説明

複合体の製造方法及び複合体

【課題】複合体の樹脂層に形成された高信頼性、算術平均粗さ(Ra)が小さい微細配線及びビアを有する複合体の製造方法及び複合体を提供するものである。
【解決手段】本発明の複合体の製造方法は、樹脂層と導体層とを含む複合体を製造する方法であって、(A)樹脂層上に保護層を有する保護層付き樹脂層を準備する工程と、(B)保護層を介してレーザー光を照射することによって樹脂層表面に溝を形成する工程と、(C)前記樹脂層表面に導体を形成する工程と、(D)保護層を剥離する工程と、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合体の製造方法及び複合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高機能化、軽量化、小型化、薄型化の要求に伴い、電子部品の高密度集積化、高密度実装化が進んでいる。これらの電子機器に使用されるプリント配線板の回路配線は高密度化する傾向にあり、ビルドアップした多層配線構造が採用されている。
【0003】
樹脂層を介して回路配線層間を接続する方法として、例えば樹脂層に層間接続用のビアを形成する方法がある(例えば、特許文献1参照)。ビアを形成するには、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー等のレーザーを樹脂層に照射し開口後、導電性樹脂の充填やめっきによって回路配線層間を接続する。この場合、樹脂層中の無機充填材の影響や樹脂のレーザー波長の吸収性から、ビア内部の樹脂面の凹凸が大きくなるためビアを形成する際の精度に問題があり、20μm以下のビアを形成するのが難しかった。
【0004】
また、回路配線パターンを形成する方法として、一般的には銅箔をエッチングする手法(サブトラクティブ法)がある。サブトラクティブ法で形成される回路厚みは、使用する銅箔の厚みで規定されるという特徴があり、回路幅の精度は、エッチング液の反応特性及び使用するエッチング装置の能力に依存する。そのため、サブトラクティブ法は、極薄金属箔を用いる一部の用途を除くと、一般的には高密度化に不向きとされている。
【0005】
一方、ビルドアップ基板や多層配線板の製造に一般的に適用されている工法にセミアディティブ法がある。この工法では、樹脂表面をデスミア処理して表面を粗化し、パラジウム触媒を利用した無電解銅めっき層を表面に形成し、さらに該銅めっき層上に感光性レジストを形成して、露光・現像などのプロセスを経由してパターニングを行った後、電解銅めっきで回路パターンを形成し、最後にレジストを剥離し無電解銅めっき層をクイックエッチングで除去して微細配線を形成する方法である(例えば、特許文献2参照)。この方法で微細配線を形成する場合、レジストの露光・現像精度や配線間のパラジウム触媒残渣によるめっき異常析出などの問題があり、回路幅/回路間幅(L/S)が10μm/10μm以下で微細配線を形成することは困難である。
【0006】
また、サブトラクティブ法、及び、セミアディティブ法では樹脂層表面に凸型の配線が形成される。ビルドアップ基板や多層配線板においては、この後の工程に樹脂層を積層する工程が含まれるが、樹脂組成によっては樹脂の埋め込み性の問題が生じる。特に回路幅/回路間幅(L/S)が10μm/10μm以下の微細配線領域では、樹脂の埋め込み性が悪くなると絶縁信頼性を確保するのが困難となる。
【0007】
また、スクライブやプラズマなどによって樹脂層に溝を形成し、樹脂表面をデスミア処理して表面を粗化し、パラジウム触媒を利用した無電解銅めっき層を表面に形成後、電解銅めっきで導体を形成し、最後に溝部分以外の導体めっきをエッチングで除去して回路を形成する方法がある(例えば、特許文献3、4参照)。この場合、樹脂層の溝側壁面の凹凸が大きくため溝を形成する際の精度に問題があり、回路幅/回路間幅(L/S)が10μm/10μm以下の微細配線を形成するのが難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−274210号公報
【特許文献2】特開平8−64930号公報
【特許文献3】特開平10−4253号公報
【特許文献4】特開2006−41029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、複合体の樹脂層に形成された高信頼性、算術平均粗さ(Ra)が小さい微細配線及びビアを有する複合体の製造方法及び複合体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的は、下記[1]〜[8]に記載の本発明により達成される。
[1] 樹脂層と導体層とを含む複合体を製造する方法であって、
(A)樹脂層上に保護層を有する保護層付き樹脂層を準備する工程と、
(B)保護層を介してレーザー光を照射することによって樹脂層表面に溝を形成する工程と、
(C)前記樹脂層表面に導体を形成する工程と、
(D)保護層を剥離する工程と、
を含むことを特徴とする複合体の製造方法。
[2]前記工程(C)が無電解めっきによって導体を形成する[1]に記載の複合体の製造方法。
[3]前記工程(C)または前記工程(D)の後に、(E)電解めっきでさらに導体形成する工程を含むことを特徴とする[1]または[2]に記載の複合体の製造方法。
[4]前記工程(C)または前記工程(D)または前記工程(E)の後に(F)クイックエッチングをする工程を含む[1]ないし[3]のいずれかに記載の複合体の製造方法。
[5]前記工程(B)と前記工程(C)の間に、プラズマ又は薬液によってデスミアする工程を含む[1]ないし[4]のいずれかに記載の複合体の製造方法。
[6]前記レーザー光がエキシマレーザーまたはYAGレーザーである[1]ないし[5]のいずれかに記載の複合体の製造方法。
[7]前記保護層がポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一つである[1]ないし[6]のいずれかに記載の複合体の製造方法。
[8] [1]ないし[7]のいずれかに記載の製造方法で作製された複合体。
【発明の効果】
【0011】
