説明

複合材料部材を作製するための強化用繊維織物

不連続繊維から作製された糸を用いた三次元織によって作製された内側部分(12)またはコアと、連続フィラメントから作製された糸を用いた製織によって作製された、外側表面に隣接する部分(14、16)または表皮とを持つ複合材料部材を構成するための、単一の部材として織られた強化用繊維織物(10)。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
発明の背景
本発明は、複合材料部材を作製すること、および特にこのような部材のための強化用繊維織物を作製することに関する。
【0002】
本発明の応用の分野は、より具体的には熱構造複合材料部材、すなわち構造要素を構成するために適切なものとさせる機械的特性を持ち、かつ高温にてそれらの特性を維持する能力を持つ材料から作製される部材の作製である。熱構造複合材料は、典型的に、炭素マトリクスによって緻密化された炭素繊維強化材を持つ炭素/炭素(C/C)複合材料、およびセラミックマトリクスによって緻密化された耐火繊維強化材(炭素繊維またはセラミック繊維)を持つセラミックマトリクス複合(CMC)材料である。熱構造複合材料部材は、特に航空および宇宙の分野で使用される。
【0003】
或る程度の厚さを示す複合材料部材について、層剥離を避けるために、特に三次元織を実行することによって互いに結合された複数の重ね合わされた層から強化用織物を作製することは、一般的な方法である。
【0004】
さらに、特に化学気相浸透(CVI)により強化用繊維織物を緻密化することによって得られる複合材料部材について、繊維織物のコアへのガスの容易な到達を提供すること、または、繊維織物が可能な限り均一であることからの逸脱が少ない緻密化を達成するために、比較的均一な多孔度を示すことを確保することは有用であろう。繊維織物中の細孔への到達が困難な場合には、または大きく異なるサイズの細孔の存在下では、より小さな細孔がより迅速に充填されるようになり、かつ強い緻密化勾配が不可避となるので、複合材料の特性に影響する。
【0005】
文献EP 0 489 637は、実質的に撚られていない不連続繊維から作製される糸を用いることにより熱構造複合材料部材のための強化用繊維織物を作製することを提案し、糸の結束は被覆糸によって提供されている。織物は三次元織によって作製され得る。被覆糸は、製織の後に除去され、それにより不連続フィラメントを嵩張らせる一時的な材料または犠牲材料から作製され、嵩張りは、織布の細孔の細分化を促進し、かつ、三次元織と組合わせて、CVIによるその後の緻密化の間に繊維構造のコアへのガスの到達を促進する。
【0006】
それにも拘わらず、非常に平滑な表面状態を示すべき複合材料部材を構築する場合、一旦被覆糸が除去されると解放される不連続フィラメントの嵩張りによって表面に生じる凹凸を除くために、最初の部分的な緻密化の段階(硬化段階としても知られる)の後に表面を整備する必要がある。所望の表面状態を得るために、引続いての緻密化に先立って二次元布のプライを追加することも必要となり得る。
【0007】
発明の目的および概要
本発明の目的は、これらの追加の操作によって表れる欠点を改善すること、より一般的には、複合材料部材中の強化材を構成し、かつCVI緻密化の間のガスによる容易な浸透に関する制約、および結果として生じる部材のために所望される外観および/または個々の特性に関する制約を満足するための繊維織物を提案することである。
【0008】
この目的は、複合材料部材を強化するための繊維織物であって、前記織物は単一の部材として織られ、内側部分またはコアと、外側表面に隣接した部分または表皮とを持ち、前記コアは少なくとも大部分が不連続繊維から作製された糸を用いる三次元織によって作製され、前記表皮は連続フィラメントから作製された糸を用いる製織によって作製される。
【0009】
CVIによる繊維織物の緻密化は、したがってコアに至るまでずっと促進される一方で、コアと表皮との間の急な緻密化勾配を避け、表皮においては表面状態は有意な凹凸が無いように維持される繊維織物によって達成される。
【0010】
