説明

複合成形体およびその製造方法

【課題】高剛性で軽量な複合成形体を容易にしかも薄肉形態にて製造可能な方法、およびその方法により製造された複合成形体を提供する。
【解決手段】予め成形した繊維強化樹脂Aを予備成形体として金型内に配置し、該金型内に繊維強化樹脂Aに接するように発泡樹脂Bを供給し該発泡樹脂Bを繊維強化樹脂Aに接合して複合成形体を製造する方法であって、発泡樹脂Bを金型内で発泡させる際の金型のキャビティの容積に対し、該発泡樹脂Bを含む複合成形体を成形する際の金型のキャビティの容積を縮小して該複合成形体を圧縮成形することを特徴とする複合成形体の製造方法、およびその方法により製造された複合成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合成形体およびその製造方法に関し、とくに、高剛性で軽量な複合成形体を容易にしかも薄肉形態にて製造可能な方法、およびその方法により製造された複合成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
高剛性の表皮材、とくに繊維強化樹脂からなる表皮材をコア層に貼り合わせた複合成形体は、全体として軽量に構成されつつ高い剛性を持つことが知られている。このような複合成形体をより軽量化するためには、コア層を薄くするか、コア層を発泡成形する必要があると考えられる。しかし、コア層を薄くすると、通常、樹脂を所望の領域全体にわたって十分に充填することが困難になり、また、発泡成形を併用すると発泡倍率も小さくなることから成形が困難になるおそれがある。
【0003】
発泡成形そのものについては、各種化学発泡剤等を用いる方法が知られており、近年、超臨界流体を利用する方法も開発されている(例えば、特許文献1)。しかし、複合成形体の製造に関して発泡成形を効果的に組み合わせた方法は、未だ十分に開発されているとは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2001−508718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明の課題は、上記のような実情に鑑み、とくに、高剛性で軽量な複合成形体を容易にしかも薄肉形態にて製造可能な方法、およびその方法により製造された複合成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る複合成形体の製造方法は、予め成形した繊維強化樹脂Aを予備成形体として金型内に配置し、該金型内に前記繊維強化樹脂Aに接するように発泡樹脂Bを供給し該発泡樹脂Bを前記繊維強化樹脂Aに接合して複合成形体を製造する方法であって、前記発泡樹脂Bを金型内で発泡させる際の金型のキャビティの容積に対し、該発泡樹脂Bを含む複合成形体を成形する際の金型のキャビティの容積を縮小して該複合成形体を圧縮成形することを特徴とする方法からなる。
【0007】
このような本発明に係る複合成形体の製造方法においては、予め成形した繊維強化樹脂Aを前述の高剛性の表皮材として使用でき、これを予備成形体として金型内に配置した後、金型のキャビティ内に発泡樹脂Bを供給する。この発泡樹脂Bは複合成形体のコア層を構成する樹脂として供給されるものであるが、射出等によって単に発泡樹脂Bを所定容積のキャビティ内に供給するだけでは、射出圧が直接コア層にかかって、発泡倍率としては高々5%程度しかとれず、より高い発泡倍率に基づく十分な軽量化効果が得られない。本発明では、より大きな容積のキャビティを形成しておき、そこに発泡樹脂Bを供給して十分に高い発泡倍率を確保し、発泡樹脂Bの発泡後にキャビティの容積を縮小することにより、最終的に所望の発泡倍率として高い軽量化を実現するようにしている。すなわち、発泡樹脂Bを金型内で発泡させる際の金型のキャビティの容積に対し、発泡樹脂Bを含む複合成形体を成形する際の金型のキャビティの容積を縮小して該複合成形体を圧縮成形するようにしている。