説明

複合材料の亜臨界水分解により得られる未溶解固形分の回収方法と再利用方法ならびに回収装置

【課題】亜臨界水分解後の未溶解固形分をSMCやBMC等の原料として再利用することができる、複合材料の亜臨界水分解により得られる未溶解固形分の回収方法と再利用方法ならびに回収装置を提供する。
【解決手段】樹脂と無機物との複合材料を、アルカリを含有する亜臨界水により亜臨界水分解する工程と、前記無機物および未分解の有機成分を含む未溶解固形分と、水と前記樹脂のモノマーおよび/またはオリゴマーとを含む液分とを含む前記複合材料の分解物を固液分離する工程と、この固液分離後の未溶解固形分を水で洗浄してアルカリを除去する工程と、この洗浄により得られた未溶解固形分を再利用のために回収する工程とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料の亜臨界水分解により得られる未溶解固形分の回収方法と再利用方法ならびに回収装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチック廃棄物はそのほとんどが埋立処分または焼却処分されており、資源として有効利用されていなかった。
【0003】
また、埋立処分では、埋立用地の確保が困難であることや埋立後の地盤が不安定化するといった問題点がある。
【0004】
一方、焼却処分では、炉の損傷、有機ガスや悪臭の発生、CO2排出という問題点がある。
【0005】
そのため、平成7年に容器包装廃棄法が制定され、プラスチックの回収再利用が義務付けられるようになった。さらに、各種リサイクル法の施行に伴い、プラスチックを含む製品の回収リサイクルの流れは加速する傾向にある。
【0006】
これらの状況に合わせて、近年、プラスチック廃棄物を再資源化することが試みられており、その一つとして、亜臨界水を反応媒体とし、アルカリを添加した系で複合材料のプラスチックを分解・回収する方法が提案されている(特許文献1ないし4参照)。
【0007】
この方法により、その樹脂成分をモノマーおよび/またはオリゴマーとして回収することができるとともに、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、およびガラス繊維等の無機物も、未溶解固形分として回収することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−231641号公報
【特許文献2】再表2005/103131号公報
【特許文献3】特開2009−078933号公報
【特許文献4】特開2008−208186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、この方法により得られる未溶解固形分は、主にガラス繊維や炭酸カルシウム等の各無機成分が各種の割合で混合して存在しており、物理的手段で完全に分離し個々の無機物の特徴を活かして再利用することは困難である。
【0010】
さらに、分離回収した未溶解固形分はプラスチック成形品の分解過程で用いられるアルカリ溶媒が一部残存している。そのため、プラスチック材料の無機充填材として、特にシートモールディングコンパウンド(SMC)やバルクモールディングコンパウンド(BMC)に再利用する場合、残存アルカリの潮解性が原因で空気中の水分を吸収して粘度が著しく上昇し、SMCやBMCを作製するのが困難であるという問題点がある。
【0011】
すなわち、例えば不飽和ポリエステル樹脂のように、増粘過程を含むプラスチック製造においては、その増粘初期に、ガラス繊維や炭素繊維等の繊維となじませる工程がある。その際、プラスチック材料と繊維とがなじみやすいように、プラスチック材料の粘度は低粘度であることが望ましい。
【0012】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、亜臨界水分解後の未溶解固形分をSMCやBMC等の原料として再利用することができる、複合材料の亜臨界水分解により得られる未溶解固形分の回収方法と再利用方法ならびに回収装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の複合材料の亜臨界水分解により得られる未溶解固形分の回収方法は、樹脂と無機物との複合材料を、アルカリを含有する亜臨界水により亜臨界水分解する工程と、前記無機物および未分解の有機成分を含む未溶解固形分と、水と前記樹脂のモノマーおよび/またはオリゴマーとを含む液分とを含む前記複合材料の分解物を固液分離する工程と、この固液分離後の未溶解固形分を水で洗浄してアルカリを除去する工程と、この洗浄により得られた未溶解固形分を再利用のために回収する工程とを含むことを特徴とする。