1つの態様において、コアはインターロック織によって作製され、それによってプリフォームのコアへのガスの容易な到達を与える一方で、表皮は平織、繻子織、または綾織型製織によって作製され、したがって表面凹凸の制限に役立つ。表皮の織りは2D織を含み得、インターロック織は表皮に至るまで緯糸層の間に交絡を与え、または表皮の織りは多層3D織を含み得る。
【0011】
他の態様において、コアおよび表皮は異なる織り方、例えばコア部分において繻子型製織、および表皮部分において平織もしくは綾織型製織を用いた多層3D織によって作製され得る。表皮における平織型製織は、繻子型製織と比較して、表皮を通るガスの容易な到達を与え、したがってCVI緻密化をコアに至るまでずっと促進する。
【0012】
さらに他の態様において、表皮は、コアの構造よりも低い打込数を持った構造をもって作製され、それによりプリフォームの表皮を通ってコアに向かうガスの容易な到達を与える。
【0013】
3D織技術およびコアと表皮との間の構造とを同時に変えることが可能である。
【0014】
異なる化学的性質の糸によって繊維織物の種々の部分を形成し、それらに特定の所望の特性、特に磨耗または酸化に対する耐性を与えることも可能である。
【0015】
コア部分の製織は、実質的に撚られていない不連続繊維と、糸に結束を与える少なくとも1つの犠牲カバー糸とから作製される糸を用いて実行され得る。
【0016】
本発明は、マトリクスによって緻密化された、先に定義された強化用繊維織物を持った複合繊維材料部材も提供する。
【0017】
本発明は、添付図を参照することにより為される以下の記載を読むことにより良く理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1はインターロック織を示す。
【図2】図2は多層三次元織を示す。
【図3】図3は多層三次元織を示す。
【図4】図4Aないし4Hは、本発明の第1の態様における強化用繊維織物の異なる一連の織物の平面を示す。
【図5】図5Aないし5Hは、本発明の第2の態様における強化用繊維織物の異なる一連の織物の平面を示す。
【図6】図6Aないし6Hは、本発明の第3の態様における強化用繊維織物の異なる一連の織物の平面を示す。
【図7−1】図7Aないし7Cは、本発明の第4の態様における強化用繊維織物の異なる織物の平面を示す。
【図7−2】図7Dないし7Fは、本発明の第4の態様における強化用繊維織物の異なる織物の平面を示す。
【図7−3】図7Gないし7Iは、本発明の第4の態様における強化用繊維織物の異なる織物の平面を示す。
【図7−4】図7Jないし7Lは、本発明の第4の態様における強化用繊維織物の異なる織物の平面を示す。
【0019】
定義
用語「連続フィラメント」は、ここでは径に比べて非常に大きな長さの繊維要素を示すために通常の仕方で使用される。したがって、一例として、複合材料部材のためのプリフォームを構成し、かつ連続フィラメントから作製される強化用織物において、フィラメントの少なくとも非常に大きな大部分はプリフォーム中で連続的に延び、プリフォームの幾何学的境界においてのみ遮られる。天然物ではない連続フィラメントについては、それらは通常、合成材料を紡績することによって得られ、可能ならばその後1つ以上の物理化学的操作(延伸、オイリング、熱処理など)が続く。
【0020】
連続フィラメントが作製される糸、またはマルチフィラメント糸は、撚られているかまたは撚られていない連続フィラメントを並置して一緒にアセンブルすることによって形成される。
【0021】
用語「不連続繊維」は、ここでは、天然物ではない繊維について、連続フィラメントをカットまたは牽切することによって形成される繊維要素を示すために通常の仕方で使用される。不連続繊維または短繊維は、一般に数ミリメートルないし数十ミリメートルの長さを持つ。
【0022】
不連続繊維から作製される糸、または「繊維糸」は、撚りによって、または被覆によって不連続繊維を一緒にアセンブルすることによって作製され、ここで被覆は、撚られる必要が無いかまたは軽度にしか撚られていなくともよい不連続繊維のアセンブリの周りに被覆糸を巻きつけることによって結束を与えることからなる。
【0023】
用語「二次元織」または「2D織」は、ここでは各経糸が単一の緯糸層中の糸の一方の側から他方の側に通され、通常の製織技術を示すために使用される。
