説明

製造ライン設計装置および製造ライン設計方法

【課題】産業機械やモータ、タービンなどの個別受注製品の製造ライン設計に関して、工場レイアウトにおける仕掛り品置き場の仕掛り数(バッファ数)を適正化する製造ライン設計装置及び製造ライン設計方法を提供する。
【解決手段】製造ライン設計装置110は、製造ラインをシミュレーションにより、将来の生産能力や仕掛数を予測する生産シミュレーション実行部1112と、シミュレーション期間における最大バッファ数、平均バッファ数に対して、各工程のバッファ数の割合であるバッファ利用率を計算するバッファ利用率算出部1113と、バッファ利用効率が低い工程からバッファ数を順次削減させ、全体のバッファ数を最小化するまで繰返し演算し、工程間のバッファ数を決定するバッファ数削減実行部1115、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業機械やモータ、タービンなどの個別受注製品の製造ライン設計に関して、工場レイアウトにおける仕掛り品置き場の仕掛り数(バッファ数)の適正化に関する製造ライン設計装置及び製造ライン設計方法の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
新しい製造ラインの立ち上げのための製造ライン設計では、目標生産量達成や仕掛り数削減を目的として、設備台数や工場レイアウト、タクトタイムなどの設計因子を決定する。特に、大型機械組立製品を対象とする場合、仕掛り品の運搬や置き場の確保の観点から、工場レイアウト設計における仕掛り品置き場の仕掛り数(バッファ数)の適正化が重要な課題となる。具体的には、バッファ数を小さくすると、設備故障などの変動要因により、工程間の仕掛り品の不足が発生し、当該故障設備の故障期間中に他の設備が稼働できなくなり、目標生産量を達成できない場合がある。また、バッファ数を大きくすると、無駄な仕掛りを抱え、収益が悪化する。そのため、バッファ数は、目標生産量に到達し、かつ適正な仕掛り数に基づき、設計する必要がある。
【0003】
製造ライン設計において生産量や仕掛り数を評価する技術として、製造ラインシミュレーションがある。例えば特許文献1では、製造ラインを仮想的にモデル化してライン内を流れるワークの挙動を予測し、あらかじめ目標のバッファ数を設定することで、シミュレーションを実行し、生産量の達成度を評価する。また、目標の生産量に達成していない場合、目標のバッファ数を再設定して、シミュレーションを実行し、生産量の改善を確認することができる製造ライン能力評価技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−244716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1では、試行錯誤で製造ラインのバッファを作成し、その都度製造ラインシミュレーションを実施して、生産量を評価するため、設計評価時間が長いという問題があった。例えば、バッファ設計における設計変数は、各工程前のバッファであり、工程数が増加すると、各工程前のバッファの組み合わせは、指数関数的に増加する。例えば、工程数が10個の製造ラインについて考える。ここで簡単な例として、各工程前のバッファについて1台と0台の2通りのバッファ数を検討することを考える。この場合、組み合わせ数、つまりバッファ設計案の数は、210個(1024個)となる。ここで、製造ラインのシミュレーションの評価1回に要する時間が約1時間である場合、設計案評価1回の所要時間(約1時間)と設計案数(1024個)の積より、設計評価時間は1024時間(約43日)となる。設計評価時間の長期化は、製造ライン設計期間の長期化につながるため、バッファ数の設計評価時間の短縮が課題である。
【0006】
