説明

複合型骨髄移植材、その調製法およびキット

【課題】移植者に多大の負担を与える自己移植に代わる方法に対して有用な、複合型骨髄移植材料、当該移植材料の調製方法及び調製器具を提供する。
【解決手段】本発明は、基質の表面に均一に分布した多数の始原細胞を含む複合型骨髄移植材料に関するものであり、当該移植材料は、好適には、移植の効果を大きく向上させる働きのある、抗凝固処理していない骨髄吸引液から得られる凝固材を含む。本発明はまた、骨髄吸引液を多孔性生物学的適合性移植可能基質を通過させることにより、吸引骨髄の始原細胞を選択的に基質表面に付着させることを含む骨移植材料を調製する方法を提供する。さらに、高濃度の複合型骨髄移植材料の調製に有用な無菌器具を提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
骨移植は、骨折や不癒合の治療や、関節固定を促すために広く使用されている。移植者の体の一部から採取して移植者の別の部位に移植される自原性海綿骨は、現在最も有効な骨移植である。自原性海綿骨は骨治癒反応の広がりを支持する足場、および新規軟骨または骨を形成する始原細胞となる。しかしながら、自原性骨の採取にかかる費用は大きく、また、傷、失血、苦痛をもたらす、手術およびリハビリテーションに時間が掛かる、ならびに感染症の危険があるなど、健康に与える悪影響が大きい。さらに、移植部位の容量が可能な自己移植の容量を超える場合がある。
【0002】
このため自己移植に代わる方法が開発されてきた。セラミック、生体高分子、合成同種異系移植骨、およびコラーゲン基質を含む複数の精製物質または合成物質が研究され、或いは自己移植の代用として利用されている。FDAは、局所的な骨の欠損への使用に多孔性のサンゴから得られる剛性ヒドロキシアパタイトセラミックを承認した。また、精製したコラーゲン/セラミック複合型材料が急性長骨骨折への使用に承認されている。これらの材料は、自己移植片の採取に伴う健康への悪影響を避け、また入手可能な自己移植片が限られていることに関する問題を排除するものであるが、一般に複合型材料の臨床的有効性は自己移植片に依然として劣る。また、合成移植材料も骨髄細胞の担体として使用されている。上述の複合型材料を骨格の欠損に移植すると、始原細胞が骨格組織に変化する。
【0003】
複合型移植片は、細胞懸濁液中の合成移植片と、同量またはそれよりも少ない量の骨髄吸引液を混合することによりつくられる場合がある。しかしながら、軟骨に変化する能力を有する始原細胞、骨、筋肉、繊維組織、およびその他結合組織は骨髄中にわずかしか存在しない。骨髄1ml当たりの始原細胞の数は、約100から20,000までと、患者によって大きく異なる。これは、骨髄吸引液中の有核細胞の平均値が約20,000に1つから40,000に1つであることを表している。よって、所定の容量の合成移植材をそれに匹敵する容量の新鮮な骨髄中に混合してなる複合型移植片に含まれる始原細胞の数は比較的微量である。
【0004】
このため、これまでに複合型移植片中の始原細胞の相対濃度を増大させるための技術が開発されている。この技術は、骨髄細胞の懸濁液を組織培養皿に移植する段階と、細胞を選択培地中で1または数日培養し、始原細胞の個体数を増大させる段階と、次いで細胞を組織培養皿から剥離し、個体数が増加した始原細胞を含む細胞懸濁液を調製する段階を含む。次いで合成セラミック担体をこの始原細胞を多く含む懸濁液に含浸することにより複合型移植片を作成する。残念ながら、この複合型移植片調製法には時間が掛かり過ぎる。さらに、移植者から採取した骨髄吸引液から元となる始原細胞を採取する場合、移植者は複数回の外科処置を受けなければならい。すなわち、一度骨髄採取処置を行い、後日また複合型移植片を移植する処置を行わねばならない。その結果移植者に少なくとも2回の麻酔を行うことになる。
【0005】
複合型骨移植片基質を製造するために開発された別の技術では、培養方法に利点を持ちながら、時間も掛からず複数の外科処理も必要としない。この技術では、所定の容量の基質材料とそれよりも多い骨髄吸引液を接触させることにより始原細胞を多く含む複合型基質を製造する(特許文献1および2参照)。本技術においては、選択的に始原細胞と結合する表面を有する多孔性基質材に始原細胞を含む骨髄吸引液を通過させることにより、基質内に始原細胞を保持し、それ以外の他の細胞(血液細胞および骨髄から得られるその他有核細胞など)を通過させる。こうして始原細胞を多く含む移植片基質を患者に移植する。
【0006】
しかしながら、始原細胞は非常に強固に、且つ選択的に一部基質の表面(例えば同種異系移植片)に結合するので、基質全体に均一に分布せず、骨髄吸引液と基質材料の最初の接触位置の近傍に集中する始原細胞の高濃度ポケットを複数形成する。その結果、移植された基質内における始原細胞の分布が不均一であることにより、この技術により調製された骨移植片には、移植後の骨治癒が均一に起こらないという欠点がある。加えて、基質移植後の骨治癒の進行が比較的遅い。
【特許文献1】米国特許第5824084号明細書
【特許文献2】米国特許第6049026号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、手術中に行うことが可能な、始原細胞を多く含む複合型骨髄移植材の新規調製方法が所望される。つまり、移植者からの骨髄採取と同時に行うことができ、移植材全体に一様に分布する始原細胞が得られ、且つ移植により治癒を促進する方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
多孔性で生物学的適合性の基質と凝固材とを含む複合型骨髄移植材を提供する。本複合型骨髄移植材料は始原細胞を多く含む。また、複合型骨髄移植材料の調製法を提供する。本方法は、骨髄吸引液を用意する段階、多孔性生物学的適合性移植可能基質を用意する段階、骨髄吸引液と基質を接触させて高濃度の基質を用意する段階、および高濃度の基質を機械的に混合し、始原細胞が実質的に一様に分布した複合型骨髄移植材料を生成する段階を含む。