したがって、所望の高い発泡倍率のコア層と、高剛性の表皮材としての繊維強化樹脂Aとからなる、軽量でかつ高剛性の複合成形体が確実に得られることになる。しかも、発泡樹脂Bのキャビティ内への供給の際には、十分に大きなキャビティ容積とされるため、コア層を薄くしてそれに相当する薄い容積部分に樹脂を供給する場合の樹脂充填の困難性の問題は発生せず、発泡樹脂Bの供給、発泡後に圧縮成形されるので、複合成形体成形後にはコア層を十分に薄くすることが可能であり、軽量、高剛性でしかも薄肉の複合成形体を容易に製造できる。
【0008】
上記本発明に係る複合成形体の製造方法においては、上記金型を予め開いた状態で発泡樹脂Bを金型内に供給した後、上記圧縮成形を行うようにすることができる。
【0009】
また、上記金型内に可動コアを設けておき、発泡樹脂Bを金型内に供給した後、可動コアを金型のキャビティの容積を拡大する方向に動作させて発泡樹脂Bの発泡のための容積を拡大し、しかる後に、上記圧縮成形を行うようにすることもできる。いずれの方法にあっても、発泡樹脂Bの発泡の際には十分に大きなキャビティ容積が確保され、発泡後に、複合成形体のコア層として所望の発泡倍率となるように圧縮成形が行われる。
【0010】
また、本発明においては、上記繊維強化樹脂Aの片面側に上記発泡樹脂Bを供給し、繊維強化樹脂Aの片面側にコア層としての発泡樹脂Bの層が存在する形態の複合成形体を製造することができる。あるいは、上記金型内に少なくとも2つの繊維強化樹脂Aを間隔を持たせて対向配置し、該繊維強化樹脂A間に上記発泡樹脂Bを供給し、繊維強化樹脂A間にコア層としての発泡樹脂Bの層が存在するサンドイッチ形態の複合成形体を製造することもできる。いずれの形態とするかは、成形製品の要求仕様に応じて決めればよい。
【0011】
本発明において、上記発泡樹脂Bの発泡の方法については特に限定されず、任意の方法の採用が可能である。例えば、上記発泡樹脂Bの発泡を、化学発泡剤、発泡ビーズ、超臨界流体から選ばれるいずれか1つを用いて行うことができる。ここで、超臨界流体を用いた発泡とは、発泡剤として二酸化炭素や窒素を用い、超臨界流体(温度と圧力を臨界点以上に高める)とすると、液体並みの高密度と気体並みの拡散性、低粘度といった性質となり、溶融樹脂への溶解度が大きくなるので、これらの超臨界流体を直接溶融樹脂へ供給し溶解させて発泡させる方法である。約20年ほど前にMIT(マサチューセッツ工科大学)で開発された方法である。この方法が、本発明における発泡樹脂Bの発泡でも適用できる。
【0012】
また、本発明において、上記発泡樹脂Bの最終発泡倍率(つまり、成形製品としての複合成形体製造後の最終発泡倍率)としては、50%以上とすることが好ましい。このような高い発泡倍率とすることにより、複合成形体として優れた軽量化効果が得られる。
【0013】
また、本発明において、予備成形体としての繊維強化樹脂Aの形態は特に限定されないが、最終的に成形される複合成形体の表皮材を形成するものであり、所定の外郭位置に精度よく配置されることが望まれることから、成形のしやすさ、外形形状の寸法精度等の面を考慮すれば、繊維強化樹脂Aが板状またはシート状の成形体またはプリプレグからなることが好ましい。
【0014】
また、本発明において、上記繊維強化樹脂Aが、繊維長(平均繊維長)1mm以上の強化繊維を含む繊維強化樹脂からなることが好ましい。繊維長が短すぎると、高剛性の表皮材としての機能が求められる繊維強化樹脂Aの機体特性が小さくなるおそれがある。また、繊維強化樹脂Aの良好な成形性を確保するためには、強化繊維の平均繊維長が100mm以下であることが好ましい場合もある。平均繊維長が長すぎると、連続繊維に近くなるので、強化繊維基材の賦形性、繊維強化樹脂Aの成形性が低下する場合がある。
