説明

複合体および複合体の製造方法

【課題】層状複水酸化物単体では実現が困難な特性を発揮し得る複合体を提供する。
【解決手段】複合体は、層状複水酸化物と、層状複水酸化物の表面の少なくとも一部を覆うリン酸カルシウム系化合物と、を有する。層状複水酸化物は、[M2+1−x3+(OH)x+・[An−x/n・mHO]x−で表された化合物であってもよい。ここで、0.1≦x≦0.4、0<m、nは1から4の自然数、M2+は2価の金属の少なくとも1種、M3+は3価の金属の少なくとも1種、An−は、n価のイオン交換性アニオンの少なくとも1種であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン酸カルシウム系化合物で表面が覆われた層状複水酸化物に関する。
【背景技術】
【0002】
層状複水酸化物は陰イオン交換材として知られており、リン酸、ヒ素、硝酸、フッ素、ホウ素などの有害陰イオンや薬剤などの生体分子を層間に吸着保持する特徴を持つ。そのため、環境浄化材料(有害陰イオン除去材)としての利用(特許文献1乃至4参照)や、生体材料(薬剤輸送システム材料等)としての技術開発(特許文献5参照)が報告されている。しかし、層状複水酸化物は水溶液に対する溶解性が高いため、それらの材料としては実用化に至っていない。
【0003】
一方でアパタイトとして知られているリン酸カルシウム系化合物は、生体親和性、低溶解性および有機物の吸着性を持ち、生体材料や放射性物質長期固定化材料としての技術開発が報告されている(特許文献6参照)。
【0004】
また、層状複水酸化物は、水溶液に対して溶解性が高いという問題があり、溶解性の低い層状複水酸化物の技術開発も行われている(特許文献7)。
【特許文献1】特開2004−321887号公報
【特許文献2】特開2006−281154号公報
【特許文献3】特開2006−334456号公報
【特許文献4】特開2006−272144号公報
【特許文献5】特表2006−525301号公報
【特許文献6】特開2005−345448号公報
【特許文献7】特開平10−139925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、層状複水酸化物は、その様々な特性に応じた多様な用途に使うことができる可能性があるが、求められる特性に対して層状複水酸化物単体で最適化することには限界がある。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、層状複水酸化物単体では実現が困難な特性を発揮し得る複合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の複合体は、層状複水酸化物と、層状複水酸化物の表面の少なくとも一部を覆うリン酸カルシウム系化合物と、を有する。
【0008】
この態様によると、層状複水酸化物の表面を覆うリン酸カルシウム系化合物によって、水溶液に対する溶解性を抑えることできる。また、リン酸カルシウム系化合物の膜厚や被覆率を制御することで溶解度を調整することができる。そのため、層状複水酸化物単体では実現が困難な特性、例えば、層状複水酸化物に担持させた成分を水溶液中に徐々に放出する、いわゆる徐放剤として用いることも可能となる。
【0009】
層状複水酸化物は、[M2+1−x3+(OH)x+・[An−x/n・mHO]x−で表された不定比化合物または[AlLi(OH)x+・[An−x/n・mHO]x−で表された不定比化合物であってもよい。ここで、0.1≦x≦0.4、0<m、nは1から4の自然数、M2+は2価の金属の少なくとも1種、M3+は3価の金属の少なくとも1種、An−は、n価のイオン交換性アニオンの少なくとも1種であってもよい。
【0010】
層状複水酸化物は、微粒子が凝集した、平均粒子径が1〜100μmの球形凝集粒子であってもよい。これにより、球形凝集粒子の大きさは比較的簡易に制御することができる。また、球形凝集粒子は、その大きさにより反応性や吸着性の高い微粒子から構成されているため、層状複水酸化物の表面にリン酸カルシウム系化合物を形成したり、層状複水酸化物の内部に他の成分を担持したりすることが容易となる。
【0011】
層状複水酸化物は、平均径が1〜10μmの板状結晶粒子であってもよい。このような層状複水酸化物は、結晶性が高く一つの粒子が大きいため、リン酸カルシウム系化合物による被覆効果と相まって水溶液に対する溶解性をより抑えることができる。
【0012】
リン酸カルシウム系化合物は、平均径が30〜500nmの粒子であってもよい。これにより、層状複水酸化物の表面に緻密な膜を形成することができ、水溶液に対する溶解性をより抑えることができる。
【0013】
層状複水酸化物は、生体適合性分子を担持してもよい。ここで、「生体適合性高分子」とは、生体適合性のよい高分子をいい、具体的には、生体内に残存しても生体が拒絶反応を起こさず、あるいは毒性を生じない物質ということができる。これにより、例えば、生体適合性高分子として生体に必要な薬剤や栄養成分を、複合体の内部の層状複水酸化物に担持させることで、生体の内部まで送ることができる。また、層状複水酸化物の表面を覆うリン酸カルシウム系化合物として生体内で徐々に溶解する材料を選択することで、複合体を徐放剤として用いることができる。
【0014】
