説明

製造工程管理装置、製造工程管理方法、そのプログラムおよび記憶媒体

【課題】実績登録が必要な工程を判断し、通知するとともに、実績登録の必要がない工程については下流工程で製造実績を自動的に補足することが可能な製造工程管理装置およびその方法、プログラム、記憶媒体を提供する。
【解決手段】複数工程からなる一連の製造工程に対して前記工程毎に当該作業の実績を登録すべきタイミングを表す登録タイミング情報を予めマスタ情報400に格納しておき、任意の工程の進捗情報と、登録タイミング情報を整合することにより、実績登録の必要性を判断し、必要な場合には、製造開始終了時間、製造時間、製造数量、不良品数等の作業実績情報470や資源投入実績情報480、在庫情報410の登録処理を行う。また、任意の工程の前工程の登録タイミング情報(登録なし)と工程の進捗状況により、任意の工程の実績登録処理において、前工程の実績データを補足する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造実績の入力を人手に頼っていることにより発生するミスを軽減し、かつ、製造実績の入力作業を軽減する装置、方法、および、コンピュータをその装置として機能させるためのプログラムおよび記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、工場内で複数の工程での作業により完成する製品の生産ラインにおいて、生産順序の詳細立案(スケジューリング)や実時間での生産状況の把握、管理は、生産効率の向上に欠かすことができない。
【0003】
このスケジューリングは、生産スケジューラ等を利用して実施されることが多い。生産スケジューラは、生産オーダ(何を、いつまでに、どれだけ)に対してさまざまな制約条件を考慮して、いつ、どこの設備で生産するかを決定する。
生産スケジューラでスケジューリングを実施する場合、精度の高い詳細な製造計画を立案することが目的となり、システム上で製造工程を詳細化する。これに伴い、製造現場への作業指示とともに、進捗状況を把握するうえで、作業指示に対する作業実績を登録することが必須要件となる。
【0004】
この製造実績登録手段としては、作業の開始、終了を示す開始入力と終了入力、作業の中断や再開を示す中断入力や再開入力が提供されるのが一般的である。しかし、作業指示として管理される製造工程数が多くなればなるほど、作業者の製造実績登録への負担が増し、入力のし忘れや、入力順(製造工程の順番)のミス等が発生するという問題が起こる。
【0005】
この問題を解決する方法として、製造実績の登録を簡素化する方法が提案されている。
すなわち、製造実績を登録しようとする工程より上流にある未完了の作業指示情報に対して、自動的に製造実績を補足するものである(例えば、特許文献1)。
【0006】
特許文献1には、製造情報の収集を行うシステムが開示されており、特に、手作業で入力された生産実績入力を集計するとともに、異常を検出した場合には強制的に補足または修正する方法を開示している。
【特許文献1】特開平8−194854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1に記載の生産情報収集システムにおいては、入力のし忘れや入力ミスによる生産実績を補足または補正することが可能であるが、本来、その入力のし忘れや入力ミスが補足または補正されるべきものであるかどうかの判断が行われていないため、自動補足・補正による生産実績情報の信頼性が低くなる可能性があるという問題がある。
また、この問題により、次のスケジューリングにおける精度が低下したり、生産実績と連動して管理されるべき資材の在庫や、製造により生産される中間品や製品の在庫の精度が低下する可能性もある。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、製造実績登録が必要な工程を判断し、作業者へその判断結果を即時に通知するとともに、製造実績の登録が必要と判断された工程については製造実績を自動的に補足することが可能な製造工程管理装置およびその方法、プログラム、記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した課題を解決するための第1の発明は、複数工程からなる一連の製造工程に対して前記工程毎に当該作業の実績を登録すべきタイミングを表す登録タイミング情報、前記工程毎の作業の進捗状況を表す進捗情報、及び前記工程毎の作業実績を表す作業実績情報を記憶する進捗情報記憶手段と、前記複数工程における任意の工程の進捗情報を更新するための更新情報、及び当該任意の工程における前記作業実績情報を受付ける作業指示受付け手段と、前記作業指示受付手段によって受付けた前記任意の工程の前記更新情報と、前記進捗情報記憶手段に記憶された登録タイミング情報とを整合し、更新可能である場合は、前記更新情報に基づいて前記進捗情報記憶手段に記憶された進捗情報を更新するとともに、前記進捗情報記憶手段へ前記作業実績情報を記憶する作業実績登録手段と、を備えることを特徴とする製造工程管理装置である。
【0010】
ここで、前記任意の工程より前に行う前工程の登録タイミング情報及び進捗情報に応じて、当該前工程の作業実績情報を補足する。この補足は、製造品目の各工程について予め定めた作業時間、及び補足対象の工程の次工程の作業開始日時に従って、前記作業実績情報を補足することが好ましい。
前記登録タイミング情報は、前記登録タイミング情報は、作業の開始および終了時、作業の終了時、または登録不要のいずれかであり、予め設定される。また、前記更新情報は、作業の開始、作業の中断、作業の再開、または作業の終了を、前記進捗情報は、作業の未着手、作業の開始、作業の中断、または作業の完了を表す。
前記任意の工程の前工程の登録タイミング情報が登録不要、かつ、前記進捗情報が未着手の場合は、当該前工程の作業実績情報を補足する。
前記作業実績情報は、少なくとも、前記任意の工程の作業開始日時、作業終了日時、実績製造時間、製造数量、不良品数量、資材投入数量、在庫数量を含むものである。
【0011】
以上の構成により、進捗情報記憶手段により予め各工程の登録タイミング情報を設定記憶しておき、作業実績登録手段により、更新情報とこの登録タイミング情報を元に更新可能であるか否かを判断し、更新可能の場合に、進捗情報を更新するとともに、作業実績情報を記憶させることが可能になる。
また、作業実績登録手段により、任意の工程より前の工程の登録タイミング情報とその進捗情報に従って、任意の工程において、前工程の作業実績情報を補足することが可能になる。
【0012】