そこで、本発明では、工場レイアウトにおける仕掛り品置き場の最大容量(バッファ数)の設計を対象として、各バッファの要・不要を判定するための設計指標を新たに定義することで、短時間でのバッファ数の設計を実現する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明では、製造ラインのバッファ数を設計する製造ライン設計装置を、将来予測される受注情報の全ての製品の作業の進行を計画して、作業履歴情報を作成する生産シミュレーション実行部と、前記作業履歴情報より、各工程前バッファの仕掛り量、最大バッファ利用率、平均バッファ利用率、生産量を計算するバッファ利用率算出部と、前記生産量が目標生産量を達成していない場合に、平均バッファ利用率が上限しきい値より大きい工程前バッファ数を増加させて、前記生産シミュレーション実行部の処理を再実行するバッファ数増加実行部と、前記生産量が目標生産量を達成した場合に、最大バッファ利用率が1より小さい工程前バッファ数を最大仕掛り数として、または平均バッファ利用率が下限しきい値より小さい工程前バッファ数を削減させて、前記生産シミュレーション実行部の処理を再実行するバッファ数削減実行部と、増加可能、または削減可能なバッファが無くなって前記処理を終了した際の最後のシミュレーション結果、各工程前バッファ数を出力する実行結果表示部とを備えて構成した。
【0008】
また、上記課題を解決するために本発明では、製造ラインのバッファ数を設計する製造ライン設計方法において、将来予測される受注情報の全ての対象製品、対象作業工程、対象設備、対象作業時間の情報に基づいて、全ての製品を使用可能な設備に順次、作業時間分だけ割り付け、時間の進行に従って、設備、または工程前バッファに仕掛かる時刻を記録した作業履歴情報を作成する生産シミュレーションを行い、前記作業履歴情報より、各工程i前バッファの最大仕掛り数WIPMAX,i、平均仕掛り数WIPAVE,iを計算し、前記最大仕掛り数WIPMAX,i、平均仕掛り数WIPAVE,iを工程i前バッファ数NBuffer,iで割って、工程i前バッファの最大バッファ利用率αMAX,i、平均バッファ利用率αAVE,iを計算し、および前記作業履歴情報より、対象期間における平均生産量を計算し、前記生産量が目標生産量を達成していない場合に、平均バッファ利用率が上限しきい値より大きい工程前バッファ数を増加させて、前記生産シミュレーション処理を再実行し、前記生産量が目標生産量を達成した場合に、最大バッファ利用率が1より小さい工程前バッファ数を最大仕掛り数として、または平均バッファ利用率が下限しきい値より小さい工程前バッファ数を削減させて、前記生産シミュレーション処理を再実行し、増加可能、または削減可能なバッファが無くなって前記工程を終了した際の最後のシミュレーション結果、各工程前バッファ数を出力するようにした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、工場レイアウトにおけるバッファ数の設計において、最小のバッファ数を短時間で導出することが可能となる。これにより、目標生産量を達成し、かつ最小の仕掛数を維持できる製造ライン設計が可能となる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】製造現場における作業工程の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の一実現形態である製造ライン設計装置の概略図を示す図である。
【図3】本発明の一実現形態である受注情報を示す図である。
【図4】本発明の一実現形態である作業工程経路情報を示す図である。
【図5】本発明の一実現形態である設備情報を示す図である。
【図6】本発明の一実現形態である製品置き場情報を示す図である。
【図7】本発明の一実現形態である作業時間情報を示す図である。
【図8】本発明の一実現形態である作業履歴情報を示す図である。
【図9】本発明の一実現形態であるハードウェア構成を示す図である。
【図10】本発明の一実現形態である製造ライン設計装置のバッファ数を決定する処理を示すフローチャートである。
【図11】本発明の一実現形態である製造ライン設計装置の製造ラインシミュレーションを実行する処理を示すフローチャートである。
【図12】本発明の一実現形態である製造ライン設計装置のバッファ利用率算出部の処理を示すフローチャートである。
【図13】本発明の一実現形態である製造ライン設計装置のバッファ数増加実行部の処理を示すフローチャートである。
【図14】本発明の一実現形態である製造ライン設計装置のバッファ数削減実行部の処理を示すフローチャートである。
【図15】本発明の一実現形態であるバッファ設計数の出力結果である。
【図16】本発明の一実現形態であるバッファ設計数の出力結果である。
【図17】本発明の一実現形態であるバッファ設計数の出力結果である。
【図18】本発明の一実現形態であるバッファ設計数の出力結果である。
