説明

製鋼原料用ブリケットの製造方法

【課題】CaOを少なくとも10質量%以上含有する製鋼用原料に水溶性のバインダーを添加して混練機で混練したのち、加圧成形式の製団機により製団し、ついで養生することよりなる製鋼原料用ブリケットの製造方法において、ブリケットの強度を上げて電気炉に搬入するブリケットの粉率を低下させる。
【解決手段】ブリケットの製造工程において、養生ヤードでの養生後、分級機にかけて分離した篩い下の混練機へのリターン量Wを製団総原料の10〜40質量%の範囲とし、かつ混練機に投入される原料の粒度構成を0.85mm以下が65〜85%、0.85〜4.75mmが10〜20%、4.75mm以上が5〜15%とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鋼工程で発生する製鋼ダスト等の副産物を製団してなる製鋼原料用ブリケットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鋼工程において、電気炉や転炉で発生する製鋼ダストや転炉ダスト、熱延工程で発生するスケール、酸洗処理工程で発生するスラリー状のスラッジを脱水し、乾燥した廃酸スラジ等、製鋼の各種工程で発生する副産物は、これを回収して製鋼原料として用いるため、製団してブリケットに成形することが一般に行われている。
【0003】
図1は、ブリケットを製造して製鋼設備の電気炉に使用するまでの従来の工程を示すもので、製鋼ダストA、転炉ダストB、スケールC、廃酸スラジD、コークスその他Eの各種原料を個別に貯蔵するホッパーから各種原料を一定量ずつ切出し装置により切出して混練機に入れ、これにバインダー及び水を加えて混練したのち加給機により図2に示すような断面半菱型状の凹所1を形成した一対の互いに逆向きに回転するローラ2よりなる加圧成形式の製団機に押込み、凹所1に押込まれた混練物を固めて製団するようになっており、製団機で固まらなかった原料や図3に示すようなブリケット3の耳部4の欠片、或いは目標粒度以下のブリケットは、振動篩い機よりなる分級機に掛けて分離し、篩い下の原料は、混練機に戻されて再度製団化されるようになっている。一方、篩い上の原料はベルトコンベヤにより養生ヤードに搬送され、養生ヤードで自然乾燥されたのち電気炉に搬入し、投入されるようになっている。
【0004】
上述するように製団機で製団されたブリケットは、分級機による篩い掛け、ベルトコンベヤにより搬送する際のベルトコンベヤ乗り継ぎ時での落下衝突、養生ヤードでの重機による搬出入により機械的に壊され、また養生中、ブリケットに含有される水分と原料中のCaO、MgOとの水和反応による膨張でブリケットが崩壊したりし、電気炉などの製鋼設備に投入される時点でブリケットはかなりな割合で壊れ、粉分を多く含んでいるのが常である。炉内に供給される原料に粉分が多量に含まれると、炉内での棚吊りやガス抜け悪化による生産性の悪化などのトラブルを生じがちで、こうしたトラブルを避けるため、養生ヤードのブリケットを分級機により分級し、篩い上の原料を製鋼設備に搬入していた(篩い下の原料は、混練機に戻される)。
【0005】
ブリケットの粉状化を避けるため、ブリケット強度を高めることも試みられ、この一環として、下記特許文献1には、混練機で混練した混練物をロータリーキルンにて800〜1300℃の温度で焼成して粒状化したのち電気炉に投入することが開示されている。
【特許文献1】特開昭51−28516号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、養生ヤードのブリケットを分級し、篩い下の原料を混練機に戻す際のリターン量を製団総原料に対し特定の割合にすると、ブリケットの強度が向上し、製鋼設備に搬入される原料の粉率が低下することを見出した。
【0007】
本発明は、かかる知見に基づいてなされたもので、その目的は、ブリケット強度が向上し、製鋼設備に搬入される原料の粉率が低下する製鋼原料用ブリケットの製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係わる発明は、CaOを少なくとも10質量%以上含有する製鋼用原料に水溶性のバインダーを添加して混練機で混練したのち、加圧成形式の製団機により製団し、ついで養生することよりなる製鋼原料用ブリケットの製造方法において、養生後のブリケットを分級し、その篩い下を製団総原料の10〜40質量%の範囲で混練機にリターンすることを特徴とし、
請求項2に係わる発明は、請求項1に係わる発明において、混練機投入原料の粒度構成が、0.85mm以下が65〜85%、0.85mm〜4.75mmが10〜20%、4.75mm以上が5〜15%になるように、篩い目サイズ及び篩い下量を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明方法によると、大幅な強度アップと粉率低下が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本実施形態は、図1に示すブリケット製造工程において、養生ヤードでの養生後、分級機にかけて分離した篩い下の混練機へのリターン量Wを製団総原料の10〜40質量%の範囲にしたものである。強度アップと粉率低下を達成するにはリターン量を製団総原料の10質量%以上とする必要があるが、リターン量が40質量%を越えても強度アップは頭打ちとなるのに対し、トータルバインダー量が増加してコストアップを招き、生産性が低下することから好ましくない。
【0011】
好ましい実施形態ではまた、混練機に投入される原料の粒度構成を0.85mm以下が65〜85%、0.85〜4.75mmが10〜20%、4.75mm以上が5〜15%とする。なお製団直後の篩い下も混練機に戻されるが、その量は養生後に分級されて混練機にリターンされる量Wに比べ僅かである。
【実施例】
【0012】
実施例1
ステンレス製造工場で発生する表1に示す組成の原料を表2に示す割合で配合し、これにリグニン(樹脂系の水溶性バインダー)濃度50%の水溶液を原料1トン当り表4のNo.1〜No.9に示す量を添加し、更に少量の水を微調整して追添加して、処理量が時間当たり9トンの混練機により混練し、図2に示す加圧成形式の製団機で製団した。製団直後、分級機の10mm目で振動篩いにより分級し(1段目篩い)、篩い下は混練機にリターンした。一方、篩い上はベルトコンベヤにより養生ヤードへ送り、3日間自然養生した。ここで養生期間を3日とした根拠は、次の通りである。図4は本発明者らが求めたブリケットの養生時間と強度との関係を示す図で、養生開始後72時間経過すると、強度が80kgfに近付き、ほぼ飽和状態となったことによるものである。養生後、分級機の10mm目で振動篩いにより分級し(2段目篩い)、篩い下は混練機にリターンした。このときのリターン量Wは製団総原料の15〜40質量%であった。2段目篩いで分級された篩い上のブリケットは、電気炉の原料として使用した。
【0013】
実施例1において、混練機に投入した原料の粒度分布、製団機で製団した直後の水分(%)、製団後の圧壊強度(kgf)、養生後のブリケットの圧壊強度(kgf)、ブリッケットの比重、10mm以下の粉の割合を示す粉率(%)、電気炉での1日当りの処理量(T/D)、溶解電力原単位指数を個別に測定し、その結果を表3及び表4に示した。なお、溶解電力原単位指数は、電気炉で原料1トン溶解するのに要した従来の電力量の平均値を100として求めたものである。
【0014】
【表1】

