説明

複合材料、発光素子、電子機器、及び照明

【課題】本発明では耐熱性に優れた発光素子を作製することができる複合材料を提供する
ことを課題とする。また、本発明では長時間安定に駆動できる耐久性の高い発光素子を作
製することができる複合材料を提供することを課題とする。また、発光素子における電極
間の短絡を防止しやすく、消費電力の低い発光素子を作製することができる複合材料を提
供することを課題とする。
【解決手段】金属原子を有する金属酸化物骨格と、金属原子にキレートを形成することに
より結合した有機化合物とを有する複合材料であり、金属酸化物は有機化合物に対して電
子受容性を示すことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極間に有機物を含む発光性材料を挟み、電極間に電流を流すことで発光す
る素子(発光素子)、及びそれを用いて作製された発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機材料による発光素子を用いた発光装置やディスプレイの開発が盛んに行われ
ている。発光素子は、一対の電極間に有機化合物層を挟み込むことで作製されるが、液晶
表示装置と異なりそれ自体が発光するのでバックライトなどの光源がいらない上、素子自
体が非常に薄いため薄型軽量ディスプレイを作製するにあたり非常に有利である。
【0003】
発光素子の発光機構は、陰極から注入された電子および陽極から注入された正孔が有機
化合物中の発光中心で再結合して分子励起子を形成し、その分子励起子が基底状態に戻る
際にエネルギーを放出して発光するといわれている。励起状態には一重項励起と三重項励
起が知られ、発光はどちらの励起状態を経ても可能であると考えられている。
【0004】
電極間に挟まれた有機化合物層は、積層構造となっていることが多く、この積層構造は
「正孔輸送層、発光層、電子輸送層」という、機能分離型の積層構造が代表的である。正
孔と電子が再結合する発光層を挟んで正孔の輸送性が高い材料による層を陽極として機能
する電極側に、電子の輸送性が高い材料による層を陰極側に配置することによって効率良
く正孔及び電子の輸送を行うことが出来、さらに正孔及び電子が再結合する確率も高める
ことができる。このような構造は非常に発光効率が高いため、現在研究開発が進められて
いる発光表示装置はほとんどこのような構造が採用されている(例えば非特許文献1参照
)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Chihaya Adachi、外3名、ジャパニーズ ジャーナル オブ アプライド フィジクス、Vol.27、No.2、1988、pp.L269−L271
【0006】
また、他の構造としては陽極として機能する電極側から正孔注入層、正孔輸送層、発光
層、電子輸送層、または正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層の順
に積層する構造などがあり、それぞれの機能に特化した材料により各層は構成されている
。なお、発光層と電子輸送層の両方の機能を備える層など、これらの機能を2種類以上兼
ねる層であっても良い。
【0007】
有機化合物層は上記のように積層構造が代表的であるが、単層構造で形成されるものや
、混合層であっても良く、また、発光層に対して蛍光性色素等をドーピングされていても
良い。
【0008】
ところで、このような発光素子は耐久性や耐熱性に問題がある。このような発光素子は
上記したように有機化合物を用いた有機薄膜を積層して形成されている為、有機化合物の
薄膜の脆弱さがその要因であると考えられる。
【0009】
一方で、有機薄膜ではなく、シロキサン結合により構成された骨格中に有機化合物(ホ
ール輸送性化合物、電子輸送性化合物、発光性化合物)を分散した層を適用し、発光素子
を作製した例もある(例えば特許文献1及び非特許文献2参照)。なお、特許文献1にお
いては素子の耐久性や耐熱性が向上するとも報告されている。
【0010】
発光素子は駆動する際に発熱したり真夏の車中のように過酷な環境の中で用いられるこ
ともあったりすることから、発光素子に用いられる材料の耐熱性は重要なファクターであ
る。
【0011】
しかし、上記特許文献1や非特許文献2において開示されている発光素子は絶縁性であ
るシロキサン結合により構成された骨格中に有機化合物が分散されている為、従来の発光
素子と比較して電流が流れにくくなってしまう。
【0012】
これら発光素子は流す電流に比例して発光輝度が高くなるため、電流が流れにくいとい
うことは所定の輝度を得る為の電圧(駆動電圧)が高くなってしまう。そして、駆動電圧
が高くなった結果として発光素子を用いて作製した発光装置の消費電力が上昇してしまう
という問題があった。
【0013】
また、ゴミ等に起因する発光素子の短絡を抑制する為には、発光素子の膜厚を厚くする
ことが効果的であるが、特許文献1や非特許文献2で示されているような構成の発光素子
において膜厚を厚くすると駆動電圧の上昇はさらに顕在化してしまう。
【特許文献1】特開2000−306669号公報
【非特許文献2】トニー ダンタス デ モレイス、外3名、アドバンスト マテリアルズ、Vol.11、NO.2、107−112(1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本発明では耐熱性に優れた発光素子を作製することができる複合材料を提供す
ることを課題とする。また、本発明では長時間安定に駆動できる耐久性の高い発光素子を
作製することができる複合材料を提供することを課題とする。また、そのどちらも同時に
満たす発光素子を作製することができる複合材料を提供することを課題とする。また、上
記課題を満たしつつ、消費電力の上昇が少ない発光素子を作製することができる複合材料
を提供することを課題とする。
【0015】
また、発光素子における電極間の短絡を防止しやすく、消費電力の低い発光素子を作製
することができる複合材料を提供することを課題とする。
【0016】
また、本発明では耐熱性に優れた発光素子を提供することを課題とする。また、本発明
では長時間安定に駆動できる耐久性の高い発光素子を提供することを課題とする。また、
そのどちらも同時に満たす発光素子を提供することを課題とする。また、上記課題を満た
しつつ、消費電力の上昇が少ない発光素子を提供することを課題とする。
【0017】
また、発光素子における電極間の短絡を防止しやすく、消費電力の低い発光素子を提供
することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決することが出来る本発明の複合材料は、第1の金属原子を有する第1の
金属酸化物骨格と、第1の金属原子にキレートを形成することにより結合した有機化合物
と、を有し、第1の金属酸化物は有機化合物に対して電子受容性を示すことを特徴とする

【0019】
上記構成において、有機化合物は、アリールアミン骨格を有する有機化合物であること
を特徴とする。
【0020】
また、上記構成において、第1の金属原子は、遷移金属であることを特徴とする。具体
的には、チタン、バナジウム、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、ニオ
ブのいずれか一種もしくは複数種であることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の複合材料の別の構成としては、第1の金属原子を有する第1の金属酸化
物骨格と、第1の金属原子にキレートを形成することにより結合した有機化合物と、を有
し、金属酸化物は有機化合物に対して電子供与性を示すことを特徴とする。
【0022】
上記構成において、有機化合物は、ピリジン骨格、ピラジン骨格、トリアジン骨格、イ
ミダゾール骨格、トリアゾール骨格、オキサジアゾール骨格、チアジアゾール骨格、オキ
サゾール骨格及びチアゾール骨格のいずれか一種もしくは複数種を有する有機化合物であ
ることを特徴とする。
【0023】
また、上記構成において、第1の金属原子は、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属
であることを特徴とする。具体的には、リチウム、カルシウム、バリウムのいずれか一種
または複数種であることを特徴とする。
【0024】
また、上記構成において、複合材料は、第2の金属酸化物をさらに含んでいてもよい。
例えば、酸化アルミニウムを含んでいてもよい。
【0025】
なお、以上で述べた本発明の複合材料は、第3の金属酸化物をさらに含んでいてもよい
。第3の金属酸化物としては、酸化珪素が好ましい。
【0026】
また、本発明の複合材料の別の構成として、第1の金属原子を有する第1の金属酸化物
骨格と、第1の金属原子にキレートを形成することにより結合した有機化合物と、第2の
金属原子を有する第2の金属酸化物と、を有し、第2の金属酸化物は有機化合物に対して
電子受容性を示すことを特徴とする。
【0027】
上記構成において、第1の金属原子の価数は、3価以上6価以下であることを特徴とす
る。また、第1の金属原子は、13族または14族の金属原子であることを特徴とする。
具体的には、アルミニウム、ガリウム、インジウムのいずれかであることが好ましい。
【0028】
また、上記構成において、有機化合物は、アリールアミン骨格を有する有機化合物であ
ることを特徴とする。
【0029】
また、上記構成において、第2の金属原子は、遷移金属であることを特徴とする。具体
的には、チタン、バナジウム、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、ニオ
ブのいずれかであることを特徴とする。
【0030】
また、本発明の複合材料の別の構成として、第1の金属原子を有する第1の金属酸化物
骨格と、第1の金属原子にキレートを形成することにより結合した有機化合物と、第2の
金属原子を有する第2の金属酸化物と、を有し、第2の金属酸化物は有機化合物に対して
電子供与性を示すことを特徴とする。
【0031】
上記構成において、第1の金属原子の価数は、3価以上6価以下であることを特徴とす
る。また、第1の金属原子は、13族または14族の金属原子であることを特徴とする。
具体的には、アルミニウム、ガリウム、インジウムのいずれか一種または複数種であるこ
とが好ましい。
【0032】
また、上記構成において、有機化合物は、ピリジン骨格、ピラジン骨格、トリアジン骨
格、イミダゾール骨格、トリアゾール骨格、オキサジアゾール骨格、チアジアゾール骨格
、オキサゾール骨格及びチアゾール骨格のうち一種もしくは複数種を有することを特徴と
する。
【0033】
また、上記構成において、第2の金属原子は、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属
であることを特徴とする。具体的に、リチウム、カルシウム、バリウムのいずれかである
ことを特徴とする。
【0034】
なお、以上で述べた本発明の複合材料は、さらに第3の金属酸化物を含んでいてもよい
。第3の金属酸化物としては、酸化珪素が好ましい。
【0035】
また、本発明の複合材料を発光素子に用いることができる。よって、本発明の発光素子
は、一対の電極間に、発光物質を含む発光層と、複合材料を含む層と、を有し、複合材料
は、上述した複合材料であることを特徴とする。
【0036】
上記構成において、複合材料を含む層は、一対の電極のいずれかまたは両方に接して設
けられていることが好ましい。
【0037】
また、上述した発光素子を有する発光装置も本発明の範疇に含める物とする。
【発明の効果】
【0038】
上記構成を有する本発明の複合材料を用いた発光素子は、耐熱性に優れた発光素子とな
る。また、上記構成を有する本発明の複合材料を用いた発光素子は長時間安定に駆動でき
る発光素子となる。また、上記構成を有する本発明の複合材料を用いた発光素子は耐熱性
に優れ且つ長時間安定に駆動できる発光素子となる。また、本発明の複合材料を用いた発
光素子は、上記効果に加えて消費電力の上昇が少ない発光素子となる。
【0039】
上記構成を有する本発明の発光素子は、耐熱性に優れた発光素子とすることができる。
また、上記構成を有する本発明の発光素子は長時間安定に駆動できる発光素子とすること
ができる。また、上記構成を有する本発明の発光素子は耐熱性に優れ且つ長時間安定に駆
動できる発光素子とすることができる。また、本発明の構成を有する発光素子は、上記効
果に加えて消費電力の上昇が少ない発光素子とすることができる。
【0040】
また、短絡を防止しやすく且つ消費電力の低い発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の複合材料の模式図。
【図2】本発明の複合材料における電子授受の様子を表す模式図。
【図3】本発明の複合材料の模式図。
【図4】本発明の複合材料における電子授受の様子を表す模式図。
【図5】本発明の複合材料の模式図。
【図6】本発明の複合材料における電子授受の様子を表す模式図。
【図7】本発明の複合材料の模式図。
【図8】本発明の複合材料における電子授受の様子を表す模式図。
【図9】本発明の複合材料の模式図。
【図10】本発明の複合材料の模式図。
【図11】本発明の薄膜発光素子の作製工程を表す図。
【図12】本発明の薄膜発光素子の作製工程を表す図。
【図13】表示装置の構成を例示した図。
【図14】本発明の発光装置の上面図及び断面図。
【図15】本発明が適用可能な電子機器の例示した図。
【図16】表示装置の構成を例示した図。
【図17】表示装置の画素回路一例を示す図。
【図18】表示装置の保護回路の一例を示す図。
【図19】本発明の発光素子の構成を例示した図。
【図20】本発明の発光素子の構成を例示した図。
【図21】実施例及び比較例の吸収スペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、本発明は多く
の異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱すること
なくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従っ
て、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0043】
なお、本発明において発光素子の一対の電極のうち、電位が高くなるように電圧をかけ
た際、発光が得られる方の電極を陽極として機能する電極言い、電位が低くなるように電
圧をかけた際、発光が得られる方の電極を陰極として機能する電極と言う。
【0044】
また、本発明において特に断りの無い限り、正孔注入層とは電極から正孔が注入される
為の障壁が電子が注入される障壁より低い物質で形成され、発光層よりも陽極として機能
する電極側に位置している層のことを言い、正孔輸送層とは正孔の輸送性が電子の輸送性
より高い物質で形成され、発光層よりも陽極として機能する電極側に位置している層のこ
とを言う。また、これらの両方の機能を備える層であっても良い。また、電子注入層とは
電極から電子が注入される為の障壁が正孔が注入される障壁より低い物質で形成され、発
光層よりも陰極として機能する電極側に位置している層のことを言い、電子輸送層とは電
子の輸送性が正孔の輸送性より高い物質で形成され、発光層よりも陰極として機能する電
極側に位置している層のことを言う。また、これらの両方の機能を備える層であっても良
い。
【0045】
(実施の形態1)
図1に本実施の形態における本発明の複合材料の模式図を示す。本実施の形態における
本発明の複合材料は、結合のネットワークを形成した第1の金属酸化物骨格中における一
部または全ての金属に、正孔の注入性及び/又は輸送性を有する有機化合物がキレート配
位しており、さらに当該金属酸化物は有機化合物から電子を受容することができる。この
ような複合材料は図2にその模式図を示したように電子の授受を行うことによって正孔が
発生するため、正孔の注入性や導電性が向上する。図2は、5−ジフェニルアミノ−8−
キノリノールを配位させたモリブデン酸化物(MoOx)のマトリクスであり、モリブデ
ン酸化物が5−ジフェニルアミノ−8−キノリノールから電子を受容する様子を示した模
式図である。
【0046】
このような複合材料は金属酸化物骨格を有することから耐熱性や耐久性に優れた材料で
ある。また、当該骨格中の金属に正孔の注入性及び/又は輸送性を有する有機化合物がキ
レート配位していることによって、当該複合材料に当該有機化合物が有する正孔の注入も
しくは輸送性を有せしめることができる。また、骨格を形成する当該金属酸化物は当該有
機化合物から電子を受容することができる為、正孔の注入もしくは輸送性を向上させ、導
電性を向上させることができる。
【0047】
このような複合材料は発光素子における正孔注入層もしくは正孔輸送層の材料として用
いることが出来、耐熱性に優れた発光素子とすることができる。また、長時間安定に駆動
できる発光素子とすることができる。また、耐熱性に優れ且つ長時間安定に駆動できる発
光素子とすることができる。また、上記効果に加えて消費電力の上昇が少ない発光素子と
することができる。
【0048】
なお、本実施の形態の複合材料を正孔注入層もしくは正孔輸送層として形成した発光素
子はその膜厚を厚く形成しても駆動電圧の上昇が少ない。そのため、発光素子の一対の電
極のうち、先に形成される方の電極と発光層との間の層の膜厚を厚く形成することができ
、ゴミなどによる発光素子の短絡を低減することができる。膜厚は100nm以上あれば
このような不良を有効に低減することが出来る。また、本発明の複合材料は導電性やキャ
リヤ注入、輸送性が向上しており、駆動電圧を大幅に上昇させることなく、すなわち消費
電力を大幅に増大することなく、ゴミなどによる発光素子の短絡を低減できる。
【0049】
また、第1の金属酸化物骨格中にキレート配位し、当該骨格に正孔注入性又は/及び正
孔輸送性を有せしめる有機化合物としては、アリールアミン骨格を有する有機化合物を用
いることが望ましい。アリールアミン骨格を有する有機化合物の例としては下記構造式(
1)〜(4)が挙げられる。もちろんこれら以外の有機化合物でも第1の金属酸化物骨格
中にキレート配位し、当該骨格に正孔注入性又は/及び正孔輸送性を有せしめることがで
きればどのような有機化合物を用いても構わない。なお、これら有機化合物は一種類のみ
用いてもよいし、複数種類を用いても構わない。複数種類の有機化合物を用いた場合は複
数種類の有機化合物が第1の金属酸化物骨格中の一部または全てにキレート配位した複合
材料を得ることが出来る。
【0050】
【化1】