層状複水酸化物は、放射性イオンまたは放射性分子を担持してもよい。これにより、リン酸カルシウム系化合物の溶解性が低いことを利用して、層状複水酸化物に取り込まれた放射性イオンや放射性分子が外部に溶出することを抑えることができる。このような用途の場合、リン酸カルシウム系化合物の膜厚を厚くするとよい。
【0015】
層状複水酸化物は、光触媒活性物質を担持してもよい。これにより、例えば、リン酸カルシウム系化合物に吸着されたウィルスや有機物を層状複水酸化物が担持する光触媒活性物質により分解する、というような用途に用いることが可能となる。
【0016】
本発明の別の態様は、複合体の製造方法である。この方法は、カルシウムを含む層状複水酸化物をリン酸水溶液に浸漬することにより該層状複水酸化物の表層にリン酸カルシウム系化合物を形成する形成工程を含む。
【0017】
この態様によると、カルシウムを含む層状複水酸化物をリン酸水溶液に浸漬するという簡便な方法で層状複水酸化物の表層にリン酸カルシウム系化合物を形成することができる。
【0018】
本発明のさらに別の態様もまた、複合体の製造方法である。この方法は、層間にリン酸イオンを含む層状複水酸化物をカルシウム塩水溶液に浸漬することにより該層状複水酸化物の表層にリン酸カルシウム系化合物を形成する形成工程を含む。
【0019】
この態様によると、リン酸イオンを含む層状複水酸化物をカルシウム塩水溶液に浸漬するという簡便な方法で層状複水酸化物の表層にリン酸カルシウム系化合物を形成することができる。
【0020】
層状複水酸化物を水溶液に浸漬する際の反応温度が、25〜200℃の範囲であってもよい。これにより、層状複水酸化物の表層に効率よくリン酸カルシウム系化合物を形成することができる。
【0021】
層状複水酸化物は造粒されており、形成工程より前に、層状複水酸化物をスプレードライ方式により造粒する噴霧乾燥工程を含んでもよい。これにより、例えば、球形凝集粒子を簡易に作製することができる。
【0022】
形成工程より前に、陰イオンをインターカレーションした層状複水酸化物を100〜600℃の温度範囲で焼成する焼成工程を含んでもよい。これにより、焼成することで陰イオンが脱離し、その脱離したスペースに生体適合性分子をはじめとする所望の物質を担持させやすくできる。
【0023】
形成工程の後に、表層にリン酸カルシウム系化合物が形成された層状複水酸化物を800〜1200℃の温度範囲で焼成する焼成工程を含んでもよい。これにより、アパタイトをはじめとするリン酸カルシウム系化合物の結晶化が促進され、水溶液に対する溶解度を更に低くすることができる。そのため、例えば、放射性物質を担持させた複合体を焼成することで、長期に渡って安定して放射性物質を固定化することが可能となる。
【0024】
なお、上述した各要素を適宜組み合わせたものも、本件特許出願によって特許による保護を求める発明の範囲に含まれうる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、層状複水酸化物単体では実現が困難な特性を発揮する複合体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
はじめに、本発明者が本願発明をなすに至った経緯について説明する。上述のような状況の下、本発明者らが鋭意検討した結果、層状複水酸化物にリン酸カルシウム系化合物の性質を付与することができれば、層状複水酸化物による有害陰イオンや薬剤などの生体分子を吸着する性質と、リン酸カルシウム系化合物による生体親和性、低溶解性および有機物を吸着する性質とを併せ持つ機能性複合体を実現できることに想到した。このような機能性複合体によれば、例えば、従来にない水溶液中での溶解性の低い環境浄化材料や徐放性薬剤等として有用な機能性無機複合材料の創出が期待される。
【0027】
しかしながら、層状複水酸化物の構造中のカルシウムイオンや層間のリン酸イオンを化学反応に利用することで、生体親和性と低溶解性の特徴を持つリン酸カルシウム系化合物で層状複水酸化物表面を被覆する研究はこれまで全くなかった。本発明者らは、カルシウムイオンやリン酸イオンを含有する層状複水酸化物を合成し、それをリン酸塩水溶液やカルシウム塩水溶液に所定濃度、所定時間、所定温度で浸漬することによって、リン酸カルシウム系化合物で被覆された層状複水酸化物を合成し、溶解性の低い環境浄化材料や徐放性薬剤等として有用な材料の実現を目標に鋭意研究を行った。
【0028】
本願発明はその成果であり、以下に実施の形態として、層状複水酸化物とリン酸カルシウム系化合物の化学的性質を併せ持つ、リン酸カルシウム系化合物で被覆された層状複水酸化物からなる複合体粒子およびその製造方法、並びに複合体粒子の用途について説明す
【0029】
(層状複水酸化物)
以下、本実施の形態の構成をさらに詳細に説明する。本実施の形態において好適に用いられる球状層状複水酸化物は、例えば噴霧乾燥法などの方法により得ることができる。また、本実施の形態に係る複合体の製造方法に使用する層状複水酸化物としては、微粒子が凝集した、平均粒子径が1〜100μmの球形凝集粒子が好ましい。あるいは、層状複水酸化物は、平均径が1〜10μmの板状結晶粒子であってもよい。
【0030】
本実施の形態に係る層状複水酸化物は、例えば、一般式(1)または一般式(2)
[M2+1−x3+(OH)x+・[An−x/n・mHO]x−・・・式(1)
[AlLi(OH)x+・[An−x/n・mHO]x−・・・式(2)