【図19】本発明の一実現形態であるバッファ設計数の出力結果である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実現形態について説明する。
本発明では、工場レイアウトにおけるバッファ数の設計を対象とする。図1は、ある製造作業現場における作業工程フローの例である。以下、本例を対象として本発明の詳細を説明する。図1に示すように、対象とする製造作業現場の作業工程フローには、寸法旋盤、外形旋盤などの名称の作業工程があり、各作業工程の間には部品置き場が存在する。本発明における製造ライン設計装置では、例えば、製造ラインにおける作業工程の間の各部品置き場の仕掛品を置く最大容量(バッファ数)を算出し、利用者に提供する。
【0012】
図2は、製造ライン設計装置110の概略図である。図示するように、製造ライン設計装置110は、制御部111と、入力部112、出力部113、通信部114、記憶部115を備える。また、制御部111は、情報取得部1111と、生産シミュレーション実行部1112と、バッファ利用率算出部1113と、バッファ数増加実行部1114と、バッファ数削減実行部1115と、実行結果表示部1116とを備える。
【0013】
入力部112は、情報の入力を受け取る。出力部113は、情報を出力する。通信部114は、ネットワーク190を介した情報の送受信を行う。記憶部115は、受注情報記憶部1151と、作業工程経路情報記憶部1152と、設備情報記憶部1153と、部品置き場情報記憶部1154と、作業時間情報記憶部1155と、作業履歴情報記憶部1156を備える。
【0014】
図2に記載した製造ライン設計装置110は、例えば、図9(コンピュータ900の概略図)に示すような、CPU(Central Processing Unit)901と、メモリ902と、HDD(Hard Disk Drive)等の外部記憶装置903と、CD(Compact Disk)やDVD(Digital Versatile Disk)等の可搬性を有する記憶媒体904に対して情報を読み書きする読取装置905と、キーボードやマウスなどの入力装置906と、ディスプレイなどの出力装置907と、通信ネットワークに接続するためのNIC(Network Interface Card)等の通信装置908と、を備えた一般的なコンピュータ900で実現できる。
【0015】
図3は、図2に記載の受注情報記憶部1151のファイルフォーマットの一実施形態を表す図である。図3において、ファイルフォーマット1151は、顧客である納め先から受注を受けたときに採番される識別番号である製品番号を登録するためのフィールド、製品を納め先に出荷する納期を登録するためのフィールド、顧客の納め先を登録するためのフィールド、製品を製造する作業工程経路の識別番号である作業工程経路番号を登録するためのフィールドを備えている。
【0016】
図4は、図2に記載の作業工程経路情報記憶部1152のファイルフォーマットの一実施形態を表す図である。図4において、ファイルフォーマット1152は、製品種類ごとに予めパターン化された作業工程経路の識別番号である作業工程経路番号を登録するためのフィールド、作業工程経路内の作業工程の順番を示す作業工程番号を登録するためのフィールド、作業工程の名称を示す作業工程名称を登録するためのフィールド、を備えている。
【0017】
図5は、図2に記載の設備情報記憶部1153のファイルフォーマットの一実施形態を表す図である。図5において、ファイルフォーマット1153は、設備番号を登録するためのフィールド、該当設備の名称を登録するためのフィールド、該当設備が使用される作業工程経路番号を登録するためのフィールド、該当設備が使用される作業工程経路内の作業工程番号を登録するためのフィールドを備えている。
【0018】
図6は、図2に記載の製品置き場情報記憶部1154のファイルフォーマットの一実施形態を表す図である。図6において、ファイルフォーマット1154は、製品置き場の識別番号である製品置き場番号を登録するためのフィールド、該当製品置き場番号の容量を登録するためのフィールド、該当製品置き場番号に該当する作業工程名称を登録するためのフィールド、を備えている。
【0019】
図7は、図2に記載の作業時間情報記憶部1155のファイルフォーマットの一実施形態を表す図である。図7において、ファイルフォーマット1155は、顧客である納め先から受注を受けたときに採番される識別番号である製品番号を登録するためのフィールド、該当製品番号が製造処理を必要とする作業工程の作業工程番号を登録するためのフィールド、該当製品番号が製造処理される作業工程で要する作業時間を登録するためのフィールド、を備えている。