【0009】
さらに、複合型骨髄移植材料を調製するためのキットを提供する。本キットは、基質容器、第1エンドキャップ、および第1充填用シリンジを含む。第1充填用シリンジを第1エンドキャップに取り付けることにより、第1充填用シリンジと基質容器との間で液体が流れることが可能となる。第1エンドキャップは基質容器に開放可能に取り付けられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本明細書において、5−25、または5から25と言った場合、好適には、上と下の限界値としてそれぞれ独立的に、5以上、且つ、25未満を意味する。本明細書で使用する「始原細胞」という表現は、結合組織始原細胞および/または幹細胞など、いかなる始原細胞も含む。この細胞群は多能性で、様々な組織(例えば、骨、軟骨、脂肪、腱、じん帯、筋肉、神経組織、造血組織、内皮および血管組織、ならびに肝臓)に変化可能な細胞を含む。
【0011】
本発明による多数の始原細胞を有する複合型骨髄移植材料調製方法は、一般に次に挙げる段階を含む。すなわち、骨髄吸引液を採取する第1段階、(例えば基質内に吸引液を通すことにより)骨髄吸引液を多孔性且つ生物学的適合性で移植が可能な基質に接触させ、始原細胞の個体数を増大させた高濃度基質を得る第2段階、高濃度基質を混合し、始原細胞を全体にほぼ均一に分布させる第3段階、および余分な液体中の基質を排出する第4段階を含む。好適には、当該方法は、高濃度基質に凝固材を追加する段階も含む。このようにして調製された複合型骨髄移植材料は次いで患者または移植者に移植され、骨治癒および/または骨再生を有効に促す。
【0012】
上述の方法の段階に含まれる複数の機能要素について以下に説明する。このような機能要素には、骨髄吸引液、多孔性生物学的適合性移植可能基質、および好適には凝固材が含まれる。これら機能要素について説明した後、本発明の複合型骨移植片を調製するための好適な方法および装置について説明する。後述の説明は例示のみを目的とし、限定的なものではないことに注意されたい。
【0013】
骨髄吸引液
骨髄吸引液には、血漿、有核始原細胞(始原細胞)、有核造血細胞、内皮細胞、および赤血球と血小板とを含む抹消血から得られた細胞が含まれている。骨髄吸引液が抹消血を含むため、吸引液は抗凝固薬を含むシリンジに集めることが好ましい。適当な抗凝固薬として、ヘパリン、クエン酸ナトリウム、およびEDTAを挙げることができる。好適には、本発明の方法に使用する骨髄吸引液は、移植を受ける患者(移植者)から採取する。それ程好適ではないが、骨髄吸引液を免疫学的に適合する別のドナーから採取してもよい。
【0014】
多孔性生物学的適合性移植可能基質
当該基質は、多孔性で、生物学的に適合性の、移植可能な基質からなる。好適には、基質は生物活性表面を有する。生物活性表面を有する多孔性生物学的適合性の移植可能な移植片基質材料の例としては、ヒドロキシアパタイトまたはリン酸三カルシウムなどのリン酸カルシウムを含むセラミック、ならびに脱塩または鉱化骨基質が挙げられる。その他の適切な基質材料は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリガラクチン酸、ポリカプロラクトン、酸化ポリエチレン、酸化ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどの生体高分子を含む。また、それ以外の適切な基質材料はヒアルロン酸で、架橋、生体ガラス、およびコラーゲンにより精製してもしなくてもよい。
【0015】
さらに好適には、細胞接着分子を基質基板の表面に結合させる。「細胞接着分子」という表現には、ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、血管細胞接着分子(V−CAM)、細胞間接着分子(I−CAM)、テネイシン、トロンボスポンジン、オステオネクチン、オステオポンチン、骨シャロ蛋白、コラーゲン、または基板表面に対する始原細胞の選択的接着促進効果を有する他のあらゆる分子または成分を含む。
【0016】
基質は、同一の外形寸法を有する非多孔性の固体と比較して、始原細胞の接着に使用可能な基質表面積が少なくとも2倍、好適には3倍、5倍、7倍、さらには10倍となるに十分な多孔性を有することが好ましい。粉末、果粒、繊維、それらの組み合わせ、または単一の超多孔性基板塊を使用することにより、そのような総表面積の増大を図ることができる。始原細胞が孔開口部を通って基質材料の空隙容量内へ浸透し、それにより孔内の表面積が利用されるのを促すために、基質中の孔の大きさは好適には20μmより大きく、さらに好適には50μm、100μm、さらには500μmより大きく、最も好適には1000μmより大きい。
【0017】
特に適当な基質材料には、分離した鉱化海綿骨切片、鉱化骨の粉末または果粒、脱塩海綿骨切片、脱塩骨の粉末または果粒、グアニジンHCl抽出脱塩骨基質、皮質骨または海綿骨、Interpore500(登録商標)またはInterpore200(登録商標)という名称でInterpore社より市販されているサンゴ質ヒドロキシアパタイト、Zimmer社により市販されている骨移植片の代用品Collagraft(商標)に含まれるような果粒状セラミック、Orthovita社により市販されている移植片の代用品Vitoss(商標)に含まれるような顆粒状またはブロック状セラミック、およびOrquest社によりコラーゲンからつくられているような糸状海綿が含まれる。
【0018】
