複合混合物中の分子標的を分離するための方法及びデバイス
本発明は、複合混合物に含まれる分子標的を分析する方法に関するものであって、a)分析対象の分子標的の混合物を異なるタイプの一次プローブのアレイと接触させ、これにより、前記アレイを形成するそれぞれのタイプの一次プローブが、前記分子標的と前記一次プローブとの間の特異的結合を可能にする条件下で、複数の分子標的の中から選択された1つのタイプの標的に特異的に結合し得る工程、b)分子標的に特異的に結合していない一次プローブを適宜排除する工程、c)プローブ/標的複合体中で特異的に結合している分子標的及び一次プローブを分離して、分析対象の分子標的のフィンガープリントを表す一次プローブのアレイを回収する工程、及びd)工程cで溶出された一次プローブを定量的に分析する工程を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合混合物中の分子標的を分析するための方法及びデバイスに関する。特に、本発明により、複合混合物中の分子標的の分離及び定量分析を行うことができる。
【背景技術】
【0002】
本発明の特定の目的は、従来技術で既知の、生体高分子プローブの有機マトリックスを使用して分子標的を分離し分析するために、これまでに遭遇した難題を、少なくとも一部、解消するための手段である。
【0003】
生体高分子プローブの有機マトリックス(DNAチップ、タンパク質チップ等)を使用することで、混合物中に存在する生体高分子(分子標的)を定性的に且つ定量的に分離することが可能になり、これは、その数、配列、及び複雑度が何であれ、理論上可能である。しかし、核酸ネットワークでは、プローブにハイブリダイゼーションされた標的分子の数を絶対的に、また正確に、計数することができない。現在利用できる技術に関して、マイクロアレイ上の生体高分子を検出するのは間接的なものであり、標識付け工程を必要とする(蛍光、放射能等を使用して)。例えば、「蛍光標識」を使用する方法では、分析対象の分子に結合された蛍光標識の蛍光強度を測定する。
【0004】
分子がハイブリダイゼーションする際、マイクロアレイ上に形成されたプローブ−標的複合体の数に比例する蛍光の増大が生じる。しかし、標識を使用する間接的測定は、特に分子標的が分析対象の少量の生体物質を形成する場合に、比較的信頼できるにすぎないか、またはこれらの測定には、ルーチン分析での使用に難点がある。
【0005】
放射活性標識した残留物及び非放射性残留物を生体高分子中に組み込むことで得られる結果はほとんど同じであるが、蛍光標識については当てはまらない(Martinezら- Nucl. Acids. Res. 2003年、31:18頁、Hoenら-Nucleic Acids Res. 2003年3月1日、31(5)、20頁)。これらの標識付けの問題は、特に、蛍光標識CY3及びCY5を組み込んだcDNA分子の合成の場合に発生する。この後者のタイプの標識付けで生じる立体障害も、反応の速度及び化学量論的平衡を大きく変える可能性がある(一般に、ハイブリダイゼーション、抗体−抗原反応、標的−リガンド反応等)。
【0006】
立体障害のこれらの問題は、放射性同位元素を使用することにより解消されるが、放射性同位元素を使用した場合、放射性廃棄物だけでなく、使用される物質及び作業員の安全性に関わる問題も取り扱う必要がある。また、放射活性標識した分子を検出する技術、つまり、主に放射能用の「ホスホイメージャー」のタイプ(Bertucci Fら-Hum Mol Genet.、1999年9月、8(9):1715〜22、Erratum in: Hum Mol Genet 1999年10月、8(11)、2129頁)、及び蛍光を検出するための種々のタイプのスキャナーは、実施される測定の検出及び再現性閾値に到達するように、チップ上にハイブリダイゼーションされる生体物質の量に関して一定の数の制限を課している。実際、少数の細胞(〜1000個)を含む試料中に1細胞当たりごくわずかのコピーとして存在する分子を検出することは可能でなく、これは、臨床試料では頻繁にある状況である。
【0007】
前述のように、生体高分子プローブの直接標識付けを使用する必要性に関わる問題を解消するために、これらのプローブを間接的に検出するために、形成されたプローブ−標的複合体を検出する他の方法が開発されている。
【0008】
従って、生体高分子の電気伝導性を用いることが提案されている。これが可能なのは、配列の一本鎖DNAの分子は、対応する二本鎖の分子と同じインピーダンスを持たないためである。この特性をDNAチップ上で用いて、ハイブリダイゼーションの割合、及びそれによるマイクロアレイ上に形成されるプローブ−標的複合体の数を評価する。一般に、インピーダンスの変動を用いて、受容体上のリガンドの結合等の分子間相互作用を検討することができるが、DNAまたはタンパク質及び薬物、イオン等の分子の間の相互作用も検討することができる。ただし、マイクロアレイについては、この検出方法は以下のものによって制限されている。
【0009】
1)2000スポットを超える高密度チップを作製することが困難であること。電極のサイズ及びインピーダンスチップを作製するために使用される接続部の幾何学的形状のせいで、ハイブリダイゼーション面は、スポットの数が800を超えるとたちまち非常に広大なものとなる。しかし、広いハイブリダイゼーション面は、大きなハイブリダイゼーション体積を必要とし、従って、検出できる最小レベルに到達するのに、大量の生体物質を必要とする。これは、例えば診断のために物質がわずかしか利用できない実験には適しない。
【0010】
2)測定されたインピーダンスの変動を解釈できなくする測定人為結果を引き起こす、調査されている分子のコンフォメーション変化(プローブ及び/または標的)。例えば、配列または分子内ハイブリダイゼーションが原因のDNA中の歪みは、分子間ハイブリダイゼーションの場合と同程度のインピーダンスの変動を引き起こす。
【0011】
3)分析対象の分子のサイズによるインピーダンスの変動。例えば、トランスクリプトームを表す、核酸分子は、以下の理由:
・一方の遺伝子から他方の遺伝子への転写の不均一な進み方;
・遺伝子の異なる長さ;
・同じ遺伝子の転写により異なるスプライシングを受けること;
から、異なるサイズを有する。
【0012】
従って、チップ上の1つのスポットで測定された電気信号は、1つの遺伝子に対する転写サイズの不均一混合物のハイブリダイゼーションから生じる。この信号は、異なる細胞抽出物中でハイブリダイゼーションされた同じ遺伝子について得られたもの、または同じチップ上の他の遺伝子について得られたもののいずれとも比較できない。
【0013】
これらの条件において、インピーダンスの測定も、以下の制約条件のために困難なものとなる。電界効果トランジスタ(FET)は、DNA分子のハイブリダイゼーションにより生じるインピーダンスの変化を測定するために電流及び/または電圧の増幅器として使用される。プローブのグラフトは、このトランジスタグリッドで生じる。ここで標的がハイブリダイゼーションする場合、グリッドのインピーダンスを変化させ、トランジスタのソース(トランジスタ入力)とトランジスタのドレイン(出力)との間の電流及び電圧の変化を引き起こす。この検出方法に関して、いっさいのネットワーク編成が説明されていない。プローブをトランジスタグリッドに置くことによって、電界効果トランジスタを電流増幅器として使用すると、トランジスタの使用が制限される。
【0014】
これは、電界効果トランジスタのグリッドが電流を受けることがないからである。電圧のみがそれに印加され(applied)、トランジスタはソース/ドレインチャネルの開放を制御する。オリゴヌクレオチドのインピーダンスを直接的に、且つ効果的に測定するために、それに異なる周波数の電圧及び/または交流を流す必要がある。さらに、電界効果トランジスタグリッドの弱点は、プローブの位置付けの間に発生する静電気から保護することが困難であるという点である。
【0015】
グリッド上のプローブの存在も、それぞれのスポットで電圧及び電流を制御するためのマルチプレクサにおけるトランジスタのスイッチとしての使用を妨害する。さらに、この構成において、標的を移動させ、それぞれのスポットに集中させるために、トランジスタのソース及びドレインを電気泳動電極として使用して、ハイブリダイゼーション基板上を標的分子が移動するのを制御することは可能でない。
【0016】
現在の技術状況では、核酸の電気インピーダンスの測定を行っても、核酸の複合混合物を構成する分子の不均一集団の濃度または割合を定量化または分析することはできない。
【0017】
この分野で使用される他の検出方法としては、質量分析法がある。質量分析法によりDNA、RNA、またはタンパク質等の高分子の質量を決定する方法が知られている。この方法による分析が穏やかな分子分解を伴う場合、それらの配列を決定することも可能である。しかし、複合混合物、特に、サイズまたは質量により区別可能かどうかどうか知られていない、分析対象の100を超える標的分子を含む混合物の分野では、標的を分析することは困難であるか、あるいは不可能でさえある。
【0018】
他の可能な検出方法は、金または白金等の自由電子を有する金属の極薄(x nm)板の表面からわずかな距離(200nm未満)に蓄積された物質の密度を決定することができるプラズモン表面共鳴(PSR)を使用する。金属板の面の一方での反射は、他方の面の近くに置かれている物質の密度及び量に比例して変化する。
【0019】
プラズモン表面共鳴(PSR)は、質量の変化を測定する。ハイブリダイゼーションで、分子は、マイクロアレイ上に形成されたプローブ−標的複合体の数に比例する特定の質量を獲得する。
【0020】
従って、この方法は、複合混合物中に含まれる分子標的の定量分析についての前述のものと同様の問題の影響を受けやすい。
【0021】
分子標的のこれらの分離及び/または分析法の使用は、調査対象の分子が異なる形状、配列、及びサイズである分析対象の混合物の複雑度により、または利用可能な物質の量により制限され、プローブを使用して集められた標的の検出を妨げる。
【非特許文献1】Martinezら- Nucl. Acids. Res. 2003年、31:18頁
【非特許文献2】Hoenら-Nucleic Acids Res. 2003年3月1日、31(5)、20頁
【非特許文献3】Bertucci Fら-Hum Mol Genet.、1999年9月、8(9):1715〜22、Erratum in: Hum Mol Genet 1999年10月、8(11)、2129頁
【非特許文献4】Dynal distributors Worldwide, copyright 1996 Dynal AS - Technical Handbook second edition
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の目的は、複合混合物に含まれる分子標的の定量分析のための既知の方法に対する代替方法を提供することであり、これは、前記分子標的集団の不均一または複雑さによる制限を克服し(特に、トランスクリプトームまたはプロテオームに関する場合)、結果として、分離された分子標的の検出に異なる技術を使用し、混合物から分離された前記分子標的の信頼性の高い、再現性のある定量的測定を達成することが可能になる。
【0023】
本発明はまた、臨床診断を行うために一般的に利用可能な量に従って、標的を含む生体物質の量が限られている場合に、生体試料中の分子標的の分析に適した手段を提供する。
【0024】
これを実施するために、本発明者は、「一次プローブのアレイ」と以下で称されるものを構成するために規定されたプローブ(オリゴヌクレオチドの形態をとるものを含めて、ポリヌクレオチド部分を含む)を含む供給源を規定した。分析対象の標的の複合混合物と接触させた場合、特に溶液中で、一次プローブのアレイは、一方の分析と他方の分析とで再現性のある前記標的の分子フィンガープリントを作製することができ、この時点で既知の検出手段を用いるなどして、定量的に検出することができる。
【0025】
従って、検出される分子標的のフィンガープリントは、検出段階において標的の代わりとなる。
【0026】
本明細書で使用されているような「フィンガープリント」という用語は、分子標的との特異的結合を実際に形成している、考慮されるプローブのアレイの一次プローブの群が、分析された混合物中に含まれる分子標的を有意に、定量的に、且つ定性的に記号化し、それぞれのプローブが、例えば、組成、サイズ、及び形状に関して、それが結合する標的と必ずしも同一でないということを意味する。本発明に係る方法により、核酸標的の特定配列またはポリペプチド標的の特定組成を同定または認識する必要がなくなる。
【0027】
一次プローブのアレイにおけるプローブは、例えば、末端の一方が当該一本鎖よりも短い相補的配列とハイブリダイゼーションする、一本鎖核酸(ポリヌクレオチド)または修飾された一本鎖ポリヌクレオチドを含むか、または本発明の実施形態に従い、それらからなる、あるいは、例えばこれらが、PNA(ペプチド核酸)であることを特徴とする。従って、ポリヌクレオチドという用語は、ただし、以下で特異的に使用される場合に明示的に引用され得る修正形態を含む。前述のPNAは、質量分析法のプローブ分解能を改善する。従って、それは、この検出法を使用する本発明の実施形態を実施する場合に、特に重要である。
【0028】
一次プローブのアレイは、特に溶液中の、いくつかのタイプのプローブの混合物として使用されるべき、会合により形成され、それぞれのタイプのプローブはプローブのアレイ中のそれぞれの他のタイプのプローブから区別可能であり、また個別に検出可能(特に、定量化可能)である。本発明の文脈において概要が述べられている一次プローブのアレイのプローブは、分析される複合混合物中に存在している場合にあるタイプの標的を認識且つ特異的に結合し得、またそのように設計される。要するに、あるタイプの一次プローブについては、複合混合物中に対応する固有のタイプの標的がある。それは、混合物中において、検出可能且つ定量化可能な一次プローブに特異的に結合する標的である。プローブ−標的複合体を形成するプローブの群は、分析される標的のフィンガープリントを形成する。
【0029】
さらに、異なるタイプの一次プローブは、発色若しくは発光、親和性、酵素、磁気、熱、または電気的なタイプの標識によるポリヌクレオチド部分の標識付けが存在しないこと(特に蛍光または放射性標識の存在しないこと)を特徴としており、それらの検出及び/または定量化を可能にするように設計される。これらの条件の下で、特異的なプローブ−標的複合体を形成している一次プローブアレイ中のプローブの個別の検出は、「間接標識」と呼ばれ、プローブに固有の自己決定特性を付与し、且つその標的に対する親和性を変えない、プローブのポリヌクレオチド部分の以下の3つの特徴:(i)当該プローブのポリヌクレオチドに含まれるヌクレオチドの組成及び配列;(ii)当該プローブのポリヌクレオチドのサイズ(または長さ);(iii)当該プローブのポリヌクレオチドの質量;のうちの少なくとも1つを使用する。
【課題を解決するための手段】
【0030】
特定の一実施形態において、一次プローブの以下の記載に見られるように、一次プローブの組成は、それらの核酸配列のサイズが既知であり、且つ均一であるか、または同一でさえあるような、あるいはプローブがポリペプチド部分に連結されたポリヌクレオチド部分を含む場合に、それらのポリヌクレオチド配列は同一サイズであるような組成である。
【0031】
本発明の他の実施形態において、一次プローブは、サイズ及び/または質量が一次プローブのアレイ中の他のポリヌクレオチドと異なるポリヌクレオチドからなる。
【0032】
一変更形態において、プローブがポリペプチド及びポリヌクレオチド部分の両方を有する場合、それらのポリヌクレオチド部分は、例えば、それぞれのポリヌクレオチド部分が一次プローブのアレイ中の他のポリヌクレオチドと異なる質量及び/またはサイズを有する、その質量及び/またはサイズによって測定することができる。
【0033】
本発明の目的は、従って、溶液中に異なるタイプの一次プローブの集団を含む、複合混合物中の分子標的を分析するのに適した一次プローブのアレイであり、:
−それぞれのタイプの一次プローブは、プローブのアレイ中の他のタイプの一次プローブと異なり;
−前記一次プローブ及び前記分子標的が接触した場合に、すべての一次プローブは、特異的結合により、分析対象の固有のタイプの分子標的に結合し得;
−それぞれのタイプの一次プローブは、ポリヌクレオチドであるか、あるいはポリペプチド部分に結合したポリヌクレオチドを含み、複合混合物中の固有のタイプの分子標的と特異的に結合し得、それぞれのポリヌクレオチドはプローブのアレイ中の他のすべての一次プローブのポリヌクレオチドとは、これを構成するヌクレオチドの配列、そのサイズ、またはその質量の点で異なる。
【0034】
一次プローブのアレイ中のプローブのこれらの特性は、異なる実施形態の記述の中で後述されている、特定のプローブを規定する特徴により例示され、完結している。
【0035】
本発明の特定の一実施形態において、こうして規定されたプローブのアレイ中で、それぞれのポリヌクレオチドは、他のポリヌクレオチドに応じて同定され、特に、前記ポリヌクレオチドが、二次ポリヌクレオチド−プローブ複合体(後述)を作るか、またはプローブ−標的複合体を形成するために、特定のハイブリダイゼーション反応で使用されることが意図されている場合に、その配列により、またはその配列の一部により独立して知られる。この場合、当該ポリヌクレオチドを含むヌクレオチドの特定の順序は、他のタイプのプローブのポリヌクレオチドの配列のものとは異なると判定され、または判定され得、知られ得る。
【0036】
一次プローブポリヌクレオチドの検出により、相補的核酸配列との特異的ハイブリダイゼーション反応が生じない場合、それぞれのタイプの一次プローブのポリヌクレオチドは、他の一次プローブのポリヌクレオチドと、そのサイズ及び/またはその質量の点で異なっていることだけを必要とする。サイズ(プローブポリヌクレオチドの長さを与える、実験式中のヌクレオチドの総数)、及び/またはその質量(配列の実験式から計算される)におけるこの差は、プローブのアレイ中の構成するそれぞれのヌクレオチドの数、及びそれぞれの質量を考慮し、またプローブ−標的複合体中に適切なポリヌクレオチドを組み込むために最初に同定された配列の質量に応じて質量を変えるための前記配列への可能な修正を考慮している。
【0037】
これら3の基準(配列、サイズ、及び質量)により、相当の数の異なる一次プローブを作製が可能である。実験式:(An, Cm, Ti, Gj)を考察する際、式中、Aはアデノシン、Cはシトシン、Tはチミン、Gはグアニン、n、m、i、jは式中のそれぞれの数(核酸高分子のサイズは(n+m+i+j)に等しい)であり、質量を変える可能な修正を含めることなく、(n+m+i+j)!/(n!.m!.i!.j!)に等しい数の異なるプローブを作製することが可能である(x!はxの階乗を表す)。
【0038】
それぞれのタイプの一次プローブに対するポリヌクレオチドの質量が既知であり、それぞれのタイプのプローブ毎に異なっている場合、一次プローブの分析は、つまり、分子標的に特異的に結合する一次プローブの同定は、それらのポリヌクレオチドの質量を決定する工程の後に実施される。この測定は、質量分析法により実施することができる。
【0039】
あるタイプの一次プローブのポリヌクレオチドの質量は、他のすべてのタイプの一次プローブのポリヌクレオチドの質量と容易に区別可能でなければならない。
【0040】
2つのタイプの一次プローブに対応する2つのポリヌクレオチドの質量が近い場合、つまり、例えば質量分析において、ある検出法では混同されがちである場合、容易に区別可能にするために、それらのうちの少なくとも1つの質量を、例えば、その原子のいくつかをより重い原子で置き換えるか、またはシトシン等のその塩基(A、T、C、G)の一部のメチル化若しくはエチル化によって変化し得る。
【0041】
数百さらには数千、数万、数十万タイプもの一次プローブを含む一次プローブのアレイの場合、一次プローブ分析段階で種々のタイプのポリヌクレオチドをより容易に同定できるように、論理的にそれらのポリヌクレオチドの質量をこの方法で修正すると都合がよい。
【0042】
試験試料中の分子標的に特異的に結合し、当該ポリヌクレオチドが異なる質量を有する、一次プローブの分析工程は、:
−試料分析を意図した一次プローブアレイと同じプローブのアレイを含むが、質量分析計についての分解能の例えば1単位に相当する量だけ、それぞれのプローブの質量を変えるプローブの標準混合物を準備する工程;
−いくつかの希釈で使用される標準混合物の既知の量のプローブの存在下で、質量スペクトルを得られるような方法で、分子標的に特異的に結合する一次プローブのポリヌクレオチド(既知の量で存在する)を質量分析法により分析し、且つ必要な場合、前述の分解能単位だけ修正されたそれぞれの標準プローブの質量が、試験されるプローブのアレイ中のいずれかのプローブの質量と重なり合わないことを確認し、この工程が基準スペクトルの準備を構成する工程;
−一次プローブのアレイのプローブを使用することによって、分析された試料について得られたフィンガープリントに、既知の量の標準混合物を加え、この混合物に対する質量スペクトルを得る工程;及び
−前記工程における質量スペクトルと、基準質量スペクトルとを比較し、前記フィンガープリントを形成する一次プローブのアレイ中のプローブの定量化によって標的分子を定量する工程;
とを含むことができる。
【0043】
それぞれのタイプの一次プローブに対するポリヌクレオチドの質量が既知であり、それぞれのプローブのタイプ毎に異なっている場合、一次プローブの分析、つまり、分子標的に特異的に結合する一次プローブの同定は、それらのポリヌクレオチドの質量を測定する工程の後に実施される。電気泳動分離システムを用い、濾過、UV検出システムにつないだ気相または液相のクロマトグラフィ、あるいはLIBS(レーザー誘起ブレークダウン分光法)によって、当該決定を実施することができる。
【0044】
前述のように、特にプローブに使用される異なるポリヌクレオチドが同じ質量を有する場合、一次プローブを構成する際に使用するように選択されたポリヌクレオチドを修正して、異なる物理化学的特性を付与し(所定の数のメチル化、エチル化等により)、一次プローブ分析段階でさらに容易に同定されるようにすると都合がよい。
【0045】
この場合、及び標的が核酸である場合、ポリヌクレオチド部分がこの方法で構成される一次プローブのアレイの調製は、特に、多数のプローブを取得する必要がある場合に、図22に示され、後述される工程に従って実施することができ、多数のプローブがこれを必要とする場合には、これらの工程はコンピュータプログラムの助けを借りて実施される。
【0046】
−工程110:例えば、20-150個、例えば20-100個のヌクレオチドを含むポリヌクレオチドからなる、一次プローブに対しサイズ間隔を規定し、プローブ及び標的のハイブリダイゼーションの条件、特に融解温度Tm(与えられたプローブの50%がその相補的配列とハイブリダイゼーションする温度)、例えばプローブの群に対して50-75℃の範囲の温度を規定する工程。
【0047】
−工程1201、1202、及び1203:必要な場合、プローブを調製する必要のない標的の領域を除去した後、異なる配列のポリヌクレオチド分子標的のS数を決定する工程。この数は、10、50、100、500、1000、10000、20000あるいはそれ以上の値以上であり得る。それぞれの標的配列は、番号iを有し、この番号は、1からSまでを含む。
【0048】
−工程1301及び1302:試料中に存在し得るそれぞれの標的配列iに対する、考察中の標的により完全にハイブリダイゼーション可能で、サイズが選択されたサイズ間隔に含まれ、Tmが選択された値の範囲内に含まれるNi個の可能なプローブの集合体の同定。
【0049】
−工程1401及び1402:Ni個の配列の前述の集合体中で、考察される配列iに含まれる分子標的とのハイブリダイゼーションによって結合し得、それによって形成される結合が特異的であり、そのときから混合物の他の可能な標的配列とのハイブリダイゼーションを除く、ni個のポリヌクレオチド配列の集団を選択する工程。このために、Ni個のプローブの集合体中のそれぞれのプローブは、試料中にある可能性のあるi個の配列すべてと、例えば、EMBL、Genebank等のデータベースの助けを借りて比較される。ni個のプローブの集団は、固有の分子標的配列iに特有である。例えば、連続する同一塩基の数15を超える、Ni個のプローブの集合体中の他の配列と、ある閾値を超える類似度を示す一次的プローブの配列を排除することができる。
【0050】
−工程1501及び1502:プローブを構成するためのni個の推測されるポリヌクレオチドのこの集団内において、必要な場合、その中に含まれるヌクレオチドを修飾する、例えば、1つまたはいくつかのシトシン残基をメチル化またはエチル化することにより、それぞれのポリヌクレオチドに対し、集団内の他のポリヌクレオチドの質量と異なる質量を割り当て、それぞれの配列が既知であり且つすべてが異なる質量を有するポリヌクレオチドの集合体を取得する工程。それぞれの配列修飾に対して当該比較を反復的に繰り返す。ni個のポリヌクレオチドの集団は、好ましくは、質量の昇順で、次いで、メチル化または他の修飾の数の昇順で順位付けされる。
【0051】
−工程1601及び1602:i=1に対し、つまり、考察される第1の分子標的の配列に対し、1一次プローブのZi個の組み合わせが存在する(Ziはniに等しい)。
【0052】
−工程1701、1702、及び1703:iが1と異なる値、例えば2に等しい、標的iに対し、前述の工程は、すべてが異なる質量を有し、標的配列iにハイブリダイゼーションし得るni個の一次プローブの集団体の同定のため繰り返される。i個の一次プローブのZi個の組み合わせの集合体が説明されており、これらの組み合わせのそれぞれ1つは、調査されるni個のプローブのそれぞれの集団に対する固有の一次プローブを含み、あるいは言い換えると、i個の一次プローブのそれぞれは、考察されるi個の配列のうちのただ1つに由来し、Zi個の組み合わせのそれぞれに対する一次プローブの群は、すべてのポリヌクレオチドが異なる質量を有するような群である。このために、ni個のプローブの集団のそれぞれの一次プローブは、前述されている組み合わせ、つまり、m(i-1)が1からZi-1の範囲であるそれぞれの組み合わせm(i-1)の一次プローブと比較される。一次プローブの質量が互いに近すぎる場合、最少の修飾、例えば最少のメチルまたはエチル基を含む一次プローブは、例えば最初の5'非メチル化または非エチル化シトシン上でメチル化され得る。それぞれの配列修飾に対して当該比較を反復的に繰り返す。
【0053】
−工程180:i個の一次プローブのZi個の組み合わせは、当該組み合わせを含むi個の一次プローブの質量の合計の昇順で順位付けされ、次いで、当該組み合わせ中の一次プローブ上の例えばメチルまたはエチル基の修飾残基の数の昇順で順位付けされ、これにより、組み合わせ中に同じ数の修飾を有する一次プローブが、その質量の昇順で順位付けされる。以下の工程におけるアルゴリズムを高速化するために、当該組み合わせの一部のみ、例えば最初のLsを考察することができる。
【0054】
−工程1602:調査されるi個の配列にわたり、i個の一次プローブのZi個の組み合わせの集合体を同定する工程。
【0055】
−前述の工程はi毎に繰返され、iは3からSの範囲である。i=Sであり、且つS個の一次プローブのZS個の組み合わせの集合体がS個の標的配列に対して同定された場合、一次プローブアレイを構成する当該組み合わせのうちの1つを選択することができる。好ましくは、この組み合わせは、時間とコストに関して達成するのに最も容易なものであり、または工程180で構成されたZS個の組み合わせの順位付けにおいて最初のものである。
【0056】
こうして定められたプローブアレイ中の一次プローブは、ポリヌクレオチドを調製するための任意の既知の方法によって合成される。より一般的に、一次プローブアレイは、以下の工程:
−一次プローブに対するサイズ間隔を規定し、プローブを標的にハイブリダイゼーションするための条件、特にプローブの群に対する融解温度Tmを規定する工程;
−複合混合物中の異なる配列のポリヌクレオチド分子標的の数iを決定する工程;
−試料中に存在し得るそれぞれの標的配列iに対する、考察中の標的によって完全にハイブリダイゼーション可能で、サイズが選択されたサイズ間隔に含まれ、Tmが選択された値の範囲内に含まれる、Ni個の可能なプローブの集合体を同定する工程;
−Ni個のプローブの前述の集合体中で、考察される配列iによって構成される分子標的とのハイブリダイゼーションにより結合し得、それによって形成される結合が特異的であり、そのときから混合物の他の可能な標的配列とのハイブリダイゼーションを除く、ni個のポリヌクレオチド配列の集団を選択する工程;
−プローブを構成するための推測されるプローブのこの集団内において、必要な場合、その中に含まれるヌクレオチドを修飾する、例えば、1つまたはいくつかのシトシン残基をメチル化またはエチル化することにより、それぞれのポリヌクレオチドに対し、集団内の他のポリヌクレオチドの質量と異なる質量を付与し、それぞれの配列が既知であり、且つすべてが異なる質量を有するポリヌクレオチドの集合体を取得し、それぞれの配列修飾に対して当該比較を反復的に繰り返す工程;
−それぞれの配列iに対してi個の一次プローブのZi個の組み合わせの集合体を同定し、これらの組み合わせのそれぞれは、調査されるni個のプローブのそれぞれの集団に対する固有の一次プローブを含み、ni個のプローブの集団の一次プローブのうちのそれぞれは、前記で作られた組み合わせ中の一次プローブと比較され、且つ一次プローブの質量が互いに近すぎる場合、それらの配列を修飾し、それぞれの配列修飾に対して当該比較を反復的に繰り返す工程;
−i個の一次プローブのZi個の組み合わせを、前記組み合わせを含むi個の一次プローブの質量の合計の昇順で、及び修飾された基の数の昇順で順位付けする工程;
−調査されるi個の配列にわたり、i個の一次プローブのZi個の組み合わせの集合体を同定する工程;並びに
−こうして規定されたプローブアレイ中で一次プローブを合成する工程;
を含む方法によって調製される。
【0057】
試料標的が核酸でない場合、一次プローブ中に含まれるポリヌクレオチドを調製する方法は、プローブと標的との間の特異的ハイブリダイゼーション反応を考慮する必要がない限りにおいて、前記の説明に関して変えられる。
【0058】
質量が一次プローブポリヌクレオチドを検出するための識別基準でない場合、それらはサイズ及び/または配列により区別され得る。一次プローブポリヌクレオチドのサイズ及び質量特性がなんであれ、標的が核酸である場合におけるそれぞれのタイプの一次プローブのポリヌクレオチド配列は、標的との特異的且つ排他的な結合が可能であるように、他のタイプの一次プローブの他の配列すべてと異なっていなければならない。ポリヌクレオチド配列のこうして規定された特異性は、本発明の一実施形態により、一次プローブ及びそれによって標的を検出する手段を構成し得る。
【0059】
標的−プローブ複合体中の一次プローブの検出が、ポリヌクレオチド配列の検出を必要とする場合、後述のように二次プローブのアレイを使用することができる。図22は、それらの質量によって区別される1000個の一次プローブの混合物を得るためのストラテジーの例を示している。それぞれの一次プローブの質量の選択は、例えば、メチル基をシトシンに加えることによる核酸塩基の配列、サイズ、及び/または修飾の関数である。一次プローブアレイは、13ダルトンの分解能を有するMALDI-TOFF質量分析計で分析されることを意図され得る。一次プローブの質量の変更は、重同位元素によりいくつかの原子を置き換えることにより達成され得る。
【0060】
それぞれの一次プローブに対して特異的なクロマトグラフィ基準を有する一次プローブアレイを作製するために、同様の手法が考慮され得、一次プローブのサイズ、及び実施されるメチル化及び置換の位置を考慮する。本発明の文脈における使用のために、一次プローブアレイは、複合混合物中で認識し得る標的の量に関して、過剰なそれぞれのタイプの一次プローブを含む。さらに、一次プローブアレイは、一次プローブの化学量論的な混合物の形態で使用される。
【0061】
プローブ混合物の化学量論的状態を維持するために、プローブは、それらのポリヌクレオチド部分がそれら自身とハイブリダイゼーションし得ないか、または少なくとも安定なプローブ−プローブハイブリッドを形成し得ないように調製される。
【0062】
従って、本発明者は、(それ自体検出可能である分子を用いて)間接的に標識付けされているプローブを、分析用の複合混合物中の不均一な分子標的の特徴的且つ再現可能なフィンガープリントを取得するために混合物中で使用することができ、前記フィンガープリントは溶液中でプローブ−標的複合体を形成しているプローブ、または後者のポリヌクレオチド部分から構成され、且つ定量的に測定され、混合物中に含まれる標的の量を測定することができることを示している。
【0063】
前記プローブ(またはそれらのポリヌクレオチド部分)はさらに、標的の混合物と接触させた後、溶液中でプローブ−標的複合体を形成した後、個別に同定し、定量化されることができる。この同定は、当該ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列、そのサイズ、またはその質量による効果を検出することによって、それらのポリヌクレオチド部分を同定することを含む。
【0064】
従って、本発明の目的は、溶液中に異なるタイプの一次プローブの集団を含む複合体混合物中の分子標的の分析に適した化学量論的混合物における一次プローブアレイであり、前記アレイを構成するそれぞれのタイプの一次プローブは、それが含むポリヌクレオチドのヌクレオチド配列において他のタイプのプローブと異なり、及び/または本発明の特定の実施形態により、前記ポリヌクレオチドの質量またはそのサイズ、または2つの最後の基準の点で異なり、前記一次プローブ及び前記分子標的を接触させ、溶液中で反応させる場合に、分析対象の分子標的の1つのタイプに特異的に結合し得る。
【0065】
本発明の特定の一実施形態において、一次プローブアレイは、少なくとも10個の一次プローブ、例えば少なくとも50個、特に少なくとも100個、好ましくは少なくとも200個、都合よくは少なくとも1000個、あるいは少なくとも10000または20000個のプローブを含む。
【0066】
本発明に係る方法は、一次プローブを用いて分子標的を分析する。前記のように、一次プローブは、必ずしも独占的に核酸からなるわけではなく、ポリヌクレオチド部分を含む。このポリヌクレオチド部分は、適宜、例えば、均質のまたは同一のサイズのポリヌクレオチドに対する二次検出プローブによって、あるいは他の手段、例えば、それらの構造に応じてポリヌクレオチドのサイズ若しくは質量若しくは他の既知の物理化学的特性の違いを測定することによって検出可能でなければならない。実際に分子標的と特異的に結合している一次プローブは、混合物中に含まれる検出されるべき分子標的のフィンガープリントを構成する、最初に使用されるプローブのアレイ中の一次プローブの亜群を表す。
【0067】
複合核酸混合物の分析の一実施形態において(サイズ及び/または配列が不確定であるか、または知られてさえいない可能性のある、分析対象の分子標的とは異なる)、一次プローブは、すべて均質なサイズを有する、例えば同一であるように選択され得るか、またはプローブがポリペプチドとポリヌクレオチド部分を組み合わせる場合、後者のサイズはプローブの中で均質であり、例えば同一である。当業者であれば、どのくらいのプローブの間のサイズのばらつきが許容し得るかを、特に使用されている電気的または光学的検出方法の感度に応じて決定することができる。指示により、プローブのサイズは、検出測定が± x%まで正確である場合に選択されたサイズに関して、± x%の範囲で変化する場合に均質であると考えられる。実際、約±10%の範囲内のサイズのばらつきは許容される。
【0068】
さらに、それぞれのタイプの一次プローブの配列(一次プローブのヌクレオチド部分)が既知であるか、または決定され得る。特に、これらの配列は直線的である。それぞれのプローブにより引き起こされる測定のばらつきは、配列次第で測定され得る。
【0069】
次いで、そのサイズ及び配列が既知であるか、または測定可能であり、分析された混合物中の分子標的に特異的に結合している、一次プローブまたはそれらのポリヌクレオチド部分は、例えば二次ポリヌクレオチドプローブによって、分析のためにそれらの標的から分離され、回収される(溶出される)。溶出された一次プローブとのハイブリダイゼーション反応における二次プローブの使用により、前記一次プローブの同定及び定量化、並びに分子標的の間接的同定及び定量化が可能となる。当該二次プローブは、この場合その標的が一次プローブであることを考慮することによって、ポリヌクレオチドからなる一次プローブと同じように特徴付けられる。
【0070】
一次プローブ(またはそれらのポリヌクレオチド部分)と二次プローブとの間に形成される対合の検出は、以下に示されるように、一次プローブが標識付けされる必要なく、実施され得る。
【0071】
前記溶出された一次プローブは、異なるタイプの二次プローブのマトリックス中にそれらを保持することにより検出し得、それぞれの二次プローブは分子ハイブリダイゼーション中の特異的結合により固有のタイプの一次プローブを保持し得る配列を有する。使用される二次プローブは、複合混合物と接触している一次プローブのアレイのサイズと同様のサイズを有するプローブのアレイを形成する。
【0072】
従って、本発明により、同時に一次プローブのアレイと二次プローブのアレイとを使用した場合に、単一チップに接触させられる、複合核酸混合物の分析の状況において、それぞれのタイプのプローブの存在量にのみに依存して測定を行い、異なるサイズ、形状、及び配列を有する分子標的が存在することによる測定人為結果を回避することが可能になる。
【0073】
核酸分子でない分子標的、例えば、タンパク質または特異的プローブ−標的複合体(例えば、糖類、脂質等)を形成し得る他のタイプの分子の複合混合物の分析の状況において、本発明は、ポリヌクレオチド部分がそれぞれのプローブについて、異なる配列及びプローブアレイの均質または同一のサイズにより区別可能であるか、あるいはそれぞれのポリヌクレオチド部分が、異なる質量または異なるサイズを有することにより他と区別可能である一連のプローブを表すように構成された一次プローブアレイを提案している。プローブのポリヌクレオチド部分が、溶液中の混合物中に形成されたプローブ−標的複合体から分離され、例えば、二次プローブへのハイブリダイゼーション、質量分析法、クロマトグラフィ、濾過、または電気泳動により分析される。
【0074】
一次プローブポリヌクレオチドのヌクレオチド配列に関して前述されたものは、標的核酸を伴う工程の場合を除き、それらがポリペプチド部分も含む場合に、一次プローブのポリヌクレオチド部分にも明確に当てはまる。
【0075】
従って、本発明は、前記の定義の範囲内で、複合混合物に含まれる分子標的を分析する方法に関するものであって、:
a.分析用の分子標的を含む傾向のある複合混合物を、異なるタイプの一次プローブのアレイと接触させ、それぞれのタイプの一次プローブが前記分子標的と前記一次プローブの特異的結合を可能にする条件において、分子標的のうちの1つのタイプの標的に特異的結合により結合し得るアレイを含む工程;
b.分子標的に特異的に結合していない一次プローブを適宜取り除く工程;
c.特異的結合により形成された分子標的−一次プローブ複合体を分離し、混合物中に含まれ、且つ一次プローブによって認識される分子標的のフィンガープリントを表す一次プローブを回収する工程;及び
