説明

複合弁

【課題】膨張弁に電磁弁と逆止弁を一体に装備した複合弁であって、組立性が良好なものを提供する。
【解決手段】複合弁10の逆止弁100は、弁本体20の戻り通路34の内周面に形成される環状の弁座35に対して戻り通路の出口34b側に配設される逆止弁本体105と、逆止弁本体から弁座に向けて突出するとともに弁座の弁口に摺動自在に挿入され、逆止弁本体を弁座に接離する方向に案内するガイド部120と、ガイド部が弁座の弁口から戻り通路の出口側に抜け出るのを阻止する抜止部122とを有し、逆止弁を戻り通路の出口から戻り通路内に押し込むことにより、ガイド部が弁座の弁口に挿入されて逆止弁が戻り通路に装着されるようにしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機等の冷凍サイクルに使用され、膨張弁に電磁弁と逆止弁を一体に装備した複合弁に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機(エアコン)の冷凍サイクルは、コンプレッサで加圧された冷媒をコンデンサに送って高圧の液冷媒に変換し、この液冷媒を膨張弁で減圧するとともに流量調節してエバポレータへ送り、エバポレータで熱交換を行なって蒸発した低圧の冷媒をコンプレッサに戻すように構成されている。
【0003】
図7は、エバポレータを2台備えたエアコンの冷凍サイクルを示すもので、コンプレッサ1で加圧された冷媒は、コンデンサ2で液化され、切換弁3により、第1のエバポレータ5a側、または第2のエバポレータ5b側へ切り換えられる。
【0004】
切換弁3とエバポレータ5a、5bの間にはそれぞれ膨張弁4a、4bが装備される。
すなわち、2台のエバポレータを使用するエアコンの冷凍サイクルにあっては、冷媒の流れを切り換えるための切換弁が必要である。この場合、配管接続箇所が多くなって作業に手間がかかるとともに、配管接続箇所からの冷媒漏れが発生し易くなるという問題がある。
【0005】
そこで、特許文献1に開示されるような、膨張弁に電磁弁と逆止弁を一体に装備した複合弁を用いてサイクルを構成することで、配管接続箇所を減らすことができる。しかしながら、この複合弁にあっては、逆止弁を弁本体に組み付けるのが容易でなく、生産性が良くないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−291679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、膨張弁に電磁弁と逆止弁を一体に装備した複合弁であって、組立性が良好なものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の複合弁は、コンデンサからの冷媒が流入する入口通路、エバポレータへ向かう冷媒を流出させる出口通路、前記入口通路と前記出口通路の間に形成されるオリフィス、及びエバポレータからコンプレッサへ戻る冷媒が通過する戻り通路を備えた弁本体と、前記オリフィスの開度を調整する弁体と、前記戻り通路を通過する冷媒の温度に基づいて前記弁体を駆動する駆動装置と、前記入口通路と前記オリフィスの間の通路を開閉する電磁弁と、前記戻り通路内に配設され、コンプレッサからエバポレータへ向かう冷媒を遮断する逆止弁とを備えた複合弁であって、前記逆止弁は、前記戻り通路の内周面に形成される環状の弁座に対して前記戻り通路の出口側に配設される逆止弁本体と、該逆止弁本体から前記弁座に向けて突出するとともに前記弁座の弁口に摺動自在に挿入され、前記逆止弁本体を前記弁座に接離する方向に案内するガイド部とを有し、前記逆止弁を前記戻り通路の出口から前記戻り通路内に押し込むことにより、前記ガイド部が前記弁座の弁口に挿入されて前記逆止弁が前記戻り通路に装着されるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、逆止弁を戻り通路内に押し込むだけで弁本体に装着することができるので、組立性が良好となり、生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の複合弁の縦断面図。
【図2】本発明の複合弁の左側面図。
【図3】本発明の複合弁の右側面図。
【図4】本発明の複合弁の要部の横断面図。
【図5】逆止弁の正面図、左側面図及び右側面図。
【図6】図1の要部の拡大図。
