説明

複写装置

【課題】 地紋画像が原稿画像に付加された地紋付き原稿画像を縮小してサムネイル画像として表示させる際に、コントラストが低下して文字が見づらくなるのを抑制することができる複写装置を提供する。
【解決手段】 地紋付き原稿画像を複数の第1ブロックに区分し、各第1ブロックについて平均濃度を求めて画像サイズを縮小させた縮小画像を生成する画像縮小部と、縮小画像を複数の第2ブロックに区分し、各第2ブロックについて平均濃度を求めて平均濃度が予め定められた閾値以下の第2ブロックを抽出し、当該第2ブロック内の各画素の画素値を一定値に変換することによって縮小画像から地紋画像を除去した地紋無し画像を生成する地紋除去部と、地紋無し画像を複数の第3ブロックに区分し、各第3ブロックについて平均濃度を求めて画像サイズを縮小させたサムネイル画像を生成するサムネイル画像生成部により構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写装置に係り、さらに詳しくは、無地の背景に文字が配置された原稿画像に地紋画像を付加して印刷することができる複写装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写を抑制することによって印刷物による情報漏洩を防止する技術として、持ち出しなどが禁止されていることを示す文字列を地紋として埋め込んで印刷する技術が提案されている(例えば、特許文献1及び2)。例えば、文書データを用紙に印刷する際に、文書名、プリンタ名、コピー禁止などの文字列が潜像として埋め込まれた地紋画像を原稿画像に付加して印刷が行われる。一般に、地紋画像は、文字などを示す潜像画像を背景画像中に埋め込むことによって形成される。潜像画像は、光学読取時の画素の複数個からなる濃度点を最小単位として構成されるのに対して、背景画像は、光学読取時の画素以下のサイズの濃度点を最小単位として構成される。通常、潜像画像及び背景画像を構成する濃度点の濃度は、目立たないようにするという観点から、原稿画像における文字の濃度よりも低い値となっている。この様な地紋画像が付加された印刷物を複写する場合、濃度点のサイズの小さな背景画像が複写の際に除去され、これにより、潜像画像が顕在化することとなる。潜像画像の顕在化によってコピー禁止などの文字列が浮かび上がるので、印刷物の複写を抑制することができる。
【0003】
しかしながら、地紋画像が原稿画像に付加された地紋付き画像をサムネイル処理して表示させる場合に、コントラストが低下してしまい、文字が見づらくなってしまうという問題があった。すなわち、サムネイル処理では、地紋付き画像を多数の画素からなる複数のブロックに区分し、各ブロックについて平均濃度を求めて、画像サイズを縮小させたサムネイル画像が生成される。このとき、ブロックごとの画素値の平均化の際に、地紋画像が付加されていない場合に比べて原稿画像における背景部分の濃度が高くなるので、文字と背景との間のコントラストが低下し、文字が見づらくなるという問題があった。
【特許文献1】特開2004−274092号公報
【特許文献2】特開2005−136954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、地紋画像が原稿画像に付加された地紋付き原稿画像を縮小してサムネイル画像として表示させる際に、コントラストが低下して文字が見づらくなるのを抑制することができる複写装置を提供することを目的とする。特に、無地の背景に文字が配置された原稿画像に地紋画像が付加された地紋付き原稿画像を縮小してサムネイル画像として表示させる際に、コントラストが低下して文字が見づらくなるのを抑制することができる複写装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の本発明による複写装置は、原稿の光学読み取りによって無地の背景に文字が配置された原稿画像を生成する読取部と、上記原稿画像を用紙に印刷する印刷部とを有する複写装置であって、光学読取時の画素の複数個からなる第1濃度点を最小単位として構成される潜像画像が上記光学読取時の画素以下のサイズの第2濃度点を最小単位として構成される背景画像中に埋め込まれた地紋画像を上記原稿画像に付加して印刷することができる複写装置に適用される。