d.工程cで溶出された一次プローブを分析する工程;
を含む。
【0076】
都合のよいことに、本発明の方法により、工程cで溶出された一次プローブの定量分析が可能となる。
【0077】
分子標的から分離されたこれらの一次プローブ(またはそれらのポリヌクレオチド部分)を定量化することにより、分離された一次プローブの量に比例する量である分子標的の定量分析が可能となる。
【0078】
本発明の文脈において使用されているような「複合混合物」という表現は、異なる構造(特に、配列)を有する多数の分子、特に10個を超える、とりわけ50個、100個、または1000個を超える、あるいは10000個または20000個を超える異なる構造を有する分子を含む溶液を意味すると理されるべきである。本発明のデバイスは、生物学的分子(あるいは、核酸またはタンパク質等の生体分子)、特に生体試料中に含まれるものを分析することを好ましくは意図されている。特に、複合混合物は、トランスクリプトームまたはトランスクリプトームを表すもの(cDNAの形態の)であるか、あるいはプロテオームである。
【0079】
また本発明により、核酸標的とポリペプチド標的の両方を含む複合混合物の分析が可能となる。この特定の場合において、標的の2つの集団は、分析により互いに区別できなければならない。この区別は、それぞれの集団に特異的な一次プローブアレイの選択によって実施され得る。
【0080】
とりわけ、複合混合物を提供する試料は、組織試料または生体流体、例えば、血液、血清、血漿、脳脊髄液、尿、または唾液等由来であってよい。当該試料は、動物(特に、哺乳類、好ましくはヒト)由来であってよい。当該試料は、特に、健康な個体または医学的状態を有する患者由来であってよい。当該状態は、特に癌、神経変性疾患、感染症、とりわけ、ウイルス性、細菌性、または寄生虫性疾患であってよい。
【0081】
試料はまた、真核または原核細胞、細菌、カビ、あるいは酵母、特に培養細胞または外部環境から採取された細胞由来の組織抽出物または細胞抽出物を含んでもよい。試料はまた、植物から採取されてもよい。また、農業食品製品の試料、特に調理食品、種、果物、または穀類由来の試料であってもよい。
【0082】
この文脈における「分子標的」という表現は、本発明の一次プローブにより認識され得、且つ特異的に結合し得る生体高分子、例えば、DNA、RNA分子、特にゲノムDNAまたはRNA、cDNAまたはmRNA、siRNA、ペプチド、あるいはタンパク質等を意味すると特に解される。
【0083】
分子標的と一次プローブの特異的結合を促す工程a)を実施するために、異なる条件を考案してよい。
【0084】
本発明の特定の一実施形態において、この工程は溶液中で実施される。
【0085】
この実施形態において、検出されるべき分子標的は、溶液中の混合物と接触させた粒子に固定することができる。例えば、磁気粒子を使用することができる。また、ITOまたはポリイミドでコーティングされた電磁ビーズを使用することも可能である。標的はすべて付着させることができる。あるいは、混合物のより特異的な分析のために、特定のタイプの標的のみを付着させることができる。
他の実施形態によれば、それぞれのタイプの粒子が1つの特定のタイプの分子標的をピックアップするよう方向付けされた、異なる粒子の混合物を使用することが可能である。
【0086】
あるいは、分析対象である複合混合物中の分子標的を担体に付着させる。次いで、一次プローブアレイを前記担体と接触させ、工程a)を実施する。
【0087】
工程a)は、分子標的より過剰な一次プローブを有する混合物を使用することによって実施される。本明細書で使用されているように、「過剰なプローブ」は、分子標的の予想される量よりも多いまたは等しい量を意味すると解される。使用される過剰な一次プローブは、当該プローブによって認識され、且つ特異的に結合した標的を飽和させることができなければならない。
【0088】
工程a)を実施するために、プローブは化学量論的混合物中にある。
【0089】
本発明の特定の一実施形態において、一次プローブアレイ中のプローブのハイブリダイゼーション反応は、熱力学的条件下で、例えば、ある温度勾配において、必要な場合には、図19の解説中で以下に例示されているように、冷却と加熱のプラトー領域を使用することによって実施される。
【0090】
工程b)におけるプローブ−標的複合体を形成していない一次プローブの排除は、これらのプローブを回収して、反応溶媒からそれらを除去することによってなされ得る。この工程b)は、プローブ−標的複合体から分離された一次プローブを、検出手段に接触させる直前に作動し、実施され得る。例えば、プローブ−標的複合体を形成していないプローブを他のプローブから分離した後に、後者を分子フィンガープリントの一次プローブを検出するために使用される二次プローブといっしょにしなければならない。
【0091】
工程c)は、分子標的−一次プローブ複合体の分離を含む。本明細書で使用される「分離」という用語は、以下:
・分子標的と一次プローブとのハイブリダイゼーションによって形成される二本鎖核酸(DNA-DNA、DNA-RNA等)の分離;
・あるいは、ポリペプチド分子標的と一次プローブとの間に形成される特異的複合体の分離(例えば、抗体または抗体断片、あるいは受容体及びポリヌクレオチド部分を含む)。その後、一次プローブのポリヌクレオチド部分は、一次プローブの残り部分から分離されなければならない。;
・あるいは、分子標的に特異的に結合した一次プローブのポリヌクレオチド部分の分離;
を意味すると解される。
【0092】
本明細書で使用されているような「分離」は、標的とプローブとの間の特異的結合を壊す、またはプローブのポリヌクレオチド部分と標的−プローブ複合体の残り部分との間の結合を壊すための操作を意味すると解される。核酸分子の特定の場合において、分離は、逆ハイブリダイゼーション(dehybridisation)とも呼ばれる、DNA、DNA/RNA等の2つの相補鎖の間に形成されたハイブリッドの制御された変性と同じである。
【0093】
分離が標的−プローブ複合体の2つの部分のものである場合のタンパク質分子標的の場合には、分離は、例えば、抗原/抗体複合体(または抗原結合部位を含む抗体の断片)または特異的結合により形成されるリガンド/受容体を壊すことである。
【0094】
プローブの標的への、またはプローブのプローブへの結合に関する「特異的結合」という用語は、当該プローブが特定の標的またはプローブに結合するが、他の標的及びプローブに、とりわけ複合混合物中に存在する他の標的またはプローブに有意に結合しないことを意味する。
【0095】
本明細書で使用されているような「異なるタイプのプローブ」という表現は、異なるポリヌクレオチド配列を有する分子を意味すると解され、当該プローブがさらに非ポリヌクレオチド部分、例えばポリペプチド部分も含む場合、この部分は、それぞれのタイプのプローブに対して異なり、且つある種の標的に対して特異的であり、さらに、それぞれのポリヌクレオチド部分は、他のプローブのポリヌクレオチド部分と異なり、本発明の請求項に記載されている特性を満たす。一次プローブアレイを構成するそれぞれのタイプのプローブは、分析されたもののうちの1つの固有のタイプの標的に対して特異的である。
【0096】
工程c)における、一次プローブの、分子標的との結合後の回収は、粒子、例えば、磁気粒子上に最初に固定化することによって達成され得る。磁気粒子に付着した標的の場合、一次プローブを標的に結合させる工程の後に磁場が印加され、前記一次プローブが回収される。
【0097】
工程c)における、一次プローブの、分子標的との結合後の回収は、「標的−粒子」構成要素から前記プローブを分離した後に、遠心分離により一次プローブを回収することによって達成され得る。
【0098】
本発明の他の特定の実施形態において、分析された混合物中に含まれる分子標的のフィンガープリントを表す一次プローブが、分子標的を担体上に最初に固定化し、次いで分子標的との接触及び特異的結合を可能にする適切な条件下で、一次プローブを担体上で移動させた後に回収される場合、ハイブリダイゼーションされていない一次プローブは担体から除去され、次いで「分子標的−一次プローブ」複合体が分離され、一次プローブが回収される。
【0099】
また、分子標的、特にハイブリダイゼーションされたものにすでに特異的に結合していた一次プローブを定量化することも可能である。この実施例で使用される担体は、特に、シランまたはポリリジンでコーティングされた、例えば、ニトロセルロースで作られた膜である。
【0100】
この方法を、このように種々の用途、例えば、医療診断または農業食品工業品質管理、またはすべての生物学的分析、特に生態学、考古学、または犯罪学の分野において使用することができる。
【0101】
例として、本発明の方法及び範囲は、以下の分析:
−混合物中に存在する核酸分子、例えば、同一または異なる、細胞または細胞群による核酸分子(内容物または転写物)の分析;
−混合物中に含まれるタンパク質、例えば、同一または異なる、細胞または細胞群により産生されるタンパク質の分析;
−同一または異なる、細胞または細胞群により産生される、混合物中に含まれる核酸及びタンパク質の分析;
を可能にする。
【0102】
好ましいプローブ−標的及びプローブ−プローブの対は、特にRNA分子等の相補的配列とハイブリダイゼーションしている核酸、とりわけ特定のオリゴヌクレオチドプローブとハイブリダイゼーションしているメッセンジャーRNA、DNA、またはcDNA、一価抗体(つまり、単一の認識部位を有する)またはそれらの一価機能断片(Fab、パパイン分解による断片、または1つの抗原結合部位を有する一価断片、特に可変一価断片等)を特異的に認識する抗原、あるいはすべての受容体−リガンドまたはリガンド−受容体の対合である。この最後の場合において、一次プローブは、同様に、所定のタイプの分子標的に特異的なポリヌクレオチド部分を含み、いわゆる二次プローブとハイブリダイゼーションすることができる。
【0103】
当業者であれば、単一部位で、分子プローブのポリヌクレオチドに付着した、特異的に認識される構成要素にそれらを付着させることが可能である限り、すべてのタイプの分子標的を分析するようにこの方法を使用することができであろう。
【0104】
こうして定められた方法の特定の一実施形態において、複合混合物中で探索される分子標的は核酸である。
【0105】
本発明の特定の一実施形態において、混合物中の分子標的はトランスクリプトームを表す核酸である。
【0106】
本明細書で使用されているような「トランスクリプトームを表す」という用語は、分析対象の生体試料中の細胞のmRNA(またはRNAの群)と同一または相補的な配列を有する分子標的を含む、分析対象の核酸を意味すると解される。それらは逆転写によって得られ、cDNAとすることができる。これらの配列は、厳しい条件下で、メッセンジャーRNA(またはその相補物)、所定の細胞または細胞群のゲノム核酸配列の転写産物と特異的にハイブリダイゼーションし、且つ前記細胞または細胞群に対する特定の条件で得られる転写産物のものと比例的に等価である。
【0107】
トランスクリプトームを表す核酸を調製する方法は、細胞のmRNAを逆転写するためのポリTプライマーを使用する工程を含む。長いポリAテールを回避するために、5'(T)jX3'(ただし、jはT残基の数であり、jは1よりも大きい)、例えばXがA、C、またはGである5'(T)19X3'等のプライマーから、分析用の試料メッセンジャーRNAの逆転写を実施することができる。逆転写は、このように、AではないポリAテールの後の最初のヌクレオチドから始まって実施される。粒子に付着させたゲノムを表すcDNA試料を得るために、逆転写前に、前述のプライマーを最初に前記粒子に付着させる。逆転写の産物を、同様に、担体上の逆転写の後に担体に付着させてよい。グラフティングは、5'-ビオチン化5'(T)jX3'プライマー、例えば5'(T)19X3'を使用してビオチン−アビジンカップリングによって実施され得る(粒子と標的との間の化学的錯体化を使用することも可能である)。
【0108】
本発明の他の実施形態において、配列ポリTを含むプライマーは、混合されたペプチド核酸−核酸(PNA−核酸)プライマーである。
【0109】
図19は、混合物の分子標的が、トランスクリプトーム(mRNA)を表す核酸であり、これらの分子標的が細胞溶解工程10によって得られる、本発明に係る方法を実施する例を示している。
【0110】
これらの分子標的12は、磁気粒子に付着している混合されたPNAプライマー14ペプチド核酸−核酸と結合する。XがA、G、及びCのうちから選ばれる塩基である、(PNAポリT)X型のプライマー。このようなプライマーを、図18d、18e、及び18fに示す。PNAと核酸との間の結合は、核酸5'リン酸塩中の酸素原子とPNAの末端COOH基との間のエステル結合でなされる。プライマーの磁気粒子への付着は、例えば、ビオチンを例えばPNAの末端NH2基に付加することによって、且つ磁気粒子に付着されたアビジンまたはストレプトアビジンとの相互作用によって達成され、アビジン(またはストレプトアビジン)/ビオチン結合が作られることを可能にする。
【0111】
これらの分子は核酸に対し大きな親和性を有するため、それらは、標的の混合物中のメッセンジャーRNAのすべてのポリAテールを結合させる。次いで、プライマーによって保持されない分子標的17を回収し得るように、磁石16または類似物により印加された磁場を使用することによって、磁気粒子を担体上に固定化する。
【0112】
次いで、mRNAの逆転写18は、NH2-(PNA-ポリT)(X)3'、例えば、NH2-(PNA-T)19(X)3'(ただし、Xは、A、C、またはGヌクレオチド残基とすることができる)等のプライマーにより実施され得る。逆転写に対しより効果的な他の構成は、NH2-(PNA-ポリT)XY3'、例えばNH2-(PNA-T)19X(Y)23'(ただし、Yは、ヌクレオチドA、T、G、Cのいずれかを表す)を使用する工程を含む。こうして、逆転写は、AではないポリAテールの後の最初のヌクレオチドから始まって実施される。
【0113】
次いで、形成された複合体を変性し、磁気粒子を再び磁場により固定化して、メッセンジャーRNA分子19を回収できるようにする。従って、トランスクリプトームを表すcDNAの試料20は、当該粒子に付着して得られる。
【0114】
あるいは、PNAを使用してRNAを結合させることで、逆転写工程(図中の工程18及び19)の必要性を排除し、従って、プローブは、PNAに付着しているRNAに直接ハイブリダイゼーションされる。
【0115】
試料20を、それぞれの配列、質量、及びサイズが既知のポリヌクレオチドである一次プローブ22のアレイと接触させる。ポリヌクレオチド配列はすべて異なり、それらの質量は、同一または異なってよく、それらのサイズも同様に、同一または異なってよい。
【0116】
磁気粒子上に担持されるそれぞれのポリヌクレオチドは、1つのタイプの一次プローブとのハイブリダイゼーションで特異的に結合し、粒子−プライマー/cDNA−一次プローブ複合体24を形成する。一次プローブのサイズがハイブリダイゼーションに影響を及ぼさないように選択された熱力学的条件下で、ハイブリダイゼーションを実施する。このために、穏やかな温度勾配、または例えば、温度プラトーまでの連続的な冷却及び加温の後に、溶媒の温度を徐々に下げ、例えば、連続的な冷却及び加熱のプラトー領域(約10秒から数分またはそれ以上、最大数時間までであってよい、定められた持続時間の)を有する70℃の温度から40℃の温度まで当該温度を下げる。例として、70℃の温度を3℃だけ下げ、冷却プラトー領域として時間tの間維持してよく、次いで、温度67℃を1.5℃だけ高め、加熱プラトー領域として時間tの間維持する。これらの工程は、溶媒の温度が40℃に達するまで繰り返される。
【0117】
cDNAに特異的に結合していない一次プローブ26は、前述のように混合物から回収される。次に、これらの複合体は変性され、次いで、cDNAのフィンガープリントを表す一次プローブ28が、分析用に回収される。
【0118】
一次プローブが同じサイズ及び同じ質量である場合、分析は、担体上に固定化された二次プローブに一次プローブをハイブリダイゼーションさせ、その後、例えばインピーダンスの変化を測定することにより一次プローブを検出することによって実施され得る。
【0119】
一次プローブが異なるサイズ及び/または質量を有する場合、分析は、キャピラリー電気泳動、クロマトグラフィ、または質量分析法によって実施され得る。
【0120】
特定の一実施形態において、それぞれのタイプの一次プローブは、特定の核酸にハイブリダイゼーションし得るが、ヌクレアーゼ活性に対し耐性のあるポリヌクレオチド(またはポリヌクレオチド部分)から形成される。
【0121】
このポリヌクレオチドは、核酸分子、PNA分子(ペプチド核酸)、または核酸/PNAの複合混合物を含む、またはそれらから構成され得(図18a及び18b)、2つの分子の結合は、例えば、PNA cooP(o3)核酸結合によって達成される。同様に、当該ポリヌクレオチドは、配列が修飾されている核酸を含んでよく、最初または最後の残基は、例えばチオ−ジエステル結合、またはリン酸ジエステル結合の代わりに、ホスホチオエート結合によって付加される(図18c)。
【0122】
それぞれのタイプの一次プローブのポリヌクレオチド配列は、分析対象の分子標的の混合物中に存在する単一の核酸配列に特異的である(あるいは、標的が核酸でない場合、二次プローブによって特異的に認識されるようにすることができる)。分子標的の混合物中に存在する核酸のサイズ及び/または質量は、分子標的にハイブリダイゼーションしたポリヌクレオチドの配列及びサイズを知ることによって決定され得る。
【0123】
一次プローブを、同様に、前述のように磁気粒子に付着させることができる。当該ポリヌクレオチドが核酸/PNAの混合された複合体である場合、都合のよいことに、PNAまたはチオールの末端は遊離しており、当該高分子はすべての酵素分解から保護される。磁気粒子に付着したポリヌクレオチドの量は、複合混合物中に存在すると予想される分子標的の量よりも多いかもしれない。好ましくは、ポリヌクレオチド配列は等モルである。
【0124】
一次プローブは、それらの質量、それらのサイズ、または化学修飾(それらの塩基のメチル化、エチル化)によって同定可能なPNAから構成され得る。
【0125】
分析する分子標的の混合物を、一次プローブによって機能化された粒子と接触させ、分子標的が一次プローブの相補的部分とハイブリダイゼーションするようにする。本発明の特定の一実施形態において、粒子/一次プローブ/標的複合体を、次いで、NF sp.ヌクレアーゼ等の一本鎖核酸の一部を消化する「エンド」及び/または「エキソ」ヌクレアーゼで処理する。それによって、すべての一本鎖核酸が消化される。次いで、粒子/一次プローブ/標的複合体を酵素から分離して、洗浄し(酵素は、熱または不活性化剤によって不活性化され得る)、当該複合体を変性させて、溶液中に分子標的を放出させ、それぞれの分子標的をハイブリダイゼーションする一次プローブのサイズによって制御する。
【0126】
次いで、それぞれの分子標的を、そのサイズ及び/または質量によって同定することができる。一次プローブが突然変異を受け、それにもかかわらず分子標的にハイブリダイゼーションできる場合(突然変異がプローブの末端にないことを条件として)、この分子標的について観察された質量は、その結果変化し、突然変異の同定が可能になる。分子標的の複合混合物を質量分析法またはクロマトグラフィによって分析し、それぞれの分子標的を同定し、定量化することができる。
【0127】
機能化された磁気粒子は、分子標的の他の複合混合物を分析するために再利用することができる。
【0128】
この原理を、単純な核酸配列からなる一次プローブの変種において使用することができるが、ただし、当該系(粒子−核酸)はより脆く、1回だけ使用することができる。
【0129】
分子標的が核酸である場合、一次プローブアレイを構成するそれぞれのタイプの一次プローブは、分析対象の分子標的中の1つのタイプの標的に特異的且つ相補的である。
【0130】
核酸分子標的に適用される、本発明に係る方法の範囲において、化学量論的混合物の形態の一次プローブは、厳しい条件下で、核酸分子標的にハイブリダイゼーションする。これらの条件は、プローブのサイズに無関係である。
【0131】
当該ハイブリダイゼーションは、熱力学的条件、つまり、90℃から60℃の温度勾配、連続冷却及び加熱プラトーで実施される(図1)。
【0132】
非特異的ハイブリダイゼーションを最小限にするために、標的及びプローブが核酸分子である場合、XがA、T、G、またはCであり、n個のヌクレオチドについて可能なすべての配列組み合わせにおいて、ヌクレオチドの数nが3から7まで変化する、小さなヌクレオチド高分子(X)nの存在下で、標的及びプローブをハイブリダイゼーションさせ、混合物に加える。
【0133】
第1の例において、小さな高分子は、プローブ及び/または標的配列にハイブリダイゼーションする。当該プローブは特定の標的を認識し、当該小さな高分子に取って代わり、前記標的にハイブリダイゼーションする。
【0134】
特定の一実施例において、一次プローブのアレイ中のプローブはすべて、均質なサイズを有する、特に同一であり、それぞれは既知の配列を有する。それによって、それぞれのプローブによって生じる測定のばらつきが決定される。
【0135】
例えば、一次プローブアレイ中のすべてのプローブは、20から150個のヌクレオチド、例えば30、40、50個のヌクレオチド、またはこれらの制限範囲内に含まれるすべてのサイズを含むように選択された同一サイズを有する。
【0136】
工程d)による分析の範囲内において、核酸配列ハイブリダイゼーションによってプローブ−標的複合体を形成した後に溶出された一次プローブの検出は、:
e.工程c)において分離、回収(溶出)された一次プローブを、異なるタイプの二次ポリヌクレオチドと接触させる工程であって、それぞれのタイプの二次プローブは1つのタイプの一次プローブとの特異的ハイブリダイゼーションによって結合し得る工程;
f.検出からの分子標的の同定、並びに/あるいは二次プローブとハイブリダイゼーションした一次プローブの回収及び/または分析を実施した後に達成され得る。
【0137】
これらの工程を、2D電子チップに対して以下に記載されるようなプローブスポットマトリックスを用いて実施することができる。
【0138】
逆ハイブリダイゼーションによる、一次プローブ及び核酸分子標的の分離は、温度を上昇させることにより達成され得る。
【0139】
分子標的との特異的結合の後に回収された一次プローブの検出、及び/または回収、及び/または分析する工程は、担体(例えば、チップ)上に固定化された二次プローブと接触している一次プローブを混合することによって、または一次プローブを単純に拡散させる、または例えば、電位を印加することにより活発に混合することによって達成され得る。電位の印加は、電極ネットワークを用いて実施される。
【0140】
検出で二次プローブを活動させる場合、一次及び二次プローブの間に形成されたハイブリッドを、例えば、特に一次プローブと二次プローブのハイブリダイゼーションにより、結合によって引き起こされるインピーダンス変化を測定することによって探索する。インピーダンス変化の測定は、後述のようなチップ(2D電子チップ)を含むデバイスを使用することによって実施され得る。
【0141】
核酸分子、特にDNAの場合、核酸分子の曲がり、及びハイブリダイゼーションにより生じるものと類似したインピーダンスの変動をもたらす、分子内ハイブリダイゼーションによる測定人為結果を最小限にするために、できる限り分子コンフォメーションを保持することが望ましい。DNAコンフォメーションを保持する一方法は、分子コーミングによってITO電極上にそれを吸着させる工程を含む。特に核酸プローブ、とりわけDNAを前述のように処理する。
【0142】
核酸の分子コーミング及び電極表面へのそれらの吸着を助けるため、ITO(または他の導電性材料)電極にポリイミド(例えば、Kapton(登録商標))の層をコーティングすることができる(厚さ約10から100nm)。Kapton(登録商標)層に、核酸分子の配向をよくするために、適宜、うねを作るとよい。
【0143】
電極にそって延びた分子は、曲がる、またはそれ自身とハイブリダイゼーションすることができない。しかし、それらは溶液中の相補的配列と依然としてハイブリダイゼーションすることができる。
【0144】
他の解決方法は、それらの末端を電極に固定することによって、機能化電極と非機能化電極との間でプローブ分子(二次プローブ)を伸ばす工程を含む。使用されるオリゴヌクレオチドプローブを、5'及び3'の両方の末端で機能化し、5'に対し選択された機能は3'に対するものと異なる。この2タイプの機能は、異なる活性化及び/または触媒作用である。例えば、それらは、5'Hs、化学または発光活性を有するNH2基、及び電気触媒に対する3'ピロール基から選択される。官能及び非官能電極セットの間の距離は、分子が伸ばされ、特定の曲がりを有さず、または分子内ハイブリダイゼーションを可能にしないように選択される。
【0145】
代替方法は、プローブの5'末端を機能化し、それを機能化電極に結合させ、それを短い3'配列(10から20塩基)に付加する(3'付加)。3'付加の配列は、標的とハイブリダイゼーションしないように特異的に選択される。3'付加に相補的な配列を、それに面している非機能化電極に結合させる。当該プローブを、化学結合を用いることによってそれらの5'末端により機能化電極セットに、及び付加物と電極に固定されている相補的配列との間に形成される10から20塩基の二本鎖を使用することによって3'末端により非機能化電極に固定する。それにより、プローブは2つの電極の間に保持され、分子内ハイブリダイゼーションと曲がりを最小限に抑える。
【0146】
プローブが付着されている電極チップは、既存のマイクロアレイで実施されるように、それぞれのスポットにおいてプローブ標的(混合物中の分子標的の分子フィンガープリントを形成する溶出された一次プローブ)の単純拡散によって受動的にハイブリダイゼーションされ得る。しかし、能動的ハイブリダイゼーションが好ましい。
【0147】
チップがハイブリダイゼーションされると、それぞれのスポットにおけるインピーダンスの変動により、結合された標的の量の測定が可能になる。上側(機能化)電極と下側(非機能化)電極の侵入(上位レベルへの)との間の交差は、固有であり、1つの単一スポットに対応する。インピーダンス測定は、電位差及び電流を、1つ下及び1つ上のレベルの電極により形成される可能なすべての電極対に連続的に印加することによって、スポット毎に実施される。
【0148】
材料中の局所的構造欠陥により、一方の電極と他方の電極との間に散在性抵抗が生じ、インピーダンス読み取りに人為結果が入り込む可能性がある。また、DNA分子を付着させるための電極の機能化は、測定に干渉することがある。ITO、ATO、FTO、ZNO(適宜、ポリイミドまたはKapton(登録商標)層で覆われる)等の酸化スズ及び酸化亜鉛合金を使用すると、こうした問題を最小限に抑えられる。これらの合金でメッキする方法は、きわめて標準的で再現性があり、欠陥が比較的少ない電極を形成する。
【0149】
自由分子は、電極ネットワークにより形成される電界の活性により除去される。当該測定はすべて、すべての荷電分子を取り扱うことを可能にする電極セットを使用することによって、ハイブリダイゼーションまたは錯体化反応の間に実施され得る。
【0150】
このアプローチに関して、スポットを構成する二次プローブ分子の数、及び特異的に結合する、特にハイブリダイゼーションする一次プローブの数を測定することが可能である。これら2つの測定により、溶液中に最初に存在している分子標的の実際の濃度を決定することが可能である。これは、一次及び二次プローブのサイズが正確に測定され、同一であり、且つそれらの配列が既知であるため、定量的であるために実施された測定、例えば蛍光測定を標準化することが可能になるからである。
【0151】
同一サイズの二次プローブ、または適宜PNAプローブを有する1つのチップを形成することによって測定を標準化することが可能である。一次プローブのサイズは、前述のように、一本鎖核酸を消化するヌクレアーゼを用いた処理によって、チップ上のハイブリダイゼーション後の二次プローブのものに正確に対応するように標準化される。
【0152】
ネットワークは、ITO等の透明材料から作られた機能化電極からなる。このようにして、金電極からの干渉蛍光は回避される。このコネクタ技術について使用できる材料として、ITO(酸化インジウム及び酸化スズ)、ATO、FTO、ZNO、または同等の合金等の可視域で透明な合金を挙げることができる。これらの合金は求電子性が非常に高いため、絶縁されなければならない(実施例1)。
【0153】
形成された一次プローブ−二次プローブのハイブリッドを検出する他の方法は、当該ハイブリッドを含むチップの両側に置かれた偏光フィルターを使用する工程を含む(図2)。
【0154】
ヘリックスBまたはヘリックスA中に編成されたDNA二本鎖は、光の偏光(振動)の平面を変える特性を有する鏡像異性である。光の偏差角αは、本質的に、DNA二重らせんを構成する塩基対の数に依存する。偏差角αは、DNA二重らせんが逆ハイブリダイゼーションされ、二重らせんが破壊された場合になくなる。
【0155】
この特性は、後述の電子チップデバイス(電子チップ)上のそれぞれのプローブスポットにおいて、ハイブリダイゼーションの量を定量化するために使用することができる。
【0156】
電子チップのITO電極は透明であり、ガラス、石英、または他の透明材料の薄板上に形成することができる。
【0157】
一般に、電子チップは、ITO電極が堆積し、適宜ポリイミド層で覆われている透明基板で作られる。それぞれのITO電極上に、スポット中に編成されたプローブが付着し、それぞれのスポットは、関連するキャピラリーネットワーク中のキャピラリーの空洞中にある。スポットに付着しているそれぞれの電極の反対側に、他の透明担体上に置かれた電極がある。そのため、0°に対応する角度を有する偏光された光線は、第1の透明担体とその電極を横切り、スポットに到達し得る。そのようにして、光は二本鎖DNA分子(ハイブリダイゼーションされた分子)によりα°の角度まで回転し、電極及び反対側の透明基板を通して出てくる。α°の偏向を受けた光の量は、スポット上に二重らせんを形成するハイブリッドの数に正確に比例し、従って、プローブにハイブリダイゼーションした標的の量に正確に比例する。
【0158】
α°の角度だけ偏向された光は、第2の電極及び第2の透明基板を横切った後、出てくる際に分析される。
【0159】
0°(他の特定の原点に変更できる任意の原点)で偏光した光を得るために、0°で偏光されるフィルターは、電極が固定されている透明担体の外面に配置される。
【0160】
α°に配向されている第2の偏光フィルターは、反対側の他の透明電極担体の外面上に配置される(図を参照)。光は、可視スペクトルレーザーまたは他の白色光源から生じる。
【0161】
一般に、それに対して、担体が透明であり、プローブ及び標的が吸収しないすべての光を使用することができる。この検出法は、偏光平面がα°のそれらの間の角度で食い違っている2つの平面偏光フィルターの間に限定されている従来の核酸チップに適用され得る。
【0162】
2つの偏光フィルターは、検出効率を高めるために、互いに関して移動することができ、2つの偏光平面の間の角度を修正することができる。この角度変化により、光の異なる偏向を測定することができ、そのようにして、1つのスポットでハイブリダイゼーションされた標的配列(一次プローブ−二次プローブ)の均質性を測定することができる。従って、標的の多様性を決定することが可能である。
【0163】
これは、標的(ここでは、一次プローブ)とプローブ(ここでは、二次プローブ)との間の配列の違いにより、形成された二重らせんを折り畳む場所においてミスマッチが生じ、それによって、分子の鏡像異性が変化するためである。従って、光偏向の角度は、それぞれの鏡像異性の作用に応じて修正される。それぞれの角度の測定により、それぞれの集団に関する情報が得られる。
【0164】
特定の用途の他の実施例において、一次プローブと二次プローブとの間のハイブリダイゼーションにおける結合の検出は、一次プローブと二次プローブとの間に形成される二本鎖ハイブリッド中のリガンド、または一本鎖核酸リガンドの蛍光を検出することによって実施され得る。少なくとも1つの検出器を使用して、一次及び二次プローブのハイブリダイゼーションによって生じる蛍光強度を測定する。
【0165】
一次プローブに標識付けせずに、蛍光リガンドを使用することによって、チップ上に形成される一次プローブ−二次プローブ複合体の量を測定することができる。DNAチップに対して、アクリジンを使用することができ、特に、アクリジンオレンジはプラスに帯電し、DNA中に挿入される。アクリジンオレンジにより、一本鎖または二重二本鎖DNAの差次標識が可能になる。
【0166】
他の特定の実施例において、二次プローブにハイブリダイゼーションした一次プローブの検出は、後述の2D電子チップに適合されたPSRにより実施される。少なくとも1つの検出器を使用して、PSRにより、一次及び二次プローブのハイブリダイゼーションを測定する。
【0167】
一次プローブ/二次プローブ複合体により構成される標的を、機能化電極のネットワークで直接定量化することができる。三面体プリズムが機能化電極のネットワーク中の電極のそれぞれのラインの背部に取付けられ、PSR測定を可能にする。
【0168】
本発明の他の特徴点は、分析に対しては前述の方法の実施、及び標的がポリペプチドまたは受容体−リガンドタイプの特異的複合体を形成し得る他の標的である場合における、複合混合物中の分子標的の定量化に関する。
【0169】
特に核酸標的の検出について前述の方法の工程a)及びb)の実施形態は、原理上、適用可能である。そのため、分析対象の複合混合物中のポリペプチド標的を、粒子(1つ以上のタイプの磁気または他の何らか)に付着させ、溶液中の一次プローブと接触させることができる。例えば、ITOコーティング磁気ビーズを使用することが可能である。異なるタイプのタンパク質を分析する場合、それらを異なるタイプの粒子に付着させることができる。
【0170】
前記のように、使用される一次プローブのアレイは、ポリペプチド部分及びポリヌクレオチド部分を含むプローブを組み込んでいる。一次プローブアレイのプローブに特異的に結合している分子標的の定量化は、プローブ−標的複合体中のプローブのポリヌクレオチド部分を回収した後に実施される。
【0171】
それぞれのタイプのプローブのポリペプチド部分及びポリヌクレオチド部分は、単一のタイプの標的に特異的であるため、プローブのポリヌクレオチド部分の同定及び定量化は、分子標的の存在及び量を示している。
【0172】
前述の用語及び条件に従って、プローブのポリヌクレオチド部分は、プローブ間で異なる質量及び/またはサイズ並びに同一若しくは異なる配列、あるいは異なる配列及び均質若しくは同一のサイズを有する。考察中の違いは、適切な検出システムを選択することを可能にする。従って、ポリヌクレオチド部分は、例えば、配列(二次プローブとのハイブリダイゼーション)、サイズ(電気泳動法、クロマトグラフィ)、または質量(質量分析法)におけるそれらの違いを示し得る任意の手段によって検出され得る。
【0173】
標的がタンパク質である場合、一次プローブは、標的、例えば抗原部位を中に備える、または含む抗体または機能的抗体断片、あるいは標的タンパク質に対する親和性を有する受容体に特異的に結合する能力を有する化合物である。
【0174】
特定の一実施例において、一次プローブは、標的タンパク質に対する特異親和性を有する前記化合物の部分に付着したポリヌクレオチドによって構成される部分を含む。このポリヌクレオチドは、それぞれの化合物に対して特異的な識別子(そうでなければ、タグとして知られる)の意味で標識を構成する。このようなポリヌクレオチドは、実施例において示されている。それらを使用することで、それらがタンパク質を結合した後に分離された一次プローブを検出することが可能になる。
【0175】
例えば、プロテオーム中のポリペプチド分子標的を検出する工程を含む本発明のこの特徴点において、本発明に係る方法の工程a)は、例えば、本発明の説明に従って分析用のタンパク質を含み得る混合物を、一価抗体、あるいは単一抗原結合部位、例えば、Fab断片またはそれらが単一抗原認識部位を含むように変異鎖の全部または一部から形成される任意の分子を中に備えるまたは含む一価抗体の断片のアレイからなる異なるタイプのアレイと接触させる工程を含み、前記タンパク質と前記抗体または抗体断片の特異的結合を可能にする条件下で、それぞれが配列タグと呼ばれる特定の核酸配列に結合し、アレイ中のそれぞれのタイプの抗体または抗体断片が、分析対象の単一のタイプのタンパク質との特異結合を形成し得る。
【0176】
標的がタンパク質である場合、一次プローブと標的の結合により形成される複合体の工程c)での分離は、当業者に既知の酵素法により達成され得る。特定の一実施例において、本発明に係る方法の工程c)は、特異的結合によって結合したタンパク質と抗体または抗体断片を分離し、次いで、合致する抗体または抗体断片のそれぞれの配列タグを分離し、分析対象のタンパク質の中から選択された結合した標的のフィンガープリントを表す配列タグのアレイを回収する工程を含む。
【0177】
本発明に係る方法の工程d)は、検出によりタンパク質を同定する工程、及び/またはそれらの配列により区別できる、同一のサイズであるタグ、あるいは反対に、それらの異なるサイズ及び/または質量により区別できるタグを回収し、及び/または分析する工程を含む。
【0178】
特定の一実施例において、タグが異なる配列を有するが、サイズが同じである場合、それらは、核酸分子標的について前述されているものと同じ方法を使用することによって検出される。特に、タグに特異的な二次プローブが使用される。
【0179】
従って、タグの特性は、ヌクレオチド標的とハイブリダイゼーションすることを意図されているポリヌクレオチド一次プローブについて前述されているのと同じである。
【0180】
一次プローブアレイが、ポリヌクレオチド部分の質量が異なるプローブからなる場合、当該アレイは、10を超える、特に50を超える、100を超える、または1000を超える、さらに10000または20000を超えるプローブを含み、そのポリヌクレオチドタグがすべて異なる質量、例えば、30、40、50、100、500、1000、2000、5000、またはそれ以上、あるいはこれらの限界値のうちの2つ値の範囲内にある値により形成される区間に含まれるプローブの数を有するような方法で構成され得る。
【0181】
タグの検出(プローブはただ1つのタグで識別される)は、任意の質量検出法、例えば、質量分析法によって達成され得る。
【0182】
他の特定の実施例において、タグ(プローブはただ1つのタグで識別される)は、それらのサイズの違いによって分析される。従って、検出は、電気泳動法またはクロマトグラフィによるものであってよい。
【0183】
さらに、これらのタグ配列は、メチルまたはエチル基を残基中の塩基に付加することにより化学修飾され、従って、前述されているものに従って、一次プローブを、それらの質量によって、またはその化学修飾によって同定することが可能である。
【0184】
例えば、気相または液体クロマトグラフィの間の保持時間によって、一般に、タグ配列及び一次プローブポリヌクレオチドを同定し、且つ核酸の光学的吸収、天然蛍光によって、またはクロマトグラフィの終わりに生成される血漿中の亜リン酸を測定する(燐光蛍光または質量分析法を使用して)ことによって、それらを定量化することが可能である。
【0185】