【0015】
【表2】

【0016】
実施例2
リグニンの配合量及び混練機に供給される原料の粒度分布を表3及び表4に示す割合とし、1段目及び2段目の分級機の篩い目を7mm、2段目の篩い下のリターン量Wを製団総原料の25質量%又は30質量%とした以外は実施例1と同様にしてブリケットを製造し、篩い上のブリケットを電気炉の原料として使用した。
【0017】
実施例2における混練機に投入される原料の粒度分布、製団機で製団した直後の水分(%)、製団後の圧壊強度(kgf)、養生後のブリケットの圧壊強度(kgf)、ブリッケットの比重、10mm以下の粉の割合を示す粉率(%)、電気炉での1日当りの処理量(T/D)、溶解電力原単位指数を個別に測定し、その結果を表3及び表4に示した。
【0018】
実施例3
リグニンの配合量及び混練機に供給される原料の粒度分布を表3及び表4に示す割合とし、1段目及び2段目の分級機の篩い目を5mm、リターン量Wを製団総原料の25質量%又は30質量%とした以外は実施例1と同様にしてブリケットを製造し、篩い上げのブリケットを電気炉の原料として使用した。
【0019】
実施例3における混練機に投入される原料の粒度分布、製団機で製団した直後の水分(%)、製団後の圧壊強度(kgf)、養生後のブリケットの圧壊強度(kgf)、ブリッケットの比重、10mm以下の粉の割合を示す粉率(%)、電気炉での1日当りの処理量(T/D)、溶解電力原単位指数を個別に測定し、その結果を表3及び表4に示した。
【0020】
【表3】

