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複合膜構造体及び燃料電池並びにそれらの製造方法
説明

複合膜構造体及び燃料電池並びにそれらの製造方法

【課題】電気化学特性に優れた複合膜構造体及び燃料電池、並びにそれらの製造方法を提供する。
【解決手段】水素透過性金属膜1と固体電解質膜2とからなる複合膜構造体であって、固体電解質膜2は、水素透過性金属膜1の熱酸化処理した表面上に塗布法により形成されたものであり、2価のアルカリ土類金属をAサイトに配し、4価のセリウム及び4価のジルコニウムのうち少なくとも一方をBサイトに配するペロブスカイト型酸化物を基本構造とし且つ4価のBサイト元素の一部を3価の希土類元素で置換した結晶構造を有する化合物からなり、固体電解質膜2は、アルカリ土類金属と、セリウム及びジルコニウムのうち少なくとも一方と、希土類元素と、を含む有機金属酸塩溶液を塗布して第1固体電解質前駆体膜を形成し、前記第1固体電解質前駆体膜を急速昇温熱処理により結晶化させることにより形成した第1固体電解質膜21を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質膜−水素透過性金属膜からなる複合膜構造体及び燃料電池、並びにそれらの製造方法に関する。かかる複合膜構造体は、特に中温域において作動する燃料電池に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池として、PAFC(リン酸型燃料電池)、MCFC(溶融炭酸塩型燃料電池)、SOFC(固体電解質型燃料電池)、PEFC(固体高分子型燃料電池)等が提案されている。それぞれの燃料電池の作動温度は、例えば、PEFC(固体高分子型燃料電池)であれば、80℃程度、SOFC(固体電解質型燃料電池)であれば1000℃程度と様々である。
【0003】
本件出願人は、AECeO(AE:2価のアルカリ土類金属)のプロトン導電性は維持しつつも、当該AECeOのCOに対する脆弱性を克服してCOを含む混合ガス雰囲気環境下でも使用できるプロトン導電性酸化物膜−水素透過膜を先に提案している(特許文献1参照)。そして、特許文献1では、かかるプロトン導電性酸化物膜−水素透過膜を適用して、250〜500℃程度の中温域で作動する燃料電池を開発できれば、既存の燃料電池よりも性能面、材料面で優位な燃料電池になる可能性があることを示している。
【0004】
特許文献1で開示したプロトン導電性酸化物膜−水素透過膜を中温域で作動する燃料電池に適用するには、プロトン導電性固体電解質を薄膜化させて、固体電解質の内部抵抗を低くすることが求められる。しかしながら、融点の比較的低い材料、例えば、パラジウムからなる水素透過膜の性能を維持しつつ、プロトン導電性固体電解質を薄膜化してその特性を維持するのは困難であった。
【0005】
また、水素透過性能を有する金属基材、及びその上に形成された厚みが20μm以下のプロトン導電性酸化物膜からなる水素透過構造体及びこの水素透過構造体を用いた燃料電池が提案されている(特許文献2参照)。特許文献2においては、プロトン導電性酸化物膜の層を形成する方法として、スパッタ法、電子ビーム蒸着法、レーザーアブレーション法や、ゾル−ゲル法などウェットプロセスによる方法が挙げられている。しかしながら、製造にコストがかかるという問題や、水素透過膜の性能を維持しつつ、単相からなる緻密なプロトン導電性酸化物膜を形成するのが難しいという問題があった。
【0006】
なお、プロトン導電性酸化物膜が単相でなかったり、緻密な膜となっていない場合は、水素を選択的に透過する性能が低下したり、所望の内部抵抗を得ることができなくなってしまったり、それらにより発電特性が低下してしまうということが問題となる。
【0007】
このような問題は、燃料電池に用いられる固体電解質−水素透過性金属膜からなる複合膜構造体だけではなく、他の電気化学デバイス、例えば、水素センサー、水素ポンプ、水蒸気センサー、排ガス浄化デバイスに用いられる複合膜構造体においても同様に存在する。
【0008】
そこで、本出願人は、水素透過性金属膜と、薄膜の固体電解質膜とからなる複合膜構造体を提案している(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−054170号公報
【特許文献2】特開2007−026946号公報
【特許文献3】特開2011−029149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献3の複合膜構造体は、低コストで製造することができ、内部抵抗が低く、発電特性等の電気化学特性及び水素透過性に優れたものであったが、さらに発電特性等の電気化学特性に優れた複合膜構造体が求められている。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑み、電気化学特性に優れた複合膜構造体及び燃料電池、並びにそれらの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様は、水素透過性金属膜と固体電解質膜とからなる複合膜構造体であって、前記固体電解質膜は、前記水素透過性金属膜の熱酸化処理した表面上に塗布法により形成されたものであり、2価のアルカリ土類金属をAサイトに配し、4価のセリウム及び4価のジルコニウムのうち少なくとも一方をBサイトに配するペロブスカイト型酸化物を基本構造とし且つ4価のBサイト元素の一部を3価の希土類元素で置換した結晶構造を有する化合物からなり、前記固体電解質膜は、アルカリ土類金属と、セリウム及びジルコニウムのうち少なくとも一方と、希土類元素と、を含む有機金属酸塩溶液を塗布して第1固体電解質前駆体膜を形成し、前記第1固体電解質前駆体膜を急速昇温熱処理により結晶化させることにより形成した第1固体電解質膜を備えることを特徴とする複合膜構造体にある。
【0013】
かかる態様によれば、第1固体電解質前駆体膜を急速昇温熱処理により結晶化させることにより、水素透過性金属膜と固体電解質膜の間に金属酸化物膜の形成されていないものとすることができると共に、水素透過性金属膜と固体電解質膜の密着性が優れたものとすることができる。これにより、電気化学特性に優れた複合膜構造体とすることができる。
【0014】
ここで、前記固体電解質膜は、前記水素透過性金属膜又は前記第1固体電解質膜上に前記有機金属酸塩溶液を塗布した後にエネルギー線を照射して第2固体電解質前駆体膜を形成し、前記第2固体電解質前駆体膜を急速昇温熱処理により結晶化させることにより形成した第2固体電解質膜をさらに備えるのが好ましい。
【0015】
これによれば、エネルギー線を照射して得た第2固体電解質前駆体膜を、急速昇温熱処理により結晶化させることにより、緻密な第2固体電解質膜とすることができる。第1固体電解質膜と第2固体電解質膜とを備えることにより、より電気化学特性に優れた複合膜構造体とすることができる。
【0016】
本発明の好適な実施態様としては、前記固体電解質膜は、1以上の前記第1固体電解質膜と、1以上の前記第2固体電解質膜とからなるものが挙げられる。
【0017】
本発明の好適な実施態様としては、前記固体電解質膜は、前記第2固体電解質膜と、前記第2固体電解質膜の両面に設けられる前記第1固体電解質膜とから構成されるものが挙げられる。
【0018】
本発明の他の態様は、水素透過性金属膜と固体電解質膜とからなる複合膜構造体であって、前記固体電解質膜は、前記水素透過性金属膜の熱酸化処理した表面上に塗布法により形成されたものであり、2価のアルカリ土類金属をAサイトに配し、4価のセリウム及び4価のジルコニウムのうち少なくとも一方をBサイトに配するペロブスカイト型酸化物を基本構造とし且つ4価のBサイト元素の一部を3価の希土類元素で置換した結晶構造を有する化合物からなり、前記固体電解質膜は、アルカリ土類金属と、セリウム及びジルコニウムのうち少なくとも一方と、希土類元素と、を含む有機金属酸塩溶液を塗布して固体電解質前駆体膜を形成し、前記固体電解質前駆体膜にエネルギー線を照射した後、前記固体電解質前駆体膜を急速昇温熱処理により結晶化させることにより形成したものであることを特徴とする複合膜構造体にある。
【0019】
かかる態様によれば、エネルギー線を照射して得た固体電解質前駆体膜を、急速昇温熱処理により結晶化させることにより、水素透過性金属膜と固体電解質膜の間に金属酸化物膜の形成されていないものとすることができると共に、緻密な固体電解質膜とすることができる。これにより、電気化学特性に優れた複合膜構造体とすることができる。
【0020】
ここで、前記アルカリ土類金属は、バリウム(Ba)及びストロンチウム(Sr)の少なくとも一方であるのが好ましい。これによれば、より発電特性に優れた複合膜構造体とすることができる。
【0021】
また、前記3価の希土類元素が、イッテルビウム(Yb)、エルビウム(Er)、イットリウム(Y)、ディスプロシウム(Dy)、ガドリニウム(Gd)、サマリウム(Sm)、及びネオジム(Nd)からなる群より選択される少なくとも1つであるのが好ましい。これによれば、より発電特性に優れた複合膜構造体とすることができる。
【0022】
本発明の好適な実施態様としては、前記水素透過性金属膜が、パラジウム系金属膜であるものが挙げられる。
【0023】
本発明の他の態様は、上記の複合膜構造体を具備し、前記固体電解質膜の前記水素透過性金属膜とは反対側の面にカソードを備え、前記水素透過性金属膜がアノードとなっていることを特徴とする燃料電池にある。