従って、一次プローブアレイは、ポリヌクレオチドタグがすべて異なるサイズ、例えば、30、40、50、100、500、1000、2000、5000、またはそれ以上の、あるいはこれらの限界値のうちの2つ値の範囲内にある値により形成される区間に含まれるプローブの数を有する、10を超える、特に50を超える、100を超える、または1000を超える、または10000若しくは20000を超える数のプローブを有するような方法で構成される。
【0186】
本発明の他の目的は、記載される方法を実施するためのデバイスである。
【0187】
本発明に係るデバイスは、例えば、:
−適宜、分析対象の混合物の核酸及び/またはタンパク質の分子標的に強く結合し得る、粒子群、例えば磁気粒子群;
−溶液中の、または使用のために溶解され得る、化学量論的混合物の形態の、本発明の要請で与えられた記載に対応する、異なるタイプの一次プローブのアレイであって、前記プローブはポリヌクレオチドから作られるか、またはそれぞれのプローブに特異的なポリヌクレオチドを含み、アレイを構成するそれぞれのタイプの一次プローブは、前記一次プローブ及び前記分子標的が接触させられる場合に、分析対象の1つのタイプの分子標的との特異的結合によって結合し得るアレイ;及び必要な場合、
−分析対象の分子標的のフィンガープリントを表す一次プローブのアレイを取得するために、特異的結合によって結合している一次プローブ及び分子標的を分離する手段、及び回収する手段;並びに/あるいは必要な場合、
−一次プローブのアレイの一次プローブのポリヌクレオチド部分を特異的に認識し得る二次プローブのアレイ;及び/または必要な場合、
−それぞれのスポットのオリゴヌクレオチドプローブ(二次プローブのアレイを構成する)が一次プローブタイプの配列またはそれぞれのタグの相補的配列を含む、オリゴヌクレオチドマイクロアレイ(例えば、2D電子チップタイプの);
からなる。
【0188】
核酸分析の状況において、一次プローブと分子標的を分離し、且つ特に逆ハイブリダイゼーションする手段は、ハイブリッドの2本鎖を分離するための、温度を上昇させる手段手段であってよい。
【0189】
タンパク質分析の状況において、分子標的から一次プローブを分離する手段は、特に、酵素分離を実施するための試薬であってよい。
【0190】
分子標的から分離された一次プローブを回収するための手段は、標的が固定化されている磁気粒子、及び前記一次プローブと前記標的を含む溶液中で磁界を発生し得る手段を含んでよい。
【0191】
分子標的から分離された一次プローブを回収するための手段は、標的が固定化されている粒子、及び前記一次プローブと前記標的を含む溶液中で遠心力を引き起こす手段を含んでよい。
【0192】
当該方法を、例えば、細胞抽出物から採取した混合物中の、種々のタンパク質及びそれらの修飾物の濃度を測定するために使用される種々の形態をとり得る。
【0193】
分子標的がタンパク質である場合、当該デバイスは、例として以下からなる。
1)標的を含む分析対象の混合物のタンパク質に強く結合し得る粒子群(特に、磁気または表面)。典型的には、ポリスチレン、ナイロン(登録商標)、ニトロセルロース等のビーズまたは膜を挙げることができる。
2)それぞれのタイプの抗体が、核酸またはポリヌクレオチド(配列タグ)の特定の配列に強く結合(例えば、共有結合)している、例えば、一価抗体または単一抗体結合部位を含む抗体断片からなる一次プローブの化学量論的混合物。当該配列タグは、例えば、特異的に切断し得る1つまたは2つの一般的配列、及び前述のそれぞれのタイプの抗体または抗体断片に対する固有且つ特異的な配列に分けられる。適宜的に、
3)それぞれのスポットのオリゴヌクレオチドプローブ(二次プローブのアレイを構成する)が、抗体の化学量論的混合物の抗体のタイプのうちの1つの配列タグの特定の部分に相補的な配列を含む、オリゴヌクレオチドチップ。
【0194】
定量分析に関して、それぞれのプローブが1つの標的と単一のポリヌクレオチドタグに対する単一結合部位を含むことが不可欠である。抗体またはFab断片等のそれらの断片は、タグに結合し得る結合部位を有するため適している。
【0195】
例えば、細胞抽出物から始めると、タンパク質は磁気ポリスチレン粒子に結合する。当該ポリスチレンは、永続的にタンパク質、特に疎水性タンパク質を吸着する能力を有する。ビーズの飽和を回避するために、タンパク質の濃度と比較して過剰量のビーズが使われ、これにより立体障害が制限される。所望の調査に応じて、タンパク質を変性させる、または変性させないでよい。ビーズ及び結合タンパク質は、次いで:
1)磁界により沈殿され;
2)上清から単離され;
3)生理食塩水緩衝液中で洗浄され、回収される。
【0196】
次いで、当該ビーズを、調査されている系に対して不活性であるタンパク質で飽和させる。例えば、ウシ血清アルブミン(ウシ由来でない標的分子に関する調査の場合)、調査される種に対し外来性の小さなサイズのタンパク質(Kunixt阻害剤等)、さもなければ脂肪族鎖アミノ酸(ロイシン等)が使用される。工程1から3が、再び実施される。次いで、飽和ビーズ−結合タンパク質の完全系を、配列タグを有する抗体の等モル混合物と一緒にし、複合体を形成する。当該抗体は、ビーズ上に固定化されているそれらの標的タンパク質に特異的に結合する。それぞれのタイプの結合抗体の量は、ビーズ上に吸着したそれぞれのタイプのタンパク質の量に比例する。
【0197】
立体障害を減らし、ただしとりわけ定量化を考慮するために、当該抗体は一価でなければならないか、あるいは例えば、酵素消化、特にパパイン、または合成若しくは組み換え断片により得られた一価抗体断片(または半抗体)で置き換えられなければならない。それぞれの半抗体は、核酸配列で「タグ付け」される。工程1から3が、再び実施される。それによって、反応している抗体(または半抗体)は、反応していないものから単離、分離される。核酸タグは、導入された切断配列を使用して切り離される。これは、例えば、回文配列または抗体酵素の標的配列であってよい。回文配列の場合、2つの特定の解決策を挙げることができる。
【0198】
−当該回文配列を、抗体と特定配列タグとの間に導入する。配列タグを抗体から分離するために、対応する制限酵素とともに切断配列に相補的な溶媒に配列を単純に加え、これにより特定配列タグから抗体を分離することが可能になる。
【0199】
−2つの切断配列を、抗体と特定配列タグとの間、及び配列タグの末端にそれぞれ導入し、これら2つの配列が互いに相補的となるようにする。ハイブリダイゼーションを行う際に、それらは、溶媒中にその後導入される酵素に対して特異的切断部位を形成する。次いで、特定配列タグが溶液中に放出される。
【0200】
それらが抗体から分離されると、当該配列タグは、その量がビーズ上に保持されている抗体のタイプの量に比例し、従って分析された細胞抽出物中に存在する種々のタンパク質及びそれらの修飾物に比例する、溶液中のオリゴヌクレオチドの混合物を供給する。得られたヌクレオチドの混合物は、従来のDNAチップまたは前述のようなチップ上で分析され得る。
【0201】
一次プローブのアレイ(ポリペプチド部分及びポリヌクレオチドタグを含む)が多数の異なるタイプの一次プローブを含む場合、配列タグは、それらを区別できるように、大きく、また化学修飾を含む必要がある。しかし、配列タグ及びそれらの修飾のサイズが大きいと、結合部位がマスクされるため一次プローブと分子標的との間の結合が妨げられる可能性がある。さらに、抗体またはFab抗体断片へ20塩基を超えるヌクレオチド配列の効率的にグラフトすることが非常に困難である。
【0202】
この問題に対処するために、図20に示されているように、タグ配列は、約10から20個の塩基(好ましくは18個)を含み、これにより410個から420個の異なる配列を作製することが可能になる。タグを認識するために、「レポートプローブ」として知られる等モルプローブの混合物が調製され、それぞれのレポートプローブは、一方で、1つのタイプの一次プローブのタグに相補的な配列、また他方で任意の配列タグを認識しない可変サイズの配列を含む。それぞれのレポートプローブは、前述のように、そのサイズ及び/または質量により、並びに/あるいはそのクロマトグラフ特性により明白に認識されるように定められる。
【0203】
図20は、混合物の分子標的が、プロテオームを表すタンパク質であり、これらの分子標的が細胞溶解工程40で得られる、本発明に係る方法の実施形態の一実施例を示している。
【0204】
これらの分子標的42は、前述のように、分子標的に結合し得る粒子44と混合される。当該粒子は、磁石46または類似物により印加される磁界を使用することによって担体上に固定化され、粒子に結合していない分子標的48が除去される。
【0205】
次いで、分子標的42が一次プローブ36と混合され、分子標的は一次プローブに特異的に結合し、粒子/分子標的/一次プローブ/レポートプローブ複合体50を形成する。
【0206】
分子標的に特異結合していない一次プローブ52を排除した後、粒子/分子標的/一次プローブ/レポートプローブ複合体は単離且つ変性され、溶解しているレポートプローブ54は、粒子/分子標的/一次プローブ複合体から単離される。当該溶液のレポートプローブ組成は、粒子上に保持されている分子標的のフィンガープリントを表し、混合物の組成及び定量化は、例えば、質量分析法、クロマトグラフィ、チップ読み取り等によって実施される。
【0207】
変更形態として、レポートプローブを一次プローブと接触させる代わりに、レポートプローブが一次プローブの対応するタグとハイブリダイゼーションし、それらを飽和させるように、それらを粒子/分子標的/一次プローブ複合体と接触させることができる。
【0208】
当該タグは、都合のよいことに、配列が既知であり、それらのNH2末端において、ペプチド結合により抗体のFab断片のCOOH端に付加されるPNA分子であってよい。
【0209】
本発明はさらに、前ページに記載されている種々の実施形態に従って、本発明に係る分子標的を分析する方法の工程c)で回収される一次プローブを分析する工程d)を実施するためのデバイスに関するものであって、:
−一次プローブを循環させることができるキャピラリーネットワーク;
−キャピラリーネットワークと接触するようにされている、スポット中に編成された二次プローブのマトリックス;
−二次プローブが結合している、機能化電極として知られる電極のネットワークであって、スポットマトリックスのスポットのそれぞれのラインが前記ネットワークの機能化電極のうちの1つに結合するように配置されているネットワーク;
からなる。
【0210】
当該デバイスは、分子標的と一次プローブとの特異結合の工程を実施した後、且つ分子標的のフィンガープリントを作る際に形成される複合体中で一次プローブを分離した後に実施される。
【0211】
このデバイスは、例えば、前述のような2D電子チップとして知られるチップであり、当該チップは、電極の少なくとも1つのアレイに関連付けられている、スポット中に編成された生体プローブの二次元マトリックス(二次プローブのアレイ)を含む。当該マトリックスは、2つのリザーバー(それらの末端のそれぞれで1つ)により相互接続された平行なキャピラリーのネットワーク中に含まれる。
【0212】
本明細書で使用されているような「キャピラリー」という用語は、直径1ミリメートル未満、好ましくは1から100μmの範囲内の、流体を循環させることができる任意の適切な導管を意味すると解される。
【0213】
当該キャピラリーネットワークは、当業に既知の、シリカ用の酸エッチング法またはプラスチック用のレーザー加工を用いて、例えば、シリカ、石英、プラスチック(例えば、プレキシグラス)、PDMS等をくりぬくか、または成型で作られる。
【0214】
好ましい一実施形態において、それぞれのキャピラリーネットワークは、適切な材料の板の厚さでくりぬかれる。
【0215】
一般に、キャピラリーネットワークは、ポリアクリルアミドゲル、またはそれらの移動の間に一次プローブの拡散を調節及び制御することを可能にする任意の他のゲル等のゲル、特にキャピラリー電気泳動法に使用される液体ゲルで充填されてよい。
【0216】
一次プローブは溶液または流体中に含まれてよく、前記流体または前記溶液はキャピラリー中を循環する。
【0217】
特定の一実施例において、当該デバイスは、標的とハイブリダイゼーションしている一次プローブが入った、横断導管と呼ばれる横断キャピラリーを含み、この導管の口径は2から1000μmの範囲内であることが好ましい。上側横断導管は、キャピラリーネットワークに接続される。
【0218】
当該デバイスはまた、スポット中に編成された二次プローブのマトリックスも含み、それぞれのスポットは、1つのタイプの分子プローブ、例えば、配列が一次プローブのアレイ中に含まれる一次プローブのうちの1つの配列に厳密に相補的な核酸高分子からなる。
【0219】
二次プローブのマトリックスは、キャピラリーネットワーク上に配置されるか、または固定される。
【0220】
機能性電極の第1のアレイは、スポット中に編成された二次プローブの電極をグラフトしており、それぞれの二次プローブは、特異的プローブ/プローブ結合によって、1つの特定の一次プローブを保持することができる。
【0221】
当該マトリックスのスポットのそれぞれのラインは、電極の範囲を定めた金またはITO表面(または任意の他の適切な金属若しくは合金)上に堆積し、そこでマトリックス全体は、ラインの数nに対応するn本の電極からなり、それぞれの電極ラインはグラフトされた電極のP個のスポットからなる(図3)。
【0222】
ITOは、求電子性が非常に高いため、カプセル化処理により、グラフトされたプローブを有していない電極の部分を絶縁し、標的または一次プローブの任意の非特異的捕捉を回避する必要がある。例えば、ポリピロール膜を使用できる。当該膜は、ピロール溶液の存在下で、グラフトされた電極に電流を通すことにより作製される。ピロールは、電流の作用で自然発生的に重合し、電極の自由部分を絶縁する。電極をさらに、安定な方法で、標的、例えばATAまたはTAT等の三量体とハイブリダイゼーションすることができない小さなオリゴヌクレオチドにより飽和させることもできる。
【0223】
プローブ(スポットまたはハイブリダイゼーションユニット)を、場合に応じて、電極上、または電極間に堆積させる。
【0224】
電極は、ガラス、ポリイミド(例えば、Kapton(登録商標))、またはアルミナ酸化物等の絶縁材料上の薄層中にエッチングされる。
【0225】
二次プローブを付加するための任意の適切な方法を使用できる。例として、ビオチンと対をなす分子プローブと、「DYNAL」(Dynal distributors Worldwide, copyright 1996 Dynal AS - Technical Handbook second edition)により販売されているもの等のアビジンで機能化されたビーズとの間の、ビオチン−アビジン型の共有結合による対合について特に挙げることができる。
【0226】
一般に、クロマトグラフィカラムについて記載されている、すべてのタイプの対合、例えば、化学結合、強い相互作用がおそらく適切であるかもしれない。
【0227】
例えば、核酸プローブに結合するためDNAチップに、またはポリペプチドプローブに結合するためのタンパク質チップに現在使用されている相互作用はまた、基板上のin situ合成法のように、適合させることができる(静電的リジン/核酸相互作用、シラン結合、ロッジの表面上のピロール重合等)。また、ナイロン(登録商標)またはニトロセルロースを使用して、プローブを基板に不可逆的に結合させることも考慮することができる。当該結合は、直接的であってもよく、またはナイロンの粒子と二次プローブとの間のソラレン(psoralene)ブリッジ等のブリッジを介して行ってもよい。
【0228】
二次プローブを、適用される種々の処理に耐え、且つ標的を操作するために使用される任意の電界に耐えるように、電極に対し十分に強く付着させなければならない。
【0229】
特定の一実施例において、二次プローブの電極への結合は、種々の最も広く使用されている変性処理に耐久性を有し、使用後にチップを再生することを可能にする。
【0230】
特定の一実施例において、当該デバイスはさらに、いわゆる非機能化電極のネットワークを含み、このネットワークはキャピラリーネットワークが2つの電極ネットワーク間に位置するように配置される。
【0231】
これらの電極が非機能化と呼ばれるのは、それらはそれらの上にグラフトされたプローブを有しないからである。
【0232】
特定の一実施例において、分子標的を分析することを可能にするデバイスは、一次及び二次プローブのハイブリダイゼーションに関係するインピーダンスの変化を測定する。
【0233】
特定の一実施例において、当該デバイスは、一次及び二次プローブのハイブリダイゼーションに関係する偏光の変動を測定する。
【0234】
特定の一実施例において、当該デバイスはさらに、一次及び二次プローブのハイブリダイゼーションに関係する蛍光強度を測定する検出器を含む。
【0235】
特定の一実施例において、当該デバイスは、PSRによって、一次及び二次プローブのハイブリダイゼーションを測定する。
【0236】
当該電極は、絶縁材上の薄層中にエッチングされてよい。
【0237】
2つの電極アレイは、電極の一方のアレイが上に、他方が下にあるように、P個の平行キャピラリーのネットワークのそれぞれの側で互いに向かい合って設置される(図4及び5)。
【0238】
特定の一実施例において、機能化電極のアレイはキャピラリーネットワークの上に位置し、非機能化電極のアレイはキャピラリーネットワークの下に位置する。
【0239】
特定の一実施例において、機能化電極のアレイはキャピラリーネットワークの下に位置し、非機能化電極のアレイはキャピラリーネットワークの上に位置する。
【0240】
それぞれのキャピラリーは、機能化電極のアレイのn個の電極に、且つ非機能化電極のアレイのn個の電極に垂直である(図5、6、及び7)。
【0241】
機能化電極のそれぞれのスポットは、キャピラリーネットワークのそれぞれのキャピラリー中にある。
【0242】
当該構築は、n個の機能化電極の第1のスポットが、キャピラリーネットワークの第1のキャピラリー中にあり、n個の機能化電極の第2のスポットが、キャピラリーネットワークの第2のキャピラリー中にあるようにして行われる(図7)。電極対は、キャピラリーネットワークの上のスポット中に編成されたプローブでグラフトされた1つの電極、及びキャピラリーネットワークの下の向かい側の1つの非機能化電極を含む。当該電極は、PSRによる検出が可能なように非常に薄くてよい。
【0243】
キャピラリーネットワークのそれぞれの末端において、当該キャピラリーは円形のリザーバーに向かって収束する。当該リザーバーは、機能化電極のアレイと同じ平面中に、1つの電極(リザーバー電極)を含む(図7)。特定の実施例において、この電極は円形である。特定の実施例において、この電極は、それぞれリザーバーの天井の中心に位置する。
【0244】
本発明に係るデバイスはさらに、第1のリザーバー電極と第1の機能化電極との間、及び第2のリザーバー電極と最後の機能化電極との間にそれぞれ位置する第1及び第2の補助リンク電極を含んでよく、それぞれのリンク電極と対応するリザーバー電極との間の最短距離は、電極のすべての点において同じである。
【0245】
当該リンク電極を湾曲させることができ、その曲率は、それぞれのリンク電極とリザーバー(リザーバー電極)の中心との間の距離が電極のすべての点で同じになるように規定される。
【0246】
第2のリザーバーは、下側横断導管と呼ばれる、少なくとも1つの横断導管により形成されることができ、キャピラリーネットワークのすべてのキャピラリーの上流と検出器の下流に接続される。二次プローブにハイブリダイゼーションした一次プローブは分離され、特に下側横断導管によって、それらが検出器に到達するまで循環させることができる。
【0247】
分析のためにそれらが検出器に到達するまで二次プローブが循環させられるチップの状況において、1つの機能化電極と1つの非機能化電極を、電極ネットワークの構造中に交互に並べる必要がある。
【0248】
本発明に係るデバイスでは、特異的直接結合、特に、特異的に連結している、特に分子標的にハイブリダイゼーションしている一次プローブの直接ハイブリダイゼーションを可能にする。
【0249】
特定の実施例において、二次プローブのマトリックス中を循環する一次プローブのこのハイブリダイゼーションは、以下のように実施される。
【0250】
1)分析対象の一次プローブの溶出液が、第1のリザーバー中に導入される。第1の湾曲した電極(正)と第1のリザーバーの電極(負)との間に電位が印加される。一次プローブは、キャピラリーのそれぞれの中で等モルずつ移動し、湾曲した電極に集中する。
【0251】
2)リザーバー電極と湾曲した電極との間に印加される電位は遮断され、第1の機能化電極(+)と湾曲した電極(−)との間に電位が印加される。次いで、それぞれのキャピラリーのプローブは、第1の機能化電極に移動し、第1の電極のスポットに相補的な第2のプローブ(キャピラリーにつき1スポット)がハイブリダイゼーションする(ハイブリダイゼーションは、電界により加速される)。それぞれのスポットにおける濃度は、最大である(これは、キャピラリーの数にのみ依存し、導管の総容積にはもはや依存しない)。一次プローブを当該スポットに閉じ込めるために、機能化電極ライン内の第2の電極に、負の電位を与えてよく、これにより、電荷分布(− + −)を獲得し、+電荷はそれぞれのキャピラリーの第1のスポットの中心に来る。
【0252】
3)ハイブリダイゼーションを改善するために、電位は不連続であってよく、電位を伴わない経過時間は緩和時間に対応し、その間、一次プローブは、制約なしでハイブリダイゼーションすることができる。緩和時間の間に、一次プローブの混合を高め、そうしてわずかに存在する一次プローブのハイブリダイゼーションを促進するために、不連続で、且つ交流の電位を、機能化電極ライン内の第1の電極及びキャピラリーネットワークの上と下の非機能化電極との間に確立することができる(これにより、さらに、ハイブリダイゼーションの特異性が改善される)。
【0253】
一次プローブがスポットの第1ラインでハイブリダイゼーションすると、電位は次のラインに移動する。湾曲した電極0の位置と、プローブ1、2、及び3でそれぞれグラフトされた第1、第2、及び第3の機能化電極の位置を呼び出すことにより、印加された電位の動態は、以下のように記載することができる。
4)第2の機能化電極は正電位にされ、次いで、電荷分布は、電荷分布(0 −, 1 +, 2 +, 3 −)を伴い(0 −,1 +,2 +)である(適宜、第3の電極は負の電位にされる)。
5)第1の機能化電極は負電位にされる。次いで、電荷分布は、(0 −, 1 −, 2 +)、適宜(0 −, 1 −, 2 +, 3 −)である。
6)湾曲した電極は、電荷分布(1 −, 2 +)、適宜(1 −, 2 +, 3 −)に対し0にされる。
7)不連続な交流電位は、非機能化電極のアレイと機能化電極2との間に印加される。
【0254】
スポットの第1ラインにおけるすべての非ハイブリダイゼーションプローブは、スポットの第2ラインに移動する(図8)。移動、緩和、混合(上の工程4-7に対応する)の全動態が、1つのラインから次のラインへ適用され、分析された試料における相補的一次プローブを有するすべてのラインのすべてのスポットをハイブリダイゼーションする。それらが第2のリザーバーに到着すると、異なるキャピラリー中で移動した一次プローブは、再度混合する。そこで、他の方向にある電位配列を実施して、逆順でキャピラリーネットワークを通り抜けることが可能である。キャピラリーを通して2つのリザーバー間で一次プローブを往復させると、当該デバイスの検出感度が増大する。
【0255】
原則として、分子を効果的に移動するために、160mV/mmのオーダーの電界を印加させなければならない。湾曲した電極とリザーバー電極との間の距離が大きいため、電界を考慮するためにこれらの電極に印加される電位は、1ボルトのオーダーであり、もはやミリボルトではない。湾曲した電極とリザーバー電極の焼き付きを回避するために、それらを金で作るのが好ましい。
【0256】
特定の実施例において、電極のネットワークのうちの1つは、2つの異なる平面中で電極の2つの垂直なアレイを重ね合わせることにより形成され、次いで、もう一方の電極ネットワークはアースされる。スポットは、上側アレイの電極の下側電極の平面中への侵入の交差点において、下側アレイの電極上にグラフトされる。
【0257】
特定の実施例において、機能化電極ネットワークは、行電極と列電極との間のそれぞれの交差点において、スポット電極が電界効果トランジスタによって行と列に接続される電極の行と列の正方形メッシュパターンにより形成される。
【0258】
電極の2つの重ね合わされたアレイの垂直レイアウトにより、測定することが理論的に可能になる。しかし、交流または不連続な電流を使用すること、及び1つの電極が複数のスポットに接続するという事実は、測定に干渉する寄生静電容量の問題を引き起こす。実際、それぞれのスポットのインピーダンスを定めるために電流及び電圧を正確に測定することは困難であるか、または不可能である。この問題を克服するために、スポット間の電圧及び電流を発生するためのスイッチを導入する必要がある。
【0259】
マイクロアレイの寸法に適合するスイッチを作製するために、機能化電極のアレイは、絶縁され、第2の電極セット(垂直または行内の)に垂直な第1の電極セット(水平または列内の)からなる、同じ平面中の電極のメッシュパターンにより置き換えられる。メッシュの正方形は、メッシュのサイズに応じて長さが10から500μmの小さな電極(スポット電極)が入るスペースを規定する。典型的には、メッシュのそれぞれの正方形は、約150μmの高さh、約500μmの幅lを有する。1つまたは2つの電界効果トランジスタが、メッシュのそれぞれの正方形中に配置され、これにより、トランジスタグリッドは、正方形の片側の水平電極に、トランジスタの入力端子(ソース)は、正方形の片側の垂直電極に、トランジスタの出力端子(ドレイン)は、スポット電極に接続される(図9a)。
【0260】
図9bに示される変更形態において、メッシュのそれぞれの正方形は、2つのスポット電極Oを含み、それぞれ、トランジスタFET 1及びFET 2と関連付けられ、第2のトランジスタFET 2は検出器として作用する。第1のトランジスタのグリッドPは、第1の行電極Mに接続され、第2のトランジスタのグリッドPは、第2のスポット電極に接続される。2つのトランジスタのソースQは、正方形の片側の同じ列電極Nに接続される。第1のトランジスタFET 1のドレインRは、第1のスポット電極に接続され、第2のトランジスタのドレインRは、任意の他のトランジスタから独立している第2の行電極Mに接続される。
【0261】
この構成では、メッシュの行電極は倍にされている。行電極Mのうちの第1の電極は、メッシュのラインの第1のトランジスタFET 1のグリッドPを接続し、第2の行電極Mは、メッシュのこのラインのトランジスタFET 2のドレインRを接続する。
【0262】
ハイブリダイゼーションの後、それぞれのトランジスタFET 1は、それが接続するスポット電極に電圧を印加するために使用される。交流若しくは直流電流または電位が、トランジスタFET 1のソースQに印加される。印加される電位または電位の変動により、スポット電極上にグラフトされた核酸分子において局所的に電流及び電位が発生する。これは、メッシュの正方形の2つのスポット電極上にグラフトされた分子が、小さな電気コンデンサのように振る舞うからである。トランジスタFET 2のグリッドPにおける電流または電位の変動は、このトランジスタの閉じた状態を変化させ、トランジスタFET 2のソースQとドレインRとの間の電流及び電位が比例した変化をもたらす。これらの変動は、スポット電極上にグラフトされた分子のハイブリダイゼーションの配列、サイズ、及び状態に依存する。特に、これらの変動は、核酸の一本鎖または二本鎖状態に依存し、それにより、それぞれのスポット電極におけるハイブリダイゼーションの程度を定量化することが可能になる。
【0263】
メッシュの正方形中において2つのスポット電極を使用することにより、測定された信号及びこの測定の感度は、これら2つのスポット電極の形状に強く依存することになる。当該測定を、入れ子になったらせん状のスポット電極を使用することにより、または上側板上に絶縁スポット電極、第1のマトリックスのスポット電極のイメージから作られた対極を置くことにより改善することができる。
【0264】
他の解決方法は、正方形につき2のトランジスタを備えるこのメッシュを、正方形につき単一のトランジスタを備える2つのメッシュに分離し、これらのメッシュをキャピラリーネットワークのそれぞれの側の上に置く工程からなる。
【0265】
図9cの右下隅に示されているコントロールとして知られる第1のメッシュは、図9aに示されているものと同じである。それは、キャピラリーネットワークの下に伸びており、それぞれのスポット電極への選択的な供給を可能にする。列電極N及び水平電極Mは、電気的に絶縁されており、スポット電極Oは、分子をグラフトするための厚さ10から40nmのポリイミド薄膜で被覆されている。
【0266】
電気的測定は、第1のメッシュに面しているキャピラリーネットワークの上に伸びている図9cの右上隅に示されている第2のメッシュにより実施される。このメッシュにより、ハイブリダイゼーションのためにキャピラリーネットワーク中に置かれているプローブの移動及び拘束電界を制御することが可能になる。このために、このメッシュの列電極N(または逆に、水平電極M)及びスポット電極は、電気的に絶縁されなくてもよい。それぞれのトランジスタFET 2について、ソースQは列電極に接続され、ドレインRは行電極に接続され、且つグリッドはスポット電極に接続される。行電極Mは、キャピラリー壁により被覆される(または逆に、列電極N)。
【0267】
チップがハイブリダイゼーションされると、コントロールメッシュのそれぞれのスポット電極O(図9c)は、順にスイッチオンされる(交番電界と交流)。スポット電極のトランジスタFET 1のソースQとドレインRとの間の電流は、その強度、電圧、周波数、及び位相差において、スポット電極上にグラフトされたプローブのハイブリダイゼーションの状態に依存する。コントロールメッシュのスポット電極において発生する電流及び電圧により、検出メッシュ中に向かい合って配置されているスポット電極のトランジスタFET 2のグリッドPを比例的に開き、このスポット電極のトランジスタFET 2のソースQとドレインRとの間に、測定可能な電流及び電圧を生み出す。
【0268】
要約すると、水平及び垂直電極により定められた正方形が小さなスポット電極により占有されるようなメッシュが得られる。スポット電極は、1つまたは2つの電界効果トランジスタにより正方形の4辺のうちの2辺に接続される。分子プローブは、それぞれのスポット電極にグラフトされる。上側電極セットの電極は、「スポット電極」のそれぞれのラインの反対側に、下側メッシュの垂直電極と平行になるように配置される。下側電極セット中のそれぞれがアースされる。非機能化電極セットは、単一のアースされた平板、または前述のような検出マトリックス、または絶縁されたスポット電極のマトリックスで置き換えることができる。
【0269】
水平電極をスイッチオンすることにより、すべてのトランジスタのグリッドに電力が供給され、すべてのトランジスタの入力と出力との間の電流が遮断され、次いでスポット電極が絶縁される。単一の水平電極の電流を遮断し、電流及び交番電界を単一の垂直電極に印加することにより、2つの電極の交差点におけるトランジスタのみが、それらの入力と出力との間で電流が流れるのを可能にする。単一スポットがスイッチオンされると、スポット電極におけるインピーダンスの変動を、他のスポットからのいずれの寄生効果なしで決定することができる。
【0270】
特定の実施形態において、グリッド動作は、そのトランジスタに対して逆転され、つまり、電流は、グリッドがスイッチオンされた場合にソースとドレインとの間でのみ流れる。これらの条件において、グリッド電極をスイッチオンすることによりラインは制御される。
【0271】
特定の実施例において、本発明に係る方法の工程c)は、本発明に係るデバイスのキャピラリーネットワークのリザーバーの内側で実施される。
【0272】
「磁気ビーズ−一次プローブ−分子標的」の群は、所望の容積で、制御されて変性され、すでに特異的に結合した、特にハイブリダイゼーションした一次プローブを含む溶出液を回収する。
【0273】
そこで、ビーズに結合した標的/一次プローブ複合体を受け入れるリザーバー中に磁界を導入することが可能である。これは、リザーバー電極の反対側のリザーバーの壁に固定された静的マイクロ磁石、または同じ壁に薄層を堆積することによって得られるソレノイドのいずれかであってよい(磁界はソレノイド中の交流により発生する)。
【0274】
磁界により、粒子−分子標的群をリザーバーの内側に保持することが可能になる。系の温度を、一次プローブ及び標的を分離する、例えば逆ハイブリダイゼーションするために上昇させる。系の全体的な温度は、水槽または暖かい部屋により調節され、適宜、局所的調節は、リザーバー中に置かれた抵抗器により得られる。
【0275】
ソレノイドには、磁界発生器及び発熱抵抗器としての2つの用途がある。
【0276】
一次プローブが変性され、リザーバー中の溶液中に入ると、それらはキャピラリー中に移動し、且つ結合し、特にそれらはスポットにハイブリダイゼーションする。
【0277】
サーモスタットシステムの温度は、一次プローブがスポットにハイブリダイゼーションできるように調節されなければならない。ビーズ上の一次プローブの化学的変性を実施することができる。これらの条件において、ハイブリッドが変性され、一次プローブがリザーバー中の湾曲した電極に移動した後、磁石でビーズを取り除く必要がある。ハイブリダイゼーションを可能にするため、溶媒は中和されなければならない。
【0278】
本発明はさらに、分析対象の分子標的の複製を表す一次プローブのアレイに関し、:
−前述のような、異なるタイプの一次プローブのアレイ;
−分析対象の分子標的のフィンガープリントを表す一次プローブのアレイを取得するために、特異的結合により結合した一次プローブ及び分子標的を分離するための手段及び回収するための手段;
を含む。
【0279】
それらの技術的適合性に応じて、本明細書に記載された前述の特性は、さらに、実施例で記載されている種々の特性と組み合わせることもでき、それによって、本発明の他の特定の実施形態を説明することができる。
【実施例】
【0280】
<実施例>
2D電子チップ(2D Electro-Chip)は、あらかじめの標識付けなしで、溶出された一次プローブを構成するバイオポリマーの配列を同定且つ定量化することを可能にする。当該デバイスは、2組の特定の電極セットに関連付けられている、スポット中に編成された生物学的プローブの二次元マトリックス(二次プローブのアレイ)からなる。マトリックスは、2つのリザーバー(それらの末端のそれぞれに1つ)により相互接続された平行なキャピラリーのネットワーク中に含まれる。
【0281】
当該キャピラリーネットワーク及び電極デバイスにより、一連の封じ込め電界(電極のネットワークにより制御される)のおかげで、標的(本発明の方法により溶出された一次プローブ)をスポットのそれぞれのラインに搬送し、そこに集中させることが可能になる。
【0282】
このデバイスは、プローブの受動拡散を防止することによって全反応容積を減らすことを可能にする。
【0283】
従って、マトリックスのスポットの各ラインに、すべての標的を連続的に集中させることが可能になる。次いで、実験を実施するために必要な限定された量の材料は、スポットのラインにおける標的の局所的濃度にのみ依存し、キャピラリーネットワークの全容積にはもはや依存しない。これにより、使用される材料を、マトリックスの1ラインに封じ込められるプローブにより占有される容積を超える従来のチップの反応容積の比に比例して減らすことが可能である(理論上、最大108まで)。
【0284】
ハイブリダイゼーションしたプローブの定量化は、スポットのインピーダンスを測定することにより行われる。従って、もはや標的を標識する必要はない。電極に対して選択された特定の幾何学的形状と併せた生産技術により、18cm2未満の表面上でスポットの密度を最大800から20000-30000スポットまで増加させることが可能である。さらに、プローブのコンフォメーションの変化による測定人為結果は、電極の表面にグラフトされたときにプローブ上に課される立体障害により最小限に抑えられる。制約されたグラフティングを実施するために、我々は、プローブの機能化を必要としない透明金属合金に関するグラフティングプロトコールを開発した。
【0285】
<実施例1:ITO電極への核酸の結合>
【0286】
分子プローブは、核酸の種々の変性処理に耐え、且つ一次プローブを操作するために使用される任意の電界に耐えるように、それらの基板に十分強く付着されていなければならない。インピーダンスにより核酸のハイブリダイゼーション速度を測定する状況において、電極の幾何学的形状に加えて、2つの主要な問題、つまり、1)材料中の局所的構造欠陥が、一方の電子ともう一方の電子との間に散在的抵抗を引き起こし、インピーダンスに人為結果をもたらす可能性がある、2)DNA分子をグラフトするために電極を機能化すると測定が乱される可能性がある、という問題に直面する。
【0287】
これらの問題に加えて、核酸分子のコンフォメーション及びサイズに応じたインピーダンスの変化もある。
【0288】
ITO、ATO、FTO、ZNO(適宜、ポリイミド、例えばKapton(登録商標)で被覆される)等の酸化スズまたは酸化亜鉛合金を使用により、これらの問題を最小限に抑えられる。
【0289】
これは、これらの合金を堆積するための方法が非常に標準され、且つ再現性が非常に高いためであり、欠陥が非常に少ない電極を得ることが可能である。これらの材料は、透明であり、光学測定を可能にする。
【0290】
最後に、リン酸イオンPO32-は、ITO(適宜、ポリイミド、例えばKapton(登録商標)で被覆される)等の電極の表面上に吸着され、ほとんど不可逆的である。核酸は、当然、リン酸塩に富んでいるため、それらはITO堆積物(適宜、ポリイミド、例えばKapton(登録商標)で被覆される)上に吸着される。
【0291】
リン酸塩官能基と対になっているタンパク質を、同じように、または求電子基を有している場合には直接に、そのような担体に結合させることができる。これを実施するために、抗体等のタンパク質を、リン酸塩官能基によりITO合金上に保持されているタンパク質(適宜、グルタルアルデヒドの存在下で)とともにペプチド機能を確立する、リン酸エタノールアミン等の分子と対にすることができる。
【0292】
二次プローブをITO電極上に固定する可能なプロトコールの1つは、以下のとおりである。
ITO電極を、
1)アンモニウムと過酸化水素の溶液中に20分間浸する。
2)蒸留水で洗浄する。
3)プロパン-2-オールで洗浄する。
4)プローブを、湿気のある大気中で、ITO電極上にスポットで堆積させる。
5)次いで、当該スライドを50℃の炉に入れ、DNAの分子コーミングを実施する。それが蒸発につれて、堆積した液滴が、壁に付着したDNAの鎖を図10で説明されているようなスポットの中心に向けて伸長する。
【0293】
ITOは、求電子性が非常に高いため、カプセル化プロセスにより、グラフトされたプローブを有していない電極の部分を絶縁し、標的または一次プローブの任意の非特異的捕捉を回避する必要がある。例えば、ポリピロール膜を使用できる。当該膜は、ピロール溶液の存在下で、グラフトされた電極に電流を通すことにより形成される。ピロールは、電流の作用により自然発生的に重合し、電極の自由部分を絶縁する。当該電極は、さらに、安定して標的、例えばATAまたはTAT等の三量体とハイブリダイゼーションすることができない小さなオリゴヌクレオチドにより飽和させることもできる。一本鎖DNAにより機能化された電極のネットワークは、図11に示されているようにして得られる。
