説明

複合柱

【課題】コンクリート柱の先端部に対する鋼管柱の基端部の嵌合位置が適正位置であるか否かを、目視によって判別して、コンクリート柱と鋼管柱との結合を防止し、コンクリート柱と鋼管柱との解体作業を容易に行うことができるようにする。
【解決手段】地面に立設されるコンクリート柱1と、コンクリート柱1の先端部1aに、基端部20a側の開口部20bが嵌合されて支持される鋼管柱20とを備えた複合柱において、鋼管柱20は、開口部20bの内面に、コンクリート柱1の先端部1aの端面1bに係止する係止体21が固着されると共に、開口部20bと係止体21とで嵌合凹部22が形成され、さらに、コンクリート柱1の先端部1aに対する鋼管柱20の嵌合凹部22の嵌合位置が適正位置からずり落ちたことを目視できるように、コンクリート柱1の先端部1aに判別手段30を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建柱車などの大型重機が進入できない建柱場所において、地面に立設されたコンクリート柱の先端部に、鋼管柱の基端開口部を嵌合させて、電柱を組み立てる複合柱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建柱車などの大型重機が進入できない場所では、地面に立設された円錐台状のコンクリート柱の先端部に、鋼管柱の基端部側の開口部を嵌合させて、一本の複合柱を建柱している。
【0003】
ところで、コンクリート柱の細径化を目的とした複合柱として、例えば、基端部が地面に埋設される下ポールと、該下ポールの先端部に基端部が連結される中ポールと、該中ポールの先端部に基端部が連結される上ポールとを備えているものが公知になっている(特許文献1参照)。そして、各ポールの先端部に取り付けられた凸状の継ぎ手と、各ポールの基端部に取り付けられた凹状の継ぎ手とが嵌合されると共に、凹状の継ぎ手を軸方向に対して直交方向に螺合するボルトの先端部が、凸状の継ぎ手の外周面に圧接されて、各ポールは連結されている。
【0004】
また、運搬作業及び組立作業を容易にすることを目的とした複合柱として、大径、中径、小径の筒柱が下から順次ねじ合わせて連結されているものが公知になっている(特許文献2参照)。そして、各筒柱の先端部に、該筒柱の内周面に当接する環状の雌ねじ部、及び、筒柱の先端部の端面に当接する鍔部を有する第一継ぎ手が取り付けられている。一方、各筒柱の基端部に、該筒柱の基端部の端面に当接する鍔部、及び、基端部から軸方向に沿って突出される環状の雄ねじ部を有する第二継ぎ手が取り付けられている。第一継ぎ手の雌ねじ部に、第二継ぎ手の雄ねじ部が螺合して各筒柱が連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−101327号公報
【特許文献2】実公昭26−10561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の複合柱の場合、鋼管柱の自重、電線などの添架物による荷重、風圧荷重により、コンクリート柱と鋼管柱との嵌合位置が適正位置からずり落ちてしまい、コンクリート柱の先端部の外面と、該先端部に嵌合される鋼管柱の基端部側の開口部の内面とが強く結合されてしまう場合がある。そうすると、撤去時などの解体作業において、コンクリート柱の先端部から鋼管柱の基端部側の開口部を取り外すのが困難になる。そして、強引に取り外した場合、コンクリート柱の先端部のコンクリート部分が剥離されて、内部の鉄筋が露出してしまうという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題点を鑑み、コンクリート柱の先端部に対する鋼管柱の基端部の嵌合位置が適正位置であるか否かを、目視によって判別して、コンクリート柱と鋼管柱との結合を防止し、コンクリート柱と鋼管柱との解体作業を容易に行うことができる複合柱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明に係る複合柱は、地面に立設されるコンクリート柱1,10)と、該コンクリート柱1,10の先端部1a,10aに、基端部20a,200a側の開口部20b,200bが嵌合されて支持される鋼管柱20,200とを備えた複合柱において、前記鋼管柱20,200は、前記開口部20b,200bの内面に、コンクリート柱1,10の先端部1a,10aの端面1b,10bに係止する係止体21,210が固着されると共に、前記開口部20b,200bと係止体21,210とで嵌合凹部22,220が形成され、さらに、コンクリート柱1,10の先端部に対する鋼管柱20,200の嵌合凹部22,220の嵌合位置が適正位置からずり落ちたことを目視できるように、コンクリート柱1,10の先端部1a,10a、及び、鋼管柱20,200の基端部20a,200aのうち、少なくともコンクリート柱1,10の先端部に判別手段30、30'、300aが設けられることを特徴とする。
