説明

複合光学部材、複合光学部材の製造方法、並びに照明機器及び電子機器

【課題】媒体が接合面に塗布されていない部分が存在するのを抑制して、色ムラ、輝度ムラが生じない良好な光学特性を有する複合光学部材、複合光学部材の製造方法、並びに照明機器及び電子機器を提供する。
【解決手段】複合光学部材10Aは、第1光学部材1と第2光学部材2との接合面に光を透過して用いる。第1光学部材1と第2光学部材2とは、光熱変換材料3を介在させて接合されている。光熱変換材料3、又は接合時における光熱変換材料3の変質物若しくは分解物は、接合面に連なる他の領域に、はみ出し部3a・3aとしてはみ出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂材料からなる第1光学部材と樹脂材料からなる第2光学部材とが媒体を介在させて接合されている複合光学部材、複合光学部材の製造方法、並びに照明機器及び電子機器に関するものであり、詳細には、光学部材と他の光学部材との接合形態、並びに光学部材に塗布される接着材料、及び媒体の塗布方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性樹脂同士を接合するには、一般的な接着剤を使う方法、超音波接合方法及び振動接合方法等の接合方法が用いられている。また、熱可塑性樹脂同士の接合を効率的かつ安定的に行う技術としてレーザ等の光を照射する溶着方法が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、接合対象物同士が光を透過するものであっても光により溶着することができ、かつ、所望の部位について高精度に溶着することができる光による溶着方法、電気光学装置の製造方法、電気光学装置、電子機器及び溶着装置が提案されている。
【0004】
上記特許文献1に開示されている技術では、図18(a)(b)に示すように、第1基材101の所望領域であって該第1基材101と第2基材102との溶着部分となる領域である溶着領域103に、光エネルギーを熱エネルギーに変換する光熱変換材料を含む液状体材料104を塗布する。次いで、第1基材101の溶着領域103と第2基材102の溶着領域103とが対向するように該第1基材101と第2基材102とを隣接させて配置し、第1基材101及び第2基材102の少なくとも一方にレーザ光105を照射する。これにより、レーザ光105の照射による前記光熱変換材料から生じる熱によって第1基材101の溶着領域103と第2基材102の溶着領域103とが溶着されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−081771号公報(2005年3月31日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来の特許文献1に開示された複合光学部材は、接合対象物が光を透過するもの同士の接合ではあるが、接合部分は光透過として利用せず、光透過として利用する部位については、液状体材料104を塗布しない技術である。
【0007】
すなわち、特許文献1に開示された技術は、溶着領域103に塗布された液状体材料104の光熱変換材料にレーザ光105を照射することにより、溶着領域103について選択的に第1基材101と第2基材102とを溶着させることができる。したがって、特許文献1では、第1基材101及び第2基材102における所望の領域を溶着領域103とすることができる。すなわち、溶着領域103のみに光吸収体である液状体材料104が塗布されるので、溶着領域103以外の部分について光透過性等が阻害されることを回避することができる。換言すれば、溶着後においても、第1基材101及び第2基材102における溶着領域103以外の部分は全て透明な状態とすることができる。そして、隣接された第1基材101と第2基材102との間に光熱変換材料である液状体材料104が配置され、その光熱変換材料から生じる熱によって第1基材101と第2基材102との接合面を溶解させて溶着するので、従来よりも小さい光エネルギーで、かつ、高い位置選
択性をもって溶着することができるようになっている。
【0008】
また、特許文献1に開示された技術では、レーザ光105をエネルギー源としているので、レーザ光105の光束を良好に集光することができる。さらに、液滴吐出手段111を用いて微細な溶着領域103に液状体材料104を塗布することができる。このため、極めて局所的に精密に溶着することができ、溶着表面に熱影響、傷、変形及びバリ等が生じることを回避することができる。
【0009】
ここで、特許文献1において、第1基材101上の溶着領域103に液状体材料104を塗布する場合に、その塗布領域を高精度に制御する方法について、図15を参照して説明する。
【0010】
すなわち、図19に示すように、第1基材101の溶着領域103については親液処理を施して親液化し、第1基材101の溶着領域103以外の領域106については撥液処理を施し撥液化する。尚、第1基材101の全体について親液処理を施し、その後、溶着領域103以外の領域106のみを撥液処理してもよい。逆に、第1基材101の全体について撥液処理を施し、その後、溶着領域103のみを親液処理してもよい。
【0011】
このようにすると、液滴吐出手段111から吐出され第1基材101に着弾した液状体材料104は、撥液処理された領域からは弾き出される力を受け、親液処理された領域では保持される力を受ける。したがって、液状体材料104は、高精度に溶着領域103の全体のみに塗布されることとなる。
【0012】
しかしながら、特許文献1に開示の技術は、光を透過する領域に溶着材料を塗布しない技術であり、光透過面全体に液状体材料を塗布して光を透過させる技術は開示されていない。したがって、赤外線吸収剤等の光熱変換材料を含む溶着材料等の媒体によって光の透過領域を溶着する必要がある場合において光透過面に塗布されていない部分があるときには、その部分はレーザ照射時に溶着されず、部分的に界面が残ったままの状態になるため、光学特性悪化(輝度低下、輝度ムラ)の要因となる。
【0013】
この結果、塗布している領域と塗布していない領域とで、透過光に色ムラ、輝度ムラが生じ易いという問題点を有している。
【0014】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、媒体が接合面に塗布されていない部分が存在するのを抑制して、色ムラ、輝度ムラが生じない良好な光学特性を有する複合光学部材、複合光学部材の製造方法、並びに照明機器及び電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の複合光学部材は、上記課題を解決するために、第1光学部材と第2光学部材との接合面に光を透過して用いる複合光学部材において、上記第1光学部材と第2光学部材とは、媒体を介在させて接合されていると共に、上記媒体、又は接合時における媒体の変質物若しくは分解物は、上記接合面に連なる他の領域にはみ出していることを特徴としている。
【0016】
上記の発明によれば、複合光学部材は、第1光学部材と第2光学部材との接合面に光を透過して用いる。このような複合光学部材では、接合面に媒体が塗布されていない部分があるときには、その部分はレーザ光等の照射時に接合されず、部分的に不接合界面が残ったままの状態になるため、光学特性悪化(輝度低下、輝度ムラ)の要因となるという問題を有している。
【0017】
そこで、本発明では、媒体、又は接合時における媒体の変質物若しくは分解物は、は、上記第1光学部材と第2光学部材との接合面に連なる他の領域にはみ出している。このため、接合面に媒体が塗布されていない部分が無い状態となっている。
【0018】
したがって、媒体が接合面に塗布されていない部分が存在するのを抑制して、色ムラ、輝度ムラが生じない良好な光学特性を有する複合光学部材を提供することができる。
【0019】
本発明の複合光学部材では、前記媒体は、光熱変換材料からなっており、前記第1光学部材と第2光学部材とは、光熱変換材料の発熱によって溶着されていると共に、上記光熱変換材料、又は溶着時における光熱変換材料の変質物若しくは分解物が、前記接合面に連なる他の領域にはみ出しているとすることができる。
【0020】
これにより、例えばレーザ光を照射したときに、光が熱に変換され、第1光学部材及び第2光学部が溶融されるので、第1光学部材と第2光学部材とを適切に溶着することができる。
【0021】
本発明の複合光学部材では、前記光熱変換材料は、赤外線吸収剤を含んで構成されていることが好ましい。
【0022】
これにより、レーザ光は赤外線を含むので、光熱変換材料に赤外線吸収剤を含ませておくことにより、光熱変換材料は光エネルギーを熱エネルギーに効率よく変換することができ、延いては溶着効率を向上させることができる。
【0023】
本発明の複合光学部材では、前記媒体は、接着材料からなっており、前記第1光学部材と第2光学部材とは、接着材料によって接着されていると共に、上記接着材料、又は接着時における接着材料の変質物若しくは分解物が、前記接合面に連なる他の領域にはみ出しているとすることができる。
【0024】
これにより、光を照射したときに、接着材料が溶融されるので、第1光学部材と第2光学部材とを適切に接着することができる。
【0025】
本発明の複合光学部材では、前記媒体は、可視光硬化型接着材料からなっているとすることができる。
【0026】
これにより、可視光を照射したときに媒体が溶融し、その後の冷却により媒体が硬化するので、第1光学部材と第2光学部材とを適切に接着することができる。
【0027】
本発明の複合光学部材では、前記媒体は、紫外光硬化型接着材料からなっているとすることができる。
【0028】
これにより、紫外線を照射したときに媒体が溶融し、その後の冷却により媒体が硬化するので、第1光学部材と第2光学部材とを適切に接着することができる。
【0029】
本発明の複合光学部材では、前記媒体、又は接合時における媒体の変質物若しくは分解物の接合面外へのはみ出し幅が、3mm以下であることが好ましい。
【0030】
これにより、複合光学部材における色度等の光学特性の変化を実用精度範囲内に抑えることが可能となる。
【0031】
本発明の複合光学部材では、前記媒体、又は接合時における媒体の変質物若しくは分解物の接合面外へのはみ出し幅が、0.6mm以下であることが好ましい。
【0032】
これにより、複合光学部材における色度等の光学特性の変化を確実に実用精度範囲内に抑えることが可能となる。
【0033】
本発明の複合光学部材では、前記媒体、又は接合時における媒体の変質物若しくは分解物は、前記接合面に連なる隣接面の全域にはみ出しているとすることができる。
【0034】
これにより、第1光学部材と第2光学部材との接合面が寸法誤差によりいずれの方向にずれても、第1光学部材と第2光学部材とを接合したときに、媒体が接合面に塗布されていない部分が存在するのを抑制して、色ムラ、輝度ムラが生じない良好な光学特性を有する複合光学部材を提供することができる。
【0035】
本発明の複合光学部材の製造方法は、上記課題を解決するために、第1光学部材と第2光学部材との接合面に光を透過して用いる複合光学部材の製造方法において、上記第1光学部材と第2光学部材とを、媒体を介在させて接合し、トップハット型のレーザ光を用いて、第1光学部材と第2光学部材とを溶着すると共に、上記媒体、又は接合時における媒体の変質物若しくは分解物を、上記接合面に連なる他の領域にはみ出すように形成することを特徴としている。
【0036】
上記の発明によれば、複合光学部材の製造方法では、第1光学部材と第2光学部材とを媒体を介在させて接合する。この場合、レーザ光を用いて、第1光学部材と第2光学部材とを溶着する。
【0037】
ところで、接合面に塗布された媒体に対して均一に接合させるためには、全体的に均一な光エネルギーを与えることが好ましい。ここで、レーザ光の強度分布として、トップハット型分布、ガウシアン分布、リング型分布が存在するが、上述した均一な光エネルギーを与えるためには、急峻な強度分布であるトップハット型分布のレーザ光が好ましい。この点、本発明では、トップハット型のレーザ光を用いて第1光学部材と第2光学部材とを溶着するので、接合面に塗布された媒体に対して均一に溶着させることができる。
【0038】
したがって、媒体が接合面に塗布されていない部分が存在するのを抑制して、色ムラ、輝度ムラが生じない良好な光学特性を有する複合光学部材の製造方法を提供することができる。
【0039】
本発明の複合光学部材の製造方法では、前記第1光学部材若しくは第2光学部材のいずれか一方側から、又は第1光学部材及び第2光学部材の両方側から該第1光学部材及び第2光学部材の両方に前記レーザ光を照射させると共に、前記媒体の接合面を介して上記レーザ光を照射させることが好ましい。
【0040】
これにより、接合面の媒体に光エネルギーを与えるので、媒体によって第1光学部材及び第2光学部材の各樹脂を溶融して、該第1光学部材と第2光学部材とを接合させることができる。
