説明

複数の有益な作用物質の送出用の開口を有する拡張式医療器具

拡張式医療器具は、第1の直径を有する円筒から第2の直径を有する円筒に拡張可能であるほぼ円筒形の器具を形成する、複数の細長い支柱を含む。複数の異なる有益な作用物質を支柱内の異なる開口に充填して、組織に送出することができる。エッジエフェクトによる再狭窄などの特定の状況に対処するために、または送出された有益な作用物質の空間分布を改善するために、異なる有益な作用物質が、器具の異なる開口に所定のパターンで充填される。異なる有益な作用物質は、1つまたは複数の異なる薬剤、異なる濃度または異なる侵食速度を有する同じ薬剤、または異なる形態の同じ薬剤を含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の背景]
発明の分野
本発明は、組織支持用医療器具、特に、生きている動物または人間の体内腔に埋め込まれ、器官を支持して開通性を維持し、かつ介入部位に複数の有益な作用物質を送出するための開口を有する拡張式の除去不可能な器具に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本出願は、米国特許法第119条第(e)項に基づく、2002年9月20日に出願された米国仮出願第60/412489号明細書の優先権を主張する。当該文献はその全文が参照により本明細書に援用される。
【0003】
関連技術の概要
以前は、体内の通路に埋め込んで通路の開通性を維持するため、永久的または生分解性器具が開発されてきた。これらの器具は、通常、経皮的に導入し、所望の場所に配置するまで経腔的に(transluminally)移送する。これらの器具は、次に、器具の内部に配置したマンドレルまたはバルーンの拡張等によって機械的に拡張するか、体内で起動されて保存していたエネルギーを解放することにより、自分で拡張する。内腔の中で拡張すると、ステントと呼ばれるこれらの器具は、体組織内に封入され、永久的なインプラントとなる。
【0004】
知られているステントの設計には、モノフィラメント・ワイヤのコイル・ステント(米国特許第4969458号明細書)、溶接金属ケージ(米国特許第4733665号明細書および第4776337号明細書)、および最もよく知られている円周に軸方向のスロットが形成された薄肉金属シリンダ(米国特許第4733665号明細書、第4739762号明細書、および第4776337号明細書)がある。ステントに使用するのに知られている構成材料は、ポリマー、有機織物(organic fabrics)および生体適合性金属、例えばステンレス鋼、金、銀、タンタル、チタン、およびニチノール(Nitinol)などの形状記憶合金を含む。
【0005】
米国特許第4733665号明細書、第4739762号明細書、および第4776337号明細書は、部材が半径方向外側に拡張して身体通路と接触できるようにする軸方向のスロットを備えた薄肉管状部材の形態の、拡張および変形可能な管腔間(interluminal)人工血管を開示している。管状部材は、挿入後、その弾性限界を越えて機械的に拡張され、したがって体内に永久的に固定される。米国特許第5545210号明細書は、上述したステントと同様の幾何学的形状であるが、ニッケル・チタンの形状記憶合金(「ニチノール」)で構成した薄肉管状ステントを開示しており、このステントは、その弾性限界を越えずに体内に永久的に固定される。上記のステントは全て、共通の重大な設計特性を有する。つまり、各設計で、ステントの拡張中に永久変形する機構が柱状(prismatic)である。すなわち、これらの機構の断面は、全有効長に沿って一定であるか、非常に漸進的に変化する。これらの柱状構造は、永久変形が開始する前に大量の弾性変形を提供するには理想的であるが、ステントの拡張力、ステントの跳返り(recoil)、支柱要素の安定性、送出カテーテルへのステントの固定、および放射線不透過性を含む重要な特性に関する器具の性能が最適ではなくなる。
【0006】
その全文が参照により本明細書に援用される米国特許第6241762号明細書は、従来のステントが有する上記の性能上の欠陥を改善する、非柱状のステント設計を開示している。さらに、当該特許の好ましい実施形態は、大きな非変形支柱およびリンク要素を備えるステントを提供しており、これは、支柱またはリンク要素の、または器具全体の機械的特性を損なうことなく、穴を含むことができる。さらに、これらの穴は、種々の有益な作用物質を器具の埋め込み部位に送出するための、大きな保護槽(protected reservoirs)としての役割を果たし得る。
【0007】
ステントベースの有益な作用物質の局所送出によって対処することができる多くの問題の中でも、最も重要な問題の1つは再狭窄である。再狭窄は、血管形成術およびステントの埋め込みなどの血管介入の後に生じる可能性がある主な合併症である。簡単に定義すると、再狭窄は、細胞外マトリックスの沈着および血管平滑筋細胞の増殖によって血管内腔直径を縮小させ、最終的には内腔を再び狭め、さらには再閉塞させる場合がある、創傷治癒プロセスである。向上した外科技術、器具、および薬学的作用物質の導入にも関わらず、報告されている全再狭窄率は依然として、血管形成処置後6〜12カ月以内で25%〜50%の範囲である。この症状を治療するためには、さらなる血管再生(revascularization)処置が必要となることが多く、それにより患者が受ける外傷および危険性が増す。
【0008】
