説明

複合液体燃料及びその生成装置並びにその燃焼装置

【課題】気化し難い重油、植物油等の可燃性液体が効率よく燃焼する複合液体燃料、生成装置を得る。
【解決手段】常温で液体となる可燃性液体内に、常温で気体となる可燃性気体をマイクロバブルの状態で混入させる。前記可燃性液体はA重油とし、前記可燃性気体はプロパンガスとする。また、ケーシング(11)内に可燃性液体が加圧供給される小径の絞り流路(13)と、該絞り流路(13)から下流方向に向かって拡開する拡開部(14)とを設けるとともに、拡開部(14)の底部に前記絞り流路(13)と対面する広面積の衝突壁(14a)を設け、前記絞り流路(13)の側部に可燃性気体が供給される小径の気体流入路(15)を連通させ、前記拡開部(14)の底部外周からケーシング(11)外に開口する流出路(16)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘度が高くまた気化し難い重油、植物油等の可燃性液体に、プロパンガス、天然ガス等の可燃性気体を混入することにより、可燃性液体の燃焼が円滑に行なえるようにした複合液体燃料、該複合液体燃料の生成装置、及び該複合液体燃料の燃焼装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、ヒータによって加熱される気化室に、灯油等の液体燃料を供給して気化させ、該気化したガスをノズルから噴出させて燃焼させるようにしたもの(特許文献1)。あるいは、ガス燃料を燃焼させて燃焼室を重油又は軽油がガス化する温度まで昇温し、その後、前記燃焼室に重油又は軽油を噴霧して燃焼させるようにしたもの(特許文献2)があった。
【0003】
特許文献1は気化室に単純な液体燃料を供給するようにしていたので、気化室での気化が不完全になったり、ヒータによる気化室の加熱量及び加熱時間が増大したりするものであった。また、特許文献2はガス燃料で燃焼室を予備加熱した後、該燃焼室に単純な液体燃料を供給して燃焼させるようにしていたので、燃焼室の予備加熱温度を高くする必要があり、液体燃料の燃焼スタートが遅延するものであった。
【特許文献1】特開2000−220823号公報。
【特許文献2】特開平10−246430号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、可燃性液体内に、可燃性気体を混入させることにより、気化し難い重油、植物油等の可燃性液体が効率よく燃焼できる複合液体燃料及びその生成装置並びにその燃焼装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記目的を達成するために以下の如く構成したものである。即ち、請求項1に係る発明は、常温で液体となる可燃性液体内に、常温で気体となる可燃性気体をマイクロバブルの状態で混入させたものである。
請求項2に係る発明は、前記可燃性液体はA重油とし、可燃性気体はプロパンガスとしたものである。
請求項3に係る発明は、ケーシング内に可燃性液体が加圧供給される小径の絞り流路と、該絞り流路から下流方向に向かって拡開する拡開部とを設けるとともに、拡開部の底部に前記絞り流路と対面する広面積の衝突壁を設け、前記絞り流路の側部に可燃性気体が供給される小径の気体流入路を連通させ、前記拡開部の底部外周からケーシング外に開口する流出路を設けたものである。
請求項4に係る発明は、バーナと可燃性液体収容タンクとを結ぶ燃料供給路を設け、該燃料供給路の上流側に燃料ポンプを、下流側に請求項3記載の複合液体燃料の生成装置を設け、前記燃料ポンプの吐出側を前記生成装置の絞り流路に接続し、可燃性気体の供給路を前記生成装置の気体流入路に接続し、生成装置の流出路を燃料供給路のバーナ側に接続したものである。
請求項5に係る発明は、前記バーナと可燃性液体収容タンクとを結ぶ燃料供給路の途中に中間タンクを接続し、該中間タンク内に請求項3記載の複合液体燃料の生成装置を収容し、前記燃料供給路内の可燃性液体を前記生成装置の絞り流路に加圧供給するバブルポンプを設け、前記生成装置の気体流入路を可燃性気体が収容された可燃性気体収容タンクに接続し、前記中間タンク内で生成された複合液体燃料をバーナに向けて送る燃料ポンプを設けたものである。