【0009】
この場合、鋼管柱20,200の基端部20a,200a側の開口部20b,200bの内面に、コンクリート柱1,10の先端部1a,10aの端面1b,10bに係止する係止体21,210を固着すると共に、前記開口部20b,200bと係止体21,210とで嵌合凹部22,220を形成するようにしたので、コンクリート柱1,10の先端部に対して、鋼管柱20,200の嵌合凹部22,220が確実に嵌合するようになる。また、コンクリート柱1,10の先端部1a,10a、及び、鋼管柱20,200の基端部20a,200aのうち、少なくともコンクリート柱1,10の先端部に判別手段30、30'、300aを設けるようにしたので、鋼管柱20,200の自重、電線などの添架物による荷重、風圧荷重により、コンクリート柱1,10の先端部に対する鋼管柱20,200の嵌合凹部22,220の嵌合位置が適正位置からずり落ちた場合、そのずれを目視で判別できるようになり、鋼管柱20,200に係る負担を軽減したり、鋼管柱20,200を交換したりする時期を判別することができると共に、複合柱の解体の目安にもなる。しかも、交換時期を判別できれば、コンクリート柱と鋼管柱との結合を防止できて、コンクリート柱と鋼管柱との解体作業も容易になる。
【0010】
また本発明によれば、適正な嵌合位置からずり落ちた前記鋼管柱20の基端部20aの端面が当接する環状の支持部30,30'によって、前記判別手段を構成するようにしてもよい。
【0011】
この場合、鋼管柱20の基端部20aの端面が環状の支持部30,30'に当接することで、鋼管柱20がずり落ちた状態を目視できるようになる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、コンクリート柱の先端部の端面に係止する係止体が、鋼管柱の基端部側の開口部の内面に固着されると共に、該開口部と係止体とで、コンクリート柱の先端部に嵌合する嵌合凹部が形成されるため、コンクリート柱の先端部に嵌合される鋼管柱を確実に支持することができる。
【0013】
また、コンクリート柱の先端部に対する鋼管柱の嵌合凹部の嵌合位置が適正位置からずり落ちたことを目視できるように、コンクリート柱の先端部、及び、鋼管柱の基端部のうち、少なくともコンクリート柱の先端部に判別手段を設けるようにしたので、鋼管柱に係る荷重を軽減したり、鋼管柱を交換したりする時期を判別することができる。したがって、コンクリート柱の先端部の外面に、鋼管柱の基端部側の開口部の内面が結合することがなく、コンクリート柱と鋼管柱とを容易に解体することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第一実施形態に係る複合柱のコンクリート柱及び鋼管柱を示す図。
【図2】図1のコンクリート柱の先端部に、鋼管柱の基端部が適正位置で嵌合した状態を示す図。
【図3】鋼管柱の基端部が適正位置からずり落ちて、コンクリート柱の先端部の支持部に当接した状態を示す図。
【図4】判別手段の変形例を示した図であり、コンクリート柱の先端部に設けたフランジを示す図。
【図5】本発明の第二実施形態に係る複合柱のコンクリート柱及び鋼管柱を示す図。
【図6】図5のコンクリート柱の先端部に、鋼管柱の基端部が適正位置で嵌合した状態を示す図。
【図7】鋼管柱の基端部が適正位置からずり落ちて、コンクリート柱の先端部の上向き矢印に被さった状態を示す図。
【図8】(a)〜(d)は、係止体の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る複合柱について、図1〜図8を参照しつつ説明する。
なお、これらの図に示すコンクリート柱の基端部及び鋼管柱の先端部は、便宜上省略して図示しているものとする。
【0016】
(第一実施形態)
第一実施形態に係る複合柱1は、図1に示すように、円錐台状のコンクリート柱1と、該コンクリート柱1の先端部に嵌合される円錐台状の鋼管柱10とで構成されており、コンクリート柱1のテーパ角度と、該コンクリート柱1に嵌合される鋼管柱10のテーパ角度によって、複合柱の全体のテーパ角度が形成される。即ち、段差を生じることなくコンクリート柱1と鋼管柱10とが嵌合されて建柱されている。
【0017】