【0041】
本発明の照明機器は、上記課題を解決するために、前記記載の複合光学部材、又は前記記載の複合光学部材の製造方法によって製造された複合光学部材を備えていることを特徴としている。
【0042】
上記の発明によれば、媒体が接合面に塗布されていない部分が存在するのを抑制して、
色ムラ、輝度ムラが生じない良好な光学特性を有する複合光学部材、又は複合光学部材の製造方法によって製造された複合光学部材を備えている照明機器を提供することができる。
【0043】
本発明の電子機器は、上記課題を解決するために、前記記載の複合光学部材、又は前記記載の複合光学部材の製造方法によって製造された複合光学部材を備えていることを特徴としている。
【0044】
上記の発明によれば、媒体が接合面に塗布されていない部分が存在するのを抑制して、色ムラ、輝度ムラが生じない良好な光学特性を有する複合光学部材、又は複合光学部材の製造方法によって製造された複合光学部材を備えている電子機器を提供することができる。
【発明の効果】
【0045】
本発明の複合光学部材は、以上のように、第1光学部材と第2光学部材とは、媒体を介在させて接合されていると共に、上記媒体、又は接合時における媒体の変質物若しくは分解物は、接合面に連なる他の領域にはみ出しているものである。
【0046】
本発明の複合光学部材の製造方法は、以上のように、上記第1光学部材と第2光学部材とを、媒体を介在させて接合し、トップハット型のレーザ光を用いて、第1光学部材と第2光学部材とを溶着すると共に、上記媒体、又は接合時における媒体の変質物若しくは分解物を、上記接合面に連なる他の領域にはみ出すように形成する方法である。
【0047】
本発明の照明機器は、以上のように、前記記載の複合光学部材、又は前記記載の複合光学部材の製造方法によって製造された複合光学部材を備えているものである。
【0048】
本発明の電子機器は、以上のように、前記記載の複合光学部材、又は前記記載の複合光学部材の製造方法によって製造された複合光学部材を備えているものである。
【0049】
それゆえ、媒体が接合面に塗布されていない部分が存在するのを抑制して、色ムラ、輝度ムラが生じない良好な光学特性を有する複合光学部材、複合光学部材の製造方法、並びに照明機器及び電子機器を提供するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明における複合光学部材の実施の一形態を示すものであって、本実施の形態の複合光学部材の構成を示す断面図である。
【図2】(a)は上記複合光学部材における第1光学部材と第2光学部材との溶着面の全面を通過する入射光を示す平面図であり、(b)は上記複合光学部材における第1光学部材と第2光学部材との溶着面の一部を通過する入射光を示す平面図である。
【図3】上記複合光学部材における変形例の構成を示す断面図である。
【図4】(a)は第1光学部材又は第2光学部材の溶着面に、はみ出し部を形成したときの平面図であり、(b)は第1光学部材又は第2光学部材の溶着面に、はみ出し部を形成しないときの平面図である。
【図5】(a)〜(e)は上記はみ出し部の形態を示す図である。
【図6】本発明における複合光学部材の他の実施の形態を示すものであって、本実施の形態の複合光学部材の構成を示す断面図である。
【図7】(a)は上記複合光学部材における第1光学部材と第2光学部材との溶着面の全面を通過する入射光を示す平面図であり、(b)は上記複合光学部材における第1光学部材と第2光学部材との溶着面の一部を通過する入射光を示す平面図である。
【図8】上記複合光学部材における変形例の構成を示す断面図である。
【図9】本発明における複合光学部材のさらに他の実施の形態を示すものであって、本実施の形態の複合光学部材の構成を示す断面図である。
【図10】(a)は上記複合光学部材における第1光学部材と第2光学部材との溶着面の全面を通過する入射光を示す平面図であり、(b)は上記複合光学部材における第1光学部材と第2光学部材との溶着面の一部を通過する入射光を示す平面図である。
【図11】上記複合光学部材における変形例の構成を示す断面図である。
【図12】本発明における複合光学部材のさらに他の実施の形態を示すものであって、本実施の形態の複合光学部材を備えた照明機器の全体構成を示す断面図である。
【図13】(a)は上記照明機器の要部構成を示す斜視図であり、(b)は上記照明機器の要部構成を示す斜視図である。
【図14】上記照明機器における光路を示す断面図である。
【図15】(a)は上記複合光学部材のさらに他の適用例を示すものであって、本実施の形態の複合光学部材を備えた液晶表示装置の構成を示す斜視図であり、(b)は上記液晶表示装置の構成を示す断面図である。
【図16】(a)(b)は、上記液晶表示装置の要部構成を示す斜視図である。
【図17】(a)は本発明の実施例を示すものであって、光熱変換材料の塗布幅を示す平面図であり、(b)は光熱変換材料の塗布幅と輝度低下との関係を示すグラフである。
【図18】(a)(b)は、従来の複合光学部材の溶着方法を示す断面図である。
【図19】上記従来の複合光学部材の溶着方法の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について図1〜図5に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0052】
まず、本実施の形態の複合光学部材10Aの構成について、図1に基づいて説明する。図1は、本実施の形態の複合光学部材10Aの構成を示す断面図である。尚、図1は模式的に表現しており、媒体の厚さは図のイメージより薄いものである。
【0053】
本実施の形態の複合光学部材10Aは、図1に示すように、樹脂材料からなる第1光学部材1と、同じく樹脂材料からなる第2光学部材2とが媒体としての光熱変換材料3を介在して溶着されたものから構成されている。第1光学部材1は、例えばプリズム、レンズ
等の光学部材からなっており、光透過性を有する部材にてなっている。また、第2光学部材2も、例えばプリズム、レンズ等の光学部材からなっており、光透過性を有する部材にてなっている。ただし、第1光学部材1及び第2光学部材2は、必ずしもこれらの光学部材に限定されない。
【0054】
本実施の形態では、第1光学部材1は、第2光学部材2よりも狭い面積を有して該第2光学部材2の平面内に接合されていると共に、第1光学部材1が第2光学部材2の下側に接合されている。
【0055】
上記複合光学部材10Aの接合原理は、以下の通りである。まず、第1光学部材1の上側に第2光学部材2を載置し、第1光学部材1と第2光学部材2との間に塗布された光熱変換材料3を介して、図示しないレーザ光等の高エネルギー光を第1光学部材1側から又は第2光学部材2側から所定の出力にて所定時間照射する。これにより、光熱変換材料3から熱が発生するので、第1光学部材1と第2光学部材2とのいずれか一方、又は第1光学部材1と第2光学部材2との両方が溶融され、第1光学部材1と第2光学部材2とが接合される。これにより、接合対象物同士が光を透過するものであっても、光により溶着することができ、かつ、所望の部位について高精度に溶着することができる。
【0056】
ここで、光熱変換材料3は、通常、液状からなり、液体の中に、光エネルギーを熱エネルギーに変換する材料からなっている。光熱変換材料3は、光を効率よく熱に変換できる材料であり、公知のものを使用することができる。すなわち、光熱変換材料3は、例えば、アルミニウム、その酸化物及び/又はその硫化物よりなる金属層、カーボンブラック、黒鉛、又は赤外線吸収色素等の赤外線吸収剤が添加された高分子からなる有機層等が挙げられる。ただし、必ずしもこれに限るものではない。
【0057】
赤外線吸収色素としては、アントラキノン系、ジチオールニッケル錯体系、シアニン系、アゾコバルト錯体系、ジインモニウム系、スクワリリウム系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系等が挙げられる。尚、これらの各材料の2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0058】
また、エポキシ樹脂等の合成樹脂をバインダとし、そのバインダ樹脂に光熱変換材料を溶解又は分散して第1光学部材1と第2光学部材2との間に設けるようにすることも可能である。
【0059】
ここで、光熱変換材料3は、エタノール等の溶剤に混ぜて均一化されることにより、第1光学部材1及び第2光学部材2上に均一に塗布し易くなっている。上記エタノールは、塗布後、又はレーザ照射後に蒸発して無くなる。また、光熱変換材料3は、レーザ光により発熱し、第1光学部材1及び第2光学部材2を溶融することによって、互いに溶着させられる。
【0060】
さらに、光熱変換材料3は、レーザ光の照射により発熱し、第1光学部材1及び第2光学部材2を溶融すると共に、自らは分解又は変質する。現象的には、レーザ光の照射前の光熱変換材料3は緑色を呈しているが、レーザ光の照射後つまり発熱後は、分解して透明になる。
【0061】
製造後の複合光学部材10Aは、図1に示すように、例えば、第1光学部材1側から光源L等により光が入射され、図2(a)(b)に示すように、第1光学部材1と第2光学部材2との接合面としての溶着面4の全面又は一部を入射光L1が通過し、第2光学部材2に入射し、透過光L2として第2光学部材2から出射するものとして、所望の用途に利用される。
【0062】
光源Lは、照明等の用途としてはLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)、蛍光管、EL(Electro Luminescence)発光素子等が利用でき、その他の光学用途(光学記録媒体に対する記録、再生等)としては半導体レーザ等も利用可能である。
【0063】
本実施の形態の複合光学部材10Aにおいては、第1光学部材1と第2光学部材2との間の光の通過領域における全面に光熱変換材料3が塗布されている。この場合、入射光L1の領域は、図2(a)に示す第1光学部材1の接合面の全面、又は図2(b)に示す第1光学部材1における接合面の一部のいずれでも構わない。すなわち、複合光学部材10Aの光透過領域において、ある部分は光熱変換材料3が塗布され、ある部分は光熱変換材料3が塗布されていない状態がないように構成されている。
【0064】
本実施の形態では、特に製品の量産過程において、均一に上記の状態を実現するために、溶着面4を超えてその外側まで光熱変換材料3がはみ出すように該光熱変換材料3を塗布している。詳細には、溶着面4に塗布された光熱変換材料3が第1光学部材1の両側面に垂れた状態となっており、これにより、僅かに光熱変換材料3のはみ出し部3aが必ず形成されている点が特徴である。したがって、製造後の複合光学部材10Aには、はみ出し部3aの痕跡が残っている。
【0065】
上記構成の複合光学部材10Aの製造プロセスは、次のようになる。
【0066】
まず、第1光学部材1の溶着面4に光熱変換材料3を液状状態で塗布する。このとき、第1光学部材1と第2光学部材2とを合わせた場合に、光熱変換材料3が第1光学部材1の側面に垂れるように充分に第1光学部材1の溶着面4に光熱変換材料3を塗布する。次いで、第2光学部材2を溶着面4に載置し、必要に応じて双方の固定、位置決め、及び押圧等を行い、例えば、第1光学部材1側又は第2光学部材2側から図示しないレーザ光を照射する。これにより、溶着面4に塗り残しがない状態で、第1光学部材1と第2光学部材2とを接合することができる。尚、溶着面4が何れかの方向に長い場合には、レーザ光を溶着面4の該長手方向に沿って所定時間走査することにより必要領域の溶着が実現される。
【0067】
尚、上記の説明では、第1光学部材1又は第2光学部材2のいずれか一方側から第1光学部材1及び第2光学部材2の両方にレーザ光を照射させ、溶着面4を介してレーザ光を照射させるものとなっている。しかし、必ずしもこれに限らず、第1光学部材1及び第2光学部材2の両方側から該第1光学部材1及び第2光学部材2の両方にレーザ光を照射させ、溶着面4を介してレーザ光を照射せるとすることも可能である。これにより、さらに多くの光エネルギーを光熱変換材料3に与えることができると共に、短時間での作業が可能となる。
【0068】
(変形例)
次に、本実施の形態の変形例としての複合光学部材10Bの構成について、図3に基づいて説明する。図3は複合光学部材10Bの構成を示す断面図である。尚、図3は模式的に表現しており、接合材料の厚さは図のイメージより薄いものである。
【0069】
上記複合光学部材10Bは、図3に示すように、樹脂材料からなる第1光学部材1と、同じく樹脂材料からなる第2光学部材2とが媒体としての光熱変換材料3を介在して溶着されたものから構成されている。ここで、複合光学部材10Bでは、第1光学部材1が第2光学部材2の上側に接合されている点が複合光学部材10Aとは異なっている。
【0070】
製造後の複合光学部材10Bは、図3に示すように、第2光学部材2側から光源L等に