第2の発明は、複数工程からなる一連の製造工程に対して前記工程毎に当該作業の実績を登録すべきタイミングを表す登録タイミング情報、前記工程毎の作業の進捗状況を表す進捗情報、及び前記工程毎の作業実績を表す作業実績情報を記憶する進捗情報記憶ステップと、前記複数工程における任意の工程の進捗情報を更新するための更新情報、及び当該任意の工程における前記作業実績情報を受付ける作業指示受付けステップと、前記作業指示受付手段によって受付けた前記任意の工程の前記更新情報と、前記進捗情報記憶手段に記憶された登録タイミング情報とを整合し、更新可能である場合は、前記更新情報に基づいて前記進捗情報記憶手段に記憶された進捗情報を更新するとともに、前記進捗情報記憶手段へ前記作業実績情報を記憶する作業実績登録ステップと、を含むことを特徴とする製造工程管理方法である。
【0013】
第3の発明は、コンピュータを、請求項1から請求項8のいずれかに記載の製造工程管理装置として機能させることを特徴とするプログラムである。
【0014】
第4の発明は、コンピュータを請求項1から請求項8のいずれかに記載の製造工程管理装置として機能させるためのプログラムを格納することを特徴とするコンピュータから読み取り可能な記憶媒体である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、作業者が製造実績を登録する必要がある工程であるか否かの判定を即時に行うことが可能であり、作業者の入力忘れや入力ミスの防止が可能となるとともに、作業者の製造実績入力の作業を軽減することが可能になる。また、これにより、製造実績の精度を確保し、製造計画(スケジューリング)での精度や生産統制を効果的に行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態の製造工程管理システム1のシステム構成例を示す図である。
【0017】
図1に示すように、製造工程管理システム1は、サーバ103とクライアント端末101、102等がネットワーク104で接続された構成を採る。
サーバ103は、製造工程管理システム1を稼動させるプログラムやデータ等を有し、クライアント端末101、102によって作業者はサーバ103のプログラムを起動して、製造工程の実績の入力等の製造工程管理を行う。
尚、図1のネットワーク104に接続されたサーバ103およびクライアント端末101、102の構成は一例であり、用途や目的に応じて、様々な構成を採り得る。
【0018】
図2は、サーバ103およびクライアント端末101、102のハードウエア構成を示す図である。
【0019】
サーバ103およびクライアント端末101、102は、例えば、CPU201、RAM203、ROM202、入力コントローラ205、ビデオコントローラ206、メモリコントローラ207、通信インタフェース(I/F)コントローラ208がシステムバス204に接続された構成である。
【0020】
CPU201は、システムバス204に接続される各デバイスやコントローラを統括的に制御する。
また、ROM202および外部メモリ211には、CPU201の制御プログラムであるBIOS(Basic Input/Output System)やオペレーティングシステムプログラム(以下、OSと呼ぶ)や、サーバ103やクライアント端末101、102の実行する機能を実現するために必要な後述する各種プログラム等が記憶されている。
【0021】
RAM203は、CPU201の主メモリ、ワークエリア等として機能する。CPU201は、処理の実行に際して、必要なプログラム等をRAM203にロードして、プログラムを実行することで各種動作を実現する。
【0022】
また、入力コントローラ205は、キーボードや図示しないマウス等209のポインティングデバイスからの入力を制御する。ビデオコントローラ206は、CRTディスプレイ等のディスプレイ装置210への表示を制御する。ディスプレイ装置210は、CRTだけでなく液晶ディスプレイでもよく、これらは必要に応じて管理者が使用するものである。
【0023】
メモリコントローラ207は、ブートプログラム、各種のアプリケーション、フォントデータ、ユーザファイル、編集ファイル、各種データ等を記憶するハードディスク(HD)やフロッピー(登録商標)ディスク(FD)、PCMCIAカードスロットにアダプタを介して接続されるコンパクトフラッシュ(登録商標)メモリ等の外部メモリ211へのアクセスを制御する。
【0024】
通信I/Fコントローラ208は、ネットワークを介して、外部機器と制御、通信するものであり、ネットワークでの通信制御処理を実行する。例えば、TCP/IPを用いたインターネット通信等が可能である。
尚、CPU201は、例えば、RAM203内の表示情報用領域へアウトラインフォントの展開(ラスタライズ)処理を実行することにより、ディスプレイ装置210上での表示を可能にしている。また、CPU201は、ディスプレイ装置210上の図示しないマウスカーソル等でのユーザによる指示を可能にする。
【0025】
本実施の形態の製造工程管理プログラムは、サーバ103の外部メモリ211に記録されており、必要に応じてRAM202にロードされることによりCPU201により実行される。さらに、本実施の形態の製造工程管理プログラムが用いる定義ファイルおよび各種情報テーブルは外部メモリ211に格納されている。これらについては後述する。
【0026】
図3は、本実施の形態の製造工程管理システム1の機能ブロック図である。
図3に示すように、製造工程管理システム1は、生産計画手段300、スケジューリング手段301、作業指示受付手段302、製造実績登録手段303より成る。
これらの手段(300〜303)は、プログラムとしてサーバ103のROM202および外部メモリ211に格納されており、CPU201は、これもサーバ103の外部メモリ211内に設けられたデータベース310との間で情報をやり取りしながら各手段(300〜303)の処理を実行する。
【0027】
生産計画手段300は、顧客からの受注データ411や、需要予測、販売計画等に基づく見込生産データ412等を入力として、既に保有されている在庫情報410や、生産現場での製造オーダの単位の効率を考慮しながら、品目、納期、数量等からなる製造オーダ情報430を作成する。
【0028】
スケジューリング手段301は、生産計画手段300で作成された製造オーダ情報430と、当該品目を製造するための工順や部品、設備や人員等の資源などの情報からなるマスタ情報400を元に、製造オーダを複数の製造工程に分解し、工順、各工程の計画開始日時、計画終了日時、計画製造時間、計画数量等からなる作業情報440および資源投入予定情報450を作成する。
【0029】
作業指示受付手段302は、作業情報440および資材投入予定情報450を参照し、作業開始までのリードタイム等を考慮して作業指示を出す。このリードタイムとしては、例えば、作業指示書等を製造現場に配布する時間や、作業に必要な資材が保管されている倉庫から製造現場まで搬入するのに要する時間等である。
【0030】
以上の作業指示受付手段302によって作業指示された作業指示書等を元に製造品目の製造作業が実施され、その作業実績が記録用紙等に作業実績データ413として記録され、この作業実績データ413を基に製造実績登録手段303により実績情報460が登録される。