【0024】
かかる態様によれば、電気化学特性に優れた燃料電池とすることができる。
【0025】
本発明の他の態様は、水素透過性金属膜と固体電解質膜とからなる複合膜構造体の製造方法であって、水素透過性金属膜の少なくとも一方の表面を熱酸化処理する工程と、前記水素透過性金属膜の熱酸化処理した表面上に、2価のアルカリ土類金属をAサイトに配し、4価のセリウム及び4価のジルコニウムのうち少なくとも一方をBサイトに配するペロブスカイト型酸化物を基本構造とし且つ4価のBサイト元素の一部を3価の希土類元素で置換した結晶構造を有する化合物からなる固体電解質膜を形成する工程と、を具備し、前記固体電解質膜を形成する工程は、アルカリ土類金属と、セリウム及びジルコニウムのうち少なくとも一方と、希土類元素と、を含む有機金属酸塩溶液を塗布して固体電解質前駆体膜を形成する塗布工程、及び前記固体電解質前駆体膜を急速昇温熱処理により900℃以下の低温で焼成して結晶化させる焼成工程により第1固体電解質膜を形成する工程を備えることを特徴とする複合膜構造体の製造方法にある。
【0026】
かかる態様によれば、第1固体電解質前駆体膜を急速昇温熱処理により結晶化させることにより、水素透過性金属膜と固体電解質膜の間に金属酸化物膜の形成されていないものとすることができると共に、水素透過性金属膜と固体電解質膜の密着性が優れたものとすることができる。これにより、電気化学特性に優れた複合膜構造体を製造することができる。
【0027】
ここで、前記固体電解質膜形成工程は、さらに、前記有機金属酸塩溶液を塗布した後にエネルギー線を照射して第2固体電解質前駆体膜を形成する塗布・照射工程、及び前記第2固体電解質前駆体膜を急速昇温熱処理により900℃以下の低温で焼成して結晶化させる焼成工程により第2固体電解質膜を形成する工程を備えるのが好ましい。
【0028】
これによれば、エネルギー線を照射して得た第2固体電解質前駆体膜を、急速昇温熱処理により結晶化させることにより、緻密な第2固体電解質膜とすることができる。第1固体電解質膜と第2固体電解質膜とを備えることにより、より電気化学特性に優れた複合膜構造体とすることができる。
【0029】
また、前記急速昇温熱処理は、50〜200℃/分の昇温速度で急速昇温するのが好ましい。これによれば、より確実に、電気化学特性に優れた複合膜構造体を製造することができる。
【0030】
前記急速昇温熱処理は、800℃以上900℃以下に加熱するのが好ましい。これによれば、より確実に、電気化学特性に優れた複合膜構造体を製造することができる。
【0031】
本発明の他の態様は、固体電解質膜と、前記固体電解質膜の一方面側に形成される水素透過性金属膜からなるアノードと、前記固体電解質膜の他方面側に形成されるカソードとを具備する燃料電池の製造方法であって、水素透過性金属膜の少なくとも一方の表面を熱酸化処理する工程と、前記水素透過性金属膜の熱酸化処理した表面上に、2価のアルカリ土類金属をAサイトに配し、4価のセリウム及び4価のジルコニウムのうち少なくとも一方をBサイトに配するペロブスカイト型酸化物を基本構造とし且つ4価のBサイト元素の一部を3価の希土類元素で置換した結晶構造を有する化合物からなる固体電解質膜を形成する工程と、を具備し、前記固体電解質膜を形成する工程は、アルカリ土類金属と、セリウム及びジルコニウムのうち少なくとも一方と、希土類元素と、を含む有機金属酸塩溶液を塗布して固体電解質前駆体膜を形成する塗布工程、及び前記固体電解質前駆体膜を急速昇温熱処理により900℃以下の低温で焼成して結晶化させる焼成工程により第1固体電解質膜を形成する工程を備えることを特徴とする燃料電池の製造方法にある。
【0032】
かかる態様によれば、電気化学特性に優れた燃料電池を製造することができる。
【0033】
ここで、前記有機金属酸塩溶液を塗布した後にエネルギー線を照射して第2固体電解質前駆体膜を形成する塗布・照射工程、及び前記第2固体電解質前駆体膜を急速昇温熱処理により900℃以下の低温で焼成して結晶化させる焼成工程により第2固体電解質膜を形成する工程を備えるのが好ましい。これによれば、より電気化学特性に優れた燃料電池とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施形態1に係る複合膜構造体の構造を簡単に示した図である。
【図2】実施形態1に係る燃料電池の構造を示す平面図及び断面図である。
【図3】実施形態1に係る燃料電池の構造を示す説明図である。
【図4】実施形態2に係る複合膜構造体の構造を簡単に示した図である。
【図5】実施形態2に係る燃料電池の構造を示す平面図及び断面図である。
【図6】実施形態3に係る複合膜構造体の構造を簡単に示した図である。
【図7】実施形態3に係る燃料電池の構造を示す説明図である。
【図8】実施例1〜2及び比較例1〜2の断面反射電子像である。
【図9】実施例2及び比較例1〜2のXRD測定結果を示すグラフである。
【図10】実施例2及び比較例1〜2の導電率を示すグラフである。
【図11】実施例4の発電性能試験結果を示すグラフである。
【図12】実施例4の発電性能試験結果を示すグラフである。
【図13】実施例2,5,6の断面反射電子像である。
【図14】実施例2,5,6のXRD測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(実施形態1)
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0036】
図1は、本実施形態の複合膜構造体の構造を簡単に示した図である。
【0037】
本発明にかかる複合膜構造体は、図1に示すように、水素透過性金属膜1と固体電解質膜2とからなり、界面が連続接合した状態となっている。この水素透過性金属膜1及び固体電解質膜2は、水素を分離可能な水素透過性の膜である。
【0038】
水素透過性金属膜1は、例えば、H(水素)やCO(二酸化炭素)などの混成ガスから水素のみを分離可能なものであり、具体的には、水素分子をプロトン(H)と電子(e)になった状態で透過させることができる。
【0039】
水素透過性金属膜1は、プロトン(H)が通過可能でありCOを含むガス中から水素のみを分離可能な材料からなるものであればよい。かかる材料としては、例えば、パラジウム、ニオブ、タンタル、ランタン、チタン、ジルコニウム、銅、ニッケル、あるいはそれらと銀との合金を挙げることができ、パラジウム系金属が好ましい。パラジウム系金属からなる水素透過性金属膜は、詳しくは後述するが、表面を熱酸化する際に、元々の水素透過能を損なわない程度の極表面のみを容易に熱酸化することができる。パラジウム系金属としては、具体的には、パラジウム、パラジウムと銀の合金、パラジウムと白金の合金、パラジウムと銅の合金が挙げられ、特に、パラジウムと、水素脆化を抑える効果のある銀との合金が好ましい。なお、水素透過性金属膜1は、単層からなるものであっても、同種又は異種材料を積層したものであってもよい。本実施形態では、水素透過性金属膜1は、パラジウムと銀の合金からなるものとした。
【0040】
固体電解質膜2は、2価のアルカリ土類金属をAサイトに配し、4価のセリウム及び4価のジルコニウムのうち少なくとも一方をBサイトに配するペロブスカイト型酸化物(ABO)を基本構造とし且つBサイトの一部を3価の希土類元素で置換した結晶構造を有する化合物からなる。この固体電解質膜2は、H(水素)やCO(二酸化炭素)などの混成ガスから水素のみを分離可能なプロトン導電性の電解質膜である。
【0041】
本実施形態にかかる固体電解質膜2は、2価のアルカリ土類金属をAサイトに配し、4価のセリウム及び4価のジルコニウムのうち少なくとも一方をBサイトに配するペロブスカイト型酸化物(ABO)を基本構造とし、4価のBサイト元素の一部を3価の希土類元素で置換した結晶構造を有する化合物からなる。なお、ここでいう4価のBサイト元素とは、Bサイトに配される4価のセリウム又は/及び4価のジルコニウムである。このペロブスカイト型酸化物(ABO)は、酸化物イオン空格子点を発生させてプロトン導電性を発現させたものであり、4価のBサイト元素の一部が、3価の希土類元素で置換されている。なお、3価の希土類元素で置換することにより、例えば、Ce4+→Yb3+とすると、結晶格子中の電気的中性が崩れ、これを補うため格子中の酸素1/2個が抜ける。そうすると格子中の電気的中性が保たれる。このように意図的に酸化物イオン空孔を生成させること(ドーピング)ができ、よりプロトンの生成が促進されることになる。
【0042】
Bサイトに配する2価のアルカリ土類金属としては、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)等が挙げられ、バリウム、ストロンチウム、又はバリウム及びストロンチウムのいずれかをBサイトに配するのが好ましい。
【0043】
3価の希土類元素としては、イッテルビウム(Yb)、エルビウム(Er)、イットリウム(Y)、ディスプロシウム(Dy)、ガドリニウム(Gd)、サマリウム(Sm)、ネオジム(Nd)が挙げられるが、複合膜構造体を中温形燃料電池に適用する場合は、中温度域、水素気流中で良好なプロトン導電性が発現するイットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)、サマリウム(Sm)が好ましい。