種々の有益な作用物質の表面コーティングを有する従来のステントは、有望な初期結果を示している。例えば、米国特許第5716981号明細書は、ポリマー担体およびパクリタキセル(paclitaxel)(癌性腫瘍の治療に一般に用いられる周知の化合物)を含む組成物で表面コーティングされたステントを開示している。当該特許は、噴霧および浸漬などのステント表面のコーティング方法と、コーティング自体の所望の特徴とを詳細に説明している。当該特許は、「ステントを滑らかかつ均一にコーティングし、」「抗血管新生因子(anti-angiogenic factor)の均一かつ予測可能な長期放出を提供する」はずである。しかしながら、表面コーティングは、有益な作用物質の放出の動力学を実際にはほとんど制御することができない。これらのコーティングは必然的に非常に薄く、通常は5〜8ミクロンの深さである。これと比較して、ステントの表面積は非常に大きいため、有益な作用物質の総容量を周囲組織に放出する拡散経路は非常に短い。その結果得られる累積的な薬剤放出プロファイルは、所望の「均一な長期放出」すなわち線形放出ではなく、大量の初期バーストに続いて急速に漸近線に近づくことを特徴とする。
【0009】
表面コーティングの厚さを増加させることには、薬剤放出を制御する能力および薬剤充填量を増加させる能力を含む薬剤放出の動力学を改善するという有益な効果がある。しかしながら、コーティングの厚さを増加させることにより、ステント壁の厚さ全体が増加する。これは、埋め込み中の血管内腔への外傷の増大、埋め込み後の内腔の流れ断面積の縮小、およびコーティングが拡張および埋め込み中の機械的故障または損傷の影響を受けやすくなることを含む、複数の理由から望ましくない。コーティングの厚さは、有益な作用物質の放出の動力学に影響を及ぼす幾つかの要因のうちの1つであるため、厚さを制限することにより、達成することができる放出の速度、持続時間などの範囲が制限される。
【0010】
Chao-Wei Hwang他による「Physiological Transport Forces Govern Drug Distribution for Stent-Based Delivery」という表題の論文に記載されている最近の研究により、薬剤溶出性ステントの空間的および時間的薬剤分布特性と、細胞の薬剤輸送メカニズムとの重要な相互関係が明らかになった。機械的性能および構造的特性の向上を追求して、ステントの設計はステント支柱の円周方向および長手方向の分布が本質的に不均一な、より複雑な幾何学的形状に進化した。この傾向の例としては、体内腔で展開されると概ねダイアモンド形または六角形に拡張する、典型的な市販のステントが挙げられる。これらはいずれも、表面コーティングの形態で有益な作用物質を送出するために用いられている。支柱に直接隣接している内腔組織部分は、「ダイアモンド」形の支柱セルの中間に位置する部分など、遠隔にある組織部分よりもはるかに濃度が高い薬剤を得ることが、研究により示されている。なお、内腔壁内の薬剤のこの濃度勾配は、これまで最も効果的な抗増殖薬であることがわかっているパクリタキセルまたはラパマイシン(Rapamycin)などの疎水性の有益な作用物質に関しては、時間を経ても高いままである。局所的な薬剤濃度および勾配は生物学的効果と密接に結び付いているため、有益な作用物質源(ステント支柱)の最初の空間分布が有効性を左右する。
【0011】
有益な作用物質の空間分布が最適ではないことに加えて、表面コーティングされたステントにはさらなる問題がある。器具のコーティングに用いられることが多い固定されたマトリックスポリマー担体は通常、コーティング中に有益な作用物質の約30%を無期限に(indefinitely)保持する。これらの有益な作用物質は細胞障害性が非常に高いことが多いため、慢性炎症、術後血栓症(late thrombosis)、および血管壁の治癒の遅れまたは不完全などの亜急性または慢性の問題が生じ得る。さらに、担体ポリマー自体は、血管壁の組織に対して炎症性であることが多い。他方、ステント表面上で生分解性ポリマー担体を使用すると、ポリマー担体が分解した後にステントと血管壁の組織との間の「並置不良(mal-apposition)」すなわち空隙が生じる可能性がある。この空隙は、ステントと隣接組織とを差動運動(differential motion)させる。その結果生じる問題としては、微小磨耗および炎症、ステントのずれ(stent drift)、および血管壁の再内皮化の不全が挙げられる。
【0012】
以前のヒト臨床試験により、第一世代の薬剤送出器具にはさらなる問題があり得ることが示唆されている。薬剤コーティングされたステントを埋め込んでから6〜18ヵ月後の臨床試験患者の再診(follow-up examination)では、動脈壁へのステント支柱の並置不良と、エッジエフェクトによる再狭窄(edge effect restenosis)とが多数の患者に生じ得ることが示されている。エッジエフェクトによる再狭窄は、ステントの近位および遠位縁部を越えてすぐの所で生じ、ステント縁部の周りおよび内部(内腔)空間内に進行し、患者の血管再生を繰り返すことが必要となる場合が多い。
【0013】
別の重大な問題は、ステントを拡張すると、その上のポリマーコーティングに応力が加わることにより、コーティングが剥離、亀裂、または断裂を受ける可能性があり、これは薬剤放出の動力学に影響を及ぼすかまたは他の望ましくない影響を及ぼす可能性があることである。これらの影響は、第一世代の薬剤コーティングステントがより大きい直径に拡張する際に観察されており、比較的大きい直径の動脈ではこれまで使用できなかった。さらに、粥状動脈硬化症の血管においてこのようなコーティングステントを拡張させると、ポリマーコーティングに円周方向の剪断力が加わり、それによりコーティングがその下のステント表面から分離され得る。このような分離も同様に、コーティング断片の塞栓形成を含む望ましくない影響を及ぼして、血管を閉塞させる可能性がある。
