説明

製造プラントにおける設備管理システム

【課題】システム構成に要するコストを低減できると共に、メンテナンス時に作業者が管理システムの中核となる情報管理装置に、その都度、アクセスすることなく、迅速かつ容易にメンテナンス情報を取得することができる、製造プラントにおける設備管理システムを提供する。
【解決手段】製造プラントにおける設備管理システム10であって、製造プラントの各設備に装着され、各設備に関する情報を格納したRFIDタグ11と、上記RFIDタグの情報を読み取り/書き込み可能な携帯端末機12とにより構成され、上記各設備に関する情報は、RFIDタグのみにより管理される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は製造プラントにおける設備管理システムに係り、特に、いわゆるRFIDタグによりプラント設備を管理するシステムに関する。
【0002】
一般に製造プラントにおいて設備されている各装置をメンテナンスする際に、プラントの規模が小さい場合には、設備のメンテナンスに必要な情報は、工場管理部門が保管する台帳に記載されて紙情報として管理されている。
【0003】
また、プラントの規模が大きい場合には、設備のメンテナンスに必要な情報は、例えば、管理用の情報を格納したサーバと、上記サーバに無線LANを介してアクセスでき、各作業員が携帯できる携帯端末とにより管理システムを構成し、作業員は上記携帯端末を保持して当該設備又は装置へ赴き、当該設備又は装置の管理に必要な設備固有の管理情報を自ら携帯端末に入力して情報を格納し、全作業の終了後もしくは当該メンテナンス作業の終了後に携帯端末に格納したデータを、無線LANを介してサーバに転送して、サーバの電子ファイルにより全情報を管理するように、工場が構成されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、このような従来の設備管理システムにあっては、工場やプラント内の現場の略全域に有線LAN網又は無線LAN網を設置し、無線LAN網にデータベースサーバを接続して、夫々の現場からデータベースサーバにアクセスできるように構成する必要があることから、管理システム全体の規模が大きなものとなり、設備コストが嵩むこととなる。
【0005】
また、上記のように、従来の工場、プラントの設備又は装置の管理情報は、現場の当該機器、装備、設備とは別個に、紙台帳又はサーバ等の電子ファイルにおいて集中的に管理されていることから、設備、機器のメンテナンス時に、各作業員が管理情報を使用、参照する際に、紙台帳の場合には、常に工場管理部門へ赴き、管理部門が保管している管理台帳を確認する必要があり、また、サーバの電子ファイルにおいて管理されている場合には、上記携帯端末を使用して、その都度、上記サーバの電子ファイルにアクセスする必要があり、いずれの場合にも、作業員にとっては、メンテナンスに必要な情報の確認、取得作業が煩雑であった。
【0006】
従って、上記のような事情から、現場において各設備、装置の管理情報を確認する際に、その都度、管理部門に赴き、紙台帳を確認する必要がなく、また、その都度、現場からサーバにアクセスする必要もなく、さらに、管理情報の保管のための設備コストを低減することができる設備管理システムが要望されている。
【0007】
このような観点から従来技術を調査したところ、例えば、下記のように、RFIDタグ(いわゆるICタグ)を使用して、各種製品を管理し、又は各種設備機器を管理し、もしくはプラント設備を管理する技術が提案されている。
【0008】
【特許文献1】特開2007−323163号公報
【特許文献2】特開2007− 26128号公報
【特許文献3】特開2007−219727号公報
【特許文献4】特開2007―172392号公報
【0009】
上記特許文献1は、「プラント情報収集システム」に係り、従来、トラブルが発生したプラントの設備の購入履歴、運転履歴、保守履歴、設置場所を示した設計図等が夫々、異なるデータベースで異なる部署で異なる担当者が情報を管理している場合が多く、情報検索に時間が掛かるという問題があることに鑑み、プラントの各設備に無線機能を有するICタグを取り付けて保守履歴等の管理情報を格納すると共に、無線機能を有するICタグリーダによりICタグに格納された管理情報を読み出し、無線アクセスポイントからネットワークを介して情報処理装置と通信して、リーダ端末が取得した情報に基づく検索ロジックにより情報処理装置が有するデータベースを検索して関連情報を収集するシステムが開示されている。
【0010】
上記特許文献2は、「点検履歴管理装置及びRFIDタグ」に係り、原子力プラントで使用される定期点検を必要とする機器にRFIDタグを取り付け、必要時にはリーダでRFIDタグの機器属性データを読み取り、当該データを機器管理端末に与え、機器管理端末は機器属性データに基づき複数の機器の点検時期、点検内容等を管理するように構成されたシステムが開示されている。