【0024】
用語「三次元織」または「3D織」は、経糸の少なくとも一部が複数の緯糸層中の緯糸と交絡し、それによりそれらを一緒に結合する製織技術を示すために使用される。
【0025】
用語「インターロック織」は、ここでは各経糸層が、複数の緯糸層と交絡され、ある1つの経糸列の糸の全てが織平面内で同じ動きを有する3D織を示すために使用される。図1は、7層の経糸層と8層の緯糸層とを持つインターロック織の8つの平面の1つの図である。示されたインターロック織において、1つの緯糸層Tは経糸方向において互いにずれた2つの隣合う緯糸半層tから作製される。したがって、16層の緯糸半層は千鳥構造にある。各経糸は3層の緯糸半層を交絡する。以下で、用語「層」は、別に指示されない限り、緯糸の完全な層または緯糸の半層のいずれかを示すために使用される。
【0026】
千鳥状ではない緯糸構造を採用することも可能であり、2つの隣合う緯糸層の緯糸は同じ列上に配列される。
【0027】
用語「多層織」は、ここでは、各層の基本的な織り方が平織、繻子織、または綾織型製織のような通常の2D織と同じである複数の緯糸層を有するが、緯糸層を互いに交絡するいくつかの織り点を有する3D織を示すために使用される。図2は、平織型の多層布、または、経糸が、隣の緯糸の1つの糸をつかみ、そして2つの隣合う緯糸層を交絡する特定の交絡点PTを形成するために、1本の緯糸に関連するそれらの通常の2D織の経路から時折偏る「多層平織布」の平面を示す。特定の交絡点PTにて、経糸は2層の隣合う緯糸層中の同じ列中に位置する2本の緯糸の回りを通過する。
【0028】
図3は、繻子型の多層布の平面、または「多層繻子布」を示し、ここで、一つの方向において交互に偏り、他の方向においては、第1の緯糸層中のn本のうちの1本の緯糸と、第1の層の隣の、第2の層のn本のうちの1本の緯糸を交互につかむために偏り、nは2より大きい整数であり、それにより2つの繻子交絡点PSにより2つの層を一緒に結合する。本例において、n=16である。
【0029】
繻子型製織において、「ピッチ」は、緯糸の列の数として計られた、1つの与えられた経糸の2つの繻子交絡点の間の間隙を示す。図3の例において、このピッチは6ないし10の間で変動し、8の平均多層繻子ピッチ、n/2を与える。
【0030】
図2および3の織り方において、緯糸は千鳥構造ではなく、2つの隣合う緯糸層の緯糸は同じ列上に配列される。それにも拘らず、図1に示されたような千鳥状の緯糸配置にすることが可能であり、交絡点は2つの隣合う緯糸半層の間に作製される。
【0031】
多層平織または多層繻子織において単一の経糸を用いた交絡は、2つの隣合う緯糸に限定されず、3層以上の緯糸層の深さに渡って延び得る。
【0032】
用語「構造」は、ここでは、経糸方向と緯糸方向との両方における単位長あたりの糸の数を示すために使用され、低い打込数の構造(疎構造)は、単位長あたりより少ない糸数を持ち、それにより高い打込数の構造(密構造)と比較してより疎な布を製造する。
【0033】
慣例によりに、および便宜のために、以下の明細書を通して、および図面において、1つ以上の緯糸層の緯糸をつかむためにそれらの経路から偏った経糸のみについて、言及し、図示する。それにも拘わらず、経糸と緯糸との間で役割を反転させることが可能であり、このような反転は請求項によってもカバーされると考えられるべきである。
【0034】
発明の態様の詳細な記述
本発明の応用の分野は、強化用繊維を構成するために適切な厚い繊維織物、または複合材料部材を構築することにおける使用のためのプリフォームの分野である。
【0035】
3D織によって繊維織物を作製することは、単回の織物操作で層の間に連結を得て、したがって良好な機械的性質を示す繊維織物および結果として生じる複合材料部材を得ることを可能にする。
【0036】
部材が、少なくとも一部が化学気相浸透(CVI)によって繊維織物を緻密化することによって得られる場合、部材内で可能な限り均一な機械的特性を得るためには、繊維織物の内側部分またはコアと、その外側部分または表皮、すなわち外側表面に隣接した繊維織物の部分との間で可能な限り小さい緻密化勾配を有する緻密化を促進することは有利である。
【0037】