実績情報460は、作業実績情報470、資材投入実績情報480、不良実績情報490等からなる。
以上に示した、データベース310内の各種情報および処理方法については後で詳述する。
【0031】
図4は、ある製品の製造工程のイメージを示す説明図である。
例えば、完成品の品目をAAA、完成品を製造するために必要な原材料をBBBとし、完成品を製造するために必要な工程数が5であるとする。工程を工程1から工程5、それぞれの工順を工順10から工順50、各工程で必要となる資源を資源1から資源5とする。
すなわち、原材料であるBBBを工順10、資源1の工程1で処理した後、工順20、資源2の工程2で処理し、同様に工程3、工程4、工程5の処理を経て完成品である品目AAAが製造されるとする。
同図では、工程と資源の関係を1対1で表現しているが、1工程で複数資源を取り扱う場合は、1資源が複数工程で使用できる場合もあり得る。
【0032】
図5は、データベース310に予め格納されているマスタ情報400(図5(a))および在庫情報410(図5(b))の説明図である。
図5(a)に示すように、マスタ情報400は、例えば、工順表401、部品表403、品目資源405、システムパラメータ407、カレンダ409等から成る。
【0033】
工順表は、完成品目(AAA)を製造するための工順(10〜50)、工程(工程1〜工程5)、製造実績登録方法等から成り、予めデータベース310に格納しておく。
製造実績登録方法については後述するが、工程ごとに、製造実績の登録タイミングを予め定めて製造実績登録方法として工順表401に格納しておく。登録タイミングは、作業の開始・終了時点、作業の終了時点、または登録なし(製造実績登録をその工程では行わない)のいずれかである。
【0034】
部品表403は、完成品の品目(親品目:AAA)、親品目を製造するために必要な原材料や部品(子品目:BBB)、子品目を投入する工順(10)、投入される子品目の必要量(2)からなり、予めデータベース310に格納しておく。
一方、品目資源405は、完成品目(AAA)を製造する各工順(10〜50)、製造現場の製造設備や人員などの資源(資源1〜資源5)、各資源の製造能力(能力値:製造可能時間等)からなり、これも予めデータベース310に格納しておく。
【0035】
さらに、カレンダ409は、各資源(資源1〜資源5)の稼動時間の定義である。例えば、資源1は2007年11月1日には稼動しているが、資源3は2007年11月3日には非稼動である。
尚、システムパラメータ407には、製造実績登録手段303を実行する際に必要な各種の閾値(製造数量、製造時間等)等を予め格納しておく。
【0036】
一方、在庫情報410は、図5(b)に示すように、原材料や部品の在庫状況を示す情報であり、品目コード(BBB)、現在庫数(200)等からなる。
在庫情報410には、原材料や部品の在庫状況とともに、完成品や中間生成部品等の在庫状況も適宜格納される。
【0037】
図6は、データベース310内の計画情報420の構成を説明する図である。計画情報420は、製造オーダ情報430(図6(a))、作業情報440(図6(b)、(d))、資材投入予定情報450(図6(c))からなる。
【0038】
前述したように、生産計画手段300は、受注データ411および見込生産データ412を基に製造オーダ情報430を作成する。
製造オーダ情報430は、当該製造オーダを一意的に識別するためのキーである製造オーダNo.(例えばORD0001)、品目(AAA)、納期(2007年11月2日0時)、数量(100)等からなる。
【0039】
次に、スケジューリング手段301は、製造オーダ情報430と、マスタ情報400、在庫情報410を基に作業情報440と資材投入予定情報450を作成する。
作業情報440は、作業No.、オーダNo.、工順、計画開始日時、計画終了日時、計画製造時間、計画数量、指示、レベル等の項目からなる。
また、資材投入予定情報450は、作業No.、品目、計画投入数量等の項目からなる。
【0040】
スケジューリング手段301は、製造オーダ情報430の品目(AAA)をキーにマスタ情報400の工順表401、品目資源405、カレンダ409を検索し、品目(AAA)の製造に必要な作業工程(工順10〜工順50)に分解し、品目資源405の能力値から各工順の計画開始日時と計画終了日時、計画製造時間を見積もる。
また、スケジューリング手段301は、各工程(工順10〜工順50)を一意的に識別するためのキーとして作業No.を設定する。
【0041】
すなわち、図6(b)の作業情報440に示すように、品目(AAA)の製造には作業No.(ORD0001−10〜ORD0001−50)の5つの工程(工順10〜工順50)が必要であり、例えば、工順10は、2007年11月1日10時(計画開始日時)〜10時10分(計画終了日時)の10分(計画製造時間)に100個(計画数量)製造される計画情報420が作成される。
ここで、「指示」と「レベル」については後述する。
【0042】
さらに、スケジューリング手段301は、作成された製造オーダ情報430(図6(a))、作業情報440(図6(b))、マスタ情報400の部品表403を基に資材投入予定情報450を作成する。
部品表403を参照すると、親品目(AAA)の製造には子品目(BBB)が工順10で2個必要であることが分かる。そして、スケジューリング手段301は、製造オーダ情報430の品目(AAA)の製造数量(100)を参照し、作業No.(ORD0001−10)に品目BBBが200(計画投入数量)投入されることを示す資源投入予定情報450を作成する。
【0043】
作業指示受付手段302は、前述したように、スケジューリング手段301により作成された作業情報440を実際に実施する指示を出す。
すなわち、作業開始までのリードタイム等を考慮して、計画開始日時、計画終了日時等を修正したうえ、作業情報の「指示」フラグを「未(指示)」から「指示(済)」に更新する(図6(d))。これにより、製造現場への作業指示が完了する。
【0044】
製造現場への作業指示の完了後、製造が開始され、作業実績データ413を基に製造実績登録手段303により実績情報460の登録が実行される。
図7は、実績情報460の構成を示す図である。
実績情報460は、作業実績情報470、資材投入実績情報480、不良実績情報490より成る。
【0045】
図7(a)は品目(AAA)の製造が完了した時点の作業実績情報470を示している。作業実績情報470は、作業No.、オーダNo.、最早開始日時、最遅終了日時、実績製造時間、製造数量、良品数量、不良数量、進捗状況等の項目からなる。
【0046】
例えば、品目(AAA)を製造するための工順10(作業No.ORD0001−10)は2007年11月1日10時に開始され(最早開始日時)、2007年11月1日10時30分に終了し(最遅終了日時)、実績製造時間は13分、製造数量は100、その中で良品は95(良品数量)、不良品が5(不良数量)というように、実際に実施された作業の状況が作業実績情報470に登録される。