【0011】
上記特許文献3は、「支援システム及び設備ユニット」に係り、ガス製造工場、都市ガス供給設備網の管理システムに関し、設備部材にICタグを付して保全情報を管理するシステムにおいてはシステム全体が膨大になり、維持管理も多くの工数を要することに鑑み、ICタグを代表設備部材に付設し、当該設備部材に関する点検情報、保全情報等を記憶させ、必要時にはハンディコンピュータを介して当該情報を入手して、管理情報が蓄積された管理端末の管理情報を書き換えるように構成されたシステムが開示されている。
【0012】
上記特許文献4は、「保守システム、保守支援用端末、RFIDタグ、製品保守方法および保守支援プログラム」に係り、製品使用者としての顧客へ納品された後に、点検や修理等の保守が必要となる保守対象製品に保守情報が格納されたICタグを付し、リーダライタ機能を備えた電子端末によりネットワークを介して保守情報をデータベースへ重要度に応じて格納し、保守履歴の更新を行うように構成されたシステムが開示されている。。
【0013】
このような従来技術にあっては、いずれも、ICタグに格納された情報をリーダにより読み取り、読み取った情報を管理コンピュータにより集中的に管理するように構成されており、管理に使用される多数のリーダとデータベースサーバとの間にLAN等のネットワークが必要となり、システム全体が大規模なものとなり、システム構成のコストが嵩むこととなるため、上述の問題点を有している。
【0014】
そこで、本発明の課題は、システム構成に要するコストを低減できると共に、メンテナンス時に作業者が管理システムの中核となる情報管理装置に、その都度、アクセスすることなく、迅速かつ容易にメンテナンス情報を取得することができる製造プラントにおける設備管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このような技術的な課題の解決のため、請求項1記載の発明にあっては、製造プラントにおける設備管理システムであって、製造プラントの各設備に装着され、各設備に関する情報を格納したRFIDタグと、上記RFIDタグの情報を読み取り/書き込み可能な携帯端末機とにより構成され、上記各設備に関する情報は、RFIDタグのみにより管理されることを特徴とする。
【0016】
従って、請求項1記載の発明にあっては、製造プラントを構成する各設備、各装置に装着されたRFIDタグ及び携帯端末機のみにより管理システムを形成することができ、従来のような、管理情報を集中管理するデータベース等の情報管理装置及び、上記データベースサーバへ携帯端末機からアクセスするための無線LANの設備は不要となる。
【0017】
請求項2記載の発明にあっては、上記情報は、各設備に関する随時なメンテナンス作業の結果の履歴情報を含むことを特徴とする。従って、請求項2記載の発明にあっては、RFIDタグ内には、各設備に関するメンテナンスの履歴情報が格納されていることから、携帯端末機により上記履歴情報を取得することができる。
【0018】
請求項3記載の発明にあっては、上記情報は、各設備に関する随時な使用の結果の履歴情報を含むことを特徴とする。従って、請求項3記載の発明にあっては、RFIDタグ内には、各設備に関する使用の履歴情報が格納されていることから、携帯端末機により上記履歴情報を取得することができる。
【0019】
請求項4記載の発明にあっては、上記設備は、流体製品の製造の管路に配設され、前記管路を開閉制御しうるバルブ装置であることを特徴とする。
【0020】
請求項5記載の発明にあっては、上記RFIDタグは、バルブ本体を開閉駆動しうるエアモータ部に装着されていることを特徴とする。
【0021】
請求項6記載の発明にあっては、上記情報は、各装置に関する使用管理マニュアルであることを特徴とする。
【0022】
請求項7記載の発明にあっては、上記情報は、文字情報であることを特徴とする。
【0023】
請求項8記載の発明にあっては、上記情報は、画像情報であることを特徴とする。この場合、上記画像情報には、静止画像情報及び動画画像情報を含む。
【0024】
請求項9記載の発明にあっては、上記情報は、当該バルブ装置が使用されていたプラント内の環境を示す画像情報であることを特徴とする。従って、作業者はRFIDタグから当該固有のバルブ装置が使用されていた環境を画像により取得することができる。
【0025】
請求項10記載の発明にあっては、上記携帯端末機は、電波によりRFIDタグに格納された情報を読み取り/書き込み(読み書き)可能に形成されていることを特徴とする。従って、請求項10記載の発明にあっては、いわゆる「電磁誘導方式」ではなく「電波方式」に基づき、携帯端末機から発せられる電波をRFIDタグのアンテナにより受信して情報伝達を行う。従って、作業者は「電磁誘導方式」に比して、より遠くの位置からRFIDタグに格納された情報を取得することができる。