本発明に従うと、複合体の樹脂層に形成された高信頼性、算術平均粗さ(Ra)が小さい微細配線及びビアを有する複合体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る樹脂層と導体層とを含む複合体において、溝を形成し導体層を形成することで微細配線を製造する方法の一例について示した模式図である。
【図2】本発明に係る樹脂層と導体層とを含む複合体において、ビアを製造する方法の一例について示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の複合体の製造方法は、樹脂層と導体層とを含む複合体を製造する方法であって、(A)樹脂層上に保護層を有する保護層付き樹脂層を準備する工程と、(B)保護層を介してレーザー光を照射することによって樹脂層にビア及び/または樹脂層表面に溝を形成する工程と、(C)前記樹脂層表面に導体を形成する工程と、(D)保護層を剥離する工程と、を含むことを特徴とする。これにより、工程(C)のあとにエッチング液によって導体の一部を除去し、樹脂層のビア及び/または前記樹脂層表面の溝部分のみに導体層を形成する工程や処理時間を大幅に省略することができ、また、複合体の樹脂層に形成された高密度、高信頼性、高周波対応の微細配線及びビアを有する複合体を得ることができる。以下に本発明の複合体の製造方法及び複合体について詳細に説明する。
【0014】
まず、本発明の複合体の製造方法について、図を用いて説明する。図1、2は、本発明に係る樹脂層と導体層とを含む複合体を製造する方法の一例について示した模式図である。 本発明の複合体の製造方法は、樹脂層2と導体層91とを含む複合体の製造方法であって、(A)樹脂層2上に保護層10を有する保護層付き樹脂層を準備する工程と、(B)保護層10を介してレーザー光3を照射することによって樹脂層2にビア61及び/または樹脂層表面に溝60を形成する工程(図1(a)、(b)、図2(a)、(b))と、(C)樹脂層2表面に導体7を形成する工程と(図1(c)、図2(c))、
(D)保護層10を剥離する工程(図1(f)、図2(f))と、を含むものとすることができる。
【0015】
工程(A)では、保護層10として、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエステル、ポリイミド、銅箔、アルミ箔等が挙げられる。これらの中でもポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリイミド中から選ばれた少なくとも一つが好ましい。これらを用いることによって、レーザー光の吸収率が良好のため効果的にレーザー光での加工性が向上し、また樹脂層2からの剥離性を向上することができる。保護層10は、予め樹脂層2と接着させた保護層付き樹脂層を両面導体層付きコア基板1に張り合わせてもよいし、樹脂層2を面導体層付きコア基板1に張り合わせた後に樹脂層2上に保護層10を張り合わせても構わない。
【0016】
工程(B)では、レーザー光3がエキシマレーザー又はYAGレーザーであることが好ましい。これらのレーザーを使用することにより、精度・形状がよく、微細なビアや溝の形成が可能となる。特に限定はされないが、エキシマレーザーのレーザー波長は、193nm、248nm、308nmであることがより好ましく、193nm、248nmであることが特に好ましい。これにより、精度・形状がよく、微細なビアや溝の形成ができる作用を効果的に発現させることができる。YAGレーザーの波長は355nmであることが好ましい。他の波長では樹脂層2を構成する樹脂組成物や保護層10がレーザー光3を吸収せず、ビアや溝が形成できない可能性がある。レーザー光3はマスク4を介して保護層10及び樹脂層2に照射される。
【0017】
本発明の複合体の製造方法では、工程(B)と工程(C)の間に、プラズマ又は薬液によってデスミアする工程を含むことが好ましい。これにより、レーザー光3によるビア61や溝60の形成時に、ビア61や溝60の側壁面に残留した炭化物を除き、電気信頼性の高いビア形成が可能となる。
【0018】
特に限定されないが、プラズマは窒素プラズマ、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ、四フッ化メタンプラズマ、もしくはこれらの混合ガスのプラズマを使用することができる。また、プラズマの処理条件としては、プラズマ工程後の樹脂層2の表面の算術平均粗さ(Ra)が、0.05μm以上、0.25μm以下となる条件であり、同時に、ビア61や溝60の側壁面の残留した炭化物を十分に除ききる条件であることが好ましい。これにより、絶縁信頼性が高く、信号応答性に優れたビアや溝形成が可能となる。1GHzを超える高周波数領域において、その表皮効果による伝送損失を低減でき、さらにビアや溝内のめっき付き不良や層間接続不良を低減することができる。また、特に限定はされないが、プラズマ条件をプラズマ工程後の算術平均粗さ(Ra)が、0.05μm以上、0.20μm以下となる条件とするのがより好ましく、0.05μm以上、0.15μm以下となる条件とするのが特に好ましい。これにより、絶縁信頼性や信号応答性を高め、伝送損失を低減し、さらにビアや溝内のめっき付き不良や層間接続不良を低減することができる作用を効果的に発現させることができる。
【0019】
特に限定されないが、薬液によるデスミアは過マンガン酸塩、重クロム酸等を使用することができる。また、デスミアの処理条件としては、デスミア工程後の樹脂層2の表面の算術平均粗さ(Ra)が、0.05μm以上、0.25μm以下となる条件であり、同時に、ビア61や溝60の側壁面の残留した炭化物を十分に除ききる条件であることが好ましい。これにより、絶縁信頼性が高く、信号応答性、さらにビアや溝内のめっき付き不良や層間接続不良を低減に優れたビアや溝形成が可能となる。1GHzを超える高周波数領域において、その表皮効果による伝送損失を低減できる。また、特に限定はされないが、デスミア条件をデスミア工程後の算術平均粗さ(Ra)が、0.05μm以上、0.20μm以下となる条件とするのがより好ましく、0.05μm以上、0.15μm以下となる条件とするのが特に好ましい。これにより、絶縁信頼性や信号応答性を高め、伝送損失を低減し、さらにビアや溝内のめっき付き不良や層間接続不良を低減する作用を効果的に発現させることができる。