進捗状況は製造が完了しているので、「完了」となっている。進捗状況には、この他、「未着手」、「開始」、「中断」がある。
【0047】
同図の例では、工順10の作業中に作業の中断があった場合を示している。このような工順内での中断等を含めた実績情報は、作業実績明細情報475(図7(b))に登録される。
すなわち、工順1(作業No.ORD0001−10)は2007年11月1日10時に開始され、8分後の10時8分に中断し、10時25分に再開され、5分後の10時30分に終了したことを、明細No.1と2で示している。明細No.1では70個、明細No.2では30個製造し、それぞれ、良品数量は67個、28個、不良品数量は3個、2個である。
【0048】
作業実績情報470は、作業実績明細情報475に記載されている作業No.ごとに情報を集計したデータが記録されるもので、例えば、最早開始日時は、作業実績明細情報475に記録される同一作業No.の最も早い開始日時であり、最遅終了日時は、同一作業No.の最も遅い終了日時である。また、作業実績情報470の実績製造時間や製造数量、良品数量、不良数量は、作業実績明細情報475に記録されている実績製造時間、製造数量、良品数量、不良数量を同一作業No.毎に合計した値である。
【0049】
不良実績情報(図7(c))には、各作業No.の各明細No.に対応する不良数量と、その不良理由等が登録される。
また、資材投入実績情報(図7(d))には、資材が投入された作業No.、各明細No.に対応して品目(BBB)と実績投入数量が登録される。
【0050】
一方、在庫情報410は、図5(b)および図7(e)に示すように、製造の各時点での在庫の状況が格納される。
すなわち、図5(b)の在庫情報410は、品目AAAの製造前の在庫状況であり、原材料のBBBが200在庫されている。図7(e)の在庫情報410は、品目AAAの製造完了後の在庫状況であり、原材料BBBの在庫量は0となり、製造品目AAAの在庫量が85になっている。
このように、在庫情報410には、製造によって生成され、工場内の倉庫などへ入庫される中間品や完成品の入庫状況や、製造で使用された原材料や部品などの資材在庫の消費状況が更新・記録される。
【0051】
上記のように、本実施の形態の製造工程管理システム1により、製造現場での進捗状況に沿って作業実績情報470、在庫情報410、不良実績情報490等が更新され、最新の状況に保持されることにより、月次や日次などの業務サイクルで実施される生産計画手段300の実施が可能となり、より現実的な生産計画や製造計画を継続的に実行することが可能になる。
【0052】
ここで、図4を使用して、登録タイミングについて説明する。
原材料BBBを工程1に投入し、工程1〜工程5を経て完成品AAAを製造する場合、一般的に、各工程で(工程1〜工程5のすべてで)作業指示を行い、その作業実績を記録紙、その作業実績データ413を製造工程管理システム1に入力する作業を行う。このため、工程数が多くなると、作業者に与えるデータ入力の負担が大きくなってしまう。
【0053】
そこで、本実施の形態の製造工程管理システム1では、製造実績登録を実施する登録タイミングを事前に設定しておき、実際にその登録タイミングを判断して、作業者へアナウンスすることにより入力忘れを防止することを可能にしている。
すなわち、図4では、工程1と工程3では、工程の開始ポイントと終了ポイントで実績登録を行い、工程5では工程の終了ポイントで実績登録を行い、工程2と工程4は登録が不要であることを示している。
この登録タイミングは、下記の判断基準に沿って管理者等が決定し、マスタ情報400の工順表401の製造実績登録方法に工程ごとに予め格納しておく。
【0054】
製造実績登録方法は、「開始および終了時」、「終了時」、「登録なし」の3通りとする。
「開始および終了時」の場合、指定された工程の作業開始時および作業終了時に作業者に対して製造実績の登録を促す。「終了時」の場合、指定された工程の作業終了時に作業者に対して製造実績の登録を促し、当該工程の作業開始実績は、自動的に補足する。また、「登録なし」の場合は、指定された工程よりも下流工程の実績登録と同時に、自動的に補足する。
【0055】
例えば、図4の例では、実績登録タイミングが定義されていない工程2と工程4の実績登録は、その時点では不要であり、工程2の製造実績(開始と終了)は工程3の開始登録時に自動的に補足され、工程4の製造実績(開始と終了)は工程5の終了登録時に自動的に補足される。
尚、工程1の進捗状況が開始済み、かつ、未完了の場合、工程3の開始登録は、工程の重なりを考慮して許可するが、工程1の進捗状況が未完了の状態では、工程3の終了登録は許可しないようにする。
【0056】
次に登録タイミングの決定判断基準について説明する。
実績登録を行う登録タイミングを「開始および終了時」、あるいは「終了時」とする場合の判断基準例を次に示す。
作業進捗を把握する上で重要な工程である。
原価把握を行う上で重要な工程である。
在庫入出庫が発生する工程である。
さらに、このなかで、「開始および終了時」、「終了時」のどちらにするかの判断は、製造に投入する原材料や部品があるか否かで判断し、ある場合は「開始および終了時」、ない場合は「終了時」にすると良い。
【0057】
また、「登録なし」とする場合の判断基準としては、機械設備の自動運転のような工程が考えられる。
【0058】
図8と図9を使用して、登録タイミングを「開始および終了時」、あるいは「終了時」にした場合の相違を説明する。
図8は、登録タイミングを「開始および終了時」にした場合の在庫情報410の推移を、図9は登録タイミングを「終了時」のみにした場合の在庫情報410の推移を示している。
【0059】
図8に示すように、登録タイミングを「開始および終了時」にした場合、在庫情報410の資材の入出庫を登録するタイミングは作業開始と作業中断、作業再開と作業終了になる。このタイミングで製造実績を登録することで、実際に消費された資材の在庫が細かく把握可能である。一方、完成品の在庫推移も、実際に完成品が在庫されていく状況が細かく把握可能になる。
【0060】
一方、図9に示すように、登録タイミングを「終了時」にした場合、在庫入出庫を登録するタイミングが作業終了のみであるため、資材および完成品の在庫状況を正しく把握できるのは作業終了時点に限られてしまう。
よって、特に1つの工程の作業開始から作業終了までの時間が長い場合は、登録タイミングを終了時のみにすると現実の在庫状況と異なる在庫情報である期間が長くなる。よって、登録タイミングを作業の開始・(中断)・終了時にすることにより、資材在庫の情報精度が向上し、より現実的な在庫状況を把握することが可能になる。
【0061】
以下、図10〜図14のフローチャートに沿って製造実績登録手段303の処理の流れを詳しく説明する。