【0014】
この回収方法において、前記未溶解固形分の洗浄後の洗浄廃液からアルカリを分離回収する工程と、この分離回収したアルカリを複合材料の亜臨界水分解に再利用する工程とをさらに含むことが好ましい。
【0015】
この回収方法において、前記未溶解固形分の洗浄後の洗浄廃液からアルカリを分離回収する工程と、このアルカリを除去した洗浄水を循環させて、前記未溶解固形分の洗浄に用いる工程とをさらに含むことが好ましい。
【0016】
この回収方法において、前記未溶解固形分の洗浄後の洗浄廃液のpHを測定する工程をさらに含むことが好ましい。
【0017】
本発明の複合材料の亜臨界水分解により得られる未溶解固形分の再利用方法は、前記の回収方法により回収した未溶解固形分を、シートモールディングコンパウンドまたはバルクモールディングコンパウンドの原料の無機充填材として配合し再利用することを特徴とする。
【0018】
本発明の複合材料の亜臨界水分解により得られる未溶解固形分の回収装置は、樹脂と無機物との複合材料を、アルカリを含有する亜臨界水により亜臨界水分解する分解槽と、無機物および未分解の有機成分を含む未溶解固形分と、水と樹脂のモノマーおよび/またはオリゴマーとを含む液分とを含む前記分解槽での亜臨界水分解後の複合材料の分解物を固液分離するとともに、前記未溶解固形分を洗浄水により洗浄した後、前記未溶解固形分と洗浄廃液とを固液分離するフィルタープレスと、前記洗浄廃液を貯留する洗浄廃液貯槽と、この洗浄廃液貯槽に収容された前記洗浄廃液を気化させてアルカリを分離するために前記洗浄廃液貯槽を加熱する加熱部と、この加熱部により加熱され気化した前記洗浄廃液からの水蒸気を凝縮させる冷却部と、この冷却部により冷却された洗浄水を前記フィルタープレスに循環させる循環経路とを備えることを特徴とする。
【0019】
この回収装置において、前記フィルタープレスからの前記洗浄廃液のpHを検出するpHセンサを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、亜臨界水分解後の未溶解固形分をSMCやBMC等の原料として再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の回収方法および再利用方法を実施するための複合材料の亜臨界水分解により得られる未溶解固形分の回収装置の実施形態を示した図である。
【図2】本発明の回収方法および再利用方法を実施するための複合材料の亜臨界水分解により得られる未溶解固形分の回収装置の別の実施形態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0023】
まず、本発明の複合材料の亜臨界水分解により得られる未溶解固形分の回収方法について工程順に説明する。
【0024】
まず、最初の工程として、樹脂と無機物との複合材料を、アルカリを含有する亜臨界水により亜臨界水分解する。
【0025】
亜臨界水分解の対象となる複合材料は、主にプラスチック成形品であり、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂のいずれの樹脂を用いたものであってもよい。熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アミノ樹脂、フェノール樹脂等を挙げることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、アルキド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂等を挙げることができる。
【0026】
このようなプラスチック成形品の複合材料は、無機物として、例えば、強化繊維および無機充填材を含有している。強化繊維としては、例えば、ガラス繊維を挙げることができる。無機充填材としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等を挙げることができる。