好適な基質は、骨基質の微粒子と繊維状の骨材料との組み合わせとして用意される。微粒子状の骨基質は、ヒトの海綿質骨から、好適には海綿骨から(例えばヒト長骨の末端から)採取するのが好ましい。繊維状骨材料は、皮質骨から採取することが好ましい。微粒子状骨材料および繊維状骨材料のどちらも骨バンクから得ることができ、或いは随意で移植者から採取してもよい。移植者から採取した場合、骨材料は、所望の微粒子および繊維特性に適合するように、手術中手術室において周知の骨処理手段により処理される。
【0019】
用意する微粒子状の骨材料は、最適には、塊、小片または切片の形態の同種異系移植片海綿骨の粒子であり、その大きさは平均粒径にして1−15mm、好適には2−8mmの範囲である。用意する繊維状の骨材料は、最適には、同種異系移植片脱塩皮質骨繊維であり、その長さは5mm以上、さらに好適には1cm以上、2cm以上、3cm以上、さらには4cm以上で、最適には5cm以上である。繊維状の骨材料は、随意で、5mm−2cm、5mm−3cm、5mm−4cm、5mm−5cm、5mm−15cm、またはその他の範囲の、様々な長さの繊維を混合して用意してもよい。或いは、繊維状骨材料に、Osteotech社により市販されているGrafton Flex(登録商標)などの柔軟なマットを使用してもよい。
【0020】
微粒子状および繊維状骨材料を混合し、次のようにして好適な複合型基質を形成する。骨繊維、好適には上述の長さを有する脱塩皮質骨繊維を、次のような好適な配合で微粒子状骨粒子と混合する。すなわち、乾燥時重量が約225mg、それより徐々に望ましさは低下するが、200−300mg、150−375mg、100−450mg、75−500mg、或いは25−1000mgの脱塩皮質骨繊維と、約10cc(かさ容量)、それより徐々に望ましさは低下するが、8−12cc、6−14cc、4−16cc、2−18cc、或いは1−25ccの、平均粒径1−15mm、好適には2−8mmの微粒子状骨粒子とを混合する。随意で、脱塩皮質骨繊維は同じような繊維を含む柔軟なマットから取得してもよい。そのようなマットを使用する場合、存在する可能性のある毒性または高浸透圧物質をすべて排除するために、等張液でまず洗浄する。次いでマットを食塩水または他の適当な等張液に浸し、個々の骨繊維の分離を促す。分離した骨繊維を微粒子状骨材料と次のような配合で混合し、好適な複合型基質を形成する。すなわち、当初の大きさが2.5cm×5cm×約2.5mm(当初の容積約3.1cm)である1つのマットと、平均粒径1−15mm、好適には2−8mmの微粒子状骨粒子約10cc(かさ容量)、それより徐々に望ましさは低下するが、8−12cc、6−14cc、或いは4−16ccを合わせる。
【0021】
様々な大きさの移植片が必要な場合、本発明による繊維状骨対微粒子状骨の配合比(上述)に準拠する様々な大きさの複合型基質を用意することができることに注目されたい。例えば、微粒子状骨20cc(推定均一かさ密度)を骨繊維450mgと混合し、好適な複合型基質をつくることができる。
【0022】
凝固材
凝固材は、移植者(または免疫学的に適合するドナー)の静脈または動脈から採取した血液から形成される血餅でよい。さらに好適には、凝固材は、最適には移植者から採取した抗凝固処理されていない骨髄吸引液から形成される骨髄クロットである。骨髄クロットが形成される骨髄吸引液は、手術中移植片処理段階において移植者から採取することが好ましい。それができない場合、凝固材は、従来技術に周知のフィブリングルー、フィブリン凝固材、血小板ゲル、および/または血小板濃縮物でもよい。
【0023】
(抗凝固処理されていない骨髄吸引液から得た)骨髄クロットを始原細胞の濃度を高めた移植片基質に加えることにより得られる複合型骨髄移植片材料の有効性は、凝固材を加えない複合型移植片と比較して驚くほど大きく向上する。骨髄クロットのみに対し、(2倍以上の始原細胞を含み)50−70%多い有核細胞を産む同様の高濃度基質に骨髄クロットを加えた場合に得られる移植片は、高濃度基質のみの場合、および非高濃度基質と骨髄クロットを混合した場合のいずれよりも品質が優れていた。したがって、骨髄クロットを始原細胞の濃度を高めた基質に加えることにより、移植片の性能を向上させることができる。
【0024】
特定の理論のいずれにも縛られることなく、以下の理由のうちの1つまたは複数により、骨髄クロットの添加は複合型骨移植片の有効性を向上させると考えられる。第1に、骨治療が成功するまでの過程に重要な細胞のいくつかが移植片基質に付着せず、したがって移植位置に十分に集中しない(または排除されることさえある)可能性があり、その結果当該位置においては効果を示さないか、または効果が不十分である。凝固カスケード(後述)の結果としてフィブリンにフィブリノーゲンを重合させると、移植位置における治癒反応に重要な細胞の付着および移動を促す貴重な追加的基質を得ることができる。そのような細胞には、増殖して血管形成により血管を形成する重要な前駆物質である環状構造を形成する移動性内皮細胞が含まれる。
【0025】
第2の可能性は、移植位置での血餅形成の生理学的過程により、該位置に移植された骨形成原細胞の環境が向上することである。特に、抗凝固処理されていない骨髄吸引液が凝固すると、それに含まれる血小板が活性化し、血小板の脱果粒が起こる。次いで血小板の脱果粒により、そうでない場合には移植位置に存在しなくなる場合のある成長因子と骨回帰サイトカインを放出する。この段階において放出されるいくつかの重要な生物活性因子には、血小板由来成長因子(PDGF)、上皮成長因子(EGF)、繊維芽細胞成長因子(FGF)、および形質転換成長因子ベータ(TGF−beta)が含まれる。また、凝固カスケードの結果であるフィブリノーゲンから形成されるフィブリン基質により、手術直後の期間中移植位置において重要な安定性を得ることができる。さらに、移植片の移植後数日間に亘って起こる線維素溶解活動の過程により、移植片が取り込まれる初期段階において、血管由来因子の追加的供給源(例えば、周知のフィブリン分割生成物)が与えられる。移植後移植位置において得られる血管形成により、該位置での新規血管の形成が促され、それが新しく移植された始原細胞およびその他細胞の栄養源となって骨治癒および成長が起こり、よって治癒反応を促進すると考えられる。
