説明

複合建築要素の製造方法

複合建築要素(10)の製造方法は、
a)2つの繊維強化熱可塑性カバー層(14、16)間に熱可塑性コア層(12)を備える、複合建築要素(10)を提供するステップと、
b)パネル(10)の繊維強化熱可塑性カバー層(14)に1つ以上の中断部(50)を設けるステップと、
c)繊維強化熱可塑性強化層(70)を、中断部(50)上および/または付近に配置するステップと、
d)繊維強化熱可塑性壁によって画成された凹部を有する熱可塑性建築要素が得られるように、中断部(50)に沿って位置する縁を、必要な場合には、熱可塑性強化層(70)を変形する一方で、有利には同時にコア層(12)を局所的に圧縮するステップとを含んで成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、特に熱可塑性サンドイッチ構造を有する複合パネル、梁などの複合建築要素を強化および変形する製造方法、および同タイプの複合建築要素物体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許第431669号明細書は、物体の少なくとも2つの表面の垂線が互いに対してある角度をなす、熱可塑性サンドイッチ材料から物体を製造する方法を開示している。この既知の方法は少なくとも、スタンプを利用して、少なくとも2つの表面の間の角度の仮想折り線の長さに相当する距離にわたり、熱可塑性サンドイッチ材料の表面の一方の一部を軟化させ、スタンプが熱可塑性サンドイッチ材料の上層内に部分的に押し込まれるステップと、軟化された表面がそのように角度の内側に位置するように、折り線を中心に熱可塑性材料の2つの表面を折るステップとを含む。
【0003】
この方法により、互いに対してある角度の2つの表面を有する物体が作製され、サンドイッチ材料の軟化上層の過剰材料がその角度の内側に位置するとともに、折られた状態で発泡コア内で溶融される。したがって、過剰材料は外側に盛られることが阻まれ、それは不満足な折りまたは角度をもたらすであろう。
【0004】
国際公開第01/56780号パンフレットは、パネルの開放端を閉鎖するとともに仕上げる方法および装置を記載しており、パネルは通常、長さ方向に延びるリブによって互いに接続された、互いにある距離に配置された一組の熱可塑性カバー層または表皮を備える。このタイプのパネルは、そのために所望の物質が流動し得るチャンバーを備える。この既知の方法によれば、カバー層の一方の突出部は、例えば熱溶接等によって、他方のカバー層に向かって折られるとともに接続される。
【0005】
この分野では、変形の位置が強化された、サンドイッチパネルなどの通常平坦な複合建築要素の変形方法に対する一般的な要求がある。特に互いに対してある角の表面を有し、その角がさらに強化されたこのような要素に対する要求がある。同様にこの分野で、強化された縁を有するこのような要素に対する要求がある。また特に縁に沿って、このようなパネルで挿入物を用いることを避けることも要求されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上述した種々の要求を満たす複合建築要素の製造方法、および/または利用可能な代替物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のため、本発明による複合建築要素の製造方法は、
a)少なくとも1つの繊維強化熱可塑性カバー層を有する熱可塑性コア層を備える、複合建築要素を提供するステップと、
b)要素の繊維強化熱可塑性カバー層に中断部を設けるステップと、
c)繊維強化熱可塑性強化層を、中断部上および/または付近に配置するステップと、
d)繊維強化熱可塑性壁によって少なくとも部分的に画成された凹部を有する建築要素が得られるように、少なくとも中断部に沿って位置する縁を変形するステップとを含む。
【0008】
本発明による製造方法において、パネルなどの複合建築要素が、少なくとも1つの繊維強化熱可塑性カバー層を有する熱可塑性コア層を備える出発材料として用いられる。コア層は熱可塑性発泡体または熱可塑性ハニカム構造などの、中実ではない構造を有する。複合建築要素は、コア層が2つのカバー層間に配置され、そのうちの少なくとも一方のカバー層が、繊維強化熱可塑性カバー層である、サンドイッチ構造を有することが好適である。熱可塑性サンドイッチ構造、特に現場製造されるサンドイッチ構造を有する要素を用いることがより好適である。本発明による製造方法の次にステップにおいて、中断部が繊維強化熱可塑性カバー層の一方に設けられる。カバー層の繊維強化材に局所的に中断部を設ける目的で、例えば切り込みを作製後、熱可塑性マトリクスを有する追加の繊維強化補強層が、切り込みに亘りまたはその付近に、換言すれば中断部の縁に沿って設けられる。