説明

製造に組み込まれ得る、特に燃料電池に用いられる膜・電極接合体の非破壊試験のための試験装置及び試験方法

【課題】製造に組み込まれ得る加工品、特に燃料電池に用いられる膜・電極接合体の非破壊試験装置及び試験方法を提供する。
【解決手段】本発明は、加工品(5、6)内の欠陥を検出し、その位置を特定するための試験装置(1)に関するものであり、熱源(2、7、13、14)と、加工品の表面(8)の温度分布を測定するためのセンサ装置(3、10、11、12)及びセンサ装置に接続された評価装置(4)を有している。加工品と試験装置は、熱に晒された表面と平行の方向(R)に相対的に移動可能であるように配置されており、センサ装置は前記相対移動の方向(R)を横切るラインに沿って温度分布を測定するために、相対移動の方向(R)から見て熱源の下流で上記ラインに沿って延在する試験装置によって欠陥を検出し、その位置を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載の加工品内の欠陥を検出し、その位置を特定するための試験装置、及び請求項11の前文に記載の試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加工品及びそれらから形成される対象物の品質と信頼性への増大する要求によって、加工品の欠陥又は損傷を認識するためのさらに良好な試験装置及び試験方法が、必要とされている。これに関連して、1つの目的は、少なくとも加工品の不良が直接的又は間接的に人に深刻な危害をもたらし得る領域に用いられる全ての加工品を、それらが製造された後可能な限り早く非破壊試験を受けさせることにある。これらの領域として、例えば、電力工学、自動車工学、航空工学、及び航空宇宙工学が挙げられる。
【0003】
知られている試験方法及び試験装置は、例えば、X線照射又は超音波による透視、又は赤外線領域、人の目に見える領域、又は紫外線領域での加工品の観察に、基づいている。しかし、全ての試験方法が、全ての材料に用いられ得るというわけではない。
【0004】
特に、燃料電池用の膜・電極接合体、略してMEAにおける複数の異なる材料の接合された層からなる加工品の欠陥を試験するとき、際立った困難さが生じる。
【0005】
MEAの欠陥として、例えば、多孔領域、1つ以上の層に延在する亀裂、隣接層間の不完全な積層、層分離、気泡、欠落材料又はいくつかの箇所で欠落している層、1つ以上の層又はそれらの接合している領域における厚みの変動、個々の層間の位置的誤差、重なり、折目などが挙げられる。MEAの構造は、一例として、特許文献1において説明されている。MEAは、連続的な製造プロセスにおいて製造され、このプロセスでは、MEAの個々の層のそれぞれの構成要素が、巻き取られた形態で連続的に供給され、互いに積層される。従って、MEAもまた、後続の更なる処理ステップにおいて燃料電池への設置のために個々に切断される前は、製造プロセスから無端の製品として連続的に排出される。これに関連して、欠陥及びそれらの原因、例えば、積層作業中などにMEAの層に侵入し、製造の進行の全体を無効にする折目を、可能な限り迅速に認識し、必要に応じて、製造プロセスをそのまま進行させながら対応策を講じるために、MEAの製造中又はその直後に、迅速な品質制御によって、連続的な製造プロセスをインラインで、かつ実時間で監視することが、特に望ましい。しかし、積層工程の後、積層装置から出るMEAを自動的に監視することは、困難である。何故なら、MEAは、光学的な観点から、黒の深い陰をなす表面を有し、可視領域で機能するカメラなどをMEAの品質制御及び欠陥の認識に用いることができないからである。さらに、MEAは、面を平行にして配置され、互いに接合された複数の層から構成され、その材料特性は、X線又は超音波による検査を許容しない。従って、赤外領域の観察と測定によって、特に、加工品の1つ以上の表面における温度分布を測定することによって、MEAの試験と品質検査を行なうことが意図されている。適切な手段によれば、欠陥において、周囲との温度差が生じ、これらの温度差は、赤外領域における観察と測定に適したセンサ装置によって見出され得る。これに関連して、温度分布という用語は、各場合において、加工品の表面における有限の表面要素に割り当てられ得る多数の個々の温度を意味すると、理解されるべきである。