【0051】
また、当該金属酸化物骨格を形成し、キレート配位した有機化合物より電子を受容する
ことが出来る金属酸化物の金属種としては、遷移金属を用いることが望ましい。より好ま
しくは、チタン、バナジウム、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、ニオ
ブのいずれか一種もしくは複数種であることが望ましい。酸化物骨格は遷移金属のなかか
ら一種もしくは複数種を用いて形成することができる。
【0052】
また、本実施の形態の複合材料に、さらに他の金属酸化物を添加してもよい。本実施の
形態の複合材料に含まれる有機化合物に対し電子受容性を示す金属酸化物と、添加した他
の金属酸化物とは、複合酸化物を形成しても良いし、それぞれ独立した金属酸化物骨格を
形成していてもよい。添加する他の金属酸化物としては、価数の大きい13族もしくは1
4族の金属酸化物が望ましい。特に、酸化珪素であることが望ましい。図9に、有機化合
物に対し電子受容性を示す金属酸化物(モリブデン酸化物)と、添加した他の金属酸化物
(酸化珪素)とが、複合酸化物を形成している例を示す。価数の大きい他の金属酸化物を
添加することにより、金属酸化物の結合のネットワークがより形成しやすくなる。なお、
本明細書中において、炭素を除く14族の元素は金属とみなす。
【0053】
なお、本実施の形態の複合材料において、上述した正孔の注入性もしくは輸送性を有す
る有機化合物の量は、有機化合物に対し電子受容性を示す金属酸化物の金属原子1mol
に対して1mol以下、0.1mol以上が好ましい。
【0054】
(実施の形態2)
図3に本実施の形態における本発明の複合材料の模式図を示す。本実施の形態における
本発明の複合材料は結合のネットワークを形成した第1の金属酸化物骨格中における一部
または全ての金属に、電子の注入性もしくは輸送性を有する有機化合物がキレート配位し
ており、さらに当該金属酸化物は当該有機化合物に電子を供与することができる。このよ
うな複合材料は図4にその模式図を示したように電子の授受を行うことによって電子が発
生するため、電子の注入性や導電性が向上する。図4は、8−キノリノールを配位させた
カルシウム酸化物を含むマトリクスであり、カルシウム酸化物が有機化合物へ電子を供与
する様子を示した模式図である。
【0055】
このような複合材料は金属酸化物骨格を有することから耐熱性や耐久性に優れた材料で
ある。また、当該骨格中の金属に電子注入性もしくは輸送性を有する有機化合物がキレー
ト配位していることによって、当該複合材料に当該有機化合物が有する電子の注入もしく
は輸送性を有せしめることができる。また、当該有機化合物は当該金属酸化物骨格から電
子の供与を受けることができる材料からなる為、電子の注入もしくは輸送性を向上させ、
導電性を向上させることができる。
【0056】
このような複合材料は発光素子における電子注入層もしくは電子輸送層の材料として用
いることが出来、耐熱性に優れた発光素子とすることができる。また、長時間安定に駆動
できる発光素子とすることができる。また、耐熱性に優れ且つ長時間安定に駆動できる発
光素子とすることができる。また、上記効果に加えて消費電力の上昇が少ない発光素子と
することができる。
【0057】
なお、本実施の形態の複合材料を電子注入層もしくは電子輸送層として形成した発光素
子はその膜厚を厚く形成しても駆動電圧の上昇が少ない。そのため、発光素子の一対の電
極のうち、先に形成される方の電極と発光層との間の層の膜厚を厚く形成することができ
、ゴミなどによる発光素子の短絡を低減することができる。膜厚は100nm以上あれば
このような不良を有効に低減することが出来る。また、本発明の複合材料は導電性やキャ
リヤ注入、輸送性が向上しており、駆動電圧を大幅に上昇させることなく、すなわち消費
電力を大幅に増大することなく、ゴミなどによる発光素子の短絡を低減できる。
【0058】
第1の金属酸化物骨格中にキレート配位し、当該骨格に電子注入性又は/及び電子輸送
性を有せしめる有機化合物としては、ピリジン骨格、ピラジン骨格、トリアジン骨格、イ
ミダゾール骨格、トリアゾール骨格、オキサジアゾール骨格、チアジアゾール骨格、オキ
サゾール骨格及びチアゾール骨格を少なくとも一つ有する有機化合物を用いることが望ま
しい。その例としては、ピリジン骨格を有する有機化合物として下記構造式(5)〜(1
3)が、ピラジン骨格を有する有機化合物として下記構造式(14)〜(16)が、イミ
ダゾール骨格を有する有機化合物として下記構造式(17)、(18)が、オキサジアゾ
ール骨格を有する有機化合物として下記構造式(19)が、チアジアゾール骨格を有する
有機化合物として下記構造式(20)が、オキサゾール骨格を有する有機化合物として下
記構造式(21)が、チアゾール骨格を有する有機化合物として下記構造式(22)が、
挙げられる。もちろんこれら以外の有機化合物でも第1の金属酸化物骨格中にキレート配
位し、当該骨格に電子注入性又は/及び電子輸送性を有せしめることができればどのよう
な有機化合物を用いても構わない。なお、これら有機化合物は一種類のみ用いてもよいし
、複数種類を用いても構わない。複数種類の有機化合物を用いた場合は複数種類の有機化
合物が第1の金属酸化物骨格中の一部または全てにキレート配位した複合材料を得ること
が出来る。
【0059】
【化2】