【0014】
[発明の概要]
従来技術の欠点に鑑みて、ステントの有効壁厚を増加させることなく、またステントの機械的拡張特性に悪影響を及ぼすことなく、比較的大量の有益な作用物質を血管内腔の外傷部位に送出することができるとともに、有益な作用物質を含有する表面コーティングに関連する多くの問題を回避することができるステントを提供することが有利である。
【0015】
器具内の有益な作用物質の用量または濃度を変化させることにより、内腔組織における有益な作用物質の空間分布を改善する組織支持器具を有することがさらに有利である。
【0016】
2つ以上の有益な作用物質の所望の空間分布を達成するために、異なる穴に異なる有益な作用物質が供給された組織支持器具を提供することがさらに有利である。
【0017】
望ましくないエッジエフェクトを防止するために、異なる有益な作用物質が器具の縁部かつ器具の境界内に供給された組織支持器具を提供することがさらに有利である。
【0018】
望ましくないエッジエフェクトを防止するために、有益な作用物質が器具の境界内に供給され、当該有益な作用物質が器具の縁部から高濃度または低濃度で供給されるか、または全く供給されない組織支持器具を提供することも有利である。
【0019】
本発明の一態様によれば、有益な作用物質の送出用の拡張式医療器具は、第1の直径を有する円筒から第2の直径を有する円筒に拡張可能であるほぼ円筒形の器具と、ほぼ円筒形の器具に形成される、組織に送出するための第1の有益な作用物質を収容する第1の複数の開口と、ほぼ円筒形の器具に形成される、組織に送出するための第2の有益な作用物質を収容する第2の複数の開口とを含む。第1の開口は、円筒形の器具の第1の端部および第2の端部に配置される。第2の開口は、円筒形の器具の第1の端部と第2の端部との間の中央部分に配置され、第2の有益な作用物質は第1の有益な作用物質とは異なる。
【0020】
本発明のさらに別の態様によれば、組織支持器具は、体内腔を支持するように構成される組織支持器具本体と、組織支持器具の第1の開口に収容される、組織に送出するための第1の有益な作用物質と、組織支持器具の第2の開口に収容される、組織に送出するための第2の有益な作用物質とを含む。第1の開口は、器具本体の第1の端部および第2の端部に配置される。第2の開口は、器具本体の第1の端部と第2の端部との間の中央部分に配置される。
【0021】
本発明のさらなる態様によれば、有益な作用物質の送出用の拡張式医療器具は、初期形状から拡張形状に拡張可能な器具本体と、内腔の分岐に適応するように構成される器具本体の側部開口と、器具本体に形成される、拡張形状で組織に送出するための第1の有益な作用物質を収容する第1の複数の開口とを含む。第1の開口は、側部開口の周囲の領域に形成される。第2の複数の開口が、本体器具の側部開口から離れた領域に形成される。
【0022】
本発明の別の態様によれば、体内の通路における再狭窄を低減する方法は、体内の通路に組織支持器具を配置するステップであって、それにより組織を支持し、組織支持器具は、当該器具の開口に第1および第2の有益な作用物質を収容する、組織支持器具を配置するステップと、第1の有益な作用物質を組織支持器具の端部に隣接する場所の組織に送出し、かつ第2の有益な作用物質を器具の端部間の組織に送出するステップであって、それにより再狭窄を低減する、第1および第2の有益な作用物質を送出するステップとを含む。
【0023】
本発明のさらなる態様によれば、有益な作用物質の送出用の拡張式医療器具は、第1の直径を有する円筒から第2の直径を有する円筒に拡張可能であるほぼ円筒形の器具と、ほぼ円筒形の器具に形成される、第1の濃度の有益な作用物質を収容する第1の複数の開口と、ほぼ円筒形の器具に形成される、第2の濃度の有益な作用物質を収容する第2の複数の開口とを含む。第1の開口および第2の開口は、体内の通路の組織に均一な分布で薬剤を送出するように配置される。
【0024】
次に、添付図面に示す好ましい実施形態に関して、本発明をさらに詳細に説明する。同様の要素は同様の参照番号を有する。
【0025】
[好ましい実施形態の詳細な説明]
図1は、拡張式医療器具によって組織に送出するための有益な作用物質を収容する複数の穴を有する、拡張式医療器具を示す。図1に示す拡張式医療器具10は、円筒形の拡張式器具を形成するように材料管からカットされる。拡張式医療器具10は、複数の架橋要素14によって相互接続される複数の円筒セクション12を含む。架橋要素14は、組織支持器具が、脈管構造の蛇行経路を通って展開部位に至る際に軸方向に曲がることを可能にし、必要な場合は、支持される内腔の曲率と一致するように軸方向に曲がることを可能にする。円筒形管12はそれぞれ、延性蝶番20および円周方向支柱22によって相互接続される細長い支柱18のネットワークにより形成される。医療器具10が拡張する際には、延性蝶番20は変形するが支柱18は変形しない。拡張式医療器具の一例のさらなる詳細は、米国特許第6241762号明細書に記載されており、当該特許はその全文が参照により本明細書に援用される。
【0026】