【0027】
亜臨界水分解は、例えば、特許文献1ないし4に記載されているような従来より知られている方法により行うことができる。複合材料として不飽和ポリエステル樹脂のプラスチック(FRP)成形品を用いた場合を例として説明すると、まず前工程としてプラスチック成形品の粉砕を行う。そして粉砕後の粉粒体のプラスチック、分散媒の水、およびアルカリを十分に攪拌混合してスラリーとし、このスラリーを分解槽に供給する。
【0028】
次に、分解槽を密閉状態にし、プラスチックおよび分散媒を攪拌翼で攪拌しながら加熱し、分解槽内の分散媒が亜臨界状態になる温度と圧力を維持し、このアルカリ含有の分散媒を反応触媒としてプラスチックを分解する。
【0029】
これにより、不飽和ポリエステル樹脂をエステル交換させ、スチレン−マレイン酸共重合体や多価アルコール等のモノマーおよび/またはオリゴマーに加水分解する。そして炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等の無機充填材、およびガラス繊維等の強化繊維からなる無機物および未分解の有機成分が未溶解固形分として残る。
【0030】
次の工程として、この無機物および未分解の有機成分を含む未溶解固形分と、水と樹脂のモノマーおよび/またはオリゴマーとを含む液分とを含む複合材料の分解物を固液分離する。
【0031】
固液分離は、フィルタープレス(濾過装置)により行うことができる。これにより、水と樹脂のモノマーおよび/またはオリゴマーとを含む液分は分離回収され、必要に応じて再利用することができる。
【0032】
次の工程として、固液分離後の未溶解固形分を水で洗浄してアルカリを除去する。この洗浄には、後述するように一旦未溶解固形分の洗浄に用いた洗浄廃液から加熱蒸発によりアルカリを除去した水を用いることができる。そしてこの洗浄水を循環させて繰返し洗浄を行うことができる。また、洗浄廃液から分離されたアルカリは再び亜臨界水分解工程で用いることができる。
【0033】
なお、洗浄水を循環させて未溶解固形分を繰返し洗浄する際に、未溶解固形分の洗浄後の洗浄廃液のpHを測定することで、未溶解固形分からのアルカリ除去の程度を判断するようにしてもよい。
【0034】
最後の工程として、この洗浄により得られた未溶解固形分を再利用のために回収する。この回収した未溶解固形分は、洗浄によりアルカリが十分に除去されており、SMCやBMC等の原料として再利用することができる。この回収工程では、例えば、洗浄済の未溶解固形分を乾燥・粉砕して無機充填材として再生することができる。
【0035】
以上の回収方法によれば、亜臨界水分解後の未溶解固形分をSMCやBMC等の原料として再利用することができる。
【0036】
また、上述したように、好ましい態様では、未溶解固形分の洗浄後の洗浄廃液からアルカリを分離回収する工程と、この分離回収したアルカリを複合材料の亜臨界水分解に再利用する工程とを含む。これにより、アルカリを亜臨界水分解に効率的に利用することができる。
【0037】
また、上述したように、好ましい態様では、未溶解固形分の洗浄後の洗浄廃液からアルカリを分離回収する工程と、このアルカリを除去した洗浄水を循環させて、前記未溶解固形分の洗浄に用いる工程とを含む。これにより、洗浄水の大幅な低減が可能となり、大量の洗浄水を用いることなく未溶解固形分からアルカリを十分に除去することができる。
【0038】
また、上述したように、好ましい態様では、未溶解固形分の洗浄後の洗浄廃液のpHを測定する工程を含む。これにより、未溶解固形分からのアルカリ除去の程度を容易に判断することができる。
【0039】
そして本発明の複合材料の亜臨界水分解により得られる未溶解固形分の再利用方法では、以上に説明した方法により回収した未溶解固形分を、シートモールディングコンパウンド(SMC)またはバルクモールディングコンパウンド(BMC)の原料の無機充填材として配合し再利用する。
【0040】