このような追加の繊維強化補強層が、中断部が作製される位置の下方に、パネル自体に既に存在していてもよいことは理解されよう。繊維強化材内に中断部を作製する他の技術には、切断、ミリング、レーザ加工または鋸引きがある。必要な場合には、中断部付近に位置するコア層の材料を除去してもよく、従って軽量化につながる。後続のステップにおいて中断部に沿ったこれらの縁は、例えば溶融点±20%の範囲の温度の熱の印加と共に圧力を印加することにより、熱成形スタンプを利用してこれらの縁を他方のカバー層の方向に折ることにより、変形されるため、これらの縁部の下に位置する発泡体は、なお存在している場合には、圧縮されるとともに、同時に繊維強化補強層内の熱可塑性物質と、繊維強化カバー層内の熱可塑性物質と、コア層の熱可塑性物質との間の接着が生成されるとともに、凹部が形成される。通常、追加の繊維強化補強層もこのステップで形成される。凹部は、切り込みおよび/または強化層の屈曲縁により形成された、少なくとも部分的に繊維強化底および/または壁を有する。凹部の形状および深さを適宜選択することができる。凹部が他方のカバー層まで延びていることが有利である。中断部が作製された後、コア層材料が除去されていない場合には、圧縮(この場合、基本的に中実)コア層材料の非常に薄い層のみが存在する。使用される補強層の寸法は、形成される凹部に適合される。カバー層を中断部すること、および中断部に隣接する縁部を変形することが、例を参照して以下に説明するように、変形の点で多様な建築要素の作製を可能にする。
【0009】
ここで、この文脈における用語「中断部」は、繊維強化熱可塑性カバー層の繊維構造の中断部を指す。このタイプの中断部は、例えばナイフ、レーザ、カッターまたは鋸などの、任意の種類の工具により作製され得る。
【0010】
また、本明細書中における用語「複合建築要素」は、熱可塑性コア層と、少なくとも1つの繊維強化熱可塑性カバー層とで構成された物体を指す。「サンドイッチ構造」を有するこのような要素は、2つのカバー層間に配置され、したがって少なくともそのうちの一方が繊維強化熱可塑性カバー層である、熱可塑性コア層で構成された物体を規定する。他方のカバー層は、例えば金属またはグレア(Glare)などの繊維強化金属ラミネートで作製されていてもよい。「熱可塑性サンドイッチ構造」は、熱可塑性コア層と2つの繊維強化熱可塑性カバー層とで構成されている。「現場製造されるサンドイッチ構造」を有するこのような要素は、現場発泡技術により作製されたこのタイプの要素、換言すれば現場発泡されるとともに、2つの繊維強化熱可塑性カバー層間に配置されている、熱可塑性発泡層を指す。この技術はとりわけ、以下に説明するように、本発明者によるEP−A−636463から既知である。それらの有益な強度および重量特性のため、現場製造されるサンドイッチ構造を有するこのような建築要素は、航空および宇宙旅行などの輸送部門での利用に特に適している。
【0011】
なお、この明細書中の文脈における用語「パネル」は、その長さおよび幅と比べて小さい厚さを有する物体を指す。
【0012】
コア層は中実ではなく、例えば熱可塑性発泡体または熱可塑性ハニカムなどである。このハニカム構造は熱可塑性物質で作製された、基本的に平行な開放管要素を備え、それらは、例えば押し出しプロセスによって製造され、繊維強化熱可塑性層の主面に対して直角である。熱硬化性または熱可塑性接着剤を、構成要素を接続するために用いてもよい。可能な場合には、コア、強化層およびカバー層内に存在する熱可塑性物質自体が、接着剤としての役目を果たす。この目的のため、溶接技術を用いることも可能である。コア層が発泡層、特に現場発泡層であることが好ましい。
【0013】
現場発泡による発泡コアを備えるパネルの形状のサンドイッチ構造を有する建築要素を製造する方法は、すでに上述したように、例えばEP−A1−0636463から既知である。上記のサンドイッチパネルは、2つのカバー層で覆われた発泡コア層で構成されている。少なくとも一方のカバー層は、1つ以上の(繊維強化)熱可塑性材料を備える。現場発泡プロセスは様々なステップを備える。第1のステップは組み立てステップであり、その間に、ある量の適当な物理的発泡剤(膨張剤、溶剤)を含む、熱可塑性材料で作製された、少なくとも1つの膜を備えるコアウェブが、例えばコアウェブとして通常同じ熱可塑性材料で作製された2つの(繊維強化)カバー層間に配置される。次にコアウェブとカバー層との組立体が、プレス機の2つのプレスプレート間に配置される。