【0060】
【化3】

【0061】
【化4】

【0062】
【化5】

【0063】
【化6】

【0064】
【化7】

【0065】
【化8】

【0066】
また、当該金属酸化物骨格を形成し、キレート配位した有機化合物に電子を供与すること
が出来る金属酸化物は、アルカリ金属やアルカリ土類金属の中から1種もしくは複数種を
用いることが好ましい。より好ましくは、リチウム、カルシウム、バリウムのいずれか一
種または複数種を用いることが望ましい。なお単独で酸化物骨格を形成出来ない金属の場
合は複数種をもって酸化物骨格を形成する。すなわち、さらに第2の金属酸化物を添加し
て、酸化物骨格を形成してもよい。例えば、図3に示すように、第2の金属酸化物として
酸化アルミニウムをさらに含み、金属酸化物骨格として、酸化アルミニウムカルシウム複
合酸化物骨格を有していてもよい。
【0067】
また、本実施の形態の複合材料に、さらに第3の金属酸化物を添加してもよい。本実施
の形態の複合材料に含まれる有機化合物に対し電子供与性を示す金属酸化物と、添加した
第3の金属酸化物とは、複合酸化物を形成しても良いし、それぞれ独立した金属酸化物骨
格を形成していてもよい。添加する第3の金属酸化物としては、価数の大きい13族もし
くは14族の金属酸化物が望ましい。特に、酸化珪素であることが望ましい。価数の大き
い他の金属酸化物を添加することにより、金属酸化物の結合のネットワークがより形成し
やすくなる。
【0068】
なお、本実施の形態の複合材料において、上述した電子の注入性もしくは輸送性を有す
る有機化合物の量は、第1の金属酸化物の金属原子1molに対して1mol以下、0.
1mol以上が好ましい。
【0069】
(実施の形態3)
図5に本実施の形態における本発明の複合材料の模式図を示す。本実施の形態における
本発明の複合材料は、結合のネットワークを形成した第1の金属酸化物骨格中における一
部または全ての金属に、正孔の注入性もしくは輸送性を有する有機化合物がキレート配位
しており、当該有機化合物から電子を受容することが可能な第2の金属酸化物がさらに添
加されている。このような複合材料は図6にその模式図を示したように電子の授受を行う
ことによって正孔が発生するため、正孔の注入性や導電性が向上する。図6では5−ジフ
ェニルアミノ−8−キノリノールを配位させたアルミニウム酸化物のマトリクスにモリブ
デン酸化物をさらに有する複合材料において、モリブデン酸化物が5−ジフェニルアミノ
−8−キノリノールから電子を受容する様子を示した模式図である。
【0070】
このような複合材料は金属酸化物骨格を有することから耐熱性や耐久性に優れた材料で
ある。また、当該骨格中の金属に正孔の注入性もしくは輸送性を有する有機化合物がキレ
ート配位していることによって、当該複合材料に当該有機化合物が有する正孔の注入もし
くは輸送性を有せしめることができる。また、当該有機化合物より電子を受容することが
可能な第2の金属酸化物と当該有機化合物との間で電子の授受が行われることから、正孔
の注入もしくは輸送性を向上させ、導電性を向上させることができる。
【0071】
このような複合材料は発光素子における正孔注入層もしくは正孔輸送層の材料として用
いることが出来、耐熱性に優れた発光素子とすることができる。また、長時間安定に駆動
できる発光素子とすることができる。また、耐熱性に優れ且つ長時間安定に駆動できる発
光素子とすることができる。また、上記効果に加えて消費電力の上昇が少ない発光素子と
することができる。
【0072】
なお、本実施の形態の複合材料を正孔注入層又は/及び正孔輸送層として形成した発光
素子はその膜厚を厚く形成しても駆動電圧の上昇が少ない。そのため、発光素子の一対の
電極のうち、先に形成される方の電極と発光層との間の層の膜厚を厚く形成することがで
き、ゴミなどによる発光素子の短絡を低減することができる。膜厚は100nm以上あれ
ばこのような不良を有効に低減することが出来る。また、本発明の複合材料は導電性やキ
ャリヤ注入、輸送性が向上しており、駆動電圧を大幅に上昇させることなく、すなわち消
費電力を大幅に増大することなくゴミなどによる発光素子の短絡を低減できる。
【0073】
第1の金属酸化物骨格中にキレート配位し、当該骨格に正孔注入性又は/及び正孔輸送
性を有せしめる有機化合物としては、図1の構成において複合材料に正孔注入性又は/及
び正孔輸送性を有せしめる有機化合物と同様の材料を用いればよい。具体的には、アリー
ルアミン骨格を有する有機化合物を用いることが望ましく、例えば先に述べた構造式(1
)〜(4)のような有機化合物を用いればよい。
【0074】
また、キレート配位した有機化合物より電子を受容することが出来る第2の金属酸化物
としては遷移金属酸化物を用いることが望ましい。より好ましくは、チタン、バナジウム
、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、ニオブのいずれか一種もしくは複
数種の酸化物であることが望ましい。
【0075】
また、第1の金属酸化物骨格を形成する第1の金属原子に制限はないが、結合のネット
ワークを形成するために、価数の大きい金属原子であることが好ましく、具体的には、価
数が3価以上6価以下であることが好ましい。また、13族もしくは14族の金属が望ま
しく、特に、アルミニウム、ガリウム、インジウムであることが望ましい。酸化物骨格中
の金属は一種でも良いが、複数種の金属を含んでいても良い。
【0076】
また、本実施の形態の複合材料に、さらに第3の金属酸化物を添加してもよい。なお、
上述した第1の金属酸化物および第2の金属酸化物と、添加した第3の金属酸化物とは、
複合酸化物を形成しても良いし、それぞれ独立した金属酸化物骨格を形成していてもよい
。添加する第3の金属酸化物としては、価数の大きい13族もしくは14族の金属酸化物
が望ましい。特に、酸化珪素であることが望ましい。図10に、有機化合物に対し電子受
容性を示す第2の金属酸化物(モリブデン酸化物)を含み、有機化合物がキレート配位し
ている第1の金属原子(アルミニウム)を有する第1の金属酸化物(酸化アルミニウム)
と、第3の金属酸化物(酸化珪素)とが、複合酸化物を形成している例を示す。価数の大
きい第3の金属酸化物を添加することにより、金属酸化物の結合のネットワークがより形
成しやすくなる。
【0077】
なお、本実施の形態の複合材料において、上述した正孔の注入性もしくは輸送性を有す
る有機化合物の量は、第1の金属酸化物の金属原子1molに対して1mol以下、0.
1mol以上が好ましい。また、第2の金属酸化物の金属原子1molに対して10mo
l以下、0.1mol以上が好ましい。
【0078】
(実施の形態4)
図7に本実施の形態における本発明の複合材料の模式図を示す。本実施の形態における
本発明の複合材料は、結合のネットワークを形成した第1の金属酸化物骨格中における一
部または全ての金属に、電子の注入性もしくは輸送性を有する有機化合物がキレート配位
しており、さらに当該有機化合物に電子を供与することが可能な第2の金属酸化物が添加
されている。このような複合材料は図8にその模式図を示したように電子の授受を行うこ
とによって電子が発生し、電子の注入性や導電性が向上する。図8では8−キノリノール
を配位させたアルミニウム酸化物のマトリクスにカルシウム酸化物(CaOx)をさらに
有する複合材料において、カルシウム酸化物が8−キノリノールへ電子を供与する様子を
示した模式図である。
【0079】
このような複合材料は金属酸化物骨格を有することから耐熱性や耐久性に優れた材料で
ある。また、当該骨格中の金属に電子の注入性もしくは輸送性を有する有機化合物がキレ
ート配位していることによって、当該複合材料に当該有機化合物が有する電子の注入もし
くは輸送性を有せしめることができる。また、当該有機化合物に電子を供与することが可
能な第2の金属酸化物と当該有機化合物との間で電子の授受が行われることから、電子の
注入もしくは輸送性を向上させ、導電性を向上させることができる。
【0080】
このような複合材料は発光素子における電子注入層もしくは電子輸送層の材料として用
いることが出来、耐熱性に優れた発光素子とすることができる。また、長時間安定に駆動
できる発光素子とすることができる。また、耐熱性に優れ且つ長時間安定に駆動できる発
光素子とすることができる。また、上記効果に加えて消費電力の上昇が少ない発光素子と
することができる。
【0081】
なお、本実施の形態の複合材料を電子注入層もしくは電子輸送層として形成した発光素
子はその膜厚を厚く形成しても駆動電圧の上昇が少ない。そのため、発光素子の一対の電
極のうち、先に形成される方の電極と発光層との間の層の膜厚を厚く形成することができ
、ゴミなどによる発光素子の短絡を低減することができる。膜厚は100nm以上あれば
このような不良を有効に低減することが出来る。また、本発明の複合材料は導電性やキャ
リヤ注入、輸送性が向上しており、駆動電圧を大幅に上昇させることなく、すなわち消費
電力を大幅に増大することなくゴミなどによる発光素子の短絡を低減できる。
【0082】
第1の金属酸化物骨格中にキレート配位し、当該骨格に電子注入性又は/及び電子輸送
性を有せしめる有機化合物としては、図3の構成において複合材料に電子注入性又は/及
び電子輸送性を有せしめる有機化合物と同様の材料を用いればよい。具体的には、ピリジ
ン骨格、ピラジン骨格、トリアジン骨格、イミダゾール骨格、トリアゾール骨格、オキサ
ジアゾール骨格、チアジアゾール骨格、オキサゾール骨格及びチアゾール骨格を少なくと
も一つ有する有機化合物を用いることが望ましく、例えば先に述べた構造式(5)〜(2
2)のような有機化合物を用いればよい。
【0083】
また、キレート配位した有機化合物に電子を供与することが出来る第2の金属酸化物と
してはアルカリ金属やアルカリ土類金属の中から1種もしくは複数種の酸化物を用いるこ
とが好ましい。より好ましくは、リチウム、カルシウム、バリウムのいずれか一種または
複数種の酸化物を用いることが望ましい。
【0084】
また、第1の金属酸化物骨格を形成する第1の金属に制限はないが、13族もしくは1
4族の金属が望ましい。特に、アルミニウム、ガリウム、インジウムであることが望まし
い。酸化物骨格中の金属は一種でも良いが、複数種の金属を含んでいても良い。
【0085】
また、本実施の形態の複合材料に、さらに第3の金属酸化物を添加してもよい。なお、
上述した第1の金属酸化物および第2の金属酸化物と、添加した第3の金属酸化物とは、
複合酸化物を形成しても良いし、それぞれ独立した金属酸化物骨格を形成していてもよい
。添加する第3の金属酸化物としては、価数の大きい13族もしくは14族の金属酸化物
が望ましい。特に、酸化珪素であることが望ましい。価数の大きい第3の金属酸化物を添
加することにより、金属酸化物の結合のネットワークがより形成しやすくなる。
【0086】
なお、本実施の形態の複合材料において、上述した電子の注入性もしくは輸送性を有す
る有機化合物の量は、第1の金属酸化物の金属原子1molに対して1mol以下、0.
1mol以上が好ましい。また、第2の金属酸化物の金属原子に対して金属原子1mol
に対して10mol以下、0.1mol以上が好ましい。
【0087】
なお、上述の実施形態1〜4で述べたような本発明の複合材料において、金属酸化物は
水酸基を一部に有していてもよい。
【0088】
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施形態1または2で述べたような本発明の複合材料を、金属アル
コキシドを用いたゾルーゲル法により製造する方法について説明する。
【0089】
そのスキームを下記式(23)および(24)に示す。なお、本実施の形態では、第1
の金属酸化物骨格としてモリブデン酸化物骨格を、正孔の注入性もしくは輸送性を有し、
モリブデン原子にキレート配位することができ、且つモリブデン酸化物が電子を受容する
ことの出来る有機化合物として5−ジフェニルアミノ−8−キノリノールを、それぞれ用
いた複合材料(実施の形態1)を作製する場合を例に説明する。他の金属酸化物骨格を用
いる場合や、複数の金属を有する金属酸化物骨格を用いる場合、あるいは他の有機化合物
を用いる場合も、基本原理は全て同様である。
【0090】
【化9】

【0091】
【化10】

【0092】
式(23)は、第1の金属酸化物における金属原子を含む金属アルコキシド501(ここ
ではペンタエトキシモリブデン(V))と、本発明の複合材料に正孔の注入性もしくは輸
送性を与える有機化合物502(ここでは5−ジフェニルアミノ−8−キノリノール)と
、安定化剤503(ここではアセト酢酸エチル)と、を2:1:1[単位;mol]の割
合で適当な有機溶媒に溶解して反応させた溶液504を調製し、さらに水を添加して加水
分解を行ったゾル505を得る経路を示したものである。この時、有機溶媒としては、例
えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、
sec−ブタノール等の低級アルコールの他、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニ
トリル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、あるいはこれらの混合溶媒等を用いることが
できるが、これに限定されることはない。
【0093】
また、有機化合物502の量は、金属アルコキシド5011molに対して1mol以
下、0.1mol以上が好ましい。
【0094】
なお、安定化剤503は、水を添加した際に、急激な重縮合の進行による沈殿の生成を
抑制するためのものであるが、有機化合物502は安定化剤の役割も担うことができるた
め、安定化剤503は必ずしも必要ではない。ただし、有機化合物502の量が少ない場
合(具体的には金属アルコキシド501 1molに対して0.5mol以下)は、安定
化能力が損なわれるため、安定化剤503が添加された方が好ましい。安定化剤503と
しては、β−ジケトン、ジアミン、アミノアルコール等の弱いキレート剤が好ましく、具
体的には式(23)中で示したアセト酢酸エチルの他、アセチルアセトン、ベンゾイルア
セトン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン等が挙げられるが、これらに限定され
ることはない。安定化剤503の量は、金属アルコキシド501の量1molに対し0.
5mol以上あれば効果を及ぼすことができる。また、金属アルコキシド501の金属は
、6価以下であるため、安定化剤503の添加量は金属アルコキシド501の量1mol
に対し6mol以下が好ましい。
【0095】
加水分解に用いる水の添加量としては、金属アルコキシド501の金属が2価〜6価で
あるため、金属アルコキシド501の量1molに対して2mol以上6mol以下が好
ましい。ただし、加水分解は必ずしも必要ではない。
【0096】
なお、複合材料として、第2の金属酸化物や第3の金属酸化物をさらに添加した複合材
料を作製する場合は、溶液504に対して、第2の金属酸化物の金属を含む第2の金属ア
ルコキシドや、第3の金属酸化物の金属を含む第3の金属アルコキシドを添加すればよい
。この時、適宜上述した安定化剤をさらに添加してもよい。また、第3の金属酸化物とし
て酸化珪素を適用する場合は、第3の金属アルコキシドとしてテトラアルコキシシランを
用いればよいが、この時溶液504を酸性またはアルカリ性にするのが好ましい。より好
ましくは、pH1〜3の酸性である。
【0097】
式(24)は、上記で得られたゾル505を塗布、焼成して本発明の複合材料506を
得るプロセスを示したものである。なお、そのプロセスとしては、ゾル505を基材上に
湿式塗布した後、100℃以上300℃以下の温度にて常圧下または減圧下で焼成する手
法を用いることが出来る。焼成雰囲気は大気中、不活性気体(窒素、アルゴン等)中のど
ちらでも構わない。また、式(23)で安定化剤を用いている場合は、この焼成により安
定化剤を除去することが好ましい。
【0098】
なお、式(23)で示したように、β−ジケトン(式(23)ではアセト酢酸エチル)を
安定化剤として添加している場合は、ゾル505を基材上に湿式塗布した後、β−ジケト
ンが金属原子に配位した状態(式(23)であれば、モリブデンにアセト酢酸エチルが配
位した状態)の紫外吸収スペクトルに対して重なりを持つ波長の紫外線を照射し、β−ジ
ケトンを解離させることによりゲル化を進行させても良い。そしてその後、上述と同様の
手法で焼成することにより、本発明の複合材料506を得ることができる。
【0099】
また、式(23)で加水分解を行わなかった場合、溶液504をそのまま基材上に湿式
塗布し、乾燥させ、水蒸気にて加水分解を行ってもよい。そしてその後、上述と同様の手
法で焼成することにより、本発明の複合材料506を得ることができる。
【0100】
ここで、上述した湿式塗布法としては、ディップコート法、またはスピンコート法、ま
たはインクジェット法などを用いることができるが、これらに限定されることはない。
【0101】
(実施の形態6)
本実施の形態では、実施形態1または2で述べたような本発明の複合材料を、解膠を利
用したゾルーゲル法により製造する方法について説明する。
【0102】
そのスキームを下記式(25)〜(27)に示す。なお、本実施の形態では、第1の金
属酸化物骨格としてモリブデン酸化物骨格を、正孔の注入性もしくは輸送性を有し、モリ
ブデン原子にキレート配位することができ、且つモリブデン酸化物が電子を受容すること
の出来る有機化合物として5−ジフェニルアミノ−8−キノリノールを、それぞれ用いた
複合材料(実施の形態1)を作製する場合を例に説明する。他の金属酸化物骨格を用いる
場合や、複数の金属を有する金属酸化物骨格を用いる場合、あるいは他の有機化合物を用
いる場合も、基本原理は全て同様である。
【0103】
【化11】