【0015】
また、上記繊維強化樹脂Aの強化繊維が一方向に配向されていることも好ましい。このように強化繊維が配向されていると、より少ない強化繊維量で効率よく特定方向の機械特性を向上できるので、成形体の補強方向が特定の方向に定まっている場合には、とくにこのような形態が望ましい。
【0016】
また、本発明では、上記繊維強化樹脂Aの強化繊維の種類としては特に限定されず、炭素繊維やガラス繊維、アラミド繊維など、さらにはこれらのいずれかを組み合わせた混在形態の強化繊維の使用が可能であるが、より高い機械特性を実現するためには、上記繊維強化樹脂Aの強化繊維が炭素繊維を含むことが好ましい。
【0017】
また、本発明では、上記繊維強化樹脂Aのマトリックス樹脂としても特に限定されないが、該マトリックス樹脂が熱可塑性樹脂からなる場合、良好な成形性、とくに射出成形性が得られる。使用可能な熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド等を例示できる。
【0018】
また、本発明において、上記発泡樹脂Bの金型内への供給の方法は特に限定されないが、発泡樹脂Bが射出により金型内に供給されることが好ましい。つまり、複合成形体が射出成形により製造されることが好ましい。射出成形により、容易に大量生産等に対応でき、かつ、優れた成形性が得られる。
【0019】
また、上記発泡樹脂Bについても、成形性を考慮すれば熱可塑性樹脂からなることが好ましい。発泡樹脂Bを構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ABS樹脂等を例示できる。ただし、発泡の手法については、前述の如く任意の方法を適宜採用できる。また、発泡樹脂Bも強化繊維(例えば、短繊維の強化繊維)を含むことができ、それによって複合成形体全体の機械特性の向上をはかることができる。さらに、強化繊維を含む場合、該発泡樹脂Bの強化繊維としても炭素繊維を含むことが好ましい。炭素繊維を含むことにより、コア層部分、ひいては、複合成形体全体の機械特性の向上をはかることができる。
【0020】
また、本発明において、複合成形体のサイズ、例えば肉厚等についてはとくに限定されないが、本発明では、薄肉でも良好な成形性が得られる利点がある。したがって、上記繊維強化樹脂Aの肉厚が1mm以下で、複合成形体の肉厚が3mm以下である場合にも、十分に良好に成形できる。
【0021】
本発明に係る複合成形体は、上記のような方法により製造されたものであり、発泡樹脂Bの発泡倍率が50%以上であることを特徴とするものからなる。すなわち、コア層としての発泡樹脂B層が十分に軽量であり、その発泡樹脂B層が表皮材としての繊維強化樹脂Aで補強された、全体として軽量で高剛性な複合成形体である。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る複合成形体およびその製造方法によれば、十分に大きな容積のキャビティ内で発泡樹脂Bを発泡させた後、キャビティ容積を縮小して圧縮成形するようにしたので、発泡樹脂Bの良好な充満状態、高い発泡倍率を確保しつつ、最終成形体としての所望の高い発泡倍率を達成することができ、表皮材としての高剛性の繊維強化樹脂Aを有し、全体として剛性が高められつつ軽量化も実現された複合成形体を、優れた成形性をもって容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施態様に係る複合成形体の製造方法における各ステップを示す金型の概略断面図である。
【図2】本発明の別の実施態様に係る複合成形体の製造方法における各ステップを示す金型の概略断面図である。
【図3】本発明のさらに別の実施態様に係る複合成形体の製造方法における各ステップを示す金型の概略断面図である。