【0006】
特許文献1において、MEAのアノードとカソードとの間に電圧を印加することによって、サーモグラフィーによってMEAの電気的欠陥を検出することが、提案されている。この際、MEAの電気的欠陥において、短絡が生じ、熱が放出される。欠陥における周囲の表面との温度差は、赤外領域の観察によって決定され、このようにして、欠陥の位置が特定され得る。この装置及び関連する方法の欠点は、電気的欠陥しか検出できない点にある。さらに、加工品の深さにわたって、欠陥の位置に関するいかなる記述をも提示することができない。また、もし選択された電圧が高すぎる場合、健全な加工品が完全に破壊される危険がある。
【0007】
特許文献2は、加工品の表面と直交して延在する亀裂を検出する方法を開示している。ここでは、亀裂に対して直交して延在する加工品の表面の一部が、短時間加熱され、次いで、いかにその熱が表面と平行に伝播するかが、加工品の表面、又は加熱された表面と平行に延在する加工品の表面において、観察される。加熱された表面と直交して延在する亀裂は、加工品における熱伝導を妨げ、その結果、表面の加熱された部分から加熱されていない部分に至る実験的又は理論的に決定され得る理想的な温度勾配からの偏差を観察し、この情報から、加熱された表面と直交する方向における亀裂の位置と大きさを、推定することができる。この方法の欠点は、連続的なプロセスによって製造された加工品を、その製造プロセス中又はその後のいずれかにおいて、品質制御するのに用いられ得ない点にある。さらに、加熱された表面と平行に延在する亀裂、気泡、重なりなどに関するいかなる記述を提示することができない。
【0008】
特許文献3は、加工品の表面と平行に延在する亀裂を検出する方法を開示している。ここでは、亀裂と平行に延在する表面が、短時間加熱され、次いで、加工品のこの加熱された表面と直交する方向における熱の伝播が、すでに加熱された表面、又はこの表面の反対側の平行な表面における温度分布を測定することによって、観察される。例えば、亀裂又は気泡の形態にある欠陥は、加工品内において熱の伝導を妨げることによって、温度上昇又は温度降下を生じ、これが、加工品の加熱された表面に対してどの側において温度測定がなされたかに依存して、その表面の周囲領域と比較して、表面を検出可能である。加熱された表面下の欠陥の深さは、加熱から温度差の測定まで経過した時間の関数として、決定され得る。
【0009】
この方法の欠点は、この方法を行なうのに比較的長い期間が必要であり、この期間中に、加工品の全体が、同時に異なる方法ステップに晒されるので、連続的な製造プロセス又は少なくとも、例えば、数秒間の間隔での連続的なサイクルを含む製造プロセスに続く品質制御に、この方法を用いることができない、すなわち、製造プロセスを永久的に中断する場合にのみ、この方法を用いることができる点にある。
【0010】
特許文献4は、MEA内の多孔領域を検出し、その位置を特定する方法と装置を開示している。この方法では、異なるガスがMEAの2つの側の各々に加えられ、これらの2つのガスは、それらが接触したときに、互いに発熱して反応するので、発熱反応によって放出された熱を追跡することによって、多孔領域は、その位置が特定され得る。この方法の1つの欠点は、MEAの2つの側の間を接続する欠陥のみしか検出することができない点にある。さらに、この方法は、化学的に互いに発熱反応するガスが用いられるという理由から危険であるが、複雑で時間を浪費する準備が必要であるという点から、連続的に製造される加工品に用いられる製造プロセスの直後に、これらの加工品に用いられるのに適していない。
【0011】