【0026】
請求項11記載の発明にあっては、上記RFIDタグは、パッシブタグであることを特徴とする。従って、請求項11記載の発明にあっては、RFIDタグがパッシブタグにより構成されていることから、携帯用端末機から発せられる電波をエネルギー源として動作することとなり、電池を内蔵する必要がない。
【0027】
請求項12記載の発明にあっては、上記携帯端末機は、RFIDタグへアクセスした場合に、RFIDタグが発信した固有のフラグ・レジスタを取得することにより情報を読み取り/書き込み(読み書き)可能に構成されていることを特徴とする。
【0028】
請求項13記載の発明にあっては、上記RFIDタグは、上記エアモータ部の外側表面部に固定され、RFIDタグを収納して、上記エアモータ部の外側表面から外方へ所定間隔で離間させうるベース部と、上記RFIDタグ及び上記ベースプレート部を被覆しうるカバー部とを備えていることを特徴とする。
【0029】
請求項14記載の発明にあっては、上記携帯端末機は、PDA(パーソナルデジタルアシスタンツ)であることを特徴とする。従って、請求項14記載の発明にあっては、上記携帯端末機は、RFIDタグに各種の情報を書き込み/読み取り(読み書き)可能に形成されたPDAであればよく、様々な汎用のPDAを適用することができる。
【発明の効果】
【0030】
請求項1〜11記載の発明にあっては、各設備に装着され、各設備に関する情報を格納したRFIDタグと、上記RFIDタグの情報を読み取り/書き込み可能な携帯端末機とにより構成され、上記各設備に関する情報は、RFIDタグのみにより管理され、各設備、装置に装着されたRFIDタグ及び携帯端末機のみにより管理システムを形成することができ、従来のような、管理情報を集中管理するデータベース等の情報管理装置及び、上記データベースサーバへ携帯端末機からアクセスするための有線LAN又は無線LANの設備は不要となることから、管理システムを構成することに要する設備コストを大幅に低減することができる。
【0031】
また、作業現場における業務指示の伝達は、業務管理上、非常に重要であるが、RFIDタグに、バルブ個々の次のメンテナンス作業者への伝達事項等も記憶させておくことができることから、別途、メモ等により伝達事項を作成する場合に比して、作業の伝達ミスをなくせるため、現場における確実な業務指示体制を構築することができる。
【0032】
また、作業に関する必要な申し送り事項を、メンテナンスの必要な機種、設備のRFIDタグに直接に書き込めるので、機種や設備による勘違い等を排除できると共に、重要な伝達事項を該当機種や設備のRFIDタグに直接に書き込むことから、別途、媒体による伝達・伝言を行う場合に比して、作業の情報などを確実に伝えることができる。
【0033】
また、近年、食品業界等においては、食品事故を未然に防ぎ、需要者、消費者へ安心、安全を確実に提供する観点から、生産、加工、流通過程において、食品の移動経歴を把握できるようにする「トレーサビリティ」の考え方が導入されている。この場合、例えば、食品業界のトレーサビリティとして、当該液体製品に使用される原料食品の原産地に基づいて管理する、いわゆる「原料系由来のトレーサビリティシステム」が一般的であるが、また、現在では、製造プロセスにおいて、所定のタンクから所定の製造ラインを経由して所定の充填機で製造されてことを特定する「製造プロセスのトレーサビリティシステム」も存在する。
【0034】
即ち、「所定の飲料製品が経由したバルブは、所定の日時にメンテナンスしている」旨の情報や「所定の飲料製品が経由したバルブは、所定の期間で使用している」旨の情報などは、上記「原料系由来のトレーサビリティ」及び「製造プロセスのトレーサビリティ」と共に、トレーサビリティの管理要素として重要である。この場合、現在に至るまで、例えば、食品製造工場における食品製造装置の「メンテナンス作業に基づくトレーサビリティ」の管理手法は、未だ一般的ではなく、また、少数ながら存在する管理システムにあっては、大規模な管理システムを必要としていた。
【0035】
しかしながら、 本請求項記載の発明にあっては、個別の設備に装着されたRFIDタグにメンテナンス情報を書き込み、かつ携帯情報端末により書き込んだ情報を読み取ることができるため、事故等の発生時に、製造ラインが特定された場合には、大規模LAN設備や管理サーバ等が存在しなくとも、現場において直接かつ迅速にメンテナンス履歴が把握でき、簡易かつ迅速に「メンテナンス作業に基づくトレーサビリティ」の管理手法を実行することができる。
【0036】