【0294】
このネットワークは、図12に示されているように、mRNAまたはcDNA一次プローブを特異的にハイブリダイゼーションすることができる。
【0295】
二次プローブをITO電極に固定すると、種々の最も広く使用されている変性処理(0.1M NaOH、10% SDS、95°C等)に耐久性を有し、使用後にチップを再生することが可能になる(図13)。
【0296】
代替例は、プローブのグラフティングを実施するために、ピロールで機能化された二次プローブを使用することである。
【0297】
電極上の堆積物について説明されているのと同じ方法を使用して、直接堆積によりプローブ(ヌクレオチドまたはタンパク質)のマトリックスを作製するために、ITO及び/またはポリイミド(Kapton(登録商標))で完全に被覆された平板または顕微鏡用スライドを直接使用することが可能である。得られたチップは、従来の方法で使用される従来のネットワークである。
【0298】
特定の条件において、SiO2によりスライド上に堆積されたITO金属電極を分離し(少なくとも1分子層)、電極を電気的に絶縁し、次いで、分子プローブをグラフトするために電極をポリイミドの層(厚さ少なくとも約10から40nmの1分子層)で被覆すると都合がよい。図17aに示されているこの方法で得られる基板は、ガラス/SiO2/ポリイミド及びガラス/ITO/ポリイミドタイプのものであり、分子プローブを基板上にグラフトするだけでなく、静電容量タイプの電流及び抵抗を測定し、担体上に形成された複合体を検出することが可能である。
【0299】
ポリイミドの化学式の例を、図17b、17c、及び17dに示す。図17bは、直鎖状ポリイミドを示しており、図17c及び17dは、芳香族複素環ポリイミドを示しており、図17dの化学式は、Kapton(登録商標)の化学式である。
【0300】
<実施例2:インピーダンスの測定>
インピーダンス測定は、裸のスポット電極上(図14.1)、さらに118塩基の一本鎖DNAで機能化され、1M DNA溶液0.1μLの堆積物をコーミングすることにより得られる電極上の両方で実施される(図14.2)。
【0301】
インピーダンスは、一本鎖DNAで被覆された電極の方が、二本鎖DNAの重複部位で被覆された電極よりも高いことがわかる(図14.3及び14.4、図15)。ハイブリダイゼーションしていない核酸が存在しても、スポット電極で測定されたインピーダンスがごくわずか変化するだけである。インピーダンスは、主に、ITO電極の表面に付着した分子によるものであり、当該インピーダンスは、一本鎖の方が、二本鎖よりも高い(図16)。従って、ハイブリダイゼーションの反応速度を調べるために、動的測定を実施することが可能である。
【0302】
裸のスポット電極、一本鎖DNAで覆われたスポット電極、及びDNA/DNA二本鎖で被覆されたスポット電極の間の測定されたインピーダンスの違いは、電界(電圧)の周波数及び印加される電流によって決まり、これらの違いによりハイブリダイゼーションのレベルを定量化することが可能になる(図16)。
【0303】
<実施例3:タンパク質に適用される分離及び分析の方法>
当該方法は、例えば、細胞抽出物から採取した混合物中の、種々のタンパク質及びそれらの修飾物の濃度を測定するにおける使用のために種々の形態をとり得る。
【0304】
E.1 当該方法が必要とするもの
4)タンパク質に強く結合し得る磁気粒子群(または表面)。典型的には、ポリスチレン、ナイロン(登録商標)、ニトロセルロース等のビーズまたは膜を挙げることができる。
【0305】
5)それぞれのタイプの抗体が、核酸の特異的配列に強く(共有)結合している、抗体の化学量論的混合物、配列タグ。当該配列タグは、特異的に切断可能な1つまたは2つの一般的配列とそれぞれのタイプの抗体に対し、固有且つ特異的な配列に分けられる。抗体の特異的ヌクレオチド配列は、バーコードのような明確な署名を抗体に与える。
【0306】
6)それぞれのスポットのプローブが、抗体の化学量論的混合物の当該タイプの抗体のうちの1つの配列タグの特定の部分に相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドチップ。典型的には、これは、前記で記載されているインピーダンスチップ、または使用されている配列タグのセットに対応するチップのスポットのセット等の任意の他のチップ(配列タグ1つにつき1スポット)とすることも可能である。
【0307】
E.2 操作原理
細胞抽出物から始め、当該タンパク質を磁気ポリスチレン粒子に付着させる。ポリスチレンは、永続的にタンパク質を吸着する能力を有する。ビーズの飽和を回避するためにタンパク質の濃度と比較して過剰量のビーズを使用し、これにより立体障害が制限される。所望の調査に応じて、タンパク質を変性させる、または変性させない。次いで、ビーズ及び結合タンパク質を、
4)磁界により沈殿させ、
5)上清から単離し、
6)生理食塩水緩衝液中で洗浄し、回収する。
【0308】
次いで、当該ビーズを、調査されている系に対して不活性であるタンパク質で飽和させる。例えば、ウシ血清アルブミン(ウシではない調査の場合)、調査される種に対しKunixt阻害剤等の外来性の小さなサイズのタンパク質、さもなければロイシン等の脂肪族鎖アミノ酸が使用される。工程1から3が、再び実施される。次いで、飽和ビーズ−結合タンパク質の完全系を、タグ付き抗体の等モル混合物と合わせる。当該(一価)抗体は、ビーズ上に固定化されているそれらの標的タンパク質に特異的に結合する。それぞれのタイプの結合した抗体の量は、ビーズ上に吸着したそれぞれのタイプのタンパク質の量に比例する。立体障害を低減するために、当該抗体を、パパイン消化により得られる抗体断片(または半抗体)で置き換えることができる。それぞれの半抗体は、核酸配列で「タグ付け」される。工程1から3が、再び実施される。それによって、反応している抗体(または半抗体)は、反応していないものから単離、分離される。核酸タグは、導入された切断配列を使用して切り離される。これは、例えば、回文配列または抗体酵素の標的配列であってよい。回文配列の場合、2つの特定の解決策を挙げることができる。
【0309】
−当該回文配列を、抗体と特定配列タグとの間に導入する。配列タグを抗体から分離するために、切断配列に相補的な配列及び関連する制限酵素を溶媒に単純に加え、これにより特定配列タグから抗体を分離することが可能になる。
【0310】
−2つの切断配列を、抗体と特定配列タグとの間、及び配列タグの末端にそれぞれ導入し、これら2つの配列が互いに相補的となるようにする。ハイブリダイゼーションを行う際に、それらは、溶媒中にその後導入される酵素に対して特異的切断部位を形成する。次いで、特定配列タグが溶液中に放出される。
【0311】
それらが抗体から分離されると、当該配列タグは、その量がビーズ上に保持されている抗体のタイプの量に比例し、従って分析された細胞抽出物中に存在する種々のタンパク質及びそれらの修飾物に比例する、溶液中のオリゴヌクレオチドの混合物を供給する。得られたヌクレオチドの混合物は、従来のDNAチップまたは前述のようなチップ上で分析され得る。
【0312】
この方法により、2つの異なる細胞抽出物のタンパク質の差分調査を実施することが可能になる(タンパク質を直接標識することなく)。第1の抽出物の抗体タグを、ある色の蛍光標識(例えば、cy3)で標識し、第2の抽出物の抗体タグを、別の色の蛍光標識(例えば、cy5)で標識する。これらの抽出物のそれぞれを、前述のように処理し、次いで、それぞれの抽出物に対して回収された代表的タグの混合物を体積毎に一緒にし、チップ上でハイブリダイゼーションさせる。それぞれの色に対するチップの読み取りにより、2つの抽出物のタンパク質の間の差分が得られる。
【0313】
E.3 抗体の標識付け
抗体を核酸タグで標識する。例えば、次のようである。
・α= 5'NH2(x)n(y)m3'(適宜、5'NH2(zi)p(x)n(y)m3')
・β= 5'NH2(x)n(y)m(x)n3'(適宜、5'NH2(zi)p(x)n(y)m(x)n(zj)p3)
【0314】
アミン基NH2により、グルタルアルデヒド及び/またはエタノールアミン等の架橋剤でヌクレオチド配列を抗体に結合させることが可能になる。核酸高分子は、適宜、そのアミン基により抗体に直接結合することができる。
【0315】
(x)nは、(x)n = 5'CCCGGG3'は制限酵素Srflにより切断され、(x)n = 5'TACGTA3'は制限酵素SmaB Iにより切断され、(x)n = 5'AATAAT3'は制限酵素Ssplにより切断され、(x)n = 5'TTTAAA3'は制限酵素Dra Iにより切断されるというような、回文を形成し得るn個のヌクレオチドの配列である。
【0316】
一般に、すべての平滑末端制限酵素が適している。ただし、最低のTmを有する制限酵素認識部位が好ましい。
【0317】
2つの解決方法が可能である。
・α)切断回文を形成する工程は、制限酵素と同時に系に加えられる配列内部タグと自由配列(x)n(適宜、(x)n(zj)n)との間で実施され、切断回文を形成する。
・β)当該回文は内部分子であり、次いで、配列(x)nがタグの始まり及び終わりに導入される。
【0318】
配列y(m)は、所定のタイプの抗体に特異的な核酸配列である(7から100個のヌクレオチドを含む)。それは、分子バーコードとして作用し、複合体を形成している抗体の数とタイプをカウントすることが可能にする。
【0319】
z個の配列は、タグ中またはタグ間回文配列の間の非所望の対合を最小限に抑える。例えば、z個の配列は、以下のように定義される。
(zi)p = 5'CACACACA3' (zj)p = 5TGTGTGTG3'。
【0320】
回文配列の環境は、zi個とzj個の配列により非対称にされ、それにより、切断の特異性が増大する。
【0321】
抗体からタグを分離するために制限部位を使用する別の方法は、鎖の1つの両端の一方により抗体に結合している相補的二本鎖核酸タグを使用する工程を含む。抗体/タンパク質複合体がビーズに結合し、単離されると、タグの変性により、溶液中に遊離オリゴヌクレオチドの混合物が得られ、オリゴヌクレオチドの量はビーズ上に保持されている抗体の量に比例する。次いで、前述のように、この混合物をチップ上で分析するだけでよい。
【0322】
<実施例4:タンパク質/mRNAの同定及び定量化の混合方法>
E及びAで記載されているように、細胞のタンパク質及びmRNAを連続的に単離し、それぞれ細胞中で産生されるmRNA及びタンパク質を表す、核酸高分子、一次プローブ、及びタグの2タイプの混合物を得ることが可能である。これらの混合物を、チップ(適宜、2つのチップ:1つはmRNA用、もう1つはタンパク質用)上でハイブリダイゼーションさせ、これにより、細胞の同じバッチについて1回の分析で、mRNAとタンパク質を評価することが可能である。
【0323】
A=湾曲した結合電極(例えば、ガラススライド上にエッチングされた透明ITO電極)。
B=機能化行電極(例えば、ガラススライド上にエッチングされた透明ITO電極)。
Bb=機能化スポット電極。
Bc=プローブグラフティングガイドまたはマスク。
Bd=0°で偏光するフィルター。
Be=α°で偏光するフィルター。
Bf=透明電極基板。
Bg=グラフトされた一本鎖DNAプローブ。
Bh=単一平面中で偏光される光。
Bi=分析対象の分子DNA標的。
Bj=二本鎖DNA。
C=リザーバー電極(例えば、ガラススライド上にエッチングされた透明ITO電極)。
D=上部または底部を有さないキャピラリー(例えば、Kapton(登録商標)中をくりぬく):中央平面。
E=基部のある蓋を有さないキャピラリー(例えば、Kapton(登録商標)またはPBMS中をくりぬく):中央平面。
F=上部または底部を持たないリザーバー(例えば、Kapton(登録商標)中をくりぬく):中央平面。
G=非機能化行電極(例えば、ガラススライド上にエッチングされた透明ITO電極)。
I=ITO電極。
J=DNA溶液の液滴。
K=プローブスポット:ハイブリダイゼーションのユニット。
L=ITO電極上に吸収されるDNAの伸長した鎖。
M=水平グリッド電極。
N=垂直ソース電極。
O=スポット電極。
P=グリッド。
Q=ソース。
R=ドレイン。
S=伸長した一本鎖DNAプローブで被覆されたITO電極(アクリジンオレンジで現れ、赤いオレンジ色は一本鎖に特徴的)。
T=118塩基のオリゴヌクレオチド(S)とともにITOで作られた機能化スポット電極。当該電極は、DNAの相補鎖とハイブリダイゼーションされる(アクリジンオレンジで現れ、緑色は二本鎖DNA/DNA重複部位に特徴的)。
U=0.1MのNaOH溶液で洗浄する。
V=相補鎖とのハイブリダイゼーション。
X=1.0MのNaOHで洗浄された一本鎖で機能化され、次いでDNAの相補鎖とハイブリダイゼーションさせたスポット電極(アクリジンオレンジで現れ、緑色は二本鎖DNA/DNA重複部位に特徴的)。
Z=1.0MのNaOH溶液で逆ハイブリダイゼーションした後のスポット電極(アクリジンオレンジで現れ、赤いオレンジ色は一本鎖に特徴的)。
T0=裸のITO電極。
T1=118塩基のオリゴヌクレオチドで機能化されたITO電極。
Aa=電気泳動緩衝液。
Ab=緩衝液1滴の表面における電極。
Ad=低周波発生器。
Ac=ハイブリダイゼーション後のスポット電極:二本鎖DNAで被覆された。
Ba=ハイブリダイゼーションしたプローブ(二次プローブ)の配列に相補的なDNAの溶液。
Ca=洗浄工程。
Ae=ハイブリダイゼーション及び洗浄後のスポット電極。
FET=電界効果トランジスタ。
h=メッシュの正方形の高さ。
l=メッシュの正方形の長さ。
Ω=チップリザーバー中に流体を注入するための弁。
【図面の簡単な説明】
【0324】
【図1】プローブと標的の間のより特異的な認識をするために、プローブ標的複合化(ハイブリダイゼーション)の間に適用されたを温度変化の一例を示す。
【図2】偏光検出器を示す。 2D電子チップのスポット電極の断面。 プローブをグラフトするために、グラフティングガイドを使用して、電極上でグラフティングを誘導し、配向する。 グラフティングガイドは、ベルベットの切れ端でガイドを構成する材料を擦るか、またはスポット電極上に堆積され、コーミングされた(combed)一本鎖DNAの短い断片を含むガイドを作るのに使用される材料を成型することによって得られる。次いで、ガイドは、材料を研磨し、及び/またはDNAの断片を排除した後に得られる。
【図3】プローブでグラフトされた機能化電極セットの例を示す。金またはITO電極が、ガラススライド上にエッチングされ、プローブ(スポットまたはハイブリダイゼーションユニット)が、電極に堆積される。
【図4】行電極対のセットを示す。行電極の対は、互いに向かい合う電極とともにエッチングされた2つのスライドを置くことにより得られる。スライドの1つは機能化され、他方はされない。
【図5】機能化及び非機能化電極セットの間に挿入するキャピラリーのネットワークを示す。
【図6】湾曲した結合電極とリザーバー電極とによって完成した、機能化電極セットを示す。
【図7】キャピラリーネットワークの周りの機能化及び非機能化電極の2つのセットの群を示す。
【図8】標的を一方の電極から他方の電極へ、従って一方のスポットから他方のスポットへ順次移動させるために、電極に印加される一連の電荷を示す。
【図9a】交流を用いたインピーダンス測定のため機能化電極のセットを置き換えるメッシュを示す。FET:電界効果トランジスタ。
【図9b】交流を用いたインピーダンス測定のため機能化電極のセットを置き換える他のメッシュを示す。
【図9c】キャピラリーネットワークの上及び下にそれぞれ配置されることを意図されたメッシュを示す。
【図10】蒸発によって壁に付着したDNA鎖を示す。蒸発の際、堆積した液滴は、スポットの中心に向かって広がる。
【図11】伸長した一本鎖DNAプローブで被覆されたITO電極を示す。
【図12】相補的DNA鎖でハイブリダイゼーションしたITO電極を示す。
【図13】種々の変性処理を示す。二次プローブをITO電極に固定すると、種々の最も広く使用されている変性処理(0.1M NaOH、10% SDS、95°C等)に耐久性を有し、使用後にチップを再生することが可能になる。
【図14】実施される測定を示す。インピーダンス測定は、裸のスポット電極上(図14.1)、さらに118塩基の一本鎖DNAで機能化され、1M DNA溶液0.1μLの堆積物をコーミングすることにより得られる電極上の両方で実施される(図14.2)。インピーダンスは、一本鎖DNAで被覆された電極の方が、二本鎖DNAの重複部位で被覆された電極よりも高いことがわかる(図14.3及び14.4)。
【図15】スポット電極に印加される電圧に応じた電流の測定結果を示す。
【図16】電圧周波数に応じた電圧850mVにおける電流の測定結果を示す。
【図17a】分子プローブ結合基板の断面線図である。
【図17b】ポリイミドの化学式である。
【図17c】ポリイミドの化学式である。
【図17d】ポリイミドの化学式である。
【図18a】一次プローブとして使用される混合核酸/ペプチド核酸化合物を示す。
【図18b】一次プローブとして使用される混合核酸/ペプチド核酸化合物を示す。
【図18c】一次プローブとして使用される混合核酸/ペプチド核酸化合物を示す。
【図18d】(PNA)ポリT−核酸タイプのプライマーを示す。
【図18e】(PNA)ポリT−核酸タイプのプライマーを示す。
【図18f】(PNA)ポリT−核酸タイプのプライマーを示す。
【図19】本発明に係る方法を実施する一実施例を示す。
【図20】本発明に係る方法を実施する別の実施例を示す。
【図21】一次プローブのアレイを調製するためのアルゴリズムの工程を示す。
【符号の説明】
【0325】
2 機能化電極
10 細胞溶解工程
12 分子標的
14 PNAプライマー
16 磁石
17 分子標的
18 mRNAの逆転写
19 メッセンジャーRNA分子
20 cDNAの試料
22 一次プローブ
24 粒子−プライマー/cDNA−一次プローブ複合体
26 cDNAに特異的に結合していない一次プローブ
28 cDNAのフィンガープリントを表す一次プローブ
36 一次プローブ
40 細胞溶解工程
42 分子標的
44 粒子
46 磁石
48 分子標的
50 粒子/分子標的/一次プローブ/レポートプローブ複合体
52 一次プローブ
54 レポートプローブ
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合混合物中の分子標的を分析するための方法及びデバイスに関する。特に、本発明により、複合混合物中の分子標的の分離及び定量分析を行うことができる。
【背景技術】
【0002】
本発明の特定の目的は、従来技術で既知の、生体高分子プローブの有機マトリックスを使用して分子標的を分離し分析するために、これまでに遭遇した難題を、少なくとも一部、解消するための手段である。
【0003】
生体高分子プローブの有機マトリックス(DNAチップ、タンパク質チップ等)を使用することで、混合物中に存在する生体高分子(分子標的)を定性的に且つ定量的に分離することが可能になり、これは、その数、配列、及び複雑度が何であれ、理論上可能である。しかし、核酸ネットワークでは、プローブにハイブリダイゼーションされた標的分子の数を絶対的に、また正確に、計数することができない。現在利用できる技術に関して、マイクロアレイ上の生体高分子を検出するのは間接的なものであり、標識付け工程を必要とする(蛍光、放射能等を使用して)。例えば、「蛍光標識」を使用する方法では、分析対象の分子に結合された蛍光標識の蛍光強度を測定する。
【0004】
分子がハイブリダイゼーションする際、マイクロアレイ上に形成されたプローブ−標的複合体の数に比例する蛍光の増大が生じる。しかし、標識を使用する間接的測定は、特に分子標的が分析対象の少量の生体物質を形成する場合に、比較的信頼できるにすぎないか、またはこれらの測定には、ルーチン分析での使用に難点がある。
【0005】
放射活性標識した残留物及び非放射性残留物を生体高分子中に組み込むことで得られる結果はほとんど同じであるが、蛍光標識については当てはまらない(Martinezら- Nucl. Acids. Res. 2003年、31:18頁、Hoenら-Nucleic Acids Res. 2003年3月1日、31(5)、20頁)。これらの標識付けの問題は、特に、蛍光標識CY3及びCY5を組み込んだcDNA分子の合成の場合に発生する。この後者のタイプの標識付けで生じる立体障害も、反応の速度及び化学量論的平衡を大きく変える可能性がある(一般に、ハイブリダイゼーション、抗体−抗原反応、標的−リガンド反応等)。
【0006】
立体障害のこれらの問題は、放射性同位元素を使用することにより解消されるが、放射性同位元素を使用した場合、放射性廃棄物だけでなく、使用される物質及び作業員の安全性に関わる問題も取り扱う必要がある。また、放射活性標識した分子を検出する技術、つまり、主に放射能用の「ホスホイメージャー」のタイプ(Bertucci Fら-Hum Mol Genet.、1999年9月、8(9):1715〜22、Erratum in: Hum Mol Genet 1999年10月、8(11)、2129頁)、及び蛍光を検出するための種々のタイプのスキャナーは、実施される測定の検出及び再現性閾値に到達するように、チップ上にハイブリダイゼーションされる生体物質の量に関して一定の数の制限を課している。実際、少数の細胞(〜1000個)を含む試料中に1細胞当たりごくわずかのコピーとして存在する分子を検出することは可能でなく、これは、臨床試料では頻繁にある状況である。
【0007】
前述のように、生体高分子プローブの直接標識付けを使用する必要性に関わる問題を解消するために、これらのプローブを間接的に検出するために、形成されたプローブ−標的複合体を検出する他の方法が開発されている。
【0008】
従って、生体高分子の電気伝導性を用いることが提案されている。これが可能なのは、配列の一本鎖DNAの分子は、対応する二本鎖の分子と同じインピーダンスを持たないためである。この特性をDNAチップ上で用いて、ハイブリダイゼーションの割合、及びそれによるマイクロアレイ上に形成されるプローブ−標的複合体の数を評価する。一般に、インピーダンスの変動を用いて、受容体上のリガンドの結合等の分子間相互作用を検討することができるが、DNAまたはタンパク質及び薬物、イオン等の分子の間の相互作用も検討することができる。ただし、マイクロアレイについては、この検出方法は以下のものによって制限されている。
【0009】
1)2000スポットを超える高密度チップを作製することが困難であること。電極のサイズ及びインピーダンスチップを作製するために使用される接続部の幾何学的形状のせいで、ハイブリダイゼーション面は、スポットの数が800を超えるとたちまち非常に広大なものとなる。しかし、広いハイブリダイゼーション面は、大きなハイブリダイゼーション体積を必要とし、従って、検出できる最小レベルに到達するのに、大量の生体物質を必要とする。これは、例えば診断のために物質がわずかしか利用できない実験には適しない。
【0010】
2)測定されたインピーダンスの変動を解釈できなくする測定人為結果を引き起こす、調査されている分子のコンフォメーション変化(プローブ及び/または標的)。例えば、配列または分子内ハイブリダイゼーションが原因のDNA中の歪みは、分子間ハイブリダイゼーションの場合と同程度のインピーダンスの変動を引き起こす。
【0011】
3)分析対象の分子のサイズによるインピーダンスの変動。例えば、トランスクリプトームを表す、核酸分子は、以下の理由:
・一方の遺伝子から他方の遺伝子への転写の不均一な進み方;
・遺伝子の異なる長さ;
・同じ遺伝子の転写により異なるスプライシングを受けること;
から、異なるサイズを有する。
【0012】
従って、チップ上の1つのスポットで測定された電気信号は、1つの遺伝子に対する転写サイズの不均一混合物のハイブリダイゼーションから生じる。この信号は、異なる細胞抽出物中でハイブリダイゼーションされた同じ遺伝子について得られたもの、または同じチップ上の他の遺伝子について得られたもののいずれとも比較できない。
【0013】
これらの条件において、インピーダンスの測定も、以下の制約条件のために困難なものとなる。電界効果トランジスタ(FET)は、DNA分子のハイブリダイゼーションにより生じるインピーダンスの変化を測定するために電流及び/または電圧の増幅器として使用される。プローブのグラフトは、このトランジスタグリッドで生じる。ここで標的がハイブリダイゼーションする場合、グリッドのインピーダンスを変化させ、トランジスタのソース(トランジスタ入力)とトランジスタのドレイン(出力)との間の電流及び電圧の変化を引き起こす。この検出方法に関して、いっさいのネットワーク編成が説明されていない。プローブをトランジスタグリッドに置くことによって、電界効果トランジスタを電流増幅器として使用すると、トランジスタの使用が制限される。
【0014】
これは、電界効果トランジスタのグリッドが電流を受けることがないからである。電圧のみがそれに印加され(applied)、トランジスタはソース/ドレインチャネルの開放を制御する。オリゴヌクレオチドのインピーダンスを直接的に、且つ効果的に測定するために、それに異なる周波数の電圧及び/または交流を流す必要がある。さらに、電界効果トランジスタグリッドの弱点は、プローブの位置付けの間に発生する静電気から保護することが困難であるという点である。
【0015】
グリッド上のプローブの存在も、それぞれのスポットで電圧及び電流を制御するためのマルチプレクサにおけるトランジスタのスイッチとしての使用を妨害する。さらに、この構成において、標的を移動させ、それぞれのスポットに集中させるために、トランジスタのソース及びドレインを電気泳動電極として使用して、ハイブリダイゼーション基板上を標的分子が移動するのを制御することは可能でない。
【0016】
現在の技術状況では、核酸の電気インピーダンスの測定を行っても、核酸の複合混合物を構成する分子の不均一集団の濃度または割合を定量化または分析することはできない。
【0017】
この分野で使用される他の検出方法としては、質量分析法がある。質量分析法によりDNA、RNA、またはタンパク質等の高分子の質量を決定する方法が知られている。この方法による分析が穏やかな分子分解を伴う場合、それらの配列を決定することも可能である。しかし、複合混合物、特に、サイズまたは質量により区別可能かどうかどうか知られていない、分析対象の100を超える標的分子を含む混合物の分野では、標的を分析することは困難であるか、あるいは不可能でさえある。
【0018】
他の可能な検出方法は、金または白金等の自由電子を有する金属の極薄(x nm)板の表面からわずかな距離(200nm未満)に蓄積された物質の密度を決定することができるプラズモン表面共鳴(PSR)を使用する。金属板の面の一方での反射は、他方の面の近くに置かれている物質の密度及び量に比例して変化する。
【0019】
プラズモン表面共鳴(PSR)は、質量の変化を測定する。ハイブリダイゼーションで、分子は、マイクロアレイ上に形成されたプローブ−標的複合体の数に比例する特定の質量を獲得する。
【0020】
従って、この方法は、複合混合物中に含まれる分子標的の定量分析についての前述のものと同様の問題の影響を受けやすい。
【0021】
分子標的のこれらの分離及び/または分析法の使用は、調査対象の分子が異なる形状、配列、及びサイズである分析対象の混合物の複雑度により、または利用可能な物質の量により制限され、プローブを使用して集められた標的の検出を妨げる。
【非特許文献1】Martinezら- Nucl. Acids. Res. 2003年、31:18頁
【非特許文献2】Hoenら-Nucleic Acids Res. 2003年3月1日、31(5)、20頁
【非特許文献3】Bertucci Fら-Hum Mol Genet.、1999年9月、8(9):1715〜22、Erratum in: Hum Mol Genet 1999年10月、8(11)、2129頁
【非特許文献4】Dynal distributors Worldwide, copyright 1996 Dynal AS - Technical Handbook second edition
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の目的は、複合混合物に含まれる分子標的の定量分析のための既知の方法に対する代替方法を提供することであり、これは、前記分子標的集団の不均一または複雑さによる制限を克服し(特に、トランスクリプトームまたはプロテオームに関する場合)、結果として、分離された分子標的の検出に異なる技術を使用し、混合物から分離された前記分子標的の信頼性の高い、再現性のある定量的測定を達成することが可能になる。
【0023】
本発明はまた、臨床診断を行うために一般的に利用可能な量に従って、標的を含む生体物質の量が限られている場合に、生体試料中の分子標的の分析に適した手段を提供する。
【0024】
これを実施するために、本発明者は、「一次プローブのアレイ」と以下で称されるものを構成するために規定されたプローブ(オリゴヌクレオチドの形態をとるものを含めて、ポリヌクレオチド部分を含む)を含む供給源を規定した。分析対象の標的の複合混合物と接触させた場合、特に溶液中で、一次プローブのアレイは、一方の分析と他方の分析とで再現性のある前記標的の分子フィンガープリントを作製することができ、この時点で既知の検出手段を用いるなどして、定量的に検出することができる。
【0025】
従って、検出される分子標的のフィンガープリントは、検出段階において標的の代わりとなる。
【0026】
本明細書で使用されているような「フィンガープリント」という用語は、分子標的との特異的結合を実際に形成している、考慮されるプローブのアレイの一次プローブの群が、分析された混合物中に含まれる分子標的を有意に、定量的に、且つ定性的に記号化し、それぞれのプローブが、例えば、組成、サイズ、及び形状に関して、それが結合する標的と必ずしも同一でないということを意味する。本発明に係る方法により、核酸標的の特定配列またはポリペプチド標的の特定組成を同定または認識する必要がなくなる。
【0027】
一次プローブのアレイにおけるプローブは、例えば、末端の一方が当該一本鎖よりも短い相補的配列とハイブリダイゼーションする、一本鎖核酸(ポリヌクレオチド)または修飾された一本鎖ポリヌクレオチドを含むか、または本発明の実施形態に従い、それらからなる、あるいは、例えばこれらが、PNA(ペプチド核酸)であることを特徴とする。従って、ポリヌクレオチドという用語は、ただし、以下で特異的に使用される場合に明示的に引用され得る修正形態を含む。前述のPNAは、質量分析法のプローブ分解能を改善する。従って、それは、この検出法を使用する本発明の実施形態を実施する場合に、特に重要である。
【0028】
一次プローブのアレイは、特に溶液中の、いくつかのタイプのプローブの混合物として使用されるべき、会合により形成され、それぞれのタイプのプローブはプローブのアレイ中のそれぞれの他のタイプのプローブから区別可能であり、また個別に検出可能(特に、定量化可能)である。本発明の文脈において概要が述べられている一次プローブのアレイのプローブは、分析される複合混合物中に存在している場合にあるタイプの標的を認識且つ特異的に結合し得、またそのように設計される。要するに、あるタイプの一次プローブについては、複合混合物中に対応する固有のタイプの標的がある。それは、混合物中において、検出可能且つ定量化可能な一次プローブに特異的に結合する標的である。プローブ−標的複合体を形成するプローブの群は、分析される標的のフィンガープリントを形成する。
【0029】
さらに、異なるタイプの一次プローブは、発色若しくは発光、親和性、酵素、磁気、熱、または電気的なタイプの標識によるポリヌクレオチド部分の標識付けが存在しないこと(特に蛍光または放射性標識の存在しないこと)を特徴としており、それらの検出及び/または定量化を可能にするように設計される。これらの条件の下で、特異的なプローブ−標的複合体を形成している一次プローブアレイ中のプローブの個別の検出は、「間接標識」と呼ばれ、プローブに固有の自己決定特性を付与し、且つその標的に対する親和性を変えない、プローブのポリヌクレオチド部分の以下の3つの特徴:(i)当該プローブのポリヌクレオチドに含まれるヌクレオチドの組成及び配列;(ii)当該プローブのポリヌクレオチドのサイズ(または長さ);(iii)当該プローブのポリヌクレオチドの質量;のうちの少なくとも1つを使用する。
【課題を解決するための手段】
【0030】
特定の一実施形態において、一次プローブの以下の記載に見られるように、一次プローブの組成は、それらの核酸配列のサイズが既知であり、且つ均一であるか、または同一でさえあるような、あるいはプローブがポリペプチド部分に連結されたポリヌクレオチド部分を含む場合に、それらのポリヌクレオチド配列は同一サイズであるような組成である。
【0031】
本発明の他の実施形態において、一次プローブは、サイズ及び/または質量が一次プローブのアレイ中の他のポリヌクレオチドと異なるポリヌクレオチドからなる。
【0032】
一変更形態において、プローブがポリペプチド及びポリヌクレオチド部分の両方を有する場合、それらのポリヌクレオチド部分は、例えば、それぞれのポリヌクレオチド部分が一次プローブのアレイ中の他のポリヌクレオチドと異なる質量及び/またはサイズを有する、その質量及び/またはサイズによって測定することができる。
【0033】
本発明の目的は、従って、溶液中に異なるタイプの一次プローブの集団を含む、複合混合物中の分子標的を分析するのに適した一次プローブのアレイであり、:
−それぞれのタイプの一次プローブは、プローブのアレイ中の他のタイプの一次プローブと異なり;
−前記一次プローブ及び前記分子標的が接触した場合に、すべての一次プローブは、特異的結合により、分析対象の固有のタイプの分子標的に結合し得;
−それぞれのタイプの一次プローブは、ポリヌクレオチドであるか、あるいはポリペプチド部分に結合したポリヌクレオチドを含み、複合混合物中の固有のタイプの分子標的と特異的に結合し得、それぞれのポリヌクレオチドはプローブのアレイ中の他のすべての一次プローブのポリヌクレオチドとは、これを構成するヌクレオチドの配列、そのサイズ、またはその質量の点で異なる。
【0034】
一次プローブのアレイ中のプローブのこれらの特性は、異なる実施形態の記述の中で後述されている、特定のプローブを規定する特徴により例示され、完結している。
【0035】
本発明の特定の一実施形態において、こうして規定されたプローブのアレイ中で、それぞれのポリヌクレオチドは、他のポリヌクレオチドに応じて同定され、特に、前記ポリヌクレオチドが、二次ポリヌクレオチド−プローブ複合体(後述)を作るか、またはプローブ−標的複合体を形成するために、特定のハイブリダイゼーション反応で使用されることが意図されている場合に、その配列により、またはその配列の一部により独立して知られる。この場合、当該ポリヌクレオチドを含むヌクレオチドの特定の順序は、他のタイプのプローブのポリヌクレオチドの配列のものとは異なると判定され、または判定され得、知られ得る。
【0036】
一次プローブポリヌクレオチドの検出により、相補的核酸配列との特異的ハイブリダイゼーション反応が生じない場合、それぞれのタイプの一次プローブのポリヌクレオチドは、他の一次プローブのポリヌクレオチドと、そのサイズ及び/またはその質量の点で異なっていることだけを必要とする。サイズ(プローブポリヌクレオチドの長さを与える、実験式中のヌクレオチドの総数)、及び/またはその質量(配列の実験式から計算される)におけるこの差は、プローブのアレイ中の構成するそれぞれのヌクレオチドの数、及びそれぞれの質量を考慮し、またプローブ−標的複合体中に適切なポリヌクレオチドを組み込むために最初に同定された配列の質量に応じて質量を変えるための前記配列への可能な修正を考慮している。
【0037】
これら3の基準(配列、サイズ、及び質量)により、相当の数の異なる一次プローブを作製が可能である。実験式:(An, Cm, Ti, Gj)を考察する際、式中、Aはアデノシン、Cはシトシン、Tはチミン、Gはグアニン、n、m、i、jは式中のそれぞれの数(核酸高分子のサイズは(n+m+i+j)に等しい)であり、質量を変える可能な修正を含めることなく、(n+m+i+j)!/(n!.m!.i!.j!)に等しい数の異なるプローブを作製することが可能である(x!はxの階乗を表す)。
【0038】
それぞれのタイプの一次プローブに対するポリヌクレオチドの質量が既知であり、それぞれのタイプのプローブ毎に異なっている場合、一次プローブの分析は、つまり、分子標的に特異的に結合する一次プローブの同定は、それらのポリヌクレオチドの質量を決定する工程の後に実施される。この測定は、質量分析法により実施することができる。
【0039】
あるタイプの一次プローブのポリヌクレオチドの質量は、他のすべてのタイプの一次プローブのポリヌクレオチドの質量と容易に区別可能でなければならない。
【0040】
2つのタイプの一次プローブに対応する2つのポリヌクレオチドの質量が近い場合、つまり、例えば質量分析において、ある検出法では混同されがちである場合、容易に区別可能にするために、それらのうちの少なくとも1つの質量を、例えば、その原子のいくつかをより重い原子で置き換えるか、またはシトシン等のその塩基(A、T、C、G)の一部のメチル化若しくはエチル化によって変化し得る。
【0041】
数百さらには数千、数万、数十万タイプもの一次プローブを含む一次プローブのアレイの場合、一次プローブ分析段階で種々のタイプのポリヌクレオチドをより容易に同定できるように、論理的にそれらのポリヌクレオチドの質量をこの方法で修正すると都合がよい。
【0042】
試験試料中の分子標的に特異的に結合し、当該ポリヌクレオチドが異なる質量を有する、一次プローブの分析工程は、:
−試料分析を意図した一次プローブアレイと同じプローブのアレイを含むが、質量分析計についての分解能の例えば1単位に相当する量だけ、それぞれのプローブの質量を変えるプローブの標準混合物を準備する工程;
−いくつかの希釈で使用される標準混合物の既知の量のプローブの存在下で、質量スペクトルを得られるような方法で、分子標的に特異的に結合する一次プローブのポリヌクレオチド(既知の量で存在する)を質量分析法により分析し、且つ必要な場合、前述の分解能単位だけ修正されたそれぞれの標準プローブの質量が、試験されるプローブのアレイ中のいずれかのプローブの質量と重なり合わないことを確認し、この工程が基準スペクトルの準備を構成する工程;
−一次プローブのアレイのプローブを使用することによって、分析された試料について得られたフィンガープリントに、既知の量の標準混合物を加え、この混合物に対する質量スペクトルを得る工程;及び
−前記工程における質量スペクトルと、基準質量スペクトルとを比較し、前記フィンガープリントを形成する一次プローブのアレイ中のプローブの定量化によって標的分子を定量する工程;
とを含むことができる。
【0043】
それぞれのタイプの一次プローブに対するポリヌクレオチドの質量が既知であり、それぞれのプローブのタイプ毎に異なっている場合、一次プローブの分析、つまり、分子標的に特異的に結合する一次プローブの同定は、それらのポリヌクレオチドの質量を測定する工程の後に実施される。電気泳動分離システムを用い、濾過、UV検出システムにつないだ気相または液相のクロマトグラフィ、あるいはLIBS(レーザー誘起ブレークダウン分光法)によって、当該決定を実施することができる。
【0044】
前述のように、特にプローブに使用される異なるポリヌクレオチドが同じ質量を有する場合、一次プローブを構成する際に使用するように選択されたポリヌクレオチドを修正して、異なる物理化学的特性を付与し(所定の数のメチル化、エチル化等により)、一次プローブ分析段階でさらに容易に同定されるようにすると都合がよい。