【実施例1】
【0026】
本発明による複合型骨移植片作成方法の好適な実施例を説明する。本明細書に開示する装置部分は、好適には透明または半透明のプラスチックから作られることが好ましい。本発明の第1の好適な実施例では、図1に示すように、上述のように用意した複合型生物学的適合性移植可能基質10を基質容器内に配置する。該容器は最適にはカラム12である。(基質10は、その材料および構造によって、隙間無く充填しても、ゆるく充填してもよい。)カラム12は、特定の移植片のために必要な基質の量を収容するのに適した大きな内部容量を有するようにつくることができる。本明細書で使用する基質容量とは、特定の基質と同一の外形寸法を有する非多孔性固体の排除体積を指す。例えば、内部容量が5、10、15、20、25、30cc、またはその他であるカラムを、様々な基質容量を収容するために使用することができる。好適には、カラム12の内径は0.5−3.0cm、さらに好適には1−2cm、さらには1−1.5cmである。カラム12の好適な長さは、内径の1.5倍以上、さらに好適には2倍以上、最適には3倍以上である。ねじ込み接続、スナップ接続、またはその他任意の接続手段により、エンドキャップ14が着脱可能にカラム12に取り付けられる。
【0027】
随意で、吸引液20を通す一方で基質10の粒子を保持する効果のあるスクリーンまたは膜15をエンドキャップ14に設けることができる(図8参照)。好適には、そのような膜は、直径が少なくとも20μm、好適には30μm、さらに好適には40μmの開口を複数有する。
【0028】
(好適には抗凝固薬を含む)骨髄吸引液20は、好ましくは移植者から、周知の手段により採取する。次いで吸引液20を第1充填用シリンジ28に充填する。最初、吸引液20は始原細胞32とそれ以外の有核細胞33を、1:20,000から1:40,000の比率で含んでいる(図2A参照)。吸引液はまた、血小板、赤血球、および血清(血清に溶解または懸濁可能な分子を含む)を含んでいる。充填用シリンジ28には、エンドキャップコネクタ31と一致するように構成されたシリンジコネクタ30を取り付け、充填用シリンジ28の対応する内部容積とカラム12との間を液体が流れることができるようにする。第2充填用シリンジ29にも、同様にエンドキャップコネクタ31と一致するように構成されたシリンジコネクタ30を取り付ける。図2に示すように、第1および第2充填用シリンジ28、29をカラム12の両側で先述のコネクタを介してエンドキャップ14に取り付け、よって第1充填用シリンジ28、カラム12、および第2充填用シリンジ29の間で液体が流れることが可能になる。
【0029】
次いで第1充填用シリンジ28を押し込むと、吸引液20はカラム12内に流入して該カラム内の基質10を通過するか、または基質10と接触し、その後カラム12の反対側で第2充填用シリンジ29内に回収される。骨髄吸引液と基質とを接触させることで、基質内に吸引液を流すこと、基質を吸引液内で培養すること、または別の周知の手段により、濃度の高い基質を得ることができる。或いは、任意の周知の方法により吸引液20に基質10を接触させ、濃度の高い基質を得る。始原細胞は、有利にはおよび選択的に基質10の表面に付着し、よって基質内に保持される。一方、他の余剰細胞(血球および骨髄由来の有核細胞)は基質内を比較的自由に流れ、第2充填用シリンジ29に回収される。基質10内の始原細胞の固体数を増やすために、基質10内を流れる吸引液20の容積は基質の容積を超えることが好ましい。このようにして、吸引液容積内に存在する始原細胞は好適に基質容積内で濃縮され、濃度の高い基質を得ることができる。ここで使用する「濃度の高い」という表現は、全有核骨髄細胞に対する始原細胞の比率が、元の骨髄吸引液内よりも基質内で高いことを意味する。好適には、濃度の高い基質内における、全骨髄由来有核細胞に対する始原細胞の比率は、1:20,000以上、好適には1:10,000以上、さらに好適には1:5,000以上であり、これは始原細胞の浸透率または濃度が2倍以上、好適には4倍以上になっていることを示す。さらに好適には、濃度の高い基質における始原細胞の濃度は、骨髄クロットを含むが濃度を高めていない基質の5倍以上、好適には6倍以上、さらに好適には8倍以上である。吸引液容積:基質容積の比は、2:1以上であることが好ましく、さらに好適には3:1以上、さらには4:1以上である。例えば、基質容積15ccを有する基質を使用する場合、基質を通過させる吸引液の総容積は好適には30cc以上、さらに好適には45cc以上、さらには60cc以上とする。随意で、カラム12から第2充填用シリンジ29に最初に流入した液を廃棄し、本方法を継続してもよい。
【0030】
随意で、第1および第2充填用シリンジ28、29を交互に押し込むことにより、カラム12内の基質10に吸引液20を両方向に流してもよい。特定の基質への細胞および前駆体の結合率に応じて、吸引液20を基質10に通して流すというこの手順を少なくとも1回、好適には2回以上、さらに好適には3回以上、さらには4回以上繰り返す。随意で、元の骨髄吸引液の懸濁液及び何らかの流出液が基質10を通過した後に洗浄液を基質10に通してもよい。洗浄液は、pH範囲が7.3から7.5である、無菌で等張性の緩衝液からなることが好ましい。適当な洗浄液は、リン酸緩衝生理食塩水、ハンクス平行塩類溶液、ヒト血清、および必要最小限の媒体を含む。
【0031】