この位置で発泡ステップが行われ、熱および圧力がプレス機を介して組立体に加えられるため、コアウェブが発泡し始めるとともに、後者とカバー層との間またはカバー層間の接続が、同時に生成される。この発泡ステップ中、温度は十分に高いレベルに達したとき、プレス機はゆっくりと開放され、その結果、2つのプレスプレート間の距離が増大する。これにより、物理的発泡剤(発泡剤、溶剤)が膨張することが可能になり、その結果コアウェブの材料が発泡し始める。この膨張は通常、制御条件下で行われる。このようにしてコアウェブが発泡されるとともに、コアウェブとカバー層との間の接続が、別のまたは追加の接着剤を必要とすることなく、1つの製造ステップで生成される。一旦発泡コアウェブの所定厚さに達すると、組立体は冷却ステップ中に冷却できる。このようにして得られた製品は、2つのカバー層により覆われるとともにそれに接続された発泡コアウェブを備える。加えて乾燥ステップも通常行われる。
【0014】
熱可塑性発泡体を備えるコア層用の膨張剤の例には、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、ニトロエタン、シクロヘキサン、エーテル、エタノール、メタノールおよびペンタン、ならびにエタノール/アセトンおよび酢酸メタノール/メチルなどの混合物がある。アセトンは好適な膨張剤である。発泡剤として、例えば、化学的膨張剤および不活性ガスを用いることも可能である。コア層用の適当な熱可塑性物質および繊維強化カバー層用のマトリックスの例には、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポルスルフォン、ポリフェニルスルフォン(PPSU)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などのポリケトン、液晶ポリマ類、ポリカーボネート(PC)、プロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)等、ならびにそれらの組み合わせがある。ポリエーテルイミドは、好適な熱可塑性物質である。ポリエーテルイミドはウルテム(Ultem)という商標名で、ゼネラルエレクトリック(General Electric)から、異なる等級で入手可能である。ガラス繊維は強化材として好ましい。もし強化リブを形成するために変形できるのであれば、金属繊維などの他の無機繊維、炭素繊維またはアラミド繊維などの有機繊維を、同様に用いることができる。上記の剛性繊維に加えて、天然繊維を用いることも可能である。繊維をマット、織物、短繊維などの形状で用いることができる。方向繊維、特に繊維方向が使用目的に合わされた一方向繊維も有利に用いることができる。コア層の材料、好適には発泡コアは随意に、上記のタイプの繊維でまたはナノ粒子で強化させてもよい。コア層の熱可塑性材料は、カバー層内の熱可塑性材料と同じであることが好ましい。しかし、異なる熱可塑性物質の組み合わせを用いることも可能である。その適当な例には、とりわけPPSU、PS、PEEKまたはPCで作製されたカバー層で覆われたPEI発泡体、PPSUまたはPCカバー層で覆われたPESまたはPPSU発泡体、およびナイロンカバー層などのポリアミドで覆われたPP発泡体がある。
【0015】
上述した例は、さらなる強化層にも同様に当てはまる。これらは例えば、積層された数層(薄板)で構成され得る固結層として、またはプリプレグとして用いてもよい。
【0016】
必要な場合には、コア層も、例えば随意に繊維強化(熱可塑性)層、セラミック層または金属層などの中間層により離間された、数層から構成されてもよい。
【0017】
現場発泡技術を、例えば、発泡コアの厚さが幅と同じ程度の大きさである、異なる断面を有する現場製造されるサンドイッチ構造を有する物体を製造するために、同様に用いることができる。パネルを鋸で各片に切るなどの動作により、そこからより小さい寸法を有する物体を製造することが可能であり、本発明による繊維強化凹部を作製することができる。
【0018】
熱可塑性コア層と、少なくとも1つの繊維強化熱可塑性カバー層とを備える組立体の他の製造方法には、とりわけ熱可塑性発泡体または熱可塑ハニカムを、繊維強化熱可塑性カバー層上に、好適には2つのこのようなカバー層間に押し出すこと、および熱可塑性発泡体を繊維強化熱可塑性カバー層に接着することがある。一般に用いる接着剤は、変形に必要な温度に耐えることができなければならない。
【0019】
本発明による製造方法の特徴は、繊維強化熱可塑性カバー層が中断部されるとともに、追加の補強層が中断部に存在するかまたは提供され、その後組立体が変形されて、追加の強化補強層および/または元のカバー層により画成される凹部を形成するという事実である。
【0020】
