説明

複合耐火建材

【課題】本体の基材に強度の低い可燃性材料のものを採用しても、耐火性と耐水性とを付与でき、しかも耐ひび割れ性や耐屈曲性及び耐衝撃性等を高めて形成できる、建築物や建造物の屋根や内外壁等の内外装に用いて好適な複合耐火建材を提供する。
【解決手段】建材の本体部分を構成する可燃性基材2と、基材2の表面に防火性接着剤3を介してコーティングされた防火性ポルトランドセメント4の層とからなる複合耐火建材1であり、前記防火性ポルトランドセメント4は、石灰質を含んだ粉体成分と、骨材と、火熱により不燃性ガスを発生する発泡剤と、火熱下の発泡で炭化層を形成する炭化層形成物質と、耐水性のある樹脂で薄く被覆されてマイクロカプセル化された被覆型炭化層形成触媒とが配合された固形成分を、耐アルカリ性の弾性樹脂溶剤を硬化液とする液体成分で混練して得られることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火性と耐水性とを兼ね備え、かつ弾性特性にも優れて、建築物や建造物の内外装等に用いて好適な、基材に可燃性材料を用いて形成される複合耐火建材に関する。
【背景技術】
【0002】
難燃性ないし不燃性の軽量な複合耐火建材を得るために、建材の本体部分を構成する基材に、例えば、発泡ポリスチレンボード、木材、FRP等の可燃性材料を用い、当該基材の表面に、防火性接着剤を介して防火性ポルトランドセメントをコーティングし、かつ当該防火性ポルトランドセメントは、石灰質骨材を含んだ粉体成分に、樹脂溶剤と、火熱により不燃性ガスを発生する発泡剤と、火熱下の発泡で炭化層を形成する炭化層形成物質と、耐水性のある樹脂で薄く被覆されてマイクロカプセル化された被覆型炭化層形成触媒とを配合した液体成分を混練して作成するようにした技術が、特開2005−120646号公報によって開示されている。
【特許文献1】特開2005−120646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記特許文献1に示される技術は、本願発明者によって開発されたものであるが、その後の研究開発を進めていった結果、次のような改善の余地があることを知見するに至った。
【0004】
即ち、上記特許文献1に示した防火性ポルトランドセメントでは、耐火性と耐水性とに付いては十分に満足のいくものではあるが、下地となる可燃性基材の強度が低い場合に、その強度を十分に増強し得る程の弾性特性を有してはいなかった。つまり、強度の低い可燃性基材としては、具体的には、特に発泡ポリスチレンボードが顕著であるが、このような強度の低い可燃性基材を使用して形成した複合耐火建材では、その曲げ強度や引っ張り強度の点から、適用し得る対象の範囲が狭められてしまうという問題があった。
【0005】
本発明は以上のような問題を解決するために創案されたものであり、その目的は、本体の基材に強度の低い可燃性のものを採用しても、耐火性と耐水性とを付与できるばかりか、耐ひび割れ性や耐屈曲性及び耐衝撃性等を高めて形成できる、建築物や建造物の屋根や内外壁等の内外装に用いて好適な複合耐火建材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明に係る複合耐火建材は、該基材の表面に塗布された防火性接着剤層と、該防火性接着剤層を介して該基材の表面にコーティングされた防火性ポルトランドセメントの層からなり、前記防火性ポルトランドセメントが、石灰質を含んだ粉体成分と、骨材と、火熱により不燃性ガスを発生する発泡剤と、火熱下の発泡で炭化層を形成する炭化層形成物質と、耐水性のある樹脂で薄く被覆されてマイクロカプセル化された被覆型炭化層形成触媒とを配合した固形成分を、耐アルカリ性の弾性樹脂溶剤を硬化液とする液体成分で混練して得られることを特徴とする。
【0007】
また、上記固形成分として、さらに耐アルカリ性の繊維チョップを配合する構成ともなし得る。
【0008】
ここで、上記硬化液として用いる液体成分の耐アルカリ性の弾性樹脂溶剤としては、水性の弾性アクリル樹脂またはラテックス系、水性アルキド、メラミン、尿素フェノール樹脂系、塩化ビニール系等が採用できる。
【0009】
一方、固形成分にあっては、上記石灰質を含んだ粉体成分としては、ポルトランドセメント、ホワイトセメント、石膏等を採用できる。また、骨材としては、珪砂(3号〜7号)、パーライト、微細な砕石が使用可能であるが、粒度と性状の安定性を考慮すると珪砂を用いるのが好ましい。