【0104】
【化12】

【0105】
【化13】

【0106】
式(25)は、第1の金属酸化物における金属原子を含む金属塩化物601(ここでは
塩化モリブデン(V))の水溶液に対し、アンモニア水を滴下することで金属水酸化物の
多核沈殿602を得、次いで酢酸等の酸を加えて還流する(解膠する)ことにより、第1
のゾル603を得る手法を示している。第1のゾル603には、適宜適当な有機溶媒を添
加してもよい。
【0107】
式(26)は、式(25)で得られた第1のゾル603に対し、本発明の複合材料に正
孔の注入性もしくは輸送性を与える有機化合物604(5−ジフェニルアミノ−8−キノ
リノール)を、第1のゾルにおける金属(ここではモリブデン)1molに対して0.5
mol添加した第2のゾル605を得る経路を示したものである。第2のゾル605には
、適宜適当な有機溶媒を添加してもよい。
【0108】
なお、有機化合物604の量は、第1のゾル603における金属1molに対して1m
ol以下、0.1mol以上が好ましい。
【0109】
なお、複合材料として、第2の金属酸化物や第3の金属酸化物をさらに添加した複合材
料を作製する場合は、第2の金属酸化物の金属や第3の金属酸化物の金属を含むゾルを、
上述の第1のゾル603と同様に解膠によって作製し、第2のゾル605に添加すればよ
い。あるいはまた、第2の金属酸化物の金属を含む第2の金属アルコキシドや、第3の金
属酸化物の金属を含む第3の金属アルコキシドを添加すればよい。この時、適宜安定化剤
や水をさらに添加してもよい。また、第3の金属酸化物として酸化珪素を適用する場合は
、第3の金属アルコキシドとしてテトラアルコキシシランを用いればよいが、この時第2
のゾル605を酸性またはアルカリ性にするのが好ましい。より好ましくは、pH1〜3
の酸性である。
【0110】
式(27)は、上記で得られた第2のゾル605を塗布、焼成して本発明の複合材料6
06を得るプロセスを示したものである。なお、そのプロセスとしては、第2のゾル60
5を基材上に湿式塗布した後、100℃以上300℃以下の温度にて常圧下または減圧下
で焼成する手法を用いることが出来る。焼成雰囲気は大気中、不活性気体(窒素、アルゴ
ン等)中のどちらでも構わない。また、第2のゾル605に安定化剤が含まれる場合は、
この焼成により安定化剤を除去することが好ましい。
【0111】
なお、第2のゾル605に安定化剤が含まれる場合は、第2のゾル605を基材上に湿
式塗布した後、安定化剤としてのβ−ジケトンが金属原子に配位した状態の紫外吸収スペ
クトルに対して重なりを持つ波長の紫外線を照射し、β−ジケトンを解離させることによ
りゲル化を進行させても良い。そしてその後、上述と同様の手法で焼成することにより、
本発明の複合材料606を得ることができる。
【0112】
また、第2のゾル605が金属アルコキシドを含む場合、第2のゾル605を基材上に
湿式塗布し、乾燥させ、水蒸気にて加水分解を行ってもよい。そしてその後、上述と同様
の手法で焼成することにより、本発明の複合材料606を得ることができる。
【0113】
ここで、上述した湿式塗布法としては、ディップコート法、またはスピンコート法、また
はインクジェット法などを用いることができるが、これらに限定されることはない。
【0114】
(実施の形態7)
本実施の形態では、実施形態3または4で述べたような本発明の複合材料を、金属アル
コキシドを用いたゾルーゲル法により製造する方法について説明する。
【0115】
そのスキームを下記式(28)〜(31)に示す。なお、本実施の形態では、第1の金
属酸化物骨格としてアルミニウム酸化物骨格を、正孔の注入性もしくは輸送性を有し、ア
ルミニウム原子にキレート配位することができる有機化合物として5−ジフェニルアミノ
−8−キノリノールを、該有機化合物に対して電子受容性を示す第2の金属酸化物として
チタン酸化物を、それぞれ用いた複合材料(実施の形態3)を作製する場合を例に説明す
る。他の金属酸化物骨格を用いる場合や、複数の金属を有する金属酸化物骨格を用いる場
合、あるいは他の有機化合物を用いる場合も、基本原理は全て同様である。
【0116】
【化14】

【0117】
【化15】

【0118】
【化16】

【0119】
【化17】

【0120】
式(28)は、第1の金属酸化物における金属原子を含む金属アルコキシド701(ここ
ではアルミニウムsec−ブトキシド)と、本発明の複合材料に正孔の注入性もしくは輸
送性を与える有機化合物702(ここでは5−ジフェニルアミノ−8−キノリノール)と
、安定化剤703(ここではアセト酢酸エチル)と、を2:1:1[単位;mmol]の
割合で適当な有機溶媒に溶解して反応させた溶液704を調製し、さらに水を添加して加
水分解を行った第1のゾル705を得る経路を示したものである。この時、有機溶媒とし
ては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタ
ノール、sec−ブタノール等の低級アルコールの他、THF、アセトニトリル、ジクロ
ロメタン、ジクロロエタン、あるいはこれらの混合溶媒等を用いることができるが、これ
に限定されることはない。
【0121】
また、有機化合物702の量は、金属アルコキシド701の量1molに対して1mo
l以下、0.1mol以上が好ましい。
【0122】
なお、安定化剤703は、水を添加した際に、急激な重縮合の進行による沈殿の生成を
抑制するためのものであるが、有機化合物702は安定化剤の役割も担うことができるた
め、安定化剤703は必ずしも必要ではない。ただし、有機化合物702の量が少ない場
合(具体的には金属アルコキシド701の量1molに対して0.5mol以下)は、安
定化能力が損なわれるため、安定化剤703が添加された方が好ましい。安定化剤703
としては、β−ジケトン、ジアミン、アミノアルコール等の弱いキレート剤が好ましく、
具体的には式(28)中で示したアセト酢酸エチルの他、アセチルアセトン、ベンゾイル
アセトン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン等が挙げられるが、これらに限定さ
れることはない。安定化剤703の量は、金属アルコキシド701の量1molに対し0
.5mol以上あれば効果を及ぼすことができる。また、金属アルコキシド701の金属
は、6価以下であるため、安定化剤703の添加量は金属アルコキシド701の量1mo
lに対し6mol以下が好ましい。
【0123】
加水分解に用いる水の添加量としては、金属アルコキシド701の金属が2価〜6価で
あるため、金属アルコキシド701 1molに対して2mol以上6mol以下が好ま
しい。ただし、加水分解は必ずしも必要ではない。
【0124】
式(29)は、第2の金属酸化物における金属原子を含む金属アルコキシド706(こ
こではペンタイソプロポキシチタン(V))と、安定化剤707(ここではアセト酢酸エ
チル)と、を1:1[単位;mol]の割合で適当な有機溶媒に溶解して反応させた溶液
708を調製し、さらに水を添加して加水分解を行った第2のゾル709を得る経路を示
したものである。この時、有機溶媒としては、第1のゾル705と同様のものを用いるこ
とができる。
【0125】
加水分解に用いる水の添加量としては、金属アルコキシド706の金属が2価〜6価であ
るため、金属アルコキシド706の量1molに対して2mol以上6mol以下が好ま
しい。ただし、加水分解は必ずしも必要ではない。
【0126】
なお、安定化剤707は、加水分解を行わない場合は必ずしも必要ではない。安定化剤
707としては、上述のものを用いることができる。安定化剤707の量は、金属アルコ
キシド706の量1molに対し0.5mol以上あれば効果を及ぼすことができる。ま
た、金属アルコキシド706の金属は、6価以下であるため、安定化剤707の添加量は
金属アルコキシド706の量1molに対し6mol以下が好ましい。
【0127】
式(30)は、第1のゾル705と第2のゾル709とを混合し、第3のゾル710を
得る経路を示したものである。この時、第3のゾル710において、有機化合物702の
量が、第2の金属アルコキシド706の金属の量1molに対し、10mol以下、0.
1mol以上となるように混合することが好ましい。なお、複合材料として、第3の金属
酸化物をさらに添加した複合材料を作製する場合は、第3のゾル710に対して、第3の
金属酸化物の金属を含む第3の金属アルコキシドを添加すればよい。この時、適宜上述し
た安定化剤をさらに添加してもよい。また、第3の金属酸化物として酸化珪素を適用する
場合は、第3の金属アルコキシドとしてテトラアルコキシシランを用いればよいが、この
時第3の金属アルコキシドを酸性またはアルカリ性にするのが好ましい。より好ましくは
、pH1〜3の酸性である。
【0128】
式(31)は、上記で得られた第3のゾル710を塗布、焼成して本発明の複合材料7
11を得るプロセスを示したものである。なお、そのプロセスとしては、第3のゾルを基
材上に湿式塗布した後、100℃以上300℃以下の温度にて常圧下または減圧下で焼成
する手法を用いることが出来る。焼成雰囲気は大気中、不活性気体(窒素、アルゴン等)
中のどちらでも構わない。また、第3のゾル710が安定化剤を含む場合は、この焼成に
より安定化剤を除去することが好ましい。
【0129】
なお、β−ジケトン(ここではアセト酢酸エチル)を安定化剤703として添加してい
る場合は、第3のゾルを基材上に湿式塗布した後、β−ジケトンが金属原子に配位した状
態の紫外吸収スペクトルに対して重なりを持つ波長の紫外線を照射し、β−ジケトンを解
離させることによりゲル化を進行させても良い。そしてその後、上述と同様の手法で焼成
することにより、本発明の複合材料711を得ることができる。
【0130】
また、式(28)や式(29)で加水分解を行わなかった場合、第3のゾル710をそ
のまま基材上に湿式塗布し、乾燥させ、水蒸気にて加水分解を行ってもよい。そしてその
後、上述と同様の手法で焼成することにより、本発明の複合材料711を得ることができ
る。
【0131】
ここで、上述した湿式塗布法としては、ディップコート法、またはスピンコート法、また
はインクジェット法などを用いることができるが、これらに限定されることはない。
【0132】
(実施の形態8)
本実施の形態では、実施形態3または4で述べたような本発明の複合材料を、金属アル
コキシドを用い、かつ解膠も利用したゾルーゲル法により製造する方法について説明する

【0133】
そのスキームを下記式(32)〜(35)に示す。なお、本実施の形態では、第1の金
属酸化物骨格としてアルミニウム酸化物骨格を、正孔の注入性もしくは輸送性を有し、ア
ルミニウム原子にキレート配位することができる有機化合物として5−ジフェニルアミノ
−8−キノリノールを、該有機化合物に対して電子受容性を示す第2の金属酸化物として
モリブデン酸化物を、それぞれ用いた複合材料(実施の形態3)を作製する場合を例に説
明する。他の金属酸化物骨格を用いる場合や、複数の金属を有する金属酸化物骨格を用い
る場合、あるいは他の有機化合物を用いる場合も、基本原理は全て同様である。
【0134】
【化18】