特許文献5は、溶接継手の品質を制御するための方法及び装置を開示している。ここでは、溶接継手の表面の温度分布の時間プロファイル、すなわち、熱伝達の散逸を観察することによって、品質、均質性、及び溶接レンズの直径に関する推測が得られるように、溶接継手の表面が短時間加熱される。この方法の欠点は、最初に、溶接継手の全体が加熱され、次いで、その表面の温度分布の時間プロファイルが観察されねばならない非連続的な操作である点にある。これは、この方法が、連続的な製造プロセスに続いて又はその最中に、その製造プロセスにおいて製造された加工品の品質制御及び試験に用いることができないことを意味している。
【0012】
【特許文献1】独国特許出願第102 004 019 475.0号明細書
【特許文献2】米国特許第6,517,238 B2号明細書
【特許文献3】米国特許第5,711,603号明細書
【特許文献4】独国特許出願公表第697 04 571 T2号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第101 50 633 A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明は、加工品、特にMEAを製造する連続的なプロセス中又はその直後に、その加工品内の可能な限り多くの異なる種類の欠陥を検出し、それらの位置を特定することができる試験装置及び試験方法を開発する目的に、基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、請求項1の特徴を有する試験装置、及び請求項11の特徴と有する試験方法によって、達成される。
【0015】
請求項1に記載される本発明による試験装置は、加工品と試験装置が、測定を行なうために、熱に晒された表面と平行の方向において、互いに対して相対的に移動することができるように配置されるという点において、先行技術を上回る利点を有している。この場合、赤外領域で作動するセンサ装置は、少なくとも相対移動の方向を横切るラインに沿って温度分布を実時間で測定するために、相対移動の方向から見て熱源の下流で、少なくともこのラインに沿って延在している。ここで、このラインは、相対移動の方向において極めて狭いが、相対移動の方向を横切る方向において加工品の幅の少なくとも一部を占める領域を含む。このラインに沿った各箇所に対して連続的に測定された温度は、センサ装置に接続された評価装置によって、上記のラインに沿った隣接箇所で、ここでも実時間で、同時に測定された温度と連続的に比較される。相対移動の方向における隣接箇所において連続的に測定された温度を互いに比較することも同様に可能である、又はこれらの2つの実現可能な手法を組合せることもできる。これに関連して、「箇所」という用語は、数学的な点を意味せず、加工品の表面における有限の表面要素を意味する、と理解されるべきである。「連続的」という用語は、多数の個別的な測定値、又は、特に、電子データ処理装置による互いにすぐ後に続く呼びかけ信号を含む。従って、試験装置と加工品との間の相対移動によって、加工品が試験装置を超えて移動している特定の期間の観察の後、温度は、測定された加工品の全体に加えられる。欠陥の存在を示す温度差が隣接する箇所の間で認識された場合、評価装置は、その欠陥を加工品の位置に割り当てることができる。この場合、熱源は、例えば、加工品と接触し、少なくとも加工品の幅の一部にわたって延在する加熱ローラとして設計され、熱源と面するローラに対して相対的に移動する加工品の表面は、ローラ上を移動しながら、短時間、線状に加熱される。ローラによる熱伝導による熱の付与に対する代替案として、熱源を放射源、高温ガス又は暖気送風機として、設計することも考えられる。さらに、熱源というよりも、加工品の表面を冷却するヒートシンクを用いることも考えられる。この場合、センサ装置は、例えば、赤外カメラ、ライン検出器又はポイント検出器、又はこのような検出器の1つ以上の組合せであってよく、例えば、これらの検出器は、領域にわたって又はラインに沿って配置されるセンサアレーを構成するように接続される。
【0016】