【0044】
また、固体電解質膜2は、詳しくは後述する方法により形成された第1固体電解質膜21からなるものである。かかる第1固体電解質膜21は、単相からなる。ここでいう単相とは、X線回折(XRD)パターンにおいて、Aサイトのアルカリ土類金属から生成しやすい炭酸塩(例えば、BaCOなど)のメインピークとペロブスカイト(ABO)のメインピークとの強度比が0.05未満、好ましくは0.02未満となるものを指す。本発明の固体電解質膜2は、単相からなることにより、プロトン導電性に優れたものである。
【0045】
また、固体電解質膜2は、厚さが30μm以下であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは3μm以下である。固体電解質膜2を薄膜とすることにより、固体電解質膜2の内部抵抗を著しく低いものとすることができる。
【0046】
本実施形態では、水素透過性金属膜1は、厚さ200μmのパラジウムと銀の合金とし、固体電解質膜2は、三酸化バリウムセリウム(BaCeO)のセリウムの一部をイットリウム(Y)で置換したBaCe0.90.13−α構造(以下、BCYOとする)からなる厚さ1μmの膜とした。
【0047】
上述した固体電解質膜2は、水素透過性金属膜1の熱酸化処理した表面上に塗布法により形成されたものである。ここでいう塗布法とは、前駆体溶液を塗布して焼成する方法のことであり、例えば、MOD法が挙げられる。本実施形態にかかる固体電解質膜2は、具体的には、アルカリ土類金属と、セリウム及びジルコニウムのうち少なくとも一方と、希土類元素と、を含む有機金属酸塩溶液を水素透過性金属膜1の熱酸化処理した表面上に塗布して第1固体電解質前駆体膜を形成し、この第1固体電解質前駆体膜を急速昇温熱処理により結晶化させることにより形成した第1固体電解質膜21からなる。
【0048】
上述したように、まず、水素透過性金属膜1の一方面を熱酸化処理する。このとき、水素透過性金属膜1は、元々の水素透過能を損なわない程度に一方面の極表面が熱酸化処理されていればよく、内部及び他方面側は酸化されていないのが好ましい。一方面のみが熱酸化処理されることにより、本来の特性を好適に維持することができるためである。なお、熱酸化処理とは、酸素を含有する雰囲気、例えば、大気中で、水素透過性金属膜1の一方面を加熱処理することをいう。
【0049】
そして、水素透過性金属膜1の熱酸化された極表面に、アルカリ土類金属と、セリウム及びジルコニウムのうち少なくとも一方と、希土類元素と、を含む有機金属酸塩溶液を塗布して第1固体電解質前駆体膜を形成する。その後、第1固体電解質前駆体膜を急速昇温熱処理により結晶化させることにより、第1固体電解質膜21を形成する。
【0050】
上述したように、第1固体電解質前駆体膜を急速昇温熱処理により結晶化させることにより、塗布法により得られる膜の性質を維持しつつ、水素透過性金属膜1と固体電解質膜2の間に金属酸化物膜が形成されるのを抑制することができる。言い換えれば、水素透過性金属膜1の表面をほとんど酸化させることなく、著しい緻密化が抑制された固体電解質膜2(第1固体電解質膜21)を形成することができる。例えば、通常の熱処理により結晶化させた場合は、ポアが多く相対密度が80%前後の固体電解質膜2が形成されると共に、水素透過性金属膜1をわずかに酸化させてしまう。これに対し、本実施形態では、水素透過性金属膜1をほとんど酸化させることなく、ある程度ポアが存在した状態、例えば、相対密度80〜90%程度の固体電解質膜2を形成することができる。
【0051】
なお、「相対密度」とは、実験的に求めた実測密度ρと理論密度ρを用いて、下記式により算出された値のことをいう。
[相対密度(%)]=(ρ/ρ)×100 (5)
【0052】
上述したように、固体電解質膜2(第1固体電解質膜21)は、完全には緻密化されていないことから、水素透過性金属膜1の熱膨張等の熱挙動に柔軟に追従することができる。このため、水素透過性金属膜1と固体電解質膜2との熱膨張係数の差を緩和して、水素透過性金属膜1と固体電解質膜2とが剥離等するのを抑制して密着性に優れたものとすることができる。また、第1固体電解質前駆体膜を急速昇温熱処理により結晶化させることにより、第1固体電解質前駆体膜を結晶化させる際に水素透過性金属膜1が酸化するのを抑制することができ、水素透過性金属膜1と固体電解質膜2の間に金属酸化物膜の形成されていないものとすることができる。これにより、酸化物膜に起因する導電率の低下が抑制されて、導電率が高い複合膜構造体とすることができる。
【0053】
また、水素透過性金属膜1の極表面を熱酸化処理した後に固体電解質膜2を形成することにより、固体電解質膜2は、低温焼成で形成したにもかかわらず、単相となる。ちなみに、極表面を熱酸化処理しない状態で低温焼成すると、固体電解質膜2は単相とならず、炭酸バリウム(BaCO)等のアルカリ土類金属炭酸塩や酸化セリウム(CeO)の結晶が混在してしまう。
【0054】
上述したように、複合膜構造体は、性能を維持した水素透過性金属膜1と、単相からなる薄膜の固体電解質膜2とからなるものである。かかる複合膜構造体は、水素透過性に優れ、導電特性等の電気化学特性に優れたものとなる。
【0055】
なお、上述した複合膜構造体は、水素透過性金属膜1と固体電解質膜2とが多孔質支持体によって支持されていてもよい。かかる多孔質支持体は、ガス中から水素を分離するという水素透過性金属膜1や固体電解質膜2の機能に影響を及ぼさないものであればよく、水素がプロトン(H)として水素透過性金属膜1から固体電解質膜2に入る際にこの反応を阻害しない程度にガスの拡散性に優れていればよい。多孔質支持体を設ける場合は、多孔質支持体により複合膜構造体の強度を確保することができるため、水素透過性金属膜1や固体電解質膜2の強度は低くてもよい。すなわち、水素透過性金属膜1や固体電解質膜2で所定の強度を確保する必要がなくなることから、水素透過性金属膜1や固体電解質膜2を薄膜化することができる。
【0056】
上述した複合膜構造体は、例えば、燃料電池に適用することができるものであり、中温域で作動する燃料電池において好適に用いることができるものである。
【0057】
ここで、複合膜構造体を用いた燃料電池について説明する。図2は、本実施形態の複合膜構造体を用いた燃料電池の構造を示す平面図及び断面図であり、図3は、本実施形態の複合膜構造体を用いた燃料電池の構造を示す説明図である。
【0058】
本発明にかかる燃料電池10は、図2及び図3に示すように、固体電解質膜2と、固体電解質膜2の一方面側に形成されるアノードとしての水素透過性金属膜1と、固体電解質膜2の他方面側に形成されるカソード4とからなる。ここで、水素透過性金属膜1と固体電解質膜2は、本発明にかかる複合膜構造体3である。
【0059】
燃料電池10は、複合膜構造体3が、水素透過性金属膜1と、プロトン導電性酸化物膜からなる固体電解質膜2とが互いの短所を補完し合う構造であることにより、プロトン導電性は維持しつつも、固体電解質膜2のCOに対する脆弱性を克服してCOを含むガス雰囲気環境下でも使用することができる。本実施形態では、燃料電池10は、BCYOからなる固体電解質膜2とガスとの間に別の膜(具体的には、水素透過性金属膜1)が介在している状態、言い換えれば、BCYOからなる固体電解質膜2の表面上に水素透過性の保護膜的要素が形成された状態にあり、COによるBCYOの分解を防ぐことができる。
【0060】
燃料電池10では、水素が固相(水素透過性金属膜1)から固相(固体電解質膜2)へと相間を移動する際に、水素元素又は水素分子として移動するのではなく、図3に示すように、プロトンとして連続して移動すると考えられる。この場合、水素透過性金属膜1は、水素(H)のみ選択的に透過させ、他の分子(N、CO、COなど)は透過させないという性質を持つことから、この水素透過性金属膜1をプロトン−電子混合導電体とみなすことができる。したがって、この水素透過性金属膜1が電極と電解質の役目を果たすことになる。
【0061】
カソード4は、多孔質体からなるのが好ましく、カソードとして中温電極反応活性が高いものが好ましい。カソード4は、具体的には、銀、ペロブスカイト構造を有する電子−酸化物イオン混合導電性酸化物単体、ペロブスカイト構造を有する電子−酸化物イオン混合導電性酸化物と銀のサーメット等を用いるのが好ましく、中温電極反応活性が高いLa(Co,Fe)O系、Ba(Co,Fe)O系、Sr(Co,Fe)O系のペロブスカイト構造を有する電子−酸化物イオン混合導電性酸化物は特に好適である。なお、本実施形態では、(Ba,Sr)(Co,Fe)Oのペロブスカイト構造体を用いた。
【0062】
なお、燃料電池10は、多孔質支持体を具備していてもよく、例えば、アノードのガス側の表面に多孔質支持体を備えたものが挙げられる。これにより、強度を確保することができ、水素透過性金属膜1や固体電解質膜2を薄膜化することができ、電気抵抗を低下させることができる。多孔質支持体はガスの拡散を妨げることがないものであり、0.002〜3μm、好ましくは0.004〜0.5μmの細孔を有するものを適宜選択して使用する。具体的には、例えば、0.1〜0.5μmの細孔を有するNi−YSZサーメット多孔体、Ni−Alサーメット多孔体等を例示することができる。
【0063】