図10は、製造実績登録手段303の処理の流れを示すフローチャートである。
この製造実績登録手段303の処理を開始する時点において、図3の作業指示受付手段302までの処理が完了し、図6(d)の作業情報440の状態であることを前提とする。
【0062】
まず、製造実績登録を行う作業(工程)の選択を行う作業選択処理を実行する(ステップ1000)。すなわち、作業指示受付手段302で指示された作業(作業No.)に対して、実際の製造における開始時点や中断時点、再開時点、終了時点において、クライアント端末101、102から製造実績を登録する当該作業を選択する。
この際、選択された作業について、製造実績の登録が可能かどうかを判断し、登録対象外の場合は登録作業者に注意メッセージ等の出力等を行い、処理を終了する。
ステップ1000の詳細については後述する。
【0063】
次に、ステップ1000で指定された作業について製造実績の入力を行う(ステップ2000)。
例えば、図6(d)の作業情報410に示すように、作業No.のORD0001−10を指定した場合、製造実績を入力するための初期情報として、当該作業の計画開始日時や計画終了日時、計画製造数量等をディスプレイ装置210に表示し、実際に製造した実績情報を示す製造実績データをクライアント端末101、102のキーボード等209から入力させ、サーバ103へ実績登録要求を行う。
ステップ2000の詳細については後述する。
【0064】
次に、ステップ2000で入力された製造実績データをクライアント端末101、102からネットワーク104を介してサーバ103に送り、サーバ103は、外部メモリ211内のデータベース310の実績情報460として登録処理を行う(ステップ3000)。
例えば、ステップ2000で入力された作業No.ORD0001−10の製造実績データを、図7(a)の作業実績情報470および図7(b)の作業実績明細情報475に登録するとともに、製造時に発生した不良実績の情報を不良実績情報490(図7(c))に、さらに、製造で使用した資材の実績情報を資材投入実績情報480(図7(d))に、作業で生成された中間品等の入出庫情報を在庫情報410(図7(e))に記録する。
ステップ3000の詳細については後述する。
【0065】
次に、図11のフローチャートに沿ってステップ1000の作業選択処理について説明する。
図11は、作業選択処理(ステップ1000)の処理の流れを示すフローチャートである。
【0066】
まず、製造実績を登録する作業(工程)を作業者に選択させる(ステップ1001)。
作業の選択方法としては、作業指示を行った作業情報440に記載されている作業No.を直接指定させる方法が考えられる。すなわち、クライアント端末101、102のディスプレイ装置210に作業情報440の情報を表示し、その中から作業者に作業No.を選択させるようにすればよい。
例えば、図6の作業情報440の作業No.がORD0001−10に対して製造実績を登録する場合は、作業者がこの作業No.を直接指定する。
【0067】
次に、選択された作業(作業No.)について、サーバ103の外部メモリ211に記憶されているデータベース310を参照して、作業情報440および作業実績情報470の情報を取得する(ステップ1002)。
例えば、ステップ1001で作業No.ORD0001−10が選択された場合には、作業No.をキーに図6の作業情報440と図7の作業実績情報470の作業No.ORD0001−10が特定される。
【0068】
次に、ステップ1001で選択した作業(作業No.)が登録対象であるか否かを判断する(ステップ1003)。
すなわち、作業情報440の「指示」の欄が「済」(指示済み)、かつ、作業実績登録情報470の「進捗」の欄が「未完了」(完了していない)の場合が登録対象となる。
【0069】
作業情報の「指示」の欄が「未」(未指示)の場合、あるいは、作業実績登録情報470の「進捗」の欄が「完了」の場合(ステップ1003がNoの場合)は、その作業が登録対象ではないとして、登録対象外であることを示す警告メッセージを出力し(ステップ1010)、製造実績登録手段303の処理を終了する。
【0070】
一方、作業情報440の「指示」の欄が「済」(指示済み)、かつ、作業実績登録情報470の「進捗」の欄が「未完了」(完了していない)の場合(ステップ1003のYesの場合)、マスタ情報400の工順表401を検索して当該作業の製造実績登録方法を取得する(ステップ1004)。
例えば、作業No.ORD0001−10が選択されている場合、作業情報440に含まれる「工順」の欄の情報(10)を取得するとともに、ORD0001−10をキーに製造オーダ情報430を検索し、「品目」の欄の情報(AAA)を特定する。この「工順」(10)と「品目」(AAA)をキーにマスタ情報400の工順表401を検索し、「製造実績登録方法」の情報(例えば、開始・終了)を取得する。
【0071】
次に、取得した製造実績登録方法の種類によって実績登録の是非を判断する(ステップ1005)。
まず、取得した「製造実績登録方法」が「登録なし」の場合(ステップ1005の「登録なし」の場合)は、その作業が登録対象外であるとして、登録対象外であることを示す警告メッセージを出力し(ステップ1010)、製造実績登録手段303の処理を終了する。
【0072】
一方、「製造実績登録方法」が「登録なし」以外の場合(ステップ1005の「登録なし」以外の場合)、すなわち、「開始・終了」あるいは「終了のみ」の場合は、何らかの製造実績登録を行なうものとして、その作業よりも上流にある作業(上流工程)が製造実績登録対象かどうかを判断する処理を行う(ステップ1006〜)。
【0073】
すなわち、まず、ステップ1001で選択した当該作業よりも上流工程の作業について、工順表401の「製造実績登録方法」と作業実績情報470の「進捗」の情報を得る。
このとき、当該作業よりも上流工程の作業を作業情報440の「レベル」の欄の情報で特定する。
例えば、図4の工程3の製造実績を登録する場合、当該作業は、図6の作業情報440では、作業No.ORD0001−30で、「レベル」は3である。
【0074】
この「レベル」は、最終工程を1とし、上流工程にさかのぼる毎に1ずつ増加するように予め設定し、記憶されている。
当該作業よりも上流工程とは、当該作業のレベル3よりも大きい値の作業を表し、この例の場合、レベル4とレベル5である作業No.ORD0001−20と作業No.ORD0001−10(図4の工程2と工程1)が該当する。一方、当該作業がレベル5(工程1)の場合は、それ以上の「レベル」はないので、上流工程はないことになる。
【0075】
ここで、まず、上流工程が存在するか否かを判定する(ステップ1007)。
上流工程がない場合(ステップ1007のNo)は、この作業選択処理を終了する。この場合、当該作業の製造実績登録処理を以降の製造実績入力処理(ステップ2000)および製造実績登録処理(ステップ3000)で行なう。