【0010】
また、上記発泡剤としては、ジンアンジアミド、メラミン、グリシン、グアニジン、尿素、塩化パラフィン等のような、火熱により不燃性のアンモニア、二酸化炭素、水、塩化水素等を発生するものを採用できる。
【0011】
上記熱発泡により炭化層を形成させる物質としては、膨張黒鉛、あるいはグルコースやマルトース等の糖類、ペンタエリスリトール、アラビトール等の多価アルコール、酢酸ビニル、アミド樹脂等を採用できる。
【0012】
炭化層形成触媒としては、リン酸やリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等を採用できる。上記ポリリン酸アンモニウム等は、炭化層形成触媒としてだけではなく不燃ガス発泡剤としても用いられるが、長時間放置しておくと塗布材内で分解が起こりアンモニアガスを発生して経時劣化してしまい、初期性能に比して発泡炭化層が薄くなって防火性能の低下を起こしてしまう。そこで、この経時変化を防ぐために、上記炭化層形成触媒には耐水性のある樹脂で薄く被覆してマイクロカプセル化した製品を用いる。このマイクロカプセル化した炭化層形成触媒を配合した防火塗布材は、経時変化が殆どなく良好な耐久性を発揮する。特にアンモニウム塩は、その塗布後にアンモニアガスとして揮発してしまうので、マイクロカプセル化した被覆型にすると性状変化がなく、製品として防火性能を長期に亘って維持できる。
【0013】
また、上記各組成の配合比は重量パーセントで、石灰質を含んだ粉体成分が25〜45%、骨材が25〜40%、火熱により不燃性ガスを発生する発泡剤が5〜15%、火熱下の発泡で炭化層を形成する炭化層形成物質が2〜10%、被覆型炭化層形成触媒が5〜20%、弾性アクリル樹脂が5〜20%、耐アルカリ性の弾性樹脂溶剤が5〜20%の各範囲内となるようにすることが望ましい。
【0014】
また、固形成分として、さらに耐アルカリ性の繊維チョップを配合する場合には、当該繊維チョップの長さは5〜15mm程度として、重量配合比で3〜5%含ませることが望ましい。繊維としては、ガラス繊維やケブラー繊維、炭素繊維、ビニロン繊維等を使用し得る。
【0015】
また、前記可燃性基材としては、発泡ポリスチレン等の発泡プラスチック系断熱材ボード,木質系ボード,繊維強化樹脂ボードを採用し得る。
【発明の効果】
【0016】
本体の基材に強度の低い可燃性材料のものを採用しても、耐火性と耐水性とを付与できるばかりか、耐ひび割れ性や耐屈曲性及び耐衝撃性等を高めて形成でき、建築物や建造物の屋根や内外壁等の内外装に用いて好適な複合耐火建材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明の好適な一実施の形態例について添付図面を参照して詳細に詳述する。図1は本発明に係る複合耐火建材のカッティングモデルを示す。この複合耐火建材1は本体部分を構成する可燃性基材2の片側表面に防火性接着剤3の層を介して防火性ポルトランドセメント4の層が多層にコーティングされた構造となっている。
【0018】
上記防火性ポルトランドセメント4は、石灰質を含んだ粉体成分と、骨材と、火熱により不燃性ガスを発生する発泡剤と、火熱下の発泡で炭化層を形成する炭化層形成物質と、耐水性のある樹脂で薄く被覆されてマイクロカプセル化された被覆型炭化層形成触媒とを配合した固形成分を、耐アルカリ性の弾性樹脂溶剤を硬化液とする液体成分で混練して得られるものである。
【0019】
ここで、本実施形態では、上記耐アルカリ性の弾性樹脂溶剤としては、弾性アクリル樹脂(水性エマルジョン樹脂)を用いている。また、上記弾性アクリル樹脂の難燃剤として、水酸化アルミニウム、マイクロカプセル化された被覆型燐酸アンモニウム、膨張黒鉛を配合している。即ち、上記被覆型燐酸アンモニウムは火熱により不燃性のアンモニアや二酸化炭素等のガスを発生する発泡剤として機能するものである。また、上記膨張黒鉛は炭火層形成物質として機能し、上記被覆型リン酸アンモニウムは炭化層形成触媒として機能する。なお、当該被覆型リン酸アンモニウムはさらに不燃ガス発泡剤としても機能する。また、上記水酸化アルミニウムは増量材でもある。
【0020】