上述の手順の後、充填用シリンジ28、29をエンドキャップ14から取り外す。図3に示すように、基質10に保持された始原細胞32は、基質10内で不均一に分布している。特に、基質10内には始原細胞の濃度勾配が存在し、始原細胞32は、骨髄吸引液20がカラム12内に流入したとき最初に基質材料に接触した地点であるカラム12の端部近傍の領域に集中している(図3B参照)。その結果、基質10の中央の領域においては始原細胞32の個体数がずっと少ない(図3A参照)。これは、カラム12に流入した際に始原細胞およびその他細胞が基質表面に急速に付着するためである。したがって、始原細胞がもっと均一に分布した濃度の高い基質を製造するのに、機械的混合段階を設けることが効果的である。
【0032】
図4に示すように、カラム12からエンドキャップを取り外し、カラム12にシリンジアダプタ13を取り付けてアプリケータシリンジ50を形成する。シリンジアダプタ13は、カラム12を押し込み、そこから基質材料を放出するように構成されたプランジャを備える。このようにして、始原細胞の濃度を高めた基質材料11をカラム12から放出し、所定量の凝固材18とともに混合ボウル40に移す。凝固材18は、好適には、上述のように凝固することが可能な、移植者から採取した抗凝固処理されていない骨髄吸引液である。随意で、抗凝固処理されていない骨髄吸引液を高濃度基質と合わせてから凝固させ、混合段階中および後に凝固が起こるようにすることもできる。凝固材の容量:始原細胞の濃度を高めた基質材料容量の比率は約1:1であることが好ましく、それが無理な場合は、約または最低1:5、1:4、1:3、1:2、2:1、3:1、4:1または5:1でもよい。混合ボウル40内に入れた高濃度基質材料11と凝固材18とを機械的に混ぜ合わせ、不均質の移植可能な複合型骨移植片のほぼ一様な組成の混合物8を用意する(図5参照)。ほぼ一様な組成とは、複合型骨移植片混合物8が、繊維状および微粒子状の複合基質からなる骨材料と、個体数が増加した始原細胞と、凝固材とを含み、それらのすべてが混合物全体にほぼ均一に分布しており、よっていずれの構成要素についてもかさ濃度勾配をほとんど示さないことを意味する。このような機械的混合は、例えば、混合ボウル40内でへら具38により行うか、或いはその他任意の既知の機械的混合手段により行う。
【0033】
図5に示すように、漏斗41を(まだ複合型骨髄移植片材料8を含む)混合ボウル40に取り付け、アプリケータシリンジ50を漏斗41に取り付ける。図5の器具全体を、図6のようにほぼ上下を逆転させ、混合ボウル40の底蓋42を取り外す。随意で、ボウルの内容物を、アプリケータシリンジ50に取り付けた漏斗41に注ぐか、またはすくい集めてもよい。次いで、移植可能な複合型骨髄移植片材料8をアプリケータシリンジ50に詰める。該材料を詰めるのを補助するのにへら具38を使用することができる。随意で、図に示すように、アプリケータシリンジ内に材料を詰めるためのプランジャーの一方の端部にへら具38を装備してもよい。詰め込み後、アプリケータシリンジ50を漏斗41から取り外し、移植可能な複合型骨髄移植片材料8を患者に適用するために使用することができる。移植片材料8は、移植位置に骨治癒または骨再生を引き起こすのに効果がある。随意で、従来技術による他の機械的手段により、複合型骨髄材料を混合ボウルから患者に直接移してもよい。
【実施例2】
【0034】
本発明による複合型骨髄移植片材料は、第2の好適な実施例にしたがって次のようにして調製することもできる。複合型基質10および骨髄吸引液20(好適には抗凝固薬を含む)を別個に用意して上述のように調製し、上述の実施例1で開示したものと同様の割合で混合ボウル40内に別個に配置する。次いでへら具38またはその他周知の機械的混合手段を使用して基質と吸引液を機械的に混合し、高濃度の基質を得る。その後高濃度基質11から液状吸引液20を以下のようにして排出する。図7に示すように、漏斗41を混合ボウル40に取り付け、カラム12を漏斗41に取り付けて、カラム12の反対側の端部に単一のエンドキャップ14を接続する。またエンドキャップ14には、吸引液を通過させる一方、高濃度基質11を保持する開口を複数有する膜またはスクリーン(図示せず)を取り付ける。開口の径は、20μm以上、好適には30μm以上、さらに好適には40μm以上であることが好ましい。排水シリンジ45を既知の接続手段を介してエンドキャップ14に取り付け、それにより排水シリンジ45の対応する内部容積とカラム12の間を液体が流れるようにする。このような器具の全体図は、図7に示すように逆様になっており、底蓋42は必要であれば取り外すことができる。混合ボウル40内の液体を、カラム12を通して排水シリンジ45内に引き込む、または排出する。液体をカラム12に押し戻しても良い。上述したように、この両方向への操作を数回繰り返すことができる。その後使用済みの液体を廃棄する。
【0035】
或いは、液状吸引液20は、容器の一方の壁部(例えば混合ボウル40の底)と多孔性スクリーンまたは膜(図示せず)との間で高濃度基質を圧縮することにより、高濃度基質から排出させてもよい。当該スクリーンまたは膜は、吸引液は通過させるが容器の壁部に対して圧縮された高濃度基質を保持するように構成された開口を複数有する。次いで、膜を透過した液状吸引液を注ぎ出し、容器の壁部と多孔性膜の間で圧縮された高濃度基質を容器に残す。好適には、容器は、その出口の上流に多孔性膜を取り付けたシリンジであり、容器の壁部はシリンジプランジャである。この好適な実施例では、基質をシリンジ内で多孔性膜の方向へ押し出すことによって、吸引液を出口から放出し、一方で高濃度基質をシリンジ内に残すことにより、高濃度基質の圧縮を行う。
【0036】
こうして濃度が高まった基質11は、図4に示すように、次に所定量の凝固材18と合わせ、その後好適な実施例1で説明したものと同様の方法により処理し、移植者の骨治癒および骨再生を引き起こすのに有効な移植可能複合型骨髄移植片材料8をつくる。