より、光が該第2光学部材2に入射され、前記図2(a)(b)に示すように、第1光学部材1との溶着面24の全面又は一部を入射光L1が通過して該第1光学部材1に入射し、その後、透過光L2として該第1光学部材1から出射するものとして、所望の用途に利用される。光源Lは、複合光学部材10Aと同様のものを使用することができる。
【0071】
本実施の形態の複合光学部材10Bにおいては、第1光学部材1と第2光学部材2との間の光の通過領域における全面に光熱変換材料3が塗布されている。この場合、入射光L1の領域は、図2(a)に示す第1光学部材1の接合面の全面、又は図2(b)に示す第1光学部材1における接合面の一部のいずれでも構わない。すなわち、複合光学部材10Bの光透過領域において、ある部分は光熱変換材料3が塗布され、ある部分は光熱変換材料3が塗布されていない状態がないように構成されている。
【0072】
本実施の形態では、特に製品の量産過程において、均一に上記の状態を実現するために、溶着面4を超えてその外側まで光熱変換材料3がはみ出すように該光熱変換材料3を塗布している。すなわち、溶着面4において、光熱変換材料3の塗布不足やはみ出しが全くなく、第1光学部材1と第2光学部材2との境界部分において正確に光熱変換材料3が停止している状態を量産過程で大量の製品に対し実現することは不可能である。このため、本実施の形態では、光学特性を害さないよう、必ずある程度のはみ出し部3bが発生するよう制御している。
【0073】
詳細には、第2光学部材2の表面に塗布された光熱変換材料3が、溶着面4と同一面においてかつ該溶着面4よりも周辺にまで塗布された状態となっており、これにより、第2光学部材2の表面における同一面においてかつ該溶着面4よりも僅かに光熱変換材料3のはみ出し部3bが形成されている。したがって、製造後の複合光学部材10Bには、はみ出し部3bの痕跡が残っている。
【0074】
上記構成の複合光学部材10Bの製造プロセスは、次のようになる。
【0075】
まず、第2光学部材2の溶着面4に光熱変換材料3を液状状態で塗布する。このとき、第1光学部材1と第2光学部材2とを合わせた場合に、光熱変換材料3が第2光学部材2における溶着面4の周辺にはみ出すように充分に第2光学部材2の溶着面4に光熱変換材料3を塗布する。
【0076】
その後、第1光学部材1を溶着面4に配置し、必要に応じて双方の固定、位置決め、及び押圧等を行い、例えば、第2光学部材2側から、又は第1光学部材1側から、図示しないレーザ光を照射する。これにより、溶着面4に塗り残しがない状態で、第1光学部材1と第2光学部材2とを接合することができる。尚、溶着面4が何れかの方向に長い場合には、レーザ光を溶着面4の該長手方向に沿って所定時間走査することにより必要領域の溶着が実現される。
【0077】
尚、上記の説明では、第1光学部材1又は第2光学部材2のいずれか一方側から第1光学部材1及び第2光学部材2の両方にレーザ光を照射させ、溶着面4を介してレーザ光を照射させるものとなっている。しかし、必ずしもこれに限らず、第1光学部材1及び第2光学部材2の両方側から該第1光学部材1及び第2光学部材2の両方にレーザ光を照射させ、溶着面4を介してレーザ光を照射させるとすることも可能である。これにより、さらに多くの光エネルギーを光熱変換材料3に与えることができる。
【0078】
このように、複合光学部材10Bでは、第2光学部材2が第1光学部材1よりも形状が大きい。このため、第2光学部材2を製造装置の治具側にセットし、その後、光熱変換材料3を塗布し、次いで、第1光学部材1を第2光学部材2の上側から近づけて位置決めす
る方法を適用することが可能である。
【0079】
ここで、本実施の形態の複合光学部材10A・10Bでは、光熱変換材料3のはみ出し部3a・3bが形成されている。この結果、溶着面4への塗布状態は、図4(a)に示すようになる。これに対して、光熱変換材料3のはみ出し部3a・3bが形成されていない場合には、図4(b)に示すように、光熱変換材料3は必要な溶着面4内に留まっている。このような溶着面4を光が透過する場合、光熱変換材料3を塗布している領域と塗布していない領域とでは、透過光に色ムラ、輝度ムラが生じ易いという問題がある。
【0080】
これに対して、本実施の形態の複合光学部材10A・10Bでは、溶着面4の光の透過領域全体に光熱変換材料3を塗布し、隣接する面に光熱変換材料3のはみ出し部3a・3bを形成するので、光透過領域は満遍なく塗布され、均一な光学特性を呈することができる。
【0081】
ここで、はみ出し部3a・3bにおけるはみ出し(垂れ)の形態は、詳細には、図5(a)〜(e)に示すいずれかの形態、又はこれらの間の形態が存在する。そして、はみ出し部3a・3bにおけるはみ出し(垂れ)の形態は、複合光学部材10A・10Bの用途、接合材料の粘度、及び隣接する領域面の大きさ等に応じて、適宜設定、採択される。
【0082】
具体的には、隣接する領域面が大きい場合(垂れる方向に領域が長い部材の場合等)は、図5(a)に示す形態となり、隣接する領域面が小さい場合(垂れる方向に領域が短い部材の場合等)は、図5(d)に示すように、他の領域全面に垂れる形態になる。尚、図5(e)に示すように、一部分が突出して垂れる形態でも構わない。
【0083】
また、隣接する領域面を、全反射等の光学的機能に関して制約を持たせる場合は、図5(a)に示すように、はみ出し部3a・3bが少ない方が好ましい。一方、隣接する領域面に全反射等の光学的機能を求めない場合は、図5(b)〜(e)に示す形態が適宜採択される。さらに、光熱変換材料3の粘度によっても、図5(a)〜(e)に示す形態が適宜採択される。
【0084】
また、本実施の形態では、上述した構成とするために、特に製品の量産過程において、均一に上記の状態を実現するために、製造後に、溶着面4を超えてその外側まで光熱変換材料3がはみ出す状態になるように、溶着面4上への予めの塗布量、粘度等を設定している。さらには、レーザの照射パワー、照射時間等をも設定することによって、より効果的に製造することができる。
【0085】
尚、本実施の形態の複合光学部材10A・10Bでは、媒体としての光熱変換材料3として説明した。しかし、本発明においては、必ずしもこれに限らず、媒体として、例えば、可視光や紫外光による硬化型接着剤であっても構わない。そして、この場合は、レーザ光でなくとも、LEDやハロゲン光等の誘導放出を伴わない光照射による硬化方法でも構わない。
【0086】
このように、本実施の形態では、第1光学部材1と第2光学部材2とを、媒体を介在させて接合するものであり、媒体の種類としては、光熱変換材料3を用いるものと、接着材料を用いるものとの2種類を適用することができる。すなわち、媒体としての光熱変換材料3は、第1光学部材1と第2光学部材2とを光熱変換材料3の発熱によって互いを溶融して溶着するものである。一方、媒体としての接着材料は、例えば可視光硬化型接着材料又は紫外光硬化型接着材料を用いて、第1光学部材1と第2光学部材2と接着するものである。
【0087】
以上のように、本実施の形態の複合光学部材10A・10Bは、第1光学部材1と第2光学部材2との接合面に光を透過して用いる複合光学部材10A・10Bにおいて、第1光学部材1と第2光学部材2とは、光熱変換材料3を介在させて接合されていると共に、光熱変換材料3、又は接合時における光熱変換材料3の変質物若しくは分解物は、接合面に連なる他の領域に、はみ出し部3a・3bとしてはみ出しているものである。
【0088】
上記の構成によれば、複合光学部材10A・10Bは、第1光学部材1と第2光学部材2との接合面に光を透過して用いる。このような複合光学部材10A・10Bでは、接合面に光熱変換材料3が塗布されていない部分があるときには、その部分はレーザ光の照射時に溶着されず、部分的に不溶着界面が残ったままの状態になるため、光学特性悪化(輝度低下、輝度ムラ)の要因となるという問題を有している。
【0089】
そこで、本実施の形態では、光熱変換材料3、又は接合時における光熱変換材料3の変質物若しくは分解物は、第1光学部材1と第2光学部材2との接合面に連なる他の領域にはみ出している。このため、接合面に光熱変換材料3が塗布されていない部分が無い状態となっている。
【0090】
したがって、光熱変換材料3が接合面に塗布されていない部分が存在するのを抑制して、色ムラ、輝度ムラが生じない良好な光学特性を有する複合光学部材10A・10Bを提供することができる。
【0091】
また、本実施の形態の複合光学部材10A・10Bでは、媒体は、光熱変換材料3からなっており、第1光学部材1と第2光学部材2とは、光熱変換材料3の発熱によって溶着されていると共に、光熱変換材料3、又は溶着時における光熱変換材料の変質物若しくは分解物が、接合面に連なる他の領域にはみ出しているとすることができる。
【0092】
これにより、レーザ光を照射したときに、光が熱に変換され、第1光学部材1及び第2光学部2が溶融されるので、第1光学部材1と第2光学部材2とを適切に溶着することができる。
【0093】
また、本実施の形態の複合光学部材10A・10Bでは、光熱変換材料3は、赤外線吸収剤を含んで構成されていることが好ましい。
【0094】
これにより、レーザ光は赤外線を含むので、光熱変換材料3に赤外線吸収剤を含ませておくことにより、光熱変換材料3は光エネルギーを熱エネルギーに効率よく変換することができ、延いては溶着効率を向上させることができる。
【0095】
また、本実施の形態の複合光学部材10A・10Bでは、媒体は、接着材料からなっており、第1光学部材1と第2光学部材2とは、接着材料によって接着されていると共に、接着材料、又は接着時における接着材料の変質物若しくは分解物が、接合面に連なる他の領域にはみ出しているとすることができる。
【0096】
これにより、光を照射したときに、接着材料が溶融されるので、第1光学部材1と第2光学部材2とを適切に接着することができる。
【0097】
また、本実施の形態の複合光学部材10A・10Bでは、媒体は、可視光硬化型接着材料からなっているとすることができる。これにより、可視光を照射したときに接着材料が溶融し、その後の冷却により接着材料が硬化するので、第1光学部材1と第2光学部材2とを適切に接着することができる。
【0098】
また、本実施の形態の複合光学部材10A・10Bでは、媒体は、紫外光硬化型接着材料からなっているとすることができる。これにより、紫外線を照射したときに接着材料が溶融し、その後の冷却により接着材料が硬化するので、第1光学部材1と第2光学部材2とを適切に接着することができる。
【0099】
また、本実施の形態の複合光学部材10A・10Bでは、媒体、又は接合時における媒体の変質物若しくは分解物は、接合面に連なる隣接面の全域にはみ出しているとすることができる。
【0100】
これにより、第1光学部材1と第2光学部材2との接合面が寸法誤差によりいずれの方向にずれても、第1光学部材1と第2光学部材2とを接合したときに、媒体が接合面に塗布されていない部分が存在するのを抑制して、色ムラ、輝度ムラが生じない良好な光学特性を有する複合光学部材10A・10Bを提供することができる。
【0101】
また、本実施の形態の複合光学部材10A・10Bの製造方法では、第1光学部材1と第2光学部材2との接合面に光を透過して用いる複合光学部材を製造する。そして、第1光学部材1と第2光学部材2とを、光熱変換材料3を介在させて接合し、トップハット型のレーザ光を用いて、第1光学部材1と第2光学部材2とを溶着すると共に、光熱変換材料3、又は接合時における光熱変換材料3の変質物若しくは分解物を、接合面に連なる他の領域にはみ出すように形成する。
【0102】
上記複合光学部材10A・10Bの製造方法では、第1光学部材1と第2光学部材2とを光熱変換材料3を介在させて接合する。この場合、レーザ光を用いて、第1光学部材1と第2光学部材2とを溶着する。
【0103】
ところで、溶着面4に塗布された光熱変換材料3に対して均一に溶着させるためには、全体的に均一な光エネルギーを与えることが好ましい。ここで、レーザ光の強度分布として、トップハット型分布、ガウシアン分布、リング型分布が存在するが、上述した均一な光エネルギーを与えるためには、急峻な強度分布であるトップハット型分布のレーザ光が好ましい。この点、本実施の形態では、トップハット型のレーザ光を用いて第1光学部材1と第2光学部材2とを溶着するので、溶着面4に塗布された光熱変換材料3に対して均一に溶着させることができる。
【0104】
したがって、光熱変換材料3が接合面に塗布されていない部分が存在するのを抑制して、色ムラ、輝度ムラが生じない良好な光学特性を有する複合光学部材10A・10Bの製造方法を提供することができる。
【0105】
また、本実施の形態の複合光学部材10A・10Bの製造方法では、第1光学部材1若しくは第2光学部材2のいずれか一方側から、又は第1光学部材1及び第2光学部材2の両方側から該第1光学部材1及び第2光学部材2の両方にレーザ光を照射させると共に、溶着面4を介してレーザ光を照射させる。