【0045】
この場合、及び標的が核酸である場合、ポリヌクレオチド部分がこの方法で構成される一次プローブのアレイの調製は、特に、多数のプローブを取得する必要がある場合に、図22に示され、後述される工程に従って実施することができ、多数のプローブがこれを必要とする場合には、これらの工程はコンピュータプログラムの助けを借りて実施される。
【0046】
−工程110:例えば、20-150個、例えば20-100個のヌクレオチドを含むポリヌクレオチドからなる、一次プローブに対しサイズ間隔を規定し、プローブ及び標的のハイブリダイゼーションの条件、特に融解温度Tm(与えられたプローブの50%がその相補的配列とハイブリダイゼーションする温度)、例えばプローブの群に対して50-75℃の範囲の温度を規定する工程。
【0047】
−工程1201、1202、及び1203:必要な場合、プローブを調製する必要のない標的の領域を除去した後、異なる配列のポリヌクレオチド分子標的のS数を決定する工程。この数は、10、50、100、500、1000、10000、20000あるいはそれ以上の値以上であり得る。それぞれの標的配列は、番号iを有し、この番号は、1からSまでを含む。
【0048】
−工程1301及び1302:試料中に存在し得るそれぞれの標的配列iに対する、考察中の標的により完全にハイブリダイゼーション可能で、サイズが選択されたサイズ間隔に含まれ、Tmが選択された値の範囲内に含まれるNi個の可能なプローブの集合体の同定。
【0049】
−工程1401及び1402:Ni個の配列の前述の集合体中で、考察される配列iに含まれる分子標的とのハイブリダイゼーションによって結合し得、それによって形成される結合が特異的であり、そのときから混合物の他の可能な標的配列とのハイブリダイゼーションを除く、ni個のポリヌクレオチド配列の集団を選択する工程。このために、Ni個のプローブの集合体中のそれぞれのプローブは、試料中にある可能性のあるi個の配列すべてと、例えば、EMBL、Genebank等のデータベースの助けを借りて比較される。ni個のプローブの集団は、固有の分子標的配列iに特有である。例えば、連続する同一塩基の数15を超える、Ni個のプローブの集合体中の他の配列と、ある閾値を超える類似度を示す一次的プローブの配列を排除することができる。
【0050】
−工程1501及び1502:プローブを構成するためのni個の推測されるポリヌクレオチドのこの集団内において、必要な場合、その中に含まれるヌクレオチドを修飾する、例えば、1つまたはいくつかのシトシン残基をメチル化またはエチル化することにより、それぞれのポリヌクレオチドに対し、集団内の他のポリヌクレオチドの質量と異なる質量を割り当て、それぞれの配列が既知であり且つすべてが異なる質量を有するポリヌクレオチドの集合体を取得する工程。それぞれの配列修飾に対して当該比較を反復的に繰り返す。ni個のポリヌクレオチドの集団は、好ましくは、質量の昇順で、次いで、メチル化または他の修飾の数の昇順で順位付けされる。
【0051】
−工程1601及び1602:i=1に対し、つまり、考察される第1の分子標的の配列に対し、1一次プローブのZi個の組み合わせが存在する(Ziはniに等しい)。
【0052】
−工程1701、1702、及び1703:iが1と異なる値、例えば2に等しい、標的iに対し、前述の工程は、すべてが異なる質量を有し、標的配列iにハイブリダイゼーションし得るni個の一次プローブの集団体の同定のため繰り返される。i個の一次プローブのZi個の組み合わせの集合体が説明されており、これらの組み合わせのそれぞれ1つは、調査されるni個のプローブのそれぞれの集団に対する固有の一次プローブを含み、あるいは言い換えると、i個の一次プローブのそれぞれは、考察されるi個の配列のうちのただ1つに由来し、Zi個の組み合わせのそれぞれに対する一次プローブの群は、すべてのポリヌクレオチドが異なる質量を有するような群である。このために、ni個のプローブの集団のそれぞれの一次プローブは、前述されている組み合わせ、つまり、m(i-1)が1からZi-1の範囲であるそれぞれの組み合わせm(i-1)の一次プローブと比較される。一次プローブの質量が互いに近すぎる場合、最少の修飾、例えば最少のメチルまたはエチル基を含む一次プローブは、例えば最初の5'非メチル化または非エチル化シトシン上でメチル化され得る。それぞれの配列修飾に対して当該比較を反復的に繰り返す。
【0053】
−工程180:i個の一次プローブのZi個の組み合わせは、当該組み合わせを含むi個の一次プローブの質量の合計の昇順で順位付けされ、次いで、当該組み合わせ中の一次プローブ上の例えばメチルまたはエチル基の修飾残基の数の昇順で順位付けされ、これにより、組み合わせ中に同じ数の修飾を有する一次プローブが、その質量の昇順で順位付けされる。以下の工程におけるアルゴリズムを高速化するために、当該組み合わせの一部のみ、例えば最初のLsを考察することができる。
【0054】
−工程1602:調査されるi個の配列にわたり、i個の一次プローブのZi個の組み合わせの集合体を同定する工程。
【0055】
−前述の工程はi毎に繰返され、iは3からSの範囲である。i=Sであり、且つS個の一次プローブのZS個の組み合わせの集合体がS個の標的配列に対して同定された場合、一次プローブアレイを構成する当該組み合わせのうちの1つを選択することができる。好ましくは、この組み合わせは、時間とコストに関して達成するのに最も容易なものであり、または工程180で構成されたZS個の組み合わせの順位付けにおいて最初のものである。
【0056】
こうして定められたプローブアレイ中の一次プローブは、ポリヌクレオチドを調製するための任意の既知の方法によって合成される。より一般的に、一次プローブアレイは、以下の工程:
−一次プローブに対するサイズ間隔を規定し、プローブを標的にハイブリダイゼーションするための条件、特にプローブの群に対する融解温度Tmを規定する工程;
−複合混合物中の異なる配列のポリヌクレオチド分子標的の数iを決定する工程;
−試料中に存在し得るそれぞれの標的配列iに対する、考察中の標的によって完全にハイブリダイゼーション可能で、サイズが選択されたサイズ間隔に含まれ、Tmが選択された値の範囲内に含まれる、Ni個の可能なプローブの集合体を同定する工程;
−Ni個のプローブの前述の集合体中で、考察される配列iによって構成される分子標的とのハイブリダイゼーションにより結合し得、それによって形成される結合が特異的であり、そのときから混合物の他の可能な標的配列とのハイブリダイゼーションを除く、ni個のポリヌクレオチド配列の集団を選択する工程;
−プローブを構成するための推測されるプローブのこの集団内において、必要な場合、その中に含まれるヌクレオチドを修飾する、例えば、1つまたはいくつかのシトシン残基をメチル化またはエチル化することにより、それぞれのポリヌクレオチドに対し、集団内の他のポリヌクレオチドの質量と異なる質量を付与し、それぞれの配列が既知であり、且つすべてが異なる質量を有するポリヌクレオチドの集合体を取得し、それぞれの配列修飾に対して当該比較を反復的に繰り返す工程;
−それぞれの配列iに対してi個の一次プローブのZi個の組み合わせの集合体を同定し、これらの組み合わせのそれぞれは、調査されるni個のプローブのそれぞれの集団に対する固有の一次プローブを含み、ni個のプローブの集団の一次プローブのうちのそれぞれは、前記で作られた組み合わせ中の一次プローブと比較され、且つ一次プローブの質量が互いに近すぎる場合、それらの配列を修飾し、それぞれの配列修飾に対して当該比較を反復的に繰り返す工程;
−i個の一次プローブのZi個の組み合わせを、前記組み合わせを含むi個の一次プローブの質量の合計の昇順で、及び修飾された基の数の昇順で順位付けする工程;
−調査されるi個の配列にわたり、i個の一次プローブのZi個の組み合わせの集合体を同定する工程;並びに
−こうして規定されたプローブアレイ中で一次プローブを合成する工程;
を含む方法によって調製される。
【0057】
試料標的が核酸でない場合、一次プローブ中に含まれるポリヌクレオチドを調製する方法は、プローブと標的との間の特異的ハイブリダイゼーション反応を考慮する必要がない限りにおいて、前記の説明に関して変えられる。
【0058】
質量が一次プローブポリヌクレオチドを検出するための識別基準でない場合、それらはサイズ及び/または配列により区別され得る。一次プローブポリヌクレオチドのサイズ及び質量特性がなんであれ、標的が核酸である場合におけるそれぞれのタイプの一次プローブのポリヌクレオチド配列は、標的との特異的且つ排他的な結合が可能であるように、他のタイプの一次プローブの他の配列すべてと異なっていなければならない。ポリヌクレオチド配列のこうして規定された特異性は、本発明の一実施形態により、一次プローブ及びそれによって標的を検出する手段を構成し得る。
【0059】
標的−プローブ複合体中の一次プローブの検出が、ポリヌクレオチド配列の検出を必要とする場合、後述のように二次プローブのアレイを使用することができる。図22は、それらの質量によって区別される1000個の一次プローブの混合物を得るためのストラテジーの例を示している。それぞれの一次プローブの質量の選択は、例えば、メチル基をシトシンに加えることによる核酸塩基の配列、サイズ、及び/または修飾の関数である。一次プローブアレイは、13ダルトンの分解能を有するMALDI-TOFF質量分析計で分析されることを意図され得る。一次プローブの質量の変更は、重同位元素によりいくつかの原子を置き換えることにより達成され得る。
【0060】
それぞれの一次プローブに対して特異的なクロマトグラフィ基準を有する一次プローブアレイを作製するために、同様の手法が考慮され得、一次プローブのサイズ、及び実施されるメチル化及び置換の位置を考慮する。本発明の文脈における使用のために、一次プローブアレイは、複合混合物中で認識し得る標的の量に関して、過剰なそれぞれのタイプの一次プローブを含む。さらに、一次プローブアレイは、一次プローブの化学量論的な混合物の形態で使用される。
【0061】
プローブ混合物の化学量論的状態を維持するために、プローブは、それらのポリヌクレオチド部分がそれら自身とハイブリダイゼーションし得ないか、または少なくとも安定なプローブ−プローブハイブリッドを形成し得ないように調製される。
【0062】
従って、本発明者は、(それ自体検出可能である分子を用いて)間接的に標識付けされているプローブを、分析用の複合混合物中の不均一な分子標的の特徴的且つ再現可能なフィンガープリントを取得するために混合物中で使用することができ、前記フィンガープリントは溶液中でプローブ−標的複合体を形成しているプローブ、または後者のポリヌクレオチド部分から構成され、且つ定量的に測定され、混合物中に含まれる標的の量を測定することができることを示している。
【0063】
前記プローブ(またはそれらのポリヌクレオチド部分)はさらに、標的の混合物と接触させた後、溶液中でプローブ−標的複合体を形成した後、個別に同定し、定量化されることができる。この同定は、当該ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列、そのサイズ、またはその質量による効果を検出することによって、それらのポリヌクレオチド部分を同定することを含む。
【0064】
従って、本発明の目的は、溶液中に異なるタイプの一次プローブの集団を含む複合体混合物中の分子標的の分析に適した化学量論的混合物における一次プローブアレイであり、前記アレイを構成するそれぞれのタイプの一次プローブは、それが含むポリヌクレオチドのヌクレオチド配列において他のタイプのプローブと異なり、及び/または本発明の特定の実施形態により、前記ポリヌクレオチドの質量またはそのサイズ、または2つの最後の基準の点で異なり、前記一次プローブ及び前記分子標的を接触させ、溶液中で反応させる場合に、分析対象の分子標的の1つのタイプに特異的に結合し得る。
【0065】
本発明の特定の一実施形態において、一次プローブアレイは、少なくとも10個の一次プローブ、例えば少なくとも50個、特に少なくとも100個、好ましくは少なくとも200個、都合よくは少なくとも1000個、あるいは少なくとも10000または20000個のプローブを含む。
【0066】
本発明に係る方法は、一次プローブを用いて分子標的を分析する。前記のように、一次プローブは、必ずしも独占的に核酸からなるわけではなく、ポリヌクレオチド部分を含む。このポリヌクレオチド部分は、適宜、例えば、均質のまたは同一のサイズのポリヌクレオチドに対する二次検出プローブによって、あるいは他の手段、例えば、それらの構造に応じてポリヌクレオチドのサイズ若しくは質量若しくは他の既知の物理化学的特性の違いを測定することによって検出可能でなければならない。実際に分子標的と特異的に結合している一次プローブは、混合物中に含まれる検出されるべき分子標的のフィンガープリントを構成する、最初に使用されるプローブのアレイ中の一次プローブの亜群を表す。
【0067】
複合核酸混合物の分析の一実施形態において(サイズ及び/または配列が不確定であるか、または知られてさえいない可能性のある、分析対象の分子標的とは異なる)、一次プローブは、すべて均質なサイズを有する、例えば同一であるように選択され得るか、またはプローブがポリペプチドとポリヌクレオチド部分を組み合わせる場合、後者のサイズはプローブの中で均質であり、例えば同一である。当業者であれば、どのくらいのプローブの間のサイズのばらつきが許容し得るかを、特に使用されている電気的または光学的検出方法の感度に応じて決定することができる。指示により、プローブのサイズは、検出測定が± x%まで正確である場合に選択されたサイズに関して、± x%の範囲で変化する場合に均質であると考えられる。実際、約±10%の範囲内のサイズのばらつきは許容される。
【0068】
さらに、それぞれのタイプの一次プローブの配列(一次プローブのヌクレオチド部分)が既知であるか、または決定され得る。特に、これらの配列は直線的である。それぞれのプローブにより引き起こされる測定のばらつきは、配列次第で測定され得る。
【0069】
次いで、そのサイズ及び配列が既知であるか、または測定可能であり、分析された混合物中の分子標的に特異的に結合している、一次プローブまたはそれらのポリヌクレオチド部分は、例えば二次ポリヌクレオチドプローブによって、分析のためにそれらの標的から分離され、回収される(溶出される)。溶出された一次プローブとのハイブリダイゼーション反応における二次プローブの使用により、前記一次プローブの同定及び定量化、並びに分子標的の間接的同定及び定量化が可能となる。当該二次プローブは、この場合その標的が一次プローブであることを考慮することによって、ポリヌクレオチドからなる一次プローブと同じように特徴付けられる。
【0070】
一次プローブ(またはそれらのポリヌクレオチド部分)と二次プローブとの間に形成される対合の検出は、以下に示されるように、一次プローブが標識付けされる必要なく、実施され得る。
【0071】
前記溶出された一次プローブは、異なるタイプの二次プローブのマトリックス中にそれらを保持することにより検出し得、それぞれの二次プローブは分子ハイブリダイゼーション中の特異的結合により固有のタイプの一次プローブを保持し得る配列を有する。使用される二次プローブは、複合混合物と接触している一次プローブのアレイのサイズと同様のサイズを有するプローブのアレイを形成する。
【0072】
従って、本発明により、同時に一次プローブのアレイと二次プローブのアレイとを使用した場合に、単一チップに接触させられる、複合核酸混合物の分析の状況において、それぞれのタイプのプローブの存在量にのみに依存して測定を行い、異なるサイズ、形状、及び配列を有する分子標的が存在することによる測定人為結果を回避することが可能になる。
【0073】
核酸分子でない分子標的、例えば、タンパク質または特異的プローブ−標的複合体(例えば、糖類、脂質等)を形成し得る他のタイプの分子の複合混合物の分析の状況において、本発明は、ポリヌクレオチド部分がそれぞれのプローブについて、異なる配列及びプローブアレイの均質または同一のサイズにより区別可能であるか、あるいはそれぞれのポリヌクレオチド部分が、異なる質量または異なるサイズを有することにより他と区別可能である一連のプローブを表すように構成された一次プローブアレイを提案している。プローブのポリヌクレオチド部分が、溶液中の混合物中に形成されたプローブ−標的複合体から分離され、例えば、二次プローブへのハイブリダイゼーション、質量分析法、クロマトグラフィ、濾過、または電気泳動により分析される。
【0074】
一次プローブポリヌクレオチドのヌクレオチド配列に関して前述されたものは、標的核酸を伴う工程の場合を除き、それらがポリペプチド部分も含む場合に、一次プローブのポリヌクレオチド部分にも明確に当てはまる。
【0075】
従って、本発明は、前記の定義の範囲内で、複合混合物に含まれる分子標的を分析する方法に関するものであって、:
a.分析用の分子標的を含む傾向のある複合混合物を、異なるタイプの一次プローブのアレイと接触させ、それぞれのタイプの一次プローブが前記分子標的と前記一次プローブの特異的結合を可能にする条件において、分子標的のうちの1つのタイプの標的に特異的結合により結合し得るアレイを含む工程;
b.分子標的に特異的に結合していない一次プローブを適宜取り除く工程;
c.特異的結合により形成された分子標的−一次プローブ複合体を分離し、混合物中に含まれ、且つ一次プローブによって認識される分子標的のフィンガープリントを表す一次プローブを回収する工程;及び
d.工程cで溶出された一次プローブを分析する工程;
を含む。
【0076】
都合のよいことに、本発明の方法により、工程cで溶出された一次プローブの定量分析が可能となる。
【0077】
分子標的から分離されたこれらの一次プローブ(またはそれらのポリヌクレオチド部分)を定量化することにより、分離された一次プローブの量に比例する量である分子標的の定量分析が可能となる。
【0078】
本発明の文脈において使用されているような「複合混合物」という表現は、異なる構造(特に、配列)を有する多数の分子、特に10個を超える、とりわけ50個、100個、または1000個を超える、あるいは10000個または20000個を超える異なる構造を有する分子を含む溶液を意味すると理されるべきである。本発明のデバイスは、生物学的分子(あるいは、核酸またはタンパク質等の生体分子)、特に生体試料中に含まれるものを分析することを好ましくは意図されている。特に、複合混合物は、トランスクリプトームまたはトランスクリプトームを表すもの(cDNAの形態の)であるか、あるいはプロテオームである。
【0079】
また本発明により、核酸標的とポリペプチド標的の両方を含む複合混合物の分析が可能となる。この特定の場合において、標的の2つの集団は、分析により互いに区別できなければならない。この区別は、それぞれの集団に特異的な一次プローブアレイの選択によって実施され得る。
【0080】
とりわけ、複合混合物を提供する試料は、組織試料または生体流体、例えば、血液、血清、血漿、脳脊髄液、尿、または唾液等由来であってよい。当該試料は、動物(特に、哺乳類、好ましくはヒト)由来であってよい。当該試料は、特に、健康な個体または医学的状態を有する患者由来であってよい。当該状態は、特に癌、神経変性疾患、感染症、とりわけ、ウイルス性、細菌性、または寄生虫性疾患であってよい。
【0081】
試料はまた、真核または原核細胞、細菌、カビ、あるいは酵母、特に培養細胞または外部環境から採取された細胞由来の組織抽出物または細胞抽出物を含んでもよい。試料はまた、植物から採取されてもよい。また、農業食品製品の試料、特に調理食品、種、果物、または穀類由来の試料であってもよい。
【0082】
この文脈における「分子標的」という表現は、本発明の一次プローブにより認識され得、且つ特異的に結合し得る生体高分子、例えば、DNA、RNA分子、特にゲノムDNAまたはRNA、cDNAまたはmRNA、siRNA、ペプチド、あるいはタンパク質等を意味すると特に解される。
【0083】
分子標的と一次プローブの特異的結合を促す工程a)を実施するために、異なる条件を考案してよい。
【0084】
本発明の特定の一実施形態において、この工程は溶液中で実施される。
【0085】
この実施形態において、検出されるべき分子標的は、溶液中の混合物と接触させた粒子に固定することができる。例えば、磁気粒子を使用することができる。また、ITOまたはポリイミドでコーティングされた電磁ビーズを使用することも可能である。標的はすべて付着させることができる。あるいは、混合物のより特異的な分析のために、特定のタイプの標的のみを付着させることができる。
他の実施形態によれば、それぞれのタイプの粒子が1つの特定のタイプの分子標的をピックアップするよう方向付けされた、異なる粒子の混合物を使用することが可能である。
【0086】
あるいは、分析対象である複合混合物中の分子標的を担体に付着させる。次いで、一次プローブアレイを前記担体と接触させ、工程a)を実施する。
【0087】
工程a)は、分子標的より過剰な一次プローブを有する混合物を使用することによって実施される。本明細書で使用されているように、「過剰なプローブ」は、分子標的の予想される量よりも多いまたは等しい量を意味すると解される。使用される過剰な一次プローブは、当該プローブによって認識され、且つ特異的に結合した標的を飽和させることができなければならない。
【0088】
工程a)を実施するために、プローブは化学量論的混合物中にある。
【0089】
本発明の特定の一実施形態において、一次プローブアレイ中のプローブのハイブリダイゼーション反応は、熱力学的条件下で、例えば、ある温度勾配において、必要な場合には、図19の解説中で以下に例示されているように、冷却と加熱のプラトー領域を使用することによって実施される。
【0090】
工程b)におけるプローブ−標的複合体を形成していない一次プローブの排除は、これらのプローブを回収して、反応溶媒からそれらを除去することによってなされ得る。この工程b)は、プローブ−標的複合体から分離された一次プローブを、検出手段に接触させる直前に作動し、実施され得る。例えば、プローブ−標的複合体を形成していないプローブを他のプローブから分離した後に、後者を分子フィンガープリントの一次プローブを検出するために使用される二次プローブといっしょにしなければならない。
【0091】
工程c)は、分子標的−一次プローブ複合体の分離を含む。本明細書で使用される「分離」という用語は、以下:
・分子標的と一次プローブとのハイブリダイゼーションによって形成される二本鎖核酸(DNA-DNA、DNA-RNA等)の分離;
・あるいは、ポリペプチド分子標的と一次プローブとの間に形成される特異的複合体の分離(例えば、抗体または抗体断片、あるいは受容体及びポリヌクレオチド部分を含む)。その後、一次プローブのポリヌクレオチド部分は、一次プローブの残り部分から分離されなければならない。;
・あるいは、分子標的に特異的に結合した一次プローブのポリヌクレオチド部分の分離;
を意味すると解される。
【0092】
本明細書で使用されているような「分離」は、標的とプローブとの間の特異的結合を壊す、またはプローブのポリヌクレオチド部分と標的−プローブ複合体の残り部分との間の結合を壊すための操作を意味すると解される。核酸分子の特定の場合において、分離は、逆ハイブリダイゼーション(dehybridisation)とも呼ばれる、DNA、DNA/RNA等の2つの相補鎖の間に形成されたハイブリッドの制御された変性と同じである。
【0093】
分離が標的−プローブ複合体の2つの部分のものである場合のタンパク質分子標的の場合には、分離は、例えば、抗原/抗体複合体(または抗原結合部位を含む抗体の断片)または特異的結合により形成されるリガンド/受容体を壊すことである。
【0094】
プローブの標的への、またはプローブのプローブへの結合に関する「特異的結合」という用語は、当該プローブが特定の標的またはプローブに結合するが、他の標的及びプローブに、とりわけ複合混合物中に存在する他の標的またはプローブに有意に結合しないことを意味する。
【0095】
本明細書で使用されているような「異なるタイプのプローブ」という表現は、異なるポリヌクレオチド配列を有する分子を意味すると解され、当該プローブがさらに非ポリヌクレオチド部分、例えばポリペプチド部分も含む場合、この部分は、それぞれのタイプのプローブに対して異なり、且つある種の標的に対して特異的であり、さらに、それぞれのポリヌクレオチド部分は、他のプローブのポリヌクレオチド部分と異なり、本発明の請求項に記載されている特性を満たす。一次プローブアレイを構成するそれぞれのタイプのプローブは、分析されたもののうちの1つの固有のタイプの標的に対して特異的である。
【0096】
工程c)における、一次プローブの、分子標的との結合後の回収は、粒子、例えば、磁気粒子上に最初に固定化することによって達成され得る。磁気粒子に付着した標的の場合、一次プローブを標的に結合させる工程の後に磁場が印加され、前記一次プローブが回収される。
【0097】
工程c)における、一次プローブの、分子標的との結合後の回収は、「標的−粒子」構成要素から前記プローブを分離した後に、遠心分離により一次プローブを回収することによって達成され得る。
【0098】
本発明の他の特定の実施形態において、分析された混合物中に含まれる分子標的のフィンガープリントを表す一次プローブが、分子標的を担体上に最初に固定化し、次いで分子標的との接触及び特異的結合を可能にする適切な条件下で、一次プローブを担体上で移動させた後に回収される場合、ハイブリダイゼーションされていない一次プローブは担体から除去され、次いで「分子標的−一次プローブ」複合体が分離され、一次プローブが回収される。
【0099】
また、分子標的、特にハイブリダイゼーションされたものにすでに特異的に結合していた一次プローブを定量化することも可能である。この実施例で使用される担体は、特に、シランまたはポリリジンでコーティングされた、例えば、ニトロセルロースで作られた膜である。
【0100】
この方法を、このように種々の用途、例えば、医療診断または農業食品工業品質管理、またはすべての生物学的分析、特に生態学、考古学、または犯罪学の分野において使用することができる。
【0101】
例として、本発明の方法及び範囲は、以下の分析:
−混合物中に存在する核酸分子、例えば、同一または異なる、細胞または細胞群による核酸分子(内容物または転写物)の分析;
−混合物中に含まれるタンパク質、例えば、同一または異なる、細胞または細胞群により産生されるタンパク質の分析;
−同一または異なる、細胞または細胞群により産生される、混合物中に含まれる核酸及びタンパク質の分析;
を可能にする。
【0102】
好ましいプローブ−標的及びプローブ−プローブの対は、特にRNA分子等の相補的配列とハイブリダイゼーションしている核酸、とりわけ特定のオリゴヌクレオチドプローブとハイブリダイゼーションしているメッセンジャーRNA、DNA、またはcDNA、一価抗体(つまり、単一の認識部位を有する)またはそれらの一価機能断片(Fab、パパイン分解による断片、または1つの抗原結合部位を有する一価断片、特に可変一価断片等)を特異的に認識する抗原、あるいはすべての受容体−リガンドまたはリガンド−受容体の対合である。この最後の場合において、一次プローブは、同様に、所定のタイプの分子標的に特異的なポリヌクレオチド部分を含み、いわゆる二次プローブとハイブリダイゼーションすることができる。
【0103】
当業者であれば、単一部位で、分子プローブのポリヌクレオチドに付着した、特異的に認識される構成要素にそれらを付着させることが可能である限り、すべてのタイプの分子標的を分析するようにこの方法を使用することができであろう。
【0104】
こうして定められた方法の特定の一実施形態において、複合混合物中で探索される分子標的は核酸である。
【0105】
本発明の特定の一実施形態において、混合物中の分子標的はトランスクリプトームを表す核酸である。
【0106】
本明細書で使用されているような「トランスクリプトームを表す」という用語は、分析対象の生体試料中の細胞のmRNA(またはRNAの群)と同一または相補的な配列を有する分子標的を含む、分析対象の核酸を意味すると解される。それらは逆転写によって得られ、cDNAとすることができる。これらの配列は、厳しい条件下で、メッセンジャーRNA(またはその相補物)、所定の細胞または細胞群のゲノム核酸配列の転写産物と特異的にハイブリダイゼーションし、且つ前記細胞または細胞群に対する特定の条件で得られる転写産物のものと比例的に等価である。
【0107】
トランスクリプトームを表す核酸を調製する方法は、細胞のmRNAを逆転写するためのポリTプライマーを使用する工程を含む。長いポリAテールを回避するために、5'(T)jX3'(ただし、jはT残基の数であり、jは1よりも大きい)、例えばXがA、C、またはGである5'(T)19X3'等のプライマーから、分析用の試料メッセンジャーRNAの逆転写を実施することができる。逆転写は、このように、AではないポリAテールの後の最初のヌクレオチドから始まって実施される。粒子に付着させたゲノムを表すcDNA試料を得るために、逆転写前に、前述のプライマーを最初に前記粒子に付着させる。逆転写の産物を、同様に、担体上の逆転写の後に担体に付着させてよい。グラフティングは、5'-ビオチン化5'(T)jX3'プライマー、例えば5'(T)19X3'を使用してビオチン−アビジンカップリングによって実施され得る(粒子と標的との間の化学的錯体化を使用することも可能である)。
【0108】
本発明の他の実施形態において、配列ポリTを含むプライマーは、混合されたペプチド核酸−核酸(PNA−核酸)プライマーである。
【0109】
図19は、混合物の分子標的が、トランスクリプトーム(mRNA)を表す核酸であり、これらの分子標的が細胞溶解工程10によって得られる、本発明に係る方法を実施する例を示している。
【0110】
これらの分子標的12は、磁気粒子に付着している混合されたPNAプライマー14ペプチド核酸−核酸と結合する。XがA、G、及びCのうちから選ばれる塩基である、(PNAポリT)X型のプライマー。このようなプライマーを、図18d、18e、及び18fに示す。PNAと核酸との間の結合は、核酸5'リン酸塩中の酸素原子とPNAの末端COOH基との間のエステル結合でなされる。プライマーの磁気粒子への付着は、例えば、ビオチンを例えばPNAの末端NH2基に付加することによって、且つ磁気粒子に付着されたアビジンまたはストレプトアビジンとの相互作用によって達成され、アビジン(またはストレプトアビジン)/ビオチン結合が作られることを可能にする。
【0111】
これらの分子は核酸に対し大きな親和性を有するため、それらは、標的の混合物中のメッセンジャーRNAのすべてのポリAテールを結合させる。次いで、プライマーによって保持されない分子標的17を回収し得るように、磁石16または類似物により印加された磁場を使用することによって、磁気粒子を担体上に固定化する。
【0112】
次いで、mRNAの逆転写18は、NH2-(PNA-ポリT)(X)3'、例えば、NH2-(PNA-T)19(X)3'(ただし、Xは、A、C、またはGヌクレオチド残基とすることができる)等のプライマーにより実施され得る。逆転写に対しより効果的な他の構成は、NH2-(PNA-ポリT)XY3'、例えばNH2-(PNA-T)19X(Y)23'(ただし、Yは、ヌクレオチドA、T、G、Cのいずれかを表す)を使用する工程を含む。こうして、逆転写は、AではないポリAテールの後の最初のヌクレオチドから始まって実施される。
【0113】
次いで、形成された複合体を変性し、磁気粒子を再び磁場により固定化して、メッセンジャーRNA分子19を回収できるようにする。従って、トランスクリプトームを表すcDNAの試料20は、当該粒子に付着して得られる。
【0114】
あるいは、PNAを使用してRNAを結合させることで、逆転写工程(図中の工程18及び19)の必要性を排除し、従って、プローブは、PNAに付着しているRNAに直接ハイブリダイゼーションされる。
【0115】
試料20を、それぞれの配列、質量、及びサイズが既知のポリヌクレオチドである一次プローブ22のアレイと接触させる。ポリヌクレオチド配列はすべて異なり、それらの質量は、同一または異なってよく、それらのサイズも同様に、同一または異なってよい。
【0116】
磁気粒子上に担持されるそれぞれのポリヌクレオチドは、1つのタイプの一次プローブとのハイブリダイゼーションで特異的に結合し、粒子−プライマー/cDNA−一次プローブ複合体24を形成する。一次プローブのサイズがハイブリダイゼーションに影響を及ぼさないように選択された熱力学的条件下で、ハイブリダイゼーションを実施する。このために、穏やかな温度勾配、または例えば、温度プラトーまでの連続的な冷却及び加温の後に、溶媒の温度を徐々に下げ、例えば、連続的な冷却及び加熱のプラトー領域(約10秒から数分またはそれ以上、最大数時間までであってよい、定められた持続時間の)を有する70℃の温度から40℃の温度まで当該温度を下げる。例として、70℃の温度を3℃だけ下げ、冷却プラトー領域として時間tの間維持してよく、次いで、温度67℃を1.5℃だけ高め、加熱プラトー領域として時間tの間維持する。これらの工程は、溶媒の温度が40℃に達するまで繰り返される。
【0117】
cDNAに特異的に結合していない一次プローブ26は、前述のように混合物から回収される。次に、これらの複合体は変性され、次いで、cDNAのフィンガープリントを表す一次プローブ28が、分析用に回収される。
【0118】
一次プローブが同じサイズ及び同じ質量である場合、分析は、担体上に固定化された二次プローブに一次プローブをハイブリダイゼーションさせ、その後、例えばインピーダンスの変化を測定することにより一次プローブを検出することによって実施され得る。
【0119】
一次プローブが異なるサイズ及び/または質量を有する場合、分析は、キャピラリー電気泳動、クロマトグラフィ、または質量分析法によって実施され得る。
【0120】
特定の一実施形態において、それぞれのタイプの一次プローブは、特定の核酸にハイブリダイゼーションし得るが、ヌクレアーゼ活性に対し耐性のあるポリヌクレオチド(またはポリヌクレオチド部分)から形成される。
【0121】
このポリヌクレオチドは、核酸分子、PNA分子(ペプチド核酸)、または核酸/PNAの複合混合物を含む、またはそれらから構成され得(図18a及び18b)、2つの分子の結合は、例えば、PNA cooP(o3)核酸結合によって達成される。同様に、当該ポリヌクレオチドは、配列が修飾されている核酸を含んでよく、最初または最後の残基は、例えばチオ−ジエステル結合、またはリン酸ジエステル結合の代わりに、ホスホチオエート結合によって付加される(図18c)。
【0122】
それぞれのタイプの一次プローブのポリヌクレオチド配列は、分析対象の分子標的の混合物中に存在する単一の核酸配列に特異的である(あるいは、標的が核酸でない場合、二次プローブによって特異的に認識されるようにすることができる)。分子標的の混合物中に存在する核酸のサイズ及び/または質量は、分子標的にハイブリダイゼーションしたポリヌクレオチドの配列及びサイズを知ることによって決定され得る。
【0123】
一次プローブを、同様に、前述のように磁気粒子に付着させることができる。当該ポリヌクレオチドが核酸/PNAの混合された複合体である場合、都合のよいことに、PNAまたはチオールの末端は遊離しており、当該高分子はすべての酵素分解から保護される。磁気粒子に付着したポリヌクレオチドの量は、複合混合物中に存在すると予想される分子標的の量よりも多いかもしれない。好ましくは、ポリヌクレオチド配列は等モルである。
【0124】
一次プローブは、それらの質量、それらのサイズ、または化学修飾(それらの塩基のメチル化、エチル化)によって同定可能なPNAから構成され得る。
【0125】
分析する分子標的の混合物を、一次プローブによって機能化された粒子と接触させ、分子標的が一次プローブの相補的部分とハイブリダイゼーションするようにする。本発明の特定の一実施形態において、粒子/一次プローブ/標的複合体を、次いで、NF sp.ヌクレアーゼ等の一本鎖核酸の一部を消化する「エンド」及び/または「エキソ」ヌクレアーゼで処理する。それによって、すべての一本鎖核酸が消化される。次いで、粒子/一次プローブ/標的複合体を酵素から分離して、洗浄し(酵素は、熱または不活性化剤によって不活性化され得る)、当該複合体を変性させて、溶液中に分子標的を放出させ、それぞれの分子標的をハイブリダイゼーションする一次プローブのサイズによって制御する。
【0126】
次いで、それぞれの分子標的を、そのサイズ及び/または質量によって同定することができる。一次プローブが突然変異を受け、それにもかかわらず分子標的にハイブリダイゼーションできる場合(突然変異がプローブの末端にないことを条件として)、この分子標的について観察された質量は、その結果変化し、突然変異の同定が可能になる。分子標的の複合混合物を質量分析法またはクロマトグラフィによって分析し、それぞれの分子標的を同定し、定量化することができる。
【0127】
機能化された磁気粒子は、分子標的の他の複合混合物を分析するために再利用することができる。
【0128】
この原理を、単純な核酸配列からなる一次プローブの変種において使用することができるが、ただし、当該系(粒子−核酸)はより脆く、1回だけ使用することができる。
【0129】
分子標的が核酸である場合、一次プローブアレイを構成するそれぞれのタイプの一次プローブは、分析対象の分子標的中の1つのタイプの標的に特異的且つ相補的である。
【0130】
核酸分子標的に適用される、本発明に係る方法の範囲において、化学量論的混合物の形態の一次プローブは、厳しい条件下で、核酸分子標的にハイブリダイゼーションする。これらの条件は、プローブのサイズに無関係である。
【0131】
当該ハイブリダイゼーションは、熱力学的条件、つまり、90℃から60℃の温度勾配、連続冷却及び加熱プラトーで実施される(図1)。
【0132】
非特異的ハイブリダイゼーションを最小限にするために、標的及びプローブが核酸分子である場合、XがA、T、G、またはCであり、n個のヌクレオチドについて可能なすべての配列組み合わせにおいて、ヌクレオチドの数nが3から7まで変化する、小さなヌクレオチド高分子(X)nの存在下で、標的及びプローブをハイブリダイゼーションさせ、混合物に加える。
【0133】
第1の例において、小さな高分子は、プローブ及び/または標的配列にハイブリダイゼーションする。当該プローブは特定の標的を認識し、当該小さな高分子に取って代わり、前記標的にハイブリダイゼーションする。
【0134】
特定の一実施例において、一次プローブのアレイ中のプローブはすべて、均質なサイズを有する、特に同一であり、それぞれは既知の配列を有する。それによって、それぞれのプローブによって生じる測定のばらつきが決定される。
【0135】
例えば、一次プローブアレイ中のすべてのプローブは、20から150個のヌクレオチド、例えば30、40、50個のヌクレオチド、またはこれらの制限範囲内に含まれるすべてのサイズを含むように選択された同一サイズを有する。
【0136】
工程d)による分析の範囲内において、核酸配列ハイブリダイゼーションによってプローブ−標的複合体を形成した後に溶出された一次プローブの検出は、:
e.工程c)において分離、回収(溶出)された一次プローブを、異なるタイプの二次ポリヌクレオチドと接触させる工程であって、それぞれのタイプの二次プローブは1つのタイプの一次プローブとの特異的ハイブリダイゼーションによって結合し得る工程;
f.検出からの分子標的の同定、並びに/あるいは二次プローブとハイブリダイゼーションした一次プローブの回収及び/または分析を実施した後に達成され得る。
【0137】
これらの工程を、2D電子チップに対して以下に記載されるようなプローブスポットマトリックスを用いて実施することができる。