例えば、この無機充填材をSMCの原料として再利用する場合には、上述のように洗浄済の未溶解固形分を乾燥・粉砕して無機充填材として回収したものを、再生無機充填材として配合し樹脂組成物を調製する。例えば不飽和ポリエステル樹脂を用いる場合には、不飽和ポリエステル樹脂に重合性単量体、低収縮剤、硬化剤等を、再生無機充填材とともに配合して不飽和ポリエステル樹脂組成物を調製する。そしてガラス繊維等の強化繊維に不飽和ポリエステル樹脂組成物を含浸してシート状にすることによりSMCを製造することができる。
【0041】
このようにSMCを製造する際に、不飽和ポリエステル樹脂組成物は液状であるが、この不飽和ポリエステル樹脂組成物を強化繊維に含浸して作製されるSMCは、成形の際のハンドリングのために半固体状であることが必要である。そのため、不飽和ポリエステル樹脂組成物には増粘剤を配合し、強化繊維に不飽和ポリエステル樹脂組成物を含浸した後に増粘させ、SMCの形態が半固体状になるようにしている。この増粘剤としては、酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の酸化物等が用いられる。BMCの場合も同様に増粘工程が適用される場合がある。
【0042】
このとき、本発明によれば、分離回収した未溶解固形分はプラスチック成形品の分解過程で用いられるアルカリが十分に除去されている。従って、再生無機充填材に残存するアルカリの潮解性による粘度上昇を抑制し、亜臨界水分解後の未溶解固形分をSMCやBMC等の原料として再利用することができる。
【0043】
図1は、上述した本発明の回収方法および再利用方法を実施するための複合材料の亜臨界水分解により得られる未溶解固形分の回収装置の実施形態を示した図である。
【0044】
この回収装置1は、亜臨界水分解する分解槽2、フィルタープレス3、洗浄廃液貯槽5、加熱部8、冷却部9、および循環経路11を備えている。
【0045】
分解槽2は、樹脂と無機物との複合材料を、アルカリを含有する亜臨界水により亜臨界水分解する。亜臨界水分解により、複合材料は、無機物および未分解の有機成分を含む未溶解固形分と、水と樹脂のモノマーおよび/またはオリゴマーとを含む液分とに分解される。
【0046】
フィルタープレス3は、分解槽2での未溶解固形分と、水と樹脂のモノマーおよび/またはオリゴマーとを含む液分とを含む複合材料の分解物を固液分離する。また、未溶解固形分を洗浄水により洗浄した後、未溶解固形分と洗浄廃液とを固液分離する。
【0047】
フィルタープレス3からの洗浄廃液は、洗浄廃液貯槽5に移送され、洗浄後の未溶解固形分は攪拌翼10を備えた未溶解固形分貯槽6に移送され、水と樹脂のモノマーおよび/またはオリゴマーとを含む液分は液分貯槽4に移送される。
【0048】
洗浄廃液貯槽5は、フィルタープレス3からの洗浄廃液を貯留する。
【0049】
加熱部8は、ヒータ等により構成され、洗浄廃液貯槽5を加熱することにより洗浄廃液から水を蒸発、気化させる。この蒸発水は冷却部9に移送される。洗浄廃液中のアルカリはそのまま洗浄廃液貯槽5に残留する。
【0050】
冷却部9は、凝縮器等により構成され、加熱部8により加熱された洗浄廃液貯槽5内の洗浄廃液からの蒸発水を凝縮する。この凝縮水は、未溶解固形分貯槽6に流入する。
【0051】
循環経路11は、配管等により構成され、冷却部9により冷却された洗浄水をフィルタープレス3に循環させる。
【0052】
回収装置1は、その他に、上述の各構成要素を連通させる配管と配管の切替を行うバルブ21〜26、および洗浄水等を送液するポンプ30を備えている。
【0053】
以上の構成を備えたこの実施形態の回収装置1による分解・回収操作を説明する。
【0054】
第1の工程として、分解槽2において複合材料を亜臨界水分解した後、バルブ21およびバルブ22を開放し、他のバルブ23〜26は閉止した状態で分解槽2より分解物をフィルタープレス3に移送する。なお、分解槽2から一度別の不図示の貯留槽に貯留しておいた分解物を移送するようにしてもよい。
【0055】
そしてフィルタープレス3により固液分離を行い、水と樹脂のモノマーおよび/またはオリゴマーとを含む液分を液分貯槽4に移送して回収する。液分貯槽4に回収された液分は、特許文献4に記載の方法等で改質し再利用することができる。その後、バルブ21およびバルブ22を閉止し、フィルタープレス3の濾過板を開放し、未溶解固形分を未溶解固形分貯槽6に移送する。
【0056】