【0076】
一方、上流工程がある場合(ステップ1007のYes)は、上流工程の作業について、工順表401の「製造実績登録方法」と作業実績情報470の「進捗」の情報を基に登録対象であるか否かを判断する(ステップ1008)。
すなわち、ステップ1008で、上流工程の作業の「製造実績登録方法」が「登録なし」以外(「開始・終了」または「終了のみ」)であり、かつ、「進捗」の情報が「未着手」の場合、上流工程の作業の製造実績登録を促すメッセージを出力し(ステップ1101)、製造実績登録手段303の処理を終了する。
この場合、作業者は、このメッセージを受けてそれよりも上流工程の作業について、前に戻って製造実績登録手段303を実行すればよい。
【0077】
一方、ステップ1008で、上流工程の作業の「製造実績登録方法」が「登録なし」、あるいは、「進捗」の情報が「未着手」以外の場合、作業選択処理(ステップ1000)を終了する。
【0078】
次に、図10の製造実績入力処理(ステップ2000)の処理の流れを図12のフローチャートに沿って説明する。
図12は、製造実績入力処理(ステップ2000)の処理の流れを示すフローチャートである。
【0079】
まず、作業選択処理(ステップ1000)のなかのステップ1002で取得した作業情報440および作業実績情報470を、クライアント端末101、102のディスプレイ装置210に表示する(ステップ2001)。
【0080】
次に、製造実績情報として、作業の実績や不良実績、資材投入実績の情報を必要に応じて入力する(ステップ2002)。
入力する項目は、当該作業の「進捗」の情報、ステップ1004で取得した「製造実績登録方法」の情報により異なる。
【0081】
例えば、「進捗」が「未着手」、かつ、「製造実績登録方法」が「開始・終了」の場合は、作業の開始情報として、例えば、作業実績明細情報475の「実績開始日時」の欄に作業を開始した日時の情報を入力させる。このときは作業の終了情報(例えば実績終了日時)の入力は不要である。
また、「進捗」が「開始」、かつ、「製造実績登録方法」が「開始・終了」の場合は、作業の終了情報として、例えば、作業実績明細情報475の「実績終了日時」や「良品数量」、「不良数量」に情報を入力させる。または、「不良数量」を入力させ、「良品数量」は自動的に計算するようにしてもよい(良品数量=製造数量−不良数量)。または、不良品に対して、不良品である理由等を入力させるようにしてもよい。
尚、「製造実績登録方法」が「終了のみ」の場合は、以上に説明した作業の開始情報と作業の終了情報を同時に入力する。
【0082】
また、例えば、作業実績明細情報475の「実績製造時間」は、実績開始日時よび実績終了日時の入力値から自動的に計算される。さらに、自動的に計算された値を、作業者が変更することも可能である。
【0083】
次に、ステップ2002で入力した情報の内容の妥当性を判定する(ステップ2003)。
例えば、「製造実績登録方法」が「終了のみ」の場合、
入力された実績開始日時<入力された実績終了日時
入力された実績製造時間(自動計算あるいは作業者により変更された値)が、予め設定された閾値の範囲内にある(この閾値は予め定義され、マスタ情報400のシステムパラメータ407に格納される)。
製造数量が予め定義された閾値(システムパラメータ407に格納されてる)以下である。
不良数量が製造数量以下
資材投入数量が在庫情報410の現在庫数以下
であるか否かを判定する。
【0084】
ステップ2003がNoの場合、ステップ2002に戻って、製造実績情報の入力を再度実行する。
一方、ステップ2003がYesの場合、実際にサーバ103の外部メモリ211に構成されているデータベース310への登録要求を行なう(ステップ2004)。
【0085】
製造実績の登録要求には種別がある。すなわち、開始、中断、再開、終了の4種類である。製造実績の登録者が、実際の作業状況に応じて、上記の種別をつけて実績登録要求を行なう。
例えば、製造作業に着手する段階であれば「開始」、作業を中断する場合は「中段」、作業を中断から再開する場合は「再開」、作業を終了する場合は「終了」の種別を選択すればよい。
【0086】
次に、図13のフローチャートに沿って、製造実績登録処理(ステップ3000)の処理の流れを説明する。
図13は、製造実績登録処理(ステップ3000)の処理の流れを示すフローチャートである。
【0087】
まず、ステップ1002で作業実績情報470から取得した当該作業の「進捗」の情報と、ステップ1004で取得した当該作業の「製造実績登録方法」の情報と、ステップ2004の登録要求との種別の組合せから、登録要求データの整合性が正常か否かを判定する(ステップ3001)。
この整合性の判定には、図15に示す判断パターンを用いる。
【0088】
図15は、登録要求データの整合性判断パターンを示す図である。例えば、現在の進捗状況が「未着手」、かつ、製造実績登録要求が「開始」、かつ、製造実績登録方法が「開始・終了」の場合、整合性に異常がないことから、○となっている。また、例えば、現在の進捗状況が「未着手」、かつ、製造実績登録要求が「開始」、かつ、製造実績登録方法が「終了のみ」の場合、整合性に異常があることから、×となっている。
【0089】
整合性の判定は、図15に示す判断パターンを参照し、○であれば整合性に異常がない(ステップ3001の整合性に異常なし)として次の処理(ステップ3002以降)を継続する。一方、×であれば整合性に異常がある(ステップ3001の整合性に異常あり)として整合性エラーのメッセージを出力して(ステップ3010)、処理を終了する。
【0090】
例えば、当該作業の「進捗」が「未着手」、かつ、製造実績登録要求が「開始」、かつ、製造実績登録方法が「開始・終了」の場合は「○」であり、整合性に異常がないとして登録要求を受け付ける。
一方、当該作業の「進捗」が「未着手」、かつ、製造実績登録要求が「終了」、かつ、製造実績登録方法が「開始・終了」の場合は「×」であり、開始入力がまだされていないとして、整合性エラーのメッセージ(開始入力が未完了である旨のメッセージ)を出力し(ステップ3010)、処理を終了する。
【0091】
整合性に異常がない場合、登録要求が行なわれた作業よりも上流工程の作業情報440と工順表401を検索し、上流工程の作業の「進捗」情報と「製造実績登録方法」を取得する(ステップ3002)。
そして、上流工程の作業について実績登録状況の判定を行なう(ステップ3003)。
すなわち、上流工程作業の「製造実績登録方法」が「登録なし」以外、かつ「進捗」が「未着手」の場合、および、当該作業の実績登録要求が「終了」、かつ、上流工程の「製造実績登録方法」が「登録なし」以外、かつ、上流工程の「進捗」が「完了」以外の場合、前後の工程間での整合エラーとしてメッセージを出力し(ステップ3010)、処理を終了する。
【0092】
それ以外の場合、当該作業と上流工程間の整合は正常であるとして、上流工程の作業が製造実績補足対象か否かを判定する(ステップ3004)。