この目的のため、およびCVIプロセスの間にプリフォームのコアへの反応ガスの到達を促進するために、コア部分は、繊維の嵩張りによって多孔を細分化することが可能な不連続繊維から少なくとも大部分が作製される糸によって織られる。撚られていないか、または極めて軽微に撚られた不連続繊維から、糸に結束を与える犠牲被覆糸とともに作製された糸を使用することが可能であり、被覆糸が連続フィラメントから作製される場合でも、不連続繊維は糸の大部分を形成する。一緒に撚られた不連続繊維から作製された糸(不連続繊維糸として知られる)を使用することも可能である。
【0038】
緻密化の後に、すなわち機械加工による仕上作業を避けるかまたは制限するために、すなわち、凹凸の無い表面状態、良好な仕上の状態を得ることを促進することも有利である。
【0039】
この目的のために、表皮は、不連続繊維のいかなる嵩張りをも避けるために、連続フィラメントから作製された糸を織ることによって作製される。これは、表皮の外側部分を規定する緯糸の層について、および可能ならば緯糸の隣合う層のうちの1層以上の層についても適用される。これは、好ましくは、表皮の表面と同一平面となる経糸にも適用される。
【0040】
本発明の態様において、コアはインターロック型の三次元織によって作製され、表皮は平織、繻子織、または綾織型製織によって作製される。コアにおけるインターロック織は布の複数の層の間に容易な疎通を与えるので、CVIプロセスの間にガスの到達を促進させる。表皮の織り方は、平織、繻子織、また綾織による二次元織を含み得、その場合インターロック織のコア部分は一部表皮の中に延びるものであるか、または平織、繻子織、または綾織型製織を用いた多層織を含み得る。
【0041】
他の態様において、コアおよび表皮は異なる織り方を用いた多層織によって作製される。コアは繻子型製織による多層織によって、表皮は平織または綾織型製織による多層織による作製され得る。
【0042】
さらに、反応ガスのための到達を促進する目的のために、表皮は、コアの構造の打込数よりも低い打込数を示す構造により作製され得る。
【0043】
結果として生じる複合材料部材に特定の特性、特に酸化または磨耗に対する耐性に関して異なる特性を与えるために、コアにおけるものと表皮におけるものとで異なる化学的性質の糸の使用も望ましいであろう。
【0044】
したがって、耐火繊維強化材を有する熱構造複合材料から作製された部材のために、コアにおいて炭素繊維を、表皮における複合部材の磨耗耐性を高めるために、表皮においてセラミック繊維例えば炭化ケイ素(SiC)繊維を用いてプリフォームを作製することが可能である。
【0045】
本発明による繊維構造の例は以下に記載される。これらの例の全てにおいて、製織はジャガード型織機により実行される。
【0046】
例1
図4Aないし4Hは、3D織によって得られた繊維構造の織りの、8つの一連の平面の部分を示し、緯糸は断面で示される。
【0047】
繊維構造10は、9層の緯糸の層、すなわち18層の半層t1ないしt18を含む。対向する表皮14と16との間に位置するコア12において、3D織は、EP 0 489 637に記載されたような被覆糸犠牲材料によって結束された不連続炭素繊維から大部分が作製された糸によるインターロック型のものであり、層あたり10/10構造(緯糸および経糸方向の両方におけるセンチメートルあたり10糸)を有する。被覆糸は、例えばポリビニルアルコールのような可溶性ポリマーによって、またはポリエチレンもしくはポリビニルアセテートのような、繊維の炭素に影響を与えずに熱処理によって除去され得るポリマーによって構成される。表皮14および16において、織り方は、連続炭素フィラメントから作製され、かつ層あたり5/5構造を有する糸を用いた平織型製織による二次元のものである。平織での織り方による交絡は、緯糸層の半層t1およびt2、および半層t17およびt18についてのみ適用される。コアにおけるインターロック3D織は、表皮の緯糸半層t1およびt18まで延び、これらの半層をコアの層と結合させていることを観察すべきである。
【0048】