本発明による試験装置の有利な構成によれば、センサ装置は、相対移動の方向に延在し、かつ少なくとも加工品の幅の一部にわたって、相対移動の方向を横切って延在する領域を占める。この場合、相対移動の方向におけるこの領域の長さは、加工品内の欠陥を示す不均質な温度分布が、熱に晒された表面下の欠陥の深さに関係なく、センサ装置によって占められた領域内において生じるように、選択される。不均質な温度分布がセンサ装置によって認識される相対移動の方向を横切るラインに対応する断面は、熱源から加工品の連続的な相対移動による熱の導入からセンサ装置によって占められた領域まで経過した時間に基づいて、加工品内の欠陥の特定の深さに割り当てられ得る。その結果、この欠陥は三次元、すなわち、領域と深さの両方において、特定される。加工品の深さにおける欠陥の位置を決定することによって、特に多層構造、例えば、燃料電池のMEAにおける加工品の場合、欠陥を生じる傷が位置する層、すなわち、副次的要素、又は隣接する層間の界面を識別することができる。その結果、必要に応じて、製造方法又は製造プロセスにおけるエラーに関する推測を行なうことができ、次いで、これらのエラーを必要に応じて排除することができる。
【0017】
本発明による試験装置の有利な構成によれば、熱源とセンサ装置は、相対移動の方向において、設定可能な間隔で互いに離間して配置される。熱源とセンサ装置との間の間隔は、例えば、加工品に応じて、例えば、その構造、厚み、材料特性、特にその比熱容量、及び/又は相対速度、及び/又は熱源から加工品への熱流、及び/又はセンサ装置及び/又は加工品に対する熱源の配置に応じて、変更され得る。例えば、加工品の熱が(例えば、輻射、熱伝導、又は熱変換によって)導入されるのと同じ側に、センサ装置が配置されているかどうかが、熱源とセンサ装置との間の間隔に対して、重要である。これに関連して、一例を挙げれば、熱源又は補助物質、例えば、加熱されたガスの温度及び熱容量、及び加熱されたガスの流速は、間隔に影響を及ぼし得る。
【0018】
本発明による試験装置の有利な構成によれば、センサ装置と熱源は、加工品の両側に、すなわち、加工品によって互いに分離されて、配置される。
【0019】
本発明による試験装置の他の有利な構成によれば、センサ装置と熱源は、加工品の同じ側に配置される。
【0020】
本発明による試験装置の他の有利な構成によれば、少なくとも1つのセンサ装置は、加工品の熱源から離れた側に配置され、少なくとも1つのセンサ装置は、加工品の熱源が面する側に配置される。
【0021】
本発明による試験装置のさらに他の有利な構成は、加工品内において位置が特定された欠陥が及ぶ距離を決定するための、評価装置に接続された位置認識装置、例えば、増分発信機であって、試験装置の参考点に対して配置される位置認識装置を備える。
【0022】
本発明による試験装置の特に有利な構成は、加工品の表面において位置が特定された欠陥に印を付けるマーキング装置であって、評価装置によって制御され得るマーキング装置を備える。
【0023】
本発明による試験装置の他の特に有利な構成は、位置が特定された欠陥を加工品から自動的に切除するか、又はその欠陥を含み、相対移動の方向を横切って加工品の幅にわたって延在する部分を切除する切除装置であって、評価装置によって制御され得る切除装置を備える。
【0024】
本発明による試験装置のさらに他の特に有利な構成によれば、加工品は、少なくとも時々連続的であるプロセスにおいて製造され、試験装置は、インライン品質制御のために、加工品を少なくとも時々連続的に製造する製造装置に続いて、製造装置の無端の加工品の出口に配置される。
【0025】
本発明によれば、請求項11に記載の試験方法は、以下の方法ステップ、すなわち、
−時間の経過に対して一定である熱流を、表面と直交する加工品の幅の少なくとも1部をなす断面において、加工品の表面に加えるステップと、
−その表面に熱流が加えられる断面と直交し、熱流に晒されている表面と平行の方向において、加工品を連続的に相対移動させるステップと、
−相対移動の方向から見て、熱流が加えられる断面の下流の加工品と熱源との間において、相対移動の方向を横切る少なくとも1つのラインに沿って、加工品の少なくとも1つの表面における温度分布を連続的に測定するステップと、
−測定された温度を実時間で評価装置に送るステップと、