【0135】
【化19】

【0136】
【化20】

【0137】
【化21】

【0138】
式(32)は、第1の金属酸化物における金属原子を含む金属アルコキシド801(こ
こではアルミニウムsec−ブトキシド)と、本発明の複合材料に正孔の注入性もしくは
輸送性を与える有機化合物802(ここでは5−ジフェニルアミノ−8−キノリノール)
と、安定化剤803(ここではアセト酢酸エチル)と、を2:1:1[単位;mmol]
の割合で適当な有機溶媒に溶解して反応させた溶液804を調製し、さらに水を添加して
加水分解を行った第1のゾル805を得る経路を示したものである。この時、有機溶媒と
しては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブ
タノール、sec−ブタノール等の低級アルコールの他、THF、アセトニトリル、ジク
ロロメタン、ジクロロエタン、あるいはこれらの混合溶媒等を用いることができるが、こ
れに限定されることはない。
【0139】
また、有機化合物802の量は、金属アルコキシド801の量1molに対し1mol
以下、0.1mol以上が好ましい。
【0140】
なお、安定化剤803は、水を添加した際に、急激な重縮合の進行による沈殿の生成を
抑制するためのものであるが、有機化合物802は安定化剤の役割も担うことができるた
め、安定化剤803は必ずしも必要ではない。ただし、有機化合物802の量が少ない場
合(具体的には金属アルコキシド801の量1molに対して0.5mol以下)は、安
定化能力が損なわれるため、安定化剤803が添加された方が好ましい。安定化剤803
としては、β−ジケトン、ジアミン、アミノアルコール等の弱いキレート剤が好ましく、
具体的には式(32)中で示したアセト酢酸エチルの他、アセチルアセトン、ベンゾイル
アセトン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン等が挙げられるが、これらに限定さ
れることはない。安定化剤803の量は、金属アルコキシド801の量1molに対し0
.5mol以上あれば効果を及ぼすことができる。また、金属アルコキシド801の金属
は、6価以下であるため、安定化剤803の添加量は金属アルコキシド801の量1mo
lに対し6mol以下が好ましい。
【0141】
加水分解に用いる水の添加量としては、金属アルコキシド801の金属が2価〜6価で
あるため、金属アルコキシド801の量1molに対して2mol以上6mol以下が好
ましい。ただし、加水分解は必ずしも必要ではない。
【0142】
式(33)は、第2の金属酸化物における金属原子を含む金属塩化物806(ここでは
塩化モリブデン(V))の水溶液に対し、アンモニア水を滴下することで金属水酸化物の
多核沈殿807を得、次いで酢酸等の酸を加えて還流する(解膠する)ことにより、第2
のゾル808を得る手法を示している。第2のゾル808には、適宜適当な有機溶媒を添
加してもよい。
【0143】
式(34)は、第1のゾル805と第2のゾル808とを混合し、第3のゾル809を
得る経路を示したものである。この時、第3のゾル809において、有機化合物802の
量が、第2のゾル808に含まれる金属の量1molに対し、10mol以下、0.1m
ol以上となるように混合することが好ましい。なお、複合材料として、第3の金属酸化
物をさらに添加した複合材料を作製する場合は、第3のゾル809に対して、第3の金属
酸化物の金属を含む第3の金属アルコキシドを添加すればよい。この時、適宜上述した安
定化剤をさらに添加してもよい。また、第3の金属酸化物として酸化珪素を適用する場合
は、第3の金属アルコキシドとしてテトラアルコキシシランを用いればよいが、この時第
3のゾル809を酸性またはアルカリ性にするのが好ましい。より好ましくは、pH1〜
3の酸性である。
【0144】
式(35)は、上記で得られた第3のゾル809を塗布、焼成して本発明の複合材料8
10を得るプロセスを示したものである。なお、そのプロセスとしては、第3のゾル80
9を基材上に湿式塗布した後、100℃以上300℃以下の温度にて常圧下または減圧下
で焼成する手法を用いることが出来る。焼成雰囲気は大気中、不活性気体(窒素、アルゴ
ン等)中のどちらでも構わない。また、第3のゾル809が安定化剤を含む場合は、この
焼成により安定化剤を除去することが好ましい。
【0145】
なお、β−ジケトン(ここではアセト酢酸エチル)を安定化剤として添加している場合
は、第3のゾルを基材上に湿式塗布した後、β−ジケトンが金属原子に配位した状態の紫
外吸収スペクトルに対して重なりを持つ波長の紫外線を照射し、β−ジケトンを解離させ
ることによりゲル化を進行させても良い。そしてその後、上述と同様の手法で焼成するこ
とにより、本発明の複合材料810を得ることができる。
【0146】
また、式(32)で加水分解を行わなかった場合、第3のゾル809をそのまま基材上
に湿式塗布し、乾燥させ、水蒸気にて加水分解を行ってもよい。そしてその後、上述と同
様の手法で焼成することにより、本発明の複合材料810を得ることができる。
【0147】
ここで、上述した湿式塗布法としては、ディップコート法、またはスピンコート法、また
はインクジェット法などを用いることができるが、これらに限定されることはない。
【0148】
(実施の形態9)
続いて本発明の発光素子について説明する。本発明の発光素子は電子注入層、電子輸送
層、正孔注入層及び正孔輸送層に代表される各機能層の少なくとも一層が、実施の形態1
乃至実施の形態4で示した本発明の複合材料により形成された発光素子である。
【0149】
本発明の発光素子は上記複合材料により形成された層の外に少なくとも発光物質を含む
発光層を一対の電極間に挟んでなっており、電圧をかけることによって発光層から発光を
得ることができる。
【0150】
このような構成を有する本発明の発光素子は、電子注入層、電子輸送層、正孔注入層及
び正孔輸送層に代表される各機能層のうち少なくとも1層が金属酸化物骨格を有する本発
明の複合材料により形成されていることによって耐熱性に優れた発光素子とすることがで
きる。また、長時間安定に駆動できる発光素子とすることができる。
【0151】
また、当該複合材料は、電子又は正孔注入もしくは輸送性を有する有機化合物と、当該
有機化合物と電子の授受を行うことができる金属酸化物とが含まれていることによって、
導電性やキャリヤ注入、輸送性が向上している。
【0152】
また、本発明の発光素子は、電子又は正孔注入もしくは輸送性を有する有機化合物と、
当該有機化合物と電子の授受を行うことができる金属酸化物とが含まれている複合材料を
用いることにより、耐熱性の良い、又は/及び長時間安定に駆動できる発光素子とするこ
とができ、且つ消費電力の小さい発光素子を作製することが可能となる。
【0153】
なお、本発明の発光素子は上記機能層のうち、複合材料で形成しなかった層をさらに他
の材料により設けても良い。この場合も耐熱性、耐久性に最も問題のある層を複合材料で
形成することによって耐熱性、耐久性を向上させることができる。
【0154】
なお、本発明の複合材料を機能層として形成した発光素子は機能層の膜厚を厚く形成し
ても駆動電圧の上昇が少ない。そのため、発光素子の一対の電極のうち、先に形成される
方の電極と発光層との間の機能層の膜厚を厚く形成することができ、ゴミなどによる発光
素子の短絡が起きることを低減することができる。膜厚は100nm以上あればこのよう
な不良を有効に低減することが出来る。
【0155】
厚膜化する機能層には、電子又は正孔注入もしくは輸送性を有する有機化合物と、当該有
機化合物と電子の授受を行うことができる金属酸化物とが含まれている本発明の複合材料
を含むため、導電性やキャリヤ注入、輸送性が向上しており、駆動電圧を大幅に上昇させ
ることなく、すなわち消費電力を大幅に増大することなくゴミなどによる発光素子の短絡
が起きることを低減することができる。
【0156】
なお、本発明の発光素子は電子注入層、電子輸送層、正孔注入層及び正孔輸送層に代表
される機能層のいずれか一層が上記複合材料により形成されていても良いし、2以上の複
数層が上記複合材料により形成されていても良い。また、上記機能層の全てが上記複合材
料により形成されていても良い。また、発光層も金属酸化物骨格中の金属原子にキレート
配位した有機化合物を有する複合材料で形成することができる。発光層を複合材料により
形成することでさらに耐熱性に優れ、長時間安定に駆動することができる発光素子を作製
することができる。この際、発光層には電圧をかけることで発光する有機化合物と金属酸
化物の原料とを含むゾルを、発光層を形成したい表面に塗布、焼成することにより、発光
層を形成することができる。例えば、金属酸化物骨格中の金属原子に、電圧をかけること
で発光する有機化合物がキレート配位した構成の発光層を形成することができる。なお、
このゾルの作製方法については本発明の実施の形態7における第1のゾル705の作製方
法に準じ、塗布、焼成方法は本発明の複合材料の塗布、焼成方法に準じる。これにより金
属酸化物骨格を有する発光層を作製することができる。
【0157】
続いて本発明の発光素子例の模式図を図19、図20に示す。図19(A)において、
は基板などの絶縁表面200上に第1の電極201が形成され、さらにその上に本発明の
複合材料で形成された正孔注入輸送層202(正孔注入層と正孔輸送層に分かれていても
良い)、発光層203、本発明の複合材料で形成された電子注入輸送層204(電子注入
層と電子輸送層に分かれていても良い)が順に積層されている。また、その上には発光素
子の第2の電極205が設けられ、当該発光素子を駆動する際には第1の電極201が第
2の電極205より電位が高くなるように電圧を印加する(即ち第1の電極201が陽極
として機能し、第2の電極205が陰極として機能する)ことで発光が得られる構造とな
っている。
【0158】
発光層は、蒸着法により形成されていても、上述したような電圧をかけることで発光す
る有機化合物および金属酸化物骨格を有する複合材料から形成されていてもよい。
【0159】
この構成では正孔注入輸送層202と電子注入輸送層204との両方を本発明の複合材
料により形成したが、いずれかが本発明の複合材料で形成しても構わない。
【0160】
なお、本発明の複合材料で形成しない層に関しては、公知の材料で、蒸着法など公知の
方法により形成すればよい。
【0161】
図19(A)に記載したような発光素子は耐熱性に優れ、長期にわたっても安定に駆動
することが可能な発光素子とすることが可能である。
【0162】
図19(B)は、図19(A)における正孔注入輸送層202を厚膜化して形成した正
孔注入輸送層206を有する発光素子の模式図である。その他の層は図19(A)と同様
であるので説明を省略する。発光素子は極薄い薄膜を積層することで形成するが、下部に
形成された第1の電極201に曲率が小さく高さの高い凸部(ゴミや下部の凹凸起因と考
えられる)が存在すると、薄膜が当該凸部を覆いきれず、膜が途切れてしまうことによっ
てショートなどの不良が発生する。一方でそれを防ぐ為に膜を厚く形成すると、抵抗が高
くなり、駆動電圧が上昇してしまうと言う不都合があった。しかし、本発明の複合材料は
、電子又は正孔注入もしくは輸送性を有する有機化合物と、当該有機化合物と電子の授受
を行うことができる金属酸化物とが含まれていることから、導電率が高く、厚膜化しても
抵抗の上昇を抑えることができる。また、図19(B)の構成を有する発光素子は基本的
に図19(A)の構成を有しているため、耐熱性に優れ、長期にわたっても安定に駆動す
ることが可能な発光素子である。このことから、図19(B)の構成を有する本発明の発
光素子は耐熱性に優れ、長期にわたっても安定に駆動することが可能であり、不良の少な
い発光素子であることがわかる。
【0163】
図20(A)は図19(A)における電子注入輸送層204と第2の電極205との間
に、本発明の複合材料で形成された正孔注入輸送層207(正孔注入層と正孔輸送層に分
かれていても良い)を形成した例である。本発明の複合材料で形成された正孔注入輸送層
207は複合材料中における有機化合物として、正孔の注入もしくは輸送性に優れた有機
化合物を用い、当該有機化合物とから電子を受容することが可能な物質をさらに有する複
合材料、即ち、本来ならば正孔注入層又は正孔輸送層として用いられる材料で形成されて
いる。
【0164】
しかし、発光層203を基準として陰極として働く電極(第2電極205)側に、本発
明の複合材料で形成された電子注入輸送層204と本発明の複合材料で形成された正孔注
入輸送層207を順に積層することによって、電圧をかけると本発明の複合材料で形成さ
れた電子注入輸送層204より電子が発生し発光層203に注入され、本発明の複合材料
で形成された正孔注入輸送層207より正孔が発生し陰極として働く電極(第2電極20
5)に注入することによって電流が流れ、発光を得ることができる。
【0165】
また、このような構造を発光層203を基準として陽極として働く電極側に形成する場
合には、同様に電子注入輸送層として用いることが出来る本発明の複合材料による層と正
孔注入輸送層として用いることが出来る本発明の複合材料による層を順に積層することに
よって形成することができる。なお、このような構造は発光層203を中心として陰極と
して働く電極201側、陽極として働く電極205側のどちらに設けても良いし、その両
方に設けても良い。
【0166】
このような構成を有する発光素子は第1の電極201や第2の電極205として、仕事
関数を考慮せずに材料を選択することが出来、反射電極や透明電極など構造に併せてより
好適な電極を選択することが可能となる。
【0167】
図20(B)は白色発光を得ることが可能な発光素子の例である。図19(A)におけ
る正孔注入輸送層202と電子注入輸送層204との間に第1の発光層208、間隔層2
09、第2の発光層210が設けられている。第1の発光層208と第2の発光層210
の材料は赤と青緑など、互いに補色となる関係を有する発光色を呈する材料により形成す
ることで白色発光を得ることができる。
【0168】
間隔層209は正孔輸送性を有する材料、電子輸送性を有する材料、バイポーラ性を有
する材料、ホールブロッキング性を有する材料、キャリアを発生する材料等により形成す
ることが出来、透光性を有することが条件である。間隔層209は第1の発光層208の
発光と第2の発光層210との発光がエネルギー移動によりどちらかのみ強く発光してし
まうことを防ぐ目的で設けられ、このような現象が起こらないのであれば、特に設けずと
も良い。
【0169】
図20(B)の構成を有する発光素子は白色発光を得ることが出来るうえ、耐熱性に優
れ、長時間安定に駆動できる発光素子である。このような素子は照明用途に好適に用いる
ことができる。
【0170】
なお、本実施の形態は他の実施の形態と矛盾の無い限り組み合わせて用いることが可能
である。
【0171】
(実施の形態10)
本実施の形態では、本発明の表示装置について図11、図12を参照し、作製方法を示
しながら説明する。なお、本実施の形態ではアクティブマトリクス型の表示装置を作製す
る例を示したが、パッシブマトリクス型の表示装置であっても本発明の発光装置を適用す
ることができるのはもちろんである。
【0172】
まず、基板50上に第1の下地絶縁層51a、第2の下地絶縁層51bを形成した後、
さらに半導体層を第2の下地絶縁層51b上に形成する。(図11(A))
【0173】
基板50の材料としてはガラス、石英やプラスチック(ポリイミド、アクリル、ポリエ
チレンテレフタラート、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリエーテルスルホンな
ど)等を用いることができる。これら基板は必要に応じてCMP等により研磨してから使
用しても良い。本実施の形態においてはガラス基板を用いる。
【0174】
第1の下地絶縁層51a、第2の下地絶縁層51bは基板50中のアルカリ金属やアル
カリ土類金属など、半導体膜の特性に悪影響を及ぼすような元素が半導体層中に拡散する
のを防ぐ為に設ける。材料としては酸化珪素、窒化珪素、窒素を含む酸化珪素、酸素を含
む窒化珪素などを用いることができる。本実施の形態では第1の下地絶縁層51aを窒化
珪素で、第2の下地絶縁層51bを酸化珪素で形成する。本実施の形態では、下地絶縁層
を第1の下地絶縁層51a、第2の下地絶縁層51bの2層で形成したが、単層で形成し
てもかまわないし、2層以上の多層であってもかまわない。また、基板からの不純物の拡
散が気にならないようであれば下地絶縁層は設ける必要がない。
【0175】
続いて形成される半導体層は本実施の形態では非晶質珪素膜をレーザ結晶化して得る。
第2の下地絶縁層51b上に非晶質珪素膜を25〜100nm(好ましくは30〜60n
m)の膜厚で形成する。作製方法としては公知の方法、例えばスパッタ法、減圧CVD法
またはプラズマCVD法などが使用できる。その後、500℃で1時間の加熱処理を行い
水素出しをする。
【0176】
続いてレーザ照射装置を用いて非晶質珪素膜を結晶化して結晶質珪素膜を形成する。本
実施の形態のレーザ結晶化ではエキシマレーザを使用し、発振されたレーザビームを光学
系を用いて線状のビームスポットに加工し非晶質珪素膜に照射することで結晶質珪素膜と
し、半導体層として用いる。
【0177】
非晶質珪素膜の他の結晶化の方法としては、他に、熱処理のみにより結晶化を行う方法
や結晶化を促進する触媒元素を用い加熱処理を行う事によって行う方法もある。結晶化を
促進する元素としてはニッケル、鉄、パラジウム、スズ、鉛、コバルト、白金、銅、金な
どが挙げられ、このような元素を用いることによって熱処理のみで結晶化を行った場合に
比べ、低温、短時間で結晶化が行われるため、ガラス基板などへのダメージが少ない。熱
処理のみにより結晶化をする場合は、基板50を熱に強い石英基板などにすればよい。
【0178】
続いて、必要に応じて半導体層にしきい値をコントロールする為に微量の不純物添加、
いわゆるチャネルドーピングを行う。要求されるしきい値を得る為にN型もしくはP型を
呈する不純物(リン、ボロンなど)をイオンドーピング法などにより添加する。
【0179】
その後、図11(A)に示すように半導体層を所定の形状に成形し、島状の半導体層5
2を得る。半導体層の成形は半導体層にフォトレジストを塗布し、所定のマスク形状を露
光し、焼成して、半導体層上にレジストマスクを形成し、このマスクを用いてエッチング
をすることにより行われる。
【0180】
続いて半導体層52を覆うようにゲート絶縁層53を形成する。ゲート絶縁層53はプラ
ズマCVD法またはスパッタ法を用いて膜厚を40〜150nmとして珪素を含む絶縁層
で形成する。本実施の形態では酸化珪素を用いて形成する。
【0181】
次いで、ゲート絶縁層53上にゲート電極54を形成する。ゲート電極54はタンタル
、タングステン、チタン、モリブデン、アルミニウム、銅、クロム、ニオブから選ばれた
元素、または元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料で形成してもよい。また、
リン等の不純物元素をドーピングした多結晶珪素膜に代表される半導体膜を用いてもよい