【0106】
これにより、溶着面4の光熱変換材料3に光エネルギーを与えるので、光熱変換材料3によって第1光学部材1及び第2光学部材2の各樹脂を溶融して、第1光学部材1と第2光学部材2とを溶着させることができる。
【0107】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について図6〜図8に基づいて説明すれば、以下のとおりである。尚、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する
部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0108】
本実施の形態の複合光学部材20Aは、前記実施の形態1における複合光学部材10Aの第2光学部材2に比べて第2光学部材22の形状が異なっている。
【0109】
本実施の形態の複合光学部材20Aは、図6に示すように、樹脂材料からなる第1光学部材1と、同じく樹脂材料からなる第2光学部材22とが媒体としての光熱変換材料3を介在して溶着されたものから構成されている。第1光学部材1は、前述したように、例えばプリズム、レンズ等の光学部材からなっており、光透過性を有する部材にてなっている。また、第2光学部材22は、例えば導光板等の光学部材からなっており、光透過性を有する部材にてなっている。また、第2光学部材22の上側端部は、傾斜面からなる反射面22aとなっている。ただし、第1光学部材1及び第2光学部材22は、必ずしもこれらの光学部材に限定されない。
【0110】
本実施の形態では、第1光学部材1は、第2光学部材22よりも狭い面積を有して該第2光学部材22の平面内である第2光学部材22の端部に接合されていると共に、第1光学部材1が第2光学部材22の下側に接合されている。
【0111】
製造後の複合光学部材20Aは、図6に示すように、例えば、第1光学部材1側から光源L等により光が入射され、図7(a)(b)に示すように、第1光学部材1と第2光学部材22との接合面としての溶着面4の全面又は一部を入射光L1が通過し、第2光学部材22に入射し、第2光学部材22の反射面22aにて反射し、第2光学部材22の内部を伝播する。反射面22aでの反射光L3は、第2光学部材22の他方の端部から出射するものとして、所望の用途に利用される。
【0112】
光源Lは、実施の形態1と同様に、照明等の用途としてはLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)、蛍光管、EL(Electro Luminescence)発光素子等が利用でき、その他の光学用途(光学記録媒体に対する記録、再生等)としては半導体レーザ等も利用可能である。
【0113】
本実施の形態の複合光学部材20Aにおいては、第1光学部材1と第2光学部材22との間の光の通過領域における全面に光熱変換材料3が塗布されている。この場合、入射光L1の領域は、図7(a)に示す第1光学部材1の接合面の全面、又は図7(b)に示す第1光学部材1における接合面の一部のいずれでも構わない。すなわち、複合光学部材20Aの光透過領域において、ある部分は光熱変換材料3が塗布され、ある部分は光熱変換材料3が塗布されていない状態がないように構成されている。尚、光熱変換材料3の材質は、前記実施の形態1の光熱変換材料3と当然に同様である。
【0114】
本実施の形態では、実施の形態1と同様に、特に製品の量産過程において、均一に上記の状態を実現するために、溶着面4を超えてその外側まで光熱変換材料3がはみ出すように該光熱変換材料3を塗布している。詳細には、溶着面4に塗布された光熱変換材料3が第1光学部材1の両側面に垂れた状態となっており、これにより、僅かに光熱変換材料3のはみ出し部3aが必ず形成されている点が特徴である。したがって、製造後の複合光学部材20Aには、はみ出し部23aの痕跡が残っている。
【0115】
上記構成の複合光学部材20Aの製造プロセスは、次のようになる。
【0116】
まず、第1光学部材1の溶着面4に光熱変換材料3を液状状態で塗布する。このとき、第1光学部材1と第2光学部材22とを合わせた場合に、光熱変換材料3が第1光学部材1の側面に垂れるように充分に第1光学部材1の溶着面4に光熱変換材料3を塗布する。
次いで、第2光学部材22を第1光学部材1の溶着面4に載置し、必要に応じて双方の固定、位置決め、及び押圧等を行い、例えば第1光学部材1側又は第2光学部材22側から図示しないレーザ光を照射する。これにより、溶着面4に塗り残しがない状態で、第1光学部材1と第2光学部材22とを接合することができる。尚、溶着面4が何れかの方向に長い場合には、レーザ光を溶着面4の該長手方向に沿って所定時間走査することにより必要領域の溶着が実現される。
【0117】
尚、上記の説明では、第1光学部材1又は第2光学部材22のいずれか一方側から第1光学部材1及び第2光学部材22の両方にレーザ光を照射させ、溶着面4を介してレーザ光を照射させるものとなっている。
【0118】
しかし、必ずしもこれに限らず、第1光学部材1及び第2光学部材22の両方側から該第1光学部材1及び第2光学部材22の両方にレーザ光を照射させ、溶着面4を介してレーザ光を照射させるとすることも可能である。これにより、さらに多くの光エネルギーを光熱変換材料3に与えることができると共に、短時間での作業が可能となる。
【0119】
また、本実施の形態の場合は、第2光学部材22の出射側(図6に示す第2光学部材22の右側端部)からレーザ光を入射し、反射面22aを用いて、下方に反射させて溶着面4に照射することも可能である。
【0120】
(変形例)
次に、本実施の形態の変形例としての複合光学部材20Bの構成について、図8に基づいて説明する。図8は複合光学部材20Bの構成を示す断面図である。尚、図8は模式的に表現しており、接合材料の厚さは図のイメージより薄いものである。
【0121】
上記複合光学部材20Bは、図8に示すように、樹脂材料からなる第1光学部材1と、同じく樹脂材料からなる第2光学部材22とが媒体としての光熱変換材料3を介在して溶着されたものから構成されており、構成としては複合光学部材20Aと同じである。ただし、複合光学部材20Bでは、はみ出し部23b・23cの位置が複合光学部材20Aとは異なっている。
【0122】
本実施の形態の複合光学部材20Bにおいては、第1光学部材1と第2光学部材22との間の光の通過領域における全面に光熱変換材料3が塗布されている。すなわち、複合光学部材20Bの光透過領域において、ある部分は光熱変換材料3が塗布され、ある部分は光熱変換材料3が塗布されていない状態がないように構成されている。
【0123】
製造後の複合光学部材20Bにおける用途は、複合光学部材20Aの用途と同様である。したがって、光源Lは、複合光学部材20Aと同様のものを使用することができる。
【0124】
本実施の形態では、特に製品の量産過程において、均一に上記の状態を実現するために、溶着面4を超えてその外側まで光熱変換材料3がはみ出すように該光熱変換材料3を塗布している。すなわち、溶着面4において、光熱変換材料3の塗布不足やはみ出しが全くなく、第1光学部材1と第2光学部材22との境界部分において正確に光熱変換材料3が停止している状態を量産過程で大量の製品に対し実現することは不可能である。このため、本実施の形態では、光学特性を害さないよう、必ずある程度のはみ出し部23b・23cが発生するよう制御している。
【0125】
詳細には、はみ出し部23bは、第2光学部材22の表面に塗布された光熱変換材料3が、溶着面4及び第2光学部材22の表面と同一面においてかつ該溶着面4よりも周辺にまで塗布された状態となっている。また、はみ出し部23cは、第2光学部材22の表面
に塗布された光熱変換材料3が、第2光学部材22の反射面22aにまで塗布された状態となっている。したがって、製造後の複合光学部材20Bには、はみ出し部23b・23cの痕跡が残っている。
【0126】
上記構成の複合光学部材20Bの製造プロセスは、次のようになる。
【0127】
まず、第2光学部材22の溶着面4を上側にして光熱変換材料3を液状状態で塗布する。このとき、第1光学部材1を第2光学部材22の端部に合わせた場合に、光熱変換材料3が第2光学部材22における溶着面4の周辺にはみ出すように充分に第2光学部材22の溶着面4に光熱変換材料3を塗布する。この結果、第2光学部材22には、第2光学部材22の表面のはみ出し部23bと、第2光学部材22の反射面22aのはみ出し部23cとが形成される。
【0128】
その後、第1光学部材1を溶着面4に配置し、必要に応じて双方の固定、位置決め、及び押圧等を行い、第1光学部材1側若しくは第2光学部材22側から、図示しないレーザ光を照射する。或いは、第2光学部材22の出射側(図6に示す第2光学部材22の右側端部)から図示しないレーザ光を入射し、反射面22aを用いて、下方に反射させて溶着面4にレーザ光を照射する。
【0129】
これにより、溶着面4に塗り残しがない状態で、第1光学部材1と第2光学部材22とを接合することができる。尚、溶着面4が何れかの方向に長い場合には、レーザ光を溶着面4の該長手方向に沿って所定時間走査することにより必要領域の溶着が実現される。
【0130】
尚、上記の説明では、第1光学部材1又は第2光学部材22のいずれか一方側から第1光学部材1及び第2光学部材22の両方にレーザ光を照射させ、溶着面4を介してレーザ光を照射させるものとなっている。しかし、必ずしもこれに限らず、第1光学部材1及び第2光学部材22の両方側から該第1光学部材1及び第2光学部材22の両方にレーザ光を照射させ、溶着面4を介してレーザ光を照射させるとすることも可能である。これにより、さらに多くの光エネルギーを光熱変換材料3に与えることができる。
【0131】
このように、複合光学部材20Bでは、第2光学部材22が第1光学部材1よりも形状が大きい。このため、第2光学部材22を製造装置の治具側にセットし、その後、光熱変換材料3を塗布し、次いで、第1光学部材1を第2光学部材22の上側から近づけて位置決めする方法を適用することが可能である。
【0132】
尚、本実施の形態の複合光学部材20A・20Bでは、媒体としての光熱変換材料3として説明した。しかし、本発明においては、必ずしもこれに限らず、媒体として、例えば、可視光や紫外光による硬化型接着剤であっても構わない。そして、この場合は、レーザ光でなくとも、LEDやハロゲン光等の誘導放出を伴わない光照射による硬化方法でも構わない。
【0133】
このように、本実施の形態では、第1光学部材1と第2光学部材22とを、媒体を介在させて接合するものであり、媒体の種類としては、光熱変換材料3を用いるものと、接着材料を用いるものとの2種類を適用することができる。すなわち、光熱変換材料3は、第1光学部材1と第2光学部材22とを光熱変換材料3の発熱によって互いを溶融して溶着するものである。一方、接着材料は、例えば可視光硬化型接着材料又は紫外光硬化型接着材料を用いて、第1光学部材1と第2光学部材22と接着するものである。
【0134】
以上のように、本実施の形態の複合光学部材20A・20Bは、第1光学部材1と第2光学部材22との接合面に光を透過して用いる複合光学部材20A・20Bにおいて、第
1光学部材1と第2光学部材22とは、光熱変換材料3を介在させて接合されていると共に、光熱変換材料3、又は接合時における光熱変換材料3の変質物若しくは分解物は、接合面に連なる他の領域に、はみ出し部23a・23b・23cとしてはみ出しているものである。
【0135】
上記の構成によれば、複合光学部材20A・20Bは、第1光学部材1と第2光学部材22との接合面に光を透過して用いる。このような複合光学部材20A・20Bでは、接合面に光熱変換材料3が塗布されていない部分があるときには、その部分はレーザ光の照射時に溶着されず、部分的に不溶着界面が残ったままの状態になるため、光学特性悪化(輝度低下、輝度ムラ)の要因となるという問題を有している。
【0136】
そこで、本実施の形態では、光熱変換材料3、又は接合時における光熱変換材料3の変質物若しくは分解物は、第1光学部材1と第2光学部材22との接合面に連なる他の領域に、はみ出し部23a・23b・23cとしてはみ出している。このため、接合面に光熱変換材料3が塗布されていない部分が無い状態となっている。
【0137】
したがって、光熱変換材料3が接合面に塗布されていない部分が存在するのを抑制して、色ムラ、輝度ムラが生じない良好な光学特性を有する複合光学部材20A・20Bを提供することができる。
【0138】
ここで、はみ出し部23a・23b・23cにおけるはみ出し(垂れ)の形態は、詳細には、前記図5(a)〜(e)に示すいずれかの形態、又はこれらの間の形態が存在する。そして、はみ出し部23a・23b・23cにおけるはみ出し(垂れ)の形態は、複合光学部材20A・20Bの用途、接合材料の粘度、及び隣接する領域面の大きさ等に応じて、適宜設定、採択される。
【0139】