図1に示すように、細長い支柱18および円周方向支柱22は開口30を含み、その幾つかには、拡張式医療器具が埋め込まれる内腔に送出するための有益な作用物質が収容される。さらに、架橋要素14などの器具10の他の部分も、図5に関して以下で説明するように開口を含んでいてもよい。好ましくは、開口30は支柱18などの器具10の非変形部分に設けられ、それにより、器具の拡張中に開口が変形せず、破損、噴出、または他の損害を受ける危険を伴わずに、有益な作用物質が送出される。有益な作用物質を開口30内に充填することができる方法の一例のさらなる説明は、2001年9月7日に出願された米国特許出願第09/948987号明細書に記載されており、当該出願はその全文が参照により本明細書に援用される。
【0027】
図示の本発明の実施形態は、有限要素解析および開口30内の有益な作用物質の配置を最適化する他の技法を用いてさらに改良することができる。基本的に、開口30の形状および場所は、空隙の容積を最大化する一方で、延性蝶番20に関する支柱の強度および剛性を比較的高く保つように変更することができる。本発明の好ましい一実施形態によれば、開口は少なくとも3.2×10−3mm(5×10−6平方インチ)、好ましくは少なくとも4.5×10−3mm(7×10−6平方インチ)の面積を有する。通常、開口は約50%〜95%まで有益な作用物質を充填されている。
【0028】
定義
用語「作用物質」または「有益な作用物質」は、本明細書で用いる場合、最大限に広義に解釈されることが意図され、任意の治療薬(therapeutic agent)または薬剤(drug)を含み、バリア層、担体層、治療層、または保護層などの不活性作用物質も含むように用いられる。
【0029】
用語「薬剤」および「治療薬」は、生物の体内腔に送出されて、所望の通例は有益な効果をもたらす任意の治療活性物質(therapeutically active substance)を指すように交換可能に用いられる。有益な作用物質は、1つまたは複数の薬剤または治療薬を含むことができる。
【0030】
本発明は、特に抗腫瘍薬、抗血管新生薬、血管新生因子、抗炎症薬、免疫抑制薬、抗再狭窄薬、抗血小板薬、血管拡張薬、抗血栓薬、例えばパクリタキセルおよびラパマイシンなどの抗増殖薬、および例えばヘパリンなどの抗トロンビン薬の送出に非常に適している。
【0031】
本発明とともに用いられる治療薬としては、従来の低分子量治療薬(一般に薬剤と呼ばれる)も挙げられ、これは、限定はされないが、免疫抑制薬、抗脂質薬(antilipid agent)、抗炎症薬、ビタミン、抗有糸分裂薬、メタロプロテイアーゼ抑制剤(metalloproteinase inhibitor)、NO供与体(NO donor)、エストラジオール、抗硬化薬、および血管作用薬、内皮増殖因子、エストロゲン、β遮断薬、AZ遮断薬、ホルモン、スタチン(statin)、インスリン成長因子、抗酸化剤、膜安定化剤、カルシウム拮抗薬、レチノイド(retenoid)を、単独で、または本明細書に記載されている任意の治療薬と組み合わせて含む。また、治療薬としては、例を少数挙げると、ペプチド、リポタンパク質、ポリペプチド、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(polynucleotides encoding polypeptides)、脂質、タンパク質薬剤、酵素、オリゴヌクレオチド、およびそれらの誘導体、リボザイム(ribozymes)、他の遺伝物質、細胞、アンチセンス(cells antisense)、モノクローナル抗体、血小板、プリオン、ウイルス、細菌、および内皮細胞などの真核細胞、ACE抑制剤(ACE inhibitor)、単球/マクロファージ、または血管平滑筋細胞が挙げられる。治療薬は、宿主に投与されると所望の薬剤に代謝されるプロドラッグであってもよい。さらに、治療薬は、治療層に組み込まれる前に、マイクロカプセル、微小球、マイクロバブル(microbubbles)、リポソーム、ニオソーム(niosome)、エマルジョン、分散剤(dispersions)などとして予め配合されて(pre-formulated)もよい。治療薬は、放射性同位元素、または、光または超音波エネルギーなどの何らかの他の形態のエネルギーよって、または全身投与することができる他の循環分子によって活性化される薬剤であってもよい。治療薬は、血管新生、再狭窄、細胞増殖、血栓症、血小板凝集、凝固、および血管拡張の調節を含む、複数の機能を果たすことができる。抗炎症薬としては、アリール酢酸誘導体(aryl acetic acid derivatives)などの非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)(例えばジクロフェナック(Diclofenac))、アリールプロピオン酸誘導体(aryl propionic acid derivatives)(例えばナプロキセン)、およびサリチル酸誘導体(salicylic acid derivatives)、例えばアスピリン、ジフルーニサルが挙げられる。抗炎症薬としては、デキサメタゾーン、プレドニゾロン、およびトリアムシノロンなどのグルココルチコイド(ステロイド)も挙げられる。抗炎症薬は、抗増殖薬に対する組織の反応を緩和させるために、抗増殖薬と組み合わせて用いられてもよい。
【0032】
用語「侵食(erosion)」は、媒体またはマトリックスの構成要素が化学的または物理的プロセスによって生体吸収される(bioresorbed)、および/または解体される(degraded)、および/または分解される(broken down)プロセスを意味する。例えば、生分解性ポリマーマトリックスに関しては、侵食はポリマー鎖の切断または加水分解を引き起こし、それによりマトリックスおよび懸濁している有益な作用物質の溶解性が高まる。
【0033】
用語「侵食速度」は、侵食プロセスが生じるのにかかる時間の量の測度であり、通常は単位時間当たりの単位面積で報告される。