【0020】
図8は、図2に記載の作業履歴情報記憶部1156のファイルフォーマットの一実施形態を表す図である。図8において、ファイルフォーマット1156は、顧客である納め先から受注を受けたときに採番される識別番号である製品番号を登録するためのフィールド、該当製品番号が現在仕掛かっている作業工程番号を登録するためのフィールド、該当製品番号の処理の状態を登録するためのフィールド、該当製品番号が現在仕掛かっている設備又は製品置き場番号を登録するためのフィールド、該当製品番号が現在仕掛かっている設備又は製品置き場番号で作業を開始した時刻を登録するためのフィールド、該当製品番号が現在仕掛かっている設備又は製品置き場番号で作業を終了した時刻を登録するためのフィールド、を備えている。
【0021】
次に、本発明に関わる製造ライン設計装置110が実行する処理プログラムについて、図10を用いて順に説明する。
図10は、本発明に関わる製造ライン設計装置110が実行するバッファ数を決定する処理を示すフローチャートである。
【0022】
まず、情報取得部1111は、記憶部115より、将来予測される計画対象の受注情報、作業工程経路情報、設備情報、製品置き場情報、作業時間情報を入力データとして読み込む(S10)。
【0023】
次に、生産シミュレーション実行部1112は、現在から将来への生産シミュレーションを実行する(S20)。なお、このステップS20の詳細は、図11を用いて説明する。
次に、バッファ利用率算出部1113では、製造ラインシミュレーションの実行結果からバッファ利用率を算出し、目標生産量の到達を判定する(S30)。
なお、このステップS30の詳細は、図12を用いて説明する。
【0024】
次に、バッファ数増加実行部1114は、目標生産量に到達していない場合に、バッファ数の増加を実行し、再度、製造ラインシミュレーションを実行する(S40)。但し、増加可能なバッファが 無ければ終了する。
なお、このステップS40の詳細は、図13を用いて説明する。
【0025】
次に、バッファ数削減実行部1115は、バッファ数の削減を実行し、再度、製造ラインシミュレーションを実行する。但し、削減可能なバッファが無ければ終了する(S50)。
なお、このステップS50の詳細は、図14を用いて詳細に説明する。
次に、実行結果表示部1116は、ステップS50までに計算した結果を表示する(S60)。なお、このステップS60の詳細は、図15、16、17、18、19を用いて詳細に説明する。
【0026】
図11は、図10におけるステップS20における製造ラインシミュレーションを実行する処理を示すフローチャートである。
まず、生産シミュレーション実行部1112は、記憶部115に格納されている受注情報記憶部1151と、作業工程経路情報記憶部1152と、設備情報記憶部1153、作業時間情報記憶部1155から、対象製品、対象作業工程、対象設備、対象作業時間に関わる情報を取り込む(S201)。
【0027】
次に、生産シミュレーション実行部1112は、受注情報記憶部1151に格納されている全ての製品の計画(設備への割り付け計画)を立案するために全製品の数だけ処理ステップS203〜S209を繰り返す(S202)。
次に、生産シミュレーション実行部1112は、対象製品の計画を立案するために全工程の数だけ処理ステップS204〜S208を繰り返す(S203)。
次に、生産シミュレーション実行部1112は、対象工程に該当する設備の数だけ処理ステップS205〜S206を繰り返す(S204)。
次に、生産シミュレーション実行部1112は、対象製品、対象工程の該当日時に使用可能な設備が存在しているか確認する(S205)。
【0028】
生産シミュレーション実行部1112は、使用可能な設備が存在していれば、ステップS206へ進み、使用可能な設備に該当製品を、該当日時に作業時間分だけ割り付け、ステップS203に進み、次の工程を対象とする(S206)。また、その際、作業履歴情報記憶部1156に製品番号、作業工程番号、状態として“作業中”、設備名、作業開始時刻、作業完了時刻を記録する。
【0029】