具体的には、隣接する領域面が大きい場合(垂れる方向に領域が長い部材の場合等)は、図5(a)に示す形態となり、隣接する領域面が小さい場合(垂れる方向に領域が短い部材の場合等)は、図5(d)に示すように、他の領域全面に垂れる形態になる。尚、図5(e)に示すように、一部分が突出して垂れる形態でも構わない。
【0140】
また、隣接する領域面を、全反射等の光学的機能に関して制約を持たせる場合は、図5(a)に示すように、はみ出し部23a・23b・23cbが少ない方が好ましい。一方、隣接する領域面に全反射等の光学的機能を求めない場合は、図5(b)〜(e)に示す形態が適宜採択される。
【0141】
さらに、光熱変換材料3の粘度によっても、図5(a)〜(e)に示す形態が適宜採択される。
【0142】
また、本実施の形態では、上述した構成とするために、特に製品の量産過程において、均一に上記の状態を実現するために、製造後に、溶着面4を超えてその外側まで光熱変換材料3がはみ出す状態になるように、溶着面4上への予めの塗布量、粘度等を設定している。さらには、レーザの照射パワー、照射時間等をも設定することによって、より効果的に製造することができる。
【0143】
また、本実施の形態の複合光学部材20A・20Bでは、媒体は、光熱変換材料3からなっており、第1光学部材1と第2光学部材22とは、光熱変換材料3の発熱によって溶着されていると共に、光熱変換材料3、又は溶着時における光熱変換材料の変質物若しくは分解物が、接合面に連なる他の領域にはみ出しているとすることができる。これにより、レーザ光を照射したときに、光が熱に変換され、第1光学部材1及び第2光学部22が
溶融されるので、第1光学部材1と第2光学部材22とを適切に溶着することができる。
【0144】
また、本実施の形態の複合光学部材20A・20Bでは、光熱変換材料3は、赤外線吸収剤を含んで構成されていることが好ましい。
【0145】
これにより、レーザ光は赤外線を含むので、光熱変換材料3に赤外線吸収剤を含ませておくことにより、光熱変換材料3は光エネルギーを熱エネルギーに効率よく変換することができ、延いては溶着効率を向上させることができる。
【0146】
また、本実施の形態の複合光学部材20A・20Bでは、媒体は、接着材料からなっており、第1光学部材1と第2光学部材22とは、接着材料によって接着されていると共に、接着材料、又は接着時における接着材料の変質物若しくは分解物が、接合面に連なる他の領域にはみ出しているとすることができる。
【0147】
これにより、光を照射したときに、接着材料が溶融されるので、第1光学部材1と第2光学部材22とを適切に接着することができる。
【0148】
また、本実施の形態の複合光学部材20A・20Bでは、媒体は、可視光硬化型接着材料からなっているとすることができる。これにより、可視光を照射したときに接着材料が溶融し、その後の冷却により接着材料が硬化するので、第1光学部材1と第2光学部材22とを適切に接着することができる。
【0149】
また、本実施の形態の複合光学部材20A・20Bでは、接合材料は、紫外光硬化型接着材料からなっているとすることができる。これにより、紫外線を照射したときに接着材料が溶融し、その後の冷却により接着材料が硬化するので、第1光学部材1と第2光学部材22とを適切に接着することができる。
【0150】
また、本実施の形態の複合光学部材20A・20Bでは、媒体、又は接合時における媒体の変質物若しくは分解物は、接合面に連なる隣接面の全域にはみ出しているとすることができる。
【0151】
これにより、第1光学部材1と第2光学部材22との接合面が寸法誤差によりいずれの方向にずれても、第1光学部材1と第2光学部材22とを接合したときに、媒体が接合面に塗布されていない部分が存在するのを抑制して、色ムラ、輝度ムラが生じない良好な光学特性を有する複合光学部材20A・20Bを提供することができる。
【0152】
また、本実施の形態の複合光学部材20A・20Bの製造方法では、第1光学部材1と第2光学部材22との接合面に光を透過して用いる複合光学部材20A・20Bを製造する。そして、第1光学部材1と第2光学部材22とを、光熱変換材料3を介在させて接合し、トップハット型のレーザ光を用いて、第1光学部材1と第2光学部材22とを溶着すると共に、光熱変換材料3、又は接合時における光熱変換材料3の変質物若しくは分解物を、接合面に連なる他の領域にはみ出すように形成する。
【0153】
上記複合光学部材20A・20Bの製造方法では、第1光学部材1と第2光学部材22とを光熱変換材料3を介在させて接合する。この場合、レーザ光を用いて、第1光学部材1と第2光学部材2とを溶着する。
【0154】
ところで、溶着面4に塗布された光熱変換材料3に対して均一に溶着させるためには、全体的に均一な光エネルギーを与えることが好ましい。ここで、レーザ光の強度分布として、トップハット型分布、ガウシアン分布、リング型分布が存在するが、上述した均一な
光エネルギーを与えるためには、急峻な強度分布であるトップハット型分布のレーザ光が好ましい。この点、本実施の形態では、トップハット型のレーザ光を用いて第1光学部材1と第2光学部材22とを溶着するので、溶着面4に塗布された光熱変換材料3に対して均一に溶着させることができる。
【0155】
したがって、光熱変換材料3が接合面に塗布されていない部分が存在するのを抑制して、色ムラ、輝度ムラが生じない良好な光学特性を有する複合光学部材20A・20Bの製造方法を提供することができる。
【0156】
また、本実施の形態の複合光学部材20A・20Bの製造方法では、第1光学部材1若しくは第2光学部材22のいずれか一方側から、又は第1光学部材1及び第2光学部材22の両方側から該第1光学部材1及び第2光学部材22の両方にレーザ光を照射させると共に、溶着面4を介してレーザ光を照射させる。或いは、第1光学部材1と第2光学部材22の右端面側との両方からレーザ光を照射する。
【0157】
これにより、溶着面4の光熱変換材料3に光エネルギーを与えるので、光熱変換材料3によって第1光学部材1及び第2光学部材22の各樹脂を溶融して、第1光学部材1と第2光学部材22とを溶着させることができる。
【0158】
〔実施の形態3〕
本発明の他の実施の形態について図9〜図11に基づいて説明すれば、以下のとおりである。尚、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1及び実施の形態2と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1及び実施の形態2の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0159】
本実施の形態の複合光学部材30Aは、前記実施の形態1及び実施の形態2に比べて、第1光学部材31及び第2光学部材32の両方の形状が異なっている。
【0160】
本実施の形態の複合光学部材30Aは、図9に示すように、樹脂材料からなる第1光学部材31と、同じく樹脂材料からなる第2光学部材32とが媒体としての光熱変換材料3を介在して溶着されたものから構成されている。第1光学部材31は、例えばプリズム、レンズ等の光学部材からなっており、光透過性を有する部材にてなっている。また、第2光学部材32は、例えば導光板等の光学部材からなっており、光透過性を有する部材にてなっている。また、第1光学部材31の一側面は、傾斜面からなる反射面31aとなっており、第2光学部材32は、薄厚の平板からなっている。ただし、第1光学部材31及び第2光学部材32は、必ずしもこれらの光学部材に限定されない。
【0161】
本実施の形態では、第1光学部材31は、第2光学部材32よりも狭い面積を有して該第2光学部材32の平面内である第2光学部材32の端部に接合されていると共に、第1光学部材31が第2光学部材32の下側に接合されている。
【0162】
製造後の複合光学部材30Aでは、図9に示すように、例えば、第1光学部材31側から光源L等により光が入射され、この光は第1光学部材31の反射面31aにて反射され、図10(a)(b)に示すように、第1光学部材31と第2光学部材32との溶着面4の全面又は一部を反射光L4が通過し、第2光学部材32に入射する。第2光学部材32に入射した光は、該第2光学部材32の内部を伝搬光L5にて伝搬し、第2光学部材32から出射するものとして、所望の用途に利用される。
【0163】
上記複合光学部材30Aでは、光を効率良く利用するために、反射面31aは、全反射
面として形成される場合がある。すなわち、反射面31aの角度αを適宜設定して、入射光L1に対し、第2光学部材32の側に光が反射するように、全反射角αとして設定される。或いは、反射面31aに図示しない全反射膜を形成し、第2光学部材32の側に光が反射するように設定される。
【0164】
光源Lは、実施の形態1及び実施の形態2と同様に、照明等の用途としてはLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)、蛍光管、EL(Electro Luminescence)発光素子等が利用でき、その他の光学用途(光学記録媒体に対する記録、再生等)としては半導体レーザ等も利用可能である。ここで、本実施の形態では、光源Lは点光源であり、放射角を有する場合には、反射面31aは図示しない曲面形状に形成される。これによって、放射角を有する入射光L1に対しても反射面31aを全反射面として利用でき、光を有効活用できる。
【0165】
本実施の形態の複合光学部材30Aにおいては、第1光学部材31と第2光学部材32との間の光の通過領域における全面に光熱変換材料3が塗布されている。この場合、入射光L1の領域は、図10(a)に示す第1光学部材31の接合面の全面、又は図10(b)に示す第1光学部材31における接合面の一部のいずれでも構わない。すなわち、複合光学部材30Aの光透過領域において、ある部分は光熱変換材料3が塗布され、ある部分は光熱変換材料3が塗布されていない状態がないように構成されている。尚、光熱変換材料3の材質は、前記実施の形態1及び実施の形態2の光熱変換材料3と当然に同様である。
【0166】
本実施の形態では、実施の形態1及び実施の形態2と同様に、特に製品の量産過程において、均一に上記の状態を実現するために、溶着面4を超えてその外側まで光熱変換材料がはみ出すように該光熱変換材料3を塗布している。すなわち、溶着面4において、光熱変換材料3の塗布不足やはみ出しが全くなく、第1光学部材31と第2光学部材32との境界部分において正確に光熱変換材料3が停止している状態を量産過程で大量の製品に対し実現することは不可能である。このため、本実施の形態では、光学特性を害さないよう、必ずある程度のはみ出し部33a・33bが発生するよう制御している。
【0167】
詳細には、溶着面4に塗布された光熱変換材料3が第1光学部材31の両側面に垂れた状態となっており、これにより、僅かに光熱変換材料3のはみ出し部33a・33bが必ず形成されている点が特徴である。したがって、製造後の複合光学部材30Aには、はみ出し部33a・33bの痕跡が残っている。
【0168】
上記構成の複合光学部材30Aの製造プロセスは、次のようになる。
【0169】
まず、第1光学部材31の溶着面4に光熱変換材料3を液状状態で塗布する。このとき、第1光学部材31と第2光学部材32とを合わせた場合に、光熱変換材料3が第1光学部材31の両側面に垂れるように充分に第1光学部材31の溶着面4に光熱変換材料3を塗布する。次いで、第2光学部材32を溶着面4に載置し、必要に応じて双方の固定、位置決め、及び押圧等を行い、例えば、第1光学部材31側又は第2光学部材32側からから図示しないレーザ光を照射する。これにより、溶着面4に塗り残しがない状態で、第1光学部材31と第2光学部材32とを接合することができる。尚、溶着面4が何れかの方向に長い場合には、レーザ光を溶着面4の該長手方向に沿って所定時間走査することにより必要領域の溶着が実現される。
【0170】
尚、上記の説明では、第1光学部材31又は第2光学部材32のいずれか一方側から第1光学部材31及び第2光学部材32の両方にレーザ光を照射させ、溶着面4を介してレーザ光を照射させるものとなっている。しかし、必ずしもこれに限らず、第1光学部材3
1及び第2光学部材32の両方側から該第1光学部材31及び第2光学部材32の両方にレーザ光を照射させ、溶着面4を介してレーザ光を照射させるとすることも可能である。これにより、さらに多くの光エネルギーを光熱変換材料3に与えることができる。
【0171】
(変形例)
次に、本実施の形態の変形例としての複合光学部材30Bの構成について、図11に基づいて説明する。図11は複合光学部材30Bの構成を示す断面図である。尚、図11は模式的に表現しており、接合材料の厚さは図のイメージより薄いものである。
【0172】
上記複合光学部材30Bは、図11に示すように、樹脂材料からなる第1光学部材31と、同じく樹脂材料からなる第2光学部材32とが媒体としての光熱変換材料3を介在して溶着されたものから構成されており、構成としては、複合光学部材30Aと同じである。ただし、複合光学部材30Bでは、はみ出し部33c・33cの位置が複合光学部材30Aとは異なっている。