【0034】
用語「マトリックス」または「生体吸収性マトリックス(bioresorbable matrix)」は、通常、被検体に埋め込まれるとマトリックスの拒絶を引き起こすのに十分な有害反応を誘導しない媒体または材料を指すために交換可能に用いられる。マトリックスは通常、治療反応自体はもたらさないが、本明細書で定義される有益な作用物質を含有するかまたは取り囲むことができる。マトリックスは、単に支持、構造的完全性、または構造的バリアを与えることができる媒体でもある。マトリックスは、ポリマー性、非ポリマー性、疎水性、親水性、親油性、両親媒性などであり得る。
【0035】
用語「開口」は、貫通開口および窪みの両方を含む。
【0036】
用語「薬学的に許容可能な」は、宿主または患者に対して無毒性であり、かつ有益な作用物質の安定性を維持するとともに、標的細胞または組織に有益な作用物質を送出することを可能にするのに適しているという特徴を指す。
【0037】
本明細書に記載される本発明の種々の実施形態は、拡張式器具の異なる開口に異なる有益な作用物質を供給するか、または幾つかの開口に有益な作用物質を供給して他の開口には供給しない。拡張式医療器具の特定の構造は、本発明から逸脱しない限り変更することができる。各開口は個別に充填されるため、個々の化学組成物および薬動力学的特性を各開口の有益な作用物質に与えることができる。
【0038】
拡張式医療器具の異なる開口内で異なる有益な作用物質を使用する、または幾つかの開口内で有益な作用物質を使用して他の開口内では使用しない一例は、エッジエフェクトによる再狭窄の対処で見られる。上述のように、現世代のコーティングステントは、エッジエフェクトによる再狭窄や、ステントの縁部を越えてすぐの所に生じてステント縁部の周りおよび内部内腔空間内に進行する再狭窄に関して重大な問題を有する。
【0039】
第一世代の薬剤送出ステントのエッジエフェクトによる再狭窄の原因は、現時点では十分に理解されていない。血管形成術および/またはステント埋め込みによる組織損傷領域が、組織に強力に分散する(partition)傾向があるパクリタキセルおよびラパマイシンなどの現世代の有益な作用物質の拡散範囲を超えて広がることが原因かもしれない。同様の現象が放射線療法で観察されており、放射線療法では、損傷がある場合にはステントの縁部における放射線照射量が少なくても刺激になることがわかっている。この場合、無傷の組織に放射線が照射されるまで比較的大きい長さ(longer length)にわたって照射することで問題が解決されていた。薬剤送出ステントの場合、より大量または高濃度の有益な作用物質をステント縁部に沿って配置するか、より組織に拡散しやすい異なる作用物質をステント縁部に配置するか、あるいは異なる有益な作用物質または有益な作用物質の組み合わせを器具の縁部に配置することが、エッジエフェクトによる再狭窄の問題を改善するのに役立つであろう。
【0040】
図1は、「ホットエンド(hot ends)」を有する、すなわち、エッジエフェクトによる再狭窄を治療および低減するために器具の両端部の開口30aに有益な作用物質が供給された、拡張式医療器具10を示す。器具の中央部分の残りの開口30bは、空であってもよく(図示のように)、または端部よりも低濃度の有益な作用物質を収容してもよい。
【0041】
エッジエフェクトによる再狭窄の他のメカニズムは、特定の薬剤または薬剤の組み合わせの細胞障害性に関連し得る。このようなメカニズムは、上皮の瘢痕組織形成で見られるものと同様の組織の物理的または機械的収縮を含み、ステントはその境界内では収縮反応を防止するが、その縁部の外側では防止しないであろう。さらに、この後者の形態の再狭窄のメカニズムは、薬剤自体がもはや動脈壁に存在しなくなった後でも現れる、動脈壁への持続的または局所的な薬剤送出の後遺症に関連している可能性がある。すなわち、再狭窄は、薬剤および/または薬剤担体に関連するある形態の有害な損傷に対する反応であり得る。この状況では、器具の縁部から特定の作用物質を排除することが有益かもしれない。
【0042】
図2は、複数の開口230を有する拡張式医療器具200の代替実施形態を示し、ここでは、器具の中央部分の開口230bに有益な作用物質が充填され、器具の縁部の開口230aは空のままである。図2の器具は、「クールエンド(cool ends)」を有すると呼ばれる。
【0043】
エッジエフェクトによる再狭窄を低減するための使用に加えて、図2の拡張式医療器具200は、最初のステント留置術(stenting procedure)をさらに別のステントで補助する必要がある場合、図1の拡張式医療器具10または別の薬剤送出ステントとともに用いることができる。例えば、場合によっては、「ホットエンド」を有する図1の器具10または薬剤が均一に分布した器具が不適切に埋め込まれる場合がある。器具が内腔の十分な部分を覆っていないと医師が判断した場合、補助用器具を既存の器具の一端に、既存の器具にわずかに重なるように継ぎ足すことができる。補助用器具が埋め込まれると、図2の器具200が用いられることにより、医療器具200の「クールエンド」が器具10、200の重なった部分において有益な薬剤が二重投薬されることを防止するようになる。
【0044】
図3は、異なる有益な作用物質が拡張式医療器具300の異なる穴に配置された、本発明のさらなる代替実施形態を示す。第1の有益な作用物質が器具の両端部の穴330aに供給され、第2の有益な作用物質が器具の中央部分の穴330bに供給される。有益な作用物質は異なる薬剤を含有してもよく、同じ薬剤を異なる濃度で含有してもよく、または同じ薬剤を異なる量で(different variations)含有してもよい。図3の実施形態を用いて、「ホットエンド」または「クールエンド」を有する拡張式医療器具300を提供してもよい。