この例において、連続フィラメントから作製された糸は、緯糸半層t1、t2、t17およびt18の糸、ならびに表皮における平織の経糸、すなわち図4Aおよび4Bにおける経糸Ct1、Ct2および経糸Ct17、Ct18である。半層t1およびt18の糸をつかみ、それ故に表皮の表面と同一平面をなすインターロック織の経糸は、同様に良好に、連続フィラメント(図4Bおよび4Aにおける経糸Ci1およびCi3)から作製され得る。
【0049】
この例において、コアと表皮との間で変化する糸の型に加えて、3D織および構造も変化する。コアにおけるインターロック3D織、および不連続繊維から作製された糸の使用は、表皮とコアとの間のCVI緻密化の勾配を最小化することに役立つ。表皮おける平織、および連続フィラメントから作製された糸の使用は、比較的平滑な表面状態を得ることを助け、表皮において低打込数構造を有する平織は、表皮を通した反応ガスの到達を促進する。
【0050】
例2
図5Aないし5Hは、3D織によって得られた繊維織物20の一連の平面の一部を示し、この織物は、多層織が2つの緯糸半層の厚さに渡って多層平織と類似した織り方により表皮24および26において実行され、コア部分22における3D織は、各経糸が3層の緯糸の半層の深さに渡って延びるインターロック型のものであり、緯糸は千鳥構造で配置されるという点で、例1のものとは異なる。
【0051】
多層織が表皮において実行される場合、インターロック織が表皮の全ての緯糸層に及ぶ必要がない。それは、全ての緯糸の間で3D織によって交絡を得るために、コアと表皮との間の界面に位置する単一の緯糸層または半層がインターロック織と多層織との両方に含まれることで十分デあり得る。それにも拘わらず、示された例において、インターロック織は緯糸の全ての半層を含んでいる。
【0052】
例2において、コアの製織は、犠牲被覆糸によって一緒に結束された不連続繊維から作製される糸によって実行されるが、表皮の製織は、連続繊維から作製された糸によって実行される。したがって、例えば、図5Aないし5Hに示された例において、連続繊維から作製された糸は、多層織の経糸および、半層t1およびt18の糸と係合するインターロック織の経糸(すなわち、図5Bおよび5Cにおける経糸Ct1、Ct8、Ci1、Ci8)とともに、緯糸半層t1、t2、t17、およびt18中の糸である。
【0053】
例3
図6Aないし6Hは、三次元多層織によって得られた織物30中の一連の緯糸平面の一部を示し、この織物は、同じインターロック3D織がコア32ならびに表皮34および36において実行されるということにおいて例1とは異なる。
【0054】
コア32において、製織は、犠牲被覆糸によって一体化された不連続繊維から作製された糸を用いて実行されるが、表皮34および36、すなわち1つまたは2つの極端の緯糸半層に渡っては、製織は連続フィラメントから作製された糸を用いて実行される。図示の例において、連続フィラメントから作製された糸は、緯糸半層t1、t1、t17、およびt18の糸、ならびに半層t1、t18の糸と係合する経糸(図6Bおよび6Aにおける経糸C1およびC7)である。
【0055】
この例において、糸の型のみがコアと表皮との間で変化する。
【0056】
例4
図7Aないし7Lは、12層の緯糸層U1ないしU12を含む多層3D織によって得られた織物40の一連の層平面を示す。以下の表は、用いられた3D織の織り方および構造を纏める。織物40の織り方の変化は、コア42の両側に配置された表皮44、46の間の中央平面に関して対称である。緯糸は千鳥構造では配置されないが、いくつかの緯糸層は、他の緯糸層における数とは異なる数の緯糸を持つ(緯糸構造の変化)ことが観察されるべきである。
【表1】

【0057】
図から理解されるように、多層繻子織は第1の層から1つの緯糸を、第1の層と隣合う第2の層からの1つの緯糸を交互に取ることによって実行される。
【0058】
コア部分42(緯糸層U3ないしU10に相当する)において、経糸および緯糸のために使用される糸は、犠牲被覆糸によって一緒に結束された不連続炭素繊維から作製された糸である。表皮部分44、46において(緯糸U1、U2およびU11、U12)、糸(すなわち平織および多層平織における緯糸U1、U2、U11、およびU12、ならびに経糸)は連続炭素フィラメントから作製される。
【0059】