【0173】
本実施の形態の複合光学部材30Bにおいては、第1光学部材31と第2光学部材32との間の光の通過領域における全面に光熱変換材料3が塗布されている。この場合、入射光L1の領域は、図10(a)に示す第1光学部材31の接合面の全面、又は図10(b)に示す第1光学部材31における接合面の一部のいずれでも構わない。すなわち、複合光学部材30Bの光透過領域において、ある部分は光熱変換材料3が塗布され、ある部分は光熱変換材料3が塗布されていない状態がないように構成されている。
【0174】
製造後の複合光学部材30Bにおける用途は、複合光学部材30Aの用途と同様である。したがって、光源Lは、複合光学部材30Aと同様のものを使用することができる。
【0175】
本実施の形態では、特に製品の量産過程において、均一に上記の状態を実現するために、溶着面4を超えてその外側まで光熱変換材料3がはみ出すように該光熱変換材料3を塗布している。すなわち、溶着面4において、光熱変換材料3の塗布不足やはみ出しが全くなく、第1光学部材31と第2光学部材32との境界部分において正確に光熱変換材料3が停止している状態を量産過程で大量の製品に対し実現することは不可能である。このため、本実施の形態では、光の入射から反射における光学特性を害さないよう、必ずある程度のはみ出し部33c・33cが発生するよう制御している。
【0176】
詳細には、はみ出し部33c・33cは、第2光学部材32の表面に塗布された光熱変換材料3が、溶着面4及び第2光学部材32の表面と同一面においてかつ該溶着面4よりも周辺にまで塗布された状態となっている。したがって、製造後の複合光学部材30Bには、はみ出し部33c・33cの痕跡が残っている。
【0177】
すなわち、複合光学部材30Bでは、第1光学部材31の反射面31aには、はみ出し部33bを形成せず、第2光学部材32における溶着面4の外側にはみ出し部33cを形成している。このように、光熱変換材料3のはみ出し部33cを反射面31aに形成することによって全反射特性を害するようなことが予測される場合には、はみ出し部33cは、第2光学部材32の面上に形成される。全反射特性シビアに管理したい場合等に適用される。
【0178】
上記構成の複合光学部材30Bの製造プロセスは、次のようになる。
【0179】
まず、第2光学部材32の溶着面4に上側にして光熱変換材料3を液状状態で塗布する。このとき、第1光学部材31を第2光学部材32の端部に合わせた場合に、光熱変換材料3が第2光学部材32における溶着面4の周辺にはみ出すように充分に第2光学部材3
2の溶着面4に光熱変換材料3を塗布する。この結果、第2光学部材32の表面に、はみ出し部33c・33cが形成される。その後、第1光学部材31を溶着面4に配置し、必要に応じて双方の固定、位置決め、及び押圧等を行い、第1光学部材31側又は第2光学部材32側から図示しないレーザ光を照射する。これにより、溶着面4に塗り残しがない状態で、第1光学部材31と第2光学部材32とを接合することができる。尚、溶着面4が何れかの方向に長い場合には、レーザ光を溶着面4の該長手方向に沿って所定時間走査することにより必要領域の溶着が実現される。
【0180】
尚、上記の説明では、第1光学部材31又は第2光学部材32のいずれか一方側から第1光学部材31及び第2光学部材32の両方にレーザ光を照射させ、溶着面4を介してレーザ光を照射させるものとなっている。しかし、必ずしもこれに限らず、第1光学部材31及び第2光学部材32の両方側から該第1光学部材31及び第2光学部材32の両方にレーザ光を照射させ、溶着面4を介してレーザ光を照射させるとすることも可能である。これにより、さらに多くの光エネルギーを光熱変換材料3に与えることができる。
【0181】
このように、複合光学部材30Bでは、第2光学部材32が第1光学部材31よりも形状が大きい。このため、第2光学部材32を製造装置の治具側にセットし、その後、光熱変換材料3を塗布し、次いで、第1光学部材31を第2光学部材32の上側から近づけて位置決めする方法を適用することが可能である。
【0182】
尚、本実施の形態の複合光学部材30A・30Bでは、媒体としての光熱変換材料3として説明した。しかし、本発明においては、必ずしもこれに限らず、媒体として、例えば、可視光や紫外光による硬化型接着剤であっても構わない。そして、この場合は、レーザ光でなくとも、LEDやハロゲン光等の誘導放出を伴わない光照射による硬化方法でも構わない。
【0183】
このように、本実施の形態では、第1光学部材31と第2光学部材32とを、媒体を介在させて接合するものであり、媒体の種類としては、光熱変換材料3を用いるものと、接着材料を用いるものとの2種類を適用することができる。すなわち、媒体としての光熱変換材料3は、第1光学部材31と第2光学部材32とを光熱変換材料3の発熱によって互いを溶融して溶着するものである。一方、媒体としての接着材料は、例えば可視光硬化型接着材料又は紫外光硬化型接着材料を用いて、第1光学部材31と第2光学部材32と接着するものである。
【0184】
以上のように、本実施の形態の複合光学部材30A・30Bは、第1光学部材31と第2光学部材32との接合面に光を透過して用いる複合光学部材30A・30Bにおいて、第1光学部材31と第2光学部材32とは、光熱変換材料3を介在させて接合されていると共に、光熱変換材料3、又は接合時における光熱変換材料3の変質物若しくは分解物は、接合面に連なる他の領域に、はみ出し部33a・33b・33cとしてはみ出しているものである。
【0185】
上記の構成によれば、複合光学部材30A・30Bは、第1光学部材31と第2光学部材32との接合面に光を透過して用いる。このような複合光学部材30A・30Bでは、接合面に光熱変換材料3が塗布されていない部分があるときには、その部分はレーザ光の照射時に溶着されず、部分的に不溶着界面が残ったままの状態になるため、光学特性悪化(輝度低下、輝度ムラ)の要因となるという問題を有している。
【0186】
そこで、本実施の形態では、光熱変換材料3、又は接合時における光熱変換材料3の変質物若しくは分解物は、第1光学部材31と第2光学部材32との接合面に連なる他の領域にはみ出し部33a・33b・33cとしてはみ出している。このため、接合面に光熱
変換材料3が塗布されていない部分が無い状態となっている。
【0187】
したがって、光熱変換材料3が接合面に塗布されていない部分が存在するのを抑制して、色ムラ、輝度ムラが生じない良好な光学特性を有する複合光学部材30A・30Bを提供することができる。
【0188】
ここで、はみ出し部33a・33b・33cにおけるはみ出し(垂れ)の形態は、詳細には、前記図5(a)〜(e)に示すいずれかの形態、又はこれらの間の形態が存在する。そして、はみ出し部33a・33b・33cにおけるはみ出し(垂れ)の形態は、複合光学部材30A・30Bの用途、接合材料の粘度、及び隣接する領域面の大きさ等に応じて、適宜設定、採択される。
【0189】
具体的には、隣接する領域面が大きい場合(垂れる方向に領域が長い部材の場合等)は、図5(a)に示す形態となり、隣接する領域面が小さい場合(垂れる方向に領域が短い部材の場合等)は、図5(d)に示すように、他の領域全面に垂れる形態になる。尚、図5(e)に示すように、一部分が突出して垂れる形態でも構わない。
【0190】
また、隣接する領域面を、全反射等の光学的機能に関して制約を持たせる場合は、図5(a)に示すように、はみ出し部33a・33b・33cが少ない方が好ましい。一方、隣接する領域面に全反射等の光学的機能を求めない場合は、図5(b)〜(e)に示す形態が適宜採択される。
【0191】
さらに、光熱変換材料3の粘度によっても、図5(a)〜(e)に示す形態が適宜採択される。
【0192】
また、本実施の形態では、上述した構成とするために、特に製品の量産過程において、均一に上記の状態を実現するために、製造後に、溶着面4を超えてその外側まで光熱変換材料3がはみ出す状態になるように、溶着面4上への予めの塗布量、粘度等を設定している。さらには、レーザの照射パワー、照射時間等をも設定することによって、より効果的に製造することができる。
【0193】
また、本実施の形態の複合光学部材30A・30Bでは、媒体は、光熱変換材料3からなっており、第1光学部材31と第2光学部材32とは、光熱変換材料3の発熱によって溶着されていると共に、光熱変換材料3、又は溶着時における光熱変換材料3の変質物若しくは分解物が、接合面に連なる他の領域にはみ出しているとすることができる。
【0194】
これにより、レーザ光を照射したときに、光が熱に変換され、第1光学部材31及び第2光学部材32が溶融されるので、第1光学部材31と第2光学部材32とを適切に溶着することができる。
【0195】
また、本実施の形態の複合光学部材30A・30Bでは、光熱変換材料3は、赤外線吸収剤を含んで構成されていることが好ましい。
【0196】
これにより、レーザ光は赤外線を含むので、光熱変換材料3に赤外線吸収剤を含ませておくことにより、光熱変換材料3は光エネルギーを熱エネルギーに効率よく変換することができ、延いては溶着効率を向上させることができる。
【0197】
また、本実施の形態の複合光学部材30A・30Bでは、媒体は、接着材料からなっており、第1光学部材31と第2光学部材32とは、接着材料によって接着されていると共に、接着材料、又は接着時における接着材料の変質物若しくは分解物が、接合面に連なる
他の領域にはみ出しているとすることができる。
【0198】
これにより、光を照射したときに、接着材料が溶融されるので、第1光学部材31と第2光学部材32とを適切に接着することができる。
【0199】
また、本実施の形態の複合光学部材30A・30Bでは、媒体は、可視光硬化型接着材料からなっているとすることができる。これにより、可視光を照射したときに接着材料が溶融し、その後の冷却により接着材料が硬化するので、第1光学部材31と第2光学部材32とを適切に接着することができる。
【0200】
また、本実施の形態の複合光学部材30A・30Bでは、媒体は、紫外光硬化型接着材料からなっているとすることができる。これにより、紫外線を照射したときに接着材料が溶融し、その後の冷却により接着材料が硬化するので、第1光学部材31と第2光学部材32とを適切に接着することができる。
【0201】
また、本実施の形態の複合光学部材30A・30Bでは、媒体、又は接合時における媒体の変質物若しくは分解物は、接合面に連なる隣接面の全域にはみ出しているとすることができる。
【0202】
これにより、第1光学部材31と第2光学部材32との接合面が寸法誤差によりいずれの方向にずれても、第1光学部材31と第2光学部材32とを接合したときに、媒体が接合面に塗布されていない部分が存在するのを抑制して、色ムラ、輝度ムラが生じない良好な光学特性を有する複合光学部材30A・30Bを提供することができる。
【0203】
また、本実施の形態の複合光学部材30A・30Bの製造方法では、第1光学部材31と第2光学部材32との接合面に光を透過して用いる複合光学部材を製造する。そして、第1光学部材31と第2光学部材32とを、光熱変換材料3を介在させて接合し、トップハット型のレーザ光を用いて、第1光学部材31と第2光学部材32とを溶着すると共に、光熱変換材料3、又は接合時における光熱変換材料3の変質物若しくは分解物を、接合面に連なる他の領域にはみ出すように形成する。
【0204】
上記複合光学部材30A・30Bの製造方法では、第1光学部材31と第2光学部材32とを光熱変換材料3を介在させて接合する。この場合、レーザ光を用いて、第1光学部材31と第2光学部材32とを溶着する。
【0205】
ところで、溶着面4に塗布された光熱変換材料3に対して均一に溶着させるためには、全体的に均一な光エネルギーを与えることが好ましい。ここで、レーザ光の強度分布として、トップハット型分布、ガウシアン分布、リング型分布が存在するが、上述した均一な光エネルギーを与えるためには、急峻な強度分布であるトップハット型分布のレーザ光が好ましい。この点、本実施の形態では、トップハット型のレーザ光を用いて第1光学部材31と第2光学部材32とを溶着するので、溶着面4に塗布された光熱変換材料3に対して均一に溶着させることができる。
【0206】
したがって、光熱変換材料3が接合面に塗布されていない部分が存在するのを抑制して、色ムラ、輝度ムラが生じない良好な光学特性を有する複合光学部材30A・30Bの製造方法を提供することができる。
【0207】
また、本実施の形態の複合光学部材30A・30Bの製造方法では、第1光学部材31若しくは第2光学部材32のいずれか一方側から、又は第1光学部材31及び第2光学部材32の両方側から該第1光学部材31及び第2光学部材32の両方にレーザ光を照射さ
せると共に、溶着面4を介してレーザ光を照射させる。或いは、第1光学部材31と第2光学部材32の右端面側との両方からレーザ光を照射する。