また、生産シミュレーション実行部1112は、使用可能な設備が存在していなければ、ステップS207へ進み、すべての対象設備で繰り返す。すべての設備で使用可能な設備がなければ、ステップS208へ進み、該当日時を単位時間分、先に進め(S208)、ステップS205へ進む。また、その際、作業履歴情報記憶部1156に製品番号、作業工程番号、状態として“作業前停滞中”、部品置き場名、作業開始時刻、作業完了時刻を記録する。
【0030】
上記、生産シミュレーション実行部1112は、対象製品の計画を立案するために全工程の数だけ処理ステップS204〜S208を繰り返し(S209)、全ての対象製品の計画を立案するために全工程の数だけ処理ステップS203〜S209を繰り返す(S210)。
【0031】
図12は、図10におけるステップS30における製造ラインシミュレーションの実行結果からバッファ利用率を算出し、目標生産量の到達を判定する処理であるバッファ利用率算出部1113の処理を示すフローチャートである。
【0032】
ここで、工程i前バッファの最大バッファ利用率αMAX,i、平均バッファ利用率αAVE,i、の定義を次式に示す。
【0033】
【数1】

【0034】
【数2】

【0035】
WIPMAX,i:工程i前バッファにおけるシミュレーション対象期間内の最大仕掛り数 [台]
WIPAVE,i:工程i前バッファにおけるシミュレーション対象期間内の平均仕掛り数 [台]
NBuffer,i:工程i前バッファ数(バッファに置ける仕掛り品の最大数) [台]
バッファ利用率は、シミュレーション期間内でそのバッファが実際にどの程度利用されているかを表す指標である。例えばある工程i前バッファにおいて、最大バッファ利用率αMAX,iが1より小さい場合、期間内の最大仕掛り数がバッファ数に達していないことを示しており、期間内に一度もバッファが満たされなかったことが分かり、不要なバッファがあることが分かり、削減可能である。また、平均バッファ利用率αAVE,iが小さい場合は、期間内にそのバッファに仕掛りが溜まる頻度が小さいことを表しており、そのバッファは削減することができる。一方、平均バッファ利用率αAVE,iが大きい場合は、そのバッファの利用頻度が大きいことを表しており、生産量が目標に達していない場合は、バッファ数を増加させる必要がある。
【0036】
そこで、バッファ利用率算出部1113では、以下の手順で、バッファ利用率を算出する。まず、バッファ利用率算出部1113は、ステップS20のシミュレーション結果である作業履歴情報1156を読み込む(S301)。
【0037】
次に、バッファ利用率算出部1113は、作業履歴情報1156から、仕掛り数を集計する(S302)。ここで仕掛り数は、シミュレーション結果から対象期間における各工程i前バッファ(製品置き場)の最大仕掛り数WIPMAX,i、平均仕掛り数WIPAVE,iを計算する。
【0038】
次に、バッファ利用率算出部1113は、製品置き場情報1154と、ステップS302で計算した最大仕掛り数WIPMAX,iから、数式1に基づき、最大バッファ利用率αMAX,iを計算する(S303)
次に、バッファ利用率算出部1113は、製品置き場情報1154と、ステップS302で計算した平均仕掛り数WIPAVE,iから、数式2に基づき、平均バッファ利用率αAVE,iを計算する(S304)。
【0039】
次に、バッファ利用率算出部1113は、作業履歴情報1156から生産量を計算する。(S305)。ここで生産量は、シミュレーション結果から対象期間における平均生産量を計算する。
【0040】
最後に、バッファ利用率算出部1113は、生産量が予め設定されていた目標生産量を達成していれば、ステップS50へ進む。生産量が未達成であれば、ステップS40へ進む(S306)、
図13は、図10におけるステップS40におけるバッファ数の増加を実行し、再度、製造ラインシミュレーションを実行する処理であるバッファ数増加実行部1114の処理を示すフローチャートである。
【0041】
まず、バッファ数増加実行部1114は、S30で計算したバッファ利用率、記憶部115に格納されている製品置き場情報1154を取り込む(S401)。
次に、バッファ数増加実行部1114は、全工程の数だけ処理ステップS403〜S405を繰り返す(S402)。
次に、バッファ数増加実行部1114は、工程 i において、平均バッファ利用率αAVE,i と上限しきい値UBを比較し、平均バッファ利用率αAVE,iが大きい場合は、ステップ404へ進み、平均バッファ利用率αAVE,iが小さい場合は、ステップ405へ進む(S403)。