一態様によれば、本発明による製造方法は、輸送手段、特に航空および宇宙旅行産業用の、頑丈な軽量パネルを製造することを可能にする。この目的のため、繊維強化熱可塑性カバー層内に、多数の平行な中断部がある距離離れて、必要に応じていくつかの方向に作製され、1つ以上の補強層がその上部に貼付され、必要に応じて超音波溶接により固定され、その後ステップd)において縁が中断部に沿って変形されるため、多数の平行な凹部を有するパネルが得られる。適当な大きさにすることにより、床を作製する際に支持構造、例えばその支持梁をこれらの凹部に収容することが可能である。平坦なサンドイッチパネルが支持構造上に位置する従来の床構造と比べて、これは床パネルの厚さ分の床高さの低減をもたらす。飛行機自体に関しては、これは重量の低減だけでなく、乗客または貨物に対する高さの増加をももたらす。凹部を、凹部の形状を補完する断面形状を有し、好適には繊維強化(熱可塑性)カバー層で長手側が覆われた熱可塑性サンドイッチ構造で作製された、充填材部分で充填することも可能である。
【0021】
また、上記繊維強化凹部を強化梁、柱、筋交い、フレームなどにも設け、さねはぎ継ぎ接合技術によって他の建築要素を配置するために溝を用いることができる。
【0022】
随意に繊維強化熱可塑性補強層を、中断部上および/または付近に配置するステップのない、本発明による方法の基本ステップも、強化角または縁を有する(好適には熱可塑性)サンドイッチ構造を有する建築要素の製造に特に適している。この目的のため本発明の好適な製造方法によれば、ステップa)において、中断部が建築要素の周辺縁から所定の距離に設けられるとともに、ステップd)において、本体を有する中間要素が得られ、本体が要素の厚さ方向に延びる凹部によって縁部から離間され、凹部が、少なくとも1つの繊維強化熱可塑性層で作製された壁によって画成され、方法は縁部が本体に対して屈曲されるステップe)をさらに含む。この好適な方法において、切り込みなどの中断部は、周辺縁に平行に且つ周辺縁からある距離に有利に設けられている。角のある建築要素を製造する場合、この距離は一般に、強化縁部を備える要素を製造する場合より大きい。しかし便宜上この明細書では、同じ用語、縁部が両方の実施形態に用いられるが、縁部は角のある要素の場合本体より大きい場合がある。続いて、上述したように中断部および補強層に沿った縁が変形され、凹部を有する中間要素になる。この凹部の形状は限定されない。形状はその後角または縁を得るために作製される屈曲または折りの種類によって、部分的に決定される。出発材料の変形カバー層が既に強化および保護を提供しているため、随意の補強層の追加なしに同じ利点が達成され得る。
【0023】
次のステップにおいて縁部をその後、本体に対して屈曲するまたは折ることができる。本発明による製造方法の好適な実施形態において、凹部は他方のカバー層まで延びているとともに、この他方のカバー層は加熱されるがガラス転移温度を超えず、その後屈曲されて比較的大半径を有する屈曲を形成する。非中断部カバー層、補強層および/または切り込みに沿った中断部カバー層の縁で構成された屈曲凹部は、接続支柱として作用するのに十分に頑丈で衝撃耐性があり、そうでなければ追加の別体(金属)接続部、または充填材(埋め込み用樹脂)で充填されたサンドイッチ要素を用いて、このようなプレートなどの要素をある角度で互いに結合しなければならないことになる。これは大幅な軽量化をもたらす。角が小半径を有する屈曲のことを示す、角のある建築要素を作製するために、上記の製造方法を続けることができる。しかしこの場合、非中断部カバー層の温度は概して、屈曲ステップ中、下部カバー層をTgを超えるように局所的に加熱するために、ガラス転移温度と溶融点との間に維持されなければならない。
【0024】
作製されるべき建築要素のタイプにより、事前に形成された凹部によって非変形本体から離間された縁部を屈曲することができる。屈曲は2つの方向に行うことができる。その第1の変形例においてこのステップは、凹部の壁が互いに向かって折られるように行われる。この変形例は角のある要素、特に角が小半径を有する屈曲として形成される場合、および強化縁を有する要素が望ましい場合の両方に適している。第2の変形例において、切り込みが作製されていないカバー層の部分が、縁部で本体に向かって折られている。この第2の変形例は、強化縁を備えるサンドイッチ構造を有する建築要素が望ましい場合に特に適している。続いてこの縁部は、例えば熱可塑性または熱硬化性接着剤を用いて本体に接続される。可能な場合には、繊維強化層内の熱可塑性マトリクスを用いてもよい。最終的形状は、固結スタンプによって有利に固定される、角または縁の正確な形状も、凹部の形状、従ってスタンプのシューの形状による。