−相対移動の方向を横切るラインに沿って、加工品の表面の隣接する箇所において同時に測定された温度を比較するステップ、及び/又は
−相対移動の方向と平行のラインに沿って加工品の表面の隣接する箇所において継続的に測定された温度を比較するステップと、
−少なくとも2つの隣接する箇所において測定された温度間の偏差に基づいて、欠陥を認識するステップと、
−欠陥が認識された場合、欠陥が検出されたことを示す信号を実時間で発するステップと
を含む。
【0026】
熱流は、正の符号を有してもよいし、又は負の符号を有してもよい。すなわち、熱流は、加工品の表面における温度を上昇させてもよいし、降下させてもよい。熱流は、加工品の幅の少なくとも一部に作用し、この幅の一部にわたって、その熱流の作用の後、後続の温度測定が、相対移動の方向において行なわれる。この場合、信号は、出力装置などによる警告音、警告光、テキストメッセージなどであってもよく、又は製造プロセスの介入の形態をとってもよい。
【0027】
この種の試験方法は、MEA又はその副次的要素との組合せによる使用のみに制限されず、燃料電池の他の構成要素、例えば、双極板を試験するのに用いられ、又は他の技術分野において、例えば、自動車の車体部品の被膜、接着による接合部、繊維複合部品、塗装、多層部品、例えば、成形された木材の接着などによる接合部を試験するのに用いられ得る。
【0028】
本発明による試験方法の有利な構成は、
−相対移動の方向に延在し、かつ少なくとも加工品の幅の一部にわたって、相対移動の方向を横切って延在する領域内において、温度分布を測定する付加的な方法ステップを含む。この場合、熱流が加工品の表面の一部に作用する断面であって、相対移動の方向を横切って延在するラインとして割り当てられ得る断面を越えた後の、加工品の表面に熱流が作用して以来の所定の期間は、温度測定がなされて不均一な温度分布が決定され得る領域内にある。この期間は、不均一さが加工品の表面に現れる箇所の下方の加工品の深さにおける欠陥の位置の測定値でもある。
【0029】
本発明による試験方法の他の有利な構成は、以下の付加的な方法ステップ、すなわち、
−連続的な製造プロセスにおいて製造された加工品を、その製造プロセスに続いてインラインで、熱流が加えられた断面に連続的に送給し、温度分布を測定するステップと、
−加工品の表面のある箇所における温度の設定値からの偏差に基づいて、欠陥を認識するステップと、
−加工品の表面において位置が特定された欠陥に、自動的に印を付けるステップと、
−位置が特定された欠陥、又は欠陥を含む部分を、加工品から自動的に切除するステップと、
−欠陥を、加工品の領域及び/又は深さにおけるその位置に基づいて、分類するステップと、
−欠陥の分類を記憶及び/又は出力するステップと、
−欠陥が加工品内に検出された箇所を、二次元又は三次元の座標に出力するステップと
の1つ以上を含む。
【0030】
欠陥の分類は、例えば、加工品の深さ、従って、MEAの確定された層又は隣接層間の接合箇所における欠陥の位置に基づいて、及び/又は欠陥の寸法に基づいて、及び/又は領域、例えば、縁又は中心、MEAの異なる構造又は強度を有する密封領域又は出入口領域における欠陥の位置に基づいて、行なわれるようにすることができる。
【0031】
以下、図面を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図1に示される試験装置1は、熱源2と、赤外領域において機能するセンサ装置3と、センサ装置に接続された評価装置4とを備え、相対移動の方向Rにおいて加工品5に対して相対的に移動することができるように配置されている。加工品5は、連続的な製造プロセスにおいて、複数の層を面を平行にして互いに積層することによって、製造される膜・電極接合体6であり、その連続的な製造プロセスの下流に、試験装置1は、MEA6が相対移動の方向Rにおいて連続的に熱源2とセンサ装置3を越えて移動するように、配置されている。熱源2は、相対移動の方向を横切って回転可能に配置されたローラ7を有し、このローラ7上を、MEA6が移動する。従って、ローラ7とMEA6は、互いに接触している。このプロセスにおいて、熱源2は、一定の熱流