すなわち、上流工程の作業のなかに、「製造実績登録方法」が「登録なし」、かつ、「進捗」が「未完了」(完了以外)の作業が存在する場合には(ステップ3004のYes)、上流工程の製造実績補足処理(ステップ3005)を実行する。
一方、そのような上流工程の作業が存在しない場合(ステップ3004のNo)にはステップ3005の処理を飛ばしてステップ3006以降の当該作業の実績登録処理を実行する。
ステップ3005の上流工程の製造実績補足処理については後で詳述する。
【0093】
ステップ3006では、登録要求された作業について、作業実績情報470および作業実績明細情報475の情報をサーバ103の外部メモリ211のデータベース310に格納する。
例えば、最終工程の工程5についての作業実績が、作業実績情報470および作業実績明細情報475として格納される。
【0094】
また、当該作業が完成品の入庫を伴う場合には、作業実績で指定された良品数を元に在庫情報410の情報を更新し、格納する。
例えば、最終工程の工程5の場合、良品数(作業実績情報470の作業No.ORD0001−50の良品数85)を品目コードAAA、現在庫数85として、在庫情報410に格納する。
入庫対象か否かの判断は、図3のスケジューリング手段301によって作成される作業情報440に含まれるレベルより判断する。すなわち、レベル1に設定されている場合、入庫対象となる。
【0095】
次に、ステップ2004で登録要求されたデータのうち、不良実績のデータを不良実績情報490として格納する(ステップ3007)。
不良実績情報490は、例えば、作業No.、作業明細No.、不良理由、不良数量等である。
【0096】
次に、当該作業が資材投入対象であるか否かを判定する(ステップ3008)。
本例の場合、工程1が資材投入対象(原材料の品目BBBの投入)である。
資材投入対象でない場合(ステップ3008のNo)は、製造実績登録処理を終了する。
【0097】
一方、資材投入対象の場合は(ステップ3008のYes)、ステップ2004で登録要求されたデータのうち、資材の実績に関する情報を資材実績情報480として登録する。
すなわち、該当する資材の在庫データを、現在庫数から製造に使用した投入数量を差し引いた値を求めて更新する。
本例では、図5(b)の在庫情報410、品目コードBBB、現在庫数200に対して、製造に使用した投入数量を差し引き、図7(e)の在庫情報410の品目コードBBBでは、現在庫数0に更新されている。
この時点で資材の在庫が不足する場合には、エラーとしてメッセージを出力し、処理を中断するようにしてもよい。
【0098】
次に、ステップ3005の上流工程の製造実績補足処理の流れを図14のフローチャートに沿って説明する。
図14は、上流工程の製造実績補足処理の流れを示すフローチャートである。
【0099】
まず、ステップ3002で求めた上流工程の作業数を取得する(ステップ4001)。この上流工程の作業数分、ステップ4002からステップ4007の一連の処理を繰り返す。
【0100】
次に、当該上流工程の作業について、実績を補足するデータを算出する(ステップ4002)。算出には下記の計算式を用いる。
すなわち、
作業の実績開始日時=下流工程の最早開始日時−品目資源情報405の能力値−カレンダの非稼動時間
作業の実績終了日時=下流工程の最早開始日時
実績製造時間=上記作業の最遅終了日時−上記作業の最早開始日時−カレンダの非稼動時間
作業実績の製造数量=下流工程の製造数量
資材の投入数量=上記の製造数量×部品表403に定義されている必要量
である。
【0101】
図4の製造工程例と図7の実績情報460の各情報を用いて、上流工程の実績補足を説明する。
図4に示すように、工程3の開始入力時に工程2の製造実績を自動的に補足する。
この工程3の製造実績は、図7の作業実績情報470の作業No.ORD0001−30に相当する。この際、図7の作業実績情報470の作業No.ORD0001−30の情報を基に、上述の計算式により、同作業実績情報470の作業No.ORD0001−20の情報(工程2の情報)を補足するためのデータを算出する。
【0102】
次に、ステップ4002で算出された実績データの妥当性を判定する(ステップ4003)。
例えば、算出した実績製造時間については、ステップ4002で算出した実績製造時間−作業情報440の計画製造時間の値が、マスタ情報400のシステムパラメータ407に記憶されている製造時間のしきい値以下の場合には、算出した実績製造時間を妥当であると判断し、ステップ4002で算出した値を登録データと決定する。
【0103】
一方、しきい値よりも大きい場合(システムパラメータ407のしきい値の範囲外の場合)、作業情報440に記憶されている計画値を登録データと決定する。
この判断は、例えば、計画の精度が高い場合にはしきい値の範囲を小さくしておき計画値を採用するようにし、計画のブレが大きい場合(計画精度が低い場合)にはしきい値を大きくして実績値を用いるようにする。
【0104】
次に、ステップ4003で決定したデータを実績情報460としてサーバ103のデータベース310に格納する。
【0105】
さらに、ステップ3002で取得したマスタ情報400の部品表403から、当該上流工程が資材投入対象の工程か否かを判断する(ステップ4005)。
資材投入対象でない場合(ステップ4005のNo)はステップ4008に進む。
【0106】
資材投入対象である場合(ステップ4005のYes)には、資材投入実績データを作成する(ステップ4006)。
資材の投入数量は、作業実績の製造数量×部品表403の必要量となる。
次に、ステップ4006で作成した資材投入実績データを資材投入実績情報480に登録する(ステップ4007)。この処理とともに、該当する資材の在庫情報410に関して、現在庫数から投入数量を差し引いた値を求め、在庫情報410を更新する。
この時点で資材の在庫が不足する場合には、エラーとしてメッセージを出力し、処理を中断するようにしてもよい。
【0107】
ステップ4008では、登録が必要な全上流工程について実績情報を登録したか否かを判定し、まだ登録対象の上流工程が存在する場合には(ステップ4008のNo)、ステップ4002に戻り、ステップ4002からステップ4007の処理を繰り返す。
登録対象の上流工程の登録が完了した場合には(ステップ4008のYes)、上流工程の製造実績補足処理(ステップ3000)を終了し、全製造実績登録手段(303)の処理を終了する。
【0108】
以上、本実施の形態の製造工程管理システム1について説明したが、本発明は、例えば、プログラムもしくは記憶媒体等としての実施態様をとることも可能であり、具体的には、複数の機器から構成されるシステムに適用してもよいし、また、1つの機器からなる装置に適用してもよい。
【0109】