また、石灰質を含んだ粉体成分にはホワイトセメントを使用し、骨材には珪石粉と硅砂とを使用した。なお、ホワイトセメント、珪石粉、硅砂、水酸化アルミニウム、被覆型リン酸アンモニウム、膨張黒鉛とからなる固形成分は、下記の表1に示すような重量比で配合した。即ち、ホワイトセメント40%、珪石粉35%、硅砂10%、水酸化アルミニウム15%、被覆型リン酸アンモニウム5%、膨張黒鉛2%である。
【0021】
そして、上記組成比でなる固形成分と上記弾性アクリル樹脂(水性エマルジョン樹脂)でなる液体成分とを4:1の重量比で混合攪拌して防火性ポルトランドセメント4を形成した。この混合攪拌に際して、粘性の調整は水で行った。
【0022】
[表1]

【0023】
そして、上記の様にして作製した本実施形態の防火性ポルトランドセメント4にあっては、そのコーティング(塗布)に際して、コテ、ローラ、吹き付けのいずれ作業で行っても、塗布むら等の支障を生じることなく良好に塗布することができた。また、乾燥後の塗膜の外観も、流れや割れ、凹凸の差異等が少なく非常に良好であり、各種試験においても良好な結果を示した。
【0024】
即ち、JIS A 6916−1995 6.8による軟度変化試験においては、−20〜20%の範囲内という品質基準に対し、12.0%を確保して基準を満たしていた。
JIS K 5400−1990 4.9による可使時間の試験においても、20℃、65%RHで1時間以上という品質基準に対し、1.5時間を確保して基準を満たしていた。
JIS K 5400−1990 6.5による硬化乾燥時間試験においても、20℃、65%RHで8時間以内という品質基準に対し、6時間を確保して基準を満たしていた。
JIS A 6916−2000 7.8による耐ひび割れ性試験においても、塗膜厚2mmでひび割れを生じないことという品質基準に対し、全く異常は生じなかった。
JIS A 6916−2000 7.10による耐衝撃性試験も、ひび割れ及びはがれがないことという品質基準に対し、全くひび割れは生ずることがなく異常はなかった。
【0025】
JIS A 6916−2000 7.13によるモルタル下地への付着強さ試験も、標準養生で0.7N/mm以上{7.1kgf/cm以上}という品質基準に対し、1.5N/mm{18.6kgf/cm2}を確保しており、基準を満たしている。また、低温養生においても、0.5N/mm以上{5.1kgf/cm2以上}という品質基準に対し、1.6N/mm{18.6kgf/cm2}を確保しており、基準を満たしている。
JIS A 6916−2000 7.14による吸水量試験も、2.0g以下という品質基準に対し、0.3gを確保しており、基準を満たしている。
JIS K 5400−1990 8.19による耐水性試験も、水中に1000時間浸漬して塗膜に以上が認められないことという品質基準に対し、異常は全く認められなかった。
JIS A 6909によるサンシャインウエザオメーターの1,000時間照射という促進耐候性試験においても、著しい変色、ひび割れ、ピンホール、浮き、剥がれが認められないことという品質基準に対し、全く異常は認められなかった。
また、直径10mm芯棒を使用した耐屈曲性の社内試験法においても、30度折り曲げてもひび割れおよび剥がれがないことと定めた品質基準に対し、全くひび割れは生ずることがなく異常は認められなかった。
耐火性に付いても、1.0 kg/m塗布して3日間の標準状態での養生後、ガスバーナー(600〜700℃)を当て、発煙・発火状態を観察するという社内試験を行ったが、発煙までの時間が30秒以上で発煙後に更にバーナーを当てても発火がみられないことと定めた品質基準に対し、これを満足して異常は全く認められなかった。
【0026】
即ち、以上の各種の試験結果から明らかなように、当該防火性ポルトランドセメントは、耐火性と耐水性とを兼ね備えるだけでなく、弾性特性に優れて耐ひび割れ性や耐屈曲性及び耐衝撃性が高く、高強度で高耐久性に富んでいることが判る。
【0027】
つまり、従来の樹脂モルタルでは、樹脂成分が燃焼してしまうという問題や、塗布厚が薄いと火災時には熱による膨張や変形により亀裂や爆裂を起こし易いという問題があって、火災時における耐火性や難燃性には全く期待をもてるものでは無かったが、上記の防火性ポルトランドセメント4であれば、火災時の熱により亀裂や爆裂が生じてしまうとことを可及的に防止できて、剥離面や亀裂面から火災が入り込んでしまうことを防止できる。しかも、耐水性にも優れており、良好な防水効果も得られる。さらに、弾性特性に優れて引っ張り強度や曲げ強度が高いので、基材2の強度を効果的に補強することもできて、当該基材2の変形に対する追従性にも優れる。