具体的には、第1濃度点及び第2濃度点の濃度が上記原稿画像における文字の濃度よりも低い上記地紋画像が付加された地紋付き原稿画像を保持する地紋付き原稿画像記憶部と、上記地紋付き原稿画像を多数の画素からなる2以上の第1ブロックに区分し、各第1ブロックについて平均濃度を求めて、画像サイズを縮小させた縮小画像を生成する画像縮小部と、上記縮小画像を多数の画素からなる2以上の第2ブロックに区分し、各第2ブロックについて平均濃度を求めて、上記平均濃度が予め定められた閾値以下の第2ブロックを抽出し、当該第2ブロック内の各画素の画素値を一定値に変換することによって上記縮小画像から上記地紋画像を除去した地紋無し画像を生成する地紋除去部と、上記地紋無し画像を多数の画素からなる2以上の第3ブロックに区分し、各第3ブロックについて平均濃度を求めて、画像サイズを縮小させたサムネイル画像を生成するサムネイル画像生成部と、上記サムネイル画像を表示するサムネイル画像表示部とを備えて構成される。
【0006】
この複写装置では、無地の背景に文字が配置された原稿画像に地紋画像が付加された地紋付き原稿画像を縮小してサムネイル画像として表示させる際に、平均濃度が予め定められた閾値以下の第2ブロックが縮小画像から抽出される。そして、当該第2ブロック内の各画素の画素値を一定値に変換することによって縮小画像から地紋画像を除去した地紋無し画像が生成される。表示用のサムネイル画像は、この地紋無し画像を縮小して生成される。
【0007】
この様な構成によれば、縮小画像から平均濃度の低い第2ブロックを抽出して地紋画像の除去が行われるので、画像サイズの大きな地紋付き原稿画像から直接に地紋画像を除去するのに比べて画像処理に要する時間を短縮することができる。また、縮小画像から地紋画像を除去した地紋無し画像を縮小してサムネイル画像を生成し、そのサムネイル画像を表示させるので、コントラストが低下して文字が見づらくなるのを抑制することができる。すなわち、従来の複写装置では、地紋付き原稿画像を縮小して表示させる場合、ブロックごとの画素値の平均化の際に、地紋画像と原稿画像における文字の輪郭部分との濃度差が小さくなるので、文字が見づらくなってしまうことになる。これに対して、本発明による複写装置では、第1濃度点及び第2濃度点によって構成される地紋画像をこれらの濃度点の濃度が原稿画像における文字の濃度よりも低いことを利用して地紋画像を除去してから表示させるので、文字が見づらくなるのを抑制することができる。また、縮小画像を複数の画素からなる第2ブロックに区分して地紋画像の除去を行うことによって、縮小画像について画素ごとに地紋除去を行う場合に比べて広い範囲で濃度判定できるので、地紋除去の精度を向上させることができる。なお、地紋除去部が第2ブロックを抽出する際に用いる閾値は、例えば、第1濃度点及び第2濃度点の濃度に応じた値として定められる。
【0008】
第2の本発明による複写装置は、上記構成に加え、上記地紋除去部は、上記平均濃度が第1閾値以下であって、第1閾値よりも小さな第2閾値以上の第2ブロックを抽出し、当該第2ブロック内の各画素について画素値を第2閾値よりも小さな一定値に変換することによって上記地紋無し画像を生成するように構成される。この様な構成によれば、平均濃度が第1閾値以下であって第2閾値以上の第2ブロックを抽出して地紋画像の除去が行われるので、原稿画像における文字の端部及び細い線の一部が地紋除去時に除去されるのを抑制することができる。
【0009】
第3の本発明による複写装置は、上記構成に加え、地紋付き画像であることを示すシンボル画像を上記サムネイル画像に付加するシンボル付加部を備え、上記サムネイル画像表示部が、上記シンボル画像が付加された上記サムネイル画像を表示するように構成される。この様な構成によれば、地紋付き画像であることを示すシンボル画像が付加されたサムネイル画像を表示させるので、文字が見づらくなるのを抑制しつつ、地紋付き画像であることをオペレータに認識させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明による複写装置によれば、縮小画像から平均濃度の低い第2ブロックを抽出して地紋画像の除去が行われるので、画像サイズの大きな地紋付き原稿画像から直接に地紋画像を除去するのに比べて画像処理に要する時間を短縮することができる。また、縮小画像から地紋画像を除去した地紋無し画像を縮小してサムネイル画像を生成し、そのサムネイル画像を表示させるので、コントラストが低下して文字が見づらくなるのを抑制することができる。