燃料電池10において、プロトン導電性のBCYOからなる固体電解質膜2は、図中の改質ガスAのような水素や二酸化炭素などが混成したガスの流路に設けられて水素透過膜として機能する。このとき、固体電解質膜2の両面にそれぞれ水素透過性金属膜1からなるアノード及びカソード4が設けられ、保護膜が形成された状態となっている。したがって、水素透過性金属膜1からなるアノード側を流れる改質ガスA中にCOが含まれていても、固体電解質膜2のCOに対する脆弱性を克服してCOを含むガス雰囲気環境下でも使用することができる。
【0064】
ここで、本実施形態の固体電解質膜、アノード、及びカソードの耐熱温度について説明する。本実施形態の固体電解質膜、アノード、及びカソードの耐熱温度は表1に示す通りである。
【0065】
【表1】

【0066】
BaCeOのBCYOバルク体の焼結温度(緻密化温度)は1650℃であり、アノードやカソードの耐熱温度よりも高い。ここで耐熱温度とは、金属の溶融や酸化物の分解温度ではなく、基材自体の構造が焼結等で熱的に変化してしまい実用的に部材として使用することができなくなると考えられる温度である。
【0067】
通常、薄膜の固体電解質膜を形成する際には、アノードまたはカソードを支持基板として、これに固体電解質膜を緻密に形成する。したがって、支持基板のアノードまたはカソードの耐熱温度は、固体電解質膜の緻密化にとって必要な焼結温度よりも高いことが望まれる。
【0068】
本実施形態では、アノードは、パラジウムと銀との合金であり、融点はPd−Ag合金相図上では1360℃であるが、実際の基板としての耐熱温度は還元雰囲気中で、それよりも低い1200℃近傍であると推測される。また、ペロブスカイト構造のカソードでは成分元素にCoが含まれているため900〜1000℃程度の耐熱温度となっている。したがって、支持基板はより耐熱温度が高い金属からなるアノードにする必要がある。しかしながら、アノードの耐熱温度も通常のBCYOの焼結温度1650℃よりかなり低温であることが問題となる。
【0069】
本発明の複合膜構造体の製造方法では、水素透過性金属膜上に、低温で単相からなる薄膜の固体電解質を形成することができるため、水素透過性金属膜(アノード)を劣化させる虞がない。
【0070】
以下、複合膜構造体の製造方法について詳細に説明する。
【0071】
まず、水素透過性金属膜の一方面を熱酸化処理する。このとき、水素透過性金属膜の元々の水素透過能を損なわない程度に一方面の極表面が熱酸化されていればよく、内部及び他方面側は酸化しないようにする。熱酸化処理の加熱条件は特に限定されないが、例えば、800〜900℃で5〜10分加熱すればよい。本実施形態では、900℃で10分間加熱することにより、パラジウムと銀の合金からなる金属膜の一方面の極表面を熱酸化処理した。
【0072】
そして、水素透過性金属膜1の熱酸化処理した表面上に、アルカリ土類金属と、セリウム及びジルコニウムのうち少なくとも一方と、希土類元素と、を含む有機金属酸塩溶液を塗布して第1固体電解質前駆体膜を形成する。具体的には、スピンコート法等により、水素透過性金属膜1上に、アルカリ土類金属と、セリウム及びジルコニウムの少なくとも一方と、希土類元素と、を含む有機金属酸塩溶液を塗布する(塗布工程)。ここで、有機金属酸塩溶液は、アルカリ土類金属、セリウム及びジルコニウムのうち少なくとも一方、及び希土類元素を含むものであり、例えば、焼成により、2価のアルカリ土類金属をAサイトに配し、4価のセリウム及び4価のジルコニウムのうち少なくとも一方をBサイトに配するペロブスカイト型酸化物を基本構造とし且つ4価のBサイト元素の一部を3価の希土類元素で置換した結晶構造を形成し得るものである。本実施形態では、バリウム(Ba)、セリウム(Ce)、及びイットリウム(Y)の各金属を所望のモル比で含むBaCeY有機金属酸塩を溶液に溶解させた有機金属酸塩溶液とし、塗布した。そして、これを100〜300℃で乾燥する(乾燥工程)。本実施形態では、BaCeY有機金属酸塩溶液を塗布し、150℃で3分間加熱した後、250℃で10分加熱することにより乾燥させた。
【0073】
次に、1層目の第1固体電解質前駆体膜上に、塗布工程、乾燥工程を順次繰り返し行うことにより、複数層からなる所定厚さの固体電解質前駆体膜を形成する。なお、本実施形態では、8層からなる第1固体電解質前駆体膜とした。
【0074】
次に、第1固体電解質前駆体膜を急速昇温熱処理により900℃以下の低温で焼成して結晶化させることにより、2価のアルカリ土類金属をAサイトに配し、4価のセリウム及び4価のジルコニウムのうち少なくとも一方をBサイトに配するペロブスカイト型酸化物(ABO)を基本構造とし、4価のBサイト元素の一部を3価の希土類元素で置換した結晶構造からなる第1固体電解質膜21を形成する。本実施形態では、三酸化バリウムセリウム(BaCeO)のセリウム(Ce)一部をイットリウム(Y)で置換した結晶構造からなる固体電解質膜を形成した。
【0075】
急速昇温熱処理は、赤外線ランプの照射により加熱するRTA(Rapid Thermal Annealing)装置、特殊炭化ケイ素ヒーターにより加熱するRTA装置等により行えばよい。また、急速昇温熱処理は、50〜200℃/分の昇温速度で急速昇温するのが好ましく、さらに好ましくは50〜100℃/分である。
【0076】
固体電解質前駆体膜の焼成温度は900℃以下であり、好ましくは800〜900℃である。本実施形態では、RTA装置により850℃で30分間焼成することにより、厚さ1μmのBCYO単相からなる第1固体電解質膜21(固体電解質膜)を形成した。
【0077】
従来の複合膜構造体の製造方法の場合、例えば、バッチ式炉により100〜200℃/時の昇温速度で急速昇温して第1固体電解質前駆体膜を焼成する際に、水素透過性金属膜がわずかに酸化してしまい、水素透過性金属膜1と固体電解質膜2との間に、薄い金属酸化物膜(水素透過性金属膜を構成する材料の金属酸化物膜)が形成されてしまうという問題があった。金属酸化物膜が形成されると、固体電解質膜2の導電率が低下して発電特性が低下してしまう。これに対し、本発明の複合膜構造体の製造方法は、急速昇温熱処理により焼成することにより、水素透過性金属膜1と固体電解質膜2の間に金属酸化物膜の形成されていない複合膜構造体とすることができる。
【0078】
上述したように、急速昇温熱処理により焼成することにより、塗布法により形成される固体電解質膜の特性を維持しつつ、水素透過性金属膜と固体電解質膜の間に金属酸化物膜の形成されていないものとすることができる。すなわち、相対密度80〜90%程度と著しい緻密化はしていないことにより、熱挙動に柔軟に追従する第1固体電解質膜21とすることができ、また、水素透過性金属膜1と固体電解質膜2の間に金属酸化物膜の形成されていないものとすることができる。このように、水素透過性金属膜と固体電解質膜との間に金属酸化物膜が形成されないことにより、導電率が高く電気化学特性に優れた複合膜構造体とすることができる。
【0079】
また、予め水素透過性金属膜の極表面を熱酸化処理して、この表面上に固体電解質膜を形成することにより、低い焼成温度で単相の固体電解質膜を得ることができる。また、900℃以下という低温で焼成して、固体電解質膜を形成することにより、水素透過性金属膜が内部まで酸化するのを抑制することができ、水素透過性金属膜を劣化させることがない。すなわち、水素透過性金属膜の性能を維持しつつ、三酸化バリウムセリウム(BaCeO)単相からなる固体電解質膜を形成することができる。なお、900℃より高い温度で焼成すると、水素透過性金属膜の酸化が促進され、水素透過性金属膜全体が酸化されて電気特性が低下してしまう虞がある。しかしながら、表面を酸化していない水素透過性金属膜上に固体電解質膜を形成すると、900℃以下の焼成温度では、三酸化バリウムセリウム(BaCeO)単相からなる固体電解質膜とすることができず、炭酸バリウム(BaCO)や酸化セリウム(CeO)が混在した状態となってしまう。
【0080】
以上のように、本発明の複合膜構造体の製造方法によれば、水素透過性金属膜と固体電解質膜の間に金属酸化物膜の形成されていないものとすることができる導電特性等の電気化学特性に優れた複合膜構造体とすることができると共に、水素透過性金属膜と固体電解質膜とが密着性に優れた複合膜構造体とすることができる。また、水素透過性金属膜の性能を維持しつつ、単相からなる薄膜の固体電解質膜を実現することができる。これにより、機械的特性に優れ、内部抵抗が低く、導電特性等の電気化学特性及び水素透過性に優れた複合膜構造体を製造することができる。
【0081】
上述したように、塗布法により固体電解質膜を形成することにより、大面積や複雑な形状へ容易に対応することができる。また、本実施形態のように、MOD(Metal-Organic Decomposition)法により固体電解質膜を形成することにより、組成の制御が容易となるだけではなく、分子レベルで均一な固体電解質膜を形成することができる。また、MOD法は、ゾル−ゲル法のように溶液の時間変化がなく安定しているため、所望の固体電解質膜を容易に形成することができる。さらに、真空プロセスを必要としないため低コストで製造することができる。
【0082】
(実施形態2)
以下、本発明を実施形態2に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態1と同一部材には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0083】
図4は、本実施形態の複合膜構造体の構造を簡単に示した図である。