さらに、上記のように、メンテナンスや使用に関する特別な申し送り事項の有無等も同時に把握できることから、プラント構成機器のメンテナンスや使用に原因があったか否かを把握することができ、コストを嵩ませることなく、「製造プロセスのトレーサビリティ」を実施することができる。
【0037】
さらに、従来のような、情報を集中して管理するデータベースサーバ等の情報管理装置が不要となることから、メンテナンス時に作業者が管理システムの中核となる情報管理装置に、その都度、アクセスする必要がなく、迅速かつ容易にメンテナンス情報を取得することができる、製造プラントにおける設備管理システムを提供することができる。
【0038】
請求項4及び5記載の発明にあっては、特に各種の液体食品を製造する流体製品の製造プラントにおいて、非常に多くのバルブ装置が管路中に設備されているが、流通する液体商品によってバルブ装置も特定化されており、ある液体製品が流通する管路に使用されているバルブ装置を、安易に他の液体製品が流通している管路に配置交換することはできないことに鑑み、流体製品の製造プラントにおいて、メンテナンス時におけるバルブ装置の交換の判断などを容易かつ正確に行うことができる。
【0039】
請求項6記載の発明にあっては、上記効果に加えて、RFIDタグに格納された情報には、使用管理マニュアル(作業手順書、取扱説明書など)も含まれていることから、管理履歴のみならず、当該バルブ装置に関する一切の情報が当該バルブ装置と一体となって存在することとなり、設備、装置の管理上、作業者は容易に当該バルブ装置に関する全関連情報を、当該バルブ装置の現場において入手することができ、メンテナンス作業を迅速かつ正確に行うことができる。
【0040】
請求項7記載の発明にあっては、上記効果に加えて、RFIDタグに格納されたバルブ装置に関する情報には、当該バルブの使用環境を示す文字情報を含むことから、メンテナンス時に作業者は、当該バルブ装置の使用されていた環境を作業現場で具体的に認識し、当該バルブ装置の寿命の判断、以後の使用の可能性等に関する検討、判断を行うことができ、メンテナンス作業の質的向上を図ることができる。
【0041】
請求項8記載の発明にあっては、上記効果に加えて、RFIDタグに格納されたバルブ装置に関する情報には、当該バルブの使用環境を示す画像情報を含むことから、メンテナンス時に作業者は、当該バルブ装置の使用されていた環境を一目して具体的に認識し、当該バルブ装置の寿命の判断、以後の使用の可能性等に関する検討、判断を行うことができ、メンテナンス作業の質的向上を図ることができる。
【0042】
請求項10及び11記載の発明にあっては、RFIDタグがパッシブタグにより構成され、携帯用端末機から発せられる電波をエネルギー源として動作することから、RFIDタグに電池を内蔵又は配設する必要がない。その結果、RFIDタグの構成も簡易であって、かつ小型であることから、バルブ装置等の各種のプラント設備への取り付けも容易であり、かつプラント設備の作業環境(現場)においても、長年の使用に耐えうる製造プラントおける設備管理システムを提供することができる。
【0043】
請求項12記載の発明にあっては、上記効果に加えて、上記携帯端末機は、RFIDタグへアクセスした場合に、RFIDタグが発信した固有のフラグ・レジスタを取得することにより情報を読み取り/書き込み(読み書き)可能に構成されていることから、当該RFIDタグ固有のフラグ・レジスタを取得しない場合には、携帯情報端末機によってRFIDタグの情報を読み取ったり、情報を書き込んだりすることができない。その結果、ある作業者がメンテナンス作業を開始した場合には、当該作業者のみがRFIDタグのメンテナンス情報を読んで、メンテナンス作業を行い、その後に、メンテナンス作業が完了した場合に、当該作業者のみがメンテナンス作業を完了した旨の情報を書き込む体制が構築され、メンテナンス作業の確実性を向上させることができる。その結果、製造プラントにおける設備管理システムとしての管理精度を向上させることができる。
【0044】
請求項13記載の発明にあっては、RFIDタグは、上記エアモータ部の外側表面部に固定され、エアモータ部の外側表面部から所定間で隔離間させうるベース部を有することから、バルブ装置の存在に拘わらず、携帯端末機との通信を不備なく行うことができる。また、上記カバー部材を有することから、RFIDタグを有効に保護することができ、外部からの衝撃に対して保護することができ、RFIDタグの耐久性を確保することができる。
【0045】