請求項6に係る発明は、可燃性気体が加圧収容されたボンベを設け、該ボンベを減圧弁、流量調整弁を介して生成装置の気体流入路に接続したものである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に係る発明は、可燃性液体内に可燃性気体がマイクロバブルの状態で混入された複合液体燃料としたので、該複合液体燃料をバーナに供給すると、可燃性気体が迅速に燃焼して可燃性液体を迅速にガス化させ、効率良く燃焼させることができ、未燃ガスの発生が低減することになる。
請求項2に係る発明は、A重油内にプロパンガスがマイクロバブルの状態で混入された複合液体燃料としたので、該複合液体燃料をバーナに供給すると、プロパンガスが迅速に燃焼してA重油を迅速にガス化させ、効率良く燃焼させることができ、未燃ガスの発生が低減することになる。
請求項3に係る発明は、可燃性液体が絞り流路を高速で流通すると、気体流入路から供給される可燃気体が前記絞り流路を流通する可燃性液体に混入するとともに、該可燃性液体によって可燃性液体と共に拡開部底部の衝突壁に激しく衝突することになる。これにより、拡開部の内部で可燃性気体が可燃性液体内にマイクロバブルの状態で混入した複合液体燃料が効率良く生成され、該複合液体燃料が拡開部の底部外周に設けた流出路からケーシング外に流出することになる。
請求項4に係る発明は、燃料ポンプを起動させると、該燃料ポンプから圧送される可燃生液体が生成装置の絞り流路を高速で流通し、気体流入路から供給される可燃気体が前記絞り流路を流通する可燃性液体に混入するとともに、該可燃性液体によって可燃性液体と共に拡開部底部の衝突壁に激しく衝突し、拡開部の内部で可燃性気体が可燃性液体内にマイクロバブルの状態で混入した複合液体燃料が生成され、該複合液体燃料が流出路から流出してバーナに供給されることになる。該バーナに供給された複合液体燃料は、複合液体燃料内の可燃性気体が迅速に燃焼して周囲の可燃性液体に効率よく伝播し、該可燃性液体を迅速に加熱・気化させて効率良く燃焼させることになる。
請求項5に係る発明は、可燃性液体収容タンクからバーナ向けて送られる可燃性液体が、途中の中間タンク部で生成装置により可燃性気体の混入した複合液体燃料に生成され、該複合液体燃料がバーナに供給されることになる。該バーナに供給された複合液体燃料は、複合液体燃料内の可燃性気体が迅速に燃焼して周囲の可燃性液体に効率よく伝播し、該可燃性液体を迅速に加熱・気化させて効率良く燃焼させることになる。
請求項6に係る発明は、ボンベに加圧収容された可燃気体が、減圧弁、流量調整弁を介して複合液体燃料の生成装置の気体流入路に供給されるので、可燃性液体に対する可燃性気体の混入率を容易に調節することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図において、図1は本発明の第1実施例を示す概略側面図、図2は本発明の第1実施例による複合液体燃料生成装置の側面図、図3は図2の断面側面図、図4は本発明の第2実施例を示す概略側面図、図5は本発明の第2実施例による複合液体燃料生成装置の断面側面図、図6は図5のVI-VI拡大断面図である。
【0008】
図1において、1は複合液体燃料の燃焼装置であり、可燃性液体収容タンク2とボイラ3のバーナ3aとを燃料供給管(燃料供給路)4により接続し、該燃料供給管4の途中に密閉状の中間タンク5を接続し、該中間タンク5内に複合液体燃料の生成装置10を設けてなる。P1は燃料供給管4に取り付けた燃料ポンプであり、可燃性液体収容タンク2内の可燃性液体を中間タンク5に向けて送るとともに、中間タンク5内で生成された複合液体燃料をバーナ3aに向けて送るものである。前記可燃性液体収容タンク2にはA重油、植物湯等の可燃性液体、本例ではA重油を収容し、該A重油に混入する可燃性気体は、本例ではプロパンガスとする。
【0009】
前記生成装置10は、中間タンク5内でプロパンガスをA重油にマイクロバブルの状態で混入させるもので、図2、図3に示すようになっている。即ち、ケーシング11内に大径の流入口12、小径の絞り流路13、及び拡開部14を上から下に向けて順次同軸に連通形成する。
【0010】
前記流入口12は、管継手(ニップル)17を介して分岐管18に接続され、該分岐管18は、図1に示すように、中間タンク5の上流側に位置する燃料供給管4に接続される。前記分岐管18にバブルポンプP2を取り付け、該バブルポンプP2によって燃料供給管4内の一部のA重油を前記流入口12に向けて圧送する。
【0011】