【0037】
随意で、上述の両実施例のそれぞれにもう1つの段階を加えることができる。移植可能骨移植片材料8を移植する前に、一定量の抗凝固処理されていない骨髄吸引液を、凝固する前(例えば移植片材料8がアプリケータシリンジ50内にある間)の移植片材料8に(放出するなどして)加える。このようにすることで液状吸引液は移植片材料8の空隙容積に浸透し、最終的にそこで凝固する。吸引液は、移植片材料に有効に浸透するのに十分な時間に亘って液状に保持されることを確実にするために、吸引後直ちに当該材料8に注入されなければならない。この段階は、移植可能移植片材料8に、追加的な骨髄由来有核細胞(追加的始原細胞を含む)を与える。
【0038】
本発明の複合型骨髄移植片材料調製法を完了するのに必要な時間は、典型的に60分未満である。よって、本方法は骨髄ドナー/移植者が手術室にいる間に行うことができる。したがって、本発明の方法を使用することにより、複合型骨移植片を受けるために移植者が受けなければならない外科処置の回数を減らすことができる。
【実施例3】
【0039】
本発明により、外科医が本発明の方法を行う際の補助となるキットもまた提供される。図8に示すように、そのようなキットは、好適には上述の好適な実施例のいずれかによる方法を実行することができ、滅菌された、好適にはプラスチックからなる透明または半透明の、少なくとも以下に挙げる器具を備える。該器具とは、1つの基質容器(例えば基質カラム12)、既知の取り付け手段によって基質容器に開放可能に取り付けることができる少なくとも1つのエンドキャップ14、エンドキャップ14に取り付ける、充填用シリンジと液体を連通させるためのエンドキャップコネクタ31、エンドキャップ14と液体を連通させるためのシリンジコネクタ30を有する少なくとも1つの充填用シリンジ28、取り外し可能な底蓋42を有する混合ボウル40、一方の端部が混合ボウル40の開口端と一致し、他方の端部がカラム12と一致するように取り付けられる漏斗41、カラム12をアプリケータシリンジに変換するシリンジアダプタ13、およびへら具38である。最適には、キットは、上述したものと同様に構成される第2充填用シリンジ29と第2エンドキャップ14をさらに備える。随意で、キットには、骨移植片基質として使用するための多孔性生物学的適合性移植基板と、基質容器内に基質を保持するための多孔性膜15を加えてもよい。随意で、本発明のキットは、ヘパリン骨髄吸引液シリンジ、吸引針、追加の充填用シリンジ、または骨移植術に有益な他の器具をさらに備えてもよい。
【0040】
以下の治験例により本発明の様々な特徴をさらに説明する。
【0041】
治験例1
高濃度基質を有する骨移植片材料が、濃度を高めていない移植片(特許文献1および2参照)よりも高い性能を示すということは既に示した。以下の実験は、高濃度基質と吸引した骨髄クロット(ABMC)を混合した骨材料のさらなる効果を実証した。
【0042】
後部脊椎固定術を22匹のビーグル犬に施した。各個体について、3つの異なる脊椎固定位置において部分固定を行った(L1−2、L3−4,およびL5−6)。基質材料に海綿骨片を用いて3種類の複合型骨移植片を調製した。犬11匹に脱塩海綿骨片を使用し、残りの11匹に鉱化海綿骨片を使用した。3種類の複合型移植片は、高濃度基質のみ、骨髄クロットを含む濃度を高めていない基質、および骨髄クロットを含む高濃度基質であった。濃縮は、上述のように、基質材料にそれよりも多い量の吸引液を合わせることにより行った。
【0043】
結果を示す主要なパラメータとして癒合点を使用し、固定を比較した。また、CTスキャンの定量分析を使用して各位置の骨容積を評価し、各位置において機械的実験を行った。表1および表2に、それぞれ鉱化基質および脱塩基質について、各個体の移植位置における各複合型移植片の癒合点をまとめた。
【表1】

【表2】

【0044】
上記のデータは、骨髄クロット材料を骨移植基質に加えることにより、複合型移植片の効力が大きく促進されることを示す。鉱化海綿骨材料を使用したとき、高濃度基質+ABMCのグループで癒合点が最も高かった(ミーン値=1.9)。さらに、高濃度基質+ABMCのグループの癒合点は、高濃度基質のみのグループの値(ミーン値=0.6、p=0.008)より有意に高かった。高濃度基質+ABMCのグループはまた、ABMCのみのグループ(ミーン値1.2、p=0.04)よりも統計的に優れていた。この優れた効能の度合いは予期せぬものであり、驚くほど大きかった。3種類の複合型移植材料、すなわち、高濃度基質+ABMC、ABMCのみ、高濃度基質のみの全体癒合率はそれぞれ、11例のうち9(81%)、11例のうち7(63%)および11例のうち4(36%)であった。高い癒合率を有する固定位置は、高濃度基質+ABMCグループに集まっていた。高濃度基質+ABMCグループでは、固定位置11のうち4(36%)が3.0以上の評価を受けた。対照的に、高濃度基質のみのグループでは11のうちわずかに1(8.3%)、ABMCのみのグループでは11例のうち2(18%)の固定位置が同様の評価を受けただけであった。
【0045】
脱塩海綿骨基質を使用したときも、癒合点は高濃度基質+ABMCグループで最も高かった。3種類の複合型移植材料、すなわち、高濃度基質+ABMC、ABMCのみ、高濃度基質のみの全体癒合率はそれぞれ、11例のうち7(63%)、11例のうち6(54%)および11例のうち5(45%)であった。ここでも、高い癒合点を有する固定位置は高濃度基質+ABMCグループに集中していた。高濃度基質+ABMCグループでは、11のうち5つの固定位置(45%)が3.0以上の評価を受けた。対照的に、高濃度基質のみのグループでは11のうちわずかに2(18%)、ABMCのみのグループでは11例のうち3(27%)の固定位置が同様の評価を受けただけであった。ABMCと高濃度骨基質を組み合わせることにより、高濃度骨基質のみの場合と比較して、驚異的で意外な程優れた効能を示す骨移植片が得られた。