【0084】
本発明にかかる複合膜構造体は、図4に示すように、水素透過性金属膜1と固体電解質膜2Aとからなり、界面が連続接合した状態となっている。この水素透過性金属膜1及び固体電解質膜2Aは、水素を分離可能な水素透過性の膜である。
【0085】
固体電解質膜2Aは、2価のアルカリ土類金属をAサイトに配し、4価のセリウム及び4価のジルコニウムのうち少なくとも一方をBサイトに配するペロブスカイト型酸化物(ABO)を基本構造とし且つBサイトの一部を3価の希土類元素で置換した結晶構造を有する化合物からなる。
【0086】
また、固体電解質膜2Aは、詳しくは後述する方法により形成された第2固体電解質膜22からなるものである。かかる第2固体電解質膜22は、単相からなる。ここでいう単相とは、X線回折(XRD)パターンにおいて、Aサイトのアルカリ土類金属から生成しやすい炭酸塩(例えば、BaCOなど)のメインピークとペロブスカイト(ABO)のメインピークとの強度比が0.05未満、好ましくは0.02未満となるものを指す。本実施形態の固体電解質膜2Aは、単相からなることにより、プロトン導電性に優れたものである。
【0087】
また、固体電解質膜2Aは、厚さが30μm以下であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは3μm以下である。固体電解質膜2Aを薄膜とすることにより、固体電解質膜2Aの内部抵抗を著しく低いものとすることができる。
【0088】
本実施形態では、水素透過性金属膜1は、厚さ200μmのパラジウムと銀の合金とし、固体電解質膜2Aは、三酸化バリウムセリウム(BaCeO)のセリウムの一部をイットリウム(Y)で置換したBaCe0.90.13−α構造(以下、BCYOとする)からなる厚さ1μmの膜とした。
【0089】
上述した固体電解質膜2Aは、水素透過性金属膜1の熱酸化処理した表面上に塗布法により形成されたものである。本実施形態にかかる固体電解質膜2Aは、具体的には、アルカリ土類金属と、セリウム及びジルコニウムのうち少なくとも一方と、希土類元素と、を含む有機金属酸塩溶液を水素透過性金属膜1の熱酸化処理した表面上に塗布した後にエネルギー線を照射して第2固体電解質前駆体膜を形成し、この第2固体電解質前駆体膜を急速昇温熱処理により結晶化させることにより形成した第2固体電解質膜22からなる。
【0090】
上述したように、エネルギー線を照射して第2固体電解質前駆体膜を形成した後に、急速昇温熱処理により結晶化させることにより、緻密な固体電解質膜2A(第2固体電解質膜22)とすることができると共に、水素透過性金属膜1と固体電解質膜2Aの間に金属酸化物膜の形成されていないものとすることができる。具体的には、第2固体電解質前駆体膜にエネルギー線を照射することにより、固体電解質膜2A(第2固体電解質膜22)を緻密膜とすることができる。これにより、固体電解質膜2Aの導電率を向上させることができる。また、第2固体電解質前駆体膜を急速昇温熱処理により結晶化させることにより、第2固体電解質前駆体膜を結晶化させる際の水素透過性金属膜1と固体電解質膜2Aとの間に金属膜、具体的には、水素透過性金属膜1を構成する材料の酸化物膜の形成を抑制することができ、水素透過性金属膜1と固体電解質膜2Aの間に金属酸化物膜の形成されていないものとすることができる。これにより、酸化物膜に起因する導電率の低下が抑制されて、導電率の高いものとすることができる。
【0091】
通常の熱処理により結晶化させた場合は、ポアが多く相対密度が80%前後の固体電解質膜2が形成されると共に、水素透過性金属膜1をわずかに酸化させてしまう。これに対し、本実施形態では、水素透過性金属膜1をほとんど酸化させることなく、著しく緻密化させた状態、例えば、相対密度95%以上の固体電解質膜2Aを形成することができる。
【0092】
また、水素透過性金属膜1の極表面を熱酸化処理した後に固体電解質膜2Aを形成することにより、固体電解質膜2Aは、低温焼成で形成したにもかかわらず、単相となる。ちなみに、熱酸化処理しない状態で低温焼成すると、固体電解質膜2Aは単相とならず、炭酸バリウム(BaCO)等のアルカリ土類金属炭酸塩や酸化セリウム(CeO)の結晶が混在してしまう。上述したように、複合膜構造体は、性能を維持した水素透過性金属膜1と、単相からなる薄膜の固体電解質膜2Aとからなるものである。かかる複合膜構造体は、水素透過性に優れ、導電特性等の電気化学特性に優れたものとなる。
【0093】
また、上述した複合膜構造体は、水素透過性金属膜1と固体電解質膜2Aとが多孔質支持体によって支持されていてもよい。かかる多孔質支持体については、実施形態1と同様であるので説明を省略する。
【0094】
上述した複合膜構造体は、例えば、燃料電池に適用することができるものであり、中温域で作動する燃料電池において好適に用いることができるものである。
【0095】
ここで、複合膜構造体を用いた燃料電池について説明する。図5は、本実施形態の複合膜構造体を用いた燃料電池の構造を示す平面図及び断面図である。
【0096】
本実施形態にかかる燃料電池10Aは、図5に示すように、固体電解質膜2Aと、固体電解質膜2Aの一方面側に形成されるアノードとしての水素透過性金属膜1と、固体電解質膜2Aの他方面側に形成されるカソード4とからなる。ここで、水素透過性金属膜1と固体電解質膜2Aは、本発明にかかる複合膜構造体3Aである。
【0097】
以下、複合膜構造体の製造方法について詳細に説明する。
【0098】
まず、水素透過性金属膜1の一方面を熱酸化処理する。
【0099】
そして、水素透過性金属膜1の熱酸化処理した表面上に、アルカリ土類金属と、セリウム及びジルコニウムのうち少なくとも一方と、希土類元素と、を含む有機金属酸塩溶液を塗布する。具体的には、スピンコート法等により、水素透過性金属膜1上に、アルカリ土類金属と、セリウム及びジルコニウムの少なくとも一方と、希土類元素と、を含む有機金属酸塩溶液を塗布する(塗布工程)。この有機金属酸塩溶液は、実施形態1と同様のものを用いることができる。本実施形態では、バリウム(Ba)、セリウム(Ce)、及びイットリウム(Y)の各金属を所望のモル比で含むBaCeY有機金属酸塩を溶液に溶解させた有機金属酸塩溶液とした。かかるBaCeY有機金属酸塩溶液を塗布した。
【0100】
次に、エネルギー線を照射する(照射工程)。このようにエネルギー線を照射することにより、より緻密な固体電解質膜とすることができる。ここで、エネルギー線は、分子の結合エネルギーを切断可能なものであればよく、例えば紫外線、電子線、レーザー光などが挙げられる。紫外線源としては、特に限定されないが、例えば、低圧水銀ランプやXeエキシマランプが挙げられ、電子線源としては、電子線加速装置が挙げられ、レーザー光源としては、エキシマレーザー装置が挙げられる。
【0101】
ここで、主な分子の化学結合エネルギーと、エネルギー換算波長を表2に示す。また、低圧水銀ランプとキセノンエキシマランプの発光波長及びエネルギーを表3に示す。
【0102】
【表2】

【0103】
【表3】

【0104】
表3に示すように、低圧水銀ランプは、185nmの波長と、254nmの波長とを有するUVを照射することができ、エネルギーは、それぞれ647kJ/mol、472kJ/molである。したがって、UVを照射する際には、例えば、低圧水銀ランプやXeエキシマランプを使用することができるが、ハンドリングの面から低圧水銀ランプが好ましい。172nmのUVは、酸素への吸収係数が185nmのUVよりも大きく、大気中を数mm透過しただけでも大きく減衰するのに対し、185nmのUVはさほど減衰しないためである。
【0105】
次に、100〜300℃で乾燥して、第2固体電解質前駆体膜を形成する(乾燥工程)。本実施形態では、エネルギー線を照射していることにより、乾燥時間を短くすることができる。本実施形態では、例えば、150℃で3分間加熱した後、250℃で6分間加熱した。
【0106】
次に、1層目の第2固体電解質前駆体膜上に、塗布工程、照射工程、乾燥工程を順次繰り返し行うことにより、複数層からなる所定厚さの第2固体電解質前駆体膜を形成する。なお、本実施形態では、8層からなる第2固体電解質前駆体膜とした。
【0107】
次に、第2固体電解質前駆体膜を急速昇温熱処理により900℃以下の低温で焼成して結晶化させることにより、2価のアルカリ土類金属をAサイトに配し、4価のセリウム及び4価のジルコニウムのうち少なくとも一方をBサイトに配するペロブスカイト型酸化物(ABO)を基本構造とし、4価のBサイト元素の一部を3価の希土類元素で置換した結晶構造からなる第2固体電解質膜2Aを形成する。本実施形態では、三酸化バリウムセリウム(BaCeO)の一部をイットリウム(Y)で置換した結晶構造からなる第2固体電解質膜2Aを形成した。
【0108】
上述したように、エネルギー線を照射することにより、より緻密な固体電解質膜とすることができ、また、急速昇温熱処理により焼成することにより、水素透過性金属膜1と固体電解質膜2Aの間に金属酸化物膜が形成されるのを抑制することができる。言い換えれば、水素透過性金属膜1の表面を酸化することなく、緻密な固体電解質膜2Aを形成することができる。これにより、酸化膜に起因する導電率の低下が抑制され、また、固体電解質膜が緻密となることにより、導電特性の優れたものとすることができる。
【0109】