【0020】
プラズマ又は薬液によるデスミア工程が不十分で炭化物がビアや溝の側壁面に残留した場合、複合体の絶縁信頼性が低下する恐れがある。プラズマ又は薬液によるデスミア工程が過度となると、導体層71と接するビアや溝内の樹脂層2の表面の算術平均粗さ(Ra)が粗くなり、導体層71の表面凹凸により、表皮効果による配線の信号応答性が悪化したり、また、ビアや溝内のめっき付き不良や層間接続不良が発生する恐れがある。
【0021】
本発明の工程(C)では、樹脂層2をプラズマ又は薬液によってデスミアする工程後、樹脂層2の表面に導体を形成する。導体を形成するには、イオンプレーティングや薬液によるめっき層を形成する方法があるが、薬液を用いる場合には、少なくとも無電解めっきによってめっき層を形成する。
【0022】
本発明の工程(C)では、樹脂層2の表面に導体を形成する方法の一例として、無電解めっきによって、樹脂層2の表面に無電解めっき層7を形成する。
【0023】
無電解めっき層7の金属の種類は、特に限定されないが、銅やニッケル等が好ましい。これらの金属では樹脂層2と無電解めっき層7の密着が良好である。無電解めっき層7の厚さも特に限定されないが、0.1〜5μm程度とすることが好ましい。さらに無電解めっき後に、熱風乾燥装置にて150℃〜200℃で10分〜120分の熱処理を行うことにより、樹脂層2と無電解めっき層7との密着をより良好にすることができる。
【0024】
工程(D)では、保護層10を剥離する。これにより、ビア61や溝60のみに選択的に導体を残すことができ、過剰のエッチング液の使用や、作業効率を大幅に改善することができる。保護層10を配置せずにめっきを行った場合、ビア61や溝60以外の樹脂層2の表面にも導体が形成されるため、ビア61や溝60以外の樹脂層2の表面を露出させるための過剰エッチングが必要となる。
【0025】
本発明の複合体の製造方法では、工程(C)または工程(D)の後に、電解めっきでさらに電解めっき層80を形成する工程(E)を含むことが好ましい。この工程ではレーザー光3により形成されたビア61や溝60を電解めっき層80で埋めることができる。
【0026】
電解めっきには硫酸銅電解めっきが使用できる。また、特に限定されないが、めっき液中にはレベラー剤、ポリマー、ブライトナー剤等の添加剤が含まれることが好ましい。これにより、樹脂層2に形成されたビア61やビア60に対して優先的にめっきが析出し電解めっき層80で埋められる。電解めっき層の厚みは、特に限定されないが、樹脂層2の表面から5〜25μm程度とするのが好ましい。これにより、ビア61を介して導体層間を接続できたり、溝60に微細配線を形成することができる。
【0027】
本発明の製造方法は、工程(C)、工程(D)、または工程(E)の後に、クイックエッチングをする工程(F)を含むことが好ましい。これにより、樹脂層2と保護層10の界面に染み込んだめっき液によって形成された微量の導体を除去することができるため、高密度、高信頼性、高周波対応の微細配線及びビアを形成することができる。通常、エッチング工程では、エッチング速度の速い薬液を使用するため、エッチング処理時間を短くすることができる反面、微細な回路作製や均一で平坦なエッチングが困難であるが、クイックエッチングでは、エッチング速度の遅い薬液を使用するため、微細な回路作製や、均一で平坦なエッチングが容易となる。
【0028】
本発明の製造方法は、工程(C)、工程(D)、工程(E)または工程(F)の後に、樹脂層2及び導体層91の上に別の樹脂層を形成する工程(G)を含むことができる。この場合、不導体層91の表面をCZ処理や黒化処理によって粗化することが好ましい。これにより導体層91と別の樹脂層との密着強度が高まり耐熱性が向上する。
【0029】
樹脂層2及び導体層91の上に別の樹脂層を形成することで、複合体の配線となる各導体層が樹脂層で覆われビア間の絶縁性が確保される。特に限定はされないが、樹脂層2及び導体層91の上に別の樹脂層を形成する手法としては、真空加圧式ラミネーター装置、平板プレス装置等を用いる方法が挙げられる。
【0030】
こうして、工程(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、(G)を繰り返すことで電気信頼性、信号応答性、ビアや溝内のめっき付き性や層間接続性に優れた多層の複合体を作製することが可能である。
【0031】
次に、本発明の複合体について説明する。本発明の複合体は、樹脂層と導体層とを含む。複合体としては例えば、ウェハー表面に形成された樹脂層と導体層、金属基板上に形成された樹脂層と導体層、プリント配線板上に形成された樹脂層(例えばビルドアップ層)と導体層等が挙げられる。
【0032】
本発明の複合体の樹脂層には、ビアが形成される。ビアの直径は1μm以上、25μmであることが好ましい。これにより、複合体の高密度化、高実装化、微細配線化が可能となる。また、特に限定はされないが、ビアの直径は、20μm以下が好ましく、さらに、18μm以下であることが好ましく、さらには15μm以下であることが特に好ましい。これにより、高密度化、高実装化、微細配線化の作用を効果的に発現させることができる。
【0033】
ビアの直径が上記下限値未満であると、レーザー光で樹脂層にビアを形成できない箇所や接続不良が生じたり、めっき液の循環が悪化してめっきによる導体の形成ができなくなる場合があり、回路配線層間を接続できなくなるおそれがある。また、半田耐熱試験、冷熱サイクル試験等において、ビアの導体と樹脂との界面で剥離が生じるおそれがある。また、上記上限値を超えると、レーザー光でビアを形成した際のビア形状がいびつになったり(真円度の悪化)、樹脂にクラックが入るおそれや、樹脂に熱が加わり過ぎることでビア間の絶縁信頼性が低下するおそれがある。また、複合体の高密度化、高実装化、微細配線化が困難になる。
【0034】