で表される2価−3価の金属イオンの組合せで基本層を構成する不定比化合物が知られている。M2+は、Mg,Ca,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn等に代表される2価の金属の少なくとも1種、M3+は、Al,Fe,Cr,Ga,In等に代表される3価の金属の少なくとも1種、An−は、OH-,Cl,Br,CO2−,NO2−,SO2−,Fe(CN)4−,酒石酸イオンで表されるn価のイオン交換性アニオンの少なくとも1種である。2価−3価系では、一般式(1)に示される不定比化合物であり(0.1≦x≦0.4)、多様な組合せ、組成比の化合物を合成することが可能である。
【0031】
結晶構造の概略は、二価金属M2+の一部を三価金属M3+が置換することによりプラス電荷を持ったBrucite Mg(OH)に類似の基本層ができることから、電気的中性を保つためにマイナス荷電の中間層からなる層状構造をとる。
【0032】
また、Li−Al系(一価金属と三価金属)においても類似の層状複水酸化物が得られることがクレイズ・アンド・クレイミネラルズ(Clays and Clay Minerals)第30巻 p180〜184に報告されている。AlはGibbsite構造で配列し、その空位(Vacancy)をLiイオンが占めて2次元的なlayerを形成し、その電荷を補うために、層間にアニオンが組み込まれている。
【0033】
ここで、層状複水酸化物(Layered Double Hydroxide:LDH)とは、以下に述べるハイドロタルサイト(Hydrotalcite)およびハイドロタルサイト類を含む総称である。
【0034】
ハイドロタルサイトは元々天然鉱物MgAl(OH)16CO・4〜5HOに与えられた名称であるが、その後これと同じ結晶構造をもつ鉱物が多数発見され、合成もされた。そして、上記一般式(1)でM2+がMg2+、M3+がAl3+である化合物がハイドロタルサイトと呼ばれ、それ以外の一般式(1)やLi−Al系の化合物は通称ハイドロタルサイト類と呼ばれている。これらのハイドロタルサイトおよびハイドロタルサイト類はプラスに電荷した基本層と、そのプラスを電気的に中和するアニオンと結晶水を持つ中間層からなる構造単位を有し、構造破壊温度に違いがある他はほとんど似た性質を示すことが知られており、固体塩基性及び陰イオン交換能をもち、インターカレーション反応・再生反応といった特異的な反応を示す。
【0035】
なお、これらの化合物については「スメタイト研究会会報」”スメクタイト”(第6巻
第1号P.12−26、1996,5月)に詳しく説明されている。上記の層状複水酸化
物の具体例としては、スティヒタイト、パイロオーライト、リーベサイト、タコヴァィト
、オネサイト、アイオワイト等が挙げられる。
【0036】
(製造方法)
次に、上述の層状複水酸化物をリン酸カルシウム系化合物で被覆した複合体およびその製造方法についての概略を説明する。
【0037】
はじめに、カルシウムを含む板状の層状複水酸化物粒子の合成方法の一例を以下に示す。Ca/Al比を3〜6に調整した塩化カルシウムと塩化アルミニウムの混合溶液を、水酸化ナトリウム水溶液でpHを例えば11以上に調整しながら、滴下速度5mL/minで窒素バブリングした蒸留水中に滴下する。この場合、使用するカルシウム塩、アルミニウム塩は塩化カルシウム、塩化アルミニウム以外にも水に溶解するものであれば、いかなる塩でもよく、その混合溶液はカルシウムを含んでいればいかなるイオンや分子を含んでいてもよい。また混合溶液の温度は0℃から沸点までの任意の温度でよく、その濃度も任意の濃度でよく、そのpHは11〜13が好ましい。より好ましくは、pHは、11〜12がよい。
【0038】
そして、滴下された混合溶液は、滴下後1時間熟成され、蒸留水で十分ろ過洗浄された後、凍結乾燥法で生成物が得られる。この場合、乾燥法は乾燥器による乾燥、スプレードライ法、真空乾燥法などいかなる乾燥法でもよい。得られた生成物を蒸留水中に浸漬し、任意の反応時間反応させ、カルシウムを含む板状の層状複水酸化物を得る。層状複水酸化物は、平均径が1〜10μmの板状結晶粒子であるとよい。このような層状複水酸化物は、結晶性が高く一つの粒子が大きいため、後述する工程で形成されるリン酸カルシウム系化合物による被覆効果と相まって水溶液に対する溶解性をより抑えることができる。合成中の反応温度は、当該水溶液の沸点から200℃の間の任意の温度範囲であるとよい。より好ましくは、平均径が1〜5μmの板状結晶粒子が生成される温度で反応させるとよい。
【0039】
次に、カルシウムを含む球状の層状複水酸化物凝集粒子の合成方法の一例を以下に示す。Ca/Al比を3〜6に調整した塩化カルシウムと塩化アルミニウムの混合溶液を、水酸化ナトリウム水溶液でpHを例えば11.0〜11.5以上に調整しながら、滴下速度5mL/minで窒素バブリングした蒸留水中に滴下する。この場合、使用するカルシウム塩、アルミニウム塩は塩化カルシウム、塩化アルミニウム以外にも水に溶解するものであれば、いかなる塩でもよく、その混合溶液はカルシウムを含んでいればいかなるイオンや分子を含んでいてもよい。また混合溶液の温度は0℃から40℃までの任意の温度でよく、その濃度も任意の濃度でよい。
【0040】