従って、無地の背景に文字が配置された原稿画像に地紋画像が付加された地紋付き原稿画像を縮小してサムネイル画像として表示させる際に、コントラストが低下して文字が見づらくなるのを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明の実施の形態による複写装置の概略構成の一例を示したブロック図であり、複写装置の一例として複合機1が示されている。複合機1は、スキャナ機能、プリンタ機能、ファクシミリ機能などを有するMFP(Multi-Function Peripheral)であり、これらの機能を選択的に実行することができるようになっている。
【0012】
この複合機1は、CPU11、ROM12、RAM13、表示部14、操作部15、読取部16、印刷部17、モデム18、NCU19、ネットワークI/F20、ストレージ21、地紋生成部22、画像合成部23及びサムネイル処理部24により構成される。CPU11、ROM12、RAM13、表示部14、操作部15、読取部16、印刷部17、モデム18、ネットワークI/F20、ストレージ21、地紋生成部22、画像合成部23及びサムネイル処理部24は、共通のバス10に接続されている。
【0013】
NCU(ネットワークコントロールユニット)19は、PSTN(Public Switched Telephone Networks:公衆回線網)を介して他の通信装置と通信するための通信制御装置であり、モデム18に接続されている。ネットワークI/F20は、LANを介して他の端末装置と通信するための通信制御装置である。
【0014】
読取部16は、原稿の光学読み取りによって原稿画像を生成する読取装置であり、例えば、光を走査させて画像を読み取るスキャナ装置が用いられる。この読取部16では、用紙に文字などが印刷された原稿から画像を読み取り、原稿画像を生成する動作が行われる。ここで、原稿画像は、無地の背景に文字が配置された画像であるものとし、各画素値は、白(濃度の下限値)又は黒(濃度の上限値)のいずれかであるものとする。
【0015】
印刷部17は、文書データを用紙に印刷する印刷装置であり、例えば、読取部16によって生成された原稿画像を用紙に印刷する動作が行われる。
【0016】
ストレージ21は、文書データを保持するための記憶装置であり、読取部16によって生成された原稿画像、他の端末装置から転送された文書データ、他の通信装置からファクシミリ受信した画像データなどが保持される。
【0017】
地紋生成部22は、原稿画像に付加するための地紋画像を生成する動作を行っている。この地紋画像は、第1濃度点を最小単位として構成される潜像画像を第1濃度点よりも小さな第2濃度点を最小単位として構成される背景画像中に埋め込んで形成された画像である。例えば、「コピー禁止」などの文字列を表す画像が潜像画像として埋め込まれる。
【0018】
上記第1濃度点とは、光学読取時の画素であって、複数個の隣接画素からなる一定濃度の点である。一方、第2濃度点は、光学読取時の画素以下のサイズの一定濃度の点であり、画素サイズで見れば、第1濃度点よりも濃度が低い点となっている。
【0019】
画像データを用紙に印刷する際の解像度(出力解像度)が、原稿から画像を読み取る際の解像度(入力解像度)に比べて大きい場合、この様な入出力時における解像度の差を利用することにより、地紋画像が印刷された印刷物を複写した際に、背景画像中に埋め込まれていた潜像画像を浮かび上がらせることができる。すなわち、地紋画像の印刷時には、潜像画像と共に背景画像も印刷されるのに対して、その様な印刷物の複写時には、画像読取の際に濃度点のサイズが小さく、濃度も低い背景画像が自動的に除去されるので、複写物において潜像画像が顕在化することとなる。
【0020】
ここでは、この様な地紋画像を原稿画像に付加した際に地紋画像が目立たないようにするために、地紋画像、すなわち、潜像画像及び背景画像を構成する濃度点の濃度が、画素サイズで見て、原稿画像における文字の濃度よりも低くなっている。
【0021】
潜像画像として埋め込む文字列としては、複合機1の識別情報、複合機1に予め登録された任意の登録情報、印刷情報などが考えられる。印刷情報とは、文書データを印刷する際のジョブ情報のことであり、例えば、ページ番号、総ページ数、印刷日時が考えられる。