【0182】
また、本実施の形態ではゲート電極54は単層で形成されているが、下層にタングステ
ン、上層にモリブデンなどの2層以上の積層構造でもかまわない。積層構造としてゲート
電極を形成する場合であっても前段で述べた材料を使用するとよい。また、その組み合わ
せも適宜選択すればよい。ゲート電極54の加工はフォトレジストを用いたマスクを利用
し、エッチングをして行う。
【0183】
続いて、ゲート電極54をマスクとして半導体層52に高濃度の不純物を添加する。こ
れによって半導体層52、ゲート絶縁層53、及びゲート電極54を含む薄膜トランジス
タ70が形成される。
【0184】
なお、薄膜トランジスタ70の作製工程については特に限定されず、所望の構造のトラ
ンジスタを作製できるように適宜変更すればよい。
【0185】
本実施の形態では、レーザ結晶化を使用して結晶化した結晶性シリコン膜を用いたトッ
プゲートの薄膜トランジスタを用いたが、非晶質半導体膜を用いたボトムゲート型の薄膜
トランジスタを画素部に用いることも可能である。非晶質半導体は珪素だけではなくシリ
コンゲルマニウムも用いることができ、シリコンゲルマニウムを用いる場合、ゲルマニウ
ムの濃度は0.01〜4.5atomic%程度であることが好ましい。
【0186】
また非晶質半導体中に0.5nm〜20nmの結晶粒を観察することができる微結晶半
導体膜(セミアモルファス半導体)を用いてもよい。また0.5nm〜20nmの結晶粒
を観察することができる微結晶はいわゆるマイクロクリスタル(μc)とも呼ばれている

【0187】
セミアモルファス半導体であるセミアモルファスシリコン(SASとも表記する)は、
珪化物気体をグロー放電分解することにより得ることができる。代表的な珪化物気体とし
ては、SiHであり、その他にもSi、SiHCl、SiHCl、SiC
、SiFなどを用いることができる。この珪化物気体を水素、水素とヘリウム、ア
ルゴン、クリプトン、ネオンから選ばれた一種または複数種の希ガス元素で希釈して用い
ることでSASの形成を容易なものとすることができる。希釈率は10倍〜1000倍の
範囲で珪化物気体を希釈することが好ましい。グロー放電分解による被膜の反応生成は0
.1Pa〜133Paの範囲の圧力で行えば良い。グロー放電を形成するための電力は1
MHz〜120MHz、好ましくは13MHz〜60MHzの高周波電力を供給すれば良
い。基板加熱温度は300度以下が好ましく、100〜250度の基板加熱温度が好適で
ある。
【0188】
このようにして形成されたSASはラマンスペクトルが520cm−1よりも低波数側
にシフトしており、X線回折ではSi結晶格子に由来するとされる(111)、(220
)の回折ピークが観測される。未結合手(ダングリングボンド)を終端するために水素ま
たはハロゲンを少なくとも1原子%またはそれ以上含ませている。膜中の不純物元素とし
て、酸素、窒素、炭素などの大気成分の不純物は1×1020/cm以下とすることが
望ましく、特に、酸素濃度は5×1019/cm以下、好ましくは1×1019/cm
以下とする。TFTにしたときの電界効果移動度μは1〜10cm/Vsecとなる