そして、滴下された混合溶液は、滴下後1時間熟成され、蒸留水で十分ろ過洗浄された後、スプレードライ法でカルシウムを含む球状の層状複水酸化物凝集粒子が得られる。なお、このような層状複水酸化物をスプレードライ方式により造粒する噴霧乾燥工程を含むことで、比較的粒子径のそろった球形の層状複水酸化物凝集粒子を簡易に作製することができる。層状複水酸化物は、微粒子が凝集した、平均粒子径が1〜100μmの球形凝集粒子であるとよい。これにより、球形凝集粒子の大きさは比較的簡易に制御することができる。また、球形凝集粒子は、その大きさにより反応性や吸着性の高い微粒子から構成されているため、層状複水酸化物の表面にリン酸カルシウム系化合物を形成したり、層状複水酸化物の内部に他の成分を担持したりすることが容易となる。
【0041】
スプレードライ法は、層状複水酸化物を水性溶媒中に分散してゲル化し、しかる後にその分散液を噴霧乾燥する方法である。上記ゲルを調製するに当たっては層状複水酸化物の濃度が20重量%以下になることか好ましく、更に好ましくは1〜10重量%である。20重量%を超える濃度ではゲル粘度が高く、噴霧乾燥時の噴霧ノズルへの液の送りが難しく、またノズルの目詰まり等が生じてしまう。
【0042】
噴霧乾燥に際しては、ディスクタイプや加圧ノズル式、2流体ノズル式などの一般的噴霧乾燥法が適用できる。いずれの場合も噴霧時の入り口空気温度は、層状複水酸化物が300℃くらいまでは熱的に十分に安定であることから100〜300℃程度の幅広い温度範囲を設定できる。こうして得られる層状複水酸化物凝集粒子の粒子径は1〜200μmである。この球状層状複水酸化物は必要に応じて通常の乾式分級法により分級して用いられる。本実施の形態に係る球状層状複水酸化物は、電子顕微鏡法による粒子径測定法において平均粒子径が1.0μm〜200μm、特に好適な範囲は1μm〜100μmの範囲である。
【0043】
なお、粒子径の測定は、沈降重量法や遠心沈降光透過法、レーザー回折・光散乱法などの測定法が可能である。流動相中における凝集などを区別できない可能性があるので、透過型電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡により直接観察し、個々の粒子の長短径の平均値を求め、個数基準による各フラクションの対数正規分布から平均粒子径を求めることが好ましい。
【0044】
上述のように作製された、カルシウムを含む板状の層状複水酸化物粒子やカルシウムを含む球状の層状複水酸化物凝集粒子を、リン酸カルシウム系化合物の一つであるアパタイトで被覆する方法の一例を示す。各粒子をpH6〜12に調整した所定濃度のリン酸塩水溶液中で所定温度、所定時間反応させる。この場合、使用するリン酸塩は水に溶解するものであれば、いかなるリン酸塩でもよく、カルシウムを含んでいればいかなるイオンや分子を含んでいてもよい。またリン酸塩溶液の温度は0℃から200℃までの任意の温度でよく、その濃度は層状複水酸化物に含まれるカルシウムイオンの0.1〜100倍の濃度が好ましい。
【0045】
次に、生成物を洗浄・ろ過分離し、凍結乾燥してリン酸カルシウム系化合物で被覆された層状複水酸化物粒子を得る。この場合、凍結乾燥法以外の乾燥器による乾燥、スプレードライ法、真空乾燥法などいかなる乾燥法でもよい。また、層状複水酸化物を被覆するリン酸カルシウム系化合物は、浸漬するリン酸塩の水溶液の濃度や反応温度、反応時間を適宜調整することで、所望の被覆率や膜厚で形成されることが可能となる。以下、層状複水酸化物を被覆するリン酸カルシウム系化合物の形成工程について各実施例を参照して詳述する。なお、各実施例の説明において、それより先の実施例と同様の作用や効果の説明については適宜省略する。
【実施例1】
【0046】
前述の塩化カルシウムと塩化アルミニウムの混合溶液から得られた生成物を150℃の蒸留水中に24時間浸漬して反応させ、カルシウムを含む層状複水酸化物の板状結晶を得る。そして、pH9に調整した100mMリン酸ナトリウム水溶液50mL中に板状結晶0.5gを入れ、40℃で6時間反応させた。反応後の試料は蒸留水で良く洗い凍結乾燥機で、24時間乾燥した。
【0047】
図1は、反応前後の試料の粉末X線回折結果を示す図である。図2(a)は、実施例1における反応前の試料の走査電子顕微鏡での観察結果を示す図、図2(b)は、実施例1における反応後の試料の走査電子顕微鏡での観察結果を示す図である。図1に示すように、反応後の試料ではCa/Al層状複水酸化物のピークの他に、反応前に認められなかった水酸アパタイトの回折線が認められた。また反応後のSEM像から、Ca/Al層状複水酸化物の表面に長径30〜300nmの針状リン酸カルシウム系化合物(水酸アパタイト)が観察された。このように、層状複水酸化物の表面に緻密な膜が形成されているため、水溶液に対する溶解性をより抑えることができる。なお、針状リン酸カルシウム系化合物の平均径は、500nm以下であることが好ましい。
【0048】
図3(a)は、反応後の試料の透過型電子顕微鏡像(TEM像)を示す図、図3(b)は、図3(a)の分析点1のエネルギー分散型X線分析(EDX分析)の結果を示す図である。板状のCa/Al層状複水酸化物の表面のEDX分析結果からは、カルシウムとアルミニウムの他に反応前には含有していないリンのピークが認められたことから、リン酸カルシウム系化合物が層状複水酸化物の表面に生成したといえる。つまり、実施例1に示す工程のように、カルシウムを含む層状複水酸化物をリン酸水溶液に浸漬という簡便な方法により、層状複水酸化物の表層にリン酸カルシウム系化合物を形成することができる。換言すれば、実施例1に示す工程により、層状複水酸化物と、層状複水酸化物の表面の少なくとも一部を覆うリン酸カルシウム系化合物と、を有する機能性複合体が生成されることがわかる。