【0022】
画像合成部23は、ストレージ21内に保持されている原稿画像の印刷時などに、原稿画像及地紋画像を合成して地紋付き原稿画像を生成する動作を行っている。この画像合成部23では、原稿読取時に、読取部16によって生成された原稿画像に地紋生成部22によって生成された地紋画像を付加する動作が行われる。ストレージ20には、この様な地紋付き原稿画像も保持される。
【0023】
印刷部17では、例えば、操作部15からの指示に基づいて、地紋画像が付加された地紋付き原稿画像を印刷する動作が行われる。
【0024】
サムネイル処理部24は、ストレージ20内に保持されている原稿画像の印刷時などに、画像サイズを縮小させた表示用のサムネイル画像を生成する動作を行っている。このサムネイル処理部24では、地紋付き原稿画像からサムネイル画像を生成する場合、地紋付き原稿画像を多数の画素からなる複数のブロックに区分した際のブロックの平均濃度に基づいて地紋画像を除去する動作が行われる。地紋画像を除去したサムネイル画像は、表示部14へ出力され、画面表示される。
【0025】
図2は、図1の複合機1の原稿読取に係る構成例を示したブロック図である。読取部16では、CCDイメージセンサー31によって原稿から読み取った画像データが読取画像処理部32において処理される。この読取画像処理部32では、例えば、シェーディング補正、ガンマ補正などの画像処理を行い、原稿画像として画像合成部23へ出力する動作が行われる。
【0026】
画像合成部23では、読取画像処理部32からの原稿画像と地紋生成部22からの地紋画像とを合成し、その合成画像を地紋付き原稿画像としてRAM13内のページメモリ33に書き込む動作が行われる。CPU11内の符号化部34では、ページメモリ33内の地紋付き原稿画像を読み出して符号化し、ストレージ21内に格納する動作が行われる。
【0027】
図3は、図1の複合機1の要部における構成例を示したブロック図であり、サムネイル処理部24内の機能構成の一例が示されている。このサムネイル処理部24は、復号部41、画像縮小部42、地紋除去部43、画像縮小部44及びシンボル付加部45により構成される。
【0028】
復号部41は、ストレージ21内の地紋付き原稿画像を読み出して復号し、画像縮小部42へ出力する動作を行っている。
【0029】
画像縮小部42は、ブロック化部51及び平均濃度算出部52からなり、地紋付き原稿画像を複数の第1ブロックに区分し、各第1ブロックについて平均濃度を求めて画像サイズを縮小させた縮小画像を生成する動作を行っている。
【0030】
すなわち、ブロック化部51では、復号部41によって復号された地紋付き原稿画像を多数の画素からなる複数の第1ブロックに区分する動作が行われる。例えば、8行8列の64個の隣接画素によって構成される正方形形状の画像領域を第1ブロックとして地紋付き原稿画像が区分される。
【0031】
平均濃度算出部52では、各第1ブロックについて、第1ブロック内の画素に関する平均濃度を求める動作が行われる。第1ブロックから求められた平均濃度を画素値として当該第1ブロックに割り当てることにより、画像サイズを縮小させた縮小画像が生成される。
【0032】
地紋除去部43は、ブロック化部61、平均濃度算出部62、閾値記憶部63、比較部64及び画素値変換部65からなり、縮小画像から地紋画像を除去した地紋無し画像を生成する動作を行っている。この地紋除去部43では、縮小画像を複数の第2ブロックに区分し、平均濃度が予め定められた閾値以下の第2ブロックを抽出して、当該第2ブロック内の各画素の画素値を一定値に変換することによって縮小画像から地紋画像を除去する動作が行われる。
【0033】
すなわち、ブロック化部61では、画像縮小部42によって生成された縮小画像を多数の画素からなる複数の第2ブロックに区分する動作が行われる。例えば、8行8列の64個の画素によって構成される正方形形状の画像領域を第2ブロックとして縮小画像が区分される。
【0034】
平均濃度算出部62では、各第2ブロックについて、第2ブロック内の画素に関する平均濃度を求める動作が行われる。
【0035】
比較部64では、平均濃度算出部62によって算出された平均濃度と、閾値記憶部63内の閾値とを比較し、その比較結果に基づいて、平均濃度が閾値以下の第2ブロックを抽出する動作が行われる。或いは、平均濃度が第1閾値以下であって、第1閾値よりも小さな第2閾値以上の第2ブロックを抽出する動作が行われる。閾値記憶部63には、予め定められた閾値として、第1閾値及び第2閾値が保持される。