【0045】
好ましくは、第1の有益な作用物質を収容する穴330aを含む器具300の各端部は、縁部から少なくとも穴1個分〜穴15個分まで延びる。この距離は、未拡張の器具の縁部から約0.127〜約2.54mm(約0.005〜約0.1インチ)に相当する。第1の有益な作用物質を含む器具300の縁部からの距離は、好ましくは約1セクション(1セクションは架橋要素間に画定される)である。
【0046】
異なる薬剤を含有する異なる有益な作用物質は、ステントの異なる開口に入れることができる。これにより、1つのステントから2つ以上の有益な作用物質を任意の所望の送出パターンで送出することができる。あるいは、同じ薬剤を異なる濃度で含有する異なる有益な作用物質を、異なる開口に入れることができる。これにより、非均一な器具構造の場合でも薬剤を組織に均一に分配することができる。
【0047】
本明細書に記載される器具に供給される2つ以上の異なる有益な作用物質は、(1)異なる薬剤、(2)異なる濃度の同じ薬剤、(3)異なる放出の動力学、すなわち異なるマトリックス侵食速度を有する同じ薬剤、または(4)異なる形態の同じ薬剤を含有することができる。異なる放出の動力学を有する同じ薬剤を含有するように配合された異なる有益な作用物質の例は、異なる担体を用いて異なる形状の溶出プロファイルを得ることができる。異なる形態の同じ薬剤の例の中には、様々な親水性または親油性を有する薬剤の形態が含まれる。
【0048】
図3の器具300の一例では、器具の両端部の穴330aには親油性が高い薬剤を含む第1の有益な作用物質が充填され、器具の中央部分の穴330bにはそれよりも親油性が低い薬剤を含む第2の有益な作用物質が充填される。「ホットエンド」にある親油性が高い第1の有益な作用物質は、周囲組織により拡散しやすく、エッジエフェクトによる再狭窄を低減する。
【0049】
器具300は、有益な作用物質が第1の作用物質から第2の作用物質に変化する急激な遷移ラインを有し得る。例えば、器具の端部から1.27mm(0.05インチ)以内の開口は全て第1の作用物質を収容し得るが、残りの開口は第2の作用物質を収容する。あるいは、器具は第1の作用物質と第2の作用物質との間で徐々に遷移する。例えば、開口内の薬剤の濃度は、器具の両端部に向かうにつれて徐々に高くなる(または低くなる)ことができる。別の例では、器具の両端部に向かうにつれて、開口の第1の薬剤の量は増加し、開口の第2の薬剤の量は減少する。
【0050】
図4は、異なる有益な作用物質が器具の異なる開口430a、430bに交互にまたは点在的(interspersed manner)に配置される、拡張式医療器具400のさらなる代替実施形態を示す。このように、複数の有益な作用物質を、器具によって支持される全領域または領域の一部にわたって組織に送出することができる。この実施形態は、有益な作用物質間の相互作用または安定性の問題により、複数の作用物質の組み合わせが1つの組成物として器具に充填されることが不可能である場合の、複数の有益な作用物質の送出に有利である。
【0051】
組織の異なる画定領域で異なる薬剤濃度を得るために、異なる開口内で異なる有益な作用物質を用いることに加えて、たとえば拡張式医療器具が拡張した形状で不均一な開口分布を有する場合に、異なる開口への異なる有益な作用物質の充填を用いて、送出される有益な作用物質をより均一に空間分布させることができる。
【0052】
例えば、既知の拡張式器具の多くでは、また図5に示す器具の場合、器具500のカバー範囲は、器具の円筒形管部分512の方が架橋要素514よりも大きい。カバー範囲は、器具の表面積と器具が展開される内腔の面積との比として画定される。カバー範囲が変化する器具を用いて、器具の開口に収容された有益な作用物質を送出する場合、円筒形管部分512に隣接する組織に送出される有益な作用物質の濃度は、架橋要素514に隣接する組織に送出される有益な作用物質の濃度よりも高い。器具構造のこのような長手方向の変化および器具のカバー範囲の他の変化により、有益な作用物質の送出濃度が不均一になるので、これに対処するために、開口内の有益な作用物質の濃度を器具の部分ごとに変えて、組織全体に有益な作用物質がより均一に分布するようにすることができる。図5の実施形態の場合、管部分512の開口530aは、架橋要素514の開口530bよりも低い薬剤濃度を有する有益な作用物質を含む。作用物質の送出の均一性は、薬剤濃度の変更、開口の直径または形状、開口内の作用物質の量(すなわち、開口が充填される(filed)割合)、マトリックス材料、または薬剤の形態を含む、様々な方法で達成することができる。
【0053】
異なる開口内で異なる有益な作用物質を使用するための用途の別の例は、図6に示すような、血管の分岐において用いるように構成される拡張式医療器具600である。分岐用器具は、血管の側枝に血液が流れるように配置される側穴610を含む。分岐用器具の一例は、米国特許第6293967号明細書に記載されており、当該特許はその全文が参照により本明細書に援用される。分岐用器具600は、器具の残りの部分を形成する通常のパターンのビームを中断させる側穴部(side hole feature)610を含む。分岐の周りの領域は特に再狭窄の問題を引き起こす領域であるため、器具600の側穴610の周囲の領域における開口830a内の抗増殖剤の濃度を高めて、必要な場所に高濃度の薬剤を送出することができる。側部開口から離れた領域にある残りの開口630bは、開口630aよりも濃度が低い抗増殖薬を有する有益な作用物質を収容する。分岐部の穴を取り囲む領域に送出される高濃度の(increased)抗増殖薬は、異なる薬剤を含有する異なる有益な作用物質、またはより高い濃度の同じ薬剤を含有する異なる有益な作用物質によって提供され得る。