本発明の複合体は、少なくともビア内部の樹脂表面の算術平均粗さ(Ra)が、0.05μm以上、0.25μm以下であることが好ましい。これにより、ビアの樹脂表面の凹凸が小さくなり、1GHzを超える高周波数領域において、その表皮効果による伝送損失を低減でき、またビア内のめっき付き不良や層間接続不良を低減することができる。また、特に限定はされないが、算術平均粗さ(Ra)は、0.05μm以上、0.2μm以下であることがより好ましく、0.05μm以上、0.15μm以下であることが特に好ましい。これにより高周波数領域における伝送損失の低減や、ビア内のめっき付き不良や層間接続不良を低減する作用を効果的に発現させることができる。
【0035】
ビア内部の樹脂表面の算術平均粗さ(Ra)が上記下限値未満であると、半田耐熱試験、冷熱サイクル試験等において、ビアの導体と樹脂との界面で剥離が生じるおそれがあり、上記上限値を超えると、高速信号伝達に支障をきたし電気信頼性を害するおそれがあり、またビア内のめっき付き不良や層間接続不良を生じるおそれがある。
【0036】
本発明の複合体の微細配線を形成する溝部分における導体層の最大幅が1μm以上、10μm以下であることが好ましい。これにより、複合体の高密度化、高実装化が可能になる。また、特に限定はされないが、溝部分における導体層の最大幅は、8μm以下であることがより好ましく、6μm以下であることがさらに好ましく、4μm以下であることが特に好ましい。これにより高密度化、高実装化の作用を効果的に発現させることができる。
【0037】
溝部分における導体層の最大幅が上記下限値未満であると、レーザー光で樹脂層に溝を形成できない箇所が生じたり、めっきによる導体層が形成できなくなったりする場合があり、導体層が断線するおそれがある。また、半田耐熱試験、冷熱サイクル試験等において、導体層の剥離が生じるおそれがある。また、上記上限値を超えると、レーザー光で溝を形成する時間がかかるため作業性が低下する。また、複合体の高密度化、高実装化、微細配線化が困難になる。
【0038】
本発明の複合体は、少なくとも導体層と接する溝内部の樹脂層表面の算術平均粗さ(Ra)が、0.05μm以上、0.25μm以下であることが好ましい。これにより、導体層の表面凹凸が小さくなり、1GHzを超える高周波数領域において、その表皮効果による伝送損失を低減や溝内部のめっき付き不良や導体層の接続不良を低減することができる。また、特に限定はされないが、算術平均粗さ(Ra)は、0.05μm以上、0.2μm以下であることがより好ましく、0.05μm以上、0.15μm以下であることが特に好ましい。これにより高周波数領域における伝送損失の低減や、溝内部のめっき付き不良や導体層の接続不良を低減する作用を効果的に発現させることができる。
【0039】
導体層と接する溝内部の樹脂層表面の算術平均粗さ(Ra)が上記下限値未満であると、半田耐熱試験、冷熱サイクル試験等において、導体層の剥離が生じるおそれがあり、上記上限値を超えると、高速信号伝達に支障をきたし、電気信頼性を害するおそれや、溝内部のめっき付き不良や導体層の接続不良を生じるおそれがある。
【0040】
算術平均粗さ(Ra)は、JIS B0601で定義されているものである。樹脂層に形成された溝表面の算術平均粗さ(Ra)の測定は、JIS B0651に準じて行うことができ、例えばVeeco社製WYKO NT1100を用いて測定することもできる。
【0041】
次に、樹脂層に用いられる樹脂組成物について説明する。樹脂層を構成する樹脂組成物は、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物で構成されていることが好ましい。これにより、樹脂層の耐熱性を向上させることができる。
【0042】
熱硬化性樹脂としては、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、未変性のレゾールフェノール樹脂、桐油、アマニ油、クルミ油等で変性した油変性レゾールフェノール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂等のフェノール樹脂、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、アリールアルキレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂等のトリアジン環を有する樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、トリアジン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、シアネート樹脂等が挙げられる。これらの中でも、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂およびベンゾシクロブテン樹脂の中から選ばれる1種以上の樹脂が好ましく、特にシアネート樹脂が好ましい。これにより、樹脂層の熱膨張係数を小さくすることができる。さらに、樹脂層の電気特性(低誘電率、低誘電正接)、機機械強度、レーザー加工性、特にエキシマレーザーやYAGレーザー加工性等にも優れる。
【0043】
シアネート樹脂としては、具体的にはノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のビスフェノール型シアネート樹脂、ナフトールアラルキル型シアネート樹脂、ビフェニルアラルキル型シアネート樹脂等を挙げることができる。これらの中でもノボラック型シアネート樹脂が好ましい。ノボラック型シアネート樹脂は、樹脂層の熱膨張係数を小さくすることができ、樹脂層の機機械強度、電気特性(低誘電率、低誘電正接)にも優れる。また、ナフトールアラルキル型シアネート樹脂、ビフェニルアラルキル型シアネート樹脂も低線膨張、低吸水性、機械強度に優れるため好ましく使うことができる。
【0044】
シアネート樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、重量平均分子量500〜4,500が好ましく、特に600〜3,000が好ましい。重量平均分子量が前記下限値未満であると樹脂層を構成する硬化物の機械的強度が低下する場合があり、さらに樹脂層を作製した場合にタック性が生じ、樹脂の転写が生じたりする場合がある。また、重量平均分子量が前記上現値を超えると硬化反応が速くなり、基板(特に回路基板)とした場合に、成形不良が生じたり、層間ピール強度が低下したりする場合がある。尚、シアネート樹脂等の重量平均分子量は、例えばGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、標準物質:ポリスチレン換算)で測定することができる。