請求項14記載の発明にあっては、上記携帯端末機は、RFIDタグに各種の情報を書き込み/読み取り可能に形成されたPDAであればよく、様々な汎用のPDAを適用することができる。従って、RFIDタグとPDAのみにより、各種プラント設備、特に流体製品の製造ラインである管路に配置されたバルブに関するメンテナンスの履歴情報を管理することができることから、従来のような、管理情報を集中管理するデータベース等の情報管理装置及び、上記データベースサーバへ携帯端末機からアクセスするための無線LANの設備は不要となり、管理システムを構成することに要するコストを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、実施の形態に基づき、本発明に係る製造プラントにおける設備管理システムを、液体製品の製造プラントに適用した場合を例示して詳細に説明する。
【0047】
図1に示すように、本実施の形態に係る製造プラントにおける設備管理システム10は、様々な流体製品の製造設備に装着され、各設備に関する情報を格納したRFIDタグ11と、上記RFIDタグ11の情報を読み取り/書き込み可能な携帯端末機12とにより構成され、上記各設備に関する情報は、RFIDタグ11のみにより管理されるように構成されている。
【0048】
本実施の形態において、上記RFIDタグ11は、液体製品の製造プラントの流体製品の製造の管路(図示せず)に配設され、上記管路を開閉制御しうるバルブ装置13に装着されている。即ち、図1に示すように、上記RFIDタグ11は、上記バルブ装置13においてバルブ本体を開閉駆動しうるエアモータ部14に装着されており、当該プラントにおいて配設されている全ての流体製品の製造の管路に配設された、全てのバルブ装置13に上記RFIDタグ11が装着されている。
【0049】
図1に示すように、本実施の形態にあっては、RFIDタグ11は、エアモータ部14の外側表面部15の上端部に固定されている。図2に示すように、RFIDタグ11は、平面略正方形状に形成され、厚さ寸法は約1mmであって、幅寸法は約5mmに形成されている。そして、上記RFIDタグ11は、ベース部材16及びカバー部材18により上記エアモータ部14に固定される。
【0050】
図3に示すように、本実施の形態にあっては、エアモータ14の外側表面部15には、RFIDタグ11を収納して、上記エアモータ部14の外側表面部15から、外方へ所定間隔で離間させうるベース部16が耐水性及び耐久性に富む接着剤29により貼付固定されている。上記ベース部16は、平面略円盤状に形成され、中央部には上記RFIDタグ11を収納する平面略正方形状の凹部17が開口して設けられている。
【0051】
上記ベース部16は、合成樹脂等の耐衝撃性及び耐久性を有する素材から形成され、上記凹部17では、深さ寸法及び幅寸法は、上記RFIDタグ11の厚さ寸法及び幅寸法と略同一に形成され、装着時にRFIDタグ11を圧入した際には、RFIDタグ11を上記凹部17内に、上面部30が共に面一になる状態で装着しうるように構成されている。また、上記ベース部16の上記凹部17の厚さ寸法は1mmに形成されている。
【0052】
上記カバー部材18は、図2及び図3に示すように、上記ベース部材16を収納しうるように円盤状であって、横断面略コ字状に形成され、上記ベース部16と同様に、耐衝撃性及び耐久性を有する素材により形成され、RFIDタグ11を凹部17内に収納した状態で、上方から上記ベース部16を完全に被覆しうるように構成されている。即ち、上記カバー部材18の収納部19の深さ寸法は、上記ベース部16の厚さ寸法よりも、やや大きく形成され、上記収納部19の径寸法は、上記ベース部16の幅寸法と同一に形成されていると共に、側面部20の下端部の周縁には、フランジ部21が延設され、このフランジ部21により接着剤29を用いて、エアモータ部14の外側表面部15に固定するものである。
【0053】
また、本実施の形態にあっては、RFIDタグ11は、携帯用端末機から発せられる電波をエネルギー源として動作し、RFIDタグ11側において電池を内蔵する必要のない、いわゆる「パッシブタグ」により構成されている。従って、本実施の形態において、バルブ装置13のエアモータ部14にRFIDタグ11を装着する場合には、上記ベース部16の凹部17内にRFIDタグ11を圧入して固定する。その後、上記カバー部材18を上記ベース部16の表面側から被せ、ベース部16の表面側から、RFIDタグ11ともども被覆した状態で、上記フランジ部21に接着剤を塗布して、エアモータ部14の外側表面部15の上端部近傍において固定する。
【0054】
本実施の形態にあっては、その後、プラント内の液体製品の管路において、バルブ装置13にRFIDタグ11が固定されていることを作業員に周知せしめるために、白色のシール22を、上記カバー部材18の上から被覆するように貼り付ける。このシール22は、図3及び図4に示すように、平面略長方形状に形成され、中央部には、上記カバー部材18が貫通する孔部23が開設されている。また、一隅部には、QRコード24が印刷されている。
【0055】