【0054】
血管壁の治療のために、拡張式医療器具の壁側に異なる有益な作用物質を送出することに加えて、有益な作用物質を拡張式医療器具の内腔側に送出してもよい。器具の内腔側からの血流中に送出される薬剤は、器具の近位端または器具の遠位端に配置することができる。
【0055】
拡張式医療器具の異なる開口に異なる有益な作用物質を充填する方法としては、浸漬およびコーティングなどの既知の技法、および既知の圧電マイクロジェット(piezoelectric micro-jetting)技法を挙げることができる。微量注入器具は、正確な量の2つ以上の液状の有益な作用物質を、既知の方法で拡張式医療器具の正確な場所に送出するようにコンピュータ制御することができる。例えば、2剤ジェット(dual agent jetting)デバイスは、2つの作用物質を同時または順次に開口内に送出することができる。有益な作用物質を拡張式医療器具の貫通開口に充填する場合、充填時には、有益な作用物質が溶媒などとともに液体形態で送出されるように、弾性マンドレルによって内腔側の貫通開口を遮断することができる。有益な作用物質は、手動の注入器具により充填してもよい。
【0056】
本発明をその好ましい実施形態について詳細に述べてきたが、本発明から逸脱することなく種々の変更および改変ができ、同等品を使用できることが、当業者には明白である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】端部に有益な作用物質を有する拡張式医療器具の等角図である。
【図2】中央部分に有益な作用物質を有し、端部に有益な作用物質を有さない拡張式医療器具の等角図である。
【図3】異なる穴に異なる有益な作用物質を有する拡張式医療器具の等角図である。
【図4】交互の穴に異なる有益な作用物質を有する拡張式医療器具の等角図である。
【図5】架橋要素に有益な作用物質用開口を有する拡張式医療器具の一部の拡大側面図である。
【図6】分岐用開口を有する拡張式医療器具の一部の拡大側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有益な作用物質の送出用の拡張式医療器具であって、
第1の直径を有する円筒から第2の直径を有する円筒に拡張可能であるほぼ円筒形の器具と、
前記ほぼ円筒形の器具に形成される、組織に送出するための第1の有益な作用物質を収容する第1の複数の開口であって、前記円筒形の器具の第1の端部および第2の端部に配置される、第1の複数の開口と、
前記ほぼ円筒形の器具に形成される、組織に送出するための第2の有益な作用物質を収容する第2の複数の開口であって、前記円筒形の器具の前記第1の端部と前記第2の端部との間の中央部分に配置され、前記第2の有益な作用物質は前記第1の有益な作用物質とは異なる、第2の複数の開口と
を備える、有益な作用物質の送出用の拡張式医療器具。
【請求項2】
前記第2の有益な作用物質は、前記第1の有益な作用物質に含まれる薬剤と同じ薬剤を、異なる濃度で含む、請求項1に記載の有益な作用物質の送出用の拡張式医療器具。
【請求項3】
前記第2の有益な作用物質は、前記第1の有益な作用物質に含まれる薬剤と同じ薬剤を、異なる溶出プロファイルをもって含む、請求項1に記載の有益な作用物質の送出用の拡張式医療器具。
【請求項4】
前記第1の有益な作用物質および前記第2の有益な作用物質は異なる薬剤を含む、請求項1に記載の有益な作用物質の送出用の拡張式医療器具。
【請求項5】
前記第1の有益な作用物質および前記第2の有益な作用物質は、異なる形態の同じ薬剤を含む、請求項1に記載の有益な作用物質の送出用の拡張式医療器具。
【請求項6】
前記第1の開口は、前記第2の開口に収容される前記第2の有益な作用物質よりも高い濃度を有する、第1の有益な作用物質を収容する、請求項1に記載の有益な作用物質の送出用の拡張式医療器具。
【請求項7】
前記ほぼ円筒形の器具にコーティングされる第3の有益な作用物質をさらに含む、請求項1に記載の有益な作用物質の送出用の拡張式医療器具。
【請求項8】
前記第1の有益な作用物質は、パクリタキセル、あるいはその類似体または誘導体である、請求項1に記載の有益な作用物質の送出用の拡張式医療器具。
【請求項9】
前記第1の有益な作用物質は、ラパマイシン、あるいはその類似体または誘導体である、請求項1に記載の有益な作用物質の送出用の拡張式医療器具。
【請求項10】
組織支持器具であって、
体内腔を支持するように構成される組織支持器具本体と、
前記組織支持器具の第1の開口に収容される、組織に送出するための第1の有益な作用物質であって、前記第1の開口は、前記器具本体の第1の端部および第2の端部に配置される、第1の有益な作用物質と、
前記組織支持器具の第2の開口に収容される、組織に送出するための第2の有益な作用物質であって、前記第2の開口は、前記器具本体の前記第1の端部と前記第2の端部との間の中央部分に配置される、第2の有益な作用物質と
を備える、組織支持器具。
【請求項11】
前記第2の有益な作用物質は、前記第1の有益な作用物質に含まれる薬剤と同じ薬剤を、異なる濃度で含む、請求項10に記載の組織支持器具。
【請求項12】
前記第1の有益な作用物質は、パクリタキセル、あるいはその類似体または誘導体である、請求項11に記載の組織支持器具。
【請求項13】