【0045】
また、特に限定されないが、シアネート樹脂はその誘導体も含め、1種類を単独で用いることもできるし、異なる重量平均分子量を有する2種類以上を併用したり、1種類または2種類以上と、それらのプレポリマーを併用したりすることもできる。
【0046】
上記熱硬化性樹脂の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物全体の5〜50重量%が好ましく、特に10〜40重量%が好ましい。含有量が下限値未満であると樹脂層を形成するのが困難となる場合があり、上限値を超えると樹脂層の強度が低下する場合がある。
【0047】
熱硬化性樹脂としてシアネート樹脂(特にノボラック型シアネート樹脂)を用いる場合は、エポキシ樹脂(実質的にハロゲン原子を含まない)を併用することが好ましい。
【0048】
上記エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂等のアリールアルキレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂として、これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、異なる重量平均分子量を有する2種類以上を併用したり、1種類または2種類以上と、それらのプレポリマーを併用したりすることもできる。
【0049】
これらエポキシ樹脂の中でも特にアリールアルキレン型エポキシ樹脂が好ましい。これにより、吸湿半田耐熱性および難燃性を向上させることができる。アリールアルキレン型エポキシ樹脂とは、繰り返し単位中に一つ以上のアリールアルキレン基を有するエポキシ樹脂をいう。例えばキシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でもビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂が好ましい。また、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂も低線膨張、低吸水性、機械強度に優れるため好ましく使うことができる。
【0050】
エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物全体の1〜55重量%が好ましく、特に5〜40重量%が好ましい。含有量が前記下限値未満であるとシアネート樹脂の反応性が低下したり、得られる製品の耐湿性が低下したりする場合があり、前記上限値を超えると低熱膨張性、耐熱性が低下する場合がある。
【0051】
エポキシ樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、重量平均分子量500〜20,000が好ましく、特に800〜15,000が好ましい。重量平均分子量が前記下限値未満であると樹脂層の表面にタック性が生じる場合が有り、前記上限値を超えると半田耐熱性が低下する場合がある。重量平均分子量を上記範囲内とすることにより、これらの特性のバランスに優れたものとすることができる。エポキシ樹脂の重量平均分子量は、例えばGPCで測定することができる。
【0052】
本発明の複合体の樹脂層を構成する樹脂組成物は、無機充填材を含むものとすることができる。樹脂層を構成する樹脂組成物中に含むことができる無機充填材の平均粒径としては、0.05μm以上、0.5μm以下であることが好ましい。これにより、絶縁信頼性が高く、信号応答性に優れた微細配線形成が可能となる。また、特に限定はされないが、無機充填材の平均粒径は0.05μm以上、0.45μm以下がより好ましく、0.05μm以上、0.40μm以下が特に好ましい。これにより絶縁信頼性、信号応答性、ビアや溝内のめっき付き性や層間接続信頼性を高める作用を効果的に発現させることができる。
【0053】
無機充填材の平均粒子径の測定は、例えばレーザー回折散乱法により測定することができる。無機充填材を水中で超音波により分散させ、レーザー回折式粒度分布測定装置(HORIBA製、LA−500)により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒子径とすることで測定することができる。具体的には、無機充填材の平均粒子径はD50で規定される。
【0054】
樹脂層を構成する樹脂組成物中に含むことができる無機充填材の最大粒径としては、2.0μm以下であることが好ましい。これにより、絶縁信頼性が高く、信号応答性に優れた微細配線形成が可能となる。また、特に限定はされないが、無機充填材の最大粒径は1.8μm以下がより好ましく、1.5μm以下が特に好ましい。これにより絶縁信頼性、信号応答性、ビアや溝内のめっき付き性や層間接続信頼性を高める作用を効果的に発現させることができる。
【0055】
樹脂層を構成する樹脂組成物中に含むことができる無機充填材の平均粒径が上記上限値を上回るか、もしくは無機充填材の最大粒径が上記上限値を上回ると、無機充填材がレーザー加工を阻害し、樹脂層に溝を形成できない箇所が生じたり、ビア形状がいびつになったり樹脂にクラックが入るおそれがあり、粗粒フィラーの脱落による絶縁信頼性やめっき付き性が低下するおそれがある。さらにはレーザー光でビアや溝を形成する時間が長くなるため、作業性が低下する可能性が生じる。また、レーザー加工後に溝側壁面に残留した無機充填材により、めっき後の導体層の表面凹凸が大きくなる。これにより、配線やビア形状の精度が悪くなり、高密度プリント配線板においては絶縁信頼性を害する場合がある。さらには1GHzを超える高周波数領域においては表皮効果により信号応答性を害する場合がある。
【0056】
樹脂層を構成する樹脂組成物中に含むことができる無機充填材の平均粒径が上記下限値未満となると、樹脂組成物の熱膨張係数・弾性率の物理的性質を低下させ、半導体素子搭載時の実装信頼性を害するおそれがあり、また樹脂組成物中の無機充填材の分散性の低下や、凝集の発生が生じたり、樹脂組成物のBステージ状態における柔軟性の低下による樹脂フィルム化が困難になるおそれがある。