【図4】本発明において繊維強化樹脂Aの強化繊維基材をカード装置によって作製する場合の例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明のより具体的な実施の形態について説明する。
本発明に係る複合成形体の製造方法においては、予め成形した繊維強化樹脂Aを予備成形体として金型内に配置し、該金型内に繊維強化樹脂Aに接するように発泡樹脂Bを供給し該発泡樹脂Bを繊維強化樹脂Aに接合して複合成形体を製造する。まず、予め成形する繊維強化樹脂Aの成形例について、とくに、繊維強化樹脂Aの強化繊維基材をカード装置によって作製する場合の例について、図4を参照しながら説明する。
【0025】
図4に示すカード装置41は、シリンダーロール42と、その外周面に近接して上流側に設けられたテイカインロール43と、テイカインロール43とは反対側の下流側においてシリンダーロール42の外周面に近接して設けられたドッファーロール44と、テイカインロール43とドッファーロール44との間においてシリンダーロール42の外周面に近接して設けられた複数のワーカーロール45と、ワーカーロール45に近接して設けられたストリッパーロール46と、テイカインロール43と近接して設けられたフィードロール47及びベルトコンベアー48とから主として構成されている。
【0026】
ベルトコンベアー48上に、本発明における繊維強化樹脂Aの強化繊維として、例えば重量平均繊維長50mmにカットした不連続な炭素繊維49の集合体が供給され、不連続な炭素繊維49はフィードロール47の外周面、次いでテイカインロール43の外周面を介してシリンダーロール42の外周面上に導入される。この段階までは、不連続な炭素繊維29は綿状の形態になっている。シリンダーロール42の外周面上に導入された綿状の炭素繊維の一部は、各ワーカーロール45の外周面上に巻き付くが、この炭素繊維は各ストリッパーロール46によって剥ぎ取られ再びシリンダーロール42の外周面上に戻される。フィードロール47、テイカインロール43、シリンダーロール42、ワーカーロール45、ストリッパーロール46のそれぞれのロールの外周面上には多数の針、突起が立った状態で存在しており、上記工程で炭素繊維が針の作用により単繊維状に開繊されると同時に大半の炭素繊維の配向方向が特定の方向、つまり、シリンダーロール42の回転方向に揃えられる。かかる過程を経て開繊され繊維の配向が進められた炭素繊維は、炭素繊維集合体の一形態であるシート状のウエブ50としてドッファーロール44の外周面上に移動する。さらに、ウエブ50を、その幅を所定幅まで狭めながら引き取ることにより、不連続な炭素繊維からなるシート状の基材が形成される。
【0027】
上記のようなカーディングにおいて、不連続な炭素繊維49の集合体は、炭素繊維のみから構成されていてもよいが、不連続な有機繊維、とくに熱可塑性樹脂からなる繊維を混合してカーディングを行うこともできる。特に、カーディングする際に熱可塑性樹脂繊維を添加することは、カーディングでの炭素繊維の破断を防ぐことができるので好ましい。炭素繊維は剛直で脆いため、絡まりにくく折れやすい。そのため、炭素繊維だけからなる炭素繊維集合体では、カーディング中に、炭素繊維が切れやすかったり、炭素繊維が脱落しやすいという問題がある。そこで、柔軟で折れにくく、絡みやすい熱可塑性樹脂繊維を含むことにより、炭素繊維が切れにくく、炭素繊維が脱落しにくい炭素繊維集合体を形成することができる。また、このような熱可塑性樹脂繊維を混合してカーディングを行い、カーディング後に、熱可塑性樹脂繊維の少なくとも一部を溶融させた後、プレスを施すようにすることも好ましい。すなわち、適度に少ない量の熱可塑性樹脂繊維を混合しておき、炭素繊維に所定のカーディング処理、例えば、一部の炭素繊維が特定の方向に配向されるようにカーディング処理を施した状態で熱可塑性樹脂繊維の少なくとも一部を溶融させることにより、熱可塑性樹脂繊維に所定のシート状基材の形態を保持するためのバインダーの役目を担わせ、その状態でプレスを施すことにより、保持された形態を熱可塑性樹脂繊維を介して適度に固定することも好ましい。