【0025】
縁部が屈曲される角度は限定されず、最終製品における所望角度により、鈍角と非常な鋭角との間で変化することができる。このようにして、サンドイッチ構造を有する建築要素を、2つの熱可塑性繊維強化カバー層で覆われた熱可塑性発泡コアから作製することができ、その2つの表面は互いにある角度にあり、要素内の角のある部分はさらに強化される。これは例えば飛行機内の貨物室内などの、荷重下の用途に対して特に有益であり得る。
【0026】
この技術を、サンドイッチ構造を有する建築要素の縁の仕上げにも用いてもよい。事実、中断部と周辺縁との間の距離(換言すれば縁部の幅)、および本体と縁部との間の角度が、角または縁が形成されるか否かを決定する。本発明による製造方法は、縁部の周辺縁が折られる一方で、発泡層が同時に局所的に圧縮されるステップも備えることが好ましい。折られたカバー層は互いに当接、または互いに重複することができる。そのため、縁部の縁または辺が得られ、これも少なくとも1つの繊維強化熱可塑性カバー層によって覆われる。この場合においても、追加の補強層を用いて縁をさらに強化することができる。本発明による製造方法のさらに好適な実施形態では、ステップe)において縁部が90°折られる。凹部の幅寸法は、建築要素のコアの厚さに実質的に等しく、縁部の中断部カバー層がサンドイッチパネルの本体の主面に対して直角であることが好適である。
【0027】
さらに他の実施形態では、ステップe)において縁部は2度回転され、換言すれば180°折られる。そして凹部は、縁部の幅(上述したような方法で仕上げ得る、凹部と周辺縁との間の距離)だけ増大した建築要素の厚さと等しいことが好ましい。そのため例えば調理室および/または貨物室の縁のために、縁が上面に見えることのない非常に頑丈な縁を作製することが可能である。この場合1つ以上の補強層を加えることも可能である。
【0028】
形状を良好に固定するために、方法は固結ステップを、好適にはステップe)の後に含み、折り縁部を固結する。
【0029】
縁の折りは、成形スタンプを用いて好適に行われ、成形スタンプは熱可塑性物質の溶融点Tm±20%の範囲の温度を有する。
【0030】
下部カバー層が同時に局所的に、概してガラス転移温度より高い温度に加熱されることが好ましい。この目的のため、Tg以上であるが、溶融点未満である温度を有する支持スタンプを用いることができる。
【0031】
比較的大きい表面寸法のため、上述の角形成技術および縁仕上げ技術を、特にサンドイッチパネルに用いることができる。
【0032】
上述の技術を、繊維強化熱可塑性層で強化された穴、または複合建築要素の縁内の局所的凹部を作製するために用いることも可能であり、穴または凹部を例えば挿入物等を設置するために用いてもよく、またはその結果挿入物および埋め込み用樹脂を省略してもよい。この目的のため、カバー層を局所的に中断部して丸穴を、好適にはいくつかの半径方向に作製される穴の最大半径に相当する半径を有する切り込みなどの中断部を作製する。(事前形成)繊維強化補強層がこの穴位置上に配置され、その後成形スタンプによって要素内に押圧される。穴は軽量化を目的とし事前穴あけされることがより好適である。必要な場合には特にこのような事前穴あけされた穴によれば、補強層の突出周辺縁が例えば超音波スポット溶接によって、完全にまたは部分的に上部カバー層に締結される。このようにして、熱可塑性挿入物を繊維強化凹部内に配置するとともに、熱可塑性接着剤の利用により繊維強化凹部壁に固定することができる。挿入物の熱可塑性物質と繊維強化凹部壁の熱可塑性物質との融合も、熱を加えることにより可能である。
【0033】
複合建築要素の縁に沿ったまたはコーナーにおける局所的凹部により、繊維強化熱可塑性カバー層が、好適には縁の方向および縁に垂直に中断部されて、用いられる繊維構造を必要な程度局所的に変形させることができる。
【0034】
補強層は、現存のカバー層に亘って延び(部分的に)、必要な場合には局所的加熱によりカバー層内に窪ませることができる。
【0035】
本発明による上述の技術によって、凹部がサンドイッチパネルの厚さ全体に亘って延びていなくても、切欠きを有する建築要素を作製することが可能であり、食器棚の側壁内の板などの補完形状または断面の物体を収容できる。
【0036】
本発明による製造方法と共に用いられる変形スタンプおよび固結スタンプは、多様な方法で設計され得る。例えば変形スタンプに、加熱手段に加えて冷却手段が設けられてもよく、変形スタンプを固結スタンプとして用いることもできる。他の可能性は、変形用加熱ブロックまたは固結用冷却ブロックに熱交換接触で結合できる成形シューを備える、マルチパート・スタンプシステムである。もちろん別体の変形および固結スタンプを用いることもできる。スタンプを、補強層を確実に保持および/または締結するように設計して、スタンプに対するその変位を防止してもよい。