【0046】
全ての標本に対して機械的実験も行った。骨癒合が明確な降伏点を示した標本についてのみ、最大荷重、欠損に至る変形、および欠損に至るエネルギーのデータを計算した。脱塩および鉱化試料それぞれについての機械的実験データを以下の表3および4にまとめる。
【0047】
各移植片の剛性を測定し、脱塩および鉱化骨基質両方について、3種類の移植片それぞれのミーン値および標準偏差値を示すデータを表にした。鉱化骨基質では、高濃度基質のみ、ABMCのみ、および高濃度基質+ABMCの移植片はそれぞれ、6.9±2.4、7.9±2.3、および8.2±4.2を示した。脱塩骨基質では、高濃度基質のみ、ABMCのみ、および高濃度基質+ABMCの移植片はそれぞれ、9.1±6.0、9.4±6.2、および9.6±4.8を示した。
【0048】
癒合容積、癒合面積および癒合塊中の平均骨密度に関し、各複合型移植片についてCT画像分析データを取得した。鉱化および脱塩海綿骨基質それぞれについて、表3および表4に該データをまとめる。表3および4から明らかであるように、癒合容積と癒合面積の両方が、高濃度基質+ABMCグループで最も大きかった。
【表3】

【表4】

【0049】
上記に説明した本発明の実施例は好適な実施形態を構成するものであるが、添付の請求の範囲に規定される本発明の範囲から逸脱することなく、変形が可能であることは自明である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】エンドキャップを取り付けた移植片基質を含む基質容器の斜視図である。
【図2】図2は充填用シリンジを取り付けた図1の基質容器の斜視図である。図2Aは始原細胞および骨髄由来有核細胞を示す骨髄吸引液の拡大図である。
【図3】図3は始原細胞が不均一に分布した移植片基質を含む基質容器の斜視図である。図3Aは骨髄吸引液が通過した後の移植片基質の中央領域の拡大図であり、図3Bは同移植片基質の端部領域の拡大図である。
【図4】凝固材および高濃度基質材料を含む混合ボウルの斜視図である。
【図5】混合ボウル、漏斗およびアプリケータシリンジを備えるアセンブリの斜視図である。
【図6】本発明の好適な実施例を行うために上下を反転させた図5のアセンブリの斜視図である。
【図7】本発明の第2の好適な実施例を行うための、混合ボウル、漏斗、基質用容器、および排水シリンジを備えるアセンブリの斜視図である。
【図8】本発明によるキットの斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性生物学的適合性移植可能基質と凝固材とを含む、始原細胞の個体数を増加させた複合型骨髄移植片材料であって、
始原細胞の個体数の増加は、所定量の吸引骨髄を比較的少量の前記移植可能基質を通過するように流動させ、それによって吸引骨髄の始原細胞を選択的に基質の表面に付着させたことによって行われ、
前記基質は同一の外形寸法を有する非多孔性の固体と比較して、始原細胞の接着に使用可能な基質表面積が少なくとも2倍となるに十分な多孔性を有する、複合型骨髄移植片材料。
【請求項2】
さらに、機械的な混合手段を用いて凝固材を混合する、請求項1に記載の複合型骨髄移植片材料。
【請求項3】
前記始原細胞が結合組織始原細胞を含む、請求項1に記載の複合型骨髄移植片材料。
【請求項4】
前記始原細胞が幹細胞を含む、請求項1に記載の複合型骨髄移植片材料。
【請求項5】
前記幹細胞が多能性幹細胞を含む、請求項4に記載の複合型骨髄移植片材料。
【請求項6】
前記移植可能基質が微粒子状骨材料および繊維状骨材料を含む、請求項1に記載の複合型骨髄移植片材料。
【請求項7】
前記微粒子状骨材料が同種異系移植片海綿骨粒子を含む、請求項6に記載の複合型骨髄移植片材料。
【請求項8】
前記繊維状骨材料が同種異系移植片脱塩皮質骨繊維を含む、請求項6に記載の複合型骨髄移植片材料。
【請求項9】
前記基質が、セラミック材、生体ガラス、コラーゲン、鉱化骨、脱塩骨、ヒアルロン酸、および合成生体高分子材料からなるグループから選択される、請求項1に記載の複合型骨髄移植片材料。
【請求項10】
前記凝固材が骨髄吸引液から得られる骨髄クロットである、請求項1に記載の複合型骨髄移植片材料。
【請求項11】
前記凝固材が血餅である、請求項1に記載の複合型骨髄移植片材料。
【請求項12】
前記凝固材が、血小板ゲル、血小板濃縮物、フィブリン凝固材、およびフィブリングルーからなるグループから選択される、請求項1に記載の複合型骨髄移植片材料。
【請求項13】
全骨髄由来有核細胞に対する始原細胞の比率が少なくとも1:20,000である、請求項1に記載の複合型骨髄移植片材料。
【請求項14】
前記移植可能基質および前記凝固材が前記移植片材料中に容積比5:1から1:5で存在する、請求項1に記載の複合型骨髄移植片材料。
【請求項15】
前記始原細胞、前記凝固材、および前記基質のすべてが、前記複合型骨髄移植片材料中に実質的に均一に分布している、請求項1に記載の複合型骨髄移植片材料。
【請求項16】
細胞接着分子が前記移植可能基質の表面に結合している、請求項1に記載の複合型骨髄移植片材料。
【請求項17】
前記移植片材料が移植者の骨治癒を引き起こすのに有効である、請求項1に記載の複合型骨髄移植片材料。
【請求項18】
前記移植片材料が移植者の骨再生を引き起こすのに有効である、請求項1に記載の複合型骨髄移植片材料。
【請求項19】
a)骨髄吸引液を用意する段階、
b)多孔性生物学的適合性移植可能基質を用意する段階、ここで該基質は同一の外形寸法を有する非多孔性の固体と比較して、始原細胞の接着に使用可能な基質表面積が少なくとも2倍となるに十分な多孔性を有し、