【0042】
次に、バッファ数増加実行部1114は、工程前バッファ数NBuffer,i を増加させる(
S404)
【0043】
(数3)
Buffer,i = NBuffer,i + 1 (数式3)
上記、バッファ数増加実行部1114は、全工程の数だけ処理ステップS402〜S404を繰り返す(S405)。
【0044】
次に、全ての工程のバッファの中で、増加させたバッファが1つでも有れば、ステップ20へ進み、生産ラインシミュレーションを実行する。また、増加させたバッファが1つも無い場合には、ステップ60へ進む(S406)。
【0045】
図14は、図10におけるステップS50におけるバッファ数の削減を実行し、再度、製造ラインシミュレーションを実行する処理であるバッファ数削減実行部1115の処理を示すフローチャートである。
【0046】
まず、バッファ数削減実行部1115は、S30で計算したバッファ利用率、記憶部115に格納されている製品置き場情報1154を取り込む(S501)。
次に、バッファ数削減実行部1115は、全工程の数だけ処理ステップS503〜S507を繰り返す(S502)。
次に、バッファ数削減実行部1115は、工程 i において、最大バッファ利用率αMAX,i と“1”を比較し、最大バッファ利用率αMAX,iが“1”より小さい場合は、ステップ504へ進み、最大バッファ利用率αMAX,iが“1”の場合は、ステップ505へ進む(S503)。
【0047】
次に、バッファ数削減実行部1115は、工程前バッファ数NBuffer,i を最大仕掛り数WIPMAX,iとする(S504)
【0048】
(数4)
Buffer,i = WIPMAX,i (数式4)
次に、バッファ数削減実行部1115は、工程 i において、平均バッファ利用率αAVE,i と下限しきい値LBを比較し、平均バッファ利用率αAVE,iが下限しきい値LBより小さい場合は、ステップ506へ進み、平均バッファ利用率αAVE,iが下限しきい値LBより大きい場合は、ステップ507へ進む(S505)。
【0049】
次に、バッファ数削減実行部1115は、工程前バッファ数NBuffer,i を削減する(S506)。
【0050】
(数5)
Buffer,i =NBuffer,i − 1 (数式5)
上記、バッファ数削減実行部1115は、全工程の数だけ処理ステップS502〜S506を繰り返す(S507)。
【0051】
次に、全ての工程のバッファの中で、削減させたバッファが1つでも有れば、ステップ20へ進み、生産ラインシミュレーションを実行する。また、削減させたバッファが1つも無い場合には、ステップ60へ進む(S508)。
【0052】
以上の処理で用いた、上限しきい値UB、下限しきい値LBは、各工程のバッファ利用率を収める目標とする上限値、下限値を設定する。
【0053】
最後に、ステップS60の出力結果について説明する。
図15は、出力画面1000の一例を示す概略図である。出力画面1000は、製造ライン設計装置110が作成した平均バッファ利用率とバッファ数を表示する表示項目1001と、上限しきい値UB及び、下限しきい値LBを表示する表示項目1002を示している。表示項目1001は、平均バッファ利用率を左側の縦軸に示し、また、バッファ数を右側の縦軸に示し、横軸に工程NOを示しており、製造ライン設計装置110が作成した最終的な製造ラインシミュレーション結果のバッファ利用率及び、バッファ数を表示している。また、表示項目1001に示す2本の線は、上限しきい値UB及び、下限しきい値LBを表示している。本結果は、工程毎のバッファ利用率が、上限しきい値UB及び、下限しきい値LBの範囲内に収まっていることが分かる。
【0054】
図16は、出力画面1010の一例を示す概略図である。出力画面1010は、製造ライン設計装置110が作成した最大バッファ利用率とバッファ数を表示する表示項目1011と、上限しきい値UB及び、下限しきい値LBを表示する表示項目1012を示している。表示項目1011は、最大バッファ利用率を左側の縦軸に示し、また、バッファ数を右側の縦軸に示し、横軸に工程NOを示しており、製造ライン設計装置110が作成したバッファ利用率及び、バッファ数の結果を表示している。また、表示項目1011に示す2本の線は、上限しきい値UB及び、下限しきい値LBを表示している。本結果は、工程毎のバッファ利用率が、上限しきい値UB以下に収まっていることが分かる。