【0028】
上記のように炭素繊維集合体中に熱可塑性樹脂繊維を含む場合には、炭素繊維集合体中の炭素繊維の含有率は、好ましくは50〜95質量%、より好ましくは70〜95質量%である。炭素繊維の割合が低いと炭素繊維強化プラスチックとしたときに高い機械特性を得ることが困難となり、逆に、熱可塑性樹脂繊維の割合が低すぎると、上記の炭素繊維集合体に熱可塑性樹脂繊維を混合させた際の熱可塑性樹脂繊維の役割が期待できないか、小さくなる。
【0029】
また、上述の熱可塑性樹脂繊維による、絡み合いの効果をより高めるためには、熱可塑性樹脂繊維に捲縮を付与しておくことが好ましい。捲縮の程度は、特に限定されないが、一般的には捲縮数5〜25山/25mm程度、捲縮率3〜30%程度の熱可塑性樹脂繊維を用いることができる。
【0030】
かかる熱可塑性樹脂繊維の材料としては特に制限は無く、炭素繊維強化樹脂の機械特性を大きく低下させない範囲で適宜選択することができる。例示するなら、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、芳香族ポリアミド等の樹脂を紡糸して得られた繊維を用いることができる。かかる熱可塑性樹脂繊維の材料は、炭素繊維強化樹脂のマトリックス樹脂との組み合わせにより適宜選択することが好ましい。特に、マトリックス樹脂と同じ樹脂、あるいはマトリックス樹脂と相溶性のある樹脂、マトリックス樹脂と接着性の高い樹脂を用いてなる熱可塑性樹脂繊維は、炭素繊維強化樹脂の機械特性を低下させないので好ましい
【0031】
また、上記のように熱可塑性樹脂繊維を炭素繊維に混合してカーディングを行い、カーディング後に、熱可塑性樹脂繊維の少なくとも一部を溶融させた後、プレスを施す場合のプレスの方法としては、とくに限定されず、例えば、平板で挟んで加圧する通常のプレス機や一対のロールで挟んで加圧するカレンダーロール等を用いることができる。
【0032】
なお、上記はカーディング処理を施して、炭素繊維基材を作製する手法を例示したが、カーディング処理を施さずに、単に抄紙により炭素繊維基材を作製することも可能である。例えば、図4におけるベルトコンベアー48上に、重量平均繊維長50mmにカットした不連続な炭素繊維49の集合体を供給し、それを例えば上述のようなカレンダーロール等を用いて加圧することにより、シート状の炭素繊維基材を作製することも可能である。この場合、上記同様、炭素繊維集合体中に熱可塑性樹脂繊維を混合し、それに、シート状の基材形態を保持させるためのバインダーの機能を持たせることが好ましい。
【0033】
このように作成された強化繊維基材を用いて、その基材に所定のマトリックス樹脂を含浸させ、硬化させることにより、本発明の繊維強化樹脂Aが予め成形される。このように予め成形された繊維強化樹脂Aが予備成形体として金型内の所定の位置に配置され、本発明における発泡樹脂Bの供給、発泡、圧縮成形が、例えば次のように行われる。以下に、本発明におけるこれらの成形動作について、図1〜図3を参照して例示する。
【0034】
図1は、本発明の一実施態様に係る複合成形体の製造方法における各ステップを示している。図1(A)に示すように、たとえば上述の如く予め成形された板状の繊維強化樹脂A(1)が、互いに対向配置される型2、3からなる金型4のキャビティ5内に配置される。このとき、本実施態様では、金型4はある程度型開きされた状態にあり、キャビティ5は、その容積が十分に大きくなるように形成されている。換言すれば、次に述べる発泡樹脂Bを含む複合成形体を成形する際の金型のキャビティの縮小された容積に比べ、十分に大きなキャビティ容積が確保されている。
【0035】