コンクリート柱1は、図示していないが、基端部が地中に埋設されて立設されている。そして、地表に位置する先端部に、該先端部よりも小径の嵌合凸部1aが同心状に形成されており、嵌合凸部1aの基端部の周囲に、鋼管柱20の基端部20a側の開口部20bの端面が当接する平坦な支持部30が形成されている。該支持部30は、コンクリート柱1と鋼管柱20との嵌合を嵌合位置の適正を判別する判別手段であり、詳細については後述する。
【0018】
鋼管柱20は、基端部20aの内周面に環状の係止体21が溶着されると共に、該係止体21の開口周縁部の下面と、鋼管柱20の基端部20a側の開口部20bの内面とで、円錐台状の嵌合凹部22が形成されている。そして、嵌合凹部22が嵌合凸部1aに嵌合されると、嵌合凸部1aの端面1bに係止体21の開口周縁部の下面が当接する一方、嵌合凹部22の内周面が嵌合凸部1aの外周面に密接することで、鋼管柱20に対するコンクリート柱1の支持強度が確保されている。また、嵌合凸部1aに嵌合凹部22が嵌合された状態においては、図2示すように、コンクリート柱1のテーパの外形線の延長線上に鋼管柱20のテーパの外形線が位置している。即ち、上述したように、コンクリート柱1と鋼管柱20とは段差なく嵌合されて、一本の複合柱が建柱されることになる。
【0019】
支持部30は、環状の平坦面によって構成されており、コンクリート柱1の嵌合凸部1aに嵌合する鋼管柱20の嵌合凹部22の嵌合位置が適正であるか否かを判別する判別手段となっている。例えば、鋼管柱20の基端部20a側の開口部20bの端面が支持部30に当接しない場合は、コンクリート柱1に対する鋼管柱20の嵌合位置が適正であると判断される一方、鋼管柱20の基端部20a側の開口部20bの端面が支持部30に当接する場合は、鋼管柱20の荷重を軽減したり、鋼管柱20を交換したりする時期であると判断される。即ち、鋼管柱20の基端部20a側の開口部20bの端面が支持部30に当接するか否かによって、コンクリート柱1に対する鋼管柱20の結合状態の良否の目安になる。
【0020】
つぎに使用態様について図1〜図3を参照して説明する。まず、建柱車などの大型重機が進入できない場所において、図1に示すように、地中にコンクリート柱1を立設し、該コンクリート柱1の嵌合凸部1aの上方に、鋼管柱20の嵌合凹部22を位置させる。そして、図2に示すように、嵌合凸部1aに嵌合凹部22を嵌合させて、コンクリート柱1と鋼管柱20とを連結して、複合柱を建柱する。この際、嵌合凹部22が嵌合凸部1aに嵌合されると、嵌合凸部1aの端面1bに係止体21の開口周縁部の下面が当接する一方、嵌合凹部22の内周面が嵌合凸部1aの外周面に密接する。そして、鋼管柱20の基端部20aは、コンクリート柱1の支持部30に対して離間しており、支持部30を構成する環状の平坦面と鋼管柱20の基端部20a側の開口部20bの端面との間に隙間Gが形成される。即ち、作業者は、前記隙間Gを目視することで、コンクリート柱1に対する鋼管柱20の嵌合位置が適正であると判断する。
【0021】
そして、鋼管柱20の自重、電線などの添架物の荷重、あるいは風圧荷重によって、係止体21が変形したり、係止体21の溶接部位が外れたりした場合、図3に示すように、鋼管柱20が図2の適正位置からずり落ちてしまい、鋼管柱20の基端部20aの端面が支持部30の平坦面に当接する。作業者は、この状態を目視することで、鋼管柱20を交換したり、鋼管柱20に対する負担を軽減したりする処置を施す。
【0022】
なお、前記第一実施形態の場合、判別手段として、コンクリート柱1の嵌合凸部1aの基端部の周囲に、環状の平坦面で構成される支持部30を形成するようにしたが、図4に示すように、適正位置からずり落ちた鋼管柱20を支持できる位置に、フランジで構成される支持部30'を、コンクリート柱1'の先端部1a'の外周面にボルト止め或いは溶着することによって設けるようにしてもよい。
【0023】
(第二実施形態)
つぎに第二実施形態に係る複合柱について図5を参照して説明する。同図において、図1と異なる点は、コンクリート柱10の先端部10aの外周面、及び、鋼管柱200の基端部側の開口部200bの外周面に、同一直線上において、一つの頂点が対峙するように、三角形状の上向き矢印300a及び下向き矢印300bが判別手段として印刷されている点である。なお、鋼管柱200は、図1の鋼管柱20と同様に、基端部200a側の開口部200bの内面に環状の係止体210が溶着されると共に、該基端部200aの内面と係止体210とで形成された嵌合凹部220が形成されている。また、判別手段として、三角形状の上向き矢印300a及び下向き矢印300bを印刷するようにしたが、コンクリート柱10の先端部10aに環状の赤線を印刷すると共に、鋼管柱200の基端部200aに環状の青線を印刷するようにしてもよい。