【0021】
【表4】

【0022】
比較例1
リグニンの配合量及び混練機に供給される原料の粒度分布を表3及び表4に示す割合とし、分級機の篩い目を10mm(養生後の分級はない)、なお、リグニンの配合量は、ブリケットの性状、生産性を見ながら最大添加可能な量とした。1段目の篩い下のリターン量を表3に示されるように製団総原料の3.9〜5.1質量%とした以外は実施例1と同様にしてブリケットを製造し、そのまま電気炉の原料として使用した。
【0023】
比較例1における混練機に投入される原料の粒度分布、製団機で製団した直後の水分(%)、製団後の圧壊強度(kgf)、養生後のブリケットの圧壊強度(kgf)、ブリッケットの比重、10mm以下の粉の割合を示す粉率(%)、電気炉での1日当りの処理量(T/D)、溶解電力原単位指数を個別に測定し、その結果を表3及び表4に示した。
【0024】
比較例2
リグニンの配合量及び混練機に供給される原料の粒度分布を表3及び表4に示す割合とし、1段目及び2段目の分級機の篩い目を10mm、2段目の篩い下のリターン量を5.4〜9.6wt%とした以外は実施例1と同様にしてブリケットを製造し、篩い上のブリケットを電気炉の原料として使用した。なお、リグニンの配合量は、ブリケットの性状、生産性を見ながら最大添加可能な量とした。
【0025】
比較例2における混練機に投入される原料の粒度分布、製団機で製団した直後の水分(%)、製団後の圧壊強度(kgf)、養生後のブリケットの圧壊強度(kgf)、ブリッケットの比重、10mm以下の粉の割合を示す粉率の割合(%)、電気炉での1日当りの処理量(T/D)、溶解電力原単位指数を個別に測定し、その結果を表3及び表4に示した。
【0026】
表3及び表4に示されるように、実施例1〜3は、比較例1及び2に比べ、バインダー原単位は最大で2割程度増えており、製団後の強度、とりわけ養生後の強度が格段に向上し、製団後のブリケットの水分含有量が低下すると共に10mm以下の粉率%が格段に低下した。これは、混練機にリターンする養生後の篩い下が、混練及び製団する際の骨材となること、養生後の篩い下に含まれるバインダーは、水分が低下していることから原料によく馴染んで原料の固化反応を促進させ、また水分の低下により混練機で新規に添加するバインダーが、篩い下に含まれるバインダー量に影響されることなく添加できてトータルバインダー量が増えたことによるものと考えられる。
【0027】
実施例1〜3の養生後のブリケットの水分含有量(養生後のブリケットは表3に示される製団直後の水分含有量より通常2〜3%程度低下する。)及び粉率が低下することから電気炉内のブリケットの棚吊りや吹上げが抑えられるようになり、処理量も比較例1及び2に比べ増加することができ、また電気炉での低エネルギーの溶解が可能となって効率的な処理が可能となった。ここで電気炉での低エネルギーでの溶解が可能となった理由として次のことが考えられる。電気炉に投入された原料は、炉内を下降するにつれ、ガスにより予熱乾燥されて溶解されるが、実施例1〜3のブリケットは比較例1、2のブリケットに比べ、粉率が低いためにガス抜けが良好となり、また比重の高いことからブリケットへの熱伝達が向上し、これによりブリケットを溶解するのに要するエネルギーが低減されるものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】従来のブリケット製造工程を示す図。
【図2】製団機を構成するローラの断面図。
【図3】製団後の耳部を備えたブリケットの拡大断面図。
【図4】ブリケットの養生時間と強度の関係を示す図。
【符号の説明】
【0029】
1・・凹所
2・・ローラ
3・・ブリケット
4・・耳部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CaOを少なくとも10質量%以上含有する製鋼用原料に水溶性のバインダーを添加して混練機で混練したのち、加圧成形式の製団機により製団し、ついで養生することよりなる製鋼原料用ブリケットの製造方法において、養生後のブリケットを分級し、その篩い下を製団総原料の10〜40質量%の範囲で混練機にリターンすることを特徴とすることを特徴とする製鋼原料用ブリケットの製造方法。
【請求項2】
混練機投入原料の粒度構成が、0.85mm以下が65〜85%、0.85mm〜4.75mmが10〜20%、4.75mm以上が5〜15%になるように、篩い目サイズ及び篩い下量を調整することを特徴とする請求項1記載の製鋼原料用ブリケットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−81759(P2008−81759A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260259(P2006−260259)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000004581)日新製鋼株式会社 (1,178)
【Fターム(参考)】