この状態にて、図1(B)に示すように、例えば一方の型3内に形成された樹脂供給路6を通して、キャビティ5内に溶融した発泡樹脂B(7)(発泡熱可塑性樹脂B)が繊維強化樹脂A(1)の片面に接合可能な部位に射出により注入、供給される。このとき、キャビティ5の容積は十分に拡大されているので、発泡樹脂B(7)の発泡倍率がキャビティ5内で増大される場合にも、十分に大きな発泡倍率が達成される。また、キャビティ5の容積は十分に拡大されているので、供給されてくる発泡樹脂B(7)は、容易に十分に広い領域にわたって充満していくが、次の圧縮成形ステップでの樹脂の広がりを考慮して、図1(B)に示すステップでは、キャビティ5内の全体にわたって発泡樹脂B(7)を充満させる必要はない。
【0036】
次に、図1(C)に示すように、型2、3同士が、例えば互いのインロー構造を介して精度よく型締めされ、上記キャビティ5の容積が縮小される。このキャビティ容積の縮小により、金型4のキャビティ5の内部が圧縮され、発泡樹脂B(7)が押し広げられて容積が縮小されたキャビティ5内に充満されるとともに、発泡樹脂B(7)自体も押圧されて圧縮成形され、その発泡倍率は若干低下する。しかしその前のステップで十分に高い発泡倍率で発泡されているので、圧縮成形後の発泡樹脂B(7)の発泡倍率は十分に高く維持され、例えば成形後にも50%以上の発泡倍率が容易に確保される。むしろ、この圧縮成形により、最終成形品としての発泡樹脂B(7)の発泡倍率が目標とする発泡倍率に制御されることになる。全体を冷却後、コア層としての発泡樹脂B(7)と、補強用表皮材としての繊維強化樹脂A(1)とが一体的に接合された成形品としての複合成形体8が脱型される。このように、上記圧縮成形を介して、全体として高剛性で軽量な複合成形体8が得られる。
【0037】
なお、発泡樹脂B(7)の発泡方法については、前述の如く、任意の方法の適用が可能であり、例えば、上記発泡樹脂B(7)の発泡を、化学発泡剤、発泡ビーズ、超臨界流体から選ばれるいずれか1つを用いて行うことができる。より具体的には、発泡樹脂B(7)として、熱可塑性樹脂に化学発泡剤や発泡ビーズをブレンドしたもの、あるいは超臨界流体をシリンダー内で注入したものを用いればよい。
【0038】
図2は、本発明の別の実施態様に係る複合成形体の製造方法における各ステップを示している。図2(A)に示すように、本実施態様においては、補強用表皮材として2つの繊維強化樹脂A(11)、(12)が、間隔を持たせて、型13、14からなる金型15のキャビティ16内に対向配置される。また、本実施態様においては、キャビティ16内に、キャビティ16内を移動可能な可動コア17が設けられており、可動コア17は、一方の型13に設けられた駆動手段18(例えば、ボールスクリューからなる駆動手段)により、キャビティ16内を両方向に強制移動できるようになっている。
【0039】
この状態にて、図2(B)に示すように、樹脂供給手段19を介して、キャビティ16内に溶融した発泡樹脂B(20)(発泡熱可塑性樹脂B)が繊維強化樹脂A(11)、(12)間に射出により注入、供給される。このとき、キャビティ16の容積は十分に拡大されているので、発泡樹脂B(20)の発泡倍率がキャビティ16内で増大される場合にも、十分に大きな発泡倍率が達成される。また、キャビティ16の容積は十分に拡大されているので、供給されてくる発泡樹脂B(20)は、容易に十分に広い領域にわたって充満していくが、次の圧縮成形ステップでの樹脂の広がりを考慮して、図2(B)に示すステップでは、キャビティ16内の全体にわたって発泡樹脂B(20)を充満させる必要はない。
【0040】