【0208】
これにより、溶着面4の光熱変換材料3に光エネルギーを与えるので、光熱変換材料3によって第1光学部材31及び第2光学部材32の各樹脂を溶融して、第1光学部材31と第2光学部材32とを溶着させることができる。
【0209】
〔実施の形態4〕
本発明の他の実施の形態について図12〜図16に基づいて説明すれば、以下のとおりである。尚、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1〜実施の形態3と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1〜実施の形態3の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0210】
本実施の形態においては、前記実施の形態1〜3における複合光学部材10A・10B・20A・20B・30A・30Bの照明機器、電子機器への適用例について説明する。
【0211】
(照明機器への適用)
最初に、実施の形態1〜3における複合光学部材10A・10B・20A・20B・30A・30Bを照明機器としての照明装置50に適用した場合について、図12、図13(a)(b)及び図14に基づいて説明する。図12は照明装置50の構成を示す断面図である。また、図13(a)は、複合光学部材30Aを用いた円盤状で薄型の照明装置50の構成を示す斜視図であり、図13(b)はその照明装置50の構成を示す断面図である。さらに、図14は照明装置50の光線の軌跡を示す断面図である。
【0212】
照明機器としての照明装置50は、図12に示すように、表面側すなわち投光側からから順に、拡散シート59a、空隙59b、及び円盤状の平板からなる導光板52を備えている。この導光板52には、断面がU字型かつ棒状のレンズ51が溶着されている。レンズ51の両側には、その部分が開口となった反射シート58及びバックシャーシ57aが設けられている。また、レンズ51の上面には、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)61、該LED61を搭載する回路基板62、回路基板62を搭載する放熱板63が設けられており、これらは光源ホルダー57bにて保護されている。
【0213】
上記レンズ51と導光板52とは、いずれも光学特性が良好で強度を有するアクリルにて構成されるが、これに限るものではなく、ポリカーボネート等の光学用樹脂材料であっても構わない。
【0214】
また、照明光を発生する光源であるLED61は回路基板62上に配列して配置され、回路基板62は、放熱板63上に設置される。また、LED61からの光がレンズ51の入射端面に配置されるように、回路基板62に配置されたLED61とレンズ51との互いの位置関係が構成されている。
【0215】
照明装置50では、図13(a)(b)に示すように、レンズ51における、円盤状の導光板52とは反対側の端部からLED61等の光を導入し、レンズ51内を伝搬し、導光板52との溶着面から該導光板52の内部に伝搬し、円盤状の光を照明光として照射するようになっている。
【0216】
ここで、本実施の形態の照明装置50では、レンズ51が実施の形態3にて説明した複合光学部材30Aにおける第1光学部材31に該当し、導光板52が複合光学部材30Aにおける第2光学部材32に対応している。
【0217】
したがって、照明装置50は、レンズ51と導光板52とが、前記実施の形態1〜実施の形態3で説明した手法を用いて溶着して形成されている。詳細には、図13(b)に示すように、断面がU字型で棒状のロッドレンズ型のレンズ51と円盤状の平板からなる導光板52とが溶着面54を介して溶着して形成されている。溶着面54には、光熱変換材料53が塗布されている。この光熱変換材料53は、レンズ51の溶着面54上に予め塗布されている。この光熱変換材料53は、レンズ51と導光板52との間の光の通過領域における全面に塗布されている。つまり、光透過領域において、ある部分は光熱変換材料53が塗布され、ある部分は光熱変換材料53が塗布されていない状態がないように構成されている。
【0218】
尚、上述した説明では、照明装置50は、複合光学部材30Aを適用したものとして説明したが、必ずしもこれに限らず、例えば、実施の形態1〜3における複合光学部材10A・10B・20A・20B・30Bを適用することも可能である。
【0219】
上述した構成とするために、本実施の形態では、特に製品の量産過程において、均一に上記の状態を実現するために、溶着面54を超えてその外側まで光熱変換材料53がはみ出すように塗布されている。
【0220】
具体的には、図13(b)に示すように、レンズ51の全反射面である曲面51aには、はみ出し部53b・53bが形成されている。すなわち、はみ出し部53b・53bは、溶着面54に連なる他の領域なる曲面51a・51a上に付着している。これによって溶着面54の全域に亘って光熱変換材料53が均一に塗布されるので、光学特性を良好にすることができる。
【0221】
次に、上記複合光学部材30Aを用いた照明装置50の光線の挙動、及び溶着面54における光線通過部分全面に光熱変換材料53を塗布することが重要である点に関して、図14に基づいて説明する。図14は、光線の挙動を示すための照明装置50の断面図である。
【0222】
図14に示すように、LED61は小型、低コスト、長寿命かつ高輝度なものが開発されており、小型、薄型の照明装置50に適用するには最適である。しかしながら、LED61は点光源であり、光に放射角を有するため、曲面51a・51aの断面形状が楕円からなる曲面形状に形成されている。これによって、放射角を有する入射光に対しても曲面51a・51aを全反射面として利用でき、LED61・61の大部分の光を溶着面54まで到達させることができる。溶着面54まで到達した光は、レンズ51と導光板52とが同一屈折率材料にて構成されていることから、そのまま、導光板52に入射する。ここで、曲面51a・51a及び導光板52のサイズ等は、導光板52に入射した光がその内部を全反射して左右方向に伝搬するように形成されている。
【0223】
光線の軌跡L6を参照しても明らかなように、照明装置50では、溶着面54の全域に亘り光線が通過しているので、この部分の光熱変換材料53の塗り具合は、照明装置50の光学特性に影響することは自明である。すなわち、レンズ51と導光板52との間の光の通過領域には、全面に亘り光熱変換材料53が塗布されている。
【0224】
この結果、光透過領域において、ある部分は光熱変換材料53が塗布され、ある部分は光熱変換材料53が塗布されていない状態がないように構成されている。そのために、必ずある程度の食み出しが発生するよう制御されている。
【0225】
ここで、溶着面54から導光板52に入射した光は、導光板52にてその内部を全反射
して左右方向に伝搬するが、導光板52の下側に設置した反射シート58により、徐々に全反射条件からずれ、導光板52の上側に向けて出射する。この光が照明光(太矢印)となる。
【0226】
尚、本実施の形態にて示した照明装置50の導光板52の形状はこれに限るものではなく、導光板52の樹脂板の形状を変更することによって、適宜設計されるものとなっている。
【0227】
(液晶表示装置のバックライトへの適用)
次に、実施の形態1〜3における複合光学部材10A・10B・20A・20B・30A・30Bを電子機器としての液晶表示装置のバックライトに適用した場合について、図15(a)(b)、図16(a)(b)に基づいて説明する。図15(a)はバックライトが組み込まれている液晶表示装置70の構成を示す斜視図であり、図15(b)はバックライトが組み込まれている液晶表示装置70の構成を示す断面図である。また、図16(a)(b)は、上記液晶表示装置の要部構成を示す斜視図である。
【0228】
電子機器としての液晶表示装置70は、図15(a)に示すように、表示パネル71、該表示パネル71の周辺に設けられた額縁72と、表示パネル71の下部に設けられた操作パネル73とを備えている。
【0229】
上記液晶表示装置70における表示パネル71の裏面側には、図15(b)に示すように、拡散シート及びプリズムシートを含む光学シート74が設置されており、その下側にバックライト80が設けられている。
【0230】
上記バックライト80は、樹脂製の平板からなる導光板82を備えていると共に、導光板82には、樹脂製の断面がU字型かつ棒状のレンズ81が溶着されている。レンズ81の両側には、その部分が開口となった反射シート88及びバックシャーシ87が設けられている。また、レンズ81の下面には、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)91、該LED91を搭載する回路基板92、回路基板92を搭載する放熱板93が設けられており、これらはバックシャーシ87にて保護されている。上記回路基板92の端部には、コネクタ94が設けられている。
【0231】
上記レンズ81と導光板82とは、いずれも光学特性が良好で強度を有するアクリルにて構成されるが、これに限るものではなく、ポリカーボネート等の光学用樹脂材料であっても構わない。
【0232】
また、照明光を発生する光源であるLED91は回路基板92上に配列して配置され、回路基板92は、放熱板93上に設置される。また、LED91からの光がレンズ81の入射端面に配置されるように、回路基板92に配置されたLED91とレンズ81との互いの位置関係が構成されている。
【0233】
上記液晶表示装置70の表示パネル71の大きさは、本実施の形態では、例えば、縦・横のサイズが、1380mm×800mmとなっている。したがって、導光板82の大きさは、横幅が1380mm、縦幅が800mmで構成されている。また、レンズ81の大きさは、長さが1380mm、厚さが2mmで構成されている。
【0234】
ただし、レンズ81の長さ1380mmは、短いサイズユニット(例えば、長さ138mmで10個のユニットのレンズを準備)に切り分け、溶着前に一列に整列させてその上から溶着させる方法等も適宜採用される。
【0235】
上記液晶表示装置70のバックライト80では、レンズ81における、導光板82とは反対側の端部からLED91等の光を導入し、レンズ81内を伝搬し、導光板82との溶着面から該導光板82の内部に伝搬し、円盤状の光を表示パネル71への照明光として照射するようになっている。
【0236】
ここで、本実施の形態の液晶表示装置70のバックライト80では、レンズ81が実施の形態3にて説明した複合光学部材30Aにおける第1光学部材31に該当し、導光板82が複合光学部材30Aにおける第2光学部材32に対応している。
【0237】
したがって、上記液晶表示装置70のバックライト80では、レンズ81と導光板82とが、前記実施の形態1〜実施の形態3で説明した手法を用いて溶着して形成されている。詳細には、図16(a)に示すように、断面がU字型で棒状のロッドレンズ型のレンズ81と矩形状の平板からなる導光板82とが溶着面84を介して溶着して形成されている。溶着面84には、光熱変換材料83が塗布されている。このように、溶着には、光エネルギーを熱エネルギーに変換する光熱変換材料を液体に含ませた光熱変換材料83が用いられる。この光熱変換材料83は、実施の形態1〜3で説明した物質と同様であるが、例えば、赤外のレーザ光を溶着面84に沿って走査して溶着させるため、赤外線吸収材料が含ませることが可能である。
【0238】
この光熱変換材料83は、レンズ81の溶着面84上に予め塗布されている。この光熱変換材料83は、レンズ81と導光板82との間の光の通過領域における全面に塗布されている。つまり、光透過領域において、ある部分は光熱変換材料83が塗布され、ある部分は光熱変換材料83が塗布されていない状態がないように構成されている。
【0239】
尚、上述した説明では、液晶表示装置70は、複合光学部材30Aを適用したものとして説明したが、必ずしもこれに限らず、例えば、実施の形態1〜3における複合光学部材10A・10B・20A・20B・30Bを適用することも可能である。
【0240】
上述した構成とするために、本実施の形態では、特に製品の量産過程において、均一に上記の状態を実現するために、製造後に、溶着面84を超えてその外側まで光熱変換材料83がはみ出す状態になるように、溶着面84上への予めの塗布量、粘度等を設定している。さらには、レーザの照射パワー、照射時間等をも設定することによって、より効果的に製造することができる。
【0241】
上記バックライト80の製造方法について説明する。
【0242】
まず、レンズ81上の溶着面84に光熱変換材料83を塗布する。この光熱変換材料83には、赤外のレーザ光を溶着面に沿って走査し、溶着させるため、赤外線吸収材料が含まれている。
【0243】