本実施形態の複合膜構造体の製造方法は、実施形態1と同様に、急速昇温熱処理により焼成することにより、水素透過性金属膜1と固体電解質膜2Aの間に金属酸化物膜の形成されていない複合膜構造体とすることができる。
【0110】
さらに、固体電解質膜2Aは、エネルギー線を照射して形成することにより、緻密膜となり、導電特性の優れたものとすることができる。
【0111】
また、予め水素透過性金属膜の極表面を熱酸化処理して、この表面上に固体電解質膜を形成することにより、低い焼成温度で単相の固体電解質膜を得ることができる。また、900℃以下という低温で焼成して、固体電解質膜を形成することにより、水素透過性金属膜が内部まで酸化するのを抑制することができ、水素透過性金属膜を劣化させることがない。
【0112】
以上のように、本実施形態の複合膜構造体の製造方法によれば、固体電解質膜を導電率の高いものとすることができ、また、水素透過性金属膜と固体電解質膜との間に金属酸化物膜が形成されないため、発電特性等の電気化学特性に優れた複合膜構造体とすることができる。また、水素透過性金属膜の性能を維持しつつ、単相からなる薄膜の固体電解質膜を実現することができる。これにより、内部抵抗が低く、導電特性等の電気化学特性及び水素透過性に優れた複合膜構造体を製造することができる。
【0113】
(実施形態3)
以下、本発明を実施形態3に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態1と同一部材には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0114】
図6は、本実施形態の複合膜構造体の構造を簡単に示した図である。
【0115】
本発明にかかる複合膜構造体は、図6に示すように、水素透過性金属膜1と固体電解質膜2Bとからなり、界面が連続接合した状態となっている。この水素透過性金属膜1及び固体電解質膜2Bは、水素を分離可能な水素透過性の膜である。
【0116】
固体電解質膜2Bは、2価のアルカリ土類金属をAサイトに配し、4価のセリウム及び4価のジルコニウムのうち少なくとも一方をBサイトに配するペロブスカイト型酸化物(ABO)を基本構造とし且つBサイトの一部を3価の希土類元素で置換した結晶構造を有する化合物からなり、実施形態1の固体電解質膜2と同様の方法により形成された第1固体電解質膜21(21A及び21B)と、実施形態2の固体電解質膜2Aと同様の方法により形成された第2固体電解質膜22とを備えるものである。具体的には、図6に示すように、固体電解質膜2Bは、第2固体電解質膜22と、第2固体電解質膜22の両面に設けられる第1固体電解質膜21A及び21Bとから構成されるものである。
【0117】
第1固体電解質膜21Aと、第2固体電解質膜22と、第1固体電解質膜21Bとは、それぞれ、2価のアルカリ土類金属をAサイトに配し、4価のセリウム及び4価のジルコニウムのうち少なくとも一方をBサイトに配するペロブスカイト型酸化物(ABO)を基本構造とし且つBサイトの一部を3価の希土類元素で置換した結晶構造を有する化合物からなるものである。第1固体電解質膜21A、第2固体電解質膜22、及び第1固体電解質膜21Bは、それぞれが異なる化合物からなるものであってもよいが、同一組成からなるものであるのが好ましい。
【0118】
また、固体電解質膜2Bは、厚さが30μm以下であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは3μm以下である。固体電解質膜2Bを薄膜とすることにより、固体電解質膜2Bの内部抵抗を著しく低いものとすることができる。ここで、第2固体電解質膜22の厚さは、例えば、0.5〜2.4μmであり、また、第1固体電解質膜21A及び21Bの厚さは、いずれも第2固体電解質膜22よりも薄いのが好ましく、例えば、0.1〜0.3μmである。
【0119】
本実施形態では、水素透過性金属膜1は、厚さ200μmのパラジウムと銀の合金とし、固体電解質膜2Bは、三酸化バリウムセリウム(BaCeO)のセリウムの一部をイットリウム(Y)で置換したBaCe0.90.13−α構造(以下、BCYOとする)からなるものとし、第1固体電解質膜21A及び21Bの厚さはそれぞれ0.25μm、第2固体電解質膜22の厚さは0.88μmとした。
【0120】
上述した固体電解質膜2Bは、水素透過性金属膜1の熱酸化処理した表面上に塗布法により形成されたものである。ここでいう塗布法とは、前駆体溶液を塗布して焼成する方法のことであり、例えば、MOD法が挙げられる。本実施形態にかかる固体電解質膜2Bは、実施形態1と同様の方法により水素透過性金属膜1の表面に第1固体電解質膜21Aを形成し、この第1固体電解質膜21Aの水素透過性金属膜1とは反対側の面に実施形態2と同様の方法により第2固体電解質膜22を形成し、第2固体電解質膜22の第1固体電解質膜21Aとは反対側の面に実施形態1と同様の方法により第1固体電解質膜21Bを形成することにより、形成したものである。
【0121】
本実施形態にかかる複合膜構造体は、水素透過性金属膜1側には完全には緻密化しておらず、柔軟に追従することができる第1固体電解質膜21Aを備えることにより水素透過性金属膜1との密着性に優れ、また、緻密膜である第2固体電解質膜22を備えることにより高い導電率とすることができるまた、第2固体電解質膜22の第1固体電解質膜21Aとは反対側の面側には、第1固体電解質膜21Bを備えることにより、他方面側に設けられる部材との密着性に優れたものとすることができる。すなわち、本実施形態にかかる複合膜構造体は、水素透過性金属膜1と固体電解質膜2Bとの優れた密着性と、固体電解質膜2Bの高い導電率とを両立させたものである。これにより、実施形態1及び実施形態2よりもさらに、発電特性に優れたものとすることができる。
【0122】
本実施形態の複合膜構造体は、例えば、燃料電池に適用することができるものであり、中温域で作動する燃料電池において好適に用いることができるものである。
【0123】
ここで、複合膜構造体を用いた燃料電池について説明する。図7は、本実施形態の複合膜構造体を用いた燃料電池の構造を示す平面図及び断面図である。
【0124】
本実施形態にかかる燃料電池10Bは、図7に示すように、固体電解質膜2Bと、固体電解質膜2Bの一方面側に形成されるアノードとしての水素透過性金属膜1と、固体電解質膜2Bの他方面側に形成されるカソード4とからなる。ここで、水素透過性金属膜1と固体電解質膜2Bは、本発明にかかる複合膜構造体3Bである。かかる燃料電池10Bは、固体電解質膜2Bが水素透過性金属膜1側に第1固体電解質膜21Aを備えていることにより水素透過性金属膜1と固体電解質膜2Bとの密着性に優れ、また、カソード4側に第1固体電解質膜21Bを備えていることによりカソード4と固体電解質膜2Bとの密着性に優れたものとなっている。これにより、発電特性等の電気化学特性に優れたものとなる。また、固体電解質膜2Bが第2固体電解質膜22を備えていることにより、高い導電率を実現することができる。
【0125】
(他の実施形態)
本発明にかかる複合膜構造体の製造方法は上述したものに限定されるものではない。
【0126】
例えば、上記実施形態では、塗布工程と乾燥工程を繰返し行うことにより、複数層からなる固体電解質前駆体膜を形成した後に焼成して、固体電解質膜を形成したが、これに限定されるものではない。複数層からなる固体電解質前駆体膜を形成して焼成した後に、再度、塗布工程と乾燥工程を繰返し行うことにより複数層からなる固体電解質前駆体膜を形成して焼成することにより、固体電解質膜を形成するようにしてもよい。これにより、さらに緻密な固体電解質膜を形成することができる。
【0127】
また、本発明にかかる複合膜構造体は、第1固体電解質膜21及び第2固体電解質膜22のいずれか一方を少なくとも備えるものであればよく、例えば、第1固体電解質膜21と第2固体電解質膜22とを順に複数積層させたものとしてもよい。
【0128】
また、本発明にかかる固体電解質膜と水素透過性金属膜とからなる複合膜構造体は燃料電池における電解質として好適なものであるが、水素センサー、水素ポンプ、水蒸気センサーといった他の電気化学デバイスや、排ガス浄化用電気化学デバイスにおける電解質としても好適なものである。
【0129】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を何ら制限するものではない。
【0130】
(実施例1)
厚さ0.2mmのPd−Ag合金板(Pd75%−Ag25%)を直径18mmに切り抜き加工し、900℃で10分間加熱処理して、パラジウム系金属膜を得た。
【0131】
得られたパラジウム系金属膜上に、BaCe0.90.13−aとなるようそれぞれの金属酸塩が調合された酢酸エステル溶液をスピンコート法により塗布し(600rpm×6秒、2000rpm×24秒)(塗布工程)、150℃×3分間加熱した後、250℃で10分間加熱することにより、乾燥させた(乾燥工程)。塗布工程及び乾燥工程を8回繰り返して、所定厚さの固体電解質前駆体膜を形成した。この固体電解質前駆体膜をRTA装置を用いて850℃で30分間加熱して結晶化させることにより、膜厚0.49μmの固体電解質膜を形成し、実施例1の複合膜構造体とした。なお、急速昇温熱処理は、100℃/分の昇温速度で行った。
【0132】
(実施例2)