次に、バルブ24を開放し、洗浄水貯槽7より未溶解固形分貯槽6に洗浄水を投入し、バルブ24を閉止する。そして未溶解固形分貯槽6にて攪拌翼10を作動させ、未溶解固形分を洗浄水に分散させて洗浄を行う。
【0057】
なお、洗浄水貯槽7より未溶解固形分貯槽6に投入される洗浄水は未溶解固形分を十分に分散させることのできる量として、重量で5倍量以上用いることが好ましい。また、洗浄回数は、特に限定されないが、コスト・時間面から考えて例えば10回程度行うことが考慮される。また、洗浄水貯槽7の洗浄水は予め脱塩したものを用いることが望ましい。
【0058】
所定時間経過後、バルブ23およびバルブ25を開放し、未溶解固形分を含む洗浄廃水を循環経路11を通じて未溶解固形分貯槽6からフィルタープレス3に移送する。その後、バルブ25を閉止する。
【0059】
第2の工程として、フィルタープレス3により未溶解固形分と洗浄廃水との固液分離を行い、洗浄廃水を洗浄廃液貯槽5に回収する。その後、バルブ23を閉止する。同時に、未溶解固形分を未溶解固形分貯槽6に移送する。
【0060】
そしてバルブ26を開放し、加熱部8により洗浄廃液貯槽5を加熱する。加熱された洗洗浄廃液貯槽5中の洗浄廃液は、水のみが蒸発しバルブ26を通過して冷却部9に到達し、そこで凝縮されて未溶解固形分貯槽6に流入する。このとき、必要に応じて洗浄水貯槽7より未溶解固形分貯槽6に補水してもよい。一方、洗浄廃液中のアルカリはそのまま洗浄廃液貯槽5に残留する。この分離したアルカリは回収して亜臨界水分解工程で再利用することができる。
【0061】
この加熱部8による加熱は、未溶解固形分貯槽6に未溶解固形分の5倍重量程度の凝縮水が貯留する程度まで行うことが好ましい。
【0062】
また、洗浄廃液貯槽5に残留したアルカリまたはアルカリ水溶液は、加熱終了後、洗浄廃液貯槽5からその都度回収するようにしてもよい。
【0063】
所定時問経過後、加熱部8による加熱を止め、バルブ26を閉止し、未溶解固形分貯槽6にて攪拌翼10を作動させ、未溶解固形分を洗浄水に分散させて洗浄を行う。
【0064】
その後、バルブ23およびバルブ25を開放し、未溶解固形分を含む洗浄廃水を循環経路11を通じて未溶解固形分貯槽6からフィルタープレス3に再度移送する。
【0065】
そして以上の第2の工程の操作を所定回数繰り返した後、最終的に、フィルタープレス3により固液分離後、洗浄済の未溶解固形分は乾燥・粉砕工程を経て無機充填材として再利用する工程に進む。
【0066】
なお、洗浄廃液貯槽5に貯留された洗浄廃液は、上述と同様にして加熱し、洗浄廃液を蒸発させてアルカリを分離する。この分離したアルカリは回収して亜臨界水分解工程で再利用することができる。
【0067】
また、第2の工程の繰り返しは、未溶解固形分からアルカリを十分に除去する点等を考慮すると、5回以上が好ましく、7回以上がより好ましい。洗浄回数の上限は特にないが、コスト・時間面を考慮すると10回程度が考慮される。そして第2の工程の繰り返しは、フィルタープレス3により固液分離された後の洗浄廃水のpHを指標とすることができる。この場合は、図1に示すようにフィルタープレス3の出口にpHセンサ12を取り付け、洗浄廃水のpHを測定することができる。洗浄終了とする洗浄廃水のpHは、8〜10程度が好ましい。
【0068】
以上の回収装置1によれば、亜臨界水分解後の未溶解固形分よりアルカリを十分に除去し、回収した洗浄後の未溶解固形分をSMCやBMC等の原料として再利用することができる。
【0069】
図2は、本発明の回収方法および再利用方法を実施するための複合材料の亜臨界水分解により得られる未溶解固形分の回収装置の別の実施形態を示した図である。
【0070】
この実施形態では、フィルタープレス3による固液分離後に得られる未溶解固形分をフィルタープレス3に保持したまま洗浄水を循環させて洗浄を行う。
【0071】
この実施形態の回収装置1による分解・回収操作を説明する。まず、分解槽2において複合材料を亜臨界水分解した後、バルブ21およびバルブ22を開放し、他のバルブ23〜26は閉止した状態で分解槽2より分解物をフィルタープレス3に移送する。
【0072】
その後バルブ21を閉止してフィルタープレス3により固液分離を行い、水と樹脂のモノマーおよび/またはオリゴマーとを含む液分を液分貯槽4に移送して回収する。液分貯槽4に回収された液分は、特許文献4に記載の方法等で改質し再利用することができる。その後、バルブ22を閉止し、未溶解固形分はそのままフィルタープレス3に保持しておく。