【0138】
逆ハイブリダイゼーションによる、一次プローブ及び核酸分子標的の分離は、温度を上昇させることにより達成され得る。
【0139】
分子標的との特異的結合の後に回収された一次プローブの検出、及び/または回収、及び/または分析する工程は、担体(例えば、チップ)上に固定化された二次プローブと接触している一次プローブを混合することによって、または一次プローブを単純に拡散させる、または例えば、電位を印加することにより活発に混合することによって達成され得る。電位の印加は、電極ネットワークを用いて実施される。
【0140】
検出で二次プローブを活動させる場合、一次及び二次プローブの間に形成されたハイブリッドを、例えば、特に一次プローブと二次プローブのハイブリダイゼーションにより、結合によって引き起こされるインピーダンス変化を測定することによって探索する。インピーダンス変化の測定は、後述のようなチップ(2D電子チップ)を含むデバイスを使用することによって実施され得る。
【0141】
核酸分子、特にDNAの場合、核酸分子の曲がり、及びハイブリダイゼーションにより生じるものと類似したインピーダンスの変動をもたらす、分子内ハイブリダイゼーションによる測定人為結果を最小限にするために、できる限り分子コンフォメーションを保持することが望ましい。DNAコンフォメーションを保持する一方法は、分子コーミングによってITO電極上にそれを吸着させる工程を含む。特に核酸プローブ、とりわけDNAを前述のように処理する。
【0142】
核酸の分子コーミング及び電極表面へのそれらの吸着を助けるため、ITO(または他の導電性材料)電極にポリイミド(例えば、Kapton(登録商標))の層をコーティングすることができる(厚さ約10から100nm)。Kapton(登録商標)層に、核酸分子の配向をよくするために、適宜、うねを作るとよい。
【0143】
電極にそって延びた分子は、曲がる、またはそれ自身とハイブリダイゼーションすることができない。しかし、それらは溶液中の相補的配列と依然としてハイブリダイゼーションすることができる。
【0144】
他の解決方法は、それらの末端を電極に固定することによって、機能化電極と非機能化電極との間でプローブ分子(二次プローブ)を伸ばす工程を含む。使用されるオリゴヌクレオチドプローブを、5'及び3'の両方の末端で機能化し、5'に対し選択された機能は3'に対するものと異なる。この2タイプの機能は、異なる活性化及び/または触媒作用である。例えば、それらは、5'Hs、化学または発光活性を有するNH2基、及び電気触媒に対する3'ピロール基から選択される。官能及び非官能電極セットの間の距離は、分子が伸ばされ、特定の曲がりを有さず、または分子内ハイブリダイゼーションを可能にしないように選択される。
【0145】
代替方法は、プローブの5'末端を機能化し、それを機能化電極に結合させ、それを短い3'配列(10から20塩基)に付加する(3'付加)。3'付加の配列は、標的とハイブリダイゼーションしないように特異的に選択される。3'付加に相補的な配列を、それに面している非機能化電極に結合させる。当該プローブを、化学結合を用いることによってそれらの5'末端により機能化電極セットに、及び付加物と電極に固定されている相補的配列との間に形成される10から20塩基の二本鎖を使用することによって3'末端により非機能化電極に固定する。それにより、プローブは2つの電極の間に保持され、分子内ハイブリダイゼーションと曲がりを最小限に抑える。
【0146】
プローブが付着されている電極チップは、既存のマイクロアレイで実施されるように、それぞれのスポットにおいてプローブ標的(混合物中の分子標的の分子フィンガープリントを形成する溶出された一次プローブ)の単純拡散によって受動的にハイブリダイゼーションされ得る。しかし、能動的ハイブリダイゼーションが好ましい。
【0147】
チップがハイブリダイゼーションされると、それぞれのスポットにおけるインピーダンスの変動により、結合された標的の量の測定が可能になる。上側(機能化)電極と下側(非機能化)電極の侵入(上位レベルへの)との間の交差は、固有であり、1つの単一スポットに対応する。インピーダンス測定は、電位差及び電流を、1つ下及び1つ上のレベルの電極により形成される可能なすべての電極対に連続的に印加することによって、スポット毎に実施される。
【0148】
材料中の局所的構造欠陥により、一方の電極と他方の電極との間に散在性抵抗が生じ、インピーダンス読み取りに人為結果が入り込む可能性がある。また、DNA分子を付着させるための電極の機能化は、測定に干渉することがある。ITO、ATO、FTO、ZNO(適宜、ポリイミドまたはKapton(登録商標)層で覆われる)等の酸化スズ及び酸化亜鉛合金を使用すると、こうした問題を最小限に抑えられる。これらの合金でメッキする方法は、きわめて標準的で再現性があり、欠陥が比較的少ない電極を形成する。
【0149】
自由分子は、電極ネットワークにより形成される電界の活性により除去される。当該測定はすべて、すべての荷電分子を取り扱うことを可能にする電極セットを使用することによって、ハイブリダイゼーションまたは錯体化反応の間に実施され得る。
【0150】
このアプローチに関して、スポットを構成する二次プローブ分子の数、及び特異的に結合する、特にハイブリダイゼーションする一次プローブの数を測定することが可能である。これら2つの測定により、溶液中に最初に存在している分子標的の実際の濃度を決定することが可能である。これは、一次及び二次プローブのサイズが正確に測定され、同一であり、且つそれらの配列が既知であるため、定量的であるために実施された測定、例えば蛍光測定を標準化することが可能になるからである。
【0151】
同一サイズの二次プローブ、または適宜PNAプローブを有する1つのチップを形成することによって測定を標準化することが可能である。一次プローブのサイズは、前述のように、一本鎖核酸を消化するヌクレアーゼを用いた処理によって、チップ上のハイブリダイゼーション後の二次プローブのものに正確に対応するように標準化される。
【0152】
ネットワークは、ITO等の透明材料から作られた機能化電極からなる。このようにして、金電極からの干渉蛍光は回避される。このコネクタ技術について使用できる材料として、ITO(酸化インジウム及び酸化スズ)、ATO、FTO、ZNO、または同等の合金等の可視域で透明な合金を挙げることができる。これらの合金は求電子性が非常に高いため、絶縁されなければならない(実施例1)。
【0153】
形成された一次プローブ−二次プローブのハイブリッドを検出する他の方法は、当該ハイブリッドを含むチップの両側に置かれた偏光フィルターを使用する工程を含む(図2)。
【0154】
ヘリックスBまたはヘリックスA中に編成されたDNA二本鎖は、光の偏光(振動)の平面を変える特性を有する鏡像異性である。光の偏差角αは、本質的に、DNA二重らせんを構成する塩基対の数に依存する。偏差角αは、DNA二重らせんが逆ハイブリダイゼーションされ、二重らせんが破壊された場合になくなる。
【0155】
この特性は、後述の電子チップデバイス(電子チップ)上のそれぞれのプローブスポットにおいて、ハイブリダイゼーションの量を定量化するために使用することができる。
【0156】
電子チップのITO電極は透明であり、ガラス、石英、または他の透明材料の薄板上に形成することができる。
【0157】
一般に、電子チップは、ITO電極が堆積し、適宜ポリイミド層で覆われている透明基板で作られる。それぞれのITO電極上に、スポット中に編成されたプローブが付着し、それぞれのスポットは、関連するキャピラリーネットワーク中のキャピラリーの空洞中にある。スポットに付着しているそれぞれの電極の反対側に、他の透明担体上に置かれた電極がある。そのため、0°に対応する角度を有する偏光された光線は、第1の透明担体とその電極を横切り、スポットに到達し得る。そのようにして、光は二本鎖DNA分子(ハイブリダイゼーションされた分子)によりα°の角度まで回転し、電極及び反対側の透明基板を通して出てくる。α°の偏向を受けた光の量は、スポット上に二重らせんを形成するハイブリッドの数に正確に比例し、従って、プローブにハイブリダイゼーションした標的の量に正確に比例する。
【0158】
α°の角度だけ偏向された光は、第2の電極及び第2の透明基板を横切った後、出てくる際に分析される。
【0159】
0°(他の特定の原点に変更できる任意の原点)で偏光した光を得るために、0°で偏光されるフィルターは、電極が固定されている透明担体の外面に配置される。
【0160】
α°に配向されている第2の偏光フィルターは、反対側の他の透明電極担体の外面上に配置される(図を参照)。光は、可視スペクトルレーザーまたは他の白色光源から生じる。
【0161】
一般に、それに対して、担体が透明であり、プローブ及び標的が吸収しないすべての光を使用することができる。この検出法は、偏光平面がα°のそれらの間の角度で食い違っている2つの平面偏光フィルターの間に限定されている従来の核酸チップに適用され得る。
【0162】
2つの偏光フィルターは、検出効率を高めるために、互いに関して移動することができ、2つの偏光平面の間の角度を修正することができる。この角度変化により、光の異なる偏向を測定することができ、そのようにして、1つのスポットでハイブリダイゼーションされた標的配列(一次プローブ−二次プローブ)の均質性を測定することができる。従って、標的の多様性を決定することが可能である。
【0163】
これは、標的(ここでは、一次プローブ)とプローブ(ここでは、二次プローブ)との間の配列の違いにより、形成された二重らせんを折り畳む場所においてミスマッチが生じ、それによって、分子の鏡像異性が変化するためである。従って、光偏向の角度は、それぞれの鏡像異性の作用に応じて修正される。それぞれの角度の測定により、それぞれの集団に関する情報が得られる。
【0164】
特定の用途の他の実施例において、一次プローブと二次プローブとの間のハイブリダイゼーションにおける結合の検出は、一次プローブと二次プローブとの間に形成される二本鎖ハイブリッド中のリガンド、または一本鎖核酸リガンドの蛍光を検出することによって実施され得る。少なくとも1つの検出器を使用して、一次及び二次プローブのハイブリダイゼーションによって生じる蛍光強度を測定する。
【0165】
一次プローブに標識付けせずに、蛍光リガンドを使用することによって、チップ上に形成される一次プローブ−二次プローブ複合体の量を測定することができる。DNAチップに対して、アクリジンを使用することができ、特に、アクリジンオレンジはプラスに帯電し、DNA中に挿入される。アクリジンオレンジにより、一本鎖または二重二本鎖DNAの差次標識が可能になる。
【0166】
他の特定の実施例において、二次プローブにハイブリダイゼーションした一次プローブの検出は、後述の2D電子チップに適合されたPSRにより実施される。少なくとも1つの検出器を使用して、PSRにより、一次及び二次プローブのハイブリダイゼーションを測定する。
【0167】
一次プローブ/二次プローブ複合体により構成される標的を、機能化電極のネットワークで直接定量化することができる。三面体プリズムが機能化電極のネットワーク中の電極のそれぞれのラインの背部に取付けられ、PSR測定を可能にする。
【0168】
本発明の他の特徴点は、分析に対しては前述の方法の実施、及び標的がポリペプチドまたは受容体−リガンドタイプの特異的複合体を形成し得る他の標的である場合における、複合混合物中の分子標的の定量化に関する。
【0169】
特に核酸標的の検出について前述の方法の工程a)及びb)の実施形態は、原理上、適用可能である。そのため、分析対象の複合混合物中のポリペプチド標的を、粒子(1つ以上のタイプの磁気または他の何らか)に付着させ、溶液中の一次プローブと接触させることができる。例えば、ITOコーティング磁気ビーズを使用することが可能である。異なるタイプのタンパク質を分析する場合、それらを異なるタイプの粒子に付着させることができる。
【0170】
前記のように、使用される一次プローブのアレイは、ポリペプチド部分及びポリヌクレオチド部分を含むプローブを組み込んでいる。一次プローブアレイのプローブに特異的に結合している分子標的の定量化は、プローブ−標的複合体中のプローブのポリヌクレオチド部分を回収した後に実施される。
【0171】
それぞれのタイプのプローブのポリペプチド部分及びポリヌクレオチド部分は、単一のタイプの標的に特異的であるため、プローブのポリヌクレオチド部分の同定及び定量化は、分子標的の存在及び量を示している。
【0172】
前述の用語及び条件に従って、プローブのポリヌクレオチド部分は、プローブ間で異なる質量及び/またはサイズ並びに同一若しくは異なる配列、あるいは異なる配列及び均質若しくは同一のサイズを有する。考察中の違いは、適切な検出システムを選択することを可能にする。従って、ポリヌクレオチド部分は、例えば、配列(二次プローブとのハイブリダイゼーション)、サイズ(電気泳動法、クロマトグラフィ)、または質量(質量分析法)におけるそれらの違いを示し得る任意の手段によって検出され得る。
【0173】
標的がタンパク質である場合、一次プローブは、標的、例えば抗原部位を中に備える、または含む抗体または機能的抗体断片、あるいは標的タンパク質に対する親和性を有する受容体に特異的に結合する能力を有する化合物である。
【0174】
特定の一実施例において、一次プローブは、標的タンパク質に対する特異親和性を有する前記化合物の部分に付着したポリヌクレオチドによって構成される部分を含む。このポリヌクレオチドは、それぞれの化合物に対して特異的な識別子(そうでなければ、タグとして知られる)の意味で標識を構成する。このようなポリヌクレオチドは、実施例において示されている。それらを使用することで、それらがタンパク質を結合した後に分離された一次プローブを検出することが可能になる。
【0175】
例えば、プロテオーム中のポリペプチド分子標的を検出する工程を含む本発明のこの特徴点において、本発明に係る方法の工程a)は、例えば、本発明の説明に従って分析用のタンパク質を含み得る混合物を、一価抗体、あるいは単一抗原結合部位、例えば、Fab断片またはそれらが単一抗原認識部位を含むように変異鎖の全部または一部から形成される任意の分子を中に備えるまたは含む一価抗体の断片のアレイからなる異なるタイプのアレイと接触させる工程を含み、前記タンパク質と前記抗体または抗体断片の特異的結合を可能にする条件下で、それぞれが配列タグと呼ばれる特定の核酸配列に結合し、アレイ中のそれぞれのタイプの抗体または抗体断片が、分析対象の単一のタイプのタンパク質との特異結合を形成し得る。
【0176】
標的がタンパク質である場合、一次プローブと標的の結合により形成される複合体の工程c)での分離は、当業者に既知の酵素法により達成され得る。特定の一実施例において、本発明に係る方法の工程c)は、特異的結合によって結合したタンパク質と抗体または抗体断片を分離し、次いで、合致する抗体または抗体断片のそれぞれの配列タグを分離し、分析対象のタンパク質の中から選択された結合した標的のフィンガープリントを表す配列タグのアレイを回収する工程を含む。
【0177】
本発明に係る方法の工程d)は、検出によりタンパク質を同定する工程、及び/またはそれらの配列により区別できる、同一のサイズであるタグ、あるいは反対に、それらの異なるサイズ及び/または質量により区別できるタグを回収し、及び/または分析する工程を含む。
【0178】
特定の一実施例において、タグが異なる配列を有するが、サイズが同じである場合、それらは、核酸分子標的について前述されているものと同じ方法を使用することによって検出される。特に、タグに特異的な二次プローブが使用される。
【0179】
従って、タグの特性は、ヌクレオチド標的とハイブリダイゼーションすることを意図されているポリヌクレオチド一次プローブについて前述されているのと同じである。
【0180】
一次プローブアレイが、ポリヌクレオチド部分の質量が異なるプローブからなる場合、当該アレイは、10を超える、特に50を超える、100を超える、または1000を超える、さらに10000または20000を超えるプローブを含み、そのポリヌクレオチドタグがすべて異なる質量、例えば、30、40、50、100、500、1000、2000、5000、またはそれ以上、あるいはこれらの限界値のうちの2つ値の範囲内にある値により形成される区間に含まれるプローブの数を有するような方法で構成され得る。
【0181】
タグの検出(プローブはただ1つのタグで識別される)は、任意の質量検出法、例えば、質量分析法によって達成され得る。
【0182】
他の特定の実施例において、タグ(プローブはただ1つのタグで識別される)は、それらのサイズの違いによって分析される。従って、検出は、電気泳動法またはクロマトグラフィによるものであってよい。
【0183】
さらに、これらのタグ配列は、メチルまたはエチル基を残基中の塩基に付加することにより化学修飾され、従って、前述されているものに従って、一次プローブを、それらの質量によって、またはその化学修飾によって同定することが可能である。
【0184】
例えば、気相または液体クロマトグラフィの間の保持時間によって、一般に、タグ配列及び一次プローブポリヌクレオチドを同定し、且つ核酸の光学的吸収、天然蛍光によって、またはクロマトグラフィの終わりに生成される血漿中の亜リン酸を測定する(燐光蛍光または質量分析法を使用して)ことによって、それらを定量化することが可能である。
【0185】
従って、一次プローブアレイは、ポリヌクレオチドタグがすべて異なるサイズ、例えば、30、40、50、100、500、1000、2000、5000、またはそれ以上の、あるいはこれらの限界値のうちの2つ値の範囲内にある値により形成される区間に含まれるプローブの数を有する、10を超える、特に50を超える、100を超える、または1000を超える、または10000若しくは20000を超える数のプローブを有するような方法で構成される。
【0186】
本発明の他の目的は、記載される方法を実施するためのデバイスである。
【0187】
本発明に係るデバイスは、例えば、:
−適宜、分析対象の混合物の核酸及び/またはタンパク質の分子標的に強く結合し得る、粒子群、例えば磁気粒子群;
−溶液中の、または使用のために溶解され得る、化学量論的混合物の形態の、本発明の要請で与えられた記載に対応する、異なるタイプの一次プローブのアレイであって、前記プローブはポリヌクレオチドから作られるか、またはそれぞれのプローブに特異的なポリヌクレオチドを含み、アレイを構成するそれぞれのタイプの一次プローブは、前記一次プローブ及び前記分子標的が接触させられる場合に、分析対象の1つのタイプの分子標的との特異的結合によって結合し得るアレイ;及び必要な場合、
−分析対象の分子標的のフィンガープリントを表す一次プローブのアレイを取得するために、特異的結合によって結合している一次プローブ及び分子標的を分離する手段、及び回収する手段;並びに/あるいは必要な場合、
−一次プローブのアレイの一次プローブのポリヌクレオチド部分を特異的に認識し得る二次プローブのアレイ;及び/または必要な場合、
−それぞれのスポットのオリゴヌクレオチドプローブ(二次プローブのアレイを構成する)が一次プローブタイプの配列またはそれぞれのタグの相補的配列を含む、オリゴヌクレオチドマイクロアレイ(例えば、2D電子チップタイプの);
からなる。
【0188】
核酸分析の状況において、一次プローブと分子標的を分離し、且つ特に逆ハイブリダイゼーションする手段は、ハイブリッドの2本鎖を分離するための、温度を上昇させる手段手段であってよい。
【0189】
タンパク質分析の状況において、分子標的から一次プローブを分離する手段は、特に、酵素分離を実施するための試薬であってよい。
【0190】
分子標的から分離された一次プローブを回収するための手段は、標的が固定化されている磁気粒子、及び前記一次プローブと前記標的を含む溶液中で磁界を発生し得る手段を含んでよい。
【0191】
分子標的から分離された一次プローブを回収するための手段は、標的が固定化されている粒子、及び前記一次プローブと前記標的を含む溶液中で遠心力を引き起こす手段を含んでよい。
【0192】
当該方法を、例えば、細胞抽出物から採取した混合物中の、種々のタンパク質及びそれらの修飾物の濃度を測定するために使用される種々の形態をとり得る。
【0193】
分子標的がタンパク質である場合、当該デバイスは、例として以下からなる。
1)標的を含む分析対象の混合物のタンパク質に強く結合し得る粒子群(特に、磁気または表面)。典型的には、ポリスチレン、ナイロン(登録商標)、ニトロセルロース等のビーズまたは膜を挙げることができる。
2)それぞれのタイプの抗体が、核酸またはポリヌクレオチド(配列タグ)の特定の配列に強く結合(例えば、共有結合)している、例えば、一価抗体または単一抗体結合部位を含む抗体断片からなる一次プローブの化学量論的混合物。当該配列タグは、例えば、特異的に切断し得る1つまたは2つの一般的配列、及び前述のそれぞれのタイプの抗体または抗体断片に対する固有且つ特異的な配列に分けられる。適宜的に、
3)それぞれのスポットのオリゴヌクレオチドプローブ(二次プローブのアレイを構成する)が、抗体の化学量論的混合物の抗体のタイプのうちの1つの配列タグの特定の部分に相補的な配列を含む、オリゴヌクレオチドチップ。
【0194】
定量分析に関して、それぞれのプローブが1つの標的と単一のポリヌクレオチドタグに対する単一結合部位を含むことが不可欠である。抗体またはFab断片等のそれらの断片は、タグに結合し得る結合部位を有するため適している。
【0195】
例えば、細胞抽出物から始めると、タンパク質は磁気ポリスチレン粒子に結合する。当該ポリスチレンは、永続的にタンパク質、特に疎水性タンパク質を吸着する能力を有する。ビーズの飽和を回避するために、タンパク質の濃度と比較して過剰量のビーズが使われ、これにより立体障害が制限される。所望の調査に応じて、タンパク質を変性させる、または変性させないでよい。ビーズ及び結合タンパク質は、次いで:
1)磁界により沈殿され;
2)上清から単離され;
3)生理食塩水緩衝液中で洗浄され、回収される。
【0196】
次いで、当該ビーズを、調査されている系に対して不活性であるタンパク質で飽和させる。例えば、ウシ血清アルブミン(ウシ由来でない標的分子に関する調査の場合)、調査される種に対し外来性の小さなサイズのタンパク質(Kunixt阻害剤等)、さもなければ脂肪族鎖アミノ酸(ロイシン等)が使用される。工程1から3が、再び実施される。次いで、飽和ビーズ−結合タンパク質の完全系を、配列タグを有する抗体の等モル混合物と一緒にし、複合体を形成する。当該抗体は、ビーズ上に固定化されているそれらの標的タンパク質に特異的に結合する。それぞれのタイプの結合抗体の量は、ビーズ上に吸着したそれぞれのタイプのタンパク質の量に比例する。
【0197】
立体障害を減らし、ただしとりわけ定量化を考慮するために、当該抗体は一価でなければならないか、あるいは例えば、酵素消化、特にパパイン、または合成若しくは組み換え断片により得られた一価抗体断片(または半抗体)で置き換えられなければならない。それぞれの半抗体は、核酸配列で「タグ付け」される。工程1から3が、再び実施される。それによって、反応している抗体(または半抗体)は、反応していないものから単離、分離される。核酸タグは、導入された切断配列を使用して切り離される。これは、例えば、回文配列または抗体酵素の標的配列であってよい。回文配列の場合、2つの特定の解決策を挙げることができる。
【0198】
−当該回文配列を、抗体と特定配列タグとの間に導入する。配列タグを抗体から分離するために、対応する制限酵素とともに切断配列に相補的な溶媒に配列を単純に加え、これにより特定配列タグから抗体を分離することが可能になる。
【0199】
−2つの切断配列を、抗体と特定配列タグとの間、及び配列タグの末端にそれぞれ導入し、これら2つの配列が互いに相補的となるようにする。ハイブリダイゼーションを行う際に、それらは、溶媒中にその後導入される酵素に対して特異的切断部位を形成する。次いで、特定配列タグが溶液中に放出される。
【0200】
それらが抗体から分離されると、当該配列タグは、その量がビーズ上に保持されている抗体のタイプの量に比例し、従って分析された細胞抽出物中に存在する種々のタンパク質及びそれらの修飾物に比例する、溶液中のオリゴヌクレオチドの混合物を供給する。得られたヌクレオチドの混合物は、従来のDNAチップまたは前述のようなチップ上で分析され得る。
【0201】
一次プローブのアレイ(ポリペプチド部分及びポリヌクレオチドタグを含む)が多数の異なるタイプの一次プローブを含む場合、配列タグは、それらを区別できるように、大きく、また化学修飾を含む必要がある。しかし、配列タグ及びそれらの修飾のサイズが大きいと、結合部位がマスクされるため一次プローブと分子標的との間の結合が妨げられる可能性がある。さらに、抗体またはFab抗体断片へ20塩基を超えるヌクレオチド配列の効率的にグラフトすることが非常に困難である。
【0202】
この問題に対処するために、図20に示されているように、タグ配列は、約10から20個の塩基(好ましくは18個)を含み、これにより410個から420個の異なる配列を作製することが可能になる。タグを認識するために、「レポートプローブ」として知られる等モルプローブの混合物が調製され、それぞれのレポートプローブは、一方で、1つのタイプの一次プローブのタグに相補的な配列、また他方で任意の配列タグを認識しない可変サイズの配列を含む。それぞれのレポートプローブは、前述のように、そのサイズ及び/または質量により、並びに/あるいはそのクロマトグラフ特性により明白に認識されるように定められる。
【0203】
図20は、混合物の分子標的が、プロテオームを表すタンパク質であり、これらの分子標的が細胞溶解工程40で得られる、本発明に係る方法の実施形態の一実施例を示している。
【0204】
これらの分子標的42は、前述のように、分子標的に結合し得る粒子44と混合される。当該粒子は、磁石46または類似物により印加される磁界を使用することによって担体上に固定化され、粒子に結合していない分子標的48が除去される。
【0205】
次いで、分子標的42が一次プローブ36と混合され、分子標的は一次プローブに特異的に結合し、粒子/分子標的/一次プローブ/レポートプローブ複合体50を形成する。
【0206】
分子標的に特異結合していない一次プローブ52を排除した後、粒子/分子標的/一次プローブ/レポートプローブ複合体は単離且つ変性され、溶解しているレポートプローブ54は、粒子/分子標的/一次プローブ複合体から単離される。当該溶液のレポートプローブ組成は、粒子上に保持されている分子標的のフィンガープリントを表し、混合物の組成及び定量化は、例えば、質量分析法、クロマトグラフィ、チップ読み取り等によって実施される。
【0207】
変更形態として、レポートプローブを一次プローブと接触させる代わりに、レポートプローブが一次プローブの対応するタグとハイブリダイゼーションし、それらを飽和させるように、それらを粒子/分子標的/一次プローブ複合体と接触させることができる。
【0208】
当該タグは、都合のよいことに、配列が既知であり、それらのNH2末端において、ペプチド結合により抗体のFab断片のCOOH端に付加されるPNA分子であってよい。
【0209】
本発明はさらに、前ページに記載されている種々の実施形態に従って、本発明に係る分子標的を分析する方法の工程c)で回収される一次プローブを分析する工程d)を実施するためのデバイスに関するものであって、:
−一次プローブを循環させることができるキャピラリーネットワーク;
−キャピラリーネットワークと接触するようにされている、スポット中に編成された二次プローブのマトリックス;
−二次プローブが結合している、機能化電極として知られる電極のネットワークであって、スポットマトリックスのスポットのそれぞれのラインが前記ネットワークの機能化電極のうちの1つに結合するように配置されているネットワーク;
からなる。
【0210】
当該デバイスは、分子標的と一次プローブとの特異結合の工程を実施した後、且つ分子標的のフィンガープリントを作る際に形成される複合体中で一次プローブを分離した後に実施される。
【0211】
このデバイスは、例えば、前述のような2D電子チップとして知られるチップであり、当該チップは、電極の少なくとも1つのアレイに関連付けられている、スポット中に編成された生体プローブの二次元マトリックス(二次プローブのアレイ)を含む。当該マトリックスは、2つのリザーバー(それらの末端のそれぞれで1つ)により相互接続された平行なキャピラリーのネットワーク中に含まれる。
【0212】
本明細書で使用されているような「キャピラリー」という用語は、直径1ミリメートル未満、好ましくは1から100μmの範囲内の、流体を循環させることができる任意の適切な導管を意味すると解される。
【0213】
当該キャピラリーネットワークは、当業に既知の、シリカ用の酸エッチング法またはプラスチック用のレーザー加工を用いて、例えば、シリカ、石英、プラスチック(例えば、プレキシグラス)、PDMS等をくりぬくか、または成型で作られる。
【0214】
好ましい一実施形態において、それぞれのキャピラリーネットワークは、適切な材料の板の厚さでくりぬかれる。
【0215】
一般に、キャピラリーネットワークは、ポリアクリルアミドゲル、またはそれらの移動の間に一次プローブの拡散を調節及び制御することを可能にする任意の他のゲル等のゲル、特にキャピラリー電気泳動法に使用される液体ゲルで充填されてよい。
【0216】
一次プローブは溶液または流体中に含まれてよく、前記流体または前記溶液はキャピラリー中を循環する。
【0217】
特定の一実施例において、当該デバイスは、標的とハイブリダイゼーションしている一次プローブが入った、横断導管と呼ばれる横断キャピラリーを含み、この導管の口径は2から1000μmの範囲内であることが好ましい。上側横断導管は、キャピラリーネットワークに接続される。
【0218】
当該デバイスはまた、スポット中に編成された二次プローブのマトリックスも含み、それぞれのスポットは、1つのタイプの分子プローブ、例えば、配列が一次プローブのアレイ中に含まれる一次プローブのうちの1つの配列に厳密に相補的な核酸高分子からなる。
【0219】
二次プローブのマトリックスは、キャピラリーネットワーク上に配置されるか、または固定される。
【0220】
機能性電極の第1のアレイは、スポット中に編成された二次プローブの電極をグラフトしており、それぞれの二次プローブは、特異的プローブ/プローブ結合によって、1つの特定の一次プローブを保持することができる。
【0221】
当該マトリックスのスポットのそれぞれのラインは、電極の範囲を定めた金またはITO表面(または任意の他の適切な金属若しくは合金)上に堆積し、そこでマトリックス全体は、ラインの数nに対応するn本の電極からなり、それぞれの電極ラインはグラフトされた電極のP個のスポットからなる(図3)。
【0222】
ITOは、求電子性が非常に高いため、カプセル化処理により、グラフトされたプローブを有していない電極の部分を絶縁し、標的または一次プローブの任意の非特異的捕捉を回避する必要がある。例えば、ポリピロール膜を使用できる。当該膜は、ピロール溶液の存在下で、グラフトされた電極に電流を通すことにより作製される。ピロールは、電流の作用で自然発生的に重合し、電極の自由部分を絶縁する。電極をさらに、安定な方法で、標的、例えばATAまたはTAT等の三量体とハイブリダイゼーションすることができない小さなオリゴヌクレオチドにより飽和させることもできる。
【0223】
プローブ(スポットまたはハイブリダイゼーションユニット)を、場合に応じて、電極上、または電極間に堆積させる。
【0224】
電極は、ガラス、ポリイミド(例えば、Kapton(登録商標))、またはアルミナ酸化物等の絶縁材料上の薄層中にエッチングされる。
【0225】
二次プローブを付加するための任意の適切な方法を使用できる。例として、ビオチンと対をなす分子プローブと、「DYNAL」(Dynal distributors Worldwide, copyright 1996 Dynal AS - Technical Handbook second edition)により販売されているもの等のアビジンで機能化されたビーズとの間の、ビオチン−アビジン型の共有結合による対合について特に挙げることができる。
【0226】
一般に、クロマトグラフィカラムについて記載されている、すべてのタイプの対合、例えば、化学結合、強い相互作用がおそらく適切であるかもしれない。
【0227】
例えば、核酸プローブに結合するためDNAチップに、またはポリペプチドプローブに結合するためのタンパク質チップに現在使用されている相互作用はまた、基板上のin situ合成法のように、適合させることができる(静電的リジン/核酸相互作用、シラン結合、ロッジの表面上のピロール重合等)。また、ナイロン(登録商標)またはニトロセルロースを使用して、プローブを基板に不可逆的に結合させることも考慮することができる。当該結合は、直接的であってもよく、またはナイロンの粒子と二次プローブとの間のソラレン(psoralene)ブリッジ等のブリッジを介して行ってもよい。
【0228】
二次プローブを、適用される種々の処理に耐え、且つ標的を操作するために使用される任意の電界に耐えるように、電極に対し十分に強く付着させなければならない。
【0229】
特定の一実施例において、二次プローブの電極への結合は、種々の最も広く使用されている変性処理に耐久性を有し、使用後にチップを再生することを可能にする。
【0230】
特定の一実施例において、当該デバイスはさらに、いわゆる非機能化電極のネットワークを含み、このネットワークはキャピラリーネットワークが2つの電極ネットワーク間に位置するように配置される。
【0231】
これらの電極が非機能化と呼ばれるのは、それらはそれらの上にグラフトされたプローブを有しないからである。
【0232】
特定の一実施例において、分子標的を分析することを可能にするデバイスは、一次及び二次プローブのハイブリダイゼーションに関係するインピーダンスの変化を測定する。
【0233】
特定の一実施例において、当該デバイスは、一次及び二次プローブのハイブリダイゼーションに関係する偏光の変動を測定する。
【0234】
特定の一実施例において、当該デバイスはさらに、一次及び二次プローブのハイブリダイゼーションに関係する蛍光強度を測定する検出器を含む。
【0235】
特定の一実施例において、当該デバイスは、PSRによって、一次及び二次プローブのハイブリダイゼーションを測定する。
【0236】
当該電極は、絶縁材上の薄層中にエッチングされてよい。
【0237】
2つの電極アレイは、電極の一方のアレイが上に、他方が下にあるように、P個の平行キャピラリーのネットワークのそれぞれの側で互いに向かい合って設置される(図4及び5)。
【0238】
特定の一実施例において、機能化電極のアレイはキャピラリーネットワークの上に位置し、非機能化電極のアレイはキャピラリーネットワークの下に位置する。
【0239】
特定の一実施例において、機能化電極のアレイはキャピラリーネットワークの下に位置し、非機能化電極のアレイはキャピラリーネットワークの上に位置する。
【0240】
それぞれのキャピラリーは、機能化電極のアレイのn個の電極に、且つ非機能化電極のアレイのn個の電極に垂直である(図5、6、及び7)。
【0241】
機能化電極のそれぞれのスポットは、キャピラリーネットワークのそれぞれのキャピラリー中にある。
【0242】
当該構築は、n個の機能化電極の第1のスポットが、キャピラリーネットワークの第1のキャピラリー中にあり、n個の機能化電極の第2のスポットが、キャピラリーネットワークの第2のキャピラリー中にあるようにして行われる(図7)。電極対は、キャピラリーネットワークの上のスポット中に編成されたプローブでグラフトされた1つの電極、及びキャピラリーネットワークの下の向かい側の1つの非機能化電極を含む。当該電極は、PSRによる検出が可能なように非常に薄くてよい。
【0243】
キャピラリーネットワークのそれぞれの末端において、当該キャピラリーは円形のリザーバーに向かって収束する。当該リザーバーは、機能化電極のアレイと同じ平面中に、1つの電極(リザーバー電極)を含む(図7)。特定の実施例において、この電極は円形である。特定の実施例において、この電極は、それぞれリザーバーの天井の中心に位置する。
【0244】
本発明に係るデバイスはさらに、第1のリザーバー電極と第1の機能化電極との間、及び第2のリザーバー電極と最後の機能化電極との間にそれぞれ位置する第1及び第2の補助リンク電極を含んでよく、それぞれのリンク電極と対応するリザーバー電極との間の最短距離は、電極のすべての点において同じである。
【0245】
当該リンク電極を湾曲させることができ、その曲率は、それぞれのリンク電極とリザーバー(リザーバー電極)の中心との間の距離が電極のすべての点で同じになるように規定される。
【0246】
第2のリザーバーは、下側横断導管と呼ばれる、少なくとも1つの横断導管により形成されることができ、キャピラリーネットワークのすべてのキャピラリーの上流と検出器の下流に接続される。二次プローブにハイブリダイゼーションした一次プローブは分離され、特に下側横断導管によって、それらが検出器に到達するまで循環させることができる。
【0247】
分析のためにそれらが検出器に到達するまで二次プローブが循環させられるチップの状況において、1つの機能化電極と1つの非機能化電極を、電極ネットワークの構造中に交互に並べる必要がある。
【0248】
本発明に係るデバイスでは、特異的直接結合、特に、特異的に連結している、特に分子標的にハイブリダイゼーションしている一次プローブの直接ハイブリダイゼーションを可能にする。
【0249】
特定の実施例において、二次プローブのマトリックス中を循環する一次プローブのこのハイブリダイゼーションは、以下のように実施される。
【0250】
1)分析対象の一次プローブの溶出液が、第1のリザーバー中に導入される。第1の湾曲した電極(正)と第1のリザーバーの電極(負)との間に電位が印加される。一次プローブは、キャピラリーのそれぞれの中で等モルずつ移動し、湾曲した電極に集中する。
【0251】
2)リザーバー電極と湾曲した電極との間に印加される電位は遮断され、第1の機能化電極(+)と湾曲した電極(−)との間に電位が印加される。次いで、それぞれのキャピラリーのプローブは、第1の機能化電極に移動し、第1の電極のスポットに相補的な第2のプローブ(キャピラリーにつき1スポット)がハイブリダイゼーションする(ハイブリダイゼーションは、電界により加速される)。それぞれのスポットにおける濃度は、最大である(これは、キャピラリーの数にのみ依存し、導管の総容積にはもはや依存しない)。一次プローブを当該スポットに閉じ込めるために、機能化電極ライン内の第2の電極に、負の電位を与えてよく、これにより、電荷分布(− + −)を獲得し、+電荷はそれぞれのキャピラリーの第1のスポットの中心に来る。
【0252】
3)ハイブリダイゼーションを改善するために、電位は不連続であってよく、電位を伴わない経過時間は緩和時間に対応し、その間、一次プローブは、制約なしでハイブリダイゼーションすることができる。緩和時間の間に、一次プローブの混合を高め、そうしてわずかに存在する一次プローブのハイブリダイゼーションを促進するために、不連続で、且つ交流の電位を、機能化電極ライン内の第1の電極及びキャピラリーネットワークの上と下の非機能化電極との間に確立することができる(これにより、さらに、ハイブリダイゼーションの特異性が改善される)。
【0253】
一次プローブがスポットの第1ラインでハイブリダイゼーションすると、電位は次のラインに移動する。湾曲した電極0の位置と、プローブ1、2、及び3でそれぞれグラフトされた第1、第2、及び第3の機能化電極の位置を呼び出すことにより、印加された電位の動態は、以下のように記載することができる。