【0037】
添付の図面を参照して、以下に、本発明をより詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
図に示した、建築要素として熱可塑性サンドイッチパネルを参照しつつ、本発明を説明する。本発明はパネル状建築要素に限定されないことは理解されよう。
【0039】
図1は、現場発泡コア層12を備える熱可塑性サンドイッチパネル10を示す。繊維強化熱可塑性カバー層14および16が、それぞれ発泡コア層12の上部およびその下部に設けられている。第1のステップにおいて、中断部である切り込み50が、周辺縁100と平行してカバー層14内に作製され、その後、繊維強化熱可塑性物質の強化層70(プリプレグまたは固結ラミネート)が、切り込み50がそれにより覆われるとともに、強化が最終製品内の所望の場所で終端するように位置決めされる。続いて、熱成形スタンプ18を用いて上部カバー層14を切り込み50の箇所で変形するため、切り込み50を定める縁が折られ、追加された強化層70も同時に変形されるとともに、発泡凹部102の形状に押圧される。図2を参照されたい。凹部102は壁104と底106とによって画成されており、壁104および底106は繊維強化熱可塑性物質で作製されている。凹部102の深さおよび形状は、スタンプ18のシューの形状によって決められる。成形スタンプが小さい場合には、概して平坦な予熱スタンプを用いて、強化層を予熱する必要がある場合がある。この場合サンドイッチパネル12の下側は支持スタンプ108上に位置し、支持スタンプ108の温度は、例えば小半径を有する角に対して作製されるべき形状に応じて、後続ステップでの変形を容易にするために、ガラス転移温度付近またはそれ以上に維持され、下層は局所的に変形可能でなければならないとともに、温度はガラス転移温度と溶融点との間の範囲に維持される。大半径を有する角が作製されなければならない場合には、下部カバー層の剛性を変形に用いるために、温度はTg未満に維持されなければならない。そのため、図2に示した実施形態において、上部カバー層14から下部カバー層16までサンドイッチパネル10の厚さ方向に延びる凹部102が形成されている。直線または傾斜あるいはそれら両方の組み合わせ、もしくは他の形状の凹部102の形状化壁104は、繊維強化熱可塑性層で構成されており、繊維強化熱可塑性層は、追加強化層70または切り込み50に隣接する上部カバー層14の折り縁、あるいはそれら両方で作製されている。この凹部102はサンドイッチパネル10の本体112を、縁部110から離間させる。図3に示された後続の折りステップにおいて、縁部110は、さらに角度90°折られるため、本体112および縁部110の表面の垂線は、それぞれ90°の角を囲む。形成された角は、そのため追加繊維強化熱可塑性材料で強化される。図2に示した実施形態においては、円錐変形スタンプ18が用いられている。V形状スタンプが用いられる場合には、折られたときに、熱可塑性層が空間なしに互いに直接接続される接続が達成できる。図3に示した実施形態において、空間114が必要に応じて適当な充填材で充填されるか、または変形用のいくつかの強化層が局所的に追加されてもよい。
【0040】
図4は、他の縁仕上げを図示し、縁部110が、下部カバー層16の部分が互いに接続されるように折られている。図5の場合、強化層70は必要に応じて省略されてもよいことは理解されよう。通常、構造は例えば、形成された角または縁の周囲で摺動される固結モールドにより折った後に固定されることになる。図4および図5による実施形態は、重い物体と接触する可能性がある縁の外側、例えば突出または隆起部に、非常に大きい負荷(主に衝撃)がある用途に特に適している。
【0041】
図6〜図9は、縁仕上げを作製する方法の他の実施形態を図示する。図1の状況から始めて、本体112と縁部110との間に作製された凹部102だけでなく、縁部110の周辺縁100も仕上げることができる。熱スタンプ18を用いて上部カバー層14が、中断部である切り込み50において折られるとともに、縁部成形スタンプ18'を用いて、周辺縁100において、下部カバー層16の方向に、その下方の発泡体12が圧縮される。縁部110は、その後90°折られるため、図8に図示した構成を有する最終製品が得られる。縁部110が90°ではなく180°まで折られる場合(図9参照)、非常に平坦な縁部が達成され、熱および圧力により、強化周辺縁の固結二重カバー層を出発材料の上部カバー層に接続することが可能である。