【実施例2】
【0049】
前述の塩化カルシウムと塩化アルミニウムの混合溶液から得られた生成物を150℃の蒸留水中に24時間浸漬して反応させ、カルシウムを含むCa/Al層状複水酸化物の板状結晶を得る。そして、pH9に調整した10mMリン酸ナトリウム水溶液50mL中に板状結晶0.5gを入れ、40℃で6時間反応させた。反応後の試料は蒸留水で良く洗い凍結乾燥機で、24時間乾燥した。
【0050】
図4は、実施例2における反応後の試料の走査電子顕微鏡での観察結果を示す図である。図4に示した反応後のSEM像から、Ca/Al層状複水酸化物表面にリン酸カルシウム系化合物(水酸アパタイト)がわずかに観察された。これにより、実施例2に示す工程においても実施例1と同様の効果が得られることがわかる。また、実施例1および実施例2の結果から、カルシウムを含む板状結晶の層状複水酸化物を浸漬するリン酸ナトリウム水溶液の濃度は、好ましくは10mM以上であるとよい。
【実施例3】
【0051】
前述の塩化カルシウムと塩化アルミニウムの混合溶液から得られた生成物を150℃の蒸留水中に24時間浸漬して反応させ、カルシウムを含む層状複水酸化物の板状結晶を得る。そして、pH9に調整した100mMリン酸ナトリウム水溶液50mL中に板状結晶0.5gを入れ、25℃、80℃、120℃、160℃、200℃の各温度で6時間反応させた。反応後の試料は蒸留水で良く洗い凍結乾燥機で、24時間乾燥した。
【0052】
図5は、実施例3における各反応温度(a)25℃、(b)80℃、(c)120℃、(d)160℃、(e)200℃、ごとの走査電子顕微鏡での観察結果を示した図である。図5(a)〜図5(e)に示した反応後のSEM像から、各温度においてCa/Al層状複水酸化物表面にリン酸カルシウム系化合物(水酸アパタイト)が観察された。したがって、層状複水酸化物をリン酸ナトリウム水溶液に浸漬する際の反応温度が、少なくとも25〜200℃の範囲であれば、Ca/Al層状複水酸化物の表層に効率よくリン酸カルシウム系化合物を形成することができる。また、反応時間が同じ場合、反応温度が高いほどリン酸カルシウム系化合物が多く生成することがわかる。そこで、反応温度を適宜制御することで、容易に所望の膜厚のリン酸カルシウム系化合物を層状複水酸化物の表層に形成することができる。
【実施例4】
【0053】
前述の塩化カルシウムと塩化アルミニウムの混合溶液から得られた生成物を150℃の蒸留水中に24時間浸漬して反応させ、カルシウムを含む層状複水酸化物の板状結晶を得る。そして、pH9に調整した100mMリン酸ナトリウム水溶液50mL中に板状結晶0.5gを入れ、40℃で4時間、12時間、24時間、72時間の各時間反応させた。反応後の試料は蒸留水で良く洗い凍結乾燥機で、24時間乾燥した。
【0054】
図6は、実施例4における各反応時間(a)4時間、(b)12時間、(c)24時間、(d)72時間、ごとの走査電子顕微鏡での観察結果を示した図である。図6(a)〜図6(d)に示した反応後のSEM像から、各反応時間においてCa/Al層状複水酸化物表面にリン酸カルシウム系化合物(水酸アパタイト)が観察された。したがって、層状複水酸化物をリン酸ナトリウム水溶液に浸漬する際の反応時間が、少なくとも4時間〜72時間の範囲であれば、Ca/Al層状複水酸化物の表層にリン酸カルシウム系化合物を形成することができる。また、反応温度が同じ場合、反応時間が長いほどリン酸カルシウム系化合物が多く生成することがわかる。そこで、反応時間を適宜制御することで、容易に所望の膜厚のリン酸カルシウム系化合物を層状複水酸化物の表層に形成することができる。
【実施例5】
【0055】
前述のようにスプレードライ法により、球状の層状複水酸化物凝集粒子を合成する。そして、pH9に調整した10mMリン酸ナトリウム水溶液50mL中に凝集粒子0.5gを入れ、40℃で6時間反応させた。反応後の試料は蒸留水で良く洗い凍結乾燥機で、24時間乾燥した。
【0056】
図7は、反応前後の試料の粉末X線回折結果を示す図である。図8(a)は、実施例5における反応前の試料の走査電子顕微鏡での観察結果を示す図、図8(b)は、実施例5における反応後の試料の走査電子顕微鏡での観察結果を示す図、図8(c)は、図8(b)の部分拡大図である。図7に示すように、反応後の試料ではCa/Al層状複水酸化物のピークの他に、反応前に認められなかった水酸アパタイトの回折線が認められた。また、図8(b)に示す反応後のSEM像から、Ca/Al層状複水酸化物の表面に長径30〜300nmの針状リン酸カルシウム系化合物(水酸アパタイト)が観察された。また図8(c)に示す拡大写真から、球状凝集粒子中のCa/Al層状複水酸化物結晶を針状リン酸カルシウム系化合物(水酸アパタイト)が被覆していることがわかる。このように、層状複水酸化物の表面に緻密な膜が形成されているため、水溶液に対する溶解性をより抑えることができる。なお、針状リン酸カルシウム系化合物の平均径は、500nm以下であることが好ましい。
【0057】
図9(a)は、反応後の試料の透過型電子顕微鏡像(TEM像)、図9(b)は、図9(a)の示す分析点1のエネルギー分散型X線分析(EDX分析)の結果を示す図である。球状のCa/Al層状複水酸化物凝集粒子の表面のEDX分析結果からは、カルシウムとアルミニウムの他に反応前には含有していないリンのピークが認められたことから、リン酸カルシウム系化合物が層状複水酸化物の表面に生成したといえる。