(以下、単に「Q」と表示する)を加工品5の表面8に伝達する。従って、加工品は、その表面8において、ローラ7との接触ライン9に沿って、相対移動の方向Rを横切る幅の全体にわたって、接触ライン9に沿って一定である温度に、短時間、熱流Qの符号に依存して、加熱又は冷却される。ローラ7によってすでに加熱された加工品5の表面8の箇所がセンサ装置3を通過するまで、熱伝導の法則に従って、熱は加工品5内を伝播するが、加工品5、特に多層MEA6内の欠陥は、加工品5内の熱の伝導を妨げ、又は抑止する。その結果、すでに加熱された表面8における欠陥において、異なる温度、ローラ7による加熱の場合、上昇した温度が測定され、相対移動の方向Rを横切る横方向における隣接箇所と比較される。表面8のこの温度分布を測定するために、センサ装置3は、赤外カメラ10、センサアレー11、又は相対運動の方向を横切るラインに沿って配置されたスポット検出器12として設計される。センサ装置3は、測定された温度分布を評価装置4に送信する。この評価装置4は、コンピュータとして設計され、センサ装置3を通過する間に同時に加熱された箇所間の温度差に基づいて、加工品5内の欠陥を実時間で検出し、それらの位置を特定する。この場合、センサ装置3は、熱源2に対して、確定されているが調整可能な間隔Sの位置にある。間隔S、熱流Q、及び相対移動の速度を変更することによって、試験装置1を、加工品の特性、幾何学的形状、及び構造に適合させることができる。これに関連して、熱源2の目的は、加工品5を局所的又は領域的に短期間加熱することにある。加工品は、一定の平衡温度に「等温的に」加熱されるべきではなく、むしろ、単にその表面8において温度上昇を受けるべきである。この温度上昇は、加工品5内の熱伝導を介する釣合い条件によって、熱が加工品5内、特にその深さ方向に伝播する動的プロセスを開始する。輻射、熱伝導、及び熱変換のような熱力学から知られている全てのプロセスは、熱流Qを伝達するのに適している。加工品5が加熱されることは必ずしも不可欠ではなく、加工品5が冷却されるようにすることもできる。
【0033】
図2は、接触ライン9を示しているが、この接触ライン9に沿って、ローラ7は、加工品5の表面8を短時間加熱する。この場合、センサ装置は、センサアレー11として設計されている。
【0034】
図3において、領域Aでは、熱源2としての赤外線ラジエータ13と、相対移動の方向Rを横切って延在するラインに沿って一列に配置された複数のスポット検出器12が、加工品5の両側において、互いに離間して配置されている。領域Bでは、熱源2としての高温ガス送風機14が、加工品の下方に配置され、センサ装置3として用いられるセンサアレー11が、加工品5によって分離された反対側に配置されている。領域Cでは、熱源2としてのローラ7が、加工品の下方に配置され、加工品5の表面8の温度分布を測定するための赤外カメラ10が、加工品5の上方に配置されている。熱源2は、常に、相対移動の方向Rから見て、センサ装置3の上流に配置されている。
【0035】
原理的に、試験装置1を他から入ってくる物品の検査に用いることも考えられる。この場合、加工品5は、それを前後に移動させることによって、多数回測定することもできるので、例えば、もし結果が不明確な場合、繰り返し測定を評価装置4によって自動的に開始することによって、欠陥検出の精度を改良することができる。加えて、熱源2とセンサ装置3のいかなる所望の組合せも、例えば、同一種類の複数の構成要素を相対移動の方向Rにおいて連続的に配置することによって、可能である。時間経過に伴う熱束の推移は、高価なカメラシステムを用いることなく、協同で1つ以上のセンサ装置を形成する連続的に配置された複数の検出器又はセンサによって、極めて容易に記録されるようにすることができる。欠陥の評価、提示、及び文書化は、例えば、撮像プロセスによって行なわれ、コンピュータ支援される。全体としてのデータ処理は、時間制御及び/又は事象制御されてもよく、この場合、事象の定量的記述を提示する。査定は、所定の設定値との比較によって、行なわれ得る。製造プロセスへのフィードバックは、人為的に、制御変数に基づく自動化された形態で、さらに適切なソフトウエアによる自己学習の形態で、行なわれてもよい。さらに、認識された欠陥に印を付けること、又はその欠陥を切除することも考えられる。