【0036】
そして、画素値変換部65では、比較部64によって抽出された第2ブロック内の各画素の画素値を一定値に変換することによって、地紋無し画像を生成する動作が行われる。より詳しくは、第2ブロック内の各画素について、画素値を第2閾値よりも小さな一定値に変換することにより、縮小画像から地紋画像を除去した地紋無し画像が生成される。
【0037】
画像縮小部44は、地紋無し画像を多数の画素からなる複数の第3ブロックに区分し、各第3ブロックについて平均濃度を求めて、画像サイズを縮小させたサムネイル画像を生成するサムネイル画像生成部となっている。
【0038】
シンボル付加部45は、地紋付き画像であることを示すシンボル画像を画像縮小部44によって生成されたサムネイル画像に付加する動作を行っている。サムネイル画像に付加させる上記シンボル画像としては、文字、記号、図形などが考えられる。例えば、記号「×」が上記シンボル画像として付加される。
【0039】
ここでは、サムネイル画像に付加させるシンボル画像の濃度が、潜像画像及び背景画像を構成する濃度点の濃度に基づいて決定されるものとする。例えば、潜像画像を構成する第1濃度点の濃度と背景画像を構成する第2濃度点の濃度との平均値が、シンボル画像の濃度として定められる。或いは、潜像画像を構成する第1濃度点の濃度に一致させて、シンボル画像の濃度が定められる。
【0040】
表示部14では、例えば、操作部15からの指示に基づいて、シンボル付加部45によってシンボル画像が付加されたサムネイル画像を表示する動作が行われる。
【0041】
図4は、図1の複合機1における原稿読取時の動作の一例を示した図であり、地紋画像が付加された地紋付き原稿画像A1が示されている。この地紋付き原稿画像A1は、読取部16によって原稿から読み取られた画像に画像合成部23によって地紋画像が付加された画像データであり、矩形形状の無地の背景に文字A2が配置されている。
【0042】
地紋画像は、光学読取時の画素以下のサイズの多数の第2濃度点B2によって構成された背景画像と、この背景画像中に埋め込まれた潜像画像によって形成されている。潜像画像は、光学読取時の画素の複数個からなる多数の第1濃度点B1によって構成される。つまり、濃度点B2は、濃度点B1に比べて面積が小さな点となっている。
【0043】
また、濃度点B1,B2の濃度は、文字A2の濃度よりも薄く、濃度点B2の濃度は、画素のサイズで見れば、濃度点B1の濃度に比べて薄くなっている。さらに、濃度点B2は、濃度点B1に比べて高い密度で配置され、複数の濃度点B1又はB2を含む所定サイズの領域について見れば、原稿画像A1上の任意の位置で領域内の濃度点による平均濃度が一定となっている。
【0044】
この様な地紋付き原稿画像を用紙に印刷した場合、潜像画像と背景画像とは所定サイズの領域について見れば濃度に差がないので、潜像画像が認識しづらくなっている。ところが、地紋付き原稿画像A1が印刷された印刷物を複写した場合には、濃度点のサイズが小さく、濃度も薄い背景画像が自動的に除去されるので、潜像画像が顕在化し、潜像画像として背景画像中に埋め込まれていた「コピー」などの文字列が認識し易い状態となる。
【0045】
本実施の形態では、この様な地紋付き原稿画像を縮小してサムネイル画像として表示させる際に、地紋画像を除去した地紋無し画像が生成される。
【0046】
図5及び図6は、図1の複合機1におけるサムネイル画像の表示時の動作の一例を示した図である。図5には、地紋付き原稿画像A1を縮小して縮小画像を生成する際の処理単位が示されている。
【0047】
地紋付き原稿画像A1を縮小して縮小画像を生成する際には、原稿画像A1を8×8個の隣接画素からなる複数のブロック(第1ブロック)に区分し、このブロックを処理単位として縮小処理が実行される。つまり、行方向に8ピクセル、列方向に8ピクセルからなる画像領域を第1ブロックとし、この第1ブロックを処理単位として縮小処理が行われる。
【0048】
図6には、第1ブロック内の画素について算出された平均濃度を画素値として当該第1ブロックに割り当てることによって画像サイズが縮小される様子が示されている。縮小画像は、原稿画像A1における各第1ブロックについて、第1ブロックから算出された平均濃度を画素値として当該第1ブロックに割り当てることにより生成される。