本実施の形態にあっては、上記RFIDタグ11に書き込まれている情報は、以下のものである。
【0056】
1.文字情報及び画像情報による各設備に関するメンテナンスの作業の結果の履歴情報:この履歴情報には、「メンテナンスの具体的な作業名称に関する情報」、「メンテナンス作業を行った年、月、日、時間情報」、「メンテナンス作業を行った作業員の所属部署、名前情報」を示す文字情報等が含まれる。
【0057】
2.文字情報及び画像情報によるバルブ装置の使用管理マニュアル情報:この使用管理マニュアル情報には、「当該バルブ装置の使用マニュアル情報」「当該バルブ装置のスペック情報」、「当該バルブ装置のメンテナンスマニュアル情報」を示す文字情報等が含まれる。
【0058】
3.当該バルブ装置が使用されていたプラント内の環境を示す画像情報: この画像情報には、過去、当該バルブ装置が使用されていた管路、当該管路及びバルブ装置が設置されていたプラント内の環境を示す画像情報の静止画、又は動画等が含まれる。
【0059】
また、本実施の形態においては、上記RFIDタグ11への、上記の各種情報の「書き込み作業」及び「読み取り作業」は、携帯情報端末(PDA)により行われる。
【0060】
本実施の形態においては、PDAは汎用の各種PDAであって、RFIDタグへ情報の読み込み及び書き取りが可能に構成されたPDAであれば、全てを適用することができる。図1に示すように、本実施の形態にあっては、PDA25は、PDA本体26と、PDA本体26に接続されたペン型スキャナ27とからなる。上記ペン型スキャナ27は、PDA本体26側に備えられた電源の電力により電波を発して本実施の形態に係るパッシブタグにより構成されたRFIDタグ11へアクセスするように構成されている。
【0061】
従って、本実施の形態にあっては、現場作業者は上記PDA25をプラントの作業現場において常時携帯し、メンテナンス時には必要に応じて、上記ペン型スキャナ27を、作業対象となるバルブ装置13に固定されたRFIDタグ11に近接させて、上記RFIDタグ11に書き込まれている各種のメンテナンス情報を読み取ることにより、当該バルブ装置13に関するメンテナンス作業を行い、その行ったメンテナンス作業の結果を書き込むことにより、さらにRFIDタグ11へのメンテナンス作業情報の蓄積を行うことができる。
【0062】
また、本実施の形態にあっては、上記RFIDタグ11へアクセスした場合には、RFIDタグ11は固有のフラグ・レジスタをPDA25へ向けて発信し、当該フラグ・レジスタを取得したPDAのみがRFIDタグ11の情報の読み込み、又は情報の書き込みができるように構成されている。即ち、本実施の形態にあっては、「1」のフラグ・レジスタをPDAが取得した場合には、RFIDタグ11のメンテナンス情報を「読み取る(読む)」ことができ、「0」のフラグ・レジスタをPDAが取得した場合には、RFIDタグ11へメンテナンス情報を「書き込む(書く)」ことができるように構成されている。この点は以下の事情に基づく。
【0063】
プラントの作業現場では、複数のメンテナンス作業員が作業を行っているが、所定のバルブ装置13に関しては、ある作業者がメンテナンス作業を開始した場合には、同一の作業者がメンテナンス作業を完了することが、メンテナンス作業の安全性の観点から必要となる。
【0064】
例えば、あるバルブ装置13に関して、ある作業者がメンテナンス作業を開始し、一時、その作業者の事情により、その場を離れる場合も想定される。そのような場合に、当該バルブ装置13のメンテナンス作業が完了しているものと他の作業者が判断して、実際にはメンテナンス作業が未完了のバルブ装置13を他の部署へ移動させて使用する可能性もありうる。このような場合には、メンテナンス作業が完了していないバルブ装置13を、そのまま使用継続することとなり、液体製品(特に食品、乳、乳製品)の製造現場においては、衛生的な観点から考慮した場合、極めて不適当な事態となる。
【0065】
このような事態を回避するためには、本実施の形態におけるように、当該RFIDタグ11に固有のフラグ・レジスタを特定し、PDAによりRFIDタグ11にアクセスした場合には、上記固有のフラグ・レジスタを取得しない限り、PDAによっては情報の読み取り、又は書き込みが不可能となるように構成することが有効である。
【0066】
その結果、複数の作業者により、同一のRFIDタグへ重複してアクセスすることを防止することができ、同一のRFIDタグへの重複した書き込み作業を防止することができ、バルブ装置13のメンテナンス作業が未完了なまま、同一のRFIDタグへ重複してアクセスした、他のPDAを所有するメンテナンス作業者によって、当該バルブ装置13が他の管路等において使用される事態を防止することができる。
【0067】