【0055】
図17は、出力画面1020の一例を示す概略図である。出力画面1020は、製造ライン設計装置110が作成した平均バッファ利用率とバッファ数を表示する表示項目1021と、該当工程、上限しきい値UB及び、下限しきい値LBを表示する表示項目1022を示している。表示項目1021は、平均バッファ利用率を左側の縦軸に示し、また、バッファ数を右側の縦軸に示し、横軸にシミュレーション回数を示しており、製造ライン設計装置110が作成した平均バッファ利用率及び、バッファ数の結果の推移を表示している。また、表示項目1021に示す2本の線は、上限しきい値UB及び、下限しきい値LBを表示している。本結果は、工程毎の平均バッファ利用率が、上限しきい値UB及び、下限しきい値LBの範囲内に収まるまで、シミュレーションを繰り返していることが分かる。
【0056】
図18は、出力画面1030の一例を示す概略図である。出力画面1030は、製造ライン設計装置110のシミュレーション結果である。表示項目1031は、顧客である納め先から受注を受けたときに採番される識別番号である製品番号を登録するためのフィールド、該当製品番号が現在仕掛かっている作業工程番号を登録するためのフィールド、該当製品番号の処理の状態を登録するためのフィールド、該当製品番号が現在仕掛かっている設備又は製品置き場番号を登録するためのフィールド、該当製品番号が現在仕掛かっている設備又は製品置き場番号で作業を開始した時刻を登録するためのフィールド、該当製品番号が現在仕掛かっている設備又は製品置き場番号で作業を終了した時刻を登録するためのフィールド、を備えている。
【0057】
図19は、出力画面1040の一例を示す概略図である。出力画面1040は、製造ライン設計装置110のシミュレーション結果である作業工程毎の最大仕掛り数と平均仕掛り数を表示する。表示項目1041は、仕掛り数を縦軸に示し、横軸に工程NOを示しており、製造ライン設計装置110が作成した最大仕掛り数と平均仕掛り数の結果を表示している。
【符号の説明】
【0058】
110…製造ライン設計装置、 111…制御部、 112…入力部、 113…出力部、 114…通信部、 115…記憶部、
900…コンピュータ、 901…CPU(Central Processing Unit)、 902…メモリ、 903…外部記憶装置、 904…可搬性を有する記憶媒体、 905…読取装置、 906…入力装置、 907…出力装置、 908…通信装置、
1000…出力画面、 1001…表示項目1、 1002…表示項目2、 1010…出力画面、 1011…表示項目1、 1012…表示項目2、 1020…出力画面、 1021…表示項目1、 1022…表示項目2、 1030…出力画面、 1031…表示項目、 1040…出力画面、 1041…表示項目
1111…情報取得部、 1112…生産シミュレーション実行部、 1113…バッファ利用率算出部、 1114…バッファ数増加実行部、 1115…バッファ数削減実行部、 1116…実行結果表示部、
1151…受注情報記憶部、 1152…作業工程経路情報記憶部、 1153…設備情報記憶部、 1154…部品置き場情報記憶部、 1155…作業時間情報記憶部、 1156…作業履歴情報記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造ラインのバッファ数を設計する製造ライン設計装置であって、
将来予測される受注情報の全ての製品の作業の進行を計画して、作業履歴情報を作成する生産シミュレーション実行部と、
前記作業履歴情報より、各工程前バッファの仕掛り量、最大バッファ利用率、平均バッファ利用率、生産量を計算するバッファ利用率算出部と、
前記生産量が目標生産量を達成していない場合に、平均バッファ利用率が上限しきい値より大きい工程前バッファ数を増加させて、前記生産シミュレーション実行部の処理を再実行するバッファ数増加実行部と、
前記生産量が目標生産量を達成した場合に、最大バッファ利用率が1より小さい工程前バッファ数を最大仕掛り数として、または平均バッファ利用率が下限しきい値より小さい工程前バッファ数を削減させて、前記生産シミュレーション実行部の処理を再実行するバッファ数削減実行部と、
増加可能、または削減可能なバッファが無くなって前記処理を終了した際の最後のシミュレーション結果、各工程前バッファ数を出力する実行結果表示部と、を備えることを特徴とする製造ライン設計装置。