塗布工程の後にUVを照射し、乾燥工程において150℃×3分間加熱した後、250℃で6分間加熱とした以外は、実施例1と同様にして、実施例2の複合膜構造体とした。なお、UV照射は、低圧水銀ランプ(セン特殊光源社製:SSP17−110,照射距離6cm、14mW/cm)を用いて30秒照射することにより行った。
【0133】
(実施例3)
厚さ0.2mmのPd−Ag合金板(Pd75%−Ag25%)を直径18mmに切り抜き加工し、900℃で10分間加熱処理して、パラジウム系金属膜を得た。
【0134】
得られたパラジウム系金属膜上に、BaCe0.90.13−aとなるようそれぞれの金属酸塩が調合された酢酸エステル溶液をスピンコート法により塗布し(600rpm×6秒、2000rpm×24秒)(塗布工程)、150℃×3分間加熱した後、250℃で10分間加熱することにより、乾燥させた(乾燥工程)。塗布工程及び乾燥工程を4回繰り返して、所定厚さの固体電解質前駆体膜を形成した。この固体電解質前駆体膜をRTA装置により850℃で30分間加熱して結晶化させることにより、膜厚0.25μmの第1固体電解質膜21Aを形成した。
【0135】
次に、第1固体電解質膜21Aの表面に、BaCe0.90.13−aとなるようそれぞれの金属酸塩が調合された酢酸エステル溶液をスピンコート法により塗布した(600rpm×6秒、2000rpm×24秒)(塗布工程)。その後UVを照射し(照射工程)、150℃×3分間加熱した後、250℃で6分間加熱することにより、乾燥させた(乾燥工程)。塗布工程及び乾燥工程を12回繰り返して、所定厚さの固体電解質前駆体膜を形成した。この固体電解質前駆体膜をRTA装置により850℃で30分間加熱して結晶化させることにより、膜厚0.88μmの第2固体電解質膜22を形成した。
【0136】
そして、第2固体電解質膜22の表面に、BaCe0.90.13−aとなるようそれぞれの金属酸塩が調合された酢酸エステル溶液をスピンコート法により塗布し(600rpm×6秒、2000rpm×24秒)(塗布工程)、150℃×3分間加熱した後、250℃で10分間加熱することにより、乾燥させた(乾燥工程)。塗布工程及び乾燥工程を4回繰り返して、所定厚さの固体電解質前駆体膜を形成した。この固体電解質前駆体膜をRTA装置により850℃で30分間加熱して結晶化させることにより、膜厚0.25μmの第1固体電解質膜21Bを形成して、実施例3の複合膜構造体を得た。
【0137】
なお、RTA装置による急速昇温熱処理は、100℃/分の昇温速度で行った。
【0138】
(比較例1)
RTA装置の代わりに、バッチ式電気炉により200℃/時の昇温速度で熱処理し、結晶化させた以外は、実施例1と同様にして比較例1の複合膜構造体を得た。
【0139】
(比較例2)
RTA装置の代わりに、バッチ式電気炉により200℃/時の昇温速度で熱処理し、結晶化させた以外は、実施例2と同様にして比較例2の複合膜構造体を得た。
【0140】
(試験例1)
実施例1〜2及び比較例1〜2の断面SEM観察をした。図8(a)は、比較例1の反射電子(BSE: backscattered electron)像であり、図8(b)は、比較例2の反射電子像であり、図8(c)は、実施例2の反射電子像であり、図8(d)は、実施例1の反射電子像である。いずれも集束イオンビーム(Focused Ion Beams,FIB)装置(SII社製 SMI3050MS2)によって作製された試料断面である。
【0141】
図8(a)及び図8(b)に示すように、UV照射の有無に関わらず、比較例1及び比較例2では、パラジウム系金属膜上にパラジウム系金属酸化物層が形成されているのが確認された。これに対し、図8(c)及び図8(d)に示すように、RTA装置により結晶化、すなわち、急速昇温処理により結晶化した実施例1及び実施例2では、パラジウム系金属酸化物層が形成されていないことが確認された。より具体的には、実施例1では、図8(d)に示すように、パラジウム系金属酸化物層の形成を抑制しつつポアが存在した状態の固体電解質膜を形成することができており、また、実施例2では、図8(c)に示すように、パラジウム系金属酸化物層の形成が抑制しつつ緻密化した固体電解質膜を形成することができていた。
【0142】
(試験例2)
実施例2及び比較例1〜2の固体電解質膜のXRD回折パターンの比較を行った。なお、測定には、リガク社製の「RINT TTRIII」を用い、X線源にCuKα線を使用し、室温で、固体電解質膜のX線回折パターンを求めた。結果を図9に示す。
【0143】
図9に示すように、比較例1及び比較例2では、パラジウム系金属酸化物のピークが確認されたのに対し、実施例2では、パラジウム系金属酸化物のピークが確認されなかった。これより、XRD測定においても、RTA装置により結晶化、すなわち、急速昇温処理により結晶化した実施例2では、パラジウム系金属酸化物層が形成されていないことが確認された。
【0144】
(試験例3)
実施例2及び比較例1〜2の固体電解質膜の導電率をした。導電率の測定は、交流インピーダンス法を用いて、ポテンショガルバノ(東陽テクニカ Solartron1287)と周波数レスポンスアナライザー(FRA,東陽テクニカ Solartron1255)より行った。結果を図10に示す。また、参考のために、参考文献1(H. Iwahara, H. Uchida, K. Kondo, and K. Ogaki, J. Electrochem.Soc., 135(1988)529.)に記載されている厚さ600μmのバルクの導電率も示す。
【0145】
図10に示すように、比較例2の固体電解質膜と比較して、急速昇温処理を行った実施例2の固体電解質膜は導電率が1桁程度上昇しており、高い導電率を有するものであることが確認された。すなわち、急速昇温処理により結晶化することにより導電率が向上することが確認された。
【0146】
また、上述した結果より、実施例1の固体電解質膜の導電率も比較例1の固体電解質膜と比較すると、導電率が上昇すると予測される。
【0147】
(実施例4)
実施例3の複合膜構造体の固体電解質膜の水素透過性金属膜とは反対側の面にBa0.5Sr0.5Co0.8Fe0.23−αからなる直径7mmのカソードをペースト塗布により形成して、実施例4の燃料電池とした。
【0148】
(試験例4)
アノード側には燃料ガスとして室温(23℃)でバブリングした湿潤水素を流量100mlmin−1、カソード側には同様にして湿潤空気(酸素・窒素による模擬ガス)を200mlmin−1(O:N = 40:160)流入し試験を行った。試験では、250mVまで50mVごとに分極させ、定電圧分極測定を行った。実施例4の燃料電池の発電性能試験を行った結果を図11に示す。また、参考のために、上記参考文献1に記載されている厚さ600μmのバルクの結果も示す。
【0149】
図11に示すように、実施例4の燃料電池は、高温形SOFCの性能に匹敵する電池出力である240mWcm−2(0.7Vにおける)が得られることが確認された。これより、実施例3の複合膜構造体は、中温域において作動する燃料電池として好適なものであることが確認された。
【0150】
また、図12に示すように、薄膜のBCYOからなる固体電解質膜は、厚膜のBCYOからなる固体電解質膜と比較して、抵抗値が非常に小さく、性能が大幅に向上していることが確認された。
【0151】
(実施例5)
BaCe0.90.13−aとなるようそれぞれの金属酸塩が調合された酢酸エステル溶液の代わりに、BaZr0.90.13−aとなるようそれぞれの金属酸塩が調合された酢酸エステル溶液を用いた以外は、実施例2と同様にして、実施例5の複合膜構造体を得た。
【0152】
(実施例6)
BaCe0.90.13−aとなるようそれぞれの金属酸塩が調合された酢酸エステル溶液の代わりに、Ba(Ce0.7Zr0.30.90.13−aとなるようそれぞれの金属酸塩が調合された酢酸エステル溶液を用いた以外は、実施例2と同様にして、実施例6の複合膜構造体を得た。
【0153】
(試験例5)
実施例2,5,及び6の断面SEM観察をした。図13(a)は、実施例2の反射電子(BSE: backscattered electron)像であり、図13(b)は、実施例6の反射電子像であり、図13(c)は、実施例5の反射電子像である。いずれも集束イオンビーム(Focused Ion Beams,FIB)装置(SII社製 SMI3050MS2)によって作製された試料断面である。
【0154】
BaCe0.90.13−aからなる実施例2(図13(a)参照)、Ba(Ce0.7Zr0.30.90.13−aからなる実施例6(図13(b)参照)、BaZr0.90.13−aからなる実施例5(図13(c)参照)は、いずれもパラジウム系金属酸化物層が形成されていないことが確認された。
【0155】
(試験例6)
実施例2,5,及び6の固体電解質膜のXRD回折パターンの比較を行った。なお、測定には、リガク社製の「RINT TTRIII」を用い、X線源にCuKα線を使用し、室温で、固体電解質膜のX線回折パターンを求めた。結果を図14に示す。
【0156】
図14(a)はBaCe0.90.13−aからなる実施例2のX線回折パターンであり、図14(b)はBa(Ce0.7Zr0.30.90.13−aからなる実施例6のX線回折パターンであり、図14(c)はBaZr0.90.13−aからなる実施例5のX線回折パターンであり、図14(d)は、Pd−Ag合金基板のX線回折パターンである。
【0157】
図14に示すように、実施例2,5,及び6のいずれにおいてもパラジウム系金属酸化物のピークが確認されなかった。