【0036】
試験装置1を、先行技術から知られているパルス・サーモグラフィーと組合せることも考えられる。これに関連して、例えば、熱流Qの強さを、時間の経過に伴って又は局所的にのみ変更させることも考えられる。
【0037】
本発明は、特に燃料電池用の膜・電極接合体を製造するプロセスの品質制御及び監視用の工業的用途に、適用され得る。
【0038】
この試験装置の典型的な用途の例は、燃料電池の構成要素、特にMEA又はBiP、又はそれらの副次的構成要素、例えば、それらの膜の試験である。製造プロセス及び他から入来する物品の両方の使用が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明による試験装置の側面図を示す。
【図2】本発明による試験装置の平面図を示す。
【図3】本発明による試験装置における熱源とセンサ装置の配列の3つの異なる変形例A、B、及びCの側面図を示す。
【符号の説明】
【0040】
1 試験装置
2 熱源
3 センサ装置
4 評価装置
5 加工品、MEA
6 膜・電極接合体
7 ローラ
8 表面
9 接触ライン
10 赤外カメラ
11 センサアレー
12 スポット検出器
13 赤外線ラジエータ
14 高温ガス送風機
Q 熱流
R 相対移動の方向
A、B、C 領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工品(5、6)内の欠陥を検出し、その位置を特定するための試験装置(1)であって、少なくとも1つの熱源(2、7、13、14)と、前記加工品(5、6)の少なくとも1つの表面(8)の温度分布を測定するための少なくとも1つのセンサ装置(3、10、11、12)と、前記センサ装置(3、10、11、12)に接続された評価装置(4)とを有する試験装置において、前記加工品(5、6)と前記試験装置(1)は、熱に晒された前記表面(8)と平行の方向(R)において、互いに対して相対的に移動可能であるように、配置され、前記センサ装置(3、10、11、12)は、少なくとも前記相対移動の方向(R)を横切るラインに沿って温度分布を測定するために、前記相対移動の方向(R)から見て前記熱源(2、7、13、14)の下流で、少なくとも前記ラインに沿って延在する試験装置。
【請求項2】
前記センサ装置(3、10、11、12)は、前記相対移動の方向(R)に延在し、かつ少なくとも前記加工品(5、6)の幅の一部にわたって前記相対移動の方向(R)を横切って延在する領域を、占める、請求項1に記載の試験装置。
【請求項3】
前記熱源(2、7、13、14)と前記センサ装置(3、10、11、12)は、前記相対移動の方向(R)において、設定可能な間隔(S)だけ互いに離間して、配置される、請求項1または2に記載の試験装置。
【請求項4】
前記センサ装置(3、10、11、12)と前記熱源(2、7、13、14)は、前記加工品(5、6)の両側に配置される、請求項1、2、または3に記載の試験装置。
【請求項5】
前記センサ装置(3、10、11、12)と前記熱源(2、7、13、14)は、前記加工品(5、6)の同じ側に配置される、請求項1、2、または3に記載の試験装置。
【請求項6】
少なくとも1つのセンサ装置(3、10、11、12)は、前記加工品(5、6)の前記熱源(2、7、13、14)から離れた側に配置され、少なくとも1つのセンサ装置(3、10、11、12)は、前記加工品(5、6)の前記熱源(2、7、13、14)と面する側に配置される、請求項1、2、または3に記載の試験装置。
【請求項7】
前記評価装置(4)に接続された位置認識装置を備える、請求項1〜6のいずれか一項に記載の試験装置。
【請求項8】
前記加工品の表面(8)において位置が特定された欠陥に印を付けるためのマーキング装置であって、前記評価装置(4)によって制御され得るマーキング装置を備える、請求項7に記載の試験装置。
【請求項9】