【実施例6】
【0058】
前述のようにスプレードライ法により、球状の層状複水酸化物凝集粒子を合成する。そして、pH9に調整した100mMリン酸ナトリウム水溶液50mL中に凝集粒子0.5gを入れ、40℃で6時間反応させた。反応後の試料は蒸留水で良く洗い凍結乾燥機で、24時間乾燥した。
【0059】
図10は、実施例6における反応後の試料の走査電子顕微鏡での観察結果を示す図である。図10に示した反応後のSEM像から、Ca/Al層状複水酸化物表面に長径30〜300nmの針状リン酸カルシウム系化合物(水酸アパタイト)が観察された。
【実施例7】
【0060】
前述の各実施例では、カルシウムを含む層状複水酸化物をリン酸ナトリウム溶液に浸漬することで所望の複合体を得ていたが、実施例7では、リン酸カルシウム系化合物を構成するカルシウムを水溶液側に含ませ、そのカルシウムと反応するリン酸イオンを層状複水酸化物側に含ませている。具体的には、はじめに、リン酸イオンを層間にインターカレーションした球状のMg/Al層状複水酸化物凝集粒子を合成する。ここで、リン酸イオンを取り込むインターカレーションの方法としては、公知の共沈法、イオン交換法、再構築法等を適宜条件を選択して用いることができる。また、凝集粒子を前述のスプレードライ法により作製する。
【0061】
そして、pH9に調整した100mM塩化カルシウム水溶液50mL中に凝集粒子0.5gを入れ、80℃で6時間反応させた。反応後の試料は蒸留水で良く洗い凍結乾燥機で、24時間乾燥した。
【0062】
図11(a)は、実施例7における反応後の試料の走査電子顕微鏡での観察結果を示す図、図11(b)は、図11(a)の部分拡大図である。図11(a)、図11(b)に示すように、反応後のSEM像から、Mg/Al層状複水酸化物表面に長径30〜300nmの針状リン酸カルシウム系化合物(水酸アパタイト)が観察された。またその試料を11NHClに接触させた後、ろ過分離し、液相中のCa,PをICPプラズマ発光分析装置で測定した結果、反応前の層状複水酸化物には含有されていないCaが認められたことからリン酸カルシウム系化合物が層状複水酸化物に生成したといえる。
【0063】
つまり、実施例7に示す工程のように、リン酸イオンを含む層状複水酸化物をカルシウム塩水溶液に浸漬するという簡便な方法で層状複水酸化物の表層にリン酸カルシウム系化合物を形成することができる。換言すれば、実施例7に示す工程によっても、層状複水酸化物と、層状複水酸化物の表面の少なくとも一部を覆うリン酸カルシウム系化合物と、を有する機能性複合体が生成されることがわかる。このような方法によれば、カルシウムを含まない層状複水酸化物であっても、その表面にリン酸カルシウム系化合物を形成することができるので、層状複水酸化物の選択の幅が広がる。その結果、様々な用途に対してより適した複合体を製造することができる。
【0064】
(溶出率)
上述の実施例1(板状)、実施例5(球状)で用いた層状複水酸化物について、その表層にリン酸カルシウム系化合物が形成される反応前後の溶出率を測定した。それぞれの試料0.1gをpH3に調整した塩酸中に1時間浸漬した後にろ過分離し、反応溶液を回収し、層状複水酸化物の主成分であるアルミニウムイオンをICP発光分光装置で測定し、溶出率を計算した。ここで、溶出率とは、
溶出量(ppm)/試料中のAl量(ppm))×100(%)
で定義される。
【0065】
図12は、各試料の反応前後の溶出率を示す図である。層状複水酸化物が板状か球状かにかかわらず、リン酸カルシウム系化合物で被覆された反応後の層状複水酸化物は、反応前の試料と比較して、溶出率が低下していることがわかる。つまり、リン酸カルシウム系化合物で被覆されることにより、層状複水酸化物の構造が安定化していることがわかる。
【0066】
(複合体の用途)
上述のように、本実施の形態に係る複合体は、層状複水酸化物の表面をリン酸カルシウム系化合物で被覆することで従来よりも溶解性を低下している。また、本実施の形態に係る複合体の製造方法であれば、製造する際の製造条件を適宜選択することで、層状複水酸化物の表面に形成されるリン酸カルシウム系化合物の被覆率や膜厚を変化させ、各種水溶液における所望の溶解速度を容易に実現することができる。そこで、本実施の形態に係る複合体を好適に利用することができる用途について例示する。
【0067】
(薬剤としての利用)
従来の層状複水酸化物は、薬剤や有機物などを層間に取り込むことができるが、単体では構造安定性が低く、特に酸性溶液に容易に溶解するため、実用にはまだ不十分であった。一方、本実施の形態に係る複合体では、低溶解性のリン酸カルシウム系化合物の一つであるアパタイトが層状複水酸化物を被覆しているため、生体内でアパタイトは徐々に溶解される。そのため、本実施の形態に係る複合体を構成する層状複水酸化物に生体適合性分子を担持させることで、層状複水酸化物中の生体適合性分子がゆっくりと放出される徐放効果が期待できる。
【0068】
つまり、本実施の形態に係る複合体は、生体適合性高分子として生体に必要な薬剤や栄養成分を、複合体の内部の層状複水酸化物に担持させることで、生体の内部まで送ることができる。また、層状複水酸化物の表面を覆うリン酸カルシウム系化合物として生体内で徐々に溶解する材料(例えばアパタイト)を選択することで、複合体を徐放剤として用いることができる。その結果、このような複合体を用いることで、いわゆるドラッグデリバリーシステムを実現することができる。