前記第1の有益な作用物質は、ラパマイシン、あるいはその類似体または誘導体である、請求項11に記載の組織支持器具。
【請求項14】
前記第2の有益な作用物質は、前記第1の有益な作用物質に含まれる薬剤と同じ薬剤を、異なる溶出プロファイルをもって含む、請求項10に記載の組織支持器具。
【請求項15】
前記第1の有益な作用物質および前記第2の有益な作用物質は異なる薬剤を含む、請求項10に記載の組織支持器具。
【請求項16】
前記第1の有益な作用物質および前記第2の有益な作用物質は、異なる形態の同じ薬剤を含む、請求項10に記載の組織支持器具。
【請求項17】
有益な作用物質の送出用の拡張式医療器具であって、
初期形状から拡張形状に拡張可能な器具本体と、
内腔の分岐に適応するように構成される前記器具本体の側穴と、
前記器具本体に形成される、前記拡張形状で組織に送出するための第1の有益な作用物質を収容する第1の複数の開口であって、前記側穴の周囲の領域に形成される、第1の複数の開口と、
前記本体器具の前記側穴から離れた領域に形成される、第2の複数の開口と
を備える、有益な作用物質の送出用の拡張式医療器具。
【請求項18】
前記器具本体は複数の相互接続された支柱を含み、前記第1の開口および前記第2の開口は前記支柱に形成される、請求項17に記載の有益な作用物質の送出用の拡張式医療器具。
【請求項19】
前記第1の有益な作用物質は、前記第2の有益な作用物質よりも高い濃度の抗再狭窄薬を含む、請求項17に記載の有益な作用物質の送出用の拡張式医療器具。
【請求項20】
体内の通路における再狭窄を低減する方法であって、
体内の通路に組織支持器具を配置することであって、それにより組織を支持し、前記組織支持器具は、前記器具の開口に第1の有益な作用物質および第2の有益な作用物質を収容する、組織支持器具を配置すること、および
前記第1の有益な作用物質を前記組織支持器具の両端部に隣接する場所の組織に送出し、かつ前記第2の有益な作用物質を前記器具の前記両端部間の組織に送出することであって、それにより再狭窄を低減する、前記第1および第2の有益な作用物質を送出すること
を含む、体内の通路における再狭窄を低減する方法。
【請求項21】
前記2つの異なる有益な作用物質は、異なる濃度の同じ薬剤を含む、請求項20に記載の体内の通路における再狭窄を低減する方法。
【請求項22】
前記第2の有益な作用物質は、前記第1の有益な作用物質に含まれる薬剤と同じ薬剤を、異なる溶出プロファイルをもって含む、請求項20に記載の体内の通路における再狭窄を低減する方法。
【請求項23】
前記2つの有益な作用物質は異なる薬剤を含む、請求項20に記載の体内の通路における再狭窄を低減する方法。
【請求項24】
前記2つの有益な作用物質は異なる形態の同じ薬剤を含む、請求項20に記載の体内の通路における再狭窄を低減する方法。
【請求項25】
有益な作用物質の送出用の拡張式医療器具であって、
第1の直径を有する円筒から第2の直径を有する円筒に拡張可能であるほぼ円筒形の器具と、
前記ほぼ円筒形の器具に形成される、第1の濃度の前記有益な作用物質を収容する第1の複数の開口と、
前記ほぼ円筒形の器具に形成される、第2の濃度の前記有益な作用物質を収容する第2の複数の開口と
を備え、
前記第1の開口および前記第2の開口は、体内の通路の組織に均一な分布で薬剤を送出するように配置される、有益な作用物質の送出用の拡張式医療器具。
【請求項26】
前記ほぼ円筒形の器具は、複数の相互接続された支柱および架橋要素を含み、
前記第1の開口は前記支柱に形成され、
前記第2の開口は前記架橋要素に形成される
請求項25に記載の有益な作用物質の送出用の拡張式医療器具。
【請求項27】
前記拡張式器具の単位表面積当たりの前記第1の開口の容積は、単位表面積当たりの前記第2の開口の容積よりも大きく、
前記薬剤の均一な分布を得るために、前記第1の濃度は前記第2の濃度よりも低い、請求項25に記載の有益な作用物質の送出用の拡張式医療器具。
【請求項28】
前記第1の開口および前記第2の開口は異なるサイズである、請求項25に記載の有益な作用物質の送出用の拡張式医療器具。
【請求項29】
ステントに有益な作用物質を充填する方法であって、
ステントに複数の開口を設けることと、
圧電マイクロジェットによって有益な作用物質を前記複数の開口に分配することと
を含む、ステントに有益な作用物質を充填する方法。
【請求項30】
前記分配するステップは、
前記複数の開口の第1の組に第1の有益な作用物質を分配することと、
前記複数の開口の第2の組に第2の有益な作用物質を分配することと
を含む、請求項29に記載のステントに有益な作用物質を充填する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−500121(P2006−500121A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−538450(P2004−538450)
【出願日】平成15年9月22日(2003.9.22)
【国際出願番号】PCT/US2003/029992
【国際公開番号】WO2004/026174
【国際公開日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【出願人】(500449400)コナー メドシステムズ, インコーポレイテッド (17)
【氏名又は名称原語表記】CONOR MEDSYSTEMS, INC.
【住所又は居所原語表記】1360 Hamilton Court,Menlo Park,CA 94025 U.S.A.
【Fターム(参考)】