【0049】
つまり、第1ブロック内の8×8個の画素の画素値から算出された平均濃度を当該第1ブロックに対応する新たな1つの画素に画素値として割り当てることによって、画像サイズの縮小が行われる。
【0050】
図7のステップS101〜S106は、図1の複合機1における原稿読取時の動作の一例を示したフローチャートである。まず、読取画像処理部32は、CCDイメージセンサー31が原稿から読み取った読取画像について画像処理する(ステップS101)。
【0051】
次に、地紋生成部22は、オペレータによって予め設定された地紋設定を参照し、その設定値に基づいて地紋画像を生成する(ステップS102,S103)。画像合成部23は、読取画像処理部32からの原稿画像と地紋生成部22からの地紋画像とを合成し、その合成画像を地紋付き原稿画像としてページメモリ33に書き込む(ステップS104)。
【0052】
次に、符号化部34は、ページメモリ33内の地紋付き原稿画像を読み出して符号化し、ストレージ21内に保存する(ステップS105,S106)。
【0053】
図8のステップS201〜S212は、図1の複合機1におけるサムネイル画像の表示時の動作の一例を示したフローチャートである。まず、復号部41は、操作部15からの指示に基づいてストレージ21から地紋付き原稿画像を取得し、復号処理を行う(ステップS201,S202)。
【0054】
次に、画像縮小部42は、復号された地紋付き原稿画像を複数の第1ブロックに区分し、各第1ブロックについて平均濃度を算出する(ステップS203,S204)。
【0055】
そして、画像縮小部42は、第1ブロックから算出した平均濃度を画素値として当該第1ブロックに割り当てることによって、縮小画像を生成する(ステップS205)。
【0056】
次に、地紋除去部43は、縮小画像を複数の第2ブロックに区分し、各第2ブロックについて平均濃度を算出する(ステップS206,S207)。
【0057】
そして、地紋除去部43は、平均濃度が一定濃度以下の第2ブロックを抽出し、当該第2ブロック内の各画素の画素値を一定値に変換する(ステップS208,S209)。これにより、縮小画像から地紋画像を除去した地紋無し画像が生成される。
【0058】
次に、画像縮小部44は、地紋無し画像を多数の画素からなる複数の第3ブロックに区分し、各第3ブロックについて平均濃度を求めて、画像サイズを縮小させたサムネイル画像を生成する(ステップS210)。
【0059】
シンボル付加部45は、地紋付き画像であることを示すシンボル画像を地紋除去部43によって生成されたサムネイル画像に付加する(ステップS211)。表示部14は、シンボル付加部45によってシンボル画像が付加されたサムネイル画像を表示する(ステップS212)。
【0060】
本実施の形態によれば、縮小画像から平均濃度の低い第2ブロックを抽出して地紋画像の除去が行われるので、画像サイズの大きな地紋付き原稿画像A1から直接に地紋画像を除去するのに比べて画像処理に要する時間を短縮することができる。また、縮小画像から地紋画像を除去した地紋無し画像を縮小してサムネイル画像を生成し、そのサムネイル画像を表示させるので、コントラストが低下して文字が見づらくなるのを抑制することができる。また、地紋付き画像であることを示すシンボル画像が付加されたサムネイル画像を表示させるので、文字が見づらくなるのを抑制しつつ、地紋付き画像であることをオペレータに認識させることができる。
【0061】
なお、本実施の形態では、各第1ブロックについて平均濃度を求めることによって画像サイズを縮小させた縮小画像から地紋画像が除去される場合の例について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、平均濃度を求めて画像サイズを縮小させる処理を繰返し行ってから地紋画像を除去するものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態による複写装置の概略構成の一例を示したブロック図であり、複写装置の一例として複合機1が示されている。
【図2】図1の複合機1の原稿読取に係る構成例を示したブロック図である。