前記絞り流路13の下部に段状に大径となる環状の負圧室13aを形成し、該負圧室13aに小径の気体流入路15を半径方向外方から連通させる。該気体流入路15の外端部にガス管継手(ニップル)19を介してガス供給管20を接続する。該ガス供給管20は、図1に示すように、プロパンガスが充填されたボンベ21(可燃性気体収容タンク)に接続し、該ガス供給管20に減圧弁V1、流量調整弁V2を順次下流側に配置して取り付け、減圧弁V1及び流量調整弁V2により、ボンベ21から気体流入路15に供給されるプロパンガスの量を所定値に設定する。
【0012】
前記拡開部14は、絞り流路13の下端から下方に向かって次第に大径となる円錐状にに形成し、底面は絞り流路13と対面する広面積の衝突壁14aとする。前記拡開部14の底部外周に複数の流出口16(図2)を形成し、該流出口16から拡開部14内で生成された複合液体燃料を中間タンク5内に流出させる。
【0013】
前記実施例によれば、燃料ポンプP1を起動させると、可燃性液体収容タンク2内のA重油が中間タンク5、及びバーナ3aに向けて送られることになる。このとき、生成装置10を作動させると、バブルポンプP2が燃料供給管4内のA重油の一部を生成装置10の流入口12に圧送し、また、ボンベ21からプロパンガスが生成装置10の気体流入路15に供給されることになる。
【0014】
バブルポンプP2によって圧送されるA重油は、絞り流路13を高速で流通し、負圧室13aに負圧を発生させ、この部で気体流入路15からプロパンガスを取り込みながら、拡開部14に向けて噴出し、該拡開部14の底部、即ち、衝突壁14aに激しく衝突し、拡開部14の内部でプロパンガスがA重油内にマイクロバブルの状態で混入した複合液体燃料が効率良く生成されることになる。前記気体流入路15から取り込むプロパンガスの量は、減圧弁、流量調整弁を調節することによって適宜設定することができる。
【0015】
前記拡開部14で生成された複合液体燃料は、拡開部14の底部外周の流出口16から中間タンク5内に流出し、該中間タンク5からバーナ3aに供給されることになる。該バーナ3aに供給された複合液体燃料は、内部に混入しているプロパンガスが迅速に燃焼して周囲のA重油を迅速に加熱、気化させて効率良く燃焼させることになる。この結果、未燃ガスの発生が低減するとともに、ボイラ3の温水生成能力を高めることになる。
【0016】
図4〜図6は第2実施例を示す。図4において、1は複合液体燃料の燃焼装置であり、可燃性液体収容タンク2とボイラ3のバーナ3aとを燃料供給管(燃料供給路)4により接続し、該燃料供給管4に可燃性液体収容タンク2内のA重油(可燃性液体)をバーナ3aに向けて送る燃料ポンプP1、及び該燃料ポンプP1の下流側に複合液体燃料の生成装置10−1を接続する。
【0017】
前記生成装置10−1は、燃料ポンプP1から圧送されるA重油内にプロパンガス(可燃性気体)をマイクロバブルの状態で混入させるもので、図5、図6に示すようになっている。即ち、ケーシング11内に大径の流入口12、小径の絞り流路13、円錐状の拡開部14、及び大径の集合室22を上流側(右部)から下流側(左部)に向けて順次同軸に連通形成する。
【0018】
前記流入口12は、管継手(ニップル)17aを介して燃料ポンプP1の吐出側の上流燃料供給管4aに接続され、該燃料ポンプP2によって上流燃料供給管4aからA重油が加圧供給される。前記絞り流路13の下部に段状に大径となる環状の負圧室13aを形成し、該負圧室13aに小径の気体流入路15を半径方向外方から連通させ、該気体流入路15の外端部にガス管継手(ニップル)19を介してガス供給管20を接続する。
【0019】
前記ガス供給管20は、図4に示すように、プロパンガスが充填されたボンベ21(可燃性気体収容タンク)に接続し、該ガス供給管20に減圧弁V1、流量調整弁V2を順次下流側に配置して取り付け、減圧弁V1及び流量調整弁V2により、ボンベ21から気体流入路15に供給されるプロパンガスの量を所定値に設定する。
【0020】
前記拡開部14は、絞り流路13の下端から下方に向かって次第に大径となる円錐状にに形成し、底面は絞り流路13と対面する広面積の衝突壁14aとし、該衝突壁14aの外周に分岐路を介してリング状の流出口16(図6)を形成し、該記流出口16を介して下流側の集合室22に連通させる。該集合室22は、管継手(ニップル)17bを介して燃料ポンプP1の吐出側の下流燃料供給管4bに接続され、該下流燃料供給管4bによって前記生成装置10−1で生成された複合液体燃料をバーナ3aに供給する。