次に、図2(C)に示すように、可動コア17が駆動手段18によりキャビティ16内で強制的に移動され、キャビティ16の容積が縮小される。このキャビティ容積の縮小により、発泡樹脂B(20)が押し広げられて容積が縮小されたキャビティ16内に充満されるとともに、発泡樹脂B(20)自体も押圧されて圧縮成形され、その発泡倍率は若干低下する。しかしその前のステップで十分に高い発泡倍率で発泡されているので、圧縮成形後の発泡樹脂B(20)の発泡倍率は十分に高く維持され、例えば成形後にも50%以上の発泡倍率が容易に確保される。むしろ、この圧縮成形により、最終成形品としての発泡樹脂B(20)の発泡倍率が目標とする発泡倍率に精度よく制御されることになる。全体を冷却後、コア層としての発泡樹脂B(20)と、補強用表皮材としての繊維強化樹脂A(11)、(12)とが一体的に接合された成形品としての複合成形体21が脱型される。このように、上記圧縮成形を介して、全体として高剛性で軽量なサンドイッチ形態の複合成形体21が得られる。
【0041】
図3は、本発明のさらに別の実施態様に係る複合成形体の製造方法における各ステップを示している。図3(A)に示すように、上記図2(A)に示したのと同様に補強用表皮材として2つの繊維強化樹脂A(11)、(12)が、間隔を持たせてキャビティ内に対向配置されるが、このとき本実施態様では、可動コア17の移動により、比較的容積の小さいキャビティ31が形成されている。
【0042】
そして、図3(B)に示すように、上記キャビティ31内に、樹脂供給手段19を介して、キャビティ31内に溶融した発泡樹脂B(31)(発泡熱可塑性樹脂B)が繊維強化樹脂A(11)、(12)間に射出により注入、供給される。本実施態様では、この発泡樹脂B(31)供給時には、発泡樹脂B(31)は未だ十分に大きな発泡倍率で発泡されていない状態にある。
【0043】
次に、図3(C)に示すように、可動コア17が駆動手段18によりキャビティ31内で強制的に移動され(コアバックされ)、キャビティ31の容積が拡大される。このキャビティ容積の拡大により、キャビティ31内に注入、供給されていた発泡樹脂B(31)の膨張に対しても十分に大きな容積が確保されることになるので、発泡樹脂B(20)は十分に大きな発泡倍率にてキャビティ31内で発泡できることになる。
【0044】
そして次に、図3(D)に示すように、可動コア17が駆動手段18によりキャビティ31内で強制的に移動され、キャビティ31の容積が縮小される。このキャビティ容積の縮小により、発泡樹脂B(32)が押し広げられて容積が縮小されたキャビティ31内に充満されるとともに、発泡樹脂B(32)自体も押圧されて圧縮成形され、その発泡倍率は若干低下する。しかしその前のステップで十分に高い発泡倍率で発泡されているので、圧縮成形後の発泡樹脂B(32)の発泡倍率は十分に高く維持され、例えば成形後にも50%以上の発泡倍率が容易に確保される。むしろ、この圧縮成形により、最終成形品としての発泡樹脂B(32)の発泡倍率が目標とする発泡倍率に精度よく制御されることになる。全体を冷却後、コア層としての発泡樹脂B(32)と、補強用表皮材としての繊維強化樹脂A(11)、(12)とが一体的に接合された成形品としての複合成形体33が脱型される。このように、上記圧縮成形を介して、全体として高剛性で軽量なサンドイッチ形態の複合成形体33が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、繊維強化樹脂Aと発泡樹脂Bからなるあらゆる複合成形体の製造に適用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1、11、12 繊維強化樹脂A
2、3、13、14 型
4、15 金型
5、16、31 キャビティ
6 樹脂供給路
7、20、32 発泡樹脂B
8、21、33 複合成形体
17 可動コア
18 駆動手段
19 樹脂供給手段
41 カード装置
42 シリンダーロール
43 テイカインロール
44 ドッファーロール
45 ワーカーロール
46 ストリッパーロール
47 フィードロール
48 ベルトコンベアー