【0028】
従って、図1に示すように、上記防火性ポルトランドセメント4と可燃性基材2との双方に対して接着性がある防火性に富んだ接着剤組成物からなる防火性接着剤3の層を介して、当該防火性ポルトランドセメント4を可燃性基材2の表面に層状にコーティングすることによって、当該可燃性基材2を耐火性と耐水性とを兼ね備えるだけでなく、耐ひび割れ性や耐屈曲性及び耐衝撃性等に優れた強度と高耐久性とを有した複合耐火建材1として形成することができ、建築物や建造物の屋根や内外壁等の内外装に用いて好適なものとなる。
【0029】
また、上記可燃性基材2としては木質系ボードや繊維強化樹脂ボード、発泡ポリスチレンや発泡ウレタン,発泡エチレン,発泡フェノール等からなる発泡プラスチック系断熱材ボードを採用できる。
【0030】
ここで、図1に示す実施形態では、可燃性基材2には発泡ポリスチレンボード2aを用いている。当該発泡ポリスチレンボード2aは、その厚みを75mm程度としたものが建材として好適である。そして、この発泡ポリスチレンボード2aの片側面には、その表面を不燃化ないしは難燃化するための防火性ポルトランドセメント4が防火性接着剤3の層を介して3層状にコーティングされて乾燥固化されている。また、当該図示例では防火性ポルトランドセメント4の層は波形断面形状に形成されている。このように防火性ポルトランドセメント4の層を波形に形成すると、その表面積が増加するので、火炎に晒されされた際の炭化層の形成を迅速化させることができる。また、壁面材としての意匠性を付与することもできる。なお、波形状は最大厚みとなる山部で2mm程度、最小厚みとなる谷部で1.5mm程度の厚み寸法とするのが好適である。このようにして、発泡ポリスチレンボード2aを可燃性基材2として採用すれば、軽量で断熱性に富んだ耐火性断熱ボードとして機能する複合耐火建材1を得ることができる。
【0031】
以上の複合耐火建材1は、例えば型底面に波形の凹凸を形成した下型内に未硬化の防火性ポルトランドセメント4を充填し、次いで表面に防火性接着剤層3を塗着した発泡ポリスチレンボード2aを防火性ポルトランドセメント4上に配置し、上型を型締した状態で、防火性ポルトランドセメント4を養生固化させ、しかる後に脱型することで成形でき、これにより発泡複合耐火建材1の表面に波形をなしたポルトランドセメント4の層を一体化した耐火性と断熱性とに優れた軽量な複合耐火建材1を得ることができる。
【0032】
なお、図1に示し実施形態においては、複合耐火建材1を立設した状態で波形が横に連続し、その山と谷が縦に延びる配列となっている場合を示しているが、その山と谷が横に延びる配列であってもよいことは勿論であり、その他求められる意匠形状に応じて型形状を選択することで、他の適宜な模様形状に形成できることも言うまでもない。
【0033】
また、図1では適宜形状のカットモデルとしているが、実際の複合耐火建材1の縦横寸法は、例えば180×90cm、90×90cm、90×60cmなどの建材としての標準定尺寸法に形成されるとともに、施工現場などにおいて、スチロールカッターなどで現物にあわせて寸法カットされて用いられるほか、隣合うボード間の接合性を確保するために、一方の縁部に凹部及び他方の縁部に凸部を形成し、隣合うボード間を凹凸係合することもできる。
【0034】
以上のような、発泡ポリスチレンボード2aを基材とした軽量な複合耐火建材1の用途としては、例えばコンクリート壁の外装ボードまたは内装ボードとして、防火性ポルトランドセメント4側を表面に向けてコンクリート壁面に貼着することにより、耐火性に優れた断熱層として機能させることができる。
【0035】
また、上記防火性ポルトランドセメント4には、固形成分として、さらに耐アルカリ性の繊維チョップを含ませる様にしても良い。当該繊維としては、ガラス繊維やケブラー繊維、ビニロン繊維等を採用し得る。当該繊維チョップの長さは5〜15mm程度として、配合比は重量パーセントで3〜5%含ませると良い。このような、繊維材を含ませることにより、曲げ強度や引っ張り強度を更に向上させることができる。
【0036】