したがって、この例において、糸の型、多層3D織、および構造の全ては、コア42と表皮44、46との間で変化する。織り方および構造におけるバリエーションは、コアと表皮との間の過度に著しい不連続性を避けるために、層U5ないしU8の6-繻子と表皮の平織との間にある緯糸層U3、U4およびU9、U10について5-繻子を採用することによって幾分漸進的となることが観察されるべきである。
【0060】
コアにおける多層繻子織は、インターロック織と比較して少ない経糸収縮および緯糸層に平行な方向、特に経糸方向においてより良い機械的性質をもたらす。
【0061】
緻密化がCVIによって実行される場合、表皮における平織は、繻子型製織と比較して、ガスに対し表皮を通るより容易な便を与える。
【0062】
それにも拘らず、変形においては、表皮を織るために綾織型製織を用いることが可能である。
【0063】
本発明の方法によって得られた繊維織物は、CVIによって繊維織物を緻密化することで得られる複合材料部材、特に、炭素繊維により構成された繊維強化材と炭素および/またはセラミックのマトリクスを持つ熱構造複合材料から作製された部材を作製するために適切である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材料部材を強化するための繊維織物であって、前記繊維織物は単一の部材として織られ、内側部分またはコアと、外側表面に隣接した部分または表皮とを持ち、前記コアは少なくとも大部分が不連続繊維から作製された糸を用いた三次元織によって作製され、前記表皮は連続フィラメントから作製された糸を用いた製織によって作製される、繊維織物。
【請求項2】
前記コアがインターロック型の三次元織によって作製され、前記表皮が平織、繻子織、または綾織型製織によって作製される、請求項1による織物。
【請求項3】
前記表皮の織り方が、平織、繻子織、または綾織型製織による二次元織を含み、前記コアのインターロック織が前記表皮にまで至る、請求項2による織物。
【請求項4】
前記表皮の織り方が、平織、繻子織、または綾織型製織による多層三次元織を含む、請求項2による織物。
【請求項5】
前記コアおよび前記表皮が、異なる織り方による多層織によって作製される、請求項1による繊維織物。
【請求項6】
前記コアが繻子型製織による多層織によって作製され、前記表皮が平織または綾織型の製織による三次元織によって作製される、請求項5による繊維織物。
【請求項7】
前記表皮が、前記コアが作製される打込数よりも低い打込数の構造により作製される、請求項1ないし6のいずれか1項による織物。
【請求項8】
前記繊維織物の種々の部分が、異なる化学的性質の糸を用いて作製される、請求項1ないし7のいずれか1項による織物。
【請求項9】
前記コア部分の製織が、前記糸に結束を与える少なくとも1つの犠牲被覆糸と一緒に、実質的に撚られていない不連続繊維から各々が作製される糸を用いて実行される、請求項1ないし8のいずれか1項による織物。
【請求項10】
化学気相浸透によって少なくとも一部が得られるマトリクスによって緻密化された、請求項1ないし9のいずれか1項による強化用繊維織物を含む複合材料部材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7−1】
image rotate

【図7−2】
image rotate

【図7−3】
image rotate

【図7−4】
image rotate


【公表番号】特表2009−541602(P2009−541602A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515931(P2009−515931)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【国際出願番号】PCT/FR2007/051476
【国際公開番号】WO2007/148018
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(502202281)スネクマ・プロピュルシオン・ソリド (48)
【氏名又は名称原語表記】SNECMA PROPULSION SOLIDE
【Fターム(参考)】