本実施の形態にあっては、バルブ装置13に固定されたRFIDタグ11及びPDA25のみにより設備管理システム10が構成されているが、メンテナンス情報を集中管理して、管理効率を向上させるために、図5に示すように、必要に応じて、メンテナンス情報管理用のPC28をプラント管理部門に設置し、上記PDA25に格納されているメンテナンス作業の情報をアップロードすると共に、PDA25へメンテナンス作業の指示をダウンロードできるように構成してもよい。
【0068】
このように構成した場合であっても、従来のような、管理情報を集中管理するデータベース等の情報管理装置、及び上記データベースサーバへ携帯端末機からアクセスするための無線LANの設備を設置する場合に比して、管理システムを構成することに要するコストを低減できる。本実施の形態にあっては、上記のように、RFIDタグ11はパッシブタグにより構成され、「電磁誘導方式」ではなく「電波方式」に基づき、携帯端末機から発せられる電波をRFIDタグのアンテナにより受信して情報伝達を行うように構成され、携帯用端末機から発せられる電波をエネルギー源として動作することから、電池を内蔵する必要がない。
【0069】
その結果、RFIDタグの構成も簡易であって、かつ小型であることから、バルブ装置等の各種プラント設備への取り付けも容易であり、かつプラント設備の作業環境においても長年の使用に耐えうる流体製品の製造プラントおける設備管理システムを提供することができる。
【0070】
また、RFIDタグ11はパッシブタグであって、作業者は「電磁誘導方式」に比して、より遠くの位置からRFIDタグに格納された情報を取得することができるため、流体製品の製造プラントにおける管路にメンテナンスを必要とするバルブ装置13が配設されている場合には、比較的に遠方から当該バルブ装置13のRFIDタグ11にアクセスして、メンテナンスの情報を入手することができると共に、メンテナンス作業の終了後には比較的に遠方から当該RFIDタグ11へアクセスして完了したメンテナンス情報の書き込みを行うことができるため、RFIDタグ11からのメンテナンス情報の読み取り、及びRFIDタグ11へのメンテナンス情報の書き込みを容易に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明に係る製造プラントおける設備管理システムは、各種の製品製造プラントに広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明に係る製造プラントにおける設備管理システムの一実施の形態であって、液体製品の製造プラントにおける液体製品が流通する管路に配置された多数のバルブ装置にRFIDタグが取り付けられ、PDAにより情報の読み出し/書き込みを行うように構成されている場合を示す概念図である。
【図2】本発明に係る製造プラントにおける設備管理システムの一実施の形態であって、液体製品の製造プラントにおける液体製品が流通する管路に配置された多数のバルブ装置に取り付けられるRFIDタグ、カバー部材及びシール部材を示す平面図である。
【図3】本発明に係る製造プラントにおける設備管理システムの一実施の形態であって、液体製品の製造プラントにおける液体製品が流通する管路に配置された多数のバルブ装置に取り付けられたRFIDタグ、ベース部、カバー部材及びシール部材を示す横断面図である。
【図4】本発明に係る製造プラントにおける設備管理システムの一実施の形態であって、液体製品の製造プラントにおける液体製品が流通する管路に配置された多数のバルブ装置に取り付けられたRFIDタグ、ベース部、カバー部材及びシール部材を示す平面図である。
【図5】本発明に係る製造プラントにおける設備管理システムの他の実施の形態であって、液体製品の製造プラントにおける液体製品が流通する管路に配置された多数のバルブ装置に取り付けられたRFIDタグ、PDA及びメンテナンス管理PCにより設備管理システムを構成した場合を示す概念図である。
【符号の説明】
【0073】
10 設備管理システム
11 RFIDタグ
12 携帯端末機
13 バルブ装置
14 エアモータ部
15 外側表面部
16 ベース部
17 凹部
18 カバー部材
19 収納部
20 側面部
21 フランジ部
22 シール部
23 孔部
24 QRコード
25 PDA
26 PDA本体
27 ペン型スキャナ
28 PC
29 接着剤
30 上面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造プラントにおける設備管理システムであって、製造プラントの各設備に装着され、各設備に関する情報を格納したRFIDタグと、上記RFIDタグの情報を読み取り/書き込み可能な携帯端末機とにより構成され、上記各設備に関する情報は、RFIDタグのみにより管理されることを特徴とする製造プラントにおける設備管理システム。