【0189】
また、このSASをレーザでさらに結晶化して用いても良い。
【0190】
続いて、ゲート電極54、ゲート絶縁層53を覆って絶縁膜(水素化膜)59を窒化珪
素により形成する。絶縁膜(水素化膜)59を形成したら480℃で1時間程度加熱を行
って、不純物元素の活性化及び半導体層52の水素化を行う。
【0191】
続いて、絶縁膜(水素化膜)59を覆う第1の層間絶縁層60を形成する。第1の層間
絶縁層60を形成する材料としては酸化珪素、アクリル、ポリイミドやシロキサン、lo
w−k材料等をもちいるとよい。本実施の形態では酸化珪素膜を第1の層間絶縁層60と
して形成した。(図11(B))
【0192】
次に、半導体層52に至るコンタクトホールを開口する。コンタクトホールはレジスト
マスクを用いて、半導体層52が露出するまでエッチングを行うことで形成することがで
き、ウエットエッチング、ドライエッチングどちらでも形成することができる。なお、条
件によって一回でエッチングを行ってしまっても良いし、複数回に分けてエッチングを行
っても良い。また、複数回でエッチングする際は、ウエットエッチングとドライエッチン
グの両方を用いても良い。(図11(C))
【0193】
そして、当該コンタクトホールや第1の層間絶縁層60を覆う導電層を形成する。当該導
電層を所望の形状に加工し、接続部61a、配線61bなどが形成される。この配線はア
ルミニウム、銅、アルミニウムと炭素とニッケルの合金、アルミニウムと炭素とモリブデ
ンの合金等の単層でも良いが、形成順にモリブデン、アルミニウム、モリブデンの積層構
造やチタン、アルミニウム、チタンやチタン、窒化チタン、アルミニウム、チタンといっ
た積層構造でも良い。(図11(D))
【0194】
その後、接続部61a、配線61b、第1の層間絶縁層60を覆って第2の層間絶縁層
63を形成する。第2の層間絶縁層63の材料としては自己平坦性を有するアクリル、ポ
リイミド、シロキサンなどの塗布膜が好適に利用できる。本実施の形態ではシロキサンを
第2の層間絶縁層63として用いる。(図11(E))
【0195】
続いて第2の層間絶縁層63上に窒化珪素などで絶縁層を形成してもよい。これは後の
画素電極のエッチングにおいて、第2の層間絶縁層63が必要以上にエッチングされてし
まうのを防ぐ為に形成する。そのため、画素電極と第2の層間絶縁層63のエッチングレ
ートの比が大きい場合には特に設けなくとも良い。続いて、第2の層間絶縁層63を貫通
して接続部61aに至るコンタクトホールを形成する。
【0196】
そして当該コンタクトホールと第2の層間絶縁層63(もしくは絶縁層)を覆って、透
光性を有する導電層を形成したのち、当該透光性を有する導電層を加工して薄膜発光素子
の第1の電極64を形成する。ここで第1の電極64は接続部61aと電気的に接触して
いる。
【0197】
第1の電極64の材料としてはアルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)、白金
(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo
)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、リチウム(Li
)、セシウム(Cs)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(
Sr)、チタン(Ti)などの導電性を有する金属、又はそれらの合金、または金属材料
の窒化物(TiN)、インジウム錫酸化物(ITO)、珪素を含有するITO(ITSO
)、酸化インジウムに酸化亜鉛(ZnO)を混合したIZO(indium zinc
oxide)等の金属酸化物などの導電膜により形成することができる。
【0198】
また、発光を取り出す方の電極は透明性を有する導電膜により形成すれば良く、ITO、
ITSO、IZOなどの金属酸化物の他、Al、Ag等金属の極薄膜を用いる。また、後
で形成される第2の電極67の方から発光を取り出す場合は第1の電極は反射率の高い材
料(Al、Ag等)を用いることができる。本実施の形態ではITSOを第1の電極64
として用いた(図12(A))。
【0199】
次に第2の層間絶縁層63(もしくは絶縁層)及び第1の電極64を覆って有機材料も
しくは無機材料からなる絶縁層を形成する。続いて当該絶縁層を第1の電極64の一部が
露出するように加工し、隔壁65を形成する。隔壁65の材料としては、感光性を有する
有機材料(アクリル、ポリイミドなど)が好適に用いられるが、感光性を有さない有機材
料や無機材料で形成してもかまわない。また、隔壁65の材料にチタンブラックやカーボ
ンナイトライドなどの黒色顔料や染料を分散材などを用いて分散し、隔壁65を黒くする
ことでブラックマトリクス様に用いても良い。隔壁65の第1の電極64に向かう端面は
曲率を有し、当該曲率が連続的に変化するテーパー形状をしていることが望ましい(図1
2(B))。
【0200】
次に、隔壁65から露出した第1の電極64を覆って、本発明の複合材料により正孔注
入層を作製する。具体的には、アリールアミン骨格を有する有機化合物と、遷移金属酸化
物を含む複合材料を用いればよい。この正孔注入層は、実施の形態5〜8に記載の方法で
作製すればよく、塗布にはインクジェット法を用いるとよい。次に発光層を公知の方法に
より、作製する。塗布は同様にインクジェット法により行う。続いて、本発明の複合材料
により、電子注入層を作製する。例えば、ピリジン骨格を有する有機化合物と、アルカリ
金属酸化物を含む複合材料を用いればよい。この電子注入層も実施の形態5〜8に記載の
方法で作製すればよく、塗布にはインクジェット法を用いるとよい。
【0201】
続いてホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などから構成さ
れる発光積層体66(電界発光体とも言う)を覆う第2の電極67を形成する。これによ
って第1の電極64と第2の電極67との間に発光層を含む積層体を挟んでなる発光素子
93を作製することができ、第1の電極64に第2の電極67より高い電位をかけること
によって発光を得ることができる。第2の電極67の形成に用いられる電極材料としては
第1の電極64の材料と同様の材料を用いることができる。本実施の形態ではアルミニウ
ムを第2の電極として用いた。
【0202】
上記のような構成を有する発光素子は、発光素子に金属酸化物骨格を有する複合材料が
用いられていることから耐熱性や耐久性に優れた発光素子である。また、本発明の複合材
料は、電子又は正孔注入もしくは輸送性を有する有機化合物と、当該有機化合物と電子の
授受を行うことができる金属酸化物とが含まれていることから、正孔又は電子の注入もし
くは輸送性が向上し、さらには導電性が向上した発光素子とすることができる。
【0203】
また、正孔又は電子の注入もしくは輸送性が向上し、さらに導電性が向上した複合材料
を用いて第1の電極上の機能層の厚さを100nm以上に厚く形成することで、駆動電圧
の大幅上昇を招かずに第1の電極上のゴミなどによる不良の発生を低減させることができ
る。
【0204】
なお、本実施の形態では、正孔注入層を第1の電極64上に形成したが、第1の電極6
4上には電子注入層を設け、積層順を反転させた構成としても良い。この場合、第1の電
極にかける電圧を第2の電極にかける電位より低くすることで発光を得ることができる。
【0205】
その後、プラズマCVD法により窒素を含む酸化珪素膜を第1のパッシベーション膜と
して形成する。窒素を含む酸化珪素膜を用いる場合には、プラズマCVD法でSiH
O、NHから作製される酸化窒化ケイ素膜、またはSiH、NOから作製され
る酸化窒化ケイ素膜、あるいはSiH、NOをArで希釈したガスから形成される酸
化窒化ケイ素膜を形成すれば良い。もちろん、第1のパッシベーション膜は単層構造に限
定されるものではなく、他のケイ素を含む絶縁層を単層構造、もしくは積層構造として用
いても良い。また、窒化炭素膜と窒化ケイ素膜の多層膜やスチレンポリマーの多層膜、窒
化ケイ素膜やダイヤモンドライクカーボン膜を窒素を含む酸化珪素膜の代わりに形成して
もよい。
【0206】
続いて発光素子を水などの劣化を促進する物質から保護するために、表示部の封止を行
う。対向基板を封止に用いる場合は、絶縁性のシール材により、外部接続部が露出するよ
うに貼り合わせる。対向基板と素子基板との間の空間には乾燥した窒素などの不活性気体
を充填しても良いし、シール材を画素部全面に塗布しそれにより対向基板を貼り合わせて
も良い。シール材には紫外線硬化樹脂などを用いると好適である。シール材には乾燥剤や
基板間のギャップを一定に保つための粒子を混入しておいても良い。続いて外部接続部に
フレキシブル配線基板を貼り付けることによって、表示装置が完成する。
【0207】
以上のように作製した表示装置の構成の一例を図13参照しながら説明する。なお、形
が異なっていても同様の機能を示す部分には同じ符号を付し、その説明を省略する部分も
ある。本実施の形態では、LDD構造を有する薄膜トランジスタ70が接続部61aを介
して発光素子93に接続している。
【0208】
図13(A)は第1の電極64が透光性を有する導電膜により形成されており、基板5
0側に発光積層体66より発せられた光が取り出される構造である。なお94は対向基板
であり、発光素子93が形成された後、シール材などを用い、基板50に固着される。対
向基板94と発光素子93との間に透光性を有する樹脂88等を充填し、封止することに
よって発光素子93が水分により劣化することを防ぐ事ができる。また、樹脂88が吸湿
性を有していることが望ましい。さらに樹脂88中に透光性の高い乾燥剤89を分散させ
るとさらに水分の影響を抑えることが可能になるためさらに望ましい形態である。
【0209】
図13(B)は第1の電極64と第2の電極67両方が透光性を有する導電膜により形
成されており、基板50及び対向基板94の両方に光を取り出すことが可能な構成となっ
ている。また、この構成では基板50と対向基板94の外側に偏光板90を設けることに
よって画面が透けてしまうことを防ぐことができ、視認性が向上する。偏光板90の外側
には保護フィルム91を設けると良い。
【0210】
なお、表示機能を有する本発明の表示装置には、アナログのビデオ信号、デジタルのビ
デオ信号のどちらを用いてもよい。デジタルのビデオ信号を用いる場合はそのビデオ信号
が電圧を用いているものと、電流を用いているものとに分けられる。発光素子の発光時に
おいて、画素に入力されるビデオ信号は、定電圧のものと、定電流のものがあり、ビデオ
信号が定電圧のものには、発光素子に印加される電圧が一定のものと、発光素子に流れる
電流が一定のものとがある。またビデオ信号が定電流のものには、発光素子に印加される
電圧が一定のものと、発光素子に流れる電流が一定のものとがある。この発光素子に印加
される電圧が一定のものは定電圧駆動であり、発光素子に流れる電流が一定のものは定電
流駆動である。定電流駆動は、発光素子の抵抗変化によらず、一定の電流が流れる。本発
明の発光表示装置及びその駆動方法は、上記したいずれの駆動方法を用いてもよい。
【0211】
本実施の形態は他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることが可能である。
【0212】
(実施の形態11)
本実施の形態では、本発明の一形態に相当する発光装置のパネルの外観について図14
を用いて説明する。図14は基板4001上に形成されたトランジスタ4008と401
0および発光素子4011を対向基板4006との間に形成したシール材4005によっ
て封止したパネルの上面図であり、図14(B)は図14(A)の断面図に相応する。ま
た、このパネルに搭載されている発光素子4011の有する構造は、実施の形態9に示し
たような構成である。
【0213】
基板4001上に設けられた画素部4002と信号線駆動回路4003と走査線駆動回
路4004とを囲むようにして、シール材4005が設けられている。また、画素部40
02と信号線駆動回路4003と、走査線駆動回路4004の上に対向基板4006が設
けられている。よって画素部4002と信号線駆動回路4003と、走査線駆動回路40
04とは基板4001とシール材4005と対向基板4006とによって充填材4007
と共に密封されている。
【0214】
また、基板4001上に設けられた画素部4002と信号線駆動回路4003と走査線
駆動回路4004とは薄膜トランジスタを複数有しており、図14(B)では信号線駆動
回路4003に含まれる薄膜トランジスタ4008と、画素部4002に含まれる薄膜ト
ランジスタ4010とを示す。
【0215】
また、発光素子4011は、薄膜トランジスタ4010と電気的に接続されている。
【0216】
また、引き回し配線4014は画素部4002と信号線駆動回路4003と、走査線駆
動回路4004とに、信号、または電源電圧を供給する為の配線に相当する。引き回し配
線4014は、引き回し配線4015a及び引き回し配線4015bを介して接続端子4
016と接続されている。接続端子4016はフレキシブルプリントサーキット(FPC
)4018が有する端子と異方性導電膜4019を介して電気的に接続されている。
【0217】
なお、充填材4007としては窒素やアルゴンなどの不活性な気体の他に、紫外線硬化
樹脂または熱硬化樹脂を用いることができ、ポリビニルクロライド、アクリル、ポリイミ
ド、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリビニルブチラル、またはエチレンビニレンアセテ
ートを用いる事ができる。
【0218】
なお、本発明の発光装置は発光素子を有する画素部が形成されたパネルと、該パネルに
ICが実装されたモジュールとをその範疇に含む。
【0219】
本実施の形態のような構成のパネル及びモジュールは、発光素子に金属酸化物骨格を有
する複合材料が用いられていることから耐熱性や耐久性に優れたパネル及びモジュールで
ある。また、本発明の複合材料は、電子又は正孔注入もしくは輸送性を有する有機化合物
と、当該有機化合物と電子の授受を行うことができる金属酸化物とが含まれていることか
ら、正孔又は電子の注入もしくは輸送性が向上し、さらには導電性が向上したパネル及び
モジュールとすることができる。
【0220】
また、正孔又は電子の注入もしくは輸送性が向上し、さらに導電性が向上した複合材料
を用いて第1の電極上の機能層の厚さを100nm以上に厚く形成することで、駆動電圧
の大幅上昇を招かずに第1の電極上のゴミなどによる不良の発生を低減させることができ
る。
【0221】
本実施の形態は他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることが可能である。
【0222】
(実施の形態12)
実施の形態11にその一例を示したようなモジュールを搭載した本発明の電子機器とし
て、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプ
レイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオコンポ等)、コンピュ
ータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機ま
たは電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDigital Ver
satile Disc(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディス
プレイを備えた装置)などが挙げられる。それらの電子機器の具体例を図15に示す。
【0223】
図15(A)は発光表示装置でありテレビ受像器やパーソナルコンピュータのモニター
などがこれに当たる。筐体2001、表示部2003、スピーカー部2004等を含む。
本発明の発光表示装置は表示部2003耐熱性に優れ、長時間安定に駆動できるため信頼
性の高い発光表示装置である。画素部にはコントランスを高めるため、偏光板、又は円偏
光板を備えるとよい。例えば、封止基板へ1/4λ板、1/2λ板、偏光板の順にフィル
ムを設けるとよい。さらに偏光板上に反射防止膜を設けてもよい。
【0224】
図15(B)は携帯電話であり、本体2101、筐体2102、表示部2103、音声
入力部2104、音声出力部2105、操作キー2106、アンテナ2108等を含む。
本発明の携帯電話は表示部2103は耐熱性に優れ、長時間安定に駆動できるため信頼性
の高い携帯電話である。
【0225】
図15(C)はコンピュータであり、本体2201、筐体2202、表示部2203、
キーボード2204、外部接続ポート2205、ポインティングマウス2206等を含む
。本発明のコンピュータは表示部2203は耐熱性に優れ、長時間安定に駆動できるため
信頼性の高いコンピュータである。図15(C)ではノート型のコンピュータを例示した
が、デスクトップ型のコンピュータなどにも適用することが可能である。
【0226】
図15(D)はモバイルコンピュータであり、本体2301、表示部2302、スイッ
チ2303、操作キー2304、赤外線ポート2305等を含む。本発明のモバイルコン
ピュータは表示部2302は耐熱性に優れ、長時間安定に駆動できるため信頼性の高いモ
バイルコンピュータである。
【0227】
図15(E)は携帯型のゲーム機であり、筐体2401、表示部2402、スピーカー
部2403、操作キー2404、記録媒体挿入部2405等を含む。本発明の携帯型ゲー
ム機は表示部2402の有する発光素子は耐熱性に優れ、長時間安定に駆動できるため信
頼性の高い携帯型ゲーム機である。
【0228】
以上の様に、本発明の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電子機器に用いることが
可能である。
【0229】
(実施の形態13)
図16には下面発光、両面発光、上面発光の例を示した。図16(A)、(B)は図1
6(C)における第1の層間絶縁層63を自己平坦性を有する材料で形成し、薄膜トラン
ジスタ70に接続する配線と発光素子の第1の電極64を同じ層間絶縁層上に形成した場
合の構成である。図16(A)は発光素子の第1の電極64のみを透光性を有する材料で
形成し、発光装置の下部に向かって光が射出する下面発光の構成、図16(B)はITO
やITSO、IZOなど透光性を有する材料を第2の電極67として形成することで図1
6(B)のように両面より光を取り出すことのできる両面発光の発光表示装置を得ること
が可能となる。なお、アルミニウムや銀など厚膜で形成すると非透光性であるが、薄膜化
すると透光性を有するようになるため、アルミニウムや銀の透光性を有する程度の薄膜で
第2の電極67を形成しても両面発光とすることができる。
【0230】
(実施の形態14)
本実施の形態では、実施の形態11で示したパネル、モジュールが有する画素回路、保
護回路及びそれらの動作について説明する。なお、図11、図12に示してきた断面図は
駆動用TFT1403と発光素子1405の断面図となっている。
【0231】
図17(A)に示す画素は、列方向に信号線1410及び電源線1411、1412、
行方向に走査線1414が配置される。また、スイッチング用TFT1401、駆動用T
FT1403、電流制御用TFT1404、容量素子1402及び発光素子1405を有
する。
【0232】
図17(C)に示す画素は、駆動用TFT1403のゲート電極が、行方向に配置され
た電源線1412に接続される点が異なっており、それ以外は図17(A)に示す画素と
同じ構成である。つまり、図17(A)(C)に示す両画素は、同じ等価回路図を示す。
しかしながら、行方向に電源線1412が配置される場合(図17(A))と、列方向に
電源線1412が配置される場合(図17(C))とでは、各電源線は異なるレイヤーの
導電膜で形成される。ここでは、駆動用TFT1403のゲート電極が接続される配線に
注目し、これらを作製するレイヤーが異なることを表すために、図17(A)(C)とし
て分けて記載する。
【0233】
図17(A)(C)に示す画素の特徴として、画素内に駆動用TFT1403と電流制
御用TFT1404が直列に接続されており、駆動用TFT1403のチャネル長L(1
403)、チャネル幅W(1403)、電流制御用TFT1404のチャネル長L(14
04)、チャネル幅W(1404)は、L(1403)/W(1403):L(1404
)/W(1404)=5〜6000:1を満たすように設定するとよい。
【0234】
なお、駆動用TFT1403は、飽和領域で動作し発光素子1405に流れる電流値を
制御する役目を有し、電流制御用TFT1404は線形領域で動作し発光素子1405に
対する電流の供給を制御する役目を有する。両TFTは同じ導電型を有していると作製工
程上好ましく、本実施の形態ではnチャネル型TFTとして形成する。また駆動用TFT
1403には、エンハンスメント型だけでなく、ディプリーション型のTFTを用いても
よい。上記構成を有する本発明は、電流制御用TFT1404が線形領域で動作するため
に、電流制御用TFT1404のVgsの僅かな変動は、発光素子1405の電流値に影
響を及ぼさない。つまり、発光素子1405の電流値は、飽和領域で動作する駆動用TF
T1403により決定することができる。上記構成により、TFTの特性バラツキに起因
した発光素子の輝度ムラを改善して、画質を向上させた表示装置を提供することができる