位置が特定された欠陥を前記加工品(5、6)から自動的に切除するか、又は前記欠陥を含み、前記相対移動の方向(R)を横切って前記加工品(5、6)の幅にわたって延在する部分を切除するための切除装置であって、前記評価装置(4)によって制御され得る切除装置を備える、請求項7または8に記載の試験装置。
【請求項10】
前記加工品(5、6)は、少なくとも時々連続的であるプロセスにおいて製造され、前記試験装置(1)は、前記加工品(5、6)を連続的に製造する製造装置に続いて、配置される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の試験装置。
【請求項11】
加工品内の欠陥を検出し、その位置を特定する試験方法であって、前記加工品(5、6)の表面(8)は、熱流(Q)の結果として、短時間の温度の均一な変化を受け、前記表面(8)又は平行な対向表面(8)における時間の経過に対する温度分布の変化を観察することによって、前記表面(8)に続いて生じる不均一な温度分布の結果として、前記加工品(5、6)内の欠陥を認識できる方法において、
−時間の経過に対して一定である熱流(Q)を、前記表面(8)と直交する断面(9)における、前記加工品(5、6)の表面(8)に加えるステップと、
−前記断面(9)と直交し、前記熱流(Q)に晒されている前記表面(8)と平行の方向(R)において、前記加工品(5、6)を連続的に相対移動させるステップと、
−前記相対移動の方向(R)を横切る少なくとも1つのラインに沿って、前記加工品(5、6)の少なくとも1つの表面(8)における温度分布を連続的に測定するステップと、
−前記測定された温度を評価装置(4)に送るステップと、
−前記相対移動の方向(R)を横切るラインに沿って、前記加工品(5、6)の前記表面(8)の隣接する箇所において同時に測定された温度を比較するステップ、及び/又は
−前記相対移動の方向(R)と平行のラインに沿って前記加工品(5、6)の前記表面(8)の隣接する箇所において継続的に測定された温度を比較するステップと、
−少なくとも2つの隣接する箇所において測定された温度間の偏差に基づいて、欠陥を認識するステップと、
−欠陥が認識された場合、欠陥が検出されたことを示す信号を発するステップと
を含む方法。
【請求項12】
前記相対移動の方向(R)に延在し、かつ少なくとも前記加工品(5、6)の幅の一部にわたって、前記相対移動の方向(R)を横切って延在する領域内において、温度分布を測定する付加的な方法ステップを含む、請求項11に記載の試験方法。
【請求項13】
以下の付加的な方法ステップ、すなわち、
−連続的な製造プロセスにおいて製造された加工品(5、6)を、前記熱流(Q)が加えられた前記断面(9)に連続的に送給し、温度分布を測定するステップと、
−前記加工品(5、6)の前記表面(8)のある箇所における温度の設定値からの偏差に基づいて、欠陥を認識するステップと、
−前記加工品(5、6)の表面(8)において位置が特定された欠陥に、自動的に印を付けるステップと、
−位置が特定された欠陥、又は前記欠陥を含む部分を、前記加工品(5、6)から自動的に切除するステップと、
−前記欠陥を、前記加工品(5、6)の領域及び/又は深さにおけるその位置に基づいて、分類するステップと、
−前記欠陥の分類を記憶及び/又は出力するステップと、
−前記欠陥が前記加工品(5、6)内に検出された箇所を、二次元又は三次元の座標に出力するステップと
の1つ以上を含む、請求項11または12に記載の試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−47313(P2006−47313A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−224717(P2005−224717)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【出願人】(598051819)ダイムラークライスラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【Fターム(参考)】