光熱変換材料83をレンズ81上の溶着面84に塗布し、塗布した後、導光板82の下部平面を溶着面84に合わすように接触させ、所定の与圧を与えながら、例えば、導光板82の上面からレーザ光を溶着面84の長手方向に走査する。走査後、光熱変換材料83が、図16(a)(b)に示すように、溶着面84に連なる他の領域である全反射面である曲面81aにはみ出すよう状態になるよう形成される。すなわち、溶着面84に連なる他の領域である曲面81aに、はみ出し部83aが痕跡として形成されている。
【0244】
はみ出し部83aの寸法rは、すなわち、溶着面84における、レンズ81と導光板82との境界線から連なる他の領域への垂れ込む長さは、後述する実施例に示すように、3mm程度であることが好ましい。さらに好ましくは、1mm程度が最適である。
【0245】
溶着する場合のレーザ光の照射は、図16(b)に示すように、溶着面84に向けて矢印aの方向に照射し、矢印bの方向に走査する。
【0246】
以上のように、本実施の形態の照明装置50は、前記記載の複合光学部材30A、又は前記記載の複合光学部材30Aの製造方法によって製造された複合光学部材30Aを備えたものである。これにより、光熱変換材料53が溶着面54に塗布されていない部分が存在するのを抑制して、色ムラ、輝度ムラが生じない良好な光学特性を有する複合光学部材30A、又は複合光学部材30Aの製造方法によって製造された複合光学部材30Aを備えている照明装置50を提供することができる。
【0247】
また、本実施の形態の液晶表示装置70は、前記記載の複合光学部材30A、又は前記記載の複合光学部材30Aの製造方法によって製造された複合光学部材30Aを備えているものである。これにより、光熱変換材料83が溶着面84に塗布されていない部分が存在するのを抑制して、色ムラ、輝度ムラが生じない良好な光学特性を有する複合光学部材30A、又は複合光学部材30Aの製造方法によって製造された複合光学部材30Aを備えている液晶表示装置70を提供することができる。
【0248】
また、本実施の形態の液晶表示装置70における複合光学部材30Aでは、後述する実施例に示すように、光熱変換材料3における溶着面4外へのはみ出し幅としてのみ出し部33a・33bの寸法rが、3mm以下であることが好ましい。これにより、複合光学部材30Aにおける色度等の光学特性の変化を実用精度範囲内に抑えることが可能となる。
【0249】
また、本実施の形態の液晶表示装置70における複合光学部材30Aでは、後述する実施例に示すように、光熱変換材料3における溶着面4外へのはみ出し幅としてのみ出し部33a・33bの寸法rが、1mm以下であることが好ましい。これにより、複合光学部材30Aにおける色度等の光学特性の変化を確実に実用精度範囲内に抑えることが可能となる。
【0250】
尚、これらはみ出し幅としてのみ出し部33a・33bの寸法rは、必ずしも複合光学部材30Aに限らず、複合光学部材10A・10B・20A・20B・30Bに適用することが可能である。
【0251】
尚、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0252】
実施の形態1〜3における複合光学部材10A・10B・20A・20B・30A・30Bを実施の形態4における液晶表示装置70のバックライト80に適用した場合について、はみ出し部83aの効果についての実験を行った。
【0253】
まず、実験では曲面81a上でのはみ出し部83aの寸法rと導光板82上での色度の変化との関係を求めた。また、はみ出し部83aの無いものを比較例1として実験を行った。色度の測定は、導光板82上に拡散板を配置すると共に、下側に反射シート88を配置した構成にて拡散板上で、レンズ81の中心から25mmの位置の色度を二次元輝度計にて測定し、はみ出し部83aの無い状態の比較例1(天面外をマスクして作成した理想品)と比較した。その結果を表1に示す。
【0254】
【表1】

【0255】
表1の結果、実施例1〜実施例3に示すように、溶着面84におけるレンズ81と導光板82との境界線から連なる他の領域への垂れ込む長さ(レンズ天面からのはみ出し部の寸法r)は、3mm以内であれば問題ないことが確認できた。尚、比較例1は溶着面84の全面に塗装し塗り残しのない理想品であるため、ここでは良品の判定となった。
【0256】
次に、曲面81a上でのはみ出し部83aの寸法rと導光板82上での輝度の変化との関係を実験により求めた。また、はみ出し部83aの無いものを比較例2として実験を行った。その結果を表2に示す。
【0257】
【表2】

【0258】
表2の結果、実施例4〜実施例6に示すように、溶着面84におけるレンズ81と導光板82との境界線から連なる他の領域への垂れ込む長さ(レンズ天面からのはみ出し部の寸法r)は、3mm以内であれば問題ないことが確認できた。
【0259】
次に、溶着面84における光熱変換材料83の塗布幅と複合光学部材30Aの光学特性との関係を実験にて調査した。
【0260】
実験では、図17(a)に示すように、天面幅全域5mmのレンズ81に対して、レンズ81の天面に塗布される光熱変換材料83の塗布幅をbとした場合の輝度低下を確認した。具体的には、レンズ81の天面に塗布される光熱変換材料83の塗布幅を表3のように変更し、光学特性として所定位置の輝度低下量を測定した。輝度の測定は、導光板82上に拡散板を配置し、下側に反射シート88を配置した構成とした上で、拡散板上で、レンズ81の中心から100mmの位置の輝度を測定した。輝度測定装置は二次元輝度計(商品名「CA−2000」、「CA−S20w」:コニカミノルタセンシング株式会社製)を使用し、レンズ81の天面幅5mmに過不足無く塗布した実施例7と塗布幅が狭い比
較例3〜5との輝度を比較した。
【0261】
結果を表3及び図17(b)に示す。
【0262】
【表3】

【0263】
この結果、塗布幅が狭い比較例3〜5は、輝度低下が大きく、画面上の輝度自体の向上や輝度ムラを低減する目的では製品としての使用が困難であることが確認できた。したがって、レンズ81と導光板82とを接合する溶着においては、光熱変換材料83はレンズ81の天面全域に亘り塗布されている必要があることが判る。しかしながら、レンズ81と導光板82との境界面で正確に光熱変換材料83を止める塗布、すなわち実施例5の理想品のような塗布を量産品で常に実現することは不可能である。したがって、隣接する領域(面)に僅かにはみ出している状態を意図的に作り、輝度低下を防止する策が有効である。
【0264】
(溶着するときのレーザ光の強度プロファイル)
ここで、本実施例を行うときに用いた溶着するときのレーザ光の強度プロファイルについて説明する。
【0265】
すなわち、本実施例では、レンズ81と導光板82とを溶着するために、細い溶着面84を長い距離効率良くレーザ照射するために、レーザ光がトップハット型の強度プロファイルとなるレーザ装置を使用した。レーザ光の強度プロファイルとしては、他には、ガウシアン分布、リング型等の強度プロファイルもあるが、レンズ81と導光板82との溶着を実現するためには、急峻な強度分布の方が好ましいためである。すなわち、トップハット型の強度分布とは、強度分布がハット型になっており、ハット型の上端つまりトップが平坦になっている強度分布をいう。
【0266】
レーザ光のスポットサイズ、出力、走査速度、照射時間等の条件は以下とした。
【0267】
スポットサイズ:φ3.5mm
出力:180W(その他の条件によっては105Wでも可)
走査速度:30mm/sec
また、レンズ81と導光板82とに与圧として与える加圧力は、
加圧力:0.3〜0.4(MPa)
とした。
【0268】
ただし、上記の条件は、これに限定されるものではなく、製品の大きさや、材料の種類等でどのようにも変更できる。また、製造装置の性能向上等も含め、条件は適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0269】
本発明は、第1光学部材と第2光学部材との接合面に光を透過して用いる複合光学部材、複合光学部材の製造方法、並びに照明機器及び電子機器に関するものであり、第1光学部材及び第2光学部材としては、例えばプリズム、レンズ、導光板等の光学部材に適用することができる。また、照明機器としてはシーリングライト等の照明装置に適用することができる。さらに、電子機器としては、例えば液晶表示装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0270】
1 第1光学部材
2 第2光学部材
3 光熱変換材料(媒体)
3a・3b はみ出し部
4 溶着面(接合面)
10A・10B 複合光学部材
20A・20B 複合光学部材
22 第2光学部材
22a 反射面
23a はみ出し部
23b・23c はみ出し部
30A・30B 複合光学部材
31 第1光学部材
32 第2光学部材
33a・33b はみ出し部
33c はみ出し部
50 照明装置(照明機器)
51 レンズ(第1光学部材)
51a 曲面
52 導光板(第2光学部材)
53 光熱変換材料(媒体)
53b はみ出し部
54 溶着面
58 反射シート
61 LED
70 液晶表示装置(電子機器)
71 表示パネル
80 バックライト
81 レンズ(第1光学部材)
82 導光板(第2光学部材)
83 光熱変換材料(媒体)
84 溶着面
91 LED

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光学部材と第2光学部材との接合面に光を透過して用いる複合光学部材において、
上記第1光学部材と第2光学部材とは、媒体を介在させて接合されていると共に、
上記媒体、又は接合時における媒体の変質物若しくは分解物は、上記接合面に連なる他の領域にはみ出していることを特徴とする複合光学部材。
【請求項2】
前記媒体は、光熱変換材料からなっており、
前記第1光学部材と第2光学部材とは、光熱変換材料の発熱によって溶着されていると共に、
上記光熱変換材料、又は溶着時の光熱変換材料の変質物若しくは分解物が、前記接合面に連なる他の領域にはみ出していることを特徴とする請求項1記載の複合光学部材。
【請求項3】
前記光熱変換材料は、赤外線吸収剤を含んで構成されていることを特徴とする請求項2記載の複合光学部材。
【請求項4】
前記媒体は、接着材料からなっており、
前記第1光学部材と第2光学部材とは、接着材料によって接着されていると共に、
上記接着材料、又は接着時における接着材料の変質物若しくは分解物が、前記接合面に連なる他の領域にはみ出していることを特徴とする請求項1記載の複合光学部材。
【請求項5】
前記媒体は、可視光硬化型接着材料からなっていることを特徴とする請求項4記載の複合光学部材。
【請求項6】
前記媒体は、紫外光硬化型接着材料からなっていることを特徴とする請求項4記載の複合光学部材。
【請求項7】
前記媒体、又は接合時における媒体の変質物若しくは分解物の接合面外へのはみ出し幅が、3mm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合光学部材。
【請求項8】
前記媒体、又は接合時における媒体の変質物若しくは分解物の接合面外へのはみ出し幅が、0.6mm以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合光学部材。
【請求項9】
前記媒体、又は接合時における媒体の変質物若しくは分解物は、前記接合面に連なる隣接面の全域にはみ出していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合光学部材。
【請求項10】
第1光学部材と第2光学部材との接合面に光を透過して用いる複合光学部材の製造方法において、
上記第1光学部材と第2光学部材とを、媒体を介在させて接合し、
トップハット型のレーザ光を用いて、第1光学部材と第2光学部材とを溶着すると共に、
上記媒体、又は接合時における媒体の変質物若しくは分解物を、上記接合面に連なる他の領域にはみ出すように形成することを特徴とする複合光学部材の製造方法。
【請求項11】
前記第1光学部材若しくは第2光学部材のいずれか一方側から、又は第1光学部材及び第2光学部材の両方側から該第1光学部材及び第2光学部材の両方に前記レーザ光を照射させると共に、
前記媒体の接合面を介して上記レーザ光を照射させることを特徴とする請求項10記載の複合光学部材の製造方法。
【請求項12】
請求項1記載の複合光学部材、又は請求項10記載の複合光学部材の製造方法によって製造された複合光学部材を備えていることを特徴とする照明機器。
【請求項13】
請求項1記載の複合光学部材、又は請求項10記載の複合光学部材の製造方法によって製造された複合光学部材を備えていることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−114007(P2013−114007A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259621(P2011−259621)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】