【0235】
図17(A)〜(D)に示す画素において、スイッチング用TFT1401は、画素に
対するビデオ信号の入力を制御するものであり、スイッチング用TFT1401がオンと
なると、画素内にビデオ信号が入力される。すると、容量素子1402にそのビデオ信号
の電圧が保持される。なお図17(A)(C)には、容量素子1402を設けた構成を示
したが、本発明はこれに限定されず、ビデオ信号を保持する容量がゲート容量などでまか
なうことが可能な場合には、容量素子1402を設けなくてもよい。
【0236】
図17(B)に示す画素は、TFT1406と走査線1414を追加している以外は、
図17(A)に示す画素構成と同じである。同様に、図17(D)に示す画素は、TFT
1406と走査線1414を追加している以外は、図17(C)に示す画素構成と同じで
ある。
【0237】
TFT1406は、新たに配置された走査線1414によりオン又はオフが制御される
。TFT1406がオンとなると、容量素子1402に保持された電荷は放電し、電流制
御用TFT1404がオフとなる。つまり、TFT1406の配置により、強制的に発光
素子1405に電流が流れない状態を作ることができる。そのためTFT1406を消去
用TFTと呼ぶことができる。従って、図17(B)(D)の構成は、全ての画素に対す
る信号の書き込みを待つことなく、書き込み期間の開始と同時又は直後に点灯期間を開始
することができるため、デューティ比を向上することが可能となる。
【0238】
図17(E)に示す画素は、列方向に信号線1410、電源線1411、行方向に走査
線1414が配置される。また、スイッチング用TFT1401、駆動用TFT1403
、容量素子1402及び発光素子1405を有する。図17(F)に示す画素は、TFT
1406と走査線1415を追加している以外は、図17(E)に示す画素構成と同じで
ある。なお、図17(F)の構成も、TFT1406の配置により、デューティ比を向上
することが可能となる。
【0239】
以上のように、多様な画素回路を採用することができる。特に、非晶質半導体膜から薄
膜トランジスタを形成する場合、駆動用TFT1403の半導体膜を大きくすると好まし
い。そのため、上記画素回路において、発光素子からの光が封止基板側から射出する上面
発光型とすると好ましい。
【0240】
このようなアクティブマトリクス型の発光装置は、画素密度が増えた場合、各画素にT
FTが設けられているため低電圧駆動でき、有利であると考えられている。
【0241】
本実施の形態では、一画素に各TFTが設けられるアクティブマトリクス型の発光装置
について説明したが、一列毎にTFTが設けられるパッシブマトリクス型の発光装置を形
成することもできる。パッシブマトリクス型の発光装置は、各画素にTFTが設けられて
いないため、高開口率となる。発光が発光素子の両側へ射出する発光装置の場合、パッシ
ブマトリクス型の表示装置を用いる透過率が高まる。
【0242】
これらのような画素回路をさらに有する本発明の表示装置は、当該表示装置の有する発
光素子の電極として当該発光素子が有する構成及び求める性能に適した材料を使用するこ
とが出来る上、上記各々の特徴を有する表示装置とすることができる。
【0243】
続いて、図17(E)に示す等価回路を用い、走査線及び信号線に保護回路としてダイ
オードを設ける場合について説明する。
【0244】
図18には、画素部1500にスイッチング用TFT1401、1403、容量素子1
402、発光素子1405が設けられている。信号線1410には、ダイオード1561
と1562が設けられている。ダイオード1561と1562は、スイッチング用TFT
1401又は1403と同様に、上記実施の形態に基づき作製され、ゲート電極、半導体
層、ソース電極及びドレイン電極等を有する。ダイオード1561と1562は、ゲート
電極と、ドレイン電極又はソース電極とを接続することによりダイオードとして動作させ
ている。
【0245】
ダイオードと接続する共通電位線1554、1555はゲート電極と同じレイヤーで形
成している。従って、ダイオードのソース電極又はドレイン電極と接続するには、ゲート
絶縁層にコンタクトホールを形成する必要がある。
【0246】
走査線1414に設けられるダイオードも同様な構成である。
【0247】
このように、本発明によれば、入力段に設けられる保護ダイオードを同時に形成するこ
とができる。なお、保護ダイオードを形成する位置は、これに限定されず、駆動回路と画
素との間に設けることもできる。
【0248】
このような保護回路を有する本発明の表示装置は、当該表示装置は耐熱性に優れ、長時間
安定に駆動できるため信頼性がたかく、上記構成を有することで、表示装置としての信頼
性をさらに高めることが可能となる。
【実施例】
【0249】
本実施例では、本発明の複合材料の作製例を具体的に例示する。
【0250】
《実施例のサンプルの作製》
[1.ゾルの調製]
まず、水分濃度を数ppm程度に保ったグローブボックス内において、0.156g(
0.50mmol)の5−ジフェニルアミノ−8−キノリノール(略称:DPAq)を5
mlのTHFに溶解させ、さらに0.122g(0.50mmol)のバナジウムトリイ
ソプロポキシドオキシドを滴下した。次いで、安定化剤として0.065g(0.50m
mol)のアセト酢酸エチルを滴下し、終夜撹拌することでゾルを得た。
【0251】
[2.本発明の複合材料の作製]
さらに、得られたゾルを0.45μmのフィルターに通しながら石英基板上に滴下し、
200rpm・2秒、次いで3000rpm・70秒の条件でスピンコートした。次に、
スピンコートされた基板と純水を入れたビーカーとを電気炉内に入れ、40℃で2時間加
熱することで、水蒸気により加水分解した。さらに、純水が入っているビーカーを炉内か
ら取り出し、ロータリーポンプを用いて炉内を減圧しながら120℃で1時間半焼成する
ことにより、本発明の複合材料を得た。本実施例の複合材料においては、金属酸化物骨格
は酸化バナジウム骨格であり、その金属酸化物骨格の金属にキレートを形成することによ
り結合した有機化合物はDPAqである。
【0252】
《比較サンプルの作製》
比較のため、上記実施例からDPAqを除いたゾルを調製し、上記と同様の条件で石英
基板上に塗布、焼成することにより、比較サンプルを作製した。すなわち、本比較サンプ
ルは、焼成時に安定化剤であるアセト酢酸エチルが脱離するため、酸化バナジウムの薄膜
となる。
【0253】
《実験結果》
分光光度計(日立製、U−4000)を用い、上述のようにして作製した本実施例のサ
ンプル、および比較サンプルの紫外−可視−赤外吸収スペクトルを測定した。結果を図2
1(a)に示す。また、500nm〜2000nmの可視域から近赤外領域にかけてのス
ペクトルを拡大した図を、図21(b)に示す。
【0254】
図21に示す通り、本実施例のサンプルのスペクトルは、480nm付近(図中A)お
よび1050nm付近(図21中B)に、比較サンプルには見られない新たな吸収が発生
していることがわかる。480nm付近の吸収は、DPAqがTiやAl等の金属イオン
と錯形成する際にも観測されることから、DPAqがバナジウムに配位することにより生
じるキレートの吸収であると考えられる。一方、1050nm付近の近赤外の吸収は、一
般に電荷移動錯体等で見られる吸収帯域であり、DPAqと酸化バナジウムとの間で電荷
移動が生じていることが示唆される。DPAqが有するジフェニルアミノ基は一般に電子
供与性が高いことから、DPAqが電子供与体、酸化バナジウムが電子受容体となってい
ると考えられる。
【0255】
なお、ゾル−ゲル法では、加水分解および焼成により、酸化物骨格(金属−酸素−金属の
結合)が形成されることが知られている。すなわち、バナジウムトリイソプロポキシドオ
キシドは酸化バナジウム骨格を形成する。したがって、上述した本実施例から、金属酸化
物(酸化バナジウム)骨格と、その金属酸化物骨格の金属原子(バナジウム原子)にキレ
ートを形成することにより結合した有機化合物(DPAq)とを有し、金属酸化物が有機
化合物に対して電子受容性を示す本発明の複合材料が作製できた。
【符号の説明】
【0256】
50 基板
51a 下地絶縁層
51b 下地絶縁層
52 半導体層
53 ゲート絶縁層
54 ゲート電極
59 絶縁膜(水素化膜)
60 層間絶縁層
61a 接続部
61b 配線
63 層間絶縁層
64 電極
65 隔壁
66 発光積層体
67 電極
70 薄膜トランジスタ
88 樹脂
89 乾燥剤
90 偏光板
91 保護フィルム
93 発光素子
94 対向基板
200 絶縁表面
201 電極
202 正孔注入輸送層
203 発光層
204 電子注入輸送層
205 電極
206 正孔注入輸送層
207 正孔注入輸送層
208 発光層
209 間隔層
210 発光層
404 溶液
501 金属アルコキシド
502 有機化合物
503 安定化剤
504 溶液
505 ゾル
506 複合材料
601 金属塩化物
602 多核沈殿
603 ゾル
604 有機化合物
605 ゾル
606 複合材料
701 金属アルコキシド
702 有機化合物
703 安定化剤
704 溶液
705 ゾル
706 金属アルコキシド
707 安定化剤
708 溶液
709 ゾル
710 ゾル
711 複合材料
801 金属アルコキシド
802 有機化合物
803 安定化剤
804 溶液
805 ゾル
806 金属塩化物
807 多核沈殿
808 ゾル
809 ゾル
810 複合材料
1401 スイッチング用TFT
1402 容量素子
1403 駆動用TFT
1404 電流制御用TFT
1405 発光素子
1406 TFT
1410 信号線
1411 電源線
1412 電源線
1414 走査線
1415 走査線
1500 画素部
1554 共通電位線
1561 ダイオード
2001 筐体
2003 表示部
2004 スピーカー部
2101 本体
2102 筐体
2103 表示部
2104 音声入力部
2105 音声出力部
2106 操作キー
2108 アンテナ
2201 本体
2202 筐体
2203 表示部
2204 キーボード
2205 外部接続ポート
2206 ポインティングマウス
2301 本体
2302 表示部
2303 スイッチ
2304 操作キー
2305 赤外線ポート
2401 筐体
2402 表示部
2403 スピーカー部
2404 操作キー
2405 記録媒体挿入部
4001 基板
4002 画素部
4003 信号線駆動回路
4004 走査線駆動回路
4005 シール材
4006 対向基板
4007 充填材
4008 薄膜トランジスタ
4010 薄膜トランジスタ
4011 発光素子
4014 配線
4015a 配線
4015b 配線
4016 接続端子
4018 フレキシブルプリントサーキット(FPC)
4019 異方性導電膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属原子を有する金属酸化物骨格と、
前記金属原子にキレートを形成することにより結合した有機化合物と、を有し、
前記金属酸化物は前記有機化合物に対して電子受容性を示すことを特徴とする複合材料。
【請求項2】
請求項1において、
前記有機化合物は、アリールアミン骨格を有する有機化合物であることを特徴とする複合材料。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記金属原子は、チタン、バナジウム、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、ニオブのいずれか一種もしくは複数種であることを特徴とする複合材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−219487(P2011−219487A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134244(P2011−134244)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【分割の表示】特願2005−312611(P2005−312611)の分割
【原出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】