【0024】
つぎに使用態様について図5〜図7を参照して説明する。まず、図5に示すように、地面にコンクリート柱10を立設し、該コンクリート柱10の先端部10aの上方に、鋼管柱200の嵌合凹部220を位置させる。この際、上向き矢印300a及び下向き矢印300bの頂点が同一直線上に対峙するように、コンクリート柱10と鋼管柱200を配置する。そして、図6に示すように、コンクリート柱10の先端部10aに鋼管柱200の嵌合凹部220を嵌合させて、コンクリート柱10と鋼管柱200とを連結する。この際、嵌合凹部220が先端部10aに嵌合されると、先端部10aの端面10bに係止体210の開口周縁部の下面が当接する一方、嵌合凹部220の内周面が先端部10aの外周面に密接する。そして、上向き矢印300a及び下向き矢印300bの頂点が突き合わされた状態になる。即ち、作業者は、この状態を目視することで、コンクリート柱10に嵌合する鋼管柱200の適正位置を判別できる。
【0025】
そして、鋼管柱200の自重、電線などの添架物の荷重、あるいは風圧荷重によって、係止体210が変形したり、係止体210の溶接部位が外れたりした場合、図7に示すように、鋼管柱200の基端部200aが図6の適正位置からずり落ちてしまい、鋼管柱200の下向き矢印300bがコンクリート柱10の上向き矢印300aの一部に被さるようになる。作業者は、この状態を目視することで、前記第一実施形態と同様に、鋼管柱200を交換したり、鋼管柱200に対する負担を軽減したりする処置を施す。
【0026】
なお、前記実施形態1,2の場合、コンクリート柱1,10の先端部の端面に係止する環状の係止体21,210を、鋼管柱20,200の基端部20a,200aの内周面に固着するようにしたが、図8(a)に示すように、十字形状の係止体21aであってもよく、図8(b)に示すように、等間隔に配設された短い棒状の係止体21b,…であってもよく、図8(c)に示すように、対向位置に配設された一対の円弧状の係止体21c,21cであってもよく、図8(d)に示すように、中央部に正方形状の孔が形成された円板で構成される係止体21dであってもよい。要は、係止体の形状としては、コンクリート柱1,10の先端部1a,10aの端面1b,10bに係止する形状であれば図示に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0027】
1,10…コンクリート柱、1a,10a…嵌合凸部(先端部)、1b,10b…端面、20a,200a…基端部、20b,200b…開口部、20,200…鋼管柱、21,210…係止体、22,220…嵌合凹部、30…支持部(判別手段)、30'…フランジ(判別手段)、300a…上向き矢印(判別手段)、300b…下向き矢印(判別手段)、G…隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に立設されるコンクリート柱(1,10)と、該コンクリート柱(1,10)の先端部(1a,10a)に、基端部(20a,200a)側の開口部(20b,200b)が嵌合されて支持される鋼管柱(20,200)とを備えた複合柱において、
前記鋼管柱(20,200)は、前記開口部(20b,200b)の内面に、コンクリート柱(1,10)の先端部(1a,10a)の端面(1b,10b)に係止する係止体(21,210)が固着されると共に、前記開口部(20b,200b)と係止体(21,210)とで嵌合凹部(22,220)が形成され、さらに、コンクリート柱(1,10)の先端部に対する鋼管柱(20,200)の嵌合凹部(22,220)の嵌合位置が適正位置からずり落ちたことを目視できるように、コンクリート柱(1,10)の先端部(1a,10a)、及び、鋼管柱(20,200)の基端部(20a,200a)のうち、少なくともコンクリート柱(1,10)の先端部に判別手段(30、30'、300a)が設けられることを特徴とする複合柱。
【請求項2】
前記判別手段は、適正な嵌合位置からずり落ちた前記鋼管柱(20)の基端部(20a)の端面が当接する環状の支持部(30,30')であることを特徴とする請求項1に記載の複合柱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−38313(P2011−38313A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186412(P2009−186412)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】