【図7】切換弁を用いたエアコン用冷凍サイクルを示す説明図。
【図8】複合弁を用いたエアコン用冷凍サイクルを示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明の複合弁の縦断面図、図2は図1の左側面図、図3は図2の右側面図、図4は要部の横断面図である。
全体を符号10で示す複合弁は、角柱形状の弁本体20を有する。弁本体20は、コンデンサからの冷媒が供給される入口通路30、エバポレータへ向かう冷媒が流出する出口通路32、及びエバポレータからコンプレッサへ戻る冷媒が通過する戻り通路34、エバポレータへ取り付けるためのボルトの貫通穴92、配管用フランジを固定するための有底のねじ穴90を備えている。入口通路30から導入された冷媒は、後述する電磁弁40へ送られる。
【0012】
入口通路30と出口通路32の間には弁室51が形成され、弁室51と出口通路32の境界部にはオリフィス31が形成されている。弁室51内には弁体50がオリフィス31に対向して配設されており、弁体50はサポート52により支持されている。弁室51の開口部はナット状のプラグ56及びOリング57により密封されており、プラグ56とサポート52の間にはコイルスプリング54が配設される。オリフィス31で絞られて膨張した冷媒は出口通路32からエバポレータへ送られる。
【0013】
エバポレータからコンプレッサへ戻る冷媒は、弁本体20の戻り通路34の入口34aから流入し、逆止弁室36、出口34bを通ってコンプレッサ側へ送られる。戻り通路34内には逆止弁100が装備される。
【0014】
弁本体20の上部には戻り通路34を通過する冷媒の温度に基づいて弁体50を駆動するパワーエレメント70が装備される。パワーエレメント70はダイアフラム72を挟んで形成される上部圧力室74と下部圧力室76を有し、ダイアフラム72の変位はサポート78を介して作動棒80へ伝えられる。作動棒80は弁体50を操作してオリフィス31の開度を調整する。
【0015】
図4に示すように、電磁弁40は、入口通路30と弁室51の間に設けられた電磁弁室42を有し、弁室51に連通する通路47を開閉する開閉弁体44が装備される。電磁弁40は励磁コイル45により磁力を発生する吸引子41を備え、プランジャ46を駆動する。プランジャ46が吸引子41側へ吸引されると、開閉弁体44が開いて、冷媒を弁室51側へ供給する。
【0016】
図5は、逆止弁100の詳細を示す説明図である。
逆止弁100は、プラスチック等で形成され、円盤状の逆止弁本体105と、逆止弁本体105から戻り通路34の出口34b側へ突出する3本のストッパ部110と、逆止弁本体105から戻り通路34の入口34a側へ突出する3本のガイド部120とを備え、逆止弁本体105とガイド部120との間には、弾性を有する環状のシール部材130が嵌装される。
【0017】
図6に示すように、戻り通路34の入口34aと逆止弁100が装備される逆止弁室36の間には、戻り通路34の出口34bよりも内径寸法を小さくした環状の弁座35が形成される。出口34bはストレートな通路であって、逆止弁100はこの出口34b側から逆止弁室36へ挿入される。ガイド部120は、先端の抜止部122が弁座35に接すると弾性で内方へ撓み、抜止部122が弁座35の内側の弁口を通過するとガイド部120は弾性で元の状態に復帰する。これにより、抜止部122が弁座35の第1のテーパー部35aに係合してガイド部120が戻り通路34の出口34b側へ抜け出るのが防止される。この状態において、逆止弁100は弁座35に接離する方向に移動自在となっている。
【0018】
逆止弁100が挿入された出口34bには、配管200が挿入される。配管200はOリング220を有し、配管200の先端部210は、逆止弁100のストッパ部110の先端部112に当接して逆止弁100が出口34b側に抜け出るのを防止するストッパとして機能する。このようにすることで、逆止弁100が弁座35から離脱するのをより確実に防止することができる。
【0019】
図6は、戻り通路34内の冷媒が入口34aから出口34b方向へ流れる通常状態を示している。この状態にあっては、逆止弁100は、シール部材130が弁座35から離間した位置に保たれており、冷媒は弁座35の弁口を通過することができる。冷媒が出口34bから入口34aに向けて逆流すると、逆止弁100は図6の左方向(入口34a側)へ摺動して、図1に示すように、シール部材130が弁座35の第2のテーパー部35bに押圧され、逆止弁100と弁座35との間がシールされて冷媒の逆流が阻止される。シール部材130を備えることで、冷媒の漏れを確実に防止することができる。