【0069】
また、アパタイトは、生体親和性が高く、生体内での副作用を引き起こさないため、複合体を構成するリン酸カルシウム系化合物としてより適している。生体適合性分子としては、例えば、シクロデキストリン、アミノ酸、ペプチド、ヌクレオチド、DNA、糖類、L−アスコルビン酸(ビタミンC)等が挙げられる。また、生体適合性分子としては、当然薬剤も含まれる。このような薬剤としては、抗ガン剤,鎮静剤,解熱剤,抗炎症剤,抗痙攣剤,ビタミン類などが好ましい。
【0070】
本実施の形態に係る複合体は、リン酸カルシウム系化合物を形成する前に、陰イオンをインターカレーションした層状複水酸化物を100〜600℃の温度範囲で焼成されていてもよい。この場合、焼成工程によって陰イオンが脱離され、その脱離したスペースに生体適合性分子をはじめとする所望の物質を担持させやすくできる。
【0071】
(有害陰イオン長期化固定材としての利用)
層状複水酸化物は、有害陰イオン(例えば硝酸、リン酸、ヒ素、放射性ヨウ素、その他放射性物質)を層間に取り込むことができる。しかし、水中に含まれる放射性陰イオンなどの除去の場合、層状複水酸化物単体では構造安定性が低いため、層間に取り込んだ陰イオンを容易に放出してしまう。一方、本実施の形態に係る複合体は、リン酸カルシウム系化合物の一つであるアパタイトにより表面が被覆されているため、層状複水酸化物の溶解を最小限に抑えるとともに、陰イオン自体の放出も抑制することができる。その結果、有害陰イオンやそれを含む放射性分子の長期固定化材として利用することができる。
【0072】
ここで、有害陰イオンとしては、C−14(炭素14)、Cl−36(塩素36)、Se−79(セレン79)、Tc−99(テクネチウム99)、I−129(ヨウ素129)を含む放射能強度が低い放射性陰イオン種(H14CO14CO2−,H79SeO79SeO2−99TcOの形で存在)が挙げられる。
【0073】
本実施の形態に係る複合体の製造方法は、表層にリン酸カルシウム系化合物が形成された層状複水酸化物を700〜1200℃の温度範囲で焼成する焼成工程を含んでもよい。これにより、アパタイトをはじめとするリン酸カルシウム系化合物の結晶化が促進され、水溶液に対する溶解度を更に低くすることができる。そのため、前述の放射性物質を担持させた複合体を焼成することで、長期に渡って安定して放射性物質を固定化することが可能となる。なお、固定化のために焼成する際の温度は700℃以上あることが好ましい。700℃未満では、焼成による放射性物質の安定した固定化が長期間行われない可能性がある。一方、1200℃を超えると加熱過程で放射性物質が分解放出される可能性もある。なお、温度範囲の下限としては、より好ましくは、800℃以上であるとよい。また、温度範囲の上限としては、より好ましくは、1000℃以下であるとよい。
【0074】
(化学反応触媒環境浄化材料としての利用)
層状複水酸化物は、構造内に光触媒活性を有するチタンを取り込み担持することができる。またその層間には有機物(特に陰イオン)を取り込むことができる。一方で、アパタイトはウィルスや有機物を吸着する作用を持つ。本実施の形態に係る複合体は、リン酸カルシウム系化合物の一つであるアパタイトと層状複水酸化物がナノ領域で複合化しているため、層状複水酸化物にチタンを担持させることで、アパタイトに吸着した物質も層状複水酸化物中のチタンの光触媒効果で分解することができる。また、複合体は、層状複水酸化物の表面に形成されたアパタイトにより、溶解性が低くなっており、水溶液中での長期にわたる使用も可能となる。換言すると、層状複水酸化物に光触媒活性物質を担持させた複合体により、リン酸カルシウム系化合物に吸着されたウィルスや有機物を層状複水酸化物が担持する光触媒活性物質により分解する、というような用途に用いることが可能となる。例えば、汚染や富栄養化した河川や湖水などを浄化する環境浄化材料としてこのような複合体を用いることができる。
【0075】
以上、本発明を上述の実施の形態や各実施例を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態や各実施例に限定されるものではなく、実施の形態や各実施例の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態や各実施の形態における組合せや工程の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態や各実施例も本発明の範囲に含まれうる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、イオン交換体、吸着材料、生体材料、固定化材料、反応触媒、環境浄化材料、建材等の高機能性材料として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】反応前後の試料の粉末X線回折結果を示す図である。
【図2】図2(a)は、実施例1における反応前の試料の走査電子顕微鏡での観察結果を示す図、図2(b)は、実施例1における反応後の試料の走査電子顕微鏡での観察結果を示す図である。
【図3】図3(a)は、反応後の試料の透過型電子顕微鏡像(TEM像)を示す図、図3(b)は、図3(a)の分析点のエネルギー分散型X線分析(EDX分析)の結果を示す図である。
【図4】実施例2における反応後の試料の走査電子顕微鏡での観察結果を示す図である。