c)前記骨髄吸引液と前記基質を接触させて高濃度基質を得る段階であって、高濃度基質は、所定量の吸引骨髄を比較的少量の前記移植可能基質を通過するように流動させ、それによって吸引骨髄の始原細胞を選択的に基質の表面に付着させたことによって行われる段階、および
d)前記高濃度基質を凝固材と機械的に混合し、始原細胞が前記複合型骨髄移植片材料に実質的に均一に分布した複合型骨髄移植片材料を生成する段階
を含む複合型骨髄移植片材料の調製方法。
【請求項20】
前記凝固材によって、移植位置における治癒反応に重要な細胞の付着および移動を促す貴重な追加的基質を得るとともに、移植位置での新規血管の形成が促され、それが新しく移植された始原細胞およびその他細胞の栄養源となって骨治癒反応を促進する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記移植可能基質が微粒子状骨材料および繊維状骨材料を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記微粒子状骨材料が同種異系移植片海綿骨粒子を含み、前記繊維状骨材料が脱塩皮質骨繊維を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記移植可能基質がかさ容積約1−25ccの微粒子状骨粒子と、乾燥重量約25−1000mgの骨繊維とを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記骨繊維の長さが5mm−15cmである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
抗凝固処理していない骨髄吸引液を前記高濃度基質に加える段階をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
基質容器、第1エンドキャップ、第2エンドキャップ、第1充填用シリンジ、および第2充填用シリンジを備える複合型骨髄移植片材料調製用キットであって、前記第1エンドキャップを前記基質容器に開放可能にとりつけることができ、前記第1エンドキャップと前記第1充填用シリンジは、前記第1充填用シリンジと前記基質容器の間で液体が連通するように、互いに接続するように構成されており、前記第2エンドキャップを前記基質容器に開放可能にとりつけることができ、前記第2エンドキャップと前記第2充填用シリンジは、前記第2充填用シリンジと前記基質容器の間で液体が連通するように、互いに接続するように構成されている、キット。
【請求項27】
多孔性生物学的適合性移植可能基質をさらに含む、請求項26に記載のキット。
【請求項28】
ヘパリン吸引シリンジおよび吸引針をさらに備える、請求項26に記載のキット。
【請求項29】
前記基質容器と一致することによりアプリケータシリンジを形成するように構成されたシリンジアダプタをさらに備える、請求項26に記載のキット。
【請求項30】
取り外し可能な底蓋と、漏斗とを有する混合ボウルをさらに備え、前記漏斗の一端が前記混合ボウルの開口端と、他端が前記アプリケータシリンジと一致するように構成されている、請求項29に記載のキット。
【請求項31】
一方の端にプランジャを有するへら具をさらに備え、前記プランジャは移植片材料を前記基質容器に詰めるように構成されている、請求項26に記載のキット。
【請求項32】
基質材料を前記容器内に保持するのに効果的な多孔性膜をさらに備える、請求項26に記載のキット。
【請求項33】
前記基質容器が基質カラムである、請求項26に記載のキット。
【請求項34】
基質容器、第1エンドキャップ、第1充填用シリンジ、およびへら具を備える複合型骨髄移植片材料調製用キットであって、前記第1エンドキャップを前記基質容器に開放可能にとりつけることができ、前記第1エンドキャップと前記第1充填用シリンジは、前記第1充填用シリンジと前記基質容器の間で液体が連通するように、互いに接続するように構成されており、前記へら具は一方の端にプランジャを有し、前記プランジャは移植片材料を前記基質容器に詰めるように構成されている、キット。
【請求項35】
多孔性生物学的適合性移植可能基質をさらに含む、請求項34に記載のキット。
【請求項36】
ヘパリン吸引シリンジおよび吸引針をさらに備える、請求項34に記載のキット。
【請求項37】
取り外し可能な底蓋と、漏斗とを有する混合ボウルをさらに備え、前記漏斗の一端が前記混合ボウルの開口端と、他端が前記アプリケータシリンジと一致するように構成されている、請求項34に記載のキット。
【請求項38】
基質材料を前記容器内に保持するのに効果的な多孔性膜をさらに備える、請求項34に記載のキット。
【請求項39】
多孔性生物学的適合性移植可能基質と凝固材とを含む、始原細胞の個体数を増加させた複合型骨髄移植片材料であって、
始原細胞の個体数の増加は、所定量の吸引骨髄を比較的少量の前記移植可能基質を通過するように流動させ、それによって吸引骨髄の始原細胞を選択的に基質の表面に付着させたことによって行われ、
該基質の孔の大きさは20μmより大きい、複合型骨髄移植片材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−50272(P2007−50272A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−277736(P2006−277736)
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【分割の表示】特願2002−567373(P2002−567373)の分割
【原出願日】平成14年2月26日(2002.2.26)
【出願人】(500064708)ザ クリーブランド クリニック ファウンデーション (12)
【Fターム(参考)】