソコンPCを用いて画像情報や文字情報を作成し、この画像情報や文字情報をスクリーンマスターMの画像領域MGへの穿孔情報として画像情報処理部21に入力している。
【0064】
尚、この実施例では、スクリーンマスターMを製版するための画像情報や文字情報は、パソコンPCによって作成しているが、これに限られるものではなく、ここでの図示を省略するが、原稿読み取り装置から読み込んだ原稿による画像情報や文字情報を画像情報処理部21に入力することも可能である。
【0065】
また、ユーザは画像情報に対応して余白情報(向き情報,画像付随情報、印刷条件情報)をパソコンPCを用いて作成するか、又は、入力される画像情報に対して予め制御部20のROM20b内に余白情報(向き情報,画像付随情報、印刷条件情報)を格納している。
【0066】
そして、パソコンPCを用いて余白情報を作成した場合には、パソコンPCから余白情報をスクリーンマスターMの余白領域MYへの穿孔情報として余白情報処理部22に入力している。
【0067】
一方、制御部20のROM20b内に余白情報を予め格納しておいた場合には、画像情報が画像情報処理部21に入力されたときに、この画像情報と対応する余白情報をROM20b内から読み出して、読み出した余白情報を自動的に余白情報処理部22に入力している。
【0068】
尚、前述したように、余白情報が変更可能な情報であれば、RAM20c内に格納した余白情報を余白情報処理部22に入力すれば良い。
【0069】
この際、ユーザは、余白情報をパソコンPCで作成するか、それとも画像情報の入力に伴ってROM20b(又はRAM20c)内から自動的に読み出すかを選択できるので、使い勝手の良い製版装置10を提供できる。
【0070】
この後、画像情報処理部21に入力された画像情報と、余白情報処理部22に入力された余白情報とを合成画像処理部23に入力して、この合成画像処理部23で画像情報と余白情報とを合成して合成画像情報を得て、この合成画像情報をサーマルヘッド駆動回路部24に入力している。
【0071】
そして、孔版原紙Gが製版手段30内に設けたプラテンローラ34とサーマルヘッド35との間で挟持されながら主走査方向に搬送されるときに、サーマルヘッド駆動回路部24によってサーマルヘッド35の複数の発熱体35aを合成画像情報に基いて主走査方向と直交する副走査方向に走査することにより、孔版原紙Gは合成画像情報に基いて穿孔されるので、先に図4で示した状態のスクリーンマスターMが得られる。
【0072】
次に、製版済みのスクリーンマスターMを用いてスクリーン印刷するスクリーン印刷装置50について、図7を用いて簡略に説明する。
【0073】
図7に示す如く、スクリーン印刷装置50では、先に図3を用いて説明したように、スクリーンマスターMの余白領域MYに表示された余白情報のうちで向き情報(表裏の向き、上下の向き又は左右の向き)を、下枠51及び上枠52に表示された向き情報(表裏の向き、上下の向き又は左右の向き)に合わせると共に、下枠51と上枠52との間にスクリーンマスターMを挟み込んでセットしている。
【0074】
更に、スクリーンマスターMの余白領域MYに表示された余白情報のうちで画像付随情報及び印刷条件情報を確認して、スクリーンマスターMを上下の枠51,52間にセットしている。
【0075】
この後、下枠51側を例えばTシャツなどの被印刷物TS上に載置すると共に、上枠52の矩形孔52b内の上方からスクリーンマスターM上にインク53を滴下している。
【0076】
そして、ユーザはスクリーンマスターMのスキージ保持板54の上端部位を手で把持し、このスキージ保持板54の下端部位に一体的に固着させたスキージ55をスクリーンマスターMに沿って矢印方向に摺動させながらこのスキージ55でインク53をスクリーンマスターM上に広げるようにスキージングして、被印刷物TS上にスクリーンマスターMの画像領域MGに穿孔された画像情報や文字情報をスクリーン印刷している。
【0077】
この際、スクリーンマスターMの余白領域MYは、下枠51の枠部51a及び上枠52の枠部52aによってインク53が付着されないので、余白領域MY内に表示された余白情報は被印刷物TS上に印刷されることはない。
【0078】
従って、被印刷物TS上に印刷された画像情報や文字情報は、表裏の向き、及び、上下の向き又は左右の向きを間違えることなく印刷され、更に、スクリーンマスターMの余白領域MYに表示された余白情報のうちで画像付随情報及び印刷条件情報を確認しているので、印刷ミスなく良好にスクリーン印刷を行うことができる。
【0079】
尚、下枠51を用いない場合には、上枠52の下面に取り付けたスクリーンマスターMを例えばTシャツなどの被印刷物TS上に載置して、上枠52の矩形孔52b内の上方からスクリーンマスターM上にインク53を滴下すれば良い。
【0080】
以上詳述した実施例では、スクリーンマスターMをスクリーン印刷装置50に適用した例について説明したが、これに限ることなく、スクリーンマスターMの技術的思想をそのまま投入して、孔版原紙から孔版印刷装置(図示せず)に用いる孔版マスター(図示せず)を作成して、この孔版マスターを孔版印刷装置内に設けた回転自在な版胴に巻き付けて印刷する場合にも、孔版マスターの余白領域に余白情報(向き情報,画像付随情報,印刷条件情報)を表示しておけば、何等のミスが発生することなく孔版印刷を行うことができる。
【符号の説明】
【0081】
10…製版装置、
20…制御部、21…画像情報処理部、22…余白情報処理部、
23…合成画像情報処理部、24…サーマルヘッド駆動回路部、
30…製版手段、31…孔版原紙ロール、32…ガイドローラ、
33…プラテン用パルスモータ、34…プラテンローラ、35…サーマルヘッド、
36…上下一対のカッター材、37…上下一対のフィードローラ、
50…スクリーン印刷装置、
51…下枠、51a…枠部、51a1…ガイド壁、51b…矩形孔、
52…上枠、52a…枠部、52b…矩形孔、
53…インク、54…スキージ保持板、55…スキージ、
G…孔版原紙、M…スクリーンマスター、MG…画像領域、MY…余白領域、
PC…パソコン、TS…被印刷物(Tシャツ)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷するための画像情報や文字情報を穿孔して画像領域を形成すると共に、前記画像領域よりも外側に印刷しない余白領域を形成して、スクリーンマスターを製版する製版手段を備えた製版装置において、
前記スクリーンマスターの表裏の向きや、上下の向き又は左右の向きを示す向き情報を、前記製版手段により前記余白領域に穿孔することを特徴とする製版装置。
【請求項2】
前記画像情報に付随する画像付随情報及び前記スクリーンマスターを用いて印刷するときの印刷条件情報の少なくとも一方の情報を、前記製版手段により前記余白領域に穿孔することを特徴とする請求項1に記載の製版装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−78911(P2013−78911A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220677(P2011−220677)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】