49 不連続な炭素繊維
50 シート状のウエブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め成形した繊維強化樹脂Aを予備成形体として金型内に配置し、該金型内に前記繊維強化樹脂Aに接するように発泡樹脂Bを供給し該発泡樹脂Bを前記繊維強化樹脂Aに接合して複合成形体を製造する方法であって、前記発泡樹脂Bを金型内で発泡させる際の金型のキャビティの容積に対し、該発泡樹脂Bを含む複合成形体を成形する際の金型のキャビティの容積を縮小して該複合成形体を圧縮成形することを特徴とする、複合成形体の製造方法。
【請求項2】
前記金型を予め開いた状態で前記発泡樹脂Bを金型内に供給した後、前記圧縮成形を行う、請求項1に記載の複合成形体の製造方法。
【請求項3】
前記金型内に可動コアを設けておき、前記発泡樹脂Bを金型内に供給した後、前記可動コアを金型のキャビティの容積を拡大する方向に動作させて発泡樹脂Bの発泡のための容積を拡大し、しかる後に、前記圧縮成形を行う、請求項1または2に記載の複合成形体の製造方法。
【請求項4】
前記繊維強化樹脂Aの片面側に前記発泡樹脂Bを供給する、請求項1〜3のいずれかに記載の複合成形体の製造方法。
【請求項5】
前記金型内に少なくとも2つの繊維強化樹脂Aを間隔を持たせて対向配置し、該繊維強化樹脂A間に前記発泡樹脂Bを供給する、請求項1〜3のいずれかに記載の複合成形体の製造方法。
【請求項6】
前記発泡樹脂Bの発泡を、化学発泡剤、発泡ビーズ、超臨界流体から選ばれるいずれか1つを用いて行う、請求項1〜5のいずれかに記載の複合成形体の製造方法。
【請求項7】
前記発泡樹脂Bの最終発泡倍率を50%以上とする、請求項1〜6のいずれかに記載の複合成形体の製造方法。
【請求項8】
前記繊維強化樹脂Aが板状またはシート状の成形体またはプリプレグからなる、請求項1〜7のいずれかに記載の複合成形体の製造方法。
【請求項9】
前記繊維強化樹脂Aが、繊維長1mm以上の強化繊維を含む繊維強化樹脂からなる、請求項1〜8のいずれかに記載の複合成形体の製造方法。
【請求項10】
前記繊維強化樹脂Aの強化繊維が一方向に配向されている、請求項1〜9のいずれかに記載の複合成形体の製造方法。
【請求項11】
前記繊維強化樹脂Aの強化繊維が炭素繊維を含む、請求項1〜10のいずれかに記載の複合成形体の製造方法。
【請求項12】
前記繊維強化樹脂Aのマトリックス樹脂が熱可塑性樹脂からなる、請求項1〜11のいずれかに記載の複合成形体の製造方法。
【請求項13】
前記発泡樹脂Bが射出により金型内に供給される、請求項1〜12のいずれかに記載の複合成形体の製造方法。
【請求項14】
前記発泡樹脂Bが熱可塑性樹脂からなる、請求項1〜13のいずれかに記載の複合成形体の製造方法。
【請求項15】
前記発泡樹脂Bが強化繊維を含む、請求項1〜14のいずれかに記載の複合成形体の製造方法。
【請求項16】
前記発泡樹脂Bの強化繊維が炭素繊維を含む、請求項15に記載の複合成形体の製造方法。
【請求項17】
前記繊維強化樹脂Aの肉厚が1mm以下で、複合成形体の肉厚が3mm以下である、請求項1〜16のいずれかに記載の複合成形体の製造方法。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれかに記載の方法により製造された、発泡樹脂Bの発泡倍率が50%以上であることを特徴とする複合成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−67135(P2013−67135A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208816(P2011−208816)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】