以上のように、本実施の形態の製造工程管理システム1により、作業者が製造実績を登録する必要がある工程であるか否かの判定を即時に行なうことが可能となり、作業者の入力忘れや入力ミスを防止することが可能である。
また、作業者の製造実績入力の作業の軽減を図ることが可能となるとともに、製造実績の精度を高く保ち、また、使用資材や中間品、完成品の在庫情報が現実に即しかつ高い精度に保たれるので、その後の製造計画や生産統制を効果的に進めることが可能となる。
【0110】
尚、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、種々の改変が可能であり、それらも、本発明の技術範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明の実施形態の製造工程管理システム1のシステム構成例を示す図
【図2】サーバ103およびクライアント端末101、102のハードウエア構成を示す図
【図3】本実施の形態の製造工程管理システム1の機能ブロック図
【図4】ある製品の製造工程のイメージを示す説明図
【図5】マスタ情報400および在庫情報410の説明図
【図6】計画情報420の構成を示す図
【図7】実績情報430および在庫情報410の構成を示す図
【図8】登録タイミングを「開始および終了時」にした場合の在庫情報410の推移を説明する図
【図9】登録タイミングを「終了時」のみにした場合の在庫情報410の推移を説明する図
【図10】製造実績登録手段303の処理の流れを示すフローチャート
【図11】作業選択処理1000の処理の流れを示すフローチャート
【図12】製造実績入力処理2000の処理の流れを示すフローチャート
【図13】製造実績登録処理3000の処理の流れを示すフローチャート
【図14】製造実績登録の是非を判断する方法の説明図
【図15】登録要求データの整合性判断パターンを示す図
【符号の説明】
【0112】
1………製造工程管理システム
300………生産計画手段
301………スケジューリング手段
302………作業指示受付手段
303………製造実績登録手段
310………データベース
400………マスタ情報
410………在庫情報
420………計画情報
430………製造オーダ情報
440………作業情報
450………資材投入予定情報
460………実績情報
470………作業実績情報
480………資材投入実績情報
490………不良実績情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数工程からなる一連の製造工程に対して前記工程毎に当該作業の実績を登録すべきタイミングを表す登録タイミング情報、前記工程毎の作業の進捗状況を表す進捗情報、及び前記工程毎の作業実績を表す作業実績情報を記憶する進捗情報記憶手段と、
前記複数工程における任意の工程の進捗情報を更新するための更新情報、及び当該任意の工程における前記作業実績情報を受付ける作業指示受付け手段と、
前記作業指示受付手段によって受付けた前記任意の工程の前記更新情報と、前記進捗情報記憶手段に記憶された登録タイミング情報とを整合し、更新可能である場合は、前記更新情報に基づいて前記進捗情報記憶手段に記憶された進捗情報を更新するとともに、前記進捗情報記憶手段へ前記作業実績情報を記憶する作業実績登録手段と、
を備えることを特徴とする製造工程管理装置。
【請求項2】
前記任意の工程より前に行う前工程の登録タイミング情報及び進捗情報に応じて、当該前工程の作業実績情報を補足することを特徴とする請求項1記載の製造工程管理装置。
【請求項3】
製造品目の各工程について予め定めた作業時間、及び補足対象の工程の次工程の作業開始日時に従って、前記作業実績情報を補足することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の製造工程管理装置。
【請求項4】
前記登録タイミング情報は、作業の開始および終了時、作業の終了時、または登録不要のいずれかであり、予め設定されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の製造工程管理装置。
【請求項5】
前記更新情報は、作業の開始、作業の中断、作業の再開、または作業の終了を表すことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の製造工程管理装置。
【請求項6】
前記進捗情報は、作業の未着手、作業の開始、作業の中断、または作業の完了を表すことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の製造工程管理装置。
【請求項7】
前記任意の工程の前工程の登録タイミング情報が登録不要、かつ、前記進捗情報が未着手の場合は、当該前工程の作業実績情報を補足することを特徴とする請求項4から請求項6のいずれかに記載の製造工程管理装置。
【請求項8】
前記作業実績情報は、少なくとも、前記任意の工程の作業開始日時、作業終了日時、実績製造時間、製造数量、不良品数量、資材投入数量、在庫数量を含むものであることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の製造工程管理装置。
【請求項9】
複数工程からなる一連の製造工程に対して前記工程毎に当該作業の実績を登録すべきタイミングを表す登録タイミング情報、前記工程毎の作業の進捗状況を表す進捗情報、及び前記工程毎の作業実績を表す作業実績情報を記憶する進捗情報記憶ステップと、
前記複数工程における任意の工程の進捗情報を更新するための更新情報、及び当該任意の工程における前記作業実績情報を受付ける作業指示受付けステップと、
前記作業指示受付手段によって受付けた前記任意の工程の前記更新情報と、前記進捗情報記憶手段に記憶された登録タイミング情報とを整合し、更新可能である場合は、前記更新情報に基づいて前記進捗情報記憶手段に記憶された進捗情報を更新するとともに、前記進捗情報記憶手段へ前記作業実績情報を記憶する作業実績登録ステップと、
を含むことを特徴とする製造工程管理方法。
【請求項10】
コンピュータを、請求項1から請求項8のいずれかに記載の製造工程管理装置として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項11】
コンピュータを請求項1から請求項8のいずれかに記載の製造工程管理装置として機能させるためのプログラムを格納することを特徴とするコンピュータから読み取り可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−157690(P2009−157690A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335827(P2007−335827)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(592135203)キヤノンITソリューションズ株式会社 (528)
【Fターム(参考)】