【請求項2】
上記情報は、各設備に関する随時なメンテナンス作業の結果の履歴情報を含むことを特徴とする請求項1記載の製造プラントにおける設備管理システム。

【請求項3】
上記情報は、各設備に関する随時な使用の結果の履歴情報を含むことを特徴とする請求項1記載の製造プラントにおける設備管理システム。

【請求項4】
上記設備は、流体製品の製造の管路に配設され、前記管路を開閉制御しうるバルブ装置であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造プラントにおける設備管理システム。

【請求項5】
上記RFIDタグは、バルブ本体を開閉駆動しうるエアモータ部に装着されていることを特徴とする請求項4記載の製造プラントにおける設備管理システム。

【請求項6】
上記情報は、各装置に関する使用管理マニュアルを含むことを特徴とする請求項1記載の製造プラントにおける設備管理システム。

【請求項7】
上記情報は、文字情報であることを特徴とする請求項1記載の製造プラントにおける設備管理システム。

【請求項8】
上記情報は、画像情報であることを特徴とする請求項1記載の製造プラントにおける設備管理システム。

【請求項9】
上記情報は、当該バルブ装置が使用されていたプラント内の環境を示す画像情報であることを特徴とする請求項4又は5のいずれか1項に記載の製造プラントにおける設備管理システム。

【請求項10】
上記携帯端末機は、電波によりRFIDタグに格納された情報を読み取り/書き込み可能に形成されていることを特徴とする請求項1記載の製造プラントにおける設備管理システム。

【請求項11】
上記RFIDタグは、パッシブタグであることを特徴とする請求項10記載の製造プラントにおける設備管理システム。

【請求項12】
上記携帯端末機は、RFIDタグへアクセスした場合に、RFIDタグが発信した固有のフラグ・レジスタを取得することにより情報を読み取り/書き込み可能に構成されていることを特徴とする請求項10記載の製造プラントにおける設備管理システム。

【請求項13】
上記RFIDタグは、上記エアモータ部の外側表面部に固定され、上記エアモータ部の外側表面部に固定され、RFIDタグを収納して、上記エアモータ部の外側表面から、外方へ所定間隔で離間させうるベース部と、上記RFIDタグ及び上記ベースプレート部を被覆しうるカバー部とを備えていることを特徴とする請求項5記載の製造プラントにおける設備管理システム。

【請求項14】
上記携帯端末機は、PDAであることを特徴とする請求項1記載の製造プラントおける設備管理システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−276923(P2009−276923A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126270(P2008−126270)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000006138)明治乳業株式会社 (265)
【出願人】(000157946)岩井機械工業株式会社 (37)
【Fターム(参考)】