【0042】
図10(b)に図示するように、中断部である折り線50で切断されたカバー層14およびその下の発泡体12がより浅く変形される場合、局所的「薄肉部」が複合パネル10内に設けられ得る。換言すれば、サンドイッチパネル10内の厚さの相違が局所的に達成できる一方で、強化層70を用いることにより凹部が通常全体に繊維強化される。図10(c)に図示した実施形態によれば、サンドイッチパネル10は、ある深さのスロット80を表面14内に備え、スロット80内に、スロット80の幅に相当する厚さを有する他のサンドイッチパネル10を、例えば航空機用調理システム、ワゴン内のサービストレイ、食器棚内の板などで使用するために、容易に摺動させることができる。
【0043】
図11は、本体112と縁部110との間の角が、上部繊維強化熱可塑性カバー層14と、強化層70と、押圧されて中実または仮想中実コア層を形成するコア層と、下部繊維強化熱可塑性カバー層16とによって形成され、それらが比較的低Tで屈曲されて大半径を有するベントを形成した、サンドイッチパネル10を図示している。
【0044】
図12は、繊維強化円筒状穴を作製する場合の、本発明による製造方法の適用を図示する。サンドイッチパネル10において、形成される穴の中心で交差する放射状切り込み線50が作製されている。続いて星形状を有する強化層70が切り込み50上に配置される。その後、成形スタンプ18を用いて円筒状凹部102が形成され、その壁が切り込み50および強化層70の縁によって強化される。この凹部102は、導入される挿入物等用の固定穴として機能できる。
【0045】
図13は、縁に沿った、または複合パネル、好適には熱可塑性サンドイッチパネル10の角上での、上述の製造方法の適用を図示し、切り込み50が熱可塑性繊維強化カバー層14内に、繊維構造内の過剰な引っ張り応力が防止されるように角の方向に設けられている。強化層70が切り込み50上に配置され、その後、縁に沿った凹部102が、所望の形状の変形スタンプ(図示せず)を用いて作製されるとともに、固結スタンプ(図示せず)を用いて所望の形状が固結される。
【0046】
図14は、繊維強化凹部102が、2つの隆起部と、パネルの周囲に沿って位置する繊維強化凹部202との間に設けられた、装飾性熱可塑性サンドイッチパネル10を示す。
【0047】
図15は、連結梁10の形状の建築要素を示す。この梁は熱可塑性発泡体12の部分で作製され、繊維強化熱可塑性物質のカバー層14、16を両側のその上に有する。両方のカバー層14および16、ならびにその下の発泡体12において、関連するカバー層が切断されると、成形スタンプを用いるとともに追加繊維強化カバー層70の局所的介入により、凹部102が設けられるため、壁および底全体は繊維強化熱可塑性材料で構成される。その後終端側のカバー層14、16の縁が折られるため、終端側も繊維強化熱可塑性層で覆われることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】角のある熱可塑性サンドイッチパネルの製造方法の第1の実施形態を示す。
【図2】角のある熱可塑性サンドイッチパネルの製造方法の第1の実施形態を示す。
【図3】角のある熱可塑性サンドイッチパネルの製造方法の第1の実施形態を示す。
【図4】異なる縁仕上げを有する2つの他の熱可塑性サンドイッチパネルを示す。
【図5】異なる縁仕上げを有する2つの他の熱可塑性サンドイッチパネルを示す。
【図6】仕上げ縁を有する熱可塑性サンドイッチパネルを作製する、本発明による製造方法の実施形態を示す。
【図7】仕上げ縁を有する熱可塑性サンドイッチパネルを作製する、本発明による製造方法の実施形態を示す。
【図8】仕上げ縁を有する熱可塑性サンドイッチパネルを作製する、本発明による製造方法の実施形態を示す。
【図9】本発明によるサンドイッチパネルの他の縁仕上げを示す。
【図10】小さい凹部を有する複合パネルの他の製造方法を示す。
【図11】大半径を有する角のある熱可塑性サンドイッチパネルを示す。
【図12】繊維強化円筒状穴の製造方法を図式的に示す。
【図13】複合パネルの縁内の繊維強化局所凹部の製造方法を図式的に示す。
【図14】装飾的サンドイッチパネルの異なる実施形態を示す。
【図15】二重溝結合片を有する、本発明による建築構成の実施形態を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1つの繊維強化熱可塑性カバー層(14)を有する熱可塑性コア層(12)を備える、複合建築要素(10)を提供するステップと、
b)前記複合建築要素(10)の前記繊維強化熱可塑性カバー層(14)に中断部(50)を設けるステップと、