【0021】
前記第2実施例によれば、可燃性液体収容タンク2とバーナ3aとを接続する燃料供給管4の途中に生成装置10−1を接続し、可燃性液体収容タンク2内のA重油をバーナ3aに向けて送る燃料ポンプP1の吐出圧力を利用して生成装置10−1を作動させるようにしたので、構造がより簡素になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施例を示す概略側面図である。
【図2】本発明の第1実施例による複合液体燃料生成装置の側面図である。
【図3】図2の断面側面図である。
【図4】本発明の第2実施例を示す概略側面図である。
【図5】本発明の第2実施例による複合液体燃料生成装置の断面側面図である。
【図6】図5のVI-VI拡大断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 複合液体燃料の燃焼装置
2 可燃液体収容タンク
3 ボイラ
3a バーナ
4 燃料供給管(燃料供給路)
5 中間タンク
10(10−1) 複合液体燃料の生成装置
11 ケーシング
12 流入口
13 絞り流路
13a 負圧室
14 拡開部
14a 衝突壁
15 気体流入路
16 流出口
17 管継手
18 分岐管
19 ガス管継手
20 ガス供給管
21 ボンベ(可燃性気体収容タンク)
22 集合室
V1 減圧弁
V2 流量調節弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温で液体となる可燃性液体内に、常温で気体となる可燃性気体をマイクロバブルの状態で混入してなることを特徴とする複合液体燃料。
【請求項2】
可燃性液体はA重油とし、可燃性気体はプロパンガスとしたことをことを特徴とする請求項1記載の複合液体燃料。
【請求項3】
ケーシング(11)内に可燃性液体が加圧供給される小径の絞り流路(13)と、該絞り流路(13)から下流方向に向かって拡開する拡開部(14)とを設けるとともに、拡開部(14)の底部に前記絞り流路(13)と対面する広面積の衝突壁(14a)を設け、前記絞り流路(13)の側部に可燃性気体が供給される小径の気体流入路(15)を連通させ、前記拡開部(14)の底部外周からケーシング(11)外に開口する流出路(16)を設けたことを特徴とする複合液体燃料の生成装置。
【請求項4】
バーナ(3a)と可燃性液体収容タンク(2)とを結ぶ燃料供給路(4)を設け、該燃料供給路(4)の上流側に燃料ポンプ(P1)を、下流側に請求項3記載の複合液体燃料の生成装置(10−1)を設け、前記燃料ポンプ(P1)の吐出側を前記生成装置(10−1)の絞り流路(13)に接続し、可燃性気体の供給路(20)を前記生成装置(10−1)の気体流入路(15)に接続し、生成装置(10−1)の流出路(16)を燃料供給路(4)のバーナ(3a)側に接続したことを特徴とする複合液体燃料の燃焼装置。
【請求項5】
バーナ(3a)と可燃性液体収容タンク(2)とを結ぶ燃料供給路(4)の途中に中間タンク(5)を接続し、該中間タンク(5)内に請求項3記載の複合液体燃料の生成装置(10)を収容し、前記燃料供給路(4)内の可燃性液体を前記生成装置(10)の絞り流路(13)に加圧供給するバブルポンプ(P2)を設け、前記生成装置(10)の気体流入路(15)を可燃性気体が収容された可燃性気体収容タンク(21)に接続し、前記中間タンク(5)内で生成された複合液体燃料をバーナ(3a)に向けて送る燃料ポンプ(P1)を設けたことを特徴とする複合液体燃料の燃焼装置。
【請求項6】
可燃性気体が加圧収容されたボンベ(21)を設け、該ボンベ(21)を減圧弁(V1)、流量調整弁(V2)を介して生成装置(10)の気体流入路(15)に接続したことを特徴とする請求項4又は5記載の複合液体燃料の燃焼装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−256433(P2009−256433A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−105509(P2008−105509)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(592040619)株式会社ヤマザキ (10)
【Fターム(参考)】