【請求項2】
前記生産シミュレーション実行部は、
将来予測される受注情報の全ての対象製品、対象作業工程、対象設備、対象作業時間の情報に基づいて、全ての製品を使用可能な設備に順次、作業時間分だけ割り付け、時間の進行に従って、設備、または工程前バッファに仕掛かる時刻を記録した作業履歴情報を作成することを特徴とする請求項1に記載の製造ライン設計装置。
【請求項3】
前記バッファ利用率算出部は、
前記作業履歴情報より、各工程i前バッファの最大仕掛り数WIPMAX,i、平均仕掛り数WIPAVE,iを計算し、
前記最大仕掛り数WIPMAX,i、平均仕掛り数WIPAVE,iを工程i前バッファ数NBuffer,iで割って、工程i前バッファの最大バッファ利用率αMAX,i、平均バッファ利用率αAVE,iを計算し、
前記作業履歴情報より、対象期間における平均生産量を計算することを特徴とする請求項1に記載の製造ライン設計装置。
【請求項4】
前記バッファ数増加実行部は、工程i前バッファにおけるシミュレーション対象期間内の平均仕掛り数WIPAVE,iを、工程i前バッファ数NBuffer,iで割ることで計算できる工程i前バッファの平均バッファ利用率αAVE,iを用いて、目標生産量に到達していない場合に、平均バッファ利用率αAVE,iが大きい工程からバッファ数を順次増加させることで、目標生産量に到達することを特徴とする請求項1に記載の製造ライン設計装置。
【請求項5】
前記バッファ数削減実行部は、工程i前バッファにおけるシミュレーション対象期間内の平均仕掛り数WIPAVE,iを、工程i前バッファ数NBuffer,iで割ることで計算できる工程i前バッファの平均バッファ利用率αAVE,iを用いて、平均バッファ利用効率αAVE,iが低い工程からバッファ数を順次削減させ、全体のバッファ数を最小化するまで繰返し演算し、工程間のバッファ数を決定することを特徴とする請求項1に記載の製造ライン設計装置。
【請求項6】
前記実行結果表示部は、各工程のバッファ数に対して、シミュレーション期間における最大バッファ数、平均バッファ数の割合であるバッファ利用率を出力画面に表示することを特徴とする請求項1に記載の製造ライン設計装置。
【請求項7】
製造ラインのバッファ数を設計する製造ライン設計方法であって、
将来予測される受注情報の全ての対象製品、対象作業工程、対象設備、対象作業時間の情報に基づいて、全ての製品を使用可能な設備に順次、作業時間分だけ割り付け、時間の進行に従って、設備、または工程前バッファに仕掛かる時刻を記録した作業履歴情報を作成する生産シミュレーションを行い、
前記作業履歴情報より、各工程i前バッファの最大仕掛り数WIPMAX,i、平均仕掛り数WIPAVE,iを計算し、前記最大仕掛り数WIPMAX,i、平均仕掛り数WIPAVE,iを工程i前バッファ数NBuffer,iで割って、工程i前バッファの最大バッファ利用率αMAX,i、平均バッファ利用率αAVE,iを計算し、および前記作業履歴情報より、対象期間における平均生産量を計算し、
前記生産量が目標生産量を達成していない場合に、平均バッファ利用率が上限しきい値より大きい工程前バッファ数を増加させて、前記生産シミュレーション処理を再実行し、
前記生産量が目標生産量を達成した場合に、最大バッファ利用率が1より小さい工程前バッファ数を最大仕掛り数として、または平均バッファ利用率が下限しきい値より小さい工程前バッファ数を削減させて、前記生産シミュレーション処理を再実行し、
増加可能、または削減可能なバッファが無くなって前記工程を終了した際の最後のシミュレーション結果、各工程前バッファ数を出力することを特徴とする製造ライン設計方法。
【請求項8】
前記最後のシミュレーション結果、各工程前バッファ数を出力する処理は、各工程のバッファ数に対して、シミュレーション期間における最大バッファ数、平均バッファ数の割合であるバッファ利用率を出力画面に表示することを特徴とする請求項7に記載の製造ライン設計方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2013−65127(P2013−65127A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202525(P2011−202525)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】