【0057】
樹脂層を構成する樹脂組成物中に含むことができる無機充填材としては、特に限定されるものではないが、例えばタルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラス等のケイ酸塩、酸化チタン、アルミナ、シリカ、溶融シリカ等の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ベーマイト、水酸化カルシウム等の水酸化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム等の硫酸塩または亜硫酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化炭素等の窒化物、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等のチタン酸塩等を挙げることができる。無機充填材として、これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、2種類以上を併用したりすることもできる。これらの中でも特に、低熱膨張性、難燃性、及び弾性率に優れる点から、シリカが好ましく、溶融シリカがより好ましい。これらの中でもその形状は球状シリカが好ましい。
【0058】
また、樹脂層を構成する樹脂組成物には、必要に応じて、製膜性樹脂、硬化促進剤、カップリング剤、顔料、染料、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、発泡剤、酸化防止剤、難燃剤、イオン捕捉剤等の上記成分以外の添加物を添加しても良い。
【0059】
次に本発明の複合体に樹脂層を形成する方法について説明する。特に限定はされないが一例としてプリント配線板に樹脂層を形成させる方法について説明する。プリント配線板に樹脂層を形成させる方法としては特に限定されないが、例えば、樹脂層を構成する樹脂組成物を溶剤などに溶解、分散させて樹脂ワニスを調製して、各種コーター装置を用いて樹脂ワニスを保護層等に塗工した後、これを乾燥する方法、スプレー装置を用いて、樹脂ワニスを保護層に噴霧塗工した後、これを乾燥する方法等で保護層付き樹脂シートを得る方法が挙げられる。これらの中でも、グラビアコーター、コンマコーター、ダイコーターなどの各種コーター装置を用いて、樹脂ワニスを保護層等に塗工した後、これを乾燥する方法が好ましい。これにより、ボイドがなく、均一な樹脂層の厚みを有する保護層付き樹脂シートを効率よく製造することができる。
【0060】
得られた保護層付き樹脂シートを例えばラミネーター、真空プレス機などを用いて基板に熱圧着することで、樹脂層を形成することができる。また、基板に直接樹脂ワニスをコーティングすることでも樹脂層を形成することができる。プリント配線板以外にも、例えば、ウェハー上に樹脂層を形成する際についても、上記のように保護層付き樹脂シートを作製して熱圧着する方法や、樹脂ワニスをコーティングする方法により樹脂層を形成することができる。
【0061】
樹脂ワニスに用いられる溶媒は、樹脂組成物中の樹脂成分に対して良好な溶解性を示すことが望ましいが、悪影響を及ぼさない範囲で貧溶媒を使用しても構わない。良好な溶解性を示す溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、セルソルブ系、カルビトール系等が挙げられる。上記樹脂ワニス中の固形分含有量としては特に限定されないが、30〜80重量%が好ましく、特に40〜70重量%が好ましい。
【0062】
次に、本発明の複合体のビア形状について説明する。ビアの断面形状は略台形状であることが好ましい。これにより、信号応答性や接続信頼性、めっき付き性に優れたビアを形成することが可能となる。
【0063】
また、本発明の複合体の溝部分からなる導体層の断面形状は略台形状、蒲鉾状又は三角形であることが好ましい。これにより、信号応答性に優れた微細配線形成が可能となる。
【実施例】
【0064】
以下、本発明を実施例及び比較例により説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0065】
<実施例1>
ノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン株式会社製、プリマセットPT−30、重量平均分子量約700)20重量部、メトキシナフタレンジメチレン型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、EXA−7320)35重量部、フェノキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、jER4275)5重量部、イミダゾール化合物(四国化成工業株式社製、キュアゾール1B2PZ(1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール))0.2重量部をメチルエチルケトンに溶解、分散させた。無機充填材/球状溶融シリカ(電気化学工業株式会社製、SFP−20M)を積層型カートリッジフィルター(住友スリーエム株式会社製)を用いて最大粒子径2.0μmを上回る粒子を濾過分離し、平均粒子径が0.4μmとなった無機充填材/球状溶融シリカ40重量部を添加した。カップリング剤/エポキシシランカップリング剤(GE東芝シリコーン株式会社製、A−187)0.2重量部を添加して、高速攪拌装置を用いて10分間攪拌して、固形分50重量%の樹脂ワニスを調製した。
【0066】
上記で得られた樹脂ワニスを、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂株式会社製)の片面に、コンマコーター装置を用いて乾燥後の樹脂フィルムの厚さが20μmとなるように塗工し、これを160℃の乾燥装置で10分間乾燥して、保護層付き樹脂シートを作製した。
【0067】