【0020】
本発明の複合弁は、以上のように、膨張弁、電磁弁、逆止弁を一体にまとめて構成したので、エアコンシステムへの組み付けを容易とし、また、配管の接続個所が減ずることにより、冷媒の漏れを少なくすることができる。
また、複合弁に組み込む逆止弁は、プラスチック成形により簡単かつ安価に製造することができ、加えて弁本体への装着をワンタッチで極めて容易に行うことができるので、生産性が良好である。
【0021】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、種々の改変が可能である。例えば、ストッパ部110とガイド部120の本数は3本に限定されるものではない。また、ガイド部120に抜止部122を設ける代わりに別の手段で逆止弁100の弁座35からの離脱を防ぐようにしてもよい。また、本発明の複合弁は2台以上のエバポレータを備える冷凍サイクルに適用することもできる。その他にも、本発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に種々の改変を施すことができる。
【符号の説明】
【0022】
10 複合弁
20 弁本体
30 入口通路
31 オリフィス
32 出口通路
34 戻り通路
35 弁座
36 逆止弁室
40 電磁弁
50 弁体
51 弁室
52 サポート
54 スプリング
70 パワーエレメント(駆動装置)
80 作動棒
100 逆止弁
105 逆止弁本体
110 ストッパ部
120 ガイド部
122 抜止部
130 シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサからの冷媒が流入する入口通路、エバポレータへ向かう冷媒を流出させる出口通路、前記入口通路と前記出口通路の間に形成されるオリフィス、及びエバポレータからコンプレッサへ戻る冷媒が通過する戻り通路を備えた弁本体と、前記オリフィスの開度を調整する弁体と、前記戻り通路を通過する冷媒の温度に基づいて前記弁体を駆動する駆動装置と、前記入口通路と前記オリフィスの間の通路を開閉する電磁弁と、前記戻り通路内に配設され、コンプレッサからエバポレータへ向かう冷媒を遮断する逆止弁とを備えた複合弁であって、前記逆止弁は、前記戻り通路の内周面に形成される環状の弁座に対して前記戻り通路の出口側に配設される逆止弁本体と、該逆止弁本体から前記弁座に向けて突出するとともに前記弁座の弁口に摺動自在に挿入され、前記逆止弁本体を前記弁座に接離する方向に案内するガイド部とを有し、前記逆止弁を前記戻り通路の出口から前記戻り通路内に押し込むことにより、前記ガイド部が前記弁座の弁口に挿入されて前記逆止弁が前記戻り通路に装着されるようにした複合弁。
【請求項2】
前記ガイド部が前記弁座の弁口から前記戻り通路の出口側に抜け出るのを阻止する抜止部を有する請求項1記載の複合弁。
【請求項3】
前記ガイド部が可撓性を有しており、前記逆止弁を前記戻り通路に押し込むことにより、前記ガイド部が撓んで前記抜止部が前記弁座における前記戻り通路の入口側の部位に係合する請求項2記載の複合弁。
【請求項4】
前記逆止弁に、前記弁座に当接して前記逆止弁と前記弁座との間をシールするシール部材を備える請求項1乃至3のいずれかに記載の複合弁。
【請求項5】
前記逆止弁に前記戻り通路の出口側へ向けて突出するストッパ部を設け、前記戻り通路に出口側から挿入される配管の端部に前記ストッパ部が当接することにより、前記逆止弁の開方向への移動を規制するようにした請求項1乃至4のいずれかに記載の複合弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−87965(P2012−87965A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233275(P2010−233275)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(391002166)株式会社不二工機 (451)
【Fターム(参考)】