4)第2の機能化電極は正電位にされ、次いで、電荷分布は、電荷分布(0 −, 1 +, 2 +, 3 −)を伴い(0 −,1 +,2 +)である(適宜、第3の電極は負の電位にされる)。
5)第1の機能化電極は負電位にされる。次いで、電荷分布は、(0 −, 1 −, 2 +)、適宜(0 −, 1 −, 2 +, 3 −)である。
6)湾曲した電極は、電荷分布(1 −, 2 +)、適宜(1 −, 2 +, 3 −)に対し0にされる。
7)不連続な交流電位は、非機能化電極のアレイと機能化電極2との間に印加される。
【0254】
スポットの第1ラインにおけるすべての非ハイブリダイゼーションプローブは、スポットの第2ラインに移動する(図8)。移動、緩和、混合(上の工程4-7に対応する)の全動態が、1つのラインから次のラインへ適用され、分析された試料における相補的一次プローブを有するすべてのラインのすべてのスポットをハイブリダイゼーションする。それらが第2のリザーバーに到着すると、異なるキャピラリー中で移動した一次プローブは、再度混合する。そこで、他の方向にある電位配列を実施して、逆順でキャピラリーネットワークを通り抜けることが可能である。キャピラリーを通して2つのリザーバー間で一次プローブを往復させると、当該デバイスの検出感度が増大する。
【0255】
原則として、分子を効果的に移動するために、160mV/mmのオーダーの電界を印加させなければならない。湾曲した電極とリザーバー電極との間の距離が大きいため、電界を考慮するためにこれらの電極に印加される電位は、1ボルトのオーダーであり、もはやミリボルトではない。湾曲した電極とリザーバー電極の焼き付きを回避するために、それらを金で作るのが好ましい。
【0256】
特定の実施例において、電極のネットワークのうちの1つは、2つの異なる平面中で電極の2つの垂直なアレイを重ね合わせることにより形成され、次いで、もう一方の電極ネットワークはアースされる。スポットは、上側アレイの電極の下側電極の平面中への侵入の交差点において、下側アレイの電極上にグラフトされる。
【0257】
特定の実施例において、機能化電極ネットワークは、行電極と列電極との間のそれぞれの交差点において、スポット電極が電界効果トランジスタによって行と列に接続される電極の行と列の正方形メッシュパターンにより形成される。
【0258】
電極の2つの重ね合わされたアレイの垂直レイアウトにより、測定することが理論的に可能になる。しかし、交流または不連続な電流を使用すること、及び1つの電極が複数のスポットに接続するという事実は、測定に干渉する寄生静電容量の問題を引き起こす。実際、それぞれのスポットのインピーダンスを定めるために電流及び電圧を正確に測定することは困難であるか、または不可能である。この問題を克服するために、スポット間の電圧及び電流を発生するためのスイッチを導入する必要がある。
【0259】
マイクロアレイの寸法に適合するスイッチを作製するために、機能化電極のアレイは、絶縁され、第2の電極セット(垂直または行内の)に垂直な第1の電極セット(水平または列内の)からなる、同じ平面中の電極のメッシュパターンにより置き換えられる。メッシュの正方形は、メッシュのサイズに応じて長さが10から500μmの小さな電極(スポット電極)が入るスペースを規定する。典型的には、メッシュのそれぞれの正方形は、約150μmの高さh、約500μmの幅lを有する。1つまたは2つの電界効果トランジスタが、メッシュのそれぞれの正方形中に配置され、これにより、トランジスタグリッドは、正方形の片側の水平電極に、トランジスタの入力端子(ソース)は、正方形の片側の垂直電極に、トランジスタの出力端子(ドレイン)は、スポット電極に接続される(図9a)。
【0260】
図9bに示される変更形態において、メッシュのそれぞれの正方形は、2つのスポット電極Oを含み、それぞれ、トランジスタFET 1及びFET 2と関連付けられ、第2のトランジスタFET 2は検出器として作用する。第1のトランジスタのグリッドPは、第1の行電極Mに接続され、第2のトランジスタのグリッドPは、第2のスポット電極に接続される。2つのトランジスタのソースQは、正方形の片側の同じ列電極Nに接続される。第1のトランジスタFET 1のドレインRは、第1のスポット電極に接続され、第2のトランジスタのドレインRは、任意の他のトランジスタから独立している第2の行電極Mに接続される。
【0261】
この構成では、メッシュの行電極は倍にされている。行電極Mのうちの第1の電極は、メッシュのラインの第1のトランジスタFET 1のグリッドPを接続し、第2の行電極Mは、メッシュのこのラインのトランジスタFET 2のドレインRを接続する。
【0262】
ハイブリダイゼーションの後、それぞれのトランジスタFET 1は、それが接続するスポット電極に電圧を印加するために使用される。交流若しくは直流電流または電位が、トランジスタFET 1のソースQに印加される。印加される電位または電位の変動により、スポット電極上にグラフトされた核酸分子において局所的に電流及び電位が発生する。これは、メッシュの正方形の2つのスポット電極上にグラフトされた分子が、小さな電気コンデンサのように振る舞うからである。トランジスタFET 2のグリッドPにおける電流または電位の変動は、このトランジスタの閉じた状態を変化させ、トランジスタFET 2のソースQとドレインRとの間の電流及び電位が比例した変化をもたらす。これらの変動は、スポット電極上にグラフトされた分子のハイブリダイゼーションの配列、サイズ、及び状態に依存する。特に、これらの変動は、核酸の一本鎖または二本鎖状態に依存し、それにより、それぞれのスポット電極におけるハイブリダイゼーションの程度を定量化することが可能になる。
【0263】
メッシュの正方形中において2つのスポット電極を使用することにより、測定された信号及びこの測定の感度は、これら2つのスポット電極の形状に強く依存することになる。当該測定を、入れ子になったらせん状のスポット電極を使用することにより、または上側板上に絶縁スポット電極、第1のマトリックスのスポット電極のイメージから作られた対極を置くことにより改善することができる。
【0264】
他の解決方法は、正方形につき2のトランジスタを備えるこのメッシュを、正方形につき単一のトランジスタを備える2つのメッシュに分離し、これらのメッシュをキャピラリーネットワークのそれぞれの側の上に置く工程からなる。
【0265】
図9cの右下隅に示されているコントロールとして知られる第1のメッシュは、図9aに示されているものと同じである。それは、キャピラリーネットワークの下に伸びており、それぞれのスポット電極への選択的な供給を可能にする。列電極N及び水平電極Mは、電気的に絶縁されており、スポット電極Oは、分子をグラフトするための厚さ10から40nmのポリイミド薄膜で被覆されている。
【0266】
電気的測定は、第1のメッシュに面しているキャピラリーネットワークの上に伸びている図9cの右上隅に示されている第2のメッシュにより実施される。このメッシュにより、ハイブリダイゼーションのためにキャピラリーネットワーク中に置かれているプローブの移動及び拘束電界を制御することが可能になる。このために、このメッシュの列電極N(または逆に、水平電極M)及びスポット電極は、電気的に絶縁されなくてもよい。それぞれのトランジスタFET 2について、ソースQは列電極に接続され、ドレインRは行電極に接続され、且つグリッドはスポット電極に接続される。行電極Mは、キャピラリー壁により被覆される(または逆に、列電極N)。
【0267】
チップがハイブリダイゼーションされると、コントロールメッシュのそれぞれのスポット電極O(図9c)は、順にスイッチオンされる(交番電界と交流)。スポット電極のトランジスタFET 1のソースQとドレインRとの間の電流は、その強度、電圧、周波数、及び位相差において、スポット電極上にグラフトされたプローブのハイブリダイゼーションの状態に依存する。コントロールメッシュのスポット電極において発生する電流及び電圧により、検出メッシュ中に向かい合って配置されているスポット電極のトランジスタFET 2のグリッドPを比例的に開き、このスポット電極のトランジスタFET 2のソースQとドレインRとの間に、測定可能な電流及び電圧を生み出す。
【0268】
要約すると、水平及び垂直電極により定められた正方形が小さなスポット電極により占有されるようなメッシュが得られる。スポット電極は、1つまたは2つの電界効果トランジスタにより正方形の4辺のうちの2辺に接続される。分子プローブは、それぞれのスポット電極にグラフトされる。上側電極セットの電極は、「スポット電極」のそれぞれのラインの反対側に、下側メッシュの垂直電極と平行になるように配置される。下側電極セット中のそれぞれがアースされる。非機能化電極セットは、単一のアースされた平板、または前述のような検出マトリックス、または絶縁されたスポット電極のマトリックスで置き換えることができる。
【0269】
水平電極をスイッチオンすることにより、すべてのトランジスタのグリッドに電力が供給され、すべてのトランジスタの入力と出力との間の電流が遮断され、次いでスポット電極が絶縁される。単一の水平電極の電流を遮断し、電流及び交番電界を単一の垂直電極に印加することにより、2つの電極の交差点におけるトランジスタのみが、それらの入力と出力との間で電流が流れるのを可能にする。単一スポットがスイッチオンされると、スポット電極におけるインピーダンスの変動を、他のスポットからのいずれの寄生効果なしで決定することができる。
【0270】
特定の実施形態において、グリッド動作は、そのトランジスタに対して逆転され、つまり、電流は、グリッドがスイッチオンされた場合にソースとドレインとの間でのみ流れる。これらの条件において、グリッド電極をスイッチオンすることによりラインは制御される。
【0271】
特定の実施例において、本発明に係る方法の工程c)は、本発明に係るデバイスのキャピラリーネットワークのリザーバーの内側で実施される。
【0272】
「磁気ビーズ−一次プローブ−分子標的」の群は、所望の容積で、制御されて変性され、すでに特異的に結合した、特にハイブリダイゼーションした一次プローブを含む溶出液を回収する。
【0273】
そこで、ビーズに結合した標的/一次プローブ複合体を受け入れるリザーバー中に磁界を導入することが可能である。これは、リザーバー電極の反対側のリザーバーの壁に固定された静的マイクロ磁石、または同じ壁に薄層を堆積することによって得られるソレノイドのいずれかであってよい(磁界はソレノイド中の交流により発生する)。
【0274】
磁界により、粒子−分子標的群をリザーバーの内側に保持することが可能になる。系の温度を、一次プローブ及び標的を分離する、例えば逆ハイブリダイゼーションするために上昇させる。系の全体的な温度は、水槽または暖かい部屋により調節され、適宜、局所的調節は、リザーバー中に置かれた抵抗器により得られる。
【0275】
ソレノイドには、磁界発生器及び発熱抵抗器としての2つの用途がある。
【0276】
一次プローブが変性され、リザーバー中の溶液中に入ると、それらはキャピラリー中に移動し、且つ結合し、特にそれらはスポットにハイブリダイゼーションする。
【0277】
サーモスタットシステムの温度は、一次プローブがスポットにハイブリダイゼーションできるように調節されなければならない。ビーズ上の一次プローブの化学的変性を実施することができる。これらの条件において、ハイブリッドが変性され、一次プローブがリザーバー中の湾曲した電極に移動した後、磁石でビーズを取り除く必要がある。ハイブリダイゼーションを可能にするため、溶媒は中和されなければならない。
【0278】
本発明はさらに、分析対象の分子標的の複製を表す一次プローブのアレイに関し、:
−前述のような、異なるタイプの一次プローブのアレイ;
−分析対象の分子標的のフィンガープリントを表す一次プローブのアレイを取得するために、特異的結合により結合した一次プローブ及び分子標的を分離するための手段及び回収するための手段;
を含む。
【0279】
それらの技術的適合性に応じて、本明細書に記載された前述の特性は、さらに、実施例で記載されている種々の特性と組み合わせることもでき、それによって、本発明の他の特定の実施形態を説明することができる。
【実施例】
【0280】
<実施例>
2D電子チップ(2D Electro-Chip)は、あらかじめの標識付けなしで、溶出された一次プローブを構成するバイオポリマーの配列を同定且つ定量化することを可能にする。当該デバイスは、2組の特定の電極セットに関連付けられている、スポット中に編成された生物学的プローブの二次元マトリックス(二次プローブのアレイ)からなる。マトリックスは、2つのリザーバー(それらの末端のそれぞれに1つ)により相互接続された平行なキャピラリーのネットワーク中に含まれる。
【0281】
当該キャピラリーネットワーク及び電極デバイスにより、一連の封じ込め電界(電極のネットワークにより制御される)のおかげで、標的(本発明の方法により溶出された一次プローブ)をスポットのそれぞれのラインに搬送し、そこに集中させることが可能になる。
【0282】
このデバイスは、プローブの受動拡散を防止することによって全反応容積を減らすことを可能にする。
【0283】
従って、マトリックスのスポットの各ラインに、すべての標的を連続的に集中させることが可能になる。次いで、実験を実施するために必要な限定された量の材料は、スポットのラインにおける標的の局所的濃度にのみ依存し、キャピラリーネットワークの全容積にはもはや依存しない。これにより、使用される材料を、マトリックスの1ラインに封じ込められるプローブにより占有される容積を超える従来のチップの反応容積の比に比例して減らすことが可能である(理論上、最大108まで)。
【0284】
ハイブリダイゼーションしたプローブの定量化は、スポットのインピーダンスを測定することにより行われる。従って、もはや標的を標識する必要はない。電極に対して選択された特定の幾何学的形状と併せた生産技術により、18cm2未満の表面上でスポットの密度を最大800から20000-30000スポットまで増加させることが可能である。さらに、プローブのコンフォメーションの変化による測定人為結果は、電極の表面にグラフトされたときにプローブ上に課される立体障害により最小限に抑えられる。制約されたグラフティングを実施するために、我々は、プローブの機能化を必要としない透明金属合金に関するグラフティングプロトコールを開発した。
【0285】
<実施例1:ITO電極への核酸の結合>
【0286】
分子プローブは、核酸の種々の変性処理に耐え、且つ一次プローブを操作するために使用される任意の電界に耐えるように、それらの基板に十分強く付着されていなければならない。インピーダンスにより核酸のハイブリダイゼーション速度を測定する状況において、電極の幾何学的形状に加えて、2つの主要な問題、つまり、1)材料中の局所的構造欠陥が、一方の電子ともう一方の電子との間に散在的抵抗を引き起こし、インピーダンスに人為結果をもたらす可能性がある、2)DNA分子をグラフトするために電極を機能化すると測定が乱される可能性がある、という問題に直面する。
【0287】
これらの問題に加えて、核酸分子のコンフォメーション及びサイズに応じたインピーダンスの変化もある。
【0288】
ITO、ATO、FTO、ZNO(適宜、ポリイミド、例えばKapton(登録商標)で被覆される)等の酸化スズまたは酸化亜鉛合金を使用により、これらの問題を最小限に抑えられる。
【0289】
これは、これらの合金を堆積するための方法が非常に標準され、且つ再現性が非常に高いためであり、欠陥が非常に少ない電極を得ることが可能である。これらの材料は、透明であり、光学測定を可能にする。
【0290】
最後に、リン酸イオンPO32-は、ITO(適宜、ポリイミド、例えばKapton(登録商標)で被覆される)等の電極の表面上に吸着され、ほとんど不可逆的である。核酸は、当然、リン酸塩に富んでいるため、それらはITO堆積物(適宜、ポリイミド、例えばKapton(登録商標)で被覆される)上に吸着される。
【0291】
リン酸塩官能基と対になっているタンパク質を、同じように、または求電子基を有している場合には直接に、そのような担体に結合させることができる。これを実施するために、抗体等のタンパク質を、リン酸塩官能基によりITO合金上に保持されているタンパク質(適宜、グルタルアルデヒドの存在下で)とともにペプチド機能を確立する、リン酸エタノールアミン等の分子と対にすることができる。
【0292】
二次プローブをITO電極上に固定する可能なプロトコールの1つは、以下のとおりである。
ITO電極を、
1)アンモニウムと過酸化水素の溶液中に20分間浸する。
2)蒸留水で洗浄する。
3)プロパン-2-オールで洗浄する。
4)プローブを、湿気のある大気中で、ITO電極上にスポットで堆積させる。
5)次いで、当該スライドを50℃の炉に入れ、DNAの分子コーミングを実施する。それが蒸発につれて、堆積した液滴が、壁に付着したDNAの鎖を図10で説明されているようなスポットの中心に向けて伸長する。
【0293】
ITOは、求電子性が非常に高いため、カプセル化プロセスにより、グラフトされたプローブを有していない電極の部分を絶縁し、標的または一次プローブの任意の非特異的捕捉を回避する必要がある。例えば、ポリピロール膜を使用できる。当該膜は、ピロール溶液の存在下で、グラフトされた電極に電流を通すことにより形成される。ピロールは、電流の作用により自然発生的に重合し、電極の自由部分を絶縁する。当該電極は、さらに、安定して標的、例えばATAまたはTAT等の三量体とハイブリダイゼーションすることができない小さなオリゴヌクレオチドにより飽和させることもできる。一本鎖DNAにより機能化された電極のネットワークは、図11に示されているようにして得られる。
【0294】
このネットワークは、図12に示されているように、mRNAまたはcDNA一次プローブを特異的にハイブリダイゼーションすることができる。
【0295】
二次プローブをITO電極に固定すると、種々の最も広く使用されている変性処理(0.1M NaOH、10% SDS、95°C等)に耐久性を有し、使用後にチップを再生することが可能になる(図13)。
【0296】
代替例は、プローブのグラフティングを実施するために、ピロールで機能化された二次プローブを使用することである。
【0297】
電極上の堆積物について説明されているのと同じ方法を使用して、直接堆積によりプローブ(ヌクレオチドまたはタンパク質)のマトリックスを作製するために、ITO及び/またはポリイミド(Kapton(登録商標))で完全に被覆された平板または顕微鏡用スライドを直接使用することが可能である。得られたチップは、従来の方法で使用される従来のネットワークである。
【0298】
特定の条件において、SiO2によりスライド上に堆積されたITO金属電極を分離し(少なくとも1分子層)、電極を電気的に絶縁し、次いで、分子プローブをグラフトするために電極をポリイミドの層(厚さ少なくとも約10から40nmの1分子層)で被覆すると都合がよい。図17aに示されているこの方法で得られる基板は、ガラス/SiO2/ポリイミド及びガラス/ITO/ポリイミドタイプのものであり、分子プローブを基板上にグラフトするだけでなく、静電容量タイプの電流及び抵抗を測定し、担体上に形成された複合体を検出することが可能である。
【0299】
ポリイミドの化学式の例を、図17b、17c、及び17dに示す。図17bは、直鎖状ポリイミドを示しており、図17c及び17dは、芳香族複素環ポリイミドを示しており、図17dの化学式は、Kapton(登録商標)の化学式である。
【0300】
<実施例2:インピーダンスの測定>
インピーダンス測定は、裸のスポット電極上(図14.1)、さらに118塩基の一本鎖DNAで機能化され、1M DNA溶液0.1μLの堆積物をコーミングすることにより得られる電極上の両方で実施される(図14.2)。
【0301】
インピーダンスは、一本鎖DNAで被覆された電極の方が、二本鎖DNAの重複部位で被覆された電極よりも高いことがわかる(図14.3及び14.4、図15)。ハイブリダイゼーションしていない核酸が存在しても、スポット電極で測定されたインピーダンスがごくわずか変化するだけである。インピーダンスは、主に、ITO電極の表面に付着した分子によるものであり、当該インピーダンスは、一本鎖の方が、二本鎖よりも高い(図16)。従って、ハイブリダイゼーションの反応速度を調べるために、動的測定を実施することが可能である。
【0302】
裸のスポット電極、一本鎖DNAで覆われたスポット電極、及びDNA/DNA二本鎖で被覆されたスポット電極の間の測定されたインピーダンスの違いは、電界(電圧)の周波数及び印加される電流によって決まり、これらの違いによりハイブリダイゼーションのレベルを定量化することが可能になる(図16)。
【0303】
<実施例3:タンパク質に適用される分離及び分析の方法>
当該方法は、例えば、細胞抽出物から採取した混合物中の、種々のタンパク質及びそれらの修飾物の濃度を測定するにおける使用のために種々の形態をとり得る。
【0304】
E.1 当該方法が必要とするもの
4)タンパク質に強く結合し得る磁気粒子群(または表面)。典型的には、ポリスチレン、ナイロン(登録商標)、ニトロセルロース等のビーズまたは膜を挙げることができる。
【0305】
5)それぞれのタイプの抗体が、核酸の特異的配列に強く(共有)結合している、抗体の化学量論的混合物、配列タグ。当該配列タグは、特異的に切断可能な1つまたは2つの一般的配列とそれぞれのタイプの抗体に対し、固有且つ特異的な配列に分けられる。抗体の特異的ヌクレオチド配列は、バーコードのような明確な署名を抗体に与える。
【0306】
6)それぞれのスポットのプローブが、抗体の化学量論的混合物の当該タイプの抗体のうちの1つの配列タグの特定の部分に相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドチップ。典型的には、これは、前記で記載されているインピーダンスチップ、または使用されている配列タグのセットに対応するチップのスポットのセット等の任意の他のチップ(配列タグ1つにつき1スポット)とすることも可能である。
【0307】
E.2 操作原理
細胞抽出物から始め、当該タンパク質を磁気ポリスチレン粒子に付着させる。ポリスチレンは、永続的にタンパク質を吸着する能力を有する。ビーズの飽和を回避するためにタンパク質の濃度と比較して過剰量のビーズを使用し、これにより立体障害が制限される。所望の調査に応じて、タンパク質を変性させる、または変性させない。次いで、ビーズ及び結合タンパク質を、
4)磁界により沈殿させ、
5)上清から単離し、
6)生理食塩水緩衝液中で洗浄し、回収する。
【0308】
次いで、当該ビーズを、調査されている系に対して不活性であるタンパク質で飽和させる。例えば、ウシ血清アルブミン(ウシではない調査の場合)、調査される種に対しKunixt阻害剤等の外来性の小さなサイズのタンパク質、さもなければロイシン等の脂肪族鎖アミノ酸が使用される。工程1から3が、再び実施される。次いで、飽和ビーズ−結合タンパク質の完全系を、タグ付き抗体の等モル混合物と合わせる。当該(一価)抗体は、ビーズ上に固定化されているそれらの標的タンパク質に特異的に結合する。それぞれのタイプの結合した抗体の量は、ビーズ上に吸着したそれぞれのタイプのタンパク質の量に比例する。立体障害を低減するために、当該抗体を、パパイン消化により得られる抗体断片(または半抗体)で置き換えることができる。それぞれの半抗体は、核酸配列で「タグ付け」される。工程1から3が、再び実施される。それによって、反応している抗体(または半抗体)は、反応していないものから単離、分離される。核酸タグは、導入された切断配列を使用して切り離される。これは、例えば、回文配列または抗体酵素の標的配列であってよい。回文配列の場合、2つの特定の解決策を挙げることができる。
【0309】
−当該回文配列を、抗体と特定配列タグとの間に導入する。配列タグを抗体から分離するために、切断配列に相補的な配列及び関連する制限酵素を溶媒に単純に加え、これにより特定配列タグから抗体を分離することが可能になる。
【0310】
−2つの切断配列を、抗体と特定配列タグとの間、及び配列タグの末端にそれぞれ導入し、これら2つの配列が互いに相補的となるようにする。ハイブリダイゼーションを行う際に、それらは、溶媒中にその後導入される酵素に対して特異的切断部位を形成する。次いで、特定配列タグが溶液中に放出される。
【0311】
それらが抗体から分離されると、当該配列タグは、その量がビーズ上に保持されている抗体のタイプの量に比例し、従って分析された細胞抽出物中に存在する種々のタンパク質及びそれらの修飾物に比例する、溶液中のオリゴヌクレオチドの混合物を供給する。得られたヌクレオチドの混合物は、従来のDNAチップまたは前述のようなチップ上で分析され得る。
【0312】
この方法により、2つの異なる細胞抽出物のタンパク質の差分調査を実施することが可能になる(タンパク質を直接標識することなく)。第1の抽出物の抗体タグを、ある色の蛍光標識(例えば、cy3)で標識し、第2の抽出物の抗体タグを、別の色の蛍光標識(例えば、cy5)で標識する。これらの抽出物のそれぞれを、前述のように処理し、次いで、それぞれの抽出物に対して回収された代表的タグの混合物を体積毎に一緒にし、チップ上でハイブリダイゼーションさせる。それぞれの色に対するチップの読み取りにより、2つの抽出物のタンパク質の間の差分が得られる。
【0313】
E.3 抗体の標識付け
抗体を核酸タグで標識する。例えば、次のようである。
・α= 5'NH2(x)n(y)m3'(適宜、5'NH2(zi)p(x)n(y)m3')
・β= 5'NH2(x)n(y)m(x)n3'(適宜、5'NH2(zi)p(x)n(y)m(x)n(zj)p3)
【0314】
アミン基NH2により、グルタルアルデヒド及び/またはエタノールアミン等の架橋剤でヌクレオチド配列を抗体に結合させることが可能になる。核酸高分子は、適宜、そのアミン基により抗体に直接結合することができる。
【0315】
(x)nは、(x)n = 5'CCCGGG3'は制限酵素Srflにより切断され、(x)n = 5'TACGTA3'は制限酵素SmaB Iにより切断され、(x)n = 5'AATAAT3'は制限酵素Ssplにより切断され、(x)n = 5'TTTAAA3'は制限酵素Dra Iにより切断されるというような、回文を形成し得るn個のヌクレオチドの配列である。
【0316】
一般に、すべての平滑末端制限酵素が適している。ただし、最低のTmを有する制限酵素認識部位が好ましい。
【0317】
2つの解決方法が可能である。
・α)切断回文を形成する工程は、制限酵素と同時に系に加えられる配列内部タグと自由配列(x)n(適宜、(x)n(zj)n)との間で実施され、切断回文を形成する。
・β)当該回文は内部分子であり、次いで、配列(x)nがタグの始まり及び終わりに導入される。
【0318】
配列y(m)は、所定のタイプの抗体に特異的な核酸配列である(7から100個のヌクレオチドを含む)。それは、分子バーコードとして作用し、複合体を形成している抗体の数とタイプをカウントすることが可能にする。
【0319】
z個の配列は、タグ中またはタグ間回文配列の間の非所望の対合を最小限に抑える。例えば、z個の配列は、以下のように定義される。
(zi)p = 5'CACACACA3' (zj)p = 5TGTGTGTG3'。
【0320】
回文配列の環境は、zi個とzj個の配列により非対称にされ、それにより、切断の特異性が増大する。
【0321】
抗体からタグを分離するために制限部位を使用する別の方法は、鎖の1つの両端の一方により抗体に結合している相補的二本鎖核酸タグを使用する工程を含む。抗体/タンパク質複合体がビーズに結合し、単離されると、タグの変性により、溶液中に遊離オリゴヌクレオチドの混合物が得られ、オリゴヌクレオチドの量はビーズ上に保持されている抗体の量に比例する。次いで、前述のように、この混合物をチップ上で分析するだけでよい。
【0322】
<実施例4:タンパク質/mRNAの同定及び定量化の混合方法>
E及びAで記載されているように、細胞のタンパク質及びmRNAを連続的に単離し、それぞれ細胞中で産生されるmRNA及びタンパク質を表す、核酸高分子、一次プローブ、及びタグの2タイプの混合物を得ることが可能である。これらの混合物を、チップ(適宜、2つのチップ:1つはmRNA用、もう1つはタンパク質用)上でハイブリダイゼーションさせ、これにより、細胞の同じバッチについて1回の分析で、mRNAとタンパク質を評価することが可能である。
【0323】
A=湾曲した結合電極(例えば、ガラススライド上にエッチングされた透明ITO電極)。
B=機能化行電極(例えば、ガラススライド上にエッチングされた透明ITO電極)。
Bb=機能化スポット電極。
Bc=プローブグラフティングガイドまたはマスク。
Bd=0°で偏光するフィルター。
Be=α°で偏光するフィルター。
Bf=透明電極基板。
Bg=グラフトされた一本鎖DNAプローブ。
Bh=単一平面中で偏光される光。
Bi=分析対象の分子DNA標的。
Bj=二本鎖DNA。
C=リザーバー電極(例えば、ガラススライド上にエッチングされた透明ITO電極)。
D=上部または底部を有さないキャピラリー(例えば、Kapton(登録商標)中をくりぬく):中央平面。
E=基部のある蓋を有さないキャピラリー(例えば、Kapton(登録商標)またはPBMS中をくりぬく):中央平面。
F=上部または底部を持たないリザーバー(例えば、Kapton(登録商標)中をくりぬく):中央平面。
G=非機能化行電極(例えば、ガラススライド上にエッチングされた透明ITO電極)。
I=ITO電極。
J=DNA溶液の液滴。
K=プローブスポット:ハイブリダイゼーションのユニット。
L=ITO電極上に吸収されるDNAの伸長した鎖。
M=水平グリッド電極。
N=垂直ソース電極。
O=スポット電極。
P=グリッド。
Q=ソース。
R=ドレイン。
S=伸長した一本鎖DNAプローブで被覆されたITO電極(アクリジンオレンジで現れ、赤いオレンジ色は一本鎖に特徴的)。
T=118塩基のオリゴヌクレオチド(S)とともにITOで作られた機能化スポット電極。当該電極は、DNAの相補鎖とハイブリダイゼーションされる(アクリジンオレンジで現れ、緑色は二本鎖DNA/DNA重複部位に特徴的)。
U=0.1MのNaOH溶液で洗浄する。
V=相補鎖とのハイブリダイゼーション。
X=1.0MのNaOHで洗浄された一本鎖で機能化され、次いでDNAの相補鎖とハイブリダイゼーションさせたスポット電極(アクリジンオレンジで現れ、緑色は二本鎖DNA/DNA重複部位に特徴的)。
Z=1.0MのNaOH溶液で逆ハイブリダイゼーションした後のスポット電極(アクリジンオレンジで現れ、赤いオレンジ色は一本鎖に特徴的)。
T0=裸のITO電極。
T1=118塩基のオリゴヌクレオチドで機能化されたITO電極。
Aa=電気泳動緩衝液。
Ab=緩衝液1滴の表面における電極。
Ad=低周波発生器。
Ac=ハイブリダイゼーション後のスポット電極:二本鎖DNAで被覆された。
Ba=ハイブリダイゼーションしたプローブ(二次プローブ)の配列に相補的なDNAの溶液。
Ca=洗浄工程。
Ae=ハイブリダイゼーション及び洗浄後のスポット電極。
FET=電界効果トランジスタ。
h=メッシュの正方形の高さ。
l=メッシュの正方形の長さ。
Ω=チップリザーバー中に流体を注入するための弁。
【図面の簡単な説明】
【0324】
【図1】プローブと標的の間のより特異的な認識をするために、プローブ標的複合化(ハイブリダイゼーション)の間に適用されたを温度変化の一例を示す。
【図2】偏光検出器を示す。 2D電子チップのスポット電極の断面。 プローブをグラフトするために、グラフティングガイドを使用して、電極上でグラフティングを誘導し、配向する。 グラフティングガイドは、ベルベットの切れ端でガイドを構成する材料を擦るか、またはスポット電極上に堆積され、コーミングされた(combed)一本鎖DNAの短い断片を含むガイドを作るのに使用される材料を成型することによって得られる。次いで、ガイドは、材料を研磨し、及び/またはDNAの断片を排除した後に得られる。
【図3】プローブでグラフトされた機能化電極セットの例を示す。金またはITO電極が、ガラススライド上にエッチングされ、プローブ(スポットまたはハイブリダイゼーションユニット)が、電極に堆積される。
【図4】行電極対のセットを示す。行電極の対は、互いに向かい合う電極とともにエッチングされた2つのスライドを置くことにより得られる。スライドの1つは機能化され、他方はされない。
【図5】機能化及び非機能化電極セットの間に挿入するキャピラリーのネットワークを示す。
【図6】湾曲した結合電極とリザーバー電極とによって完成した、機能化電極セットを示す。
【図7】キャピラリーネットワークの周りの機能化及び非機能化電極の2つのセットの群を示す。
【図8】標的を一方の電極から他方の電極へ、従って一方のスポットから他方のスポットへ順次移動させるために、電極に印加される一連の電荷を示す。
【図9a】交流を用いたインピーダンス測定のため機能化電極のセットを置き換えるメッシュを示す。FET:電界効果トランジスタ。
【図9b】交流を用いたインピーダンス測定のため機能化電極のセットを置き換える他のメッシュを示す。
【図9c】キャピラリーネットワークの上及び下にそれぞれ配置されることを意図されたメッシュを示す。
【図10】蒸発によって壁に付着したDNA鎖を示す。蒸発の際、堆積した液滴は、スポットの中心に向かって広がる。
【図11】伸長した一本鎖DNAプローブで被覆されたITO電極を示す。
【図12】相補的DNA鎖でハイブリダイゼーションしたITO電極を示す。
【図13】種々の変性処理を示す。二次プローブをITO電極に固定すると、種々の最も広く使用されている変性処理(0.1M NaOH、10% SDS、95°C等)に耐久性を有し、使用後にチップを再生することが可能になる。
【図14】実施される測定を示す。インピーダンス測定は、裸のスポット電極上(図14.1)、さらに118塩基の一本鎖DNAで機能化され、1M DNA溶液0.1μLの堆積物をコーミングすることにより得られる電極上の両方で実施される(図14.2)。インピーダンスは、一本鎖DNAで被覆された電極の方が、二本鎖DNAの重複部位で被覆された電極よりも高いことがわかる(図14.3及び14.4)。
【図15】スポット電極に印加される電圧に応じた電流の測定結果を示す。
【図16】電圧周波数に応じた電圧850mVにおける電流の測定結果を示す。
【図17a】分子プローブ結合基板の断面線図である。
【図17b】ポリイミドの化学式である。
【図17c】ポリイミドの化学式である。
【図17d】ポリイミドの化学式である。
【図18a】一次プローブとして使用される混合核酸/ペプチド核酸化合物を示す。
【図18b】一次プローブとして使用される混合核酸/ペプチド核酸化合物を示す。
【図18c】一次プローブとして使用される混合核酸/ペプチド核酸化合物を示す。
【図18d】(PNA)ポリT−核酸タイプのプライマーを示す。
【図18e】(PNA)ポリT−核酸タイプのプライマーを示す。
【図18f】(PNA)ポリT−核酸タイプのプライマーを示す。
【図19】本発明に係る方法を実施する一実施例を示す。
【図20】本発明に係る方法を実施する別の実施例を示す。
【図21】一次プローブのアレイを調製するためのアルゴリズムの工程を示す。
【符号の説明】
【0325】
2 機能化電極
10 細胞溶解工程
12 分子標的
14 PNAプライマー
16 磁石
17 分子標的
18 mRNAの逆転写
19 メッセンジャーRNA分子
20 cDNAの試料
22 一次プローブ
24 粒子−プライマー/cDNA−一次プローブ複合体
26 cDNAに特異的に結合していない一次プローブ
28 cDNAのフィンガープリントを表す一次プローブ
36 一次プローブ
40 細胞溶解工程
42 分子標的
44 粒子
46 磁石
48 分子標的
50 粒子/分子標的/一次プローブ/レポートプローブ複合体
52 一次プローブ
54 レポートプローブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合混合物に含まれる分子標的を分析するための方法であって、a)分析対象の分子標的の混合物を異なるタイプの一次プローブのアレイと接触させ、それぞれのタイプの一次プローブは、前記分子標的と前記一次プローブとの間の特異的結合が一次プローブ−標的複合体を形成することを可能にする条件下で、前記分子標的のうちの1つのタイプの標的と特異的結合により結合させ得る前記アレイを構成し、それぞれの一次プローブはポリヌクレオチドからなるか、またはポリヌクレオチドを形成する部分を含み、前記ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、それぞれのタイプの一次プローブに対して、その他のタイプの一次プローブのポリヌクレオチドのヌクレオチド配列すべてと異なる工程、b)分子標的と特異的に結合していない前記一次プローブを適宜排除する工程、c)前記一次プローブ−標的複合体中の特異的結合により結合している前記分子標的及び前記一次プローブを分離し、分析対象の前記分子標的のフィンガープリントを表す一次プローブの前記アレイを回収する工程、並びにd)工程c)で溶出された前記一次プローブを、特に定量的に分析する工程を含む方法。
【請求項2】
分子標的の前記混合物を一次プローブの前記アレイと接触させ、前記特異的結合を実施する工程a)は、溶液中で実施され、溶液中に一次プローブ−標的複合体を形成する、請求項1に記載の分子標的を分析する方法。
【請求項3】
前記混合物の前記分子標的を、一次プローブの前記アレイと接触させる前に、粒子、例えば磁気粒子に結合させる、請求項1または2のいずれか一項に記載の分子標的を分析する方法。
【請求項4】
前記混合物の前記分子標的は核酸である、請求項1から3のいずれか一項に記載の分子標的を分析する方法。
【請求項5】
前記混合物の前記分子標的はポリペプチドであるか、または核酸とポリペプチドの両方である、請求項1から3のいずれか一項に記載の分子標的を分析する方法。
【請求項6】
それぞれの一次プローブのポリヌクレオチドは、前記混合物中の単一のタイプの分子標的に特異的である、請求項1から3のいずれか一項に記載の分子標的を分析する方法。
【請求項7】
プローブの前記アレイの前記一次プローブは、ポリヌクレオチドと関連付けられているポリペプチド部分を含み、それぞれのタイプの一次プローブは、そのポリペプチド部分を介して、固有のタイプのポリペプチド分子標的を認識し、且つ特異的に結合することができ、それぞれのタイプのプローブのポリヌクレオチド部分(タグと呼ばれる)もまた固有のタイプの分子標的に特異的である、請求項1から3のいずれか一項に記載の分子標的を分析する方法。
【請求項8】
工程a)は、過剰量の一次プローブを前記分子標的と混合することによって実施されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の分子標的を分析する方法。
【請求項9】
前記分子標的に特異的に結合していない前記一次プローブを排除する工程b)は、前記プローブ−標的複合体中に含まれる前記一次プローブを分離する工程の後、前記分離された一次プローブを分析する工程d)の前に実施されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の分子標的を分析する方法。
【請求項10】
工程c)の間の前記一次プローブと前記分子標的の分離は、最初に前記標的を磁気粒子上に固定化することによって、且つ磁界を印加して、前記プローブ−標的複合体から前記「標的−磁気粒子」構成要素を分離し、それらを分離した後、前記複合体から前記一次プローブを回収することによって達成される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程c)の間の前記一次プローブと前記分子標的の分離は、最初に前記分子標的を粒子上に固定化することによって、且つそれらを分離した後、遠心分離により前記一次プローブを回収することによって達成される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