この保護層付き樹脂シートを両面導体層付きコア基板の表裏に重ね合わせ、これを、真空加圧式ラミネーター装置を用いて、温度100℃、圧力1MPaにて真空加熱加圧成形させ、その後、熱風乾燥装置にて180℃で45分間加熱硬化行い樹脂層付き基板を得た。
【0068】
なお、両面導体層付きコア基板としては、下記のものを使用した。
・樹脂層:ハロゲンフリー、コア基板厚さ0.4mm
・導体層:銅箔厚み18μm、回路幅/回路間幅(L/S)=120/180μm、クリアランスホール1mmφ、3mmφ、スリット2mm
【0069】
(1)ビアの形成
193nm(ArF)の波長を有するエキシマレーザー(ビーム株式会社製、ATLEX−300SI)を用いて樹脂層付き基板の樹脂層に直径25μmのビアを0.1mm間隔で形成した。
加工条件は以下の通りに設定した。
マスク径:200μm
周波数:100Hz
エネルギー:100mJ/cm2
ショット数:90
(2)溝の形成
微細配線となる溝の形成には、同様に193nm(ArF)の波長を有するエキシマレーザー(ビーム株式会社製、ATLEX−300SI)を用いて樹脂層付き基板の樹脂層に幅10μm、長さ50μmの溝を形成し、これを繰り返すことで幅10μm、最小溝間幅10μmの溝を形成し、ビアと接続させた。
加工条件は以下の通りに設定した。
マスク:100μm×500μm
周波数:00Hz
エネルギー:500mJ/cm2
ショット数:80
【0070】
ビアと溝を形成した樹脂層付き基板を保護層付きのままで、60℃の膨潤液(アトテックジャパン株式会社製、スウェリングディップ セキュリガント P500)に10分間浸漬し、さらに80℃の過マンガン酸カリウム水溶液(アトテックジャパン株式会社製、コンセントレート コンパクト CP)に20分浸漬後、中和してデスミア処理を行った。
【0071】
次に、脱脂、触媒付与、活性化の工程を経た後、無電解銅めっき層約0.2μmを形成させた。
【0072】
次に、無電解銅めっき層を電極として電解銅めっき(奥野製薬工業株式会社製、トップルチナα)を3A/dmで行って、樹脂表層上の高さまで導体を形成した。
【0073】
次に、保護層を剥離後、ビア及び溝との際部分の樹脂表層に存在する導体をクイックエッチング処理(株式会社荏原電産社製 SACプロセス、エッチング速度約0.7μm/min.、処理時間約4分)を行うことにより除去し、導体の形状を整えると共にビア及び微細配線間の絶縁を確保した。次に絶縁樹脂層を温度200℃、60分間で完全硬化させた。
【0074】
最後に回路表面にソルダーレジスト(太陽インキ製造株式会社製、PSR4000/AUS308)を形成し、4層プリント配線板を作製した。
【0075】
<実施例2>
ビア形成時のマスク径を150μmにした以外は実施例1と同様にして4層プリント配線板を作製した。
【0076】
<実施例3>
ビア形成時のマスク径を100μmにした以外は実施例1と同様にして4層プリント配線板を作製した。
【0077】
<実施例4>
ビア形成時のマスク径を50μmにした以外は実施例1と同様にして4層プリント配線板を作製した。
【0078】
<実施例5>
248nm(KrF)の波長を有するエキシマレーザーを用いた以外は実施例1と同様にして4層プリント配線板を作製した。
【0079】
<実施例6>
355nmの波長を有するYAGレーザー(日立ビアメカニクス株式会社製、LU−2G121/2C)を用いた以外は実施例1と同様にして4層プリント配線板を作製した。
【0080】
<実施例7>
保護層をポリエチレンテレフタレートフィルムの代わりに、厚さ25μmのポリイミドフィルム(東レデュポン株式会社製、カプトン)を用いた以外は実施例1と同様にして4層プリント配線板を作製した。
【0081】
<比較例1>
エポキシ樹脂系のビルドアップ材(味の素株式会社製、GX−13、充填材の最大粒子径2.5μm)を両面導体層付きコア基板の表裏に重ね合わせ、これを、真空加圧式ラミネーター装置を用いて、温度100℃、圧力1MPaにて真空加熱加圧成形させ、保護層を剥離後、熱風乾燥装置にて180℃で45分間加熱硬化行い樹脂層付き基板を得た。
【0082】
なお、両面導体層付きコア基板としては、下記のものを使用した。
・樹脂層:ハロゲンフリー、コア基板厚さ0.4mm
・導体層:銅箔厚み18μm、回路幅/回路間幅(L/S)=120/180μm、クリアランスホール1mmφ、3mmφ、スリット2mm
【0083】
(1)ビアの形成
193nm(ArF)の波長を有するエキシマレーザー(ビーム株式会社製、ATLEX−300SI)を用いて樹脂層付き基板の樹脂層に直径25μmのビアを0.1mm間隔で形成した。
加工条件は以下の通りに設定した。
マスク径:200μm
周波数:100Hz
エネルギー:100mJ/cm2
ショット数:90
(2)溝の形成
微細配線となる溝の形成には、同様に193nm(ArF)の波長を有するエキシマレーザー(ビーム株式会社製、ATLEX−300SI)を用いて樹脂層付き基板の樹脂層に幅10μm、長さ50μmの溝を形成し、これを繰り返すことで幅10μm、最小溝間幅10μmの溝を形成し、ビアと接続させた。
加工条件は以下の通りに設定した。
マスク:100μm×500μm
周波数:00Hz
エネルギー:500mJ/cm2
ショット数:80
【0084】
ビアと溝を形成した樹脂層付き基板を60℃の膨潤液(アトテックジャパン株式会社製、スウェリングディップ セキュリガント P500)に10分間浸漬し、さらに80℃の過マンガン酸カリウム水溶液(アトテックジャパン株式会社製、コンセントレート コンパクト CP)に20分浸漬後、中和してデスミア処理を行った。
【0085】
次に、脱脂、触媒付与、活性化の工程を経た後、無電解銅めっき層約0.2μmを形成させた。
【0086】
次に、無電解銅めっき層を電極として電解銅めっき(奥野製薬工業株式会社製、トップルチナα)を3A/dmで30分行って、樹脂表層での厚さが約30μmとなるように導体を形成した。
【0087】
次に、樹脂表層での厚さが約30μmで存在する導体をエッチング処理(三菱瓦斯化学株式会社製、CPE−750、エッチング速度約4.5μm/min.、処理時間約7分)で除去し、ビア及び微細配線間の絶縁を確保した。次に絶縁樹脂層を温度200℃、60分間で完全硬化させた。
【0088】