【0073】
次に、バルブ23およびバルブ24を開放し、洗浄水貯槽7よりフィルタープレス3に洗浄水を移送し、バルブ24を閉止する。フィルタープレス3内において未溶解固形分に洗浄水を所定時間通水させた後、洗浄廃液を洗浄廃液貯槽5に回収し、その後、バルブ23を閉止する。未溶解固形分はそのままフィルタープレス3に保持しておく。
【0074】
そしてバルブ26を開放し、加熱部8により洗浄廃液貯槽5を加熱する。加熱された洗浄廃液貯槽5中の洗浄廃液は、水のみが蒸発しバルブ26を通過して冷却部9に到達し、そこで凝縮されてフィルタープレス3に移送される。一方、洗浄廃液中のアルカリはそのまま洗浄廃液貯槽5に残留する。この分離したアルカリは回収して亜臨界水分解工程で再利用することができる。
【0075】
所定時間経過後、加熱を止め、バルブ26を閉止し、フィルタープレス3内において未溶解固形分を洗浄水に所定時間再通水させる。通水後は上述した工程を所定回数繰り返す。
【0076】
その後、最終的に、フィルタープレス3により固液分離後、洗浄済の未溶解固形分は乾燥・粉砕工程を経て無機充填材として再利用する工程に進む。
【0077】
洗浄廃液貯槽5に貯留された洗浄廃液は、上述と同様にして加熱し、洗浄廃液を蒸発させてアルカリを分離する。この分離したアルカリは回収して亜臨界水分解工程で再利用することができる。
【0078】
以上の回収装置1によれば、亜臨界水分解後の未溶解固形分よりアルカリを十分に除去し、回収した洗浄後の未溶解固形分をSMCやBMC等の原料として再利用することができる。
【実施例】
【0079】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
<実施例1>
特許文献3の段落[0018]〜[0023]に記載の方法に準じて複合材料としてのプラスチック成形品の粉砕品の亜臨界水分解を行った。
【0080】
亜臨界水分解により得られた未溶解固形分を乾燥・粉砕したもの(未洗浄無機物)を、その重量の5倍の水に分散させた後、濾過を行った。残渣として得られた未溶解固形分を再び同様にして分散・洗浄し濾過を行った。この工程を7回繰り返した。
【0081】
得られた洗浄済の未溶解固形分を70℃で減圧乾燥し、粉砕・分級して、再生無機充填材とした。
【0082】
得られた再生無機充填材の粒径は100μmアンダーであった。上述の洗浄および粉砕・分級の操作により、Na含有率は、未洗浄無機物58.1g−NaOH/kg−固形分に対し、再生無機充填材18.6g−NaOH/kg−固形分となり、NaOH除去率は68%であった。また、上述の洗浄および粉砕・分級の操作により、濾過後の洗浄水pHは以下の表1に示すように変化した。
【0083】
【表1】

【0084】
<実施例2>
実施例1において得られた再生無機充填材を用いて、SMC用樹脂組成物(コンパウンド)を作製した。作製したコンパウンドは不飽和ポリエステル樹脂80質量部、低収縮剤16質量部、粘度調整剤5.1質量部、スチレンモノマー13質量部、炭酸カルシウム136質量部、再生無機充填材34質量部、その他、離型剤、トナー等を合計20.3質量部配合したものである。再生無機充填材の配合量は一般的な炭酸カルシウム配合量の20%とした。
【0085】
これらをよく混合した後、増粘剤であるMgOを1重量部加え、コンパウンドの増粘を開始した。このとき、コンパウンドの温度を水浴により35℃に保った。30分後の粘度(初期粘度)を測定したところ、37.9Pa・sであった。
<比較例1>
実施例2において、炭酸カルシウムの配合量を170質量部とし、再生無機充填材を配合せず、それ以外は実施例2と同様に混合した。
【0086】
次に、増粘剤MgOを1質量部加え、コンパウンドの増粘を開始した。このとき、コンパウンドの温度を水浴により35℃に保持した。30分後の粘度を測定したところ、46.5Pa・sであった。
<比較例2>
実施例1において、炭酸カルシウムを136質量部、実施例1で得られた未洗浄無機物を34質量部として混合した。次に、増粘剤MgOを1質量部加え、コンパウンドの増粘を開始した。このとき、コンパウンドの温度を水浴により35℃に保った。30分後の粘度を測定したところ、76.2Pa・sであった。