一次プローブの前記アレイの前記ポリヌクレオチドはすべて、均質なサイズであり、好ましくは同一であり、それぞれ互いに異なる一次プローブを得るための確定した配列を有することを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の分子標的を分析する方法。
【請求項13】
前記一次プローブのポリヌクレオチドの分析は、二次と呼ばれるポリヌクレオチドプローブのアレイを使用することによって実施され、それぞれのタイプの二次プローブは固有のタイプの一次プローブに特異的である、請求項12に記載の分子標的を分析する方法。
【請求項14】
工程c)で分離された前記一次プローブの分析は、:
d)工程c)で分離された前記一次プローブを、異なるタイプの二次プローブに接触させ、それぞれのタイプの二次プローブを、前記一次プローブのポリヌクレオチド部分とのハイブリダイゼーションによる特異的結合により結合させ得る工程;及び、
e)前記検出から前記分子標的を同定し、並びに/あるいは前記二次プローブとハイブリダイゼーションした前記一次プローブのポリヌクレオチド部分を回収、及び/または分析する工程;
を含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
工程e)は、基板上に固定化された前記二次プローブの上で前記一次プローブを循環させることによって、前記一次プローブの単純拡散によって、または電位を印加することによって実施されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記電位は、電極の少なくとも1つのネットワークにより印加されることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
一次プローブの前記アレイの前記ポリヌクレオチドは、ペプチド核酸(PNA)であることを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の分子標的を分析する方法。
【請求項18】
前記二次プローブと前記一次プローブとの間の特異的結合は、前記相補的ヌクレオチド配列の間のハイブリダイゼーションであること、及び前記一次プローブと前記二次プローブとの間に形成されるハイブリッドの分離は、温度を上昇させることによって制御された変性させることにより達成されることを特徴とする、請求項14から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つの検出器が、前記一次及び二次プローブのポリヌクレオチド部分のハイブリダイゼーションに関係するインピーダンスの変動を測定するために使用されることを特徴とする、請求項13から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1つの検出器が、前記一次及び二次プローブのポリヌクレオチド部分のハイブリダイゼーションにより生じる偏光の変動を測定するために使用されることを特徴とする、請求項13から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも1つの検出器が、PSRによる前記一次及び二次プローブのポリヌクレオチド部分のハイブリダイゼーションを測定するために使用されることを特徴とする、請求項13から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
分析対象の前記分子標的は、トランスクリプトームを表す核酸配列であることを特徴とする、請求項1から4、6、及び8から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
分析対象の前記分子標的は、プロテオームを構成することを特徴とする、請求項1から3、5、及び7から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
工程a)は、分析対象のタンパク質を含む傾向のある前記混合物を、異なるタイプの一次プローブのアレイと接触させる工程であって、それぞれ特定のポリヌクレオチド配列(配列またはポリヌクレオチドタグと呼ばれる)に結合する、抗原結合部位を含む抗体または抗体の断片のアレイからなり、前記アレイを含むそれぞれのタイプの抗体または抗体の断片が、前記タンパク質と前記抗体または抗体の断片との間の特異的結合を可能にする条件下で、分析対象の単一のタイプのタンパク質を認識し得る工程を含むことを特徴とする、請求項1から3、5、7から21、及び23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
工程c)は、特異的結合により結合している前記タンパク質及び前記抗体または抗体の断片を分離し、次いで、それぞれの抗体または抗体の断片及びその特定のポリヌクレオチドタグを分離して、分析対象の前記タンパク質のフィンガープリントを表すポリヌクレオチドタグのアレイを回収する工程を含むことを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
分析工程d)は、工程c)で分離された前記配列タグを、異なるタイプの二次プローブと接触させ、それぞれのタイプの二次プローブを、1つのタイプのポリヌクレオチドタグと特異的結合により結合させ得る工程を含むことを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
工程e)は、前記検出からの前記タンパク質の定量的検出、並びに/あるいは前記二次プローブに結合したポリヌクレオチドタグの回収及び/または分析を含むことを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記一次プローブのポリヌクレオチドはすべて、異なる質量を有すること、且つこれらのポリヌクレオチドを分析するために少なくとも1つの質量分析計が使用されることを特徴とする、請求項1から12、及び22から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記一次プローブのポリヌクレオチドはすべて、異なるサイズを有すること、及び前記ポリヌクレオチドは、電気泳動法、クロマトグラフィ、または濾過により分析されることを特徴とする、請求項24から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
−前記一次プローブを循環させることができるキャピラリーネットワーク;
−前記キャピラリーネットワークと接触するように配置されている、スポット中に編成された二次プローブのマトリックス;並びに、
−前記二次プローブが付着された、機能化電極として知られる電極のネットワークであって、このネットワークは、前記スポットマトリックスのスポットのそれぞれのラインが前記ネットワークの前記機能化電極のうちの1つに連結されるように配置されているネットワーク;
を含むことを特徴とする、請求項13から21のいずれか一項に記載の方法を実施するためのデバイス。
【請求項31】
さらに、いわゆる非機能化電極のネットワークを含み、このネットワークは、前記キャピラリーネットワークが前記2つの電極ネットワーク間に位置するように配置されることを特徴とする、請求項30に記載のデバイス。
【請求項32】
前記一次プローブの前記分析を用いることによって、前記分子標的の分析を可能にすることを特徴とする、請求項30または31のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項33】
前記一次及び二次プローブの前記ハイブリダイゼーションに関係するインピーダンスの変動を測定することを可能にすることを特徴とする、請求項32に記載のデバイス。
【請求項34】
PSRによる前記一次及び二次プローブの前記ハイブリダイゼーションを測定することを可能にすることを特徴とする、請求項32に記載のデバイス。
【請求項35】
前記一次プローブ−二次プローブハイブリッドの形成により生じる偏光の変動を測定することを可能にすることを特徴とする、請求項32に記載のデバイス。
【請求項36】
前記電極は、絶縁体上の薄層中にエッチングされることを特徴とする、請求項30から35のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項37】
機能化電極の前記アレイは、前記キャピラリーネットワークの上に位置し、且つ非機能化電極の前記アレイは、前記キャピラリーネットワークの下に位置することを特徴とする、請求項31に記載のデバイス。
【請求項38】
機能化電極の前記アレイは、前記キャピラリーネットワークの下に位置し、且つ非機能化電極の前記アレイは、前記キャピラリーネットワークの上に位置することを特徴とする、請求項31に記載のデバイス。
【請求項39】
機能化電極のそれぞれのスポットは、前記キャピラリーネットワークのそれぞれのキャピラリー中にあることを特徴とする、請求項30から38のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項40】
前記キャピラリーネットワークのそれぞれの末端にリザーバーをさらに含むことを特徴とする、請求項30から38のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項41】
前記リザーバーは、リザーバー電極と呼ばれる電極を含むことを特徴とする、請求項38に記載のデバイス。
【請求項42】
それぞれのリザーバーに含まれる前記リザーバー電極は、前記機能化電極と同じ平面中に位置することを特徴とする、請求項38に記載のデバイス。
【請求項43】
前記第1のリザーバー電極と前記第1の機能化電極との間、及び前記第2のリザーバー電極と前記最後の機能化電極との間にそれぞれ位置する第1及び第2の補助リンク電極をさらに含み、それぞれのリンク電極と対応するリザーバー電極との間の最短距離は、前記電極のすべての点において同一であることを特徴とする、請求項41または42に記載のデバイス。
【請求項44】
前記第2のリザーバーは、少なくとも1つの横断導管によって形成され、前記キャピラリーネットワークのすべてのキャピラリーの上流、及び前記検出器の下流に接続されることを特徴とする、請求項40から43のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項45】
それぞれのリザーバーは、適切な材料の板の厚さでくりぬかれることを特徴とする、請求項40から44のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項46】
前記電極ネットワークの少なくとも1つは、電極の行、列の型のメッシュによって形成されることを特徴とする、請求項31に記載のデバイス。
【請求項47】
他の電極のネットワークはアースされることを特徴とする、請求項46に記載のデバイス。
【請求項48】
機能化電極の前記ネットワークは、電極の行、列の型のメッシュによって形成され、且つ前記メッシュのそれぞれの正方形中に、電界効果トランジスタにより前記メッシュの行電極及び列電極に接続されている少なくとも1つのスポット電極を含むことを特徴とする、請求項30から47のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項49】
機能化電極の前記ネットワーク及び非機能化電極の前記ネットワークは、前記キャピラリーネットワークのいずれかの側の上に互いに向かい合って配置されている電極の行、列の型のメッシュによって形成され、それぞれのメッシュは、その正方形のそれぞれの中に、電界効果トランジスタにより前記メッシュの行電極及び列電極に接続されているスポット電極を含むことを特徴とする、請求項48に記載のデバイス。
【請求項50】
前記メッシュのそれぞれの正方形は、電界効果トランジスタにより前記メッシュの行電極及び列電極にそれぞれ接続されている2つのスポット電極を含むことを特徴とする、請求項48に記載のデバイス。
【請求項51】
−適宜、分析対象の前記混合物の核酸及び/またはタンパク質の前記分子標的と強く結合し得る、粒子群、例えば磁気粒子群;
−溶液中の異なるタイプの一次プローブのアレイであって、前記プローブはポリヌクレオチドからなる、またはそれぞれのプローブに特異的なポリヌクレオチドを含み、前記アレイを構成するそれぞれのタイプの一次プローブは、前記一次プローブ及び前記分子標的を接触させた場合に、分析対象の固有のタイプの分子標的に特異的結合により結合し得るアレイ;必要な場合、
−分析対象の前記分子標的のフィンガープリントを表す一次プローブのアレイを取得するために、特異的結合により結合した前記一次プローブ及び前記分子標的を分離するための手段及び回収するための手段;並びに/あるいは必要な場合、
−一次プローブの前記アレイの前記一次プローブのポリヌクレオチド部分を特異的に認識し得る二次プローブのアレイ;
を含むことを特徴とする、請求項1から29のいずれか一項に記載の方法を実施するためのデバイス。
【請求項52】
前記一次プローブ及び前記分子標的を逆ハイブリダイゼーションする手段は、前記温度を上昇させることができることを特徴とする、請求項51に記載のデバイス。
【請求項53】
分子標的から分離された一次プローブの定量分析の手段、例えば請求項30から50に規定の手段をさらに含むことを特徴とする、請求項51または52のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項54】
溶液中に異なるタイプの一次プローブの集団を含む、複合混合物中の分子標的を分析するのに適した一次プローブのアレイであって、:
−それぞれのタイプの一次プローブは、プローブの前記アレイ中の他のタイプの一次プローブと異なり;
−前記一次プローブ及び前記分子標的を接触させた場合に、それぞれのタイプの一次プローブは、特異的結合により、分析対象の固有のタイプの分子標的に結合でき;
−それぞれのタイプの一次プローブは、(i)ポリヌクレオチドであるか、または(ii)前記複合混合物中の固有のタイプの分子標的と特異的に結合し得るポリペプチド部分に関連付けられているポリヌクレオチドを含み、それぞれのポリヌクレオチドはプローブの前記アレイ中のその他すべての一次プローブのポリヌクレオチドと、これを構成するヌクレオチドの配列、またはそのサイズ、またはその質量が異なり、前記ポリヌクレオチドのそれぞれはプローブの前記アレイ中で、その配列、そのサイズ、またはその質量によりそれぞれ既知である;
一次プローブのアレイ。
【請求項55】
−前記一次プローブに対するサイズ間隔を規定し、プローブを標的にハイブリダイゼーションするための条件、特にプローブの群に対する融解温度Tmを規定する工程;
−複合混合物中の異なる配列のポリヌクレオチド分子標的の数iを決定する工程;
−当該試料中に存在し得るそれぞれの標的配列iに対する、考察中の標的によって完全にハイブリダイゼーション可能で、前記サイズが選択されたサイズ間隔に含まれ、前記Tmが選択された値の範囲内に含まれる、Ni個の可能なプローブの集合体を同定する工程;
−Ni個のプローブの前述の集合体中で、前記考察される配列iによって構成される前記分子標的とのハイブリダイゼーションにより結合し得、それによって形成される結合が特異的であり、そのときから前記混合物の他の可能な標的配列とのハイブリダイゼーションを除く、ni個のポリヌクレオチド配列の集団を選択する工程;
−前記プローブを構成するための推測されるni個のプローブのこの集団内において、必要な場合、その中に含まれる前記ヌクレオチドを修飾する、例えば、1つまたはいくつかのシトシン残基をメチル化またはエチル化することにより、それぞれのポリヌクレオチドに対し、前記集団内の他のポリヌクレオチドの質量と異なる質量を付与し、それぞれの配列が既知であり、且つすべてが異なる質量を有するポリヌクレオチドの集合体を取得し、それぞれの配列修飾に対して当該比較を反復的に繰り返す工程;
−それぞれの配列iに対してi個の一次プローブのZi個の組み合わせの集合体を同定し、これらの組み合わせのそれぞれは、調査されるni個のプローブのそれぞれの集団に対する固有の一次プローブを含み、ni個のプローブの前記集団の一次プローブのそれぞれは、前記で作られた前記組み合わせ中の一次プローブと比較され、且つ前記一次プローブの質量が互いに近すぎる場合、それらの配列を修正し、それぞれの配列修飾に対して当該比較を反復的に繰り返す段階;
−i個の一次プローブの前記Zi個の組み合わせを、前記組み合わせを含む前記i個の一次プローブの質量の合計の昇順で、及び修飾された基の数の昇順で順位付けする工程;
−調査される前記i個の配列にわたり、i個の一次プローブのZi個の組み合わせの集合体を同定する工程;並びに
−こうして規定された前記プローブアレイ中で前記一次プローブを合成する工程;
を含有する工程を含むことを特徴とする、請求項54に記載の一次プローブのアレイを調製する方法。
【請求項1】
複合混合物に含まれる分子標的を分析するための方法であって、a)分析対象の分子標的の混合物を異なるタイプの一次プローブのアレイと接触させ、それぞれのタイプの一次プローブは、前記分子標的と前記一次プローブとの間の特異的結合が一次プローブ−標的複合体を形成することを可能にする条件下で、前記分子標的のうちの1つのタイプの標的と特異的結合により結合させ得る前記アレイを構成し、それぞれの一次プローブはポリヌクレオチドからなるか、またはポリヌクレオチドを形成する部分を含み、前記ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、それぞれのタイプの一次プローブに対して、その他のタイプの一次プローブのポリヌクレオチドのヌクレオチド配列すべてと異なる工程、b)分子標的と特異的に結合していない前記一次プローブを適宜排除する工程、c)前記一次プローブ−標的複合体中の特異的結合により結合している前記分子標的及び前記一次プローブを分離し、分析対象の前記分子標的のフィンガープリントを表す一次プローブの前記アレイを回収する工程、並びにd)工程c)で溶出された前記一次プローブを、特に定量的に分析する工程を含む方法。
【請求項2】
分子標的の前記混合物を一次プローブの前記アレイと接触させ、前記特異的結合を実施する工程a)は、溶液中で実施され、溶液中に一次プローブ−標的複合体を形成する、請求項1に記載の分子標的を分析する方法。
【請求項3】
前記混合物の前記分子標的を、一次プローブの前記アレイと接触させる前に、粒子、例えば磁気粒子に結合させる、請求項1または2のいずれか一項に記載の分子標的を分析する方法。
【請求項4】
前記混合物の前記分子標的は核酸である、請求項1から3のいずれか一項に記載の分子標的を分析する方法。
【請求項5】
前記混合物の前記分子標的はポリペプチドであるか、または核酸とポリペプチドの両方である、請求項1から3のいずれか一項に記載の分子標的を分析する方法。
【請求項6】
それぞれの一次プローブのポリヌクレオチドは、前記混合物中の単一のタイプの分子標的に特異的である、請求項1から3のいずれか一項に記載の分子標的を分析する方法。
【請求項7】
プローブの前記アレイの前記一次プローブは、ポリヌクレオチドと関連付けられているポリペプチド部分を含み、それぞれのタイプの一次プローブは、そのポリペプチド部分を介して、固有のタイプのポリペプチド分子標的を認識し、且つ特異的に結合することができ、それぞれのタイプのプローブのポリヌクレオチド部分(タグと呼ばれる)もまた固有のタイプの分子標的に特異的である、請求項1から3のいずれか一項に記載の分子標的を分析する方法。
【請求項8】
工程a)は、過剰量の一次プローブを前記分子標的と混合することによって実施されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の分子標的を分析する方法。
【請求項9】
前記分子標的に特異的に結合していない前記一次プローブを排除する工程b)は、前記プローブ−標的複合体中に含まれる前記一次プローブを分離する工程の後、前記分離された一次プローブを分析する工程d)の前に実施されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の分子標的を分析する方法。
【請求項10】
工程c)の間の前記一次プローブと前記分子標的の分離は、最初に前記標的を磁気粒子上に固定化することによって、且つ磁界を印加して、前記プローブ−標的複合体から前記「標的−磁気粒子」構成要素を分離し、それらを分離した後、前記複合体から前記一次プローブを回収することによって達成される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程c)の間の前記一次プローブと前記分子標的の分離は、最初に前記分子標的を粒子上に固定化することによって、且つそれらを分離した後、遠心分離により前記一次プローブを回収することによって達成される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
一次プローブの前記アレイの前記ポリヌクレオチドはすべて、均質なサイズであり、好ましくは同一であり、それぞれ互いに異なる一次プローブを得るための確定した配列を有することを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の分子標的を分析する方法。
【請求項13】
前記一次プローブのポリヌクレオチドの分析は、二次と呼ばれるポリヌクレオチドプローブのアレイを使用することによって実施され、それぞれのタイプの二次プローブは固有のタイプの一次プローブに特異的である、請求項12に記載の分子標的を分析する方法。
【請求項14】
工程c)で分離された前記一次プローブの分析は、:
d)工程c)で分離された前記一次プローブを、異なるタイプの二次プローブに接触させ、それぞれのタイプの二次プローブを、前記一次プローブのポリヌクレオチド部分とのハイブリダイゼーションによる特異的結合により結合させ得る工程;及び、
e)前記検出から前記分子標的を同定し、並びに/あるいは前記二次プローブとハイブリダイゼーションした前記一次プローブのポリヌクレオチド部分を回収、及び/または分析する工程;
を含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
工程e)は、基板上に固定化された前記二次プローブの上で前記一次プローブを循環させることによって、前記一次プローブの単純拡散によって、または電位を印加することによって実施されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記電位は、電極の少なくとも1つのネットワークにより印加されることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
一次プローブの前記アレイの前記ポリヌクレオチドは、ペプチド核酸(PNA)であることを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の分子標的を分析する方法。
【請求項18】
前記二次プローブと前記一次プローブとの間の特異的結合は、前記相補的ヌクレオチド配列の間のハイブリダイゼーションであること、及び前記一次プローブと前記二次プローブとの間に形成されるハイブリッドの分離は、温度を上昇させることによって制御された変性させることにより達成されることを特徴とする、請求項14から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つの検出器が、前記一次及び二次プローブのポリヌクレオチド部分のハイブリダイゼーションに関係するインピーダンスの変動を測定するために使用されることを特徴とする、請求項13から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1つの検出器が、前記一次及び二次プローブのポリヌクレオチド部分のハイブリダイゼーションにより生じる偏光の変動を測定するために使用されることを特徴とする、請求項13から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも1つの検出器が、PSRによる前記一次及び二次プローブのポリヌクレオチド部分のハイブリダイゼーションを測定するために使用されることを特徴とする、請求項13から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
分析対象の前記分子標的は、トランスクリプトームを表す核酸配列であることを特徴とする、請求項1から4、6、及び8から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
分析対象の前記分子標的は、プロテオームを構成することを特徴とする、請求項1から3、5、及び7から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
工程a)は、分析対象のタンパク質を含む傾向のある前記混合物を、異なるタイプの一次プローブのアレイと接触させる工程であって、それぞれ特定のポリヌクレオチド配列(配列またはポリヌクレオチドタグと呼ばれる)に結合する、抗原結合部位を含む抗体または抗体の断片のアレイからなり、前記アレイを含むそれぞれのタイプの抗体または抗体の断片が、前記タンパク質と前記抗体または抗体の断片との間の特異的結合を可能にする条件下で、分析対象の単一のタイプのタンパク質を認識し得る工程を含むことを特徴とする、請求項1から3、5、7から21、及び23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
工程c)は、特異的結合により結合している前記タンパク質及び前記抗体または抗体の断片を分離し、次いで、それぞれの抗体または抗体の断片及びその特定のポリヌクレオチドタグを分離して、分析対象の前記タンパク質のフィンガープリントを表すポリヌクレオチドタグのアレイを回収する工程を含むことを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
分析工程d)は、工程c)で分離された前記配列タグを、異なるタイプの二次プローブと接触させ、それぞれのタイプの二次プローブを、1つのタイプのポリヌクレオチドタグと特異的結合により結合させ得る工程を含むことを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
工程e)は、前記検出からの前記タンパク質の定量的検出、並びに/あるいは前記二次プローブに結合したポリヌクレオチドタグの回収及び/または分析を含むことを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記一次プローブのポリヌクレオチドはすべて、異なる質量を有すること、且つこれらのポリヌクレオチドを分析するために少なくとも1つの質量分析計が使用されることを特徴とする、請求項1から12、及び22から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記一次プローブのポリヌクレオチドはすべて、異なるサイズを有すること、及び前記ポリヌクレオチドは、電気泳動法、クロマトグラフィ、または濾過により分析されることを特徴とする、請求項24から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
−前記一次プローブを循環させることができるキャピラリーネットワーク;
−前記キャピラリーネットワークと接触するように配置されている、スポット中に編成された二次プローブのマトリックス;並びに、
−前記二次プローブが付着された、機能化電極として知られる電極のネットワークであって、このネットワークは、前記スポットマトリックスのスポットのそれぞれのラインが前記ネットワークの前記機能化電極のうちの1つに連結されるように配置されているネットワーク;
を含むことを特徴とする、請求項13から21のいずれか一項に記載の方法を実施するためのデバイス。
【請求項31】
さらに、いわゆる非機能化電極のネットワークを含み、このネットワークは、前記キャピラリーネットワークが前記2つの電極ネットワーク間に位置するように配置されることを特徴とする、請求項30に記載のデバイス。
【請求項32】
前記一次プローブの前記分析を用いることによって、前記分子標的の分析を可能にすることを特徴とする、請求項30または31のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項33】
前記一次及び二次プローブの前記ハイブリダイゼーションに関係するインピーダンスの変動を測定することを可能にすることを特徴とする、請求項32に記載のデバイス。
【請求項34】
PSRによる前記一次及び二次プローブの前記ハイブリダイゼーションを測定することを可能にすることを特徴とする、請求項32に記載のデバイス。
【請求項35】
前記一次プローブ−二次プローブハイブリッドの形成により生じる偏光の変動を測定することを可能にすることを特徴とする、請求項32に記載のデバイス。
【請求項36】
前記電極は、絶縁体上の薄層中にエッチングされることを特徴とする、請求項30から35のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項37】
機能化電極の前記アレイは、前記キャピラリーネットワークの上に位置し、且つ非機能化電極の前記アレイは、前記キャピラリーネットワークの下に位置することを特徴とする、請求項31に記載のデバイス。
【請求項38】
機能化電極の前記アレイは、前記キャピラリーネットワークの下に位置し、且つ非機能化電極の前記アレイは、前記キャピラリーネットワークの上に位置することを特徴とする、請求項31に記載のデバイス。
【請求項39】
機能化電極のそれぞれのスポットは、前記キャピラリーネットワークのそれぞれのキャピラリー中にあることを特徴とする、請求項30から38のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項40】
前記キャピラリーネットワークのそれぞれの末端にリザーバーをさらに含むことを特徴とする、請求項30から38のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項41】
前記リザーバーは、リザーバー電極と呼ばれる電極を含むことを特徴とする、請求項38に記載のデバイス。
【請求項42】
それぞれのリザーバーに含まれる前記リザーバー電極は、前記機能化電極と同じ平面中に位置することを特徴とする、請求項38に記載のデバイス。
【請求項43】
前記第1のリザーバー電極と前記第1の機能化電極との間、及び前記第2のリザーバー電極と前記最後の機能化電極との間にそれぞれ位置する第1及び第2の補助リンク電極をさらに含み、それぞれのリンク電極と対応するリザーバー電極との間の最短距離は、前記電極のすべての点において同一であることを特徴とする、請求項41または42に記載のデバイス。
【請求項44】
前記第2のリザーバーは、少なくとも1つの横断導管によって形成され、前記キャピラリーネットワークのすべてのキャピラリーの上流、及び前記検出器の下流に接続されることを特徴とする、請求項40から43のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項45】
それぞれのリザーバーは、適切な材料の板の厚さでくりぬかれることを特徴とする、請求項40から44のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項46】
前記電極ネットワークの少なくとも1つは、電極の行、列の型のメッシュによって形成されることを特徴とする、請求項31に記載のデバイス。
【請求項47】
他の電極のネットワークはアースされることを特徴とする、請求項46に記載のデバイス。
【請求項48】
機能化電極の前記ネットワークは、電極の行、列の型のメッシュによって形成され、且つ前記メッシュのそれぞれの正方形中に、電界効果トランジスタにより前記メッシュの行電極及び列電極に接続されている少なくとも1つのスポット電極を含むことを特徴とする、請求項30から47のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項49】
機能化電極の前記ネットワーク及び非機能化電極の前記ネットワークは、前記キャピラリーネットワークのいずれかの側の上に互いに向かい合って配置されている電極の行、列の型のメッシュによって形成され、それぞれのメッシュは、その正方形のそれぞれの中に、電界効果トランジスタにより前記メッシュの行電極及び列電極に接続されているスポット電極を含むことを特徴とする、請求項48に記載のデバイス。
【請求項50】
前記メッシュのそれぞれの正方形は、電界効果トランジスタにより前記メッシュの行電極及び列電極にそれぞれ接続されている2つのスポット電極を含むことを特徴とする、請求項48に記載のデバイス。
【請求項51】
−適宜、分析対象の前記混合物の核酸及び/またはタンパク質の前記分子標的と強く結合し得る、粒子群、例えば磁気粒子群;
−溶液中の異なるタイプの一次プローブのアレイであって、前記プローブはポリヌクレオチドからなる、またはそれぞれのプローブに特異的なポリヌクレオチドを含み、前記アレイを構成するそれぞれのタイプの一次プローブは、前記一次プローブ及び前記分子標的を接触させた場合に、分析対象の固有のタイプの分子標的に特異的結合により結合し得るアレイ;必要な場合、
−分析対象の前記分子標的のフィンガープリントを表す一次プローブのアレイを取得するために、特異的結合により結合した前記一次プローブ及び前記分子標的を分離するための手段及び回収するための手段;並びに/あるいは必要な場合、
−一次プローブの前記アレイの前記一次プローブのポリヌクレオチド部分を特異的に認識し得る二次プローブのアレイ;
を含むことを特徴とする、請求項1から29のいずれか一項に記載の方法を実施するためのデバイス。
【請求項52】
前記一次プローブ及び前記分子標的を逆ハイブリダイゼーションする手段は、前記温度を上昇させることができることを特徴とする、請求項51に記載のデバイス。
【請求項53】
分子標的から分離された一次プローブの定量分析の手段、例えば請求項30から50に規定の手段をさらに含むことを特徴とする、請求項51または52のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項54】
溶液中に異なるタイプの一次プローブの集団を含む、複合混合物中の分子標的を分析するのに適した一次プローブのアレイであって、:
−それぞれのタイプの一次プローブは、プローブの前記アレイ中の他のタイプの一次プローブと異なり;
−前記一次プローブ及び前記分子標的を接触させた場合に、それぞれのタイプの一次プローブは、特異的結合により、分析対象の固有のタイプの分子標的に結合でき;
−それぞれのタイプの一次プローブは、(i)ポリヌクレオチドであるか、または(ii)前記複合混合物中の固有のタイプの分子標的と特異的に結合し得るポリペプチド部分に関連付けられているポリヌクレオチドを含み、それぞれのポリヌクレオチドはプローブの前記アレイ中のその他すべての一次プローブのポリヌクレオチドと、これを構成するヌクレオチドの配列、またはそのサイズ、またはその質量が異なり、前記ポリヌクレオチドのそれぞれはプローブの前記アレイ中で、その配列、そのサイズ、またはその質量によりそれぞれ既知である;
一次プローブのアレイ。
【請求項55】
−前記一次プローブに対するサイズ間隔を規定し、プローブを標的にハイブリダイゼーションするための条件、特にプローブの群に対する融解温度Tmを規定する工程;
−複合混合物中の異なる配列のポリヌクレオチド分子標的の数iを決定する工程;
−当該試料中に存在し得るそれぞれの標的配列iに対する、考察中の標的によって完全にハイブリダイゼーション可能で、前記サイズが選択されたサイズ間隔に含まれ、前記Tmが選択された値の範囲内に含まれる、Ni個の可能なプローブの集合体を同定する工程;
−Ni個のプローブの前述の集合体中で、前記考察される配列iによって構成される前記分子標的とのハイブリダイゼーションにより結合し得、それによって形成される結合が特異的であり、そのときから前記混合物の他の可能な標的配列とのハイブリダイゼーションを除く、ni個のポリヌクレオチド配列の集団を選択する工程;
−前記プローブを構成するための推測されるni個のプローブのこの集団内において、必要な場合、その中に含まれる前記ヌクレオチドを修飾する、例えば、1つまたはいくつかのシトシン残基をメチル化またはエチル化することにより、それぞれのポリヌクレオチドに対し、前記集団内の他のポリヌクレオチドの質量と異なる質量を付与し、それぞれの配列が既知であり、且つすべてが異なる質量を有するポリヌクレオチドの集合体を取得し、それぞれの配列修飾に対して当該比較を反復的に繰り返す工程;
−それぞれの配列iに対してi個の一次プローブのZi個の組み合わせの集合体を同定し、これらの組み合わせのそれぞれは、調査されるni個のプローブのそれぞれの集団に対する固有の一次プローブを含み、ni個のプローブの前記集団の一次プローブのそれぞれは、前記で作られた前記組み合わせ中の一次プローブと比較され、且つ前記一次プローブの質量が互いに近すぎる場合、それらの配列を修正し、それぞれの配列修飾に対して当該比較を反復的に繰り返す段階;
−i個の一次プローブの前記Zi個の組み合わせを、前記組み合わせを含む前記i個の一次プローブの質量の合計の昇順で、及び修飾された基の数の昇順で順位付けする工程;
−調査される前記i個の配列にわたり、i個の一次プローブのZi個の組み合わせの集合体を同定する工程;並びに
−こうして規定された前記プローブアレイ中で前記一次プローブを合成する工程;
を含有する工程を含むことを特徴とする、請求項54に記載の一次プローブのアレイを調製する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17a】
【図17b】
【図17c】
【図17d】
【図18a】
【図18b】
【図18c】
【図18d】
【図18e】
【図18f】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図17b】
【図17c】
【図17d】
【図18a】
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【図18f】
【図19】
【図20】
【図21】
【公表番号】特表2008−532003(P2008−532003A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556637(P2007−556637)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【国際出願番号】PCT/FR2006/000428
【国際公開番号】WO2006/090073
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(590000514)コミツサリア タ レネルジー アトミーク (429)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【国際出願番号】PCT/FR2006/000428
【国際公開番号】WO2006/090073
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(590000514)コミツサリア タ レネルジー アトミーク (429)
【Fターム(参考)】
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