また、上記実施形態において、固形成分の増量材として閉鎖型中空セラミックフィラーを含ませる様にしても良い。この閉鎖型中空セラミックフィラーとしては、例えば太平洋セメント株式会社製のイースフィアーズ(E−SPHERES)等が採用できる。この閉鎖型中空セラミックフィラーは平均粒径が150〜350μmのものを使用し、40重量%以下の割合で配合させた組成とするのが望ましい。即ち、40重量%を超えると付着性、耐水性、強度が低下し始め、その含有量が多すぎると防火性能も低下する。このため、40重量%が配合割合のほぼ上限といえる。
【0037】
そして、このような閉鎖型中空セラミックフィラーを含ませれば、軽量化と断熱性の向上が更に図れるとともに、硬化の際の収縮を減じて、ひび割れや亀裂の発生の防止をより一層効果的に図れ、かつ漆喰様の質感も醸し出せて美装性の向上も図れるようになる。
【0038】
図2 は、前記複合耐火建材の他の実施形態を示す。この複合耐火建材1は、前記発泡ポリスチレンボード2aの両面に防火性接着剤3の層を介して防火性ポルトランドセメント4の層を一体化させて設けているほかは、前記第一実施形態と同じであり、発泡ポリスチレンボード2aの両面に対する難燃化、準不燃化ないしは不燃化を図ることができる。
【0039】
また、図1と図2とに示した両実施形態において、防火性接着剤3の層内には、図示していないが、更に補強繊維を配設して構成する様にしても良い。このように構成すれば、複合耐火建材1の耐衝撃強度や引っ張り強度、曲げ強度等をより一層向上させることができる。上記補強繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、ケブラー繊維、ビニロン繊維等を採用し得る。更に、これらの補強繊維はマット状に形成したものを用いて、これに防火性接着剤3を含浸させて防火性ポルトランドセメント4の層を一体化させるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明にかかる複合耐火建材の一実施形態によるカットモデルの斜視図である。
【図2】同複合耐火建材の他の実施形態によるカットモデルの斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
1 複合耐火建材
2 基材( 発泡ポリスチレンボード)
3 防火性接着剤
4 防火性ポルトランドセメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建材の本体部分を構成する可燃性基材と、該基材の表面に塗布された防火性接着剤層と、該防火性接着剤層を介して該基材の表面にコーティングされた防火性ポルトランドセメント層とからなり、
前記防火性ポルトランドセメントが、
石灰質を含んだ粉体成分と、骨材と、火熱により不燃性ガスを発生する発泡剤と、火熱下の発泡で炭化層を形成する炭化層形成物質と、耐水性のある樹脂で薄く被覆されてマイクロカプセル化された被覆型炭化層形成触媒とを配合した固形成分を、
耐アルカリ性の弾性樹脂溶剤を硬化液とする液体成分で混練して得られることを特徴とする複合耐火建材。
【請求項2】
前記請求項1において、前記固形成分として、さらに耐アルカリ性の繊維チョップを配合したことを特徴とする複合耐火建材。
【請求項3】
前記請求項1または2において、前記可燃性基材が、発泡ポリスチレンボードであることを特徴とする複合耐火建材。
【請求項4】
前記請求項1または2において、前記可燃性基材が、木質系ボードであることを特徴とする複合耐火建材。
【請求項5】
前記請求項1または2において、前記可燃性基材が繊維強化樹脂ボードであることを特徴とする複合耐火建材。
【請求項6】
前記請求項1〜5のいずれかにおいて、前記防火性ポルトランドセメント層が、断面波形をなして形成されていることを特徴とする複合耐火建材。
【請求項7】
前記請求項1〜6のいずれかにおいて、前記防火性接着剤層に補強繊維を配設したことを特徴とする複合耐火建材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−2021(P2009−2021A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−162814(P2007−162814)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(502439315)
【出願人】(507107349)
【出願人】(507106892)株式会社JERICO (3)
【出願人】(507107350)株式会社ティーテック (3)
【Fターム(参考)】