【0087】
実施例2と比較例1、2を比較すると、再生無機充填材は、再生無機充填材を加えない場合および未洗浄無機物を加えた場合に比べて初期粘度を低減させることが可能であることがわかる。このように、再生無機充填材を洗浄することで、再生無機充填材を用いる際に障害となる初期粘度の上昇を抑制でき、コンパウンドのガラス繊維等へのなじみをよくすることが可能であることが示された。
【符号の説明】
【0088】
1 回収装置
2 分解槽
3 フィルタープレス
5 洗浄廃液貯槽
8 加熱部
9 冷却部
11 循環経路
12 pHセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と無機物との複合材料を、アルカリを含有する亜臨界水により亜臨界水分解する工程と、前記無機物および未分解の有機成分を含む未溶解固形分と、水と前記樹脂のモノマーおよび/またはオリゴマーとを含む液分とを含む前記複合材料の分解物を固液分離する工程と、この固液分離後の未溶解固形分を水で洗浄してアルカリを除去する工程と、この洗浄により得られた未溶解固形分を再利用のために回収する工程とを含むことを特徴とする複合材料の亜臨界水分解により得られる未溶解固形分の回収方法。
【請求項2】
前記未溶解固形分の洗浄後の洗浄廃液からアルカリを分離回収する工程と、この分離回収したアルカリを複合材料の亜臨界水分解に再利用する工程とをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の複合材料の亜臨界水分解により得られる未溶解固形分の回収方法。
【請求項3】
前記未溶解固形分の洗浄後の洗浄廃液からアルカリを分離回収する工程と、このアルカリを除去した洗浄水を循環させて、前記未溶解固形分の洗浄に用いる工程とをさらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載の複合材料の亜臨界水分解により得られる未溶解固形分の回収方法。
【請求項4】
前記未溶解固形分の洗浄後の洗浄廃液のpHを測定する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一項に記載の複合材料の亜臨界水分解により得られる未溶解固形分の回収方法。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか一項に記載の方法により回収した未溶解固形分を、シートモールディングコンパウンドまたはバルクモールディングコンパウンドの原料の無機充填材として配合し再利用することを特徴とすることを特徴とする複合材料の亜臨界水分解により得られる未溶解固形分の再利用方法。
【請求項6】
樹脂と無機物との複合材料を、アルカリを含有する亜臨界水により亜臨界水分解する分解槽と、無機物および未分解の有機成分を含む未溶解固形分と、水と樹脂のモノマーおよび/またはオリゴマーとを含む液分とを含む前記分解槽での亜臨界水分解後の複合材料の分解物を固液分離するとともに、前記未溶解固形分を洗浄水により洗浄した後、前記未溶解固形分と洗浄廃液とを固液分離するフィルタープレスと、前記洗浄廃液を貯留する洗浄廃液貯槽と、この洗浄廃液貯槽に収容された前記洗浄廃液を気化させてアルカリを分離するために前記洗浄廃液貯槽を加熱する加熱部と、この加熱部により加熱され気化した前記洗浄廃液からの水蒸気を凝縮させる冷却部と、この冷却部により冷却された洗浄水を前記フィルタープレスに循環させる循環経路とを備えることを特徴とする複合材料の亜臨界水分解により得られる未溶解固形分の回収装置。
【請求項7】
前記フィルタープレスからの前記洗浄廃液のpHを検出するpHセンサを備えることを特徴とする請求項6に記載の複合材料の亜臨界水分解により得られる未溶解固形分の回収装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−31296(P2012−31296A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172469(P2010−172469)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】