c)繊維強化熱可塑性強化層(70)を、前記中断部(50)上および/または付近に配置するステップと、
d)繊維強化熱可塑性壁によって少なくとも部分的に画成された凹部が得られるように、熱および圧力を印加することにより少なくとも前記中断部(50)に沿って位置する縁を変形するステップと、
を含んで成る複合建築要素の製造方法。
【請求項2】
ステップa)において、1つ以上の平行な中断部(50)が、互いから所定の距離で設けられる請求項1に記載の複合建築要素の製造方法。
【請求項3】
a)少なくとも1つの繊維強化熱可塑性カバー層(14)を有する熱可塑性コア層(12)を備える、複合建築要素(10)を提供するステップと、
b)前記要素(10)の前記繊維強化熱可塑性カバー層(14)に中断部(50)を設けるステップと、
c)必要な場合には、繊維強化熱可塑性強化層(70)を、前記中断部(50)上および/または付近に配置するステップと、
d)繊維強化熱可塑性壁によって少なくとも部分的に画成された凹部が得られるように、熱および圧力を印加することにより少なくとも前記中断部(50)に沿って位置する縁を変形するステップとを含み、
ステップa)において、中断部(50)が建築要素の周辺縁(100)から所定の距離に設けられるとともに、ステップd)において、本体(112)を有する中間要素が得られ、前記本体が、前記要素の厚さ方向に延びる凹部(102)によって縁部(110)から離間され、前記凹部(102)が、少なくとも繊維強化熱可塑性層で作製された壁(104、106)によって画成され、前記縁部(110)が前記本体(112)に対して屈曲されるステップe)をさらに含み、強化角または縁を有する複合建築要素(10)を作製する、請求項1または2に記載の複合建築要素の製造方法。
【請求項4】
ステップd)において、前記コア層が局所的に圧縮される請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合建築要素の製造方法。
【請求項5】
ステップe)において、前記縁部(110)が、前記本体(112)に対して90°折られる請求項3〜4のいずれか一項に記載の複合建築要素の製造方法。
【請求項6】
ステップe)において、前記縁部(110)が、前記本体(112)に対して180°折られる請求項3〜4のいずれか一項に記載の複合建築要素の製造方法。
【請求項7】
ステップe)の後に、前記縁部(110)が、前記本体(112)に接続される請求項3〜6のいずれか一項に記載の複合建築要素の製造方法。
【請求項8】
前記方法が、前記変形を固結する固結ステップをさらに含む請求項1〜7のいずれか一項に記載の複合建築要素の製造方法。
【請求項9】
変形が、0.80*Tm〜1.20*Tmの範囲の温度を有する成形スタンプ(18)を用いてステップd)で行われ、Tmが溶融点である請求項1〜8のいずれか一項に記載の複合建築要素の製造方法。
【請求項10】
前記繊維強化熱可塑性カバー層(16)の前記熱可塑性物質のガラス転移温度以上の温度を有する非中断部カバー層を支持するために、支持スタンプ(108)が用いられる請求項1〜9のいずれか一項に記載の複合建築要素の製造方法。
【請求項11】
前記方法が、建築要素の前記周辺縁(100)を仕上げる一方で、有利には同時に前記発泡層(12)を局所的に圧縮するステップも含む請求項1〜10のいずれか一項に記載の複合建築要素の製造方法。
【請求項12】
ステップb)において、好適に交差するいくつかの中断部が設けられる請求項1に記載の複合建築要素の製造方法。
【請求項13】
ステップa)において、現場製造される熱可塑性サンドイッチパネルが提供される請求項1〜12のいずれか一項に記載の複合建築要素の製造方法。
【請求項14】
凹部が、該凹部の形状を補完する形状を有する充填材部分で充填される請求項1〜13のいずれか一項に記載の複合建築要素の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2009−536116(P2009−536116A)
【公表日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−509458(P2009−509458)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【国際出願番号】PCT/NL2007/000120
【国際公開番号】WO2007/129885
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(507257068)フィッツ ホールディング ベーフェー (3)
【Fターム(参考)】