【0158】
また、実施例5では、BaZr0.90.13−aからなる固体電解質膜が形成されていることが確認された。実施例6では、Ba(Ce0.7Zr0.30.90.13−aからなる固体電解質膜が形成されていることが確認された。
【0159】
試験例5及び6より、RTA装置により結晶化、すなわち、急速昇温処理により結晶化して形成したBa(Ce1ーxZr0.90.13−aからなる(X=0〜1)の複合膜構造体は、パラジウム系金属酸化物層が形成されないことが確認された。すなわち、Bサイトにジルコニウムを配した場合も、Bサイトにセリウムを配する場合と同様に、急速昇温熱処理により900℃以下の低温で焼成することにより、所望の固体電解質膜を形成することができると共に、パラジウム系金属酸化物層が形成されないことが確認された。
【符号の説明】
【0160】
1 水素透過性金属膜(Pd−Ag膜)
2,2A,2B 固体電解質膜(BCYO膜)
3,3A,3B 複合膜構造体
4 カソード
10,10A,10B 燃料電池
A 改質ガス
B 酸化剤ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素透過性金属膜と固体電解質膜とからなる複合膜構造体であって、
前記固体電解質膜は、前記水素透過性金属膜の熱酸化処理した表面上に塗布法により形成されたものであり、2価のアルカリ土類金属をAサイトに配し、4価のセリウム及び4価のジルコニウムのうち少なくとも一方をBサイトに配するペロブスカイト型酸化物を基本構造とし且つ4価のBサイト元素の一部を3価の希土類元素で置換した結晶構造を有する化合物からなり、
前記固体電解質膜は、アルカリ土類金属と、セリウム及びジルコニウムのうち少なくとも一方と、希土類元素と、を含む有機金属酸塩溶液を塗布して第1固体電解質前駆体膜を形成し、前記第1固体電解質前駆体膜を急速昇温熱処理により結晶化させることにより形成した第1固体電解質膜を備えることを特徴とする複合膜構造体。
【請求項2】
前記固体電解質膜は、前記水素透過性金属膜又は前記第1固体電解質膜上に前記有機金属酸塩溶液を塗布した後にエネルギー線を照射して第2固体電解質前駆体膜を形成し、前記第2固体電解質前駆体膜を急速昇温熱処理により結晶化させることにより形成した第2固体電解質膜をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の複合膜構造体。
【請求項3】
前記固体電解質膜は、1以上の前記第1固体電解質膜と、1以上の前記第2固体電解質膜とからなることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合膜構造体。
【請求項4】
前記固体電解質膜は、前記第2固体電解質膜と、前記第2固体電解質膜の両面に設けられる前記第1固体電解質膜とから構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合膜構造体。
【請求項5】
水素透過性金属膜と固体電解質膜とからなる複合膜構造体であって、
前記固体電解質膜は、前記水素透過性金属膜の熱酸化処理した表面上に塗布法により形成されたものであり、2価のアルカリ土類金属をAサイトに配し、4価のセリウム及び4価のジルコニウムのうち少なくとも一方をBサイトに配するペロブスカイト型酸化物を基本構造とし且つ4価のBサイト元素の一部を3価の希土類元素で置換した結晶構造を有する化合物からなり、
前記固体電解質膜は、アルカリ土類金属と、セリウム及びジルコニウムのうち少なくとも一方と、希土類元素と、を含む有機金属酸塩溶液を塗布した後にエネルギー線を照射して固体電解質前駆体膜を形成し、前記固体電解質前駆体膜を急速昇温熱処理により結晶化させることにより形成したものであることを特徴とする複合膜構造体。
【請求項6】
前記アルカリ土類金属は、バリウム(Ba)及びストロンチウム(Sr)の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の複合膜構造体。
【請求項7】
前記3価の希土類元素は、イッテルビウム(Yb)、エルビウム(Er)、イットリウム(Y)、ディスプロシウム(Dy)、ガドリニウム(Gd)、サマリウム(Sm)、及びネオジム(Nd)からなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の複合膜構造体。
【請求項8】
前記水素透過性金属膜が、パラジウム系金属膜であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の複合膜構造体。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の複合膜構造体を具備し、前記固体電解質膜の前記水素透過性金属膜とは反対側の面にカソードを備え、前記水素透過性金属膜がアノードとなっていることを特徴とする燃料電池。
【請求項10】
水素透過性金属膜と固体電解質膜とからなる複合膜構造体の製造方法であって、
水素透過性金属膜の少なくとも一方の表面を熱酸化処理する工程と、
前記水素透過性金属膜の熱酸化処理した表面上に、2価のアルカリ土類金属をAサイトに配し、4価のセリウム及び4価のジルコニウムのうち少なくとも一方をBサイトに配するペロブスカイト型酸化物を基本構造とし且つ4価のBサイト元素の一部を3価の希土類元素で置換した結晶構造を有する化合物からなる固体電解質膜を形成する工程と、を具備し、
前記固体電解質膜を形成する工程は、アルカリ土類金属と、セリウム及びジルコニウムのうち少なくとも一方と、希土類元素と、を含む有機金属酸塩溶液を塗布して固体電解質前駆体膜を形成する塗布工程、及び前記固体電解質前駆体膜を急速昇温熱処理により900℃以下の低温で焼成して結晶化させる焼成工程により第1固体電解質膜を形成する工程を備えることを特徴とする複合膜構造体の製造方法。
【請求項11】
前記固体電解質膜形成工程は、さらに、前記有機金属酸塩溶液を塗布した後にエネルギー線を照射して第2固体電解質前駆体膜を形成する塗布・照射工程、及び前記第2固体電解質前駆体膜を急速昇温熱処理により900℃以下の低温で焼成して結晶化させる焼成工程により第2固体電解質膜を形成する工程を備えることを特徴とする請求項10に記載の複合膜構造体の製造方法。
【請求項12】
前記急速昇温熱処理は、50〜200℃/分の昇温速度で急速昇温することを特徴とする請求項10又は11に記載の複合膜構造体の製造方法。
【請求項13】
前記急速昇温熱処理は、800℃以上900℃以下に加熱することを特徴とする請求項10〜12のいずれか一項に記載の複合膜構造体の製造方法。
【請求項14】
固体電解質膜と、前記固体電解質膜の一方面側に形成される水素透過性金属膜からなるアノードと、前記固体電解質膜の他方面側に形成されるカソードとを具備する燃料電池の製造方法であって、
水素透過性金属膜の少なくとも一方の表面を熱酸化処理する工程と、
前記水素透過性金属膜の熱酸化処理した表面上に、2価のアルカリ土類金属をAサイトに配し、4価のセリウム及び4価のジルコニウムのうち少なくとも一方をBサイトに配するペロブスカイト型酸化物を基本構造とし且つ4価のBサイト元素の一部を3価の希土類元素で置換した結晶構造を有する化合物からなる固体電解質膜を形成する工程と、を具備し、
前記固体電解質膜を形成する工程は、アルカリ土類金属と、セリウム及びジルコニウムのうち少なくとも一方と、希土類元素と、を含む有機金属酸塩溶液を塗布して第1固体電解質前駆体膜を形成する塗布工程、及び前記第1固体電解質前駆体膜を急速昇温熱処理により900℃以下の低温で焼成して結晶化させる焼成工程により第1固体電解質膜を形成する工程を備えることを特徴とする燃料電池の製造方法。
【請求項15】
前記固体電解質膜形成工程は、さらに、前記有機金属酸塩溶液を塗布した後にエネルギー線を照射して第2固体電解質前駆体膜を形成する塗布・照射工程、及び前記第2固体電解質前駆体膜を急速昇温熱処理により900℃以下の低温で焼成して結晶化させる焼成工程により第2固体電解質膜を形成する工程を備えることを特徴とする請求項14に記載の燃料電池の製造方法。


【図2】
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【図5】
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【図7】
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【図10】
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【図14】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−234747(P2012−234747A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103854(P2011−103854)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人電気化学会電池技術委員会、第51回電池化学討論会講演論文予稿集、平成22年11月8日
【出願人】(000173809)一般財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】