【図3】図1の複合機1の要部における構成例を示したブロック図であり、サムネイル処理部24内の機能構成の一例が示されている。
【図4】図1の複合機1における原稿読取時の動作の一例を示した図であり、地紋画像が付加された地紋付き原稿画像A1が示されている。
【図5】図1の複合機1におけるサムネイル画像の表示時の動作の一例を示した図であり、地紋付き原稿画像A1を縮小する際の処理単位が示されている。
【図6】図1の複合機1におけるサムネイル画像の表示時の動作の一例を示した図であり、平均濃度の割り当てによって画像サイズが縮小される様子が示されている。
【図7】図1の複合機1における原稿読取時の動作の一例を示したフローチャートである。
【図8】図1の複合機1におけるサムネイル画像の表示時の動作の一例を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0063】
1 複合機
10 バス
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 表示部
15 操作部
16 読取部
17 印刷部
18 モデム
19 NCU
20 ネットワークI/F
21 ストレージ
22 地紋生成部
23 画像合成部
24 サムネイル処理部
31 CCDイメージセンサー
32 読取画像処理部
33 ページメモリ
34 符号化部
41 復号部
42 画像縮小部
43 地紋除去部
44 画像縮小部
45 シンボル付加部
51 ブロック化部
52 平均濃度算出部
61 ブロック化部
62 平均濃度算出部
63 閾値記憶部
64 比較部
65 画素値変換部
A1 地紋付き原稿画像
A2 文字
B1 第1濃度点
B2 第2濃度点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿の光学読み取りによって無地の背景に文字が配置された原稿画像を生成する読取部と、上記原稿画像を用紙に印刷する印刷部とを有する複写装置であって、
光学読取時の画素の複数個からなる第1濃度点を最小単位として構成される潜像画像が上記光学読取時の画素以下のサイズの第2濃度点を最小単位として構成される背景画像中に埋め込まれた地紋画像を上記原稿画像に付加して印刷することができる複写装置において、
第1濃度点及び第2濃度点の濃度が上記原稿画像における文字の濃度よりも低い上記地紋画像が付加された地紋付き原稿画像を保持する地紋付き原稿画像記憶部と、
上記地紋付き原稿画像を多数の画素からなる2以上の第1ブロックに区分し、各第1ブロックについて平均濃度を求めて、画像サイズを縮小させた縮小画像を生成する画像縮小部と、
上記縮小画像を多数の画素からなる2以上の第2ブロックに区分し、各第2ブロックについて平均濃度を求めて、上記平均濃度が予め定められた閾値以下の第2ブロックを抽出し、当該第2ブロック内の各画素の画素値を一定値に変換することによって上記縮小画像から上記地紋画像を除去した地紋無し画像を生成する地紋除去部と、
上記地紋無し画像を多数の画素からなる2以上の第3ブロックに区分し、各第3ブロックについて平均濃度を求めて、画像サイズを縮小させたサムネイル画像を生成するサムネイル画像生成部と、
上記サムネイル画像を表示するサムネイル画像表示部とを備えたことを特徴とする複写装置。
【請求項2】
上記地紋除去部は、上記平均濃度が第1閾値以下であって、第1閾値よりも小さな第2閾値以上の第2ブロックを抽出し、当該第2ブロック内の各画素について画素値を第2閾値よりも小さな一定値に変換することによって上記地紋無し画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の複写装置。
【請求項3】
地紋付き画像であることを示すシンボル画像を上記サムネイル画像に付加するシンボル付加部を備え、
上記サムネイル画像表示部が、上記シンボル画像が付加された上記サムネイル画像を表示することを特徴とする請求項1又は2に記載の複写装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−11155(P2010−11155A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−168927(P2008−168927)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】