最後に回路表面にソルダーレジスト(太陽インキ製造株式会社製、PSR4000/AUS308)を形成し、4層プリント配線板を作製した。
【0089】
<比較例2>
355nmの波長を有するYAGレーザーを用いた以外は比較例1と同様にして4層プリント配線板を作製した。
【0090】
<比較例3>
実施例1で作製した樹脂ワニスを用いて、比較例1と同様にして4層プリント配線板を作製した。尚、比較例1の作業工程において、エッチング処理(三菱瓦斯化学株式会社製、CPE−750、エッチング速度約4.5μm/min.、処理時間約7分)の代わりに、実施例1と比較するため、クイックエッチング処理(株式会社荏原電産社製 SACプロセス、エッチング速度約0.7μm/min.、処理時間約4分)を行った、
【0091】
評価方法は以下の通りである。結果を表1、及び表2に示した。
【0092】
1.ビアのトップ径
デスミア処理し保護層を剥離後の樹脂層のビア上面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、ビアのトップ径を測定した。
【0093】
2.ビア内の樹脂表面の算術平均粗さ(Ra)
4層プリント配線板のビア断面を縦に切断し、導体層をエッチング除去後、ビア内の樹脂表面をJIS B0651に準じて、Veeco社製WYKO NT1100を用いて測定を行った。
【0094】
3.溝内の樹脂表面粗さ(Ra)
4層プリント配線板の微細配線の断面を縦に切断し、導体層をエッチング除去後、溝内の樹脂表面をJIS B0651に準じて、Veeco社製WYKO NT1100を用いて測定を行った。
【0095】
4.溝の最大幅
4層プリント配線板の微細配線の断面を縦に切断し、光学顕微鏡で溝内の最大幅を測定した。
【0096】
5.溝の断面形状
4層プリント配線板の微細配線の断面を縦に切断し、光学顕微鏡で溝内の形状を観察した。
【0097】
6.接続信頼性試験
ビア壁間距離0.1mmの4層プリント配線板を、135℃、85%RH、印加電圧50Vの条件下で200h処理しながら、ビア間の絶縁抵抗値をモニターした。
各符号は以下の通りである。
○:1.0×10Ω以上
×:1.0×10Ω未満
【0098】
7.めっき付き性
4層プリント配線板のビア断面を切断し、切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、ビア内のめっき付き性を調べた。各符号は以下の通りである。
○:ビア内にめっきが隙間なく充填され実用上問題なし。
×:ビア内にめっきに一部マイクロボイドがあり実用上問題あり。
【0099】
【表1】

【0100】
【表2】

【0101】
表1から明らかなように、実施例1〜7は、従来のエッチング処理工程を省略しクイックエッチング処理のみで作業を簡素化でき、またビアの直径が25μm以下、微細配線の溝の最大幅が10μm以下で形成が可能であるため高密度の複合体を作製することができ、かつ樹脂層平均粗さ(Ra)が0.05μm以上、0.25μm以下であるため信号応答性、高周波対応及び絶縁信頼性、さらにビアや微細配線内のめっき付き不良や層間接続不良を低減することができる作用に優れる良好なビアや微細配線が形成できた。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明に従うと、複合体の樹脂層表面に形成された高密着、高信頼性、高周波対応、ビアや微細配線内のめっき付き性や層間接続性に優れたビアを有する複合体を得ることができるため、とりわけ、回路幅/回路間幅(L/S)が10μm/10μm以下の微細配線を有する例えばプリント配線板に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0103】
1 両面導体層付きコア基板
2 樹脂層
3 レーザー光
4 マスク
5 両面導体層付きコア基板の導体層
60 溝
61 ビア
7 無電解めっき層
70 無電解めっき層
71 無電解めっき層
80 電解めっき層
81 電解めっき層
90 導体
91 導体層
10 保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂層と導体層とを含む複合体を製造する方法であって、
(A)樹脂層上に保護層を有する保護層付き樹脂層を準備する工程と、
(B)保護層を介してレーザー光を照射することによって樹脂層表面に溝を形成する工程と、
(C)前記樹脂層表面に導体を形成する工程と、
(D)保護層を剥離する工程と、
を含むことを特徴とする複合体の製造方法。
【請求項2】
前記工程(C)が無電解めっきによって導体を形成する請求項1に記載の複合体の製造方法。
【請求項3】
前記工程(C)または前記工程(D)の後に、(E)電解めっきでさらに導体形成する工程を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の複合体の製造方法。
【請求項4】
前記工程(C)または前記工程(D)または前記工程(E)の後に(F)クイックエッチングをする工程を含む請求項1ないし3のいずれかに記載の複合体の製造方法。
【請求項5】
前記工程(B)と前記工程(C)の間に、プラズマ又は薬液によってデスミアする工程を含む請求項1ないし4のいずれかに記載の複合体の製造方法。
【請求項6】
前記レーザー光がエキシマレーザーまたはYAGレーザーである請求項1ないし5のいずれかに記載の複合体の製造方法。
【請求項7】
前記保護層がポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一つである請求項1ないし6のいずれかに記載の複合体の製造方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の製造方法で作製された複合体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−23428(P2011−23428A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165072(P2009−165072)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】