【図5】実施例3における各反応温度(a)25℃、(b)80℃、(c)120℃、(d)160℃、(e)200℃、ごとの走査電子顕微鏡での観察結果を示した図である。
【図6】実施例4における各反応時間(a)4時間、(b)12時間、(c)24時間、(d)72時間、ごとの走査電子顕微鏡での観察結果を示した図である。
【図7】反応前後の試料の粉末X線回折結果を示す図である。
【図8】図8(a)は、実施例5における反応前の試料の走査電子顕微鏡での観察結果を示す図、図8(b)は、実施例5における反応後の試料の走査電子顕微鏡での観察結果を示す図、図8(c)は、図8(b)の部分拡大図である。
【図9】図9(a)は、反応後の試料の透過型電子顕微鏡像(TEM像)、図9(b)は、図9(a)の示す分析点のエネルギー分散型X線分析(EDX分析)の結果を示す図である。
【図10】実施例6における反応後の試料の走査電子顕微鏡での観察結果を示す図である。
【図11】図11(a)は、実施例7における反応後の試料の走査電子顕微鏡での観察結果を示す図、図11(b)は、図11(a)の部分拡大図である。
【図12】各試料の反応前後の溶出率を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
層状複水酸化物と、
前記層状複水酸化物の表面の少なくとも一部を覆うリン酸カルシウム系化合物と、
を有することを特徴とする複合体。
【請求項2】
前記層状複水酸化物は、式(1)または式(2)
[M2+1−x3+(OH)x+・[An−x/n・mHO]x−・・・式(1)
[AlLi(OH)x+・[An−x/n・mHO]x−・・・式(2)
(ここで、0.1≦x≦0.4、0<m、nは1から4の自然数、M2+は2価の金属の少なくとも1種、M3+は3価の金属の少なくとも1種、An−は、n価のイオン交換性アニオンの少なくとも1種である。)
で表された不定比化合物であることを特徴とする請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記層状複水酸化物は、微粒子が凝集した、平均粒子径が1〜100μmの球形凝集粒子であることを特徴とする請求項1に記載の複合体。
【請求項4】
前記層状複水酸化物は、平均径が1〜10μmの板状結晶粒子であることを特徴とする請求項1に記載の複合体。
【請求項5】
前記リン酸カルシウム系化合物は、平均径が30〜500nmの粒子であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項6】
前記層状複水酸化物は、生体適合性分子を担持することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項7】
前記層状複水酸化物は、放射性イオンまたは放射性分子を担持することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項8】
前記層状複水酸化物は、光触媒活性物質を担持することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項9】
カルシウムを含む層状複水酸化物をリン酸水溶液に浸漬することにより該層状複水酸化物の表層にリン酸カルシウム系化合物を形成する形成工程を含むことを特徴とする複合体の製造方法。
【請求項10】
層間にリン酸イオンを含む層状複水酸化物をカルシウム塩水溶液に浸漬することにより該層状複水酸化物の表層にリン酸カルシウム系化合物を形成する形成工程を含むことを特徴とする複合体の製造方法。
【請求項11】
前記層状複水酸化物を水溶液に浸漬する際の反応温度が、25〜200℃の範囲であることを特徴とする請求項9または10に記載の複合体の製造方法。
【請求項12】
前記層状複水酸化物は造粒されており、
前記形成工程より前に、前記層状複水酸化物をスプレードライ方式により造粒する噴霧乾燥工程を含むことを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項に記載の複合体の製造方法。
【請求項13】
前記形成工程より前に、陰イオンをインターカレーションした前記層状複水酸化物を100〜600℃の温度範囲で焼成する焼成工程を含むことを特徴とする請求項9乃至12のいずれか1項に記載の複合体の製造方法。
【請求項14】
前記形成工程の後に、表層にリン酸カルシウム系化合物が形成された前記層状複水酸化物を800〜1200℃の温度範囲で焼成する焼成工程を含むことを特徴とする請求項9乃至12のいずれかに記載の複合体の製造方法。

【図1】
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【図7】
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【図12】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−59005(P2010−59005A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−224658(P2008−224658